(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072890
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/00 20060101AFI20220510BHJP
A61G 5/10 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61G5/00 701
A61G5/10 717
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182580
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】394006129
【氏名又は名称】株式会社いうら
(72)【発明者】
【氏名】朝山 崇
(57)【要約】
【課題】後輪と自在車輪の切り替えが可能なリフトアップ機構と後輪のブレーキ機構が連動することで利用者をベッドなど目的地に安全に移乗可能な車椅子を提供すること。
【解決手段】上部フレームを支持する車体フレームと、該車体フレームの前後に一対の前輪と一対の後輪を取着して地面を走行可能にし、該車体フレームに枢着され、且つ、レバーを操作することで任意に該後輪の転動をロック及び解除可能なブレーキ機構で構成される車椅子で、介助者が足で該車体フレームの後方に配設したペダル部を踏み込むことで、該ペダル部に取着した第二リンクが垂下するとともに該第二リンクに螺着した自在車輪が地面と接地し、且つ、該後輪を地面から離間させて前後方向に加えて左右方向への移動を簡便にするだけでなく、該後輪を地面から離間した時には必ず該後輪のブレーキをロックするように該ブレーキ機構と連動可能に構成したリフトアップ機構を具備した車椅子。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着座可能な上部フレームと、該上部フレームを支持する車体フレームと、該車体フレームの前後に前輪と後輪を取着することで地面を走行可能にし、側面視において該車体フレームの該後輪の後方に枢着され、且つ、レバーを操作することで任意に該後輪の転動をロック及び解除可能なブレーキ機構で構成される車椅子であり、該車体フレームの後方に固着された第二支持プレートに回動自在に軸着される第一リンクと、該第一リンクの支持プレートに一端を回動自在に軸着し、且つ、ペダル部本体に架設されるボスで構成されるペダル部と、該ペダル部の該ボスに一端を軸着し、且つ、該車体フレームの後方に地面に対して鉛直方向に固着されたガイドボス内を摺動可能に取着される第二リンクと、該第二リンクに螺着される自在車輪によって構成されるリフトアップ機構を、介助者が足で該ペダル部本体を踏み込むことで該第二リンクが該ガイドボス内を摺動しながら地面方向に垂下して該自在車輪が地面に接地した後、該ペダル部の該ボスを回動中心として該ペダル部本体が側面視において反時計回りに回動するとともに、該第一リンクの該支持プレートが該第二支持プレートのボスを回動中心として側面視において時計回りに回動して該ペダル部本体と該支持プレートを支点越えさせて該後輪を地面から離間させることで、該前輪と該自在車輪で前後方向の移動に加えて左右方向への移動を簡便にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴とする車椅子。
【請求項2】
前記ペダル部を介助者が足で踏み込むことで前記第二リンクを地面方向に垂下するとともに、該第二リンクの前記支持プレートに固着された係止ピンが、前記車体フレームの前記第二支持プレートに回動自在に軸着された前記ブレーキ機構の前記レバーに固着したブレーキプレートに付設した側面視において上方が開放された略U字型の係止辺に当接することで、前記後輪が地面から離間すると同時に該後輪の転動をロックすることを可能にし、且つ、該後輪が地面に再接地した場合にのみ該後輪の転動のロックを解除可能にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴とする請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
介助者が踏み込み可能な補助ペダル部を前記車体フレームの後方に固着した第一支持プレートに軸着し、該補助ペダル部を介助者が足で踏み込むことで前記ペダル部のボスと同軸心で軸着されたローラーを該補助ペダル部の支点プレートが側面視において反時計回りに付勢して前記第一リンクと前記ペダル部が支点越えした状態を解消することで、前記自在車輪を地面から離間させつつ前記後輪を地面に接地可能にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の車椅子。
【請求項4】
介助者が前記補助ペダルを足で踏み込んだ際に、側面視において時計回りにペダル部本体が回動し、且つ、介助者の足裏に該ペダル部本体が当接することで、前記後輪が地面に接地する際の衝撃を軽減させることができるリフトアップ機構を具備したことを特徴とする請求項3に記載の車椅子。
【請求項5】
前記上部フレームと前記車体フレーム間に昇降機構を配設して、該昇降機構を駆動させて該上部フレームを上昇もしくは下降させることでベッドの上面と該上部フレームの上面を面一にすることが可能なリフトアップ機構を具備したことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の車椅子。
【請求項6】
予め設定した高さで前記上部フレームを停止できるようにメモリー機能を備えたコントロールボックスを前記昇降機構に付設したリフトアップ機構を具備したことを特徴とする請求項5に記載の車椅子。
【請求項7】
介助者が足で踏み込むことなく操作スイッチを介して前記車体フレームに枢着された伸縮手段によって駆動可能な前記リフトアップ機構を具備したことを特徴とする車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体の不自由な人が使用する車椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車椅子は自走式車椅子と介助式車椅子の二つに大きく分けられる。
