(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072951
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】色素増感型太陽電池用封止材
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01G9/20 303A
H01G9/20 303B
H01G9/20 119
H01G9/20 113A
H01G9/20 113B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182668
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】大橋 侑利
(72)【発明者】
【氏名】星野 勇門
(72)【発明者】
【氏名】原田 航
(57)【要約】
【課題】
塗工性に優れた色素増感型太陽電池用封止材を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、アクリル樹脂成分とロジン系樹脂とを含有する色素増感型太陽電池用封止材を提供する。前記封止材の塗工時粘度維持率は15%以下であってよい。前記封止材の塗工時粘度回復率は40%以上であってよい。前記封止材の塗工前粘度は例えば25,000mPa・s以上であり、前記封止材の塗工後粘度は例えば23,500mPa・s以上でありうる。前記封止材は、5μm~100μmの厚みとなるように基材に塗工されるものであってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂成分とロジン系樹脂とを含有する色素増感型太陽電池用封止材。
【請求項2】
前記封止材の塗工時粘度維持率が15%以下である、請求項1に記載の封止材。
【請求項3】
前記封止材の塗工時粘度回復率が40%以上である、請求項1又は2に記載の封止材。
【請求項4】
前記封止材の塗工前粘度が、25,000mPa・s以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項5】
前記封止材の塗工後粘度が、23,500mPa・s以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項6】
前記封止材は、5μm~100μmの厚みとなるように基材に塗工されるものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項7】
前記色素増感型太陽電池を構成する導電性基板対の間に配置される電解液又は固体電解質を封止するために用いられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項8】
前記導電性基板対の間の距離は、5μm~100μmである、請求項7に記載の封止材。
【請求項9】
前記アクリル樹脂成分は、光硬化性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の封止材。
【請求項10】
前記アクリル樹脂成分は、
成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池用封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
色素増感型太陽電池は、色素を利用して光エネルギーを電気に変換する太陽電池であり、次世代型太陽電池として注目されている。色素増感型太陽電池は、一般に2枚の導電性基板の間に電解液が封入された構造を有する。電解液を封入するために用いられる封止材に関して、これまでいくつかの技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、(A)分子内に炭素数10~20の直鎖脂肪族炭化水素を有する(メタ)アクリレート 100重量部、(B)脂環式(メタ)アクリレート 5~15重量部、(C)特定の一般式で示されるスチレン系熱可塑性エラストマー 10重量部以上、及び、(D)光重合開始剤を主成分とする光硬化性の色素増感型太陽電池用シール剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色素増感型太陽電池を設計されたとおりに製造するために、封止材の塗工性が良好であることが求められる。例えば前記電解液が存在する空間を設計されたとおりに規定するために又は2枚の導電性基板の間の間隔を設計されたとおりの距離とするために、導電性基板の所望の位置に所望の量又は厚みで、封止材が塗布されることが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、塗工性に優れた封止材を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の封止材が塗工性に優れていることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、アクリル樹脂成分とロジン系樹脂とを含有する色素増感型太陽電池用封止材を提供する。
前記封止材の塗工時粘度維持率は15%以下であってよい。
前記封止材の塗工時粘度回復率は40%以上であってよい。
前記封止材の塗工前粘度は、25,000mPa・s以上であってよい。
前記封止材の塗工後粘度は、23,500mPa・s以上であってよい。
前記封止材は、5μm~100μmの厚みとなるように基材に塗工されるものであってよい。
前記封止材は、前記色素増感型太陽電池を構成する導電性基板対の間に配置される電解液又は固体電解質を封止するために用いられてよい。
前記導電性基板対の間の距離は、5μm~100μmであってよい。
前記アクリル樹脂成分は、光硬化性でありうる。
前記アクリル樹脂成分は、
成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び
成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマー、
を含みうる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、塗工性に優れた封止材が提供される。当該封止材は、色素増感型太陽電池を製造するために適している。例えば、本発明の封止材の優れた塗工性によって、設計されたとおりに色素増感型太陽電池を製造することが可能となり、例えば品質の均一化に貢献する。
また、当該封止材は、塗工性に加えて、接着性にも優れている。本発明の封止材の優れた接着性によって、基材界面からの電解液や水蒸気侵入を抑制することができ、例えば品質の向上に貢献する。例えば、電解液の漏洩は光エネルギーの電気への変換効率をもたらしうるところ、本発明の封止材は接着性にも優れているので、当該漏洩を防ぐことができる。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】色素増感型太陽電池の構造の例を示す図である。
【
図2】色素増感型太陽電池の製造方法の例を示す図である。
【
図3】封止材物性の決定の仕方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0012】
1.本発明の封止材の説明
【0013】
本発明の封止材は、アクリル樹脂成分とロジン系樹脂とを含有する。本発明の封止材は、これら2成分の組合せによって、特にはロジン系樹脂を含むことによって、塗工性に優れている。さらに、本発明の封止材は、塗工性に加えて接着性にも優れている。そのため、本発明の封止材は、色素増感型太陽電池の製造において使用するために適している。また、これら2成分の組合せによって、特にはロジン系樹脂によって、本発明の封止材の塗工時粘度維持率及び/又は塗工時粘度回復率が、基板への塗工のために適した値となり、これは色素増感型太陽電池の製造にとって好ましい。
【0014】
まず、
図1を参照しながら色素増感型太陽電池について説明する。
図1は、色素増感型太陽電池の断面の一例を模式的に示す図である。
