IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キッツの特許一覧

特開2022-72960樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手
<図1>
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図1
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図2
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図3
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図4
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図5
  • 特開-樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072960
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/22 20060101AFI20220510BHJP
   F16L 47/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F16L33/22
F16L47/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182678
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
【テーマコード(参考)】
3H017
3H019
【Fターム(参考)】
3H017HA06
3H019HA05
(57)【要約】
【課題】固定リングを固定後にリングを当初の固定位置に留めることを可能としつつ、樹脂管の樹脂管接続部への固定力も十分に維持可能な樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手を提供すること。
【解決手段】外周に凹凸を有する樹脂管接続部41を備えた継手部4をバルブ本体2に一体又は別体に設け、この樹脂管接続部41に樹脂管5を挿入し、樹脂管5の外周から固定リング6を圧入して継手部4に樹脂管5を固定する樹脂管用継手付きバルブ1であって、固定リング6の内周奥側にクサビ状の溝部61が形成され、固定リング6を樹脂管5の外側に圧入する際に、溝部61内に樹脂管の奥部外側の一部が入り込んで樹脂管5にクサビ部52が形成され、このクサビ部52が溝部内に係止されると共に、この溝部61の深さは、樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さとした。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に凹凸を有する樹脂管接続部を備えた継手部をバルブ本体に一体又は別体に設け、この樹脂管接続部に樹脂管を挿入し、樹脂管の外周から固定リングを圧入して継手部に前記樹脂管を固定する樹脂管用継手付きバルブであって、前記固定リングの内周にクサビ状の溝部が形成され、前記固定リングを前記樹脂管の外側に圧入する際に、前記溝部内に前記樹脂管の一部が入り込んで前記樹脂管にクサビ部が形成され、このクサビ部が前記溝部内に係止されると共に、この溝部の深さは、前記樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、前記固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さとしたことを特徴とする樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項2】
前記固定リングの前記バルブ本体側には、前記バルブ本体側に拡径するテーパ面が設けられ、前記溝部は、前記樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けられた請求項1に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項3】
前記溝部の幅は、この溝部と対向している前記樹脂管接続部の凸部の上面の幅よりも小さく形成した請求項1又は2に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項4】
前記溝部の頂部は、この溝部と対向している前記樹脂管接続部の凸部の上面の幅内に位置させた請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項5】
前記樹脂管接続部の外周に形成された複数の凸部は、径方向の高さが同一である請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項6】
前記溝部の断面形状は、くさび形形状、逆V字形状又は三角形状である請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂管用継手付きバルブ。
【請求項7】
継手本体に、外周に凹凸を有する樹脂管接続部を備えた継手部を形成し、この樹脂管接続部に樹脂管を挿入し、樹脂管の外周から固定リングを圧入して前記継手部に前記樹脂管を固定する樹脂管用継手であって、前記固定リングの内周にクサビ状の溝部が形成され、前記固定リングを前記樹脂管の外側に圧入する際に、前記溝部内に前記樹脂管の一部が入り込んで前記樹脂管にクサビ部が形成され、このクサビ部が前記溝部内に係止されると共に、この溝部の深さは、前記樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、前記固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さとしたことを特徴とする樹脂管用継手。
【請求項8】
前記固定リングの前記継手本体側には、前記継手本体側に拡径するテーパ面が設けられ、前記溝部は、前記樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けられた請求項7に記載の樹脂管用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手に関し、特に、固定リング圧入により樹脂管を継手部に固定した後、固定リングが離脱するのを防止すると共に樹脂管の固定力を維持可能な樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンなどの合成樹脂から成る管体を金属製のバルブ本体などの所定の結合対象に結合(固着)させるために、金属製の継手部の外周にいわゆるタケノコ溝を設けた樹脂管用継手などが知られている。
【0003】
このような継手部の構造は、例えば、金属製の管継手本体に一体又は別体に形成された樹脂管用接続部に、樹脂管の先端面を当該継手部外周に拡径させながら外嵌挿入した後、樹脂管に備えられたリング状の締付部材(リング)を当該継手に向けて樹脂管外周を締付けながら圧入していくように構成している。
【0004】
樹脂管は、低温時に収縮したり、経年変化して痩せたりすることがあり、そのため、金属製のタケノコ溝の外周に挿入した樹脂管の外周から圧入したリングと、樹脂管の外周との間に隙間が生じ、リングや樹脂管などに振動や衝撃などの外力がかかると、リングが緩んだり或いはリングが当初の固定位置から移動して抜けてしまう問題があると共に、リングの緩みなどにより収縮した樹脂管が継手部から離脱するおそれがある。