まず、自走式車椅子は主に後車輪に連接したハンドリムを利用者が回動操作することで自力で車椅子を駆動させることができる。この場合、利用者が自らハンドリムを操作できるため、後車輪の回動方向や回動速度を自在に操ることができ、直進、旋回など意図した方向に車椅子の姿勢変更をすることができる。
そして、介助式車椅子は主に自分で車椅子を操作することができない利用者を目的地に移動させるために使用され、介助者が車椅子のバックサポートに連接したハンドルを把持して車椅子を駆動させることができる。
利用者の身体状況や使用環境に応じていずれかの車椅子を選択するが、いずれも前後方向は後輪の回動方向に沿うため車椅子の移動が容易にできるが、左右方向に対しては後輪の回動方向に対して垂直方向つまり車軸方向への移動となるため、大きく旋回したり、何度も向きを切り替える必要がある。
つまり、ベッドや椅子などの目的地と車椅子間での利用者の移乗をする時に車椅子を目的地に対して横付けする場面において、いずれの車椅子を使用する場合であっても操作が煩わしいものとなっている。
【0003】
そこで、前述したデメリットを解決するために、特許文献1に記載される車椅子が提案されている。
この車椅子は、ペダルを踏動することによって後部キャスターを地面に接地しつつ主車輪を持ち上げることで、横方向への移動を可能にした転倒防止機構が備えられている。
この転倒防止機構によって、小回りが利き、方向転換を容易に行うことができるため、ベッドや椅子などに車椅子を簡単に横付けすることで利用者を簡単に移乗させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車椅子は以下の問題点が挙げられる。
まず、主車輪に付設しているブレーキは他の機構とは連動しておらず、都度介助者がブレーキペダルを踏動しないと主車輪のブレーキが掛からない構成である。
この構成の場合、後部キャスターを接地させてベッドなどの目的地に移動して後部キャスターを再接地した後、ベッドなどの目的地と車椅子間で利用者を移乗させる時に、万が一ブレーキの掛け忘れが発生した時に車椅子が急に動き出して利用者がバランスを崩して転落する恐れがある。
そして、後部キャスターを地面に接地させつつ主車輪を持ち上げた時にブレーキを掛けていないと主車輪が自由に回動するので、介助者や利用者の身体の挟み込みや、ベッドなどの目的地に近接した際に毛布やシーツを巻き込む恐れがある。
また、持ち上げた主車輪を地面に再接地する際には、利用者の体重と車椅子のフレームの重さがフットペダルを解除した際に主車輪に掛かることになる。つまり、主車輪及び主車輪を取付けている部材が破損する恐れや、接地する際に受ける衝撃によって利用者が不快感や恐怖感を感じることになる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本願発明が解決しようとする課題は、後輪と横移動用の自在車輪の切り替えが可能なリフトアップ機構と後輪のブレーキ機構が連動することで利用者をベッドなど目的地に安全に移乗させることが可能な車椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車椅子は、利用者が着座可能な上部フレームと、該上部フレームを支持する車体フレームと、該車体フレームの前後に前輪と後輪を取着することで地面を走行可能にし、側面視において該車体フレームの該後輪の後方に枢着され、且つ、レバーを操作することで任意に該後輪の転動をロック及び解除可能なブレーキ機構で構成される車椅子であり、該車体フレームの後方に固着された第二支持プレートに回動自在に軸着される第一リンクと、該第一リンクの支持プレートに一端を回動自在に軸着し、且つ、ペダル部本体に架設されるボスで構成されるペダル部と、該ペダル部の該ボスに一端を軸着し、且つ、該車体フレームの後方に地面に対して鉛直方向に固着されたガイドボス内を摺動可能に取着される第二リンクと、該第二リンクに螺着される自在車輪によって構成されるリフトアップ機構を、介助者が足で該ペダル部本体を踏み込むことで該第二リンクが該ガイドボス内を摺動しながら地面方向に垂下して該自在車輪が地面に接地した後、該ペダル部の該ボスを回動中心として該ペダル部本体が側面視において反時計回りに回動するとともに、該第一リンクの該支持プレートが該第二支持プレートのボスを回動中心として側面視において時計回りに回動して該ペダル部本体と該支持プレートを支点越えさせて該後輪を地面から離間させることで、該前輪と該自在車輪で前後方向の移動に加えて左右方向への移動を簡便にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
そして、前記ペダル部を介助者が足で踏み込むことで前記第二リンクを地面方向に垂下するとともに、該第二リンクの前記支持プレートに固着された係止ピンが、前記車体フレームの前記第二支持プレートに回動自在に軸着された前記ブレーキ機構の前記レバーに固着したブレーキプレートに付設した側面視において上方が開放された略U字型の係止辺に当接することで、前記後輪が地面から離間すると同時に該後輪の転動をロックすることを可能にし、且つ、該後輪が地面に再接地した場合にのみ該後輪の転動のロックを解除可能にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
そして、介助者が踏み込み可能な補助ペダル部を前記車体フレームの後方に固着した第一支持プレートに軸着し、該補助ペダル部を介助者が足で踏み込むことで前記ペダル部のボスと同軸心で軸着されたローラーを該補助ペダル部の支点プレートが側面視において反時計回りに付勢して前記第一リンクと前記ペダル部が支点越えした状態を解消することで、前記自在車輪を地面から離間させつつ前記後輪を地面に接地可能にしたリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
また、介助者が前記補助ペダルを足で踏み込んだ際に、側面視において時計回りにペダル部本体が回動し、且つ、介助者の足裏に該ペダル部本体が当接することで、前記後輪が地面に接地する際の衝撃を軽減させることができるリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