図1に示される色素増感型太陽電池100は、透明導電膜(Transparent Conducting Oxide、TCO)102を積層された透明基板101を有する。透明導電膜102の、透明基板101との接触面と反対側の面に、金属酸化物半導体粒子104から形成される多孔質な金属酸化物半導体層103が形成されている。金属酸化物半導体層103は、例えば多孔質酸化チタンなどの金属酸化物半導体粒子を焼き付けることにより形成されうる。金属酸化物半導体粒子104には色素105が吸着している。また、透明基板101と向かい合うように、基板106が配置され、基板106の透明基板101側の面に導電膜107が積層されている。透明導電膜102と導電膜107との間の空間108が、電解液により満たされている。当該電解液を空間108内に封入するために、封止材109が設けられている。封止材109は、透明導電膜102及び導電膜107に接着されている。
色素増感型太陽電池100に照射された光は、透明基板101及び透明導電膜102を透過して、金属酸化物半導体層103に到達する。当該光は、金属酸化物半導体層103の色素105により吸収され、色素105から電子が放出される。当該電子は、金属酸化物半導体層103に移動し、透明導電膜102を伝わり、そして、回路110を通って、対極の導電膜107に到達する。当該電子によって還元反応が起こり、電解液中に例えばヨウ化物イオン(I
-)が生成される。当該ヨウ化物イオンは、色素105に電子を渡して、再度酸化される。以上のサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
なお、電解液の代わりに、固体の電解質が採用されてもよい。固体の電解質を用いた色素増感型太陽電池は、全固体型の色素増感型太陽電池とも呼ばれる。
【0015】
色素増感型太陽電池100において、封止材109によって電解液が存在する空間が規定される。設計されたとおりに当該空間を設けるために、封止材109の塗工性は重要である。この塗工性は、色素増感型太陽電池が全固体型であっても重要である。
また、封止材109と透明導電膜102又は導電膜107との接着性が悪い場合は、電解液の漏洩が起こり又は外部の水分又は空気が電解液と接触しうる。当該漏洩及び当該接触も、光の電気への変換効率の低下をもたらすので望ましくない。
本発明の封止材は、優れた塗工性を有し、さらには接着性にも優れている。そのため、本発明の封止材は、色素増感型太陽電池の前記2つの導電膜を接着するための封止材として用いるために、特には当該接着によって電解液又は固体電解質が存在する空間を規定するための封止材として使用するために適している。
【0016】
2.封止材の物性
【0017】
好ましい実施態様において、本発明の封止材の塗工時粘度維持率は、好ましくは15%以下、より好ましくは14%以下、さらにより好ましくは13%以下であってよい。塗工時粘度維持率がこのように低いことによって、すなわち塗工時の粘度低下幅がこのように大きいことによって、封止材を塗布する際の塗り易さが向上する。
色素増感型太陽電池の2枚の導電性基板の間の距離は例えば5μm~100μmであり、この距離を実現するように封止材を非常に薄く基板に塗布することが求められる。塗工時粘度維持率がこのように低いことによって、塗布行為による応力によって封止材の粘度が下がり、非常に薄く封止材を塗布するために適した粘度が実現される。
本発明の封止材の塗工時粘度維持率の下限値は特に設定されなくてよいが、例えば1%以上、2%以上、又は3%以上であってよい。
【0018】
本明細書内において「塗工時粘度維持率」は、レオメータを用いて測定される封止材の粘度測定結果に基づき算出される値である。算出方法を以下に説明する。
【0019】
封止材の粘度を、レオメータを用いて、以下の測定条件下で測定する。当該測定では、以下のステップ1~4が実行される。測定手順は以下に示されるとおりであってよい。
【0020】
<測定条件>
レオメータ:MCR102、アントンパール・ジャパン社
使用治具:PP50(パラレルプレート50mm直径)
温度:23℃
各ステップにおける回転数(せん断速度/時間):
ステップ1:0.2[1/s]/180秒(粘度値を安定させるための予備ステップ)
ステップ2:0.2[1/s]/30秒(低せん断速度ステップ:塗工前に相当する)
ステップ3:50[1/s]/10秒(高せん断速度ステップ:塗工時に相当する)
ステップ4:0.2[1/s]/171.3秒(低せん断速度ステップ:塗工後に相当する)
試料載置部(ディッシュ)とパラレルプレートとの間のギャップ:0.5mm
なお、当該ギャップは、色素増感型太陽電池の製造において封止材が施与されるときの封止材厚みよりも大きいが、このギャップを採用して測定された粘度に基づき塗工性を評価することができる。また、当該ギャップによって、粘度測定における試料載置部とパラレルプレートとの接触を回避することができ、さらに、粘度測定時に試料にかかる遠心力によって試料が外に飛び出すことを防ぐこともできる。
【0021】
<測定手順>
まず、前記レオメータに、前記使用治具PP50をセットする。
次に、前記温度で前記ステップ1~4が連続的に実行されるように、前記レオメータを設定する。当該設定は、前記レオメータの取扱説明書に従い行うことができる。
前記設定後、前記レオメータの試料載置部上に、測定対象となる封止材が約1mL配置される。次に、前記ステップ1~4を実行する。各Stepにおいて、粘度が測定される。
【0022】
各ステップについて以下で、
図3を参照しながら説明する。
図3は、上記で述べた測定による測定結果を、時間に対する封止材の粘度値のプロットとして表した図である。
前記ステップ1は、封止材の粘度値を安定させるための予備ステップである。前記ステップ1では、例えば30秒毎に粘度が6回測定される。このステップでは、粘度値が安定することが確認できればよいので、粘度測定間隔は適宜変更されてもよい。ステップ1は、
図3の0~180秒の区間に相当する。このステップでは、
図3に示されるとおり、最初に測定される粘度値から徐々に粘度値は低下し、その後安定化する。
前記ステップ2は、塗工前の封止材の状態を模擬するステップである。このステップでは、上記のとおりの低いせん断速度が採用される。前記ステップ2では、ステップ1の最後の測定から30秒経過した時点で1回粘度が測定される。前記ステップ2は、
図3の180秒~210秒の区間に相当する。このステップでは、
図3に示されるとおり、粘度値は安定化した状態が維持される。
前記ステップ3は、塗工時の封止材の状態を模擬するステップである。このステップでは、上記のとおりの高いせん断速度が採用される。前記Step3では、1秒毎に10回粘度が測定される。このステップでは、封止材の内部構造崩壊により、封止材の粘度が急激に低下しうる。前記ステップ3は、
図3の210秒~220秒の区間に相当する。
図3に示されるように、このステップにおいて、粘度値は急激に低下する。
前記ステップ4は、塗工後の封止材の状態を模擬するステップである。このステップでは、上記のとおりの低いせん断速度が採用される。前記Step4では、合計12回の粘度測定が行われる。測定間隔は、ステップ3の最後の測定からステップ4の最初の測定の間の間隔が5秒間であり且つ最後の2回の測定の間隔が30秒であるように、対数的に増加させる。具体的な測定間隔は以下のとおりである。
前測定点~1点目:5秒
1点目~2点目:5.9秒
2点目~3点目:6.9秒
3点目以降:8.2秒、9.6秒、11.2秒、13.3秒、15.7秒、18.4秒、21.6秒、25.5秒、30秒。
前記ステップ4では、塗工終了後の封止材の内部構造の回復に伴い、封止材の粘度が上昇する。前記ステップ4は、
図3の220秒以降の区間に相当する。
図4に示されるとおり、このステップにおいて、粘度値は上昇し、そして、その後安定化する。このステップの初期においては粘度変化が大きい為、比較的細かい測定間隔(例えば5秒など)を採用することで粘度変化を追いやすくし、時間の経過に伴い、粘度が安定してきて変化が少なくなるので、測定間隔が増加される。