【0005】
従来より、この問題に対し各種の継手構造が提案されており、特に、特許文献1の継手構造では、締付リング内周に凹部を設けて、第1凸部と第2凸部を有する樹脂管接続部にこの凹部と対向する位置に第1凸部を形成し、第1凸部が第2凸部よりも高くなっており、凹部と第1凸部との間で挟まれた部分で樹脂管を径方向に撓ませた継手構造が開示されている。
【0006】
特許文献2の継手構造では、締付リングの奥側に向かって内径が大きくなるようにした拡径部に複数の突起を形成し、高さが異なる複数の凸部を有する樹脂管接続部のうち外径が最も大きい凸部をリング内周の拡径部に対向する位置に形成した継手構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-166601号公報
【特許文献2】特開2015-152064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、リング内周の凹部における軸方向の幅を対向している第1凸部の軸方向の幅よりも広くし、かつ、凹部へ樹脂管の樹脂素材を多く入り込ませて、リングの離脱を防止すると共に奥側でリングから樹脂素材が飛び出すことを抑止しているが、凹部に十分に樹脂素材を充填するために、高さがある第1凸部によって樹脂管を径方向へ撓ませ、凸部と対向位置にあるリング内周の凹部に樹脂管の樹脂素材を入り込ませている。
【0009】
このため、リングの離脱を防止するには、樹脂管を外径側に変形させることが必要であり、変形させて凹部に入り込ませた樹脂素材の分、タケノコ溝の凹部に充填する樹脂素材が減ってしまうため、継手部に樹脂管を固定する固定力が低下するおそれがある。
【0010】
特許文献2の継手構造は、リングの奥側に拡径部を設けて、樹脂管にリングを圧入していくとリングの内周面と樹脂管の外周面が圧着して、リングの拡径部と圧着状態にある樹脂管の一方端部では拡径部の内径に沿うように奥側に向かって拡径して、拡径部に形成した突起を樹脂管の外周面に食い込ませて、樹脂管に食い込んだ突起がストッパとなって、樹脂管からリングの離脱するのを防止している。
【0011】
しかしながら、リングの内周にある突起は、拡径部にのみ形成されており、樹脂管の外周面とリングの内周面とを密着状態にしてから拡径部の突起を樹脂管の外周面に食い込ませているので、拡径させた樹脂管の外周面とリングの内周面とを密着しやすくするために、拡径部と対向位置にある凸部の高さを他の凸部よりも大きくしており他の凸部よりも大きくした分、樹脂管の外周面の樹脂素材が外方に充填されやすくなる。
このため、樹脂管の内周面と樹脂管接続部の外周面の密着に必要なタケノコ溝に充填するタケノコ溝の凹部に充填する樹脂素材が減って継手部に樹脂管を固定する固定力が低下するおそれがある。
【0012】
また、樹脂管を構成する樹脂素材は、初期には外部からの変形力に対して復元しようとする弾性力(内部応力)を保持しているものの、繰り返し外部応力が加えられたり、また熱変化等が加わると、徐々にこの弾性力(内部応力)が小さくなり(クリープ)、やがて内部応力がゼロ(クリープの限界)となる。
【0013】
樹脂管がクリープの限界に達していない状態であれば、ある程度収縮してもその弾性力によりリングを固定位置に留めることができるが、樹脂管がクリープの限界に達している状態ではリング側への弾性力を発揮し得なくなるため、リングの移動を留める効果が著しく低下する。
そして、リングの抜けを確実に防止できないと、継手部に樹脂管を固定する固定力が低下して、樹脂管が継手部から抜けてしまうおそれがある。
【0014】
上記の文献1及び2の継手構造では、樹脂管がクリープの限界に達した状態のときまで、リングの抜けを防止したり、継手部に樹脂管を固定する固定力を維持できるかどうかについて全く考慮されていない。
【0015】
そこで、本発明は上記問題点を解決するために開発されたものであり、その目的とするところは、リングを当初の固定位置に留めることを可能としつつ、樹脂管の樹脂管接続部への固定力も十分に維持可能な樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、外周に凹凸を有する樹脂管接続部を備えた継手部をバルブ本体に一体又は別体に設け、この樹脂管接続部に樹脂管を挿入し、樹脂管の外周から固定リングを圧入して継手部に樹脂管を固定する樹脂管用継手付きバルブであって、固定リングの内周にクサビ状の溝部が形成され、固定リングを樹脂管の外側に圧入する際に、溝部内に樹脂管の一部が入り込んで樹脂管にクサビ部が形成され、このクサビ部が溝部内に係止されると共に、この溝部の深さは、樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さとした樹脂管用継手付きバルブである。
【0017】
請求項2に係る発明は、固定リングのバルブ本体側には、バルブ本体側に拡径するテーパ面が設けられ、溝部は、樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けられた樹脂管用継手付きバルブである。
【0018】
請求項3に係る発明は、溝部の幅は、この溝部と対向している樹脂管接続部の凸部の上面の幅よりも小さく形成した樹脂管用継手付きバルブである。
【0019】
請求項4に係る発明は、溝部の頂部は、この溝部と対向している樹脂管接続部の凸部の上面の幅内に位置させた樹脂管用継手付きバルブである。
【0020】
請求項5に係る発明は、樹脂管接続部の外周に形成された複数の凸部は、径方向の高さが同一である樹脂管用継手付きバルブである。
【0021】
請求項6に係る発明は、溝部の断面形状は、くさび形形状、逆V字形状又は三角形状である樹脂管用継手付きバルブである。
【0022】
請求項7に係る発明は、継手本体に、外周に凹凸を有する樹脂管接続部を備えた継手部を形成し、この樹脂管接続部に樹脂管を挿入し、樹脂管の外周から固定リングを圧入して継手部に樹脂管を固定する樹脂管用継手であって、固定リングの内周にクサビ状の溝部が形成され、固定リングを樹脂管の外側に圧入する際に、溝部内に樹脂管の一部が入り込んで樹脂管にクサビ部が形成され、このクサビ部が溝部内に係止されると共に、この溝部の深さは、樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さとした樹脂管用継手である。
【0023】
請求項8に係る発明は、固定リングの継手本体側には、継手本体側に拡径するテーパ面が設けられ、溝部は、樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けられた樹脂管用継手である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によると、固定リングの内周にクサビ状の溝部を形成し、固定リングを樹脂管の外側に圧入する際に、樹脂管外周の一部の樹脂素材が溝部内に入り込み、樹脂管にクサビ部を形成するから、このクサビ部が固定リングの溝部と係止して、クサビ作用によって樹脂管を締付固定する固定リングの固定位置を確実に固定することができる。