さらに、前記上部フレームと前記車体フレーム間に昇降機構を配設して、該昇降機構を駆動させて該上部フレームを上昇もしくは下降させることでベッドの上面と該上部フレームの上面を面一にすることが可能なリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
そして、予め設定した高さで前記上部フレームを停止できるようにメモリー機能を備えたコントロールボックスを前記昇降機構に付設したリフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
また、介助者が足で踏み込むことなく操作スイッチを介して前記車体フレームに枢着された伸縮手段によって駆動可能な前記リフトアップ機構を具備したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車椅子は、介助者がペダル部を踏み込むことで車体フレームに鉛直方向に固着されたガイドボスに沿って自在車輪を螺着した第二リンクが上下に摺動して自在車輪を地面に接地させつつ、ペダル部を介助者が踏み込み続けることでペダル部に一端を軸着した第一リンクが回動して支点越えをすることで後輪を地面から離間させて保持することができる。つまり、ペダル部の踏み込みが回転運動であるのに対して、第二リンク及び自在車輪が地面に対して鉛直運動をするクランク構成になっており、リフトアップ機構を構成する部材をコンパクトに構成することができる。また、車体フレームをリフトアップする時に、必要以上に車体フレームの後方が持ち上がらないため、リフトアップ時に上部フレームに着座している利用者が前方に前滑りして転落するなどの危険性を未然に回避することができる。
また、後輪のリフトアップと同時に第二リンクとブレーキ機構が連動して後輪のブレーキをロックすることで、後輪を地面に再接地した際にブレーキをかけ忘れることによって利用者をベッドなど目的地に移乗させる時に車椅子が不意に動き出し転落する事故を未然に防止することができる。また、ベッドサイドに車椅子を近接させた時に、毛布やシーツなどの巻き込みを防止することもできる。
そして、一度地面から離間させた後輪を地面に再接地する際に介助者が足で補助ペダル部を上から踏み込んでペダル部を元に戻すことで、ペダル部を下から上に向かって足の甲で跳ね上げて後輪を地面に再接地する構成に比べて介助者が車体フレームに挟まれる不安感を排除することができる。また、自在車輪と後輪の切替動作を上方からの足の踏み込み動作のみで行うことができるため、介助者は複数の動作を覚えなくて良く簡単に操作することができる。
そして、介助者が補助ペダル部を足で踏み込むことで元に戻る途中のペダル部の一端が介助者の足裏に当接することで、後輪と自在車輪の切り替え時に受ける地面との衝撃を一旦介助者の足裏で受けることができるため、利用者が受ける衝撃や不快感を軽減させることができる。また、車椅子が受ける衝撃を軽減させて耐久性を向上させることができる。
そして、ブレーキ機構及びリフトアップ機構が車体フレームにのみ取付いているため、上部フレームの仕様に自由度ができ、上部フレームと車体フレームの間に昇降機構を配設して上部フレームの高さ調節を任意にできるようにしたことで、ベッドや椅子など高さの異なる目的地それぞれに合わせて上部フレームの高さを調節することができるため、移乗介助の効率を向上させることができるだけでなく、対応可能なベッドや椅子などを増やすことができる。
そして、昇降機構を駆動させるためのコントロールボックスにメモリー機能を備えてベッドなどの上面高さを予め記憶させておくことで、利用者を車椅子からベッドなどに移乗する時に車椅子の上面とベッドなどの上面がほぼ面一になる位置で上部フレームが自動で停止することで、介助者が細かく高さを確認をしながら操作する必要が無くなり作業性を向上させることができる。
そして、ペダル部を介助者が足で踏み込んで操作する替わりにアクチュエーターなどの伸縮手段をリフトアップ機構と車体フレームの間に取着することで、下肢が弱ってペダル部を充分に踏み込めない介助者でも後輪と補助車輪の切り替えが楽に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】車体フレーム2の(a)平面図(b)側面図(c)側断面図
【
図7】リフトアップ機構6の(a)第一リンク61とペダル部62の組立説明図(b)第二リンク63の組立説明図
【
図8】リフトアップ機構6の補助ペダル部64の組立説明図
【
図9】昇降機構7と上部フレーム8のシート部8aの組立説明図
【
図11】車椅子1のブレーキを掛けた状態を示す側面図
【
図12】車椅子1の後輪4をリフトアップした状態を示す(a)側面図(b)側断面図
【
図13】車椅子1のリフトアップ機構6のペダル部62を介助者が踏み込んだ状態を示す(a)側面図(b)側断面図
【
図14】車椅子1のリフトアップ機構6の補助ペダル部64を介助者が踏み込んだ状態を示す(a)側面図(b)側断面図
【
図15】車椅子1のリフトアップ機構6の補助ペダル部64を介助者が踏み込み、且つ、後輪4が地面に再接地した状態を示す(a)側面図(b)側断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
以下、本発明の車椅子1について図面を基に説明する。
この車椅子1は、井桁状にフレームを配設して構成される車体フレーム2と、この車体フレーム2の前方に取着される前輪3及び後方に取着される後輪4,4と、後輪4,4のブレーキをかけるためのブレーキ機構5と、車体フレーム2の後方に配設されるリフトアップ機構6と、車体フレーム2の上方に配設される昇降機構7と、この昇降機構7に支持される上部フレーム8で主に構成される。
なお、本実施例における車椅子1では
図2に示すように利用者が車椅子1に着座した状態を側面図(右側面図)とし、この状態を基準に利用者の視線方向を前方、その反対方向を後方とし、
図3に示すように平面視において利用者の右手方向、左手方向として各構成部品の動きを説明する。
【0011】
まず、車体フレーム2は