【0023】
本明細書内において用いられる塗工時粘度維持率は、以下の式によって算出される。
「塗工時粘度維持率(%)」=(前記ステップ3において最後に測定された粘度値)/(前記ステップ2において測定された粘度値)×100
例えば
図3に示される粘度測定結果が得られた場合、塗工時粘度維持率は、(t2におけるη2)/(t1におけるη1)×100である。
このように、塗工時粘度維持率は、塗工開始に伴い封止材に与えられる応力によって封止材の粘度がどの程度低下するかを示す指標である。
【0024】
好ましい実施態様において、本発明の封止材の塗工時粘度回復率は、好ましくは40%以上、より好ましくは43%以上、さらにより好ましくは45%以上であってよい。塗工時粘度回復率がこのように高いことによって、すなわち塗工終了時の粘度上昇幅がこのように大きいことで、封止材塗布時の封止材の形状が保持されやすい。
色素増感型太陽電池の導電性基板に施与される封止材は、設計されたとおりの領域に留まることが望ましい。上記で述べた通り塗工時粘度維持率が低いことによって塗布のしやすさは向上するが、塗工時の粘度が塗工後においても維持されると、封止材が塗布された領域から広がるおそれがあり、さらには、2枚の導電性基板を貼り合わせたときに、これら基板の間の距離が設計されたとおりにならないおそれもある。そのため、封止材の粘度は、塗工後に急速に回復することが望ましい。塗工時粘度回復率が上記のとおりに高いことによって、塗布後に封止材の粘度が急速に上がり、塗布後の封止材を所望の形状で維持することができる。
本発明の封止材の塗工時粘度回復率の上限値は特に設定されなくてよいが、例えば90%以下、80%以下、又は70%以下であってよい。
【0025】
本明細書内において「塗工時粘度回復率」は、上記で述べた「塗工時粘度維持率」の算出のために用いられた封止材粘度測定結果を用いて、以下の式により算出される。
「塗工時粘度回復率(%)」={(前記ステップ4の開始後5秒で測定された粘度値)-(前記ステップ3において最後に測定された粘度値)}/(前記ステップ3において最後に測定された粘度値)×100
例えば
図3に示される粘度測定結果が得られた場合、塗工時粘度回復率は、{(t3におけるη3)-(t2におけるη2)}/(t2におけるη2)×100である。
このように、塗工時粘度回復率は、塗工終了後5秒間で封止材の粘度がどの程度上昇するかを示す指標である。
【0026】
本発明の特に好ましい実施態様において、封止材の塗工時粘度維持率が上記で述べた数値範囲内にあり(例えば15%以下である)、且つ、封止材の塗工時回復率が上記で述べた数値範囲内にある(例えば40%以上である)。封止材がこのような物性を有することによって、塗布しやすく且つ塗布後の封止材形状が維持される。そのため、この実施態様に従う封止材は、設計されたとおりの領域に設計されたとおりの量で塗布されることが求められる色素増感型太陽電池の導電性基板対の接着のために特に適している。
【0027】
本発明の封止材の塗工前粘度は、例えば25,000mPa・s以上であり、より好ましくは30,000mPa・s以上、40,000mPa・s以上、50,000mPa・s以上、70,000mPa・s以上、又は100,000mPa・s以上であってよい。
本発明の封止材の塗工前粘度は、例えば1,000,000mPa・s以下であり、好ましくは800,000mPa・s以下であり、より好ましくは700,000mPa・s以下、500,000mPa・s以下以上、300,000mPa・s以下、100,000mPa・s以下、80,000mPa・s以下、又は50,000mPa・s以下であってよい。
本明細書内において、「塗工前粘度」は、上記で述べた塗工時粘度維持率の算出のために用いられた封止材粘度測定結果のうち、前記ステップ2において最後に測定された粘度値である。例えば
図3に示される粘度測定結果が得られた場合、塗工前粘度は、t1におけるη1である。
【0028】
本発明の封止材の塗工後粘度は、例えば23,500mPa・s以上であり、好ましくは25,000mPa・s以上であり、より好ましくは28,500mPa・s以上であり、さらにより好ましくは35,500mPa・s以上、39,500mPa・s以上、42,500mPa・s以上、46,500mPa・s以上、又は49,500mPa・s以上であってよい。
本発明の封止材の塗工後粘度は、例えば800,000mPa・s以下であり、好ましくは640,000mPa・s以下であり、より好ましくは560,000mPa・s以下、400,000mPa・s以下以上、240,000mPa・s以下、80,000mPa・s以下、64,000mPa・s以下、又は40,000mPa・s以下であってよい。
本明細書内において、「塗工後粘度」は、上記で述べた塗工時粘度維持率の算出のために用いられた封止材粘度測定結果のうち、前記ステップ4において最後に測定された粘度値である。例えば
図3に示される粘度測定結果が得られた場合、塗工後粘度は、η4である。
【0029】
3.封止材の組成
【0030】
本発明の封止材は、上記で述べた通り、アクリル樹脂成分とロジン系樹脂とを含む。以下で、本発明の封止材の組成の例について説明する。
【0031】
<アクリル樹脂成分>
【0032】
前記アクリル樹脂成分は、光硬化性であってよい。すなわち、本発明の封止材は、光硬化性のアクリル樹脂成分を含んでよく、当該封止材は光により硬化可能な組成物であってよい。当該封止材は、光硬化のために、光重合開始剤をさらに含んでよい。
【0033】
前記アクリル樹脂成分は、例えば、成分(A):ホモポリマーの場合のTgが100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び成分(B):極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。さらに、前記アクリル樹脂成分は、成分(C):(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含んでもよい。本発明の封止材は、これら成分(A)及び(B)又は成分(A)、(B)、及び(C)を含むことによって、接着性に優れている。さらに硬化後の封止材の透湿度も低くなる。成分(A)、(B)、及び(C)は、いずれも光硬化性であってよい。
【0034】
好ましい実施態様において、前記封止材に含まれる成分(A)及び成分(C)の質量比は例えば60:40~100:0である。また、前記封止材は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含みうる。これらの含有質量比によって、接着性がさらに向上される。さらに、これらの含有質量比によって、硬化後の封止材の透湿度も低くなる
【0035】
本発明において、(メタ)アクリレートモノマーとは、アクリレートモノマー若しくはメタクリレートモノマー又はこれらの混合物を意味する。
本発明において、単官能とは、1つの分子が光重合性の炭素-炭素二重結合を1つ有することを意味し、すなわちアクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有することを意味する。すなわち、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、1つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するモノマーである。
本発明において、脂環式とは、1つの分子内に1つの分子内に1つの脂環式炭化水素基を有することを意味する。すなわち、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、エステル残基〔-C(=O)ORのR〕が脂環式炭化水素基である単官能(メタ)アクリレートである。好ましくは、当該脂環式炭化水素基は、カルボキシル基、エポキシ基、リン酸エステル基、及びハロゲン基などの極性基を有していない脂環式炭化水素基である。