そして、固定リングの溝部の深さは、樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さにしているから、樹脂管が最大に収縮してクリープの限界に達した状態であってもリングの溝部とクサビ部との係止状態が保持されて、クサビが外れることなくクサビ部によるクサビ作用によって固定リングを所定の固定位置から移動することなく、確実に固定リングの移動および離脱を防ぐことができる。
【0025】
また、固定リング内周にある溝部は、樹脂管がクリープの限界に達したときでも、固定リングが固定位置から移動しない程度の最小限の深さであるから、固定リングの離脱を抑制するために、過度に深くする必要がなくかつ溝部に入り込む樹脂素材が最小限でよいから、樹脂素材をタケノコ溝の凹部に十分に充填することができ、樹脂管の内周面と樹脂管接続部の外周面に良好な密着性(樹脂管の固定)を保持できる。
【0026】
特に、バルブに接続する管継手に好適であり、樹脂管にクリープが生じやすくクリープの限界に達するような場合でも、固定リングの抜けを防止しながら継手部に固定した樹脂管の固定力を維持することができる。
【0027】
本発明においては、樹脂管がクリープの限界に達した状態まで考慮した深さでリング内周溝を設けているため、単に樹脂管の収縮のみを考慮した場合に比べ、樹脂管を接続したバルブが繰り返しの熱サイクルや応力が樹脂管接続部に加えられるなど、樹脂管のクリープが生じやすいような、長期、あるいは負荷の大きい利用条件で用いられる場合でも、樹脂管の固定力を低下させることなく、リングの樹脂管への固定位置からの移動を確実に防止することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明によると、固定リングのバルブ本体側には、バルブ本体側に拡径するテーパ面が設けられ、溝部は、樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けたので、固定リングのテーパ面では、固定リング圧入の際に逃げ込んだ樹脂素材を充填し、溝部と対向する位置にある凸部によって確実に溝部内に樹脂素材が入り込んでクサビ部を形成して固定リングを確実に位置固定することができる。
【0029】
加えて、テーパ面でないリング内周の平坦面に溝部を設ければ、固定リング圧入の際にはテーパ面によりリング圧入を容易にし、平坦面ではリング圧入の際の応力を分散させて樹脂管が破断することなく、樹脂管の歪みや変形を低減しながら、固定リングの位置を固定し離脱防止を図ることができる。
【0030】
請求項3又は請求項4に記載の発明によると、固定リングの溝部の幅が、この溝部と対向している樹脂管接続部の凸部の上面の幅よりも小さく形成し又は溝部の頂部が、この溝部と対向している樹脂管接続部の凸部の上面の幅内に位置させたから、リングの溝部に対向している凸部によって、確実に溝部内に樹脂素材を押し込むことができ、溝部の溝の深さが最小限の深さであっても樹脂管の外周面にクサビ部を形成し、クサビ作用を十分に発揮させることができるようにクサビ部に溝部が係止可能であるから、固定リングを所定の固定位置に留めることができる。
さらには、溝部に入り込む樹脂素材が最小限でよく、樹脂管と樹脂管接続部を固着するのに必要な凹部へ十分に樹脂素材を充填して、継手部に樹脂管を固定保持できる。
このため、長期の使用などにより樹脂管が収縮した場合でも、リングの抜けの防止し、樹脂管の固定保持することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明によると、継手部の樹脂管接続部の外周にある複数の凸部は、径方向の高さが同一であるから、この凸部によって径方向の外方に押し出される樹脂素材を低減しながら、リング圧入の際に樹脂管接続部のタケノコ溝の凹部に樹脂管の樹脂素材を多く充填することができるから、樹脂管と樹脂管接続部の密着力を高めることができる。
このため、バルブに接続する樹脂管用継手の樹脂管にクリープが生じて樹脂管が最大に収縮した場合でも、継手部に固定した樹脂管の固定力を保持して継手部から樹脂管が抜けるの抑制することができる。
【0032】
請求項6に記載の発明によると、溝部の断面形状は、くさび形形状、V字形状又は三角形状であるから、リング圧入の際に溝部内に樹脂素材が入り込みやすく、クサビ部を形成しやすい。そして、樹脂素材の充填によって形成された断面形状が、くさび形形状、V字形状又は三角形状のクサビ部がリング内周の溝部に引っ掛かりやすくなり、樹脂管からリングの移動や抜けに対してクサビ作用を発揮しやすい。
【0033】
請求項7に記載の発明によると、樹脂管用継手において、固定リングの内周にクサビ状の溝部を形成し、固定リングを樹脂管の外側に圧入する際に、樹脂管外周の一部の樹脂素材が入り込み、樹脂管にクサビ部を形成するから、このクサビ部が固定リングの溝部と係止して、クサビ作用によって樹脂管を締付固定する固定リングの固定位置を確実に固定することができる。
さらに、固定リングの溝部の深さは、樹脂管がクリープ状態の限界に達しても、固定リングが固定位置から移動しない最小限の深さにしているから、樹脂管が最大に収縮してクリープの限界に達した状態であってもリングの溝部とクサビ部との係止状態が保持されて、クサビが外れることなくクサビ部によるクサビ作用によって固定リングが所定の固定位置から移動することなく、確実に固定リングの移動および離脱を防ぐことができる。
【0034】
また、固定リング内周にある溝部は、樹脂管がクリープの限界に達したときでも、固定リングが固定位置から移動しない程度の最小限の深さであるから、固定リングの離脱を抑制するために、過度に深くする必要がなくかつ溝部に入り込む樹脂素材が最小限でよいから、樹脂素材をタケノコ溝の凹部に十分に充填することができ、樹脂管の内周面と樹脂管接続部の外周面に良好な密着性を保持することができる。
【0035】
請求項8に記載の発明によると、樹脂管用継手において、固定リングの継手本体側には、継手本体側に拡径するテーパ面が設けられ、溝部は、樹脂管接続部の当該テーパ面とは対向していない凸部と対向する位置に設けたので、固定リングのテーパ面では、固定リング圧入の際に逃げ込んだ樹脂素材を充填し、溝部と対向する位置にある凸部によって確実に溝部内に樹脂素材が入り込んでクサビ部を形成して固定リングを確実に位置固定することができる。
【0036】
加えて、テーパ面でないリング内周の平坦面に溝部を設ければ、固定リング圧入の際にはテーパ面によりリング圧入を容易にし、平坦面ではリング圧入の際の応力を分散させて樹脂管が破断することなく、樹脂管の歪みや変形を低減しながら、固定リングの位置を固定し離脱防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本例の樹脂管用継手付きバルブの一部切欠き縦断面図である。
図2図1の樹脂管用継手付きバルブのバルブ本体から継手部を分離した、樹脂管用継手の断面図である。
図3】本例の樹脂管用継手における継手部に固定リングを固定した状態を説明する図面である。
図4】本例の樹脂管用継手において、樹脂管が最大に収縮した状態を模式的に示した図面である。
図5】本例の樹脂管用継手に樹脂管の挿入とリングの圧入の手順を模式的に示した説明図であり、(a)は樹脂管を挿入する途中の状態、(b)は樹脂管の挿入が完了した状態、(c)はリングを圧入する途中の状態をそれぞれ示している。