図5(a)に示すように前後方向に複数箇所屈曲形成した長手フレーム2a,2aを一定間隔離間してツナギフレーム2b,2bで連結固定して略井桁状にし、該長手フレーム2a,2aの前端には前輪3,3を、中央からやや後方には後輪4,4をそれぞれ取着している。
各構成部品を詳述すると、コ字状に屈曲形成した下ガイドフレーム2c,2cの開口部を向かい合わせにして長手フレーム2a,2aにそれぞれ固着している。そして、車体フレーム2の後方側の該ツナギフレーム2bには詳細は後述するがそれぞれ一定間隔離間した第一支持プレート2d,2d及びガイドボス2e,2eを固着している。なお、
図5(b)などで示すように、該ガイドボス2e,2eは地面に対して略鉛直方向に通孔部を配設している。そして、該長手フレーム2a,2aの前端部に固着したボス2f,2fに前輪3,3を取着している。
なお、詳細な説明は省略するが、
図11に示すように本実施例においてはこの前輪3,3はブレーキ31,31が具備されておりそれぞれ単独で前輪3,3のブレーキを掛けることができる。
そして、側面視において該ツナギフレーム2b,2b間に配設されるように該長手フレーム2a,2aの下方に第二支持プレート2g,2gをそれぞれ固着し、該ツナギフレーム2b,2bの長手方向と通孔部が平行になるように該第二支持プレート2g,2gにボス2h,2hを固着して、そのボス2h,2hに後輪4,4を軸着している。
また、該長手フレーム2a,2aの後端には補助車輪2i,2iを取着している。この補助車輪2i,2iが地面に接地するように該長手フレーム2a,2aの後端近傍を介助者が足で踏み込むことで前輪3,3を地面から離間させて車椅子1が段差や障害物などを乗り越えるためにティッピング動作をすることができる。
【0012】
次に、ブレーキ部5を説明する。
図6に示すように、ブレーキ部5は、係止辺51a,51aを一部に形成したブレーキプレート5a,5aを一定間隔離間させてツナギボス5bで固着し、さらに、該ブレーキプレート5a,5aの両端外側に左右対称に屈曲形成したレバー5c,5cを固着している。なお、該レバー5c,5cの一端は該ブレーキプレート5a,5aに穿設した長孔52a,52aを介して内側に突出した状態で固着している。そして、側面視において該ツナギボス5bより前方に位置するように該ブレーキプレート6a,6aの内側にピン5d,5dを固着している。なお、
図10などに示すように、ブレーキプレート5a,5aの係止辺51a,51aは、側面視において上部が開放された形状に略U字形状でブレーキプレート5a,5aと一体形成されている。
また、ブレーキプレート5a,5aは、該ブレーキプレート5a,5aに穿設した孔53a,53aを介して前記車体フレーム2の前記第二支持プレート2g,2gに固着したボス2j,2jに回動自在に軸着している。
そして、ツナギパイプ5eの両端に回動可能に軸着される左右対称形状の連動片5f,5fの中央付近に穿設した孔51f,51fを介して前記車体フレーム2の長手フレーム2a,2aに固着される支持プレート2k,2kに回動可能に軸着している。
そして、該ツナギボス5bの略中央に固着した支点板5gと該ツナギパイプ5eの略中央に穿設した孔51eをロッド5hによって連結している。
また、連動片5f,5fの上端近傍に穿設した孔52f,52fと前記車体フレーム2の長手フレーム2a,2aに固着したリベット2l,2l間に弾性体5i,5iを張設している。
この弾性体5i,5iは本実施例では引張スプリングを使用しているが限定するものでは無く、同等の効果がある物であれば適宜使用したので良い。
【0013】
このように構成したブレーキ部5は、左右対称に構成された部品がツナギボス5b及びツナギパイプ5eによって連動可能になっているため、
図11に示すようにレバー5c,5cのいずれかを介助者が足で踏み込むことでブレーキプレート5a,5a及び該ブレーキプレート5a,5aに連結しているツナギボス5b及び支点板5gが回動するとともに、ロッド5hによって連動片5f,5fが回動して後輪4,4と当接することで後輪4,4の回動をロックすることができる。
そして、解除する場合はいずれかのレバー5c,5cを足の甲などで跳ね上げることで逆の動作となり後輪4,4と連動片5f,5fを離間することができる。
この時、
図10に示すように該長孔52a,52aを介して該ブレーキプレート5a,5aから突出させた該レバー5c,5cの一端近傍が前記車体フレーム2の前記第二支持プレート2g,2gの下面に当接することで回動が規制される。
なお、後輪4,4のロックが解除された状態で走行する際には弾性体5i,5iによって連動片5f,5fが後輪4,4から離間する方向に付勢されるため連動片5f,5fによって後輪4,4のロックが掛かることがない。
また、
図11に示すようにいずれかのレバー5c,5cを足で踏み込んだ時にピン5d,5dが前記車体フレーム2の前記第二支持プレート2g,2gの下面に当接することで回動が規制される。
なお、本実施例では
図11に示すように介助者の足でいずれかのレバー5c,5cを踏み込んで操作する構成にしているが、本実施例に限定する必要は無い。例えば、図示は省略するがレバー5c,5cにワイヤーケーブルの一端を連結し、他端をハンドル8f,8fに連接する位置に操作レバーを配設して、操作レバーを介助者が把持することでワイヤーケーブルが作動してレバー5c,5cを回動させても良い。
【0014】
次に、リフトアップ機構6を説明する。
このリフトアップ機構6は、前記車体フレーム2の内側に回動自在に軸着される第一リンク61と、この第一リンク61に回動自在に軸着されるペダル部62と、このペダル部62の側部に軸着され、且つ、前記車体フレーム2の前記ガイドボス2e,2eに摺動可能に取り付けられる第二リンク63,63と、前記第一支持プレート2d,2dに回動自在に軸着される補助ペダル部64と、第二リンク63,63の地面側の一端に取着される自在車輪65,65で主に構成される。
このように構成したリフトアップ機構6は、介助者が足でペダル部62を踏み込むことで第二リンク63,63の一端に取着された自在車輪65,65が地面に対して離間した状態から地面に接地させるとともに前記後輪4,4を地面から離間することができる。