【0036】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、ホモポリマーの場合のTgが100℃以上であり、好ましくは105℃以上、より好ましくは110℃以上、さらにより好ましくは115℃以上である。このようなTgを有する脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーを前記成分(B)と前記比率で組み合わせることによって、低い透湿性及び高い接着性を達成することができる。Tgが100℃以上であることは、特に透湿性を低めることに寄与する。
また、前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーのTgは、例えば260℃以下であり、特には230℃以下であり、より特には200℃以下であってよい。
本発明において、Tgは、1つの脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーのみから構成されるホモポリマーのTgであり、示差走査熱量計(DSC)により測定される。
【0037】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくはジシクロペンタニル構造、ジシクロペンテニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものであり、より好ましくはジシクロペンタニル構造、アダマンチル構造、又はイソボルニル構造を有するものである。すなわち、当該モノマーに含まれる脂環式炭化水素基が、好ましくはジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、又はイソボルニル基である。前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーに含まれる脂環式炭化水素基がこれらの構造のいずれかであることが、封止材の透湿性の低下及び接着性の向上に寄与する。
【0038】
前記成分(A)の脂環式単官能(メタ)アクリレートモノマーの全炭素数は、好ましくは13以上であり、より好ましくは13~16、さらにより好ましくは13~15、特に好ましくは13又は14である。これにより、封止材の透湿性がより低くなり且つ接着性がより高まる。
【0039】
前記成分(A)として用いられる好ましい化合物として、例えば以下を挙げることができる:
イソボルニルメタクリレート(Tg:110℃)、
ジシクロペンテニルアクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンテニルメタクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンタニルアクリレート(Tg:120℃)、
ジシクロペンタニルメタクリレート(Tg:175℃)、
1-アダマンチルアクリレート(Tg:153℃)、
1-アダマンチルメタクリレート(Tg:250℃)、
2-メチルアダマンチルアクリレート(Tg:120℃)、及び
2-メチルアダマンチルメタクリレート(Tg:170℃)。
本発明において、前記成分(A)として、これらの化合物のうちの1つが用いられてよく又は2つ以上の組み合わせが用いられてもよい。
本発明の特に好ましい実施態様において、前記成分(A)は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト及び/又はジシクロペンテニル(メタ)アクリレートである。本発明の特に好ましい実施態様において、前記成分(A)は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-トである。
【0040】
前記成分(B)の(メタ)アクリレートモノマーが有する極性基は、好ましくはカルボキシル基、リン酸基、水酸基、又はアミノ基であり、より好ましくはカルボキシル基又はリン酸基である。特には、前記成分(B)は脂環式の(メタ)アクリレートモノマーでない。極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを前記成分(A)と前記比率で組み合わせることによって、低い透湿性及び高い接着性を達成することができる。極性基は、特に接着性を高めることに寄与する。
【0041】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、及び2-ヒドロキシエチルフタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)を挙げることができる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートとして、これら化合物のうちの1つが用いられてよく又は2以上の組み合わせが用いられてもよい。
【0042】
リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、例えば、リン酸(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、及びリン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)を挙げることができる。リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとして、これら化合物のうちの1つが用いられてよく又は2以上の組み合わせが用いられてもよい。
【0043】
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記成分(B)は、リン酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはリン酸(2-アクリロイルオキシエチル)、リン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)、リン酸ビス(2-アクリロイルオキシエチル)、及びリン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)のうちから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであり、さらにより好ましくはリン酸(2-アクリロイルオキシエチル)及び/又はリン酸(2-メタクリロイルオキシエチル)である。
【0044】
本発明の封止材に含まれるアクリル樹脂成分のうち成分(C)の量は0質量部であってよく、すなわち、アクリル樹脂成分は成分(C)を含まなくてもよい。この場合、成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して例えば0.01質量部~10質量部、好ましくは0.05質量部~10質量部、より好ましくは1~5質量部でありうる。このような質量比で前記成分(A)及び前記成分(B)を含むことによって、本発明の封止材は、低い透湿性と高い接着性とを両立することができる。
前記アクリル樹脂成分が成分(C)を含まない場合、本発明の封止材は成分(A)及び成分(B)のみを光硬化性成分として含みうる。
【0045】
前記アクリル樹脂成分はさらに、成分(C)として、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を含む多官能光硬化性成分を含んでもよい。成分(C)は、成分(A)及び成分(B)以外の光硬化性成分である。成分(C)のより具体的な化合物は、以下に記載されているとおりである。成分(C)として、これら化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせ(例えば2つ又は3つの組み合わせ)を用いることができる。成分(C)を含むことにより、本発明の封止材の硬化物の透湿性の低下及び接着性の向上をもたらすことができる。特には、成分(C)が多官能であることが、当該硬化物の透湿性の低下及び接着性の向上に寄与していると考えられる。本発明において、多官能とは、前記群に含まれる官能基を合計で例えば2つ以上、特には2~20、より特には2~10有することを意味してよい。