図6】他例の樹脂管用継手付きバルブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態(本例)を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の樹脂管用継手付きバルブ1の全閉状態を示した一部切り欠き縦断面図である。同図に示すように、本例は、丸ハンドルを手動で回動させて弁体を開閉するゲートバルブである。
【0039】
なお、本発明は、ゲートバルブに限らずボールバルブ、グローブバルブ、チャッキバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブなど各種の手動・自動バルブに用いることができ、更に、バルブに限らず、例えばオネジ・メネジのソケットやカプラなど、樹脂製の管体を対象物に結合するための種々の継手構造に対し、実施に応じて適宜用いることができる。
【0040】
図1に示すように、本例のバルブ本体2は、ボデー部3と継手部4を備え、固定リング6(以下、「リング」と称することがある)を介して樹脂管5を継手部4に固定した状態の樹脂管用継手付きバルブ1である。ボデー部3内には、流路の軸心方向の交差方向に昇降動可能にジスク7(弁体)が収容され、ボデー部3の上部には、軸装部を有するボンネット8が接続されている。
【0041】
図1において、ボンネット8内には、その軸心と同心状にステム9が収容され、ボンネット8の内周面の一部には、メネジ8aが設けられ、このメネジ8aには、ステム9のオネジ9aが螺合している。ステム9の下端部には、ジスク7と係合する鍔状の係合部が設けられ、ステム9の上端部には、六角ナット10の締め付けにより丸ハンドル11が同心状かつステム9と供回り可能に固着している。ボンネット8の軸装部の上端部には、グランド12を介してパッキン13を締め付けるパッキンナット14が螺着しており、このパッキンナット14の締め付けにより軸装部の内外がシールされる。
【0042】
図1において、本例の樹脂管用継手付きバルブ1は、丸ハンドル11を手動で回動させることにより、パッキン13により軸装部のシールが維持されたまま、オネジ9aとメネジ8aとの間の螺進に応じて、ステム9がバルブストロークの範囲内で昇降動する。この昇降動に応じて、ステム9下端部の係合部で係合しているジスク7もボデー部3内で昇降動し、このジスク7の昇降動により流路が閉塞又は開放され、バルブの開閉が行われる。
【0043】
ボデー部3には、メネジ部3aを形成し樹脂管接続用の継手部4を接続可能である。また、ボデー部3には、六角ナット部15を形成しており、継手部4を装着する際、又は樹脂管5の挿入する際、或いはリング6を圧入する際に治具が係止可能である。
【0044】
本例では、バルブ本体2においてボデー部3と継手部4を別体に設けて、ボデー部3に着脱自在な構造としている。継手部4には樹脂管5と接続可能な樹脂管接続部41を有し、鍔部42をはさんで反対側には、オネジ部43が設けられている。このオネジ部43をボデー部3のメネジ部3aに螺着し、ボデー部3と継手部4が一体となるように接続している。
継手部4の鍔部42の外周には、継手部4をバルブ本体2に装着するための治具が係止可能な二面幅44を形成している。また、この二面幅44は、樹脂管5の挿入後、固定リング6を圧入するときに用いる治具にも係止可能である。なお、二面幅に変えて、鍔部42の外周を六角ナット形状としてもよい。
【0045】
また、本例では、継手部とボデー部を別体に形成したが、図6に示す、継手部4をボデー部3と一体に形成したバルブ本体としてもよく、少なくとも継手構造としての機能を備えていれば、本発明の樹脂管用継手の構造は実施に応じて任意に選択できる。なお、本発明の継手部を備えた構造を樹脂管用継手と称する。
【0046】
以下、図2図3図4を参照して、樹脂管用継手を詳細に説明する。図2は、図1の本例の樹脂管用継手付きバルブ1のバルブ本体2から継手部4を分離した、樹脂管用継手の断面図である。図3は、本例の樹脂管用継手における継手部4に固定リング6を固定した状態を説明する図面である。図4は、本例の樹脂管用継手において、樹脂管が最大に収縮した状態を模式的に示した図面である。以下、樹脂管用継手がバルブ本体2のボデー3と接続する側(バルブ本体側又は継手本体側)を奥側と称し、その反対側(先端側)を手前側と称する。
【0047】
図2図3に示すように、継手部4は、先端側(軸方向)に向かって延出した樹脂管接続部(接続部)41を有し、接続部41の外周に凹凸を形成され、接続部41の先端側には、手前側に向けてテーパ状に縮径する傾斜面46が形成されている。傾斜面46の傾斜角度は、継手部の軸心方向(図2軸方向)に対し、傾斜角度が15~30度の範囲であれば、樹脂管5の挿入が容易となるため好ましい。
【0048】
接続部41の凹凸は、凸部(21、22、23、24)と凹部(26、27、28、29)とが互いに凹凸状に複数ずつ配置されて、何れの凹部・凸部も、接続部の軸心方向に交差する方向に向けて外周面に環状に設けられている。本例では、何れの凹部(凸部)の断面形状も、略同一となるように設けられているが、接続部の長さや径、凹凸部の数や断面形状は、本例の構造に限らず、実施に応じて任意に選択できる。以下、凸部21を第1凸部、凸部22を第2凸部などと称することがある。
【0049】
図3図4に示すように、各凸部(21、22、23、24)は、断面形状が略台形形状であり、上面が平坦となっている。
また、各凸部は、手前側の凹部側に向かって傾斜する傾斜面を有しており、これらの各傾斜面(21a、22a、23a、24a)は、樹脂管5の挿入時には、ガイドとして機能する。リング6の圧入時には、樹脂素材が各凹部内に入り込んでいくのを促進できる。このような機能を発揮する範囲において、これら傾斜面の全部又は一部の傾斜角度を設定すればよい。なお、各傾斜面は、必ずしも各凹部にそれぞれ届いている必要はないが、前記機能を効果的に発揮させるためには、各凹部の底部まで、各傾斜面が届いていれば好適である。
【0050】
図3に示すように、鍔部42の係合面45と接続部41との間の境界部分30には、最も奥側(最奥部)に凸部(第1凸部)21が設けられている。この凸部21の上面部の幅・高さは、他の凸部の上面部の幅・高さと同一である。
このように、最奥部に凸部21が、後述する固定リング6のテーパ面62に対向する位置に設けられることで、最奥部にある接続部41の凹部29を、樹脂管5の樹脂材料が充填されにくいテーパ面62の最奥部よりも手前に配置して、各凹部(26、27、28、29)へ樹脂素材を充填しやすくしている。
【0051】
継手部4に接続される樹脂管5は、合成樹脂よりなり圧縮変形性を有する管体である。例えば比較的大径硬質素材の水道用ポリエチレン管などに適用することができるが、他の合成樹脂製の樹脂管であってもよい。
樹脂管5を接続部41に挿入する際には、樹脂管5の先端面51を継手部4における鍔部42の係合面45と当接するように最奥部まで挿入される。
【0052】
樹脂管5を接続部41に挿入の際には、あらかじめ樹脂管5に固定リング6を備えておき、接続部41に樹脂管5を挿入完了後、固定リング6によって樹脂管5を接続部41に密着固定して、樹脂管5を継手部4に完全に固定する。
【0053】
また、樹脂管5にリング6を圧入すると、樹脂管5の外側の一部がリング6の溝部61に入り込み、樹脂管5の外周にクサビ部52が一体に形成される。このクサビ部52が、リング6の溝部61と係止して、後述するクサビ作用を発揮して所定の固定位置にリング6を固定することができる。
【0054】