また、該後輪4,4を再度地面に接地させる時には介助者が足の先端(母指球付近)で補助ペダル部64を踏み込むとともにペダル部62の回動を介助者の足裏(土踏まず付近)で受け止めることで、段階的に後輪4,4を地面と接触させることができるようにしている。
以下、詳細を説明する。
【0015】
まず、第一リンク61を説明する。
図7(a)に示すように、この第一リンク61は前記車体フレーム2の前記第二支持プレート2g,2g間に配設され、パイプを屈曲形成した第一リンク本体61aを前記第二支持プレート2g,2gのボス2m,2mに回動自在に軸着し、地面方向に先端が垂下するように該第一リンク本体61aの両端近傍に支持プレート61b,61b,・・・を固着している。
なお、該ボス2m,2mは
図5(b)などで示すように前記ブレーキ機構5のブレーキプレート5a,5aを回動可能に軸着したボス2j,2jより後方に位置するように配設している。
【0016】
次に、ペダル部62を説明する。
図7(a)に示すように、このペダル部62は、平面視において略コ字状、且つ、側面視において略ヘ字状にパイプを屈曲形成したペダル本体62aの両端に固着したボス62b,62bを前記第一リンク61の両外側の前記支持プレート61b,61bの内側に配設するとともに、両内側の支持プレート61b,61bと該ボス62b,62bの間にローラー62c,62cを配設して回動可能に軸着している。
そして、該ペダル本体62aの略へ字状の頂点より該ボス62b,62b側に該ボス62b,62と通孔部が平行となるようにボス62dを固着している。
【0017】
次に、第二リンク63,63を説明する。
図7(b)に示すように、この第二リンク63,63は、側面視においてボス63a,63aが通孔部を地面に対して略鉛直方向にしつつ、該ボス63a,63aの上方に前記ガイドボス2e,2e内を摺動可能な摺動軸63b,63bを固着し、下方には自在車輪65,65を取着している。
なお、詳細な説明は省略するが該自在車輪65,65は該ボス63a,63aに支軸65a,65aを螺着しており、該支軸65a,65aを回動中心として平面視において360度自在に回動することができるように構成されている。
そして、該ボス63a,63aから前記ペダル部62の前記ボス62d,62d側に向けて延伸するように支軸63c,63cを、該支軸63c,63cの反対側には側面視において略ヘ字状に形成した支持プレート63d,63dの一端をそれぞれ固着している。そして、該支持プレート63d,63dの他端には該支軸63c,63cとは反対方向に係止ピン63e,63eを固着している。なお、
図7(b)に示すように左右に配設された第二リンク63,63は対称に形成される。
このように構成した第二リンク63,63は、摺動軸63b,63bを前記ガイドボス2e,2eに挿通するとともに、ペダル部62の前記ボス62dに支軸63c,63cを挿通して取付けられている。
また、該支持プレート63d,63dに穿設した孔631d,631dと、前記第二支持プレート2g,2gの後端に形成された爪部21g,21g間に弾性体63f,63fを張設している。
この弾性体63f,63fによって、自在車輪65,65が地面から離間している状態、つまり、後輪4,4が地面に接地している状態の時に、該自在車輪65,65が地面に接地しないように前記車体フレーム2側に該第二リンク63,63を引き上げる役割がある。
なお、該弾性体63f,63fは本実施例において引張スプリングを使用しているが、前記弾性体5i,5iと同様に引張スプリングに使用が限定されるものでは無く、同等の効果がある物であれば適宜使用したので良い。
【0018】
次に、補助ペダル部64を説明する。
図8に示すように、この補助ペダル部64は、前記ペダル部62のペダル本体62aと同様に平面視において略コ字状、且つ、側面視において略ヘ字状に屈曲形成された補助ペダル本体64aの両端内側に支点プレート64b,64bを固着し、さらに、該支点プレート64b,64bを連結する連結バー64cを固着している。また、該補助ペダル本体64aの上方には介助者が足で踏み込みやすいようにプレート64dを固着している。
このように構成した補助ペダル部64は、前記車体フレーム2の前記第一支持プレート2d,2dに穿設した孔21d,21d及び長孔22d,22dに、支点プレート64b,64bに穿設した孔641b,641b及び孔642b,642bを介して該支点プレート64b,64bを軸着している。
そして、連結バー64cと前記第一支持プレート2d,2dに固着したリベット2n,2n間に弾性体64e,64eを張設している。
この弾性体64e,64eは本実施例において引張スプリングを使用しており、補助ペダル部64を介助者が足で踏み込んだ後、足を補助ペダル部64から離間した時に元の位置に戻すために利用される。
なお、弾性体64e,64eも前記弾性体63f,63f及び前記弾性体5i,5iと同様に引張スプリングを使用しているが引張スプリングに限定するものでは無く、同等の効果がある物であれば適宜使用したので良い。
【0019】
次に、昇降機構7について説明する。
図9に示すように、この昇降機構7は、Xフレーム構成になるように第一枠71と第二枠72を組み合わせて前述した車体フレーム2と後述する上部フレーム8間に配設するとともに、該第一枠71と該第二枠72の開閉をするための伸縮手段73を該第二枠72と前記車体フレーム2間に配設して構成している。
該昇降機構7の詳細な説明は省略するが、該第一枠71の一端は下ガイドフレーム2c,2c内を転動可能に軸承し、他端は後述する上部フレーム8のシート部8aの支持プレート8b,8bに軸着している。
そして、該第二枠72の一端は前記車体フレーム2の前記第一支持プレート2d,2dに軸着し、他端は後述するシート部8aの上ガイドフレーム8c,8c内を転動可能に軸承している。
このように構成した第一枠71と第二枠72の略中間部を軸着することで開閉自在となっている。
【0020】
そして、伸縮手段73は、一端を前記車体フレーム2の前輪3,3側のツナギフレーム2bに固着した支持プレート2o,2oに、他端を該第二枠72に固着した支持プレート72a,72aにそれぞれ軸着している。
詳細は省略するが該伸縮手段73の外筒73a内を摺動可能に配設された中筒73bが外筒73aに対して延伸及び短縮をすることによって該第一枠71及び該第二枠72を開閉することができる。それに伴って、昇降機構7に支持される上部フレーム8の高さを任意の位置に調整することができる。