成分(C)を含むことは、本発明の封止材の硬化物のフレキシブル性の向上の観点からも好ましい。当該向上されたフレキシブル性は、フレキシブルな太陽電池を製造するために有益である。
【0046】
前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば(メタ)アクリロリル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、前記(メタ)アクリロリル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、(メタ)アクリロイル基を1つ有し且つエポキシ基又はオキセタニル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、及び(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
また、(メタ)アクリロリル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ有する光硬化性成分として、例えば、ポリエーテル系多官能ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル系多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、シリコン系多官能(メタ)アクリレート、ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート(特には水添ポリブタジエン系ウレタンアクリレート)、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、及び水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの化合物に含まれる官能基の数は、例えば2~6である。
以上で述べた化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0047】
前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えばビニルエーテル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ、特に好ましくは2つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、及びトリエチレングリコールジビニルエーテルを挙げることができる。
また、前記ビニルエーテル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、ビニルエーテル基を1つ有し且つエポキシ基又は(メタ)アクリロイル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0048】
前記エポキシ基を含有する多官能光硬化性成分として、エポキシ基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ、特に好ましくは2つ有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリグリセリンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性 3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及びビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートを挙げることができる。
また、前記エポキシ基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば多官能エポキシ樹脂を挙げることができ、より具体的にはエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂を挙げることができる。
エポキシ基を2つ以上(特には2つ)有するエポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールF型多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型多官能エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型多官能エポキシ樹脂、及びビフェニル型多官能エポキシ樹脂を挙げることができる。
また、エポキシ基を2つ以上(特には3つ以上)有するエポキシ樹脂として、例えばナフタレン型多官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型多官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、ゴム変性型多官能エポキシ樹脂、キレート変性型多官能エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂、及び多官能エポキシ化ポリブタジエンを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0049】
前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、例えば、オキセタニル基を2つ以上、好ましくは2つ~6つ、より好ましくは2つ~4つ有する光硬化性成分を挙げることができる。前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、より具体的には、キシリレンビスオキセタン及び3-エチル-3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル]オキセタンを挙げることができる。
また、前記オキセタニル基を含有する多官能光硬化性成分として、オキセタニル基を1つ有し且つエポキシ基又はビニルエーテル基を1つ有する光硬化性成分、すなわち2種の官能基を有する光硬化性成分を挙げることができる。当該光硬化性成分として、より具体的には、3‐エチル‐3‐(グリシジルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(オキシラニルメトキシ)オキセタン、及び3-エチル-3-(ビニルオキシメチル)オキセタンを挙げることができる。
これらのうちの1つ又は2つ以上の組み合わせを、成分(C)として用いてよい。
【0050】
特に好ましくは、前記成分(C)は、(メタ)アクリロイル基を含有する多官能光硬化性成分であり、より好ましくはポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン系多官能(メタ)アクリレート、ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレート、水添ポリイソプレン系多官能(メタ)アクリレートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
【0051】
本発明の封止材が前記成分(C)を含む場合、好ましくは、成分(A):成分(C)の質量比が60:40~100未満:0超であり、且つ、前記封止材は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.01~10質量部含む。
成分(A):成分(C)の質量比は、より好ましくは60:40~99.9:0.1であり、より好ましくは60:40~99:1であり、より好ましくは63:37~98:2であり、さらにより好ましくは65:35~95:5であり、特に好ましくは70:30~85:15である。
成分(B)の含有量は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、より好ましくは0.03~10質量部であり、特に好ましくは0.05~10質量部である。