固定リング6は、金属により一体形成された所定の厚み有する環状の締付部材である。図2に示すように、固定リング6内周面にクサビ状の溝部61を設け、一方の端面が鍔部42の係合面45に当接する挿入端63となっており、挿入端63の内周面には奥側に向けて拡径するテーパ面62を形成している。
このテーパ面62の反対側にも、同様の形状のテーパ面64が形成してもよい。これらテーパ面は、所定の角度(例えば約15~30度)で傾斜している。
【0055】
また、リング6のテーパ面62は、ある程度の表面粗さを有していると、樹脂管5の継手部4に対する耐引抜性を向上させることができる。さらに、テーパ面62の境界62aや挿入端63との境界は、アール形状であれば、樹脂管5に損傷が生じ難くなり、固定状態において樹脂管5の破断等を防止し易くなるため好ましい。
【0056】
固定リング6の内径は、樹脂管5の外径よりも小さく設定しており、リング6は、固定前の状態において、樹脂管5に予め遊嵌状態に配備されて、樹脂管5に圧入して固定される。
図3に示すようにリング6の内周径φdは、樹脂管接続部41の凹部と後述する充填スペースの総和容積が、圧縮された樹脂管5の樹脂素材の圧縮体積が所定の関係を満たすように設定されている。
【0057】
リング6の平坦面65に設けた溝部61は、断面形状はクサビ形形状、V字形状又は三角形形状に形成している。溝部61は、バルブ本体側(継手本体側)に拡径するテーパ面62とは対向していない凸部と対向する位置に設けかつリング6のテーパ面62の近傍に設けると好ましい。
【0058】
すなわち、図3図4に示すように、樹脂管5に圧入して固定状態としたときに、この溝部61は、樹脂管接続部41の最も奥側に位置している凸部21(第1凸部)よりも手前側に隣接した凸部22(第2凸部)と対向する位置するように設けられる。
溝部62が樹脂管接続部42の凸部と対向する位置にあると、リング6圧入の際に、樹脂管の樹脂素材を溝部62に押し込みやすくなる。
【0059】
リング6を樹脂管5の外側に圧入すると、溝部61内に樹脂管5の外側の一部が入り込み樹脂管5の外周面にクサビ部52が形成され、このクサビ部52が溝部61内に係止してリング6を所定の固定位置に留めることができる。
【0060】
また、溝部61の断面形状が、くさび形形状、V字形状又は三角形状であるから、リング圧入の際に溝部61内に樹脂素材が入り込みやすく、クサビ部を形成しやすい。そして、樹脂素材の充填によって形成されたクサビ部がリング内周の溝部に引っ掛かりやすくなり、樹脂管からリングの移動や抜けに対してクサビ作用を発揮しやすい。
このため、断面形状がくさび形形状、V字形状又は三角形形状が好ましいが、クサビ部52を形成できれば、他の形状であってもよい。他の形状としては、例えば、断面形状が、U字形状、C字形状、円弧形状、コ字形状などであってもよい。また、リング内周に複数の溝を設けてもよい。ただし、樹脂管接続部の凹部に多く樹脂素材を充填する観点から、溝部の数は少ない方が好ましい。
【0061】
なお、溝部61は、必ずしも、奥側に設ける必要はないが、リング6の奥側の平坦面65に設けることが好ましい。仮に、リング内周の溝が、樹脂管5を挿入する端部側に近すぎると、樹脂管の先端面51側の樹脂素材がテーパ面62やタケノコ溝(凹部)に充填された後、溝部内に充填されるので、溝部内への樹脂素材の充填が不足し、リングの抜けを防止する効果が十分に得られなくなる可能性がある。
そこで、リング6内周のテーパ面62とは重ならない位置で、もっとも奥側の凸部に対向する位置でリング6内周に溝を設ければ、樹脂素材のリング内周溝部内への十分な充填を行いつつ、樹脂管の破断も防止することができる。
【0062】
図4に示すように、溝部61の軸方向の幅aは、対向位置にある凸部22の軸方向の幅b内にあり、凸部22の軸方向の幅bよりも小さくなっている。対向している凸部によって樹脂素材を溝部61に押し込みやすくするためには、aがbの半分以下の幅であるとより好適である。
【0063】
また、溝部61の深さcは、樹脂管5がクリープ状態の限界に達しても、リング6が固定位置から移動しない最小限の深さとしている。
ここで、「樹脂管5がクリープ状態の限界に達しても、リング6が固定位置から移動しない」とは、樹脂管5に繰り返し応力等が加わり、クリープの限界に達し、且つ、樹脂管5に最大の収縮が生じても、リング6が当初の固定位置から移動しないことをいい、最大の収縮とは、樹脂管5の実際の使用において想定される最大の収縮であって、樹脂管5の想定使用温度において生じ得る熱収縮が主に該当する。
すなわち、図4に示すように、樹脂管5が最大に収縮したときの収縮後のクサビ部52の径方向の頂部の収縮量dよりも溝部61の径方向の深さcの方が大きくなっている。
【0064】
このように、樹脂管5が収縮しても、クサビ部52と溝部61の係合が維持される程度の深さで、クサビが外れることなくクサビ作用を維持することができるような溝部61の深さにして、固定リングの位置固定および、樹脂管からリングが離脱するのを防止することができる。
【0065】
また、リング6の溝部61と、この溝部61に対向する凸部22との位置関係は、少なくとも、溝部61の頂部(最も深い部位)が凸部22の幅b内に位置していることが好ましい。これにより、溝部61の頂部にまで樹脂管5の樹脂素材を確実に充填できる。溝部61は、その幅aが凸部22及びその手前側の傾斜面22aの幅内に設けられることが好ましい。溝部61の幅aは、凸部22の幅bからはみ出ていても良いが、その場合、溝部61の幅aが手前側にはみ出るようにすると、リング6の圧入時に凸部22の上面で押された樹脂素材が溝部61に充填されやすくなる。
【0066】
樹脂管の接続後に長期使用し、温度変化や各種応力が加わると樹脂管がクリープするが、所定の位置に溝部を設けることにより、固定リングの抜けを防止することができる。
その際、溝の深さは重要であるが、後述する試験結果よりこのクリープが限界に達した状態で生じ得る樹脂管の収縮は、樹脂管の口径には大きく影響されず一定の範囲であるとの知見を得たことから、各種樹脂管の材質などに応じてクリープが限界に達した状態での収縮量を考慮し、その最大の収縮量よりも深い溝を設けることでリングの抜け落ちを確実に防止することができる。
一方、溝のサイズが大きすぎると、樹脂管接続部への樹脂管素材の充填が逃げてしまうので、本件発明におけるリングの溝部の深さは、クリープが限界に達した状態での樹脂管の最大収縮量の5倍以内とすればよい。リングの抜けを確実に防止することができ、溝の深さを最小限にする観点からは、好ましくは3倍以内、より好ましくは2倍以内にすることができる。
【0067】
ここで、バルブは、流路の間に設けられ流路内の流体を通したり、止めたり、制御したりする圧力容器であり、流体と接触する部位では流体の圧力や温度の影響を受ける。このため、バルブの弁開・弁閉の切替前後では、圧力変動や温度変化が起きやすく、バルブと接続する継手部位では、圧力変動や温度変化の影響も受けやすい傾向にあるため、継手部に接続した樹脂管にクリープが生じやすい。
【0068】
このため、樹脂管用継手の樹脂管が、圧力変動や温度変化により収縮すると長期の使用によって樹脂管がクリープしてその限界に達した場合には、樹脂管の弾性力がなくなる。
【0069】
樹脂管がクリープの限界に達していない状態であれば、ある程度収縮してもその弾性力によりリングを固定位置に留めることができるが、樹脂管がクリープの限界に達している状態ではリング側への弾性力を発揮し得なくなるため、リングの移動を留める効果が著しく低下する。