また、
図4に示すように、該伸縮手段73を駆動させるための操作スイッチ731及びコントロールボックス732、バッテリー733をバックサポート部8eにそれぞれ付設している。
そして、本実施例における該コントロールボックス732は、詳細な説明を省略するが、該操作スイッチ731を操作して伸縮手段73を駆動させた際に、上部フレーム8を上昇した時にベッドなどの上面と上部フレーム8のシート部8aの上面が略面一になった時に停止するようにメモリー機能を備えている。このメモリー機能によって、介助者が目視確認をする必要が無くなるため介助者の作業負担を軽減させることができる。
また、本実施例における昇降手段73は介助者の負担軽減のためにアクチュエーターを用いて電動式にしているが、別の実施例として螺子軸とナット部材を用い螺子軸に沿ってナット部材を移動するように構成しても良い。また、第一枠71及び第二枠72もXフレーム構成にする必要もない。
つまり、車体フレーム2に対して上部フレーム8を昇降することができる構成であれば昇降機構7は本実施例に限定する必要は無い。
【0021】
次に、上部フレーム8について説明する。
本実施例における上部フレーム8は、本出願人が過去に出願した特開2004-154299(特許第4341885号)に開示の座席部及び揺動機構を採用している。詳細な説明は省略するが、この上部フレーム8は主にシート部8a、レッグ部8d,バックサポート部8eの3分割構成であり、該シート部8aに対して該レッグ部8d及び該バックサポート部8eが傾倒あるいは起立することで、座位姿勢からリクライニング姿勢に姿勢変更可能にしている。そして、
図1などに示すように該上部フレーム8の左右に上下方向に摺動可能にアームサポート部81,81が取着される。
なお、本実施例のようにリクライニング機能が無く座位姿勢のみ可能な構成にしても良く、利用者の身体状況に応じて任意に設定したので良い。
【0022】
次に、ブレーキ機構5の操作方法を説明する。
図10は、後輪4,4が地面に接地し、且つ、後輪4,4のブレーキがかかっていない状態を示している。
この状態では、介助者がハンドル8f,8fを把持して車椅子1を押すことで前輪3,3と後輪4,4が転動して任意の場所まで車椅子1を移動できる。
この状態から、
図11に示すように、後輪4,4が地面に接地した状態で介助者がブレーキ機構5のいずれかのレバー5cを足で踏み込むことで後輪4,4のブレーキがかかった走行不可能状態になる。
詳述すると、介助者が足でブレーキ機構5のいずれかのレバー5cを下方に踏み込むことで前記車体フレーム2のボス2j,2jを回動中心としてブレーキプレート5a,5aが側面視において反時計回りに回動する。
この時、支点板5gも同じ方向に回動するのでロッド5hを介してツナギパイプ5eが側面視において時計回りに引き込まれ、併せて連結片5f,5fも同じ方向に回動する。すると、該連結片5f,5fが後輪4,4の外周部を押圧した状態になり、後輪4,4のブレーキがかかった状態になる。
逆に、
図11に示す状態から
図10に示す状態にする場合は、介助者が足の甲付近でブレーキ機構5のいずれかのレバー5cを上方に跳ね上げることで、ブレーキ機構5を構成する部品がブレーキをかける動きと逆の動きをする。
この時、前述したように連動片5f,5fは弾性体5i,5iによって後輪4,4から離間する方向に付勢されるので走行可能状態においては連動片5f,5fと後輪4,4が接触することは無い。
【0023】
次に、リフトアップ機構6の操作方法を説明する。
まず、
図12(a)及び
図12(b)は介助者が足でペダル部62を踏み込んで自在車輪65,65を地面に接地させるとともに、後輪4,4を地面から離間させた状態を示している。
(なお、
図12~
図15の各図(b)は、
図5(c)で示したように、車体フレーム2の側断面図と同じ位置の側断面図とする。)
詳述すると、介助者が足でペダル部62のペダル本体62aを踏み込むことで第一リンク61の支持プレート61b,61b,・・・に軸着されたペダル部62のボス62b,62bを回動中心としてペダル部62が側面視において反時計周りに回動する。
すると、該ペダル部62の回動に合わせて、該ペダル部62のボス62d,62dの両端に軸着した第二リンク63,63が下方に付勢される。
この時、該第二リンク63,63は前記車体フレーム2のガイドボス2e,2eに摺動可能に取り付けられているため地面方向に略垂下するとともに、該第二リンク63,63の下方に取付けられた自在車輪65,65が地面に接地する。
そこからさらにペダル部62を踏み込むと、前輪3,3が地面に接地した状態で車体フレーム2が上昇し、該車体フレーム2に軸着している後輪4,4を地面から離間することができる。
詳述すると、自在車輪65,65が地面と接地した状態でさらにペダル部62を踏み込むと、ペダル部62のボス62d,62dを回動中心として、該ペダル部62が側面視において反時計回りに回動するとともに、該第一リンク61の支持プレート61b,61bがペダル部62の回動に連動して側面視において時計回りに回動する。
すると、ペダル部62及び第一リンク61の回動に伴い、該第一リンク61を軸着した車体フレーム2が上方に押し上げられる。つまり、車体フレーム2を地面から離間するとともに該車体フレーム2に軸着した後輪4,4を地面から離間することができる。
【0024】
図12(a)及び
図12(b)の状態からさらにペダル部62を踏み込んだ状態を
図13(a)及び
図13(b)で示している。
図12(a)及び
図12(b)で示した状態からさらにペダル部62を踏み込むと、前述したように該ペダル部62が側面視において反時計回りに回動するとともに、該第一リンク61の支持プレート61b,61bがペダル部62の回動に連動して側面視において時計回りに回動する。
そして、該ボス62b,62bと同軸心である前記ローラー62c,62cが補助ペダル部64の支点プレート64b,64bの一端に当接した所でペダル部62と第一リンク61の回動が止まる。