例えば、本発明の封止材が前記成分(C)を含む場合、成分(A):成分(C)の質量比が70:30~85:15であり、且つ、前記封止材は、成分(A)及び(C)の合計100質量部に対し、成分(B)を0.05~10質量部含む。
本発明の封止材が前記成分(C)を含む場合における、成分(A)及び成分(C)の上記質量比は、成分(A)及び成分(C)の合計質量を100質量部とした場合の、当該100質量部の内訳である。また、本発明の光硬化性組成物が成分(C)を含む場合における成分(B)の含有量は、成分(A)及び成分(C)の合計質量を100質量部とした場合の当該100質量部に対する量である。
成分(A)~(C)に関する上記質量比が、透湿性の低下、接着性の向上、及び硬化物のフレキシブル性の向上の観点から特に好ましい。
前記アクリル樹脂成分が成分(C)を含む場合、本発明の封止材は成分(A)、成分(B)、及び成分(C)のみを光硬化性成分として含みうる。
【0052】
前記封止材の全質量に対する前記アクリル樹脂成分の合計含有割合は、好ましくは20質量%~99.9質量%であり、より好ましくは30質量%~99.8質量%であり、より好ましくは50質量%~99.5質量%、さらにより好ましくは80質量%~99.5質量%、特に好ましくは90質量%~99.5質量%でありうる。アクリル樹脂成分の合計含有割合が低すぎる場合は、硬化が不十分となる場合がある。
【0053】
<光重合開始剤>
【0054】
本発明の封止材は、さらに光重合開始剤を含んでよい。本発明において、光重合開始剤として、好ましくはアシルフォスフィンオキサイド系、α‐アミノアセトフェノン系、α‐ヒドロキシアセトフェノン系、又はオキシムエステル系の光重合開始剤が用いられ、より好ましくはアシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤を用いられる。
アシルフォスフィンオキサイド系の光重合開始剤として、例えばビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドを挙げることができる。特に好ましくは、本発明において、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが光重合開始剤として用いられる。
α‐アミノアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンを挙げることができる。
α‐ヒドロキシアセトフェノン系の光重合開始剤として、例えば1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及び2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンを挙げることができる。
オキシムエステル系の光重合開始剤として、例えば1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、及び、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)を挙げることができる。
【0055】
前記光重合開始剤の前記封止材中の含有量は、前記アクリル樹脂成分100質量部に対して、例えば0.01質量部~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.1質量部~8質量部の範囲内であり、より好ましくは0.2~5質量部の範囲内にある。
【0056】
<ロジン系樹脂>
【0057】
本発明の封止材はロジン系樹脂を含む。ロジンはマツ科植物に多量に含まれる松ヤニの不揮発成分であり、樹脂酸と呼ばれる炭素数20の三環式ジテルペノイド異性体を主成分としている。
また、ロジンは製法によりトールロジン、ガムロジン、又はウッドロジンに分類される。本発明の封止材に含まれるロジン系樹脂は、トールロジン、ガムロジン、及びウッドロジンのうちのいずれかであってよい。好ましい実施態様において、前記ロジン系樹脂はガムロジンである。ガムロジンによって、例えば前記封止材の接着性を向上させることに貢献しうる。
ロジン系樹脂は、ロジン樹脂及びロジン誘導体樹脂を包含する。前記ロジン誘導体樹脂は、例えば水添ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、及びエステル化ロジン樹脂を包含する。本発明の封止材に含まれるロジン系樹脂は、ロジン樹脂又はロジン誘導体樹脂であってよい。好ましい実施態様において、前記ロジン系樹脂は、エステル化ロジン樹脂であり、より具体的には非水添エステル化ロジン樹脂又は水添エステル化ロジン樹脂であり、これらロジン系樹脂は、例えば前記封止材の接着性を向上させることに貢献しうる。これらロジン系樹脂として、市販入手可能なものを利用することができ、例えばペンセルGA-100、エステルガムAA-G、及びエステルガムATを挙げることができる。
また、本発明の封止材に含まれるロジン系樹脂は、例えば封止材を製造する前の段階において(すなわちアクリル樹脂成分と混合される前の段階において)、常温で固体であってよく又は液体であってもよい。
前記ロジン系樹脂(特にはエステル化ロジン樹脂、より特には非水添エステル化ロジン樹脂又は水添エステル化ロジン樹脂)が固体である場合において、当該ロジン系樹脂の軟化点は、環球法により測定されたときに、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらにより好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上であってよい。前記軟化点は、例えば150℃以下、140℃以下、又は130℃以下であってよい。特に好ましくは、前記ロジン系樹脂は、軟化点が70℃以上、80℃以上、又は90℃以上であるエステル化ロジン樹脂(特に好ましくは水素化ロジンエステル)である。前記軟化点が高いことは、本発明の封止材の低透湿性の維持に貢献しうる。
また、前記ロジン系樹脂(特にはエステル化ロジン樹脂、より特には非水添エステル化ロジン樹脂又は水添エステル化ロジン樹脂)は液体であってもよい。ロジン系樹脂が固体である場合は、アクリル樹脂成分との混合のために、加温によるロジン系樹脂の溶解が必要であるが、ロジン系樹脂が液体である場合は、この加温溶解が不要であり、ハンドリング性に優れている。
また、前記ロジン系樹脂は、例えば封止材の粘着性向上のために用いられるが、同様の目的で用いられる他の材料と比べて、本発明の封止材において求められる粘度挙動を実現するために特に適している。
【0058】
本発明の封止材に含まれるロジン系樹脂の含有量は、前記アクリル樹脂成分100質量部に対して、例えば1質量部以上、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらにより好ましくは5質量部以上、さらにより好ましくは10質量部以上であってよい。
また、本発明の封止材に含まれるロジン系樹脂の含有量は、前記アクリル樹脂成分100質量部に対して、例えば30質量部以下、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらにより好ましくは15質量部以下であってよい。
前記含有量が、上記数値範囲内にあることで、接着性及び/又は塗工性の向上効果がより効果的に発現され、例えば、所望の塗工時粘度維持率及び塗工時粘度回復率が得られる。
【0059】
<充填材>
【0060】
本発明の封止材は、さらに充填材を含みうる。充填材の量を調節することによって、封止材の粘度を調整することができる。充填材は、例えば無機粒子であってよく、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化アルミ、マイカ、タルク、カオリン、ベントナイトが挙げられる。例えば100~500m2/g、好ましくは200~400m2/gの比表面積を有するフュームドシリカ(特には親水性フュームドシリカ)が、本発明の封止材の充填材として好ましい。
【0061】