そして、リングの抜けを確実に防止できないと、継手部に樹脂管を固定する固定力が低下して、樹脂管が継手部から抜けてしまうおそれがある。
【0070】
従来の継手構造では、樹脂管が最大に収縮してクリープの限界に達した状態では樹脂管から固定リングが離脱するのを確実に防止することができないおそれがあり、樹脂管がクリープの限界に達した状態のときリングの抜けを防止できないと、固定リングが緩んだり、ガタついたりして、固定リングの固定力(締付力)が低下するのみならず、継手部に樹脂管を固定する固定力が低下して、樹脂管が継手部から抜けてしまう可能性があった。
【0071】
本発明では、樹脂管がクリープの限界に達した状態も考慮して、樹脂管が最大に収縮した場合でも、確実に樹脂管からリングの離脱するのを防止して、継手部に樹脂管を固定する固定力を維持させることができる最小限の深さとしている。
このため、樹脂管が収縮してクリープの限界に達して、最大に収縮しやすい場合でも好適であり、特に、バルブに接続する樹脂管継手に好適である。
そして、溝部61の深さを最小限の深さにしているから、後述する樹脂管接続部41の凹部へ樹脂素材の充填に影響を与えることなく、確実に樹脂管からリングが離脱するのを防止しつつ、樹脂管5の内周面と樹脂管接続部41の外周面との密着力を高めている。
【0072】
続けて、リング6により圧縮された樹脂管の圧縮体積と、樹脂管接続部41の凹部と充填スペースの総和容積との関係について説明する。
リングの内周により圧縮される樹脂管の圧縮体積が、樹脂管接続部41の凹部の体積と、テーパ面62と係合面45とで形成される樹脂管が充填される充填スペースの体積との総和に対して同じかそれよりも小さい割合となるようにしている。
【0073】
図3において、各凹部26、27、28、29における奥側の各側面は、外周側が奥側に傾斜するテーパ状の傾斜面21a、22a、23a、24aとなっており、これらの傾斜角度は、継手部2軸心方向(図3横方向)に対して角度θ(例えば約60度)である。一方、これら傾斜面21a、22a、23a、24aに対向した外側の各側面は、継手部4の軸心方向の交差方向に向いた垂直面となっている。また、同図に破線で示すように、各凹部26、27、28、29内の環状の空間領域の体積を、それぞれA、A、A、Aで示している。また、各凹部の円筒面状の底面部の幅(図3横方向の長さ)をm、各底面部の径をφdで示すと共に、各傾斜面21a、22a、23a、24aの幅(図3横方向の長さ)にmを加えた値をnで示している。本例では、このnを凹部の幅と称する。さらに、各凸部21、22、23、24、25の円筒面状の上面部の径をφD、各凸部の高さをhとすると、この凸部の高さhはφD-φdに略等しい。また、φDは、樹脂管接続部41の外径に等しい。
【0074】
角度θは、15~30度の範囲が好ましい。この角度が小さ過ぎると樹脂管5の挿入は行い易くなる反面、抜け易くなるおそれがあり、逆に角度が大き過ぎると、挿入時に樹脂管5に応力が加わり挿入し難くなる傾向がある。角度θは、樹脂管接続部41の傾斜面46の角度θと同程度であると、樹脂管5の挿入が一層容易となるため好ましい。
【0075】
また、同図において、リング6の内周径をφd、テーパ面62と挿入端63との外方の境界部分の径をφDでそれぞれ示すと共に、反対側のテーパ面64と円筒面状の内周面との境界部分の位置と、挿入端63の位置との距離(同図横方向長さ)をLで示している。
【0076】
図3において、リング6の挿入端63が係合面45に当接して樹脂管5の固定が完了した状態においては、テーパ面62、係合面45、及び、2点鎖線で仮想的に示した樹脂管5の外周面との間に包囲された領域として、同図にAで示した断面略三角形となる環状の空間が形成される。この空間領域を、充填スペースと称する。この充填スペースは、リング6の圧入により圧縮変形された樹脂管5の樹脂素材が逃げ込むスペースとなる。
また、このようにリング6の挿入端63が係合面45に当接することによって、樹脂管接続部41の凸部とリング6内周の溝部61との位置関係を正確に定めることも可能となり、溝部61への樹脂素材の充填に有利となる。
なお、本例においては、リング6内周の溝部61に入り込む樹脂素材の分も充填スペースの総和容積に考慮することが好ましいが、この溝部は「最小限の深さ」としているから、仮に考慮に入れなくても、樹脂管の固定力及び溝によるリング抜け落ち防止の両方の効果は十分に発揮されるため、本例では、充填スペースの総和容積に含めていなくても問題ない。
【0077】
図3において、クロスハッチングで示した環状の空間領域は、リング6の内周と樹脂管5が交差する領域を仮想的に示している。
【0078】
すなわち、樹脂管5が、その厚みが変わることなく継手部4の外周に拡径しながら嵌り込んだ状態に対し、この状態の樹脂管5の外周に圧入完了位置のリング6内周を重ねた状態を仮想すると、このリング6内周と樹脂管5外周との間には、交差領域が生じる。同図にクロスハッチングで示した環状の空間領域とは、この交差領域を示している。また、樹脂管5の厚みは模式的には同図のφD-φDに略等しくなる。
【0079】
ところで、このような押し出しにより樹脂素材が逃げ込むことが可能な領域は、リング6によって圧縮される領域より外側へ向かう樹脂素材の変形や逃げ出しは考慮しないものとすると、本例の場合、全ての凹部26~29内の容積、及び充填スペースの容積となる。よって、これら全ての凹部26~29の容積と充填スペースの容積を総和した容積が、当該交差領域の容積に対して同じかそれより小さい割合であれば、圧縮変形による樹脂素材の逃げ出し容積を、最大限でも受容することができる。したがって、リング6の圧入に伴って、リング6の奥側、すなわち挿入端63と係合面45との間から、圧縮変形された樹脂素材がはみ出してくることは、樹脂が膨張しない限り起こり得ない。
【0080】
これに対し、上記A~Aは、それぞれ凹部26~29内の体積であり、上記Aは充填スペースの容積である。また、上記Aは、押し出される樹脂素材の体積分であり、当該交差領域の体積にほぼ等しいから、このAがA~Aの和と同じかそれより小さい(1.0以下)割合であれば、少なくとも、容積的に最大限、樹脂管5の樹脂素材の圧縮変形を受容できるから、それぞれの凹部26~29内に樹脂素材を確実に充填しつつ、樹脂素材のはみ出し防止が確実なものとなる。
【0081】
一方で、樹脂管5の変形を許容できる容積を過度に確保してしまうと、逆に樹脂が充填されない空隙が生じやすくなり充填が不十分となるおそれがあるため、当該割合には、適宜下限値を設定しておくことが好ましい。ただし、この下限値は1.0に近過ぎても、樹脂の変形を許容する容積として不十分となる可能性がある。例えば、硬質の樹脂が偏りのある圧縮変形を受けた場合、部分的に許容容積を超えた変形が生じて樹脂のはみ出し等が生じる可能性も考えられる。また、樹脂管5の種類に応じて、異なる樹脂素材にもある程度共通して許容できる下限値の設定が好ましい。このような下限値として例えば0.8を挙げることができる。以上をまとめると、以下の関係となる。
【0082】
【数1】
【0083】
ただし、樹脂素材は、実際にはリング6の圧入によって、ある程度は体積に圧縮が生じる場合もある。この場合、実際にリング6の圧入によって押し出される樹脂素材の体積Aは、図3に示している交差領域の体積よりも小さくなる。
【0084】