なお、該ローラー62c,62cが該支点プレート64b,64bと当接する位置は該ペダル部62のペダル本体62aと該支持プレート61b,61b,・・・が支点越えをしてから当接している。
この状態になると、介助者がペダル部62から足を離してもペダル部62に何らかの外力を加えて支点越えを解除しない限りペダル部62は元の位置に戻ることができない。つまり、前輪3,3と自在車輪65,65が地面と接地した状態で車椅子1が走行可能となる。
【0025】
次に、自在車輪65,65使用時の、ブレーキ機構5とリフトアップ機構6の関係を説明する。
前述したように、介助者がペダル部62を足で踏み込むと第二リンク63,63が地面に向かって略垂下する。
この時、該第二リンク63,63の係止ピン63e,63eが前記ブレーキプレート5a,5aの係止辺51a,51aに当接して下方に付勢するため、該ブレーキプレート5a,5aが前記ボス2j,2jを回動中心として側面視において反時計回りに回動する。つまり、介助者がレバー5c,5cを踏み込むことでブレーキ機構5を作動させた状態と同じ状態を該係止ピン63e,63eが該係止辺51a,51aを付勢して実現している。
【0026】
なお、本実施例におけるブレーキ機構5は、後輪4,4が地面から離間した状態ではブレーキの解除ができないように構成している。
詳述すると、
図13(a)に示す後輪4,4が地面から離間した状態でいずれか一方のレバー5cを介助者が足の甲付近で跳ね上げようとする。
すると、該ブレーキプレート5a,5aは該ボス2j,2jを回動中心に側面視において時計回りに回動して、該ブレーキプレート5a,5aの係止辺51a,51aによって第二リンク63,63の係止ピン63e,63eを上方に付勢しようとする。
しかし、前述したようにペダル部62は側面視において反時計回りに回動して支点越えをした状態で補助ペダル部64の支点プレート64b,64bに当接することで回動が規制されている。
この状態で、該ブレーキプレート5a,5aの該係止辺51a,51aによって該係止ピン63e,63eを上方に付勢しても、該ボス62d,62dを回動中心としてペダル部62が側面視において反時計回りに回動することになりブレーキ機構5のロックを解除することができない。
つまり、リフトアップ機構6が作動して連接された自在車輪65,65を地面に接地しつつ、後輪4,4が地面から離間した状態では常に後輪4,4にブレーキがかかった状態になっている。
【0027】
次に、一度地面に接地した自在車輪65,65を地面から離間させ、後輪4,4を地面に再接地させる方法を説明する。
まず、
図14(a)及び
図14(b)に示すように補助ペダル部64の補助ペダル本体64aを介助者が足先で踏み込む。
すると、該第一支持プレート2d,2dの孔21d,21dを回動中心として該補助ペダル64が側面視において反時計回りに回動するとともに、該補助ペダル64の支点プレート64b,64bによってペダル部62のローラー62c,62cが側面視において反時計回りに付勢される。
すると、該ローラー62c,62cと同軸心のペダル本体62aと支持プレート61b,61b,・・・の支点越えが解除された状態となり、該ペダル本体62aはボス62dを回動中心に側面視において時計回りに、該支持プレート61b,61b,・・・はボス2m,2mを回動中心に側面視において反時計回りにそれぞれ回動する。
この時、第二リンク63,63と車体フレーム2の間に張設した弾性体63f,63fによって第二リンク63,63が上方に引き上げられることで、自在車輪65,65が地面から離間すると同時に、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、車椅子1が自重で下方に下がり後輪4,4を地面に接地できる。
この
図14から
図15に至る過程で、補助ペダル部64の補助ペダル本体64aを踏み込んでいる介助者の足裏(土踏まず付近)にペダル部62のペダル部本体62aが当接することで一時的に第二リンク63,63の上方への移動を止めている。
この動作によって、車体フレーム2及び後輪4,4など車椅子1を構成する部材が自重によって地面方向に垂下することで、地面に接地した時に受ける衝撃を軽減させることができる。
そして、
図15に示したペダル部62と補助ペダル部64から介助者が足を上方に上げることで、足裏に当接していたペダル本体62aが追従しながら側面視において時計回りに回動し、それに伴って第一リンク61及びペダル部62、第二リンク63、後輪4,4が
図11に示す位置まで戻る。
【0028】
なお、後輪4,4を地面から離間させて再度地面に接地した場合は、
図11に示すようにブレーキ機構5のロックが解除されないまま後輪4,4が地面に接地される。
これは、前述したようにブレーキプレート5a,5aの係止辺51a,51aが
図10などに示すように側面視において上方が解放された形状をしており、該係止ピン63e,63eが上方移動する際は係止辺51a,51aと当接しないためである。
よって、後輪4,4を地面に再接地して再び車椅子1を走行させる場合はブレーキ機構5を操作して後輪4,4のブレーキを解除してから走行する。
【0029】
なお、詳細な説明は省略するが、補助ペダル部64を介助者が足で踏み込まなくても、直接ペダル本体62aを下方から足の甲付近で上方に付勢して後輪4,4を地面に再接地することもできる。
この場合、介助者の足が補助ペダル部64の支点プレート64b,64bの役割を担っている。
この操作は、車椅子1を任意の位置に収納する場合など利用者が車椅子1に搭乗していない時に介助者の作業性を向上させたい時などに効果的である。
【0030】
次に、本実施例を用いた車椅子1を使用して利用者をベッドへ移乗させる手順を説明する。
(1)介助者が利用者を乗せた車椅子1をベッド近傍まで移動させる。
(2)ベッド上面と上部フレーム8のシート部8a上面の高さが違う場合は、昇降機構7を操作してシート部8aを昇降させてベッド上面とシート部8a上面を揃える。もしくは、ベッドに昇降機能が付いている場合はベッドを昇降させてシート部8aと高さを揃える。(この時、
図4に示したように、メモリー機能付きのコントロールボックス732を使用することで、予め目標とするベッド上面の高さで上部フレーム8のシート部8aの上面が停止するように設定しておくと、操作スイッチ731の上昇ボタンを押し続けるだけでベッド上面の高さでシート部8aの上面を自動的に停止させることができる。なお、この動作は必要な場合に行う。)