充填材の量は、例えば充填剤の種類又は求められる光硬化性組成物の粘度に応じて、当業者により適宜選択されてよい。充填材がフュームドシリカである場合、フュームドシリカは、封止材の全質量に対して、例えば1質量%~10質量%、好ましくは2質量%~9質量%、より好ましくは3質量%~8質量%の含有割合で含まれてよい。上記含有割合によって、本発明の封止材は、塗工に適した粘度を有する。
【0062】
4.封止材の硬化手段
【0063】
本発明の封止材は光硬化性であってよく、光硬化性封止材は、光が照射されることにより硬化する性質を有する。本発明の封止材を硬化させるために照射される光は、例えば紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、又はアルファ線であり、より好ましくは紫外線及び電子線であり、さらにより好ましくは紫外線でありうる。
光を照射するための装置は、照射される光の種類により当業者により適宜選択されうる。当該装置として市販入手可能なものが用いられてよい。例えば、電子線を照射するには、通常20~2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を照射する。電子線の照射線量は、例えば1~300kGyであり、好ましくは5~200kGyでありうる。また、紫外線を照射するために、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、及び無電極ランプなどのUV照射装置が用いられてよい。照射される紫外線の波長は、例えば200nm~400nmでありうる。
【0064】
5.封止材の用途
【0065】
本発明の封止材の硬化物は、封止された内部を外部の水蒸気から保護するために適している。当該硬化物は、接着性に優れているので、封止材によって封入された液体、例えば電解液などが漏洩することを防ぐことができる。すなわち、本発明は、本発明の封止材の硬化物も提供する。
【0066】
本発明の封止材は、例えば、5μm~100μmの厚みとなるように基材に塗工されるものであってよい。当該基材は、導電膜を積層された基板であってよい。
【0067】
本発明の一つの好ましい実施態様に従い、本発明の封止材は、色素増感型太陽電池を封止するために、特には当該太陽電池に含まれる電解液又は電解質(固体型電解質)を封止するために用いられてよい。当該電解液又は電解質は、前記色素増感型太陽電池を構成する導電性基板対の間に配置されるものであってよい。
【0068】
6.封止材の製造方法
【0069】
本発明の封止材は、本発明の属する技術分野において既知の撹拌手段を用いて製造されてよい。例えば、本発明の光硬化性組成物に含まれる光硬化性成分と光重合開始剤とを容器内で撹拌機により撹拌することによって、当該光硬化性組成物を製造することができる。ロジン系樹脂が固体である場合、必要に応じて液状資材とともに加熱し溶解させ、そして前記容器内に投入されうる。ロジン系樹脂が液体である場合、当該ロジン系樹脂はそのまま前記容器内に投入されうる。撹拌機として、当技術分野で既知の装置が用いられてよい。例えば撹拌時間及び撹拌時の温度などの撹拌条件も、当業者により適宜設定されてよい。
【0070】
7.封止材の使用方法
【0071】
本発明の封止材の使用方法の例を、
図2を参照しながら以下に説明する。
まず、
図2(a)に示されるとおり、基板301上に、本発明の封止材302が塗布される。当該塗布は、例えば封止材302によって所望の領域を囲むように行われうる。次に、
図2(b)に示されるとおり、基板303が、封止材302を挟んで基板301と向かい合うように重ねられる。その後、
図2(c)に示されるとおり、光(例えば紫外線)が封止材302に到達するように照射される。当該照射によって、封止材302が硬化する。その結果、基板301及び303並びに封止材302の硬化物によって規定された空間が形成される。
色素増感型太陽電池の基板301及び303は、例えば導電膜を積層された基板であり、封止材は当該導電膜上に塗布される。そして、当該導電膜及び当該封止材の硬化物によって規定された空間に電解液が封入されて、フレキシブルな色素増感型太陽電池が製造される。本発明の封止材の硬化物は、当該導電膜との接着性に優れている。なお電解液の代わりに固体電解質が封入されてもよい。
このように、本発明の封止材は、色素増感型太陽電池を構成する導電性基板対の間に配置される電解液又は固体電解質を封止するために用いられる。当該導電性基板対の間の距離は、例えば5μm~100μmであってよい。本発明の封止材は、このような距離を隔てて2つの導電性基板を接着するために適している。
【0072】
本発明の封止材を用いて製造される色素増感型太陽電池は、例えば上記「1.本発明の封止材の説明」にて説明された
図1に示すとおりの構造を有しうる。以下、
図1に示された構成要素のそれぞれについてより詳細に説明する。
【0073】
透明基板101および対向する基板106としては、透明なガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、又はシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムが用いられてよく、又は、透明で耐熱性のある他のフィルムが用いられてもよい。前記プラスチックフィルムは、好ましくはPETフィルム、PENフィルム、又はPCフィルムであってよい。
【0074】
透明導電膜(透明電極)102として、例えば酸化インジウムと酸化スズとを含むITO膜が用いられてよい。酸化インジウム及び酸化スズの質量割合は例えば、それぞれ90~99質量%及び10~1質量%であり、好ましくは92~98質量%及び8~2質量%でありうる。また、透明導電膜として、酸化スズにフッ素をドーピングした膜(FTO)が用いられてもよい。
透明導電膜102の対極基板を構成する基板106として、例えばガラス又はガラス板又はプラスチックフィルムが用いられてよい。導電膜107は、透明導電膜102と同様に、ITO膜又はFTO膜であってよい。
【0075】
金属酸化物半導体層103を形成する金属酸化物半導体として、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物が挙げられる。これらの中でも二酸化チタンが特に好ましい。金属酸化物半導体として、より好ましくは直径が10~30nmである超微粒子の二酸化チタン粒子が用いられる。当該二酸化チタン粒子によって、色素を吸着させるのに適した広大な比表面積を有する二酸化チタン膜を形成することができる。
【0076】
色素105として、例えば金属含有色素又は有機色素など、当技術分野で既知の色素が用いられてよい。色素105として、例えばルテニウム錯体〔RuL2(NCS)2、L=4,4′-ジカルボキシ-2,2′-ビピリジン〕、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、C60誘導体、スチリルベンゾチアゾリウムプロピルスルフォネート(BTS)、及び植物の色素などを挙げることができる。
【0077】
空間108を満たす電解液は、電解質を有機溶剤に溶解又は分散した溶液でありうる。本発明の封止材の硬化物は、当該電解液を封止するために適しており、特にはこのような電解液の漏洩を防ぐのに適している。
当該電解質として、ヨウ素/ヨウ素化合物及び臭素/臭素化合物などの酸化還元対(レドックス系)が用いられてよく、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが特に好ましい。
当該電解質を溶解又は分散させる有機溶剤として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール、アセトニトリル、若しくは3-メトキシプロピオニトリル、又はこれらの2種以上の混合物などが用いられてよい。
前記電解液には、電解質及び溶媒に加えて、当技術分野で用いられる各種添加剤が含まれてもよい。添加剤の例として、例えば増粘剤、粘性を低下させてイオンの拡散を円滑にするための常温溶融塩(例えば1-プロピルー2,3-ジメチルイミダゾリウムイオダイドなど)、及び逆電流を防ぎ開放起電力を高めるための4-tert-ブチルピリジンなどを挙げることができる。