なお、図示していないが、本例の構造に限らず、一般的な継手部、樹脂管、リングに対しても本発明を用いることができる。継手部に挿入完了状態の樹脂管に対して、圧入完了位置のリングを仮想すると、リング内周と樹脂管の外周との間には、交差領域が生じる。この交差領域の体積Vがリングに押し出される樹脂素材の体積に略等しい。また、この仮想状態において、リング内周と樹脂管外周との間の空隙の体積の総和をV、継手部外周と樹脂管内周との間の空隙の体積の総和をVとすると、少なくともV+V>Vであれば、各凹部内に樹脂素材を確実に充填しつつ樹脂素材のはみ出し防止を容積構造的に担保できる。
【0085】
図3に示すように、本例では、境界部分30に配置した凸部21は、その一つ外側の凸部22と略同じ高さhに設定しているが、これ以外にも例えば、この凸部22の高さをhよりやや低くしても良い。この場合は、例えば継手部4に挿入し切った位置で、樹脂管5の先端面51が拡径していなくても、この先端面51が凸部21に引っ掛からずに確実に先端面51が係合面45に到達できる。また、この挿入完了状態で、先端面51付近の内周と凸部21の上面部との間には僅かに空隙が確保できるから、圧縮変形される樹脂の逃げ込むスペースが確保され、樹脂素材のはみ出しの防止もより確実となる。
これにより、樹脂管に固定リングを圧入して固定した後、樹脂管の樹脂素材が飛び出すのを防止して、樹脂管を装着完了した後の見栄えをよくすることができる。
【0086】
続いて、本発明における樹脂管用継手付きバルブ及び樹脂管用継手の接続部に樹脂管を固定する方法並びに本発明の樹脂管用継手の作用を説明する。図5は、本例の樹脂管用継手に樹脂管の挿入とリングの圧入の手順を模式的に示した説明図であり、(a)は樹脂管を挿入する途中の状態、(b)は樹脂管の挿入が完了した状態、(c)はリングを圧入する途中の状態を模式的に示したものである。
【0087】
先ず、図5(a)において、接続部41に対して樹脂管5の内周を嵌め込むように近付けて、樹脂管5を拡径させながら接続部41に挿入する。樹脂管5を接続部41の軸心方向奥側へ向けて挿し込むと、傾斜面46が樹脂管5を拡径させながら樹脂管5の内周面に滑り込んでいく。
樹脂管5の内径は、接続部41の外径より所定の割合だけ小さくなっており、傾斜面46が手前側に向けて突出しているので、樹脂管5の先端面51の内側を全周に亘って容易に傾斜面46に調心させながら被せることができ、樹脂管5の挿入が容易になる。
【0088】
図5(b)は、先端面51が鍔部42の係合面45に全周に亘って偏りなく当接し、樹脂管5の挿入が完了した状態を示している。この状態において、樹脂管5の先端面51内周付近が最も奥側の凸部21(第1凸部)の上面部を全周に亘って偏りなく被覆させた状態となる。
【0089】
図5(c)は、リングを圧入する途中の状態を示している。接続部41に挿入が完了した樹脂管5に向けて、リング6を圧入させて、樹脂管5を完全に継手部4に固定して樹脂管5の接続を完了させる。
【0090】
樹脂管5の挿入完了後の状態からリング6のテーパ面62を係合面45に向けて近付けて、このテーパ面62を接続部41に嵌り込んで拡径している樹脂管5の上面まで位置させて、固定リング6を圧入していく。
ここで、テーパ面62は、同様にテーパ状に拡径している樹脂管5の外周の形状に適合しているから、テーパ面62の全周に亘って偏りなく調心されながらリング6を圧入していくことができる。リング6の挿入端63を係合面45に全周に亘って偏りなく当接させて、リング6の圧入が完了する。
【0091】
樹脂管5にリング6が圧入されると、リング6の内周の平坦面65で樹脂管5の外周面を圧縮し、樹脂管5の内周面と接続部41の外周面が密着して、樹脂管5の内周面の樹脂素材が接続部41の凹部に押し込まれ、樹脂素材が接続部の凹部をすべて充填する。
また、樹脂管5の外周面では、リングによる圧縮により、樹脂管5の外周の一部が溝部61内に樹脂素材が入り込み、樹脂管5の外周にクサビ部52を一体に形成する。
【0092】
すなわち、リング6の樹脂管5への圧入過程において、平坦面65と当接した樹脂管の樹脂素材に相当する体積分が、圧縮変形によって押し出されて接続部41の凹部に充填され、また、一部が奥側の充填スペースに逃げ込んで樹脂素材が充填スペースを充填する。一方で、樹脂管の外周面にはクサビ部52が一体に形成される。
【0093】
ここで、押し出される樹脂素材の体積分は、樹脂素材の圧縮や膨張がない場合、この押し出しにより樹脂管5の樹脂素材が凹部や充填スペースの内部に逃げ込んで所定の容積を充填していくから、この樹脂素材の充填により樹脂管5が接続部41に対してシール性と耐引抜性を発揮する固着状態となる。
【0094】
係合面45と接続部41との境界部分30には、最も奥側となる凸部21(第1凸部)が配置されているので、最奥部を凹部としたとき比較して、接続部41のすべての凹部に樹脂素材を充填することが可能で、最奥部領域において十分に樹脂素材が充填されていると、係合面45に対する固着力も良好となり、樹脂管5に高い耐引抜性とシール性を持たせることができる。
【0095】
そして、固定リング6内周には、溝部61が設けられているから、樹脂管5に固定リング6の圧入が完了すると、樹脂管5の外周に形成されたクサビ部52がリング6内周の溝部と係止するので、樹脂管5に固定したリング6の移動に対しクサビ部52がクサビ作用を発揮する。すなわち、樹脂管5に固定したリング6に動く力が作用するとき、クサビ部52がストッパとなり、リング6の移動を抑止する作用が働く。
このため、クサビ部52のクサビ作用によって、固定リング6の移動や離脱を防ぎ固定リング6を当初の固定位置に留めることができる。
【0096】
また、溝部61の深さは、樹脂管5がクリープ状態の限界に達しても、固定リング6が固定位置から移動しない最小限の深さにしている。このため、樹脂管5がクリープ状態の限界に達し最大に収縮しても樹脂管5から固定リング6が離脱しないようにして固定リング6を当初の固定位置に留めることができる。
すなわち、図4に示すように、樹脂管5が収縮したときのクサビ部52の径方向の頂部の収縮dよりも溝部61の径方向の深さcの方が大きくなっているので、樹脂管5が最大に収縮したときでもリング6の溝部61とクサビ部52との係止状態が保持されて、クサビが外れることなくクサビ部52によるクサビ作用によって確実に固定リングの移動および離脱を防ぎ、固定リング6を当初の固定位置に留めることができる。
【0097】
また、リング6内周にある溝部61は、樹脂管5がクリープの限界に達したときでも、固定リング6が固定位置から移動しない程度の最小限の深さであるから、リング6の離脱を抑制するために、過度に深くする必要がなくかつ溝部61に入り込む樹脂素材が最小限でよいから、樹脂素材をタケノコ溝の凹部に十分に充填することができ、樹脂管5の内周面と樹脂管接続部41の外周面に良好な密着性を保持でき、樹脂管5が最大に収縮しても継手部4に樹脂管5を固定する固定力を維持しやすくなる。
【0098】
よって、本発明は、樹脂管5がクリープ限界に達したときでも樹脂管5からリング6が離脱するのを確実に防止しながら、継手部4に樹脂管5を固定する固定力を維持可能であるから、耐引抜性能の向上し、良好なシール性能も保持できる。
【0099】
さらに、樹脂管5に固定リング6の圧入が完了した状態において、固定リング6の溝部61は、テーパ面62とは対向していない凸部と対向している。すなわち、図3図4に示すように、樹脂管5に固定リング6の圧入が完了した状態において、リング6の溝部61が、樹脂管接続部41の最奥部の凸部21(第1凸部)の隣の手前側の凸部22(第2凸部)と対向する位置にある。