(3)介助者がペダル部62を踏み込んで自在車輪65,65を地面に接地させるとともに、後輪4,4を地面から離間させる。
(4)ベッドの長手方向と車椅子1の側部を接近させて車椅子1をベッドに横付けして、ベッドに近接した側のアームサポート部81を下げる。
(5)介助者が足で補助ペダル部64を踏み込み、且つ、ペダル部62の跳ね返りを足裏で受け止め、徐々に足を上方に移動させながらペダル部62を元の位置に戻して自在車輪65,65を地面から離間させるとともに後輪4,4を地面に再接地させる。(なお、後輪4,4のブレーキのみで車椅子1が動かないようになっているが、より安全に配慮する必要がある場合など前輪3,3のブレーキ31をかけても良い。)
(6)バックサポート部8eを倒して車椅子1をリクライニング姿勢にして利用者を仰臥位姿勢にする。
(7)移乗シート(図示省略)を利用者の下に敷き込み、介助者が利用者の身体を支えながら横滑りさせるようにしてベッドに移乗させる。(なお、移乗シートが無い場合は介助者が2名で抱きかかえながら移乗させても良く、その場の状況に応じて最適な方法で移乗させたので良い。)
(8)利用者がベッドに移乗した後は、車椅子1をリクライニング姿勢から座位姿勢に戻し、アームサポート部81を戻し、前輪3,3のブレーキ31を解除し、ブレーキ機構5のレバー5cを介助者が足で跳ね上げて後輪4,4のブレーキを解除してから所定の場所に移動して保管する。
なお、この説明では座位姿勢をとることが困難な利用者を移乗させるために車椅子1をリクライニング姿勢にしたが、座位が取れる利用者の場合はリクライニング姿勢にさせる必要は無い。例えば、座位姿勢でベッドに移乗する場合は、移乗シート(図示省略)をベッドの上面とシート部8aの上面に橋渡しのように載置して移乗するようにしても良い。つまり、利用者の身体状況に合わせて最適な移乗方法を選択したので良い。
また、ベッドから車椅子1への移乗手順については前述した車椅子1からベッドへの移乗手順の逆の手順で実施したので良い。
【0031】
このように本実施例を使用した車椅子1には以下の利点がある。
まず、手順(3)の場面で後輪4,4が地面から離間すると同時に後輪4,4にブレーキがかかることで、手順(5)の場面で一度離間させた後輪4,4を地面に再接地した時に介助者が直接ブレーキ機構5のレバー5cを解除するまで車椅子1が走行できないようにしている。これは、ベッドに横付けして利用者の移乗介助を始めた時に、万が一ブレーキの掛け忘れることで車椅子が急に動き出して利用者がバランスを崩して転落するのを未然に防ぎ、より安全に使用することができる。また、地面から離間させた後輪4,4のブレーキがかかっていることで、介助者や利用者の身体が不意に地面から離間した後輪4,4にぶつかるなどして動き出してしまい、マットやシーツ、衣服などが巻き込まれるのを未然に防ぐことができる。よって、介助者が利用者の移乗動作に集中することができるため、作業の煩わしさの軽減や周囲の安全に気を配るなどの身体的負担を軽減することができる。
また、手順(5)で介助者が補助ペダル部64を踏み込むことで、車椅子1が自在車輪65,65から後輪4,4走行に切り替わる時に利用者が身体に受ける衝撃の緩和や精神的な不安感を軽減させつつ、車椅子1自体も、切り替え時に介助者の足で負荷を一時的に受け止めることで後輪4,4及び車体フレーム2をはじめとする各構成部材が受ける衝撃荷重を軽減させることができるため使用上の破損リスクを軽減させることができる。
また、手順(2)で昇降機構7を昇降させて上部フレーム8のシート部8a上面をベッドの上面に揃えている。これは、ブレーキ機構5とリフトアップ機構6が車体フレーム2にのみ取付けられていることから車体フレーム2と上部フレーム8の間に自由度があり昇降機構7を配設可能にしているためである。この昇降機構7を具備した車椅子1を使用して上部フレーム8の高さを任意に調節できることで、利用者の生活の幅が広がるメリットや、介助者の身体的負担の軽減はもちろん、適宜新しくベッドを買い替える必要が無く介護にかかる経済的な負担も軽減することができる。
さらに、手順(2)で昇降機構7を昇降させる際に、コントールボックス732にメモリー機能が具備され、任意の昇降位置でシート部8aの高さを自動で停止させることができるように構成されることで、都度、シート部8aの高さとベッドの上面の高さを介助者が確認しながら昇降操作する必要が無くなるため、介助者の負担を軽減させることができる。
そして、リフトアップ機構6を介助者が自ら足踏みして操作する足踏み式から電動式にすることで、特に、下肢の弱った介助者にとっては楽に操作することができる。
【0032】
なお、前述したように車椅子1のブレーキ機構5及びリフトアップ機構6は
図10などに示すように車体フレーム2にのみ取付けられて構成している。
このように構成することで、本実施例のように座面昇降機能が具備された車椅子のみならず、一般的な座面昇降機能が具備されていない車椅子、及び、患者を搬送するために使用されるストレッチャーにも使用することができる。
つまり、ブレーキ機構5及びリフトアップ機構6が具備可能な車椅子及びストレッチャーであれば本実施例に限定しなくても良く使用者が任意に設定することができる。
【0033】
また、本実施例における車椅子1では、リフトアップ機構6のペダル部62及び補助ペダル部64を介助者が足で踏み込むことで駆動させているが、介助者の足で踏み込まなくてもペダル部62及び補助ペダル部64を操作することができる。
詳細な説明は省略するが、例えばペダル部62もしくは補助ペダル部64にアクチュエーターなどの伸縮手段の一端を取着するとともに、他端を車体フレーム2に取着し、操作スイッチ731を操作して該伸縮手段を駆動させることで介助者が足でペダル部62を踏み込む動作と同等の効果を発揮させることもできる。なお、ペダル部62と補助ペダル部64のいずれか一方、あるいは、両方に伸縮手段を取着しても良く、利用者が求める仕様にしたので良い。
つまり、介助者が要求する仕様に合わせて本実施例におけるリフトアップ機構6を設定することができる。