本発明の特に好ましい実施態様に従い、前記電解液は、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート溶液でありうる。本発明の封止材の硬化物は、当該電解液に対する耐薬品性に優れている。
【0078】
本発明の封止材を用いて製造される色素増感型太陽電池は、当業者に既知の製造方法により適宜製造されてよい。本発明の封止材を用いて製造される色素増感型太陽電池は、例えば、以下の工程を含む製造方法により製造されうる。
【0079】
(1)光硬化性組成物塗布工程
当該工程において、透明基板層、透明導電膜層、及び色素を吸着した金属酸化物半導体層がこの順に積層された導電性基板、又は、導電膜層及び基板層がこの順に積層された導電性基板に、本発明の光硬化性組成物が塗布される。当該塗布は、例えばスクリーン印刷又はディスペンサーなどの塗布手段により行われてよい。当該塗布される場所は、封止されるべき電解液又は固体電解質が配置される位置に応じて当業者により適宜設定されうる。本発明の封止材の塗布パターンは、例えば環状、長方形、又は正方形など、製造されるべき色素増感型太陽電池の形状に合わせて決定されてよい。例えば、本発明の封止材は、電解液又は固体電解質が配置される位置を囲み且つ幅0.5mm~1mmの線を形成するように塗布されうる。
【0080】
(2)貼り合わせ工程
当該工程において、前記2つの導電性基板が貼り合わせられる。貼り合わせ後の封止材の厚みが例えば5μm~100μm、より好ましくは20μm~50μmとなるように、前記塗布工程において塗布される量が設定されうる。
【0081】
(3)硬化工程
当該工程において、本発明の封止材に光が照射される。当該光の照射によって、本発明の封止材が硬化する。光は、透明基板層、透明導電膜層、及び金属酸化物半導体層が積層された前記導電性基板を透過させて照射されてよく、又は、前記2つの導電性基板の間を光が通るように照射されてもよい。
【0082】
(4)電解液封入工程
当該工程において、電解液が、硬化した本発明の封止材及び前記2つの導電性基板により規定された空間内に封入される。
当該封入を行うために、基板の一部に開口部が設けられてよく、又は、開口部が形成されるように本発明の封止材が塗布されてもよい。当該開口部から、前記空間内に電解液が注入されうる。当該注入後、当該開口部は、本発明の封止材により封止し、そして、当該封止材に光を照射して硬化することにより、封止されうる。又は、当該開口部は、他の常温硬化性接着剤を用いて封止されてもよい。
なお、固体電解質が用いられる場合は、前記貼り合わせ工程の前に、当該固体電解質が前記2つの導電性基板の間に配置される。そして、当該配置後に、貼り合わせ工程及び効果工程が行われて、色素増感型太陽電池が製造される。
【実施例0083】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。
【0084】
(1)製造方法
以下の表1に示されるとおりの組成となるように、表1に示される各成分を計量しそして攪拌機にて30分間撹拌して、実施例1及び比較例1の封止材を得た。表1中の数値の単位はいずれも質量部である。
【0085】
封止材を製造するために用いられた材料は以下のとおりである。
アクリル樹脂成分(A):ジシクロペンタニルアクリレ-ト(Tg120℃)
アクリル樹脂成分(B):リン酸水素ビス(2-メタクリロイルオキシエチル)
アクリル樹脂成分(C):水添ポリブタジエン系ウレタンアクリレート
ロジン系樹脂:エステル化ロジン系樹脂
充填材:ヒュームドシリカ
光重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド
【0086】
(2)塗工性の評価
上記で説明したとおりの測定条件及び測定手順で、各封止材の粘度計測を行った。
図4に、実施例1及び比較例1の封止材についての粘度測定結果を示す。当該粘度測定結果において、実施例1の封止材の測定結果は、丸印のプロットにより示されている。比較例1の封止材の測定結果は三角印のプロットにより示されている。これらの測定結果から塗工前粘度、塗工時粘度維持率、塗工時粘度回復率、及び塗工後粘度を各封止材について取得した。取得された値(上記で説明した粘度値η1、η2、及びη3も含む)が以下の表1に示されている。
【0087】
(3)接着性の評価
封止材の接着性を以下の通りに評価した。
ITO膜を積層されたPETフィルム(ペクセル・テクノロジーズ株式会社)を二枚用意した。当該ITO膜の2つの面のうち、PETフィルムとの接触面と反対側の面には、色素増感型太陽電池用の色素が塗布されていた。当該ITO膜積層PETフィルムの全厚は190μmであった。当該二枚のフィルムうちの一枚のITO膜の色素塗布面に、実施例1又は比較例1の封止材を施与した。そして、他の一枚のフィルムを、ITO膜の色素塗布面が封止材に接触するように、貼り付けた。すなわち、フィルム/封止材/フィルムの状態が形成された。この状態が形成された後、封止材を、メタルハライドランプを用いて6,000mJ/cm2、100mW/cm2で光を照射し硬化させた。当該硬化後、硬化した封止材が当該フィルムから剥離する際の平均剥離力(N)を、JIS K 6854-3に準拠したT型(90°)剥離試験によって測定した。当該剥離試験における測定条件は以下のとおりであった。なお、以下の測定条件に記載のとおり、フィルムの一部は封止材が塗布されていない。そのため、2枚のフィルムの塗布されていない部分をそれぞれ治具によりつまみ、2枚のフィルムによってT字が形成されるように剥離操作は行われた。
<測定条件>
測定設備:卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所、AUTOGRAPH AGS-X 5kN)
治具品番:PFG-5kNA
試験片:基材(前記フィルム)25mm×70mm
封止材塗布面積:25mm×45mm
封止材接着厚み:100±20μm
引張速度:10mm/min
また、ITO膜を積層された別のPETフィルムを二枚用意した。当該フィルムに対しても実施例1又は比較例1の封止材を施与し、上記と同じく光照射により硬化させた。硬化後、硬化した封止材が当該フィルムから剥離する際の平均剥離力(N)を、上記と同様に測定した。
これらの測定結果が以下表2に示されている。
【0088】
【0089】
表1に示されるとおり、実施例1及び比較例1の結果を比較すると、ロジン系樹脂を含むことによって、塗工時粘度維持率が15%以下となること、及び、塗工時粘度回復率が40%以上になることが分かる。このような塗工時粘度維持率及び塗工時粘度回復率を有する実施例1の封止材は、比較例1の封止材よりも、塗工性に優れており、特には色素増感型太陽電池用封止材としての塗工性に優れている。
【0090】
また、これらの結果より、ロジン系樹脂は、塗工時粘度維持率及び塗工時粘度回復率の調整を行うためのレオロジーコントロール材として適していると考えられる。特には、ロジン系樹脂は、色素増感型太陽電池用封止材の塗工時粘度維持率及び塗工時粘度回復率の調整に適していることが分かる。
【0091】
実施例1の封止材は、ロジン系樹脂を含み、これにより、塗工時粘度維持率が15%以下であり且つ塗工時粘度回復率が40%以上であった。本発明の封止材は、応力発生時に低粘度化することより、塗工性に優れていることが分かる。また、本発明の封止材は、応力が除かれたときには、素早く粘度回復することより、塗工終了後の形状保持性に優れていることが分かる。上記2点より、例えばダム材(枠状封止)としてディスペンサー塗布使用する際には、吐出時の圧力調整および線幅維持による寸法安定性が望める。
【0092】
【0093】
また、表2に示されるとおり、実施例1の封止材は、比較例1の封止材と比べて、封止材を剥離するために必要な平均試験力が高い。そのため、本発明の封止材は接着性にも優れており、特にはロジン系樹脂を含むことによって接着性が向上することが分かる。従って、本発明の封止材は、塗工性に加えて、接着性にも優れている。