このため、第2凸部22が樹脂素材を外方に押し込んで、確実に溝部61の頂部(最も深い部分)にまで、樹脂管5の樹脂素材が充填されるから、樹脂管5の外周面にクサビ部52を形成することができる。
しかも、クサビ部52を形成するために必要な樹脂素材が最小限でよく、樹脂管接続部41の凹部に充填する樹脂素材を十分に確保して、樹脂管5の内周面と接続部41の外周面の密着力を低下させることなく、継手部4に樹脂管5を固定する固定力を維持できる。
【0100】
そして、溝部61はテーパ面62ではなく、テーパ面62の近傍でリング6内周の平坦面65に設けられているから、リング6圧入の際に樹脂管5を傷つけ難い。
ここで、リング6圧入のとき、樹脂管5の外周面の樹脂素材はテーパ面62を埋めるように充填されて、樹脂管5の外周側がテーパ62側に沿って屈曲することになるが、この屈曲部付近は他の部位に比べると強度的に劣る傾向にある。
リング6内周の溝部61がテーパ面62に近すぎると、必然的にこの強度が劣る部位にタケノコ溝の凸部が対向することになるため、この凸部の角等が樹脂管5の強度が弱い部位に作用し、これが起点となって樹脂管5の破断が生じやすくなる恐れがあるが、少なくとも、リング6のテーパ面62とは重ならない第2凸部22に対向するように溝部61を設けるため、樹脂管5が屈曲する部位に近い位置にタケノコ溝の凸部が対向しなくなるので、樹脂管5の破断が生じ難くなる。
【0101】
また、固定リング6の先端面63側にはテーパ面62が設けられているから、樹脂管5の圧縮変形に伴い、最奥部領域付近の樹脂素材は、空隙である充填スペース内に押し出されて充填される。圧縮された樹脂管の樹脂素材が、所定の充填領域に確実に充填されて、固定リング6から樹脂管の樹脂素材がはみ出すのを防止することができる。
【0102】
また、リングの奥側に溝部61を設けているので、樹脂管の樹脂素材を溝部61に十分に充填することができる。仮に、リングの溝部61を手前側(先端側)に近づけて設けた場合には、奥側の樹脂素材がテーパ面やタケノコ溝の凹部に充填された後に、溝部61内に充填されることになるので、溝部61への樹脂素材の充填が不足し、リング6の抜けを防止する効果が十分に得られなくなる可能性がある。
そのため、リング6内周のテーパ面62とは重ならない位置で、もっとも奥側の凸部22(第2凸部)に対向する位置にリング内周の溝を設ければ、樹脂素材のリング6内周溝部61内への十分な充填を行いつつ、樹脂管5の破断も防止するという効果も得られる。
一方で、リング6圧入の圧入方向が定まっている場合、作業者が挿入方向を間違える可能性もあり得る。そのような挿入方向の誤りを防止することを重視する場合には、リング6内周の溝部61は、樹脂管接続部41の中央の凸部に対向させるようにすると好ましい。
【0103】
また、樹脂管接続部41の外周に設けた複数の凸部の高さを同じにしたときには、樹脂管5の樹脂素材が外方に押し出される分量を最小限しながら、樹脂管接続部41の凹部に充填する樹脂素材を十分に確保して、リング6圧入の際に樹脂管接続部41のタケノコ溝の凹部に樹脂管5の樹脂素材を多く充填することができるから、樹脂管5と樹脂管接続部41の密着力を高めることができる。
このため、バルブに接続する樹脂管用継手の樹脂管にクリープが生じて樹脂管が最大に収縮した場合でも、継手部に固定した樹脂管の固定力を保持して継手部から樹脂管が抜けるの抑制することができる。
加えて、固定リング6の圧入の際に、樹脂管5にかかる応力を分散することができ、樹脂管5の変形や屈曲を低減してリング圧入の際の樹脂管の破断を防止するのに効果的である。
【0104】
また、溝部61の断面形状が、クサビ形形状、V字形状又は三角形形状であると、溝部61に樹脂素材が入り込みやすく、樹脂管の外周表面にクサビ部52を一体形成しやすい。
そして、樹脂素材の充填によって形成されたクサビ部52がリング6内周の溝部61に引っ掛かりやすくなるので、溝部61にクサビ部52が係止しやすくなってリング6に対してクサビ作用を発揮することができる。このため、圧入した固定リング6を所定の固定位置に留めることができる。
【0105】
このように、本発明では、クリープが生じやすい環境下で使用されて樹脂管がクリープの限界に達する可能性があっても、樹脂管用継手の接続部に挿入した樹脂管を固定する固定リングの移動や離脱を確実に防止して、樹脂管を継手部に固定する固定力を十分に維持可能にしている。
【0106】
また、本願発明では、バルブや継手、樹脂管の口径に関係なく適用することが可能であり、複雑な加工や設計は必要ないので、低コスト化にも寄与する。
【0107】
続いて、図6は、他例の樹脂管用継手付きバルブ100の断面図である。図6において、継手部4をバルブ本体2に一体に設けた以外は、上記の樹脂管用継手付きバルブ1と同様であり、継手部の構造も同様であるため、同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0108】
図6に示すように、本例では継手部4をバルブ本体2に一体に設けており、継手部4は、ボデー部3の両側面から直線状に突出した樹脂管接続部41内に流路が形成される。継手部4をボデー部3と一体に形成されるため、樹脂管用継手を準備して装着することなくバルブ本体2に直接樹脂管を接続して使用することができる。
【0109】
以上、本発明の樹脂管用継手付きバルブについて説明したが、この継手構造を樹脂管用継手に適用した場合でも同様の作用効果を奏する。本発明の構造を、バルブや継手に適用する場合、サイズは限定されないが、例えば20A~100Aのサイズが特に好適である。
【0110】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0111】
<試験例>
本発明の樹脂管用継手について試験した。試験例は、本発明を限定するものではない。一例として、給水用ポリエチレン管についてクリープ試験前と試験後で樹脂管がどの程度収縮するか試験した。
クリープ試験は、各種口径の給水用のポリエチレン管を用い、ポリエチレン管の両端に上記の樹脂管用継手の継手構造を接続したものを用いて、水温80℃、1.0MPaの内圧をかけた状態で1000時間保持した。この条件は、20℃の条件で50年使用した条件に相当し(ISO12162、PE100試験)、クリープの限界に達する条件となる。試験前と試験後において、両端に接続した継手構造のリング付近のポリエチレン管の外径を計測し、その差分を管全体の収縮量とし、これを1/2した値をポリエチレン管の厚みの収縮量とした。
【0112】
【表1】
【0113】
表1は、試験結果である。この結果から、給水用のポリエチレン管の場合、管の厚みの収縮量は0.05~0.10mmであることがわかった。よって、例えば固定リング6内周の溝部61の深さを約0.5mmとすれば、クリープの限界に達して樹脂管が最大に収縮してもリングの抜けを防止することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 樹脂管用樹脂管付きバルブ
2 バルブ本体
4 継手部
5 樹脂管
6 固定リング(リング)
21 凸部(第1凸部)
22 凸部(第2凸部)
41 樹脂管接続部(接続部)
45 係合面
51 先端面
52 クサビ部
61 溝部
62 テーパ面
63 挿入端
65 平坦面
a 溝部の幅
b 第2凸部の幅
c 溝部の深さ
d 樹脂管が収縮したときのクサビ部の頂部の収縮量
図1
図2
図3
図4
図5
図6