(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072963
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182683
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】517207875
【氏名又は名称】ダイナミックマップ基盤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】雨谷 広道
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA21
5H181CC04
5H181CC24
5H181EE11
5H181EE13
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
(57)【要約】
【課題】道路における管理対象物が検出されると、適切な位置情報を用いて容易に道路状態を管理する。
【解決手段】情報処理方法は、プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、プロセッサが、車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得すること、レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、管理対象物が検出された第1位置を特定すること、管理対象物に関する情報に基づいて、第1位置の道路の状態管理を行うこと、を実行する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記プロセッサが、
車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得すること、
レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、前記管理対象物が検出された第1位置を特定すること、
前記管理対象物に関する情報に基づいて、前記第1位置の前記道路の状態管理を行うこと、を実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記状態管理を行うことは、
前記地図データにおいて、前記第1位置の前記道路の状態を更新することを含む、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記状態管理を行うことは、
前記地図データが静的データを含む第1情報と動的データを含む第2情報とを含む場合、前記管理対象物に基づいて、前記第2情報に含まれる前記道路の状態を更新することを含む、請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記状態管理を行うことは、
前記管理対象物の種類に応じて特定される他の情報処理装置に、前記管理対象物に関する情報を送信することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記状態管理を行うことは、
所定範囲内で前記管理対象物が所定回以上検出された場合に、前記道路の状態を管理することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記状態管理を行うことは、
所定時間内に前記管理対象物が所定回以上検出された場合に、前記道路の状態を管理することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記情報処理装置は、車載機を含み、
前記状態管理を行うことは、
前記車載機から、前記第1位置に関する位置情報と、前記管理対象物に関する情報とを所定の情報処理装置に送信することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記管理対象物は、前記道路の劣化に関する対象物、前記道路沿いの設置物、前記道路上の走行を妨げる障害物、前記道路上の人又は車両、及び前記車載センサに含まれる撮像装置の制御に変化を与える対象物の少なくとも1つを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項9】
情報処理装置に含まれるプロセッサに、
車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得すること、
レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、前記管理対象物が検出された第1位置を特定すること、
前記管理対象物に関する情報に基づいて、前記第1位置の前記道路の状態管理を行うこと、を実行させるプログラム。
【請求項10】
プロセッサを含む情報処理装置であって、
前記プロセッサが、
車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得すること、
レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、前記管理対象物が検出された第1位置を特定すること、
前記管理対象物に関する情報に基づいて、前記第1位置の前記道路の状態管理を行うこと、を実行する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の異常個所を管理する技術がある。例えば、一般のユーザの車両が道路を走行しているときに、道路の異常場所を自動的に検出して特定し、ユーザに報知するように構成し、更に、報知されたユーザが、特定された道路の異常場所をカメラで撮影した画像を、特定された道路の異常場所の位置情報と共に、管理センタへ送信する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、道路の異常場所を検出して特定しているが、詳細な異常場所を特定することはできない。さらに、ユーザは異常場所の近辺まで行って詳細な異常場所を特定し、デジタルカメラ等で異常場所を撮影しなければならず、煩雑な処理が必要であった。
【0005】
他方、近年、高精度な地図データが生成され、この地図データの精度レベルは、約0.5mでの精度を可能とし、レーンを区別することが可能となっている。
【0006】
そこで、本発明は、道路における管理対象物が検出されると、適切な位置情報を用いて容易に道路状態を管理することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理方法は、プロセッサを含む情報処理装置が実行する情報処理方法であって、前記プロセッサが、車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得すること、レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、前記管理対象物が検出された第1位置を特定すること、前記管理対象物に関する情報に基づいて、前記第1位置の前記道路の状態管理を行うこと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、道路における管理対象物が検出されると、適切な位置情報を用いて容易に道路状態を管理することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る地図データの階層構造の一例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る車両の構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る車両のCPUの構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るデータベースの一例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る道路管理情報の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る管理対象物の検出例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る車両側の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係る状態管理処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0011】
<システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1の構成の一例を示す図である。
図1に示す情報処理システム1は、高精度ロケータを搭載する車両10と、情報処理装置20と、GNSS(Global Navigation Satellite System)において利用される測位衛星30を含み、これらはネットワークNを介して相互にデータの送受信をすることが可能である。また、車両10や情報処理装置20の数は1つ以上あってもよい。
【0012】
車両10は、高精度ロケータを搭載する車両である。また、車両10は、GNSSの測位衛星30から信号を受信し、高精度ロケータを用いて自車両の位置情報を検出可能である。また、車両10は、自動運転システムを搭載し、自動運転(自律走行)が可能な車両でもよい。
【0013】
高精度ロケータは、衛星測位システムからの信号に基づきレーン単位での位置を測定可能なロケータであり、公知のロケータを使用すればよい。高精度ロケータは、例えば、準天頂衛星からの情報を受信し、後述する高精度3次元地図データと組み合わせることで、レーン単位での車両10の位置情報を取得することが可能である。例えば、高精度ロケータを用いることで、車両位置の精度が約0.5m以下に高められる。位置情報は、例えば緯度、経度、高度の3次元位置情報、又は緯度、経度の2次元位置情報を含む。
【0014】
測位衛星30は、位置情報の計測に必要な信号を送信する衛星である。例えば、測位衛星30は、GNSSに用いられる衛星であり、高精度な位置情報に関する信号を送信可能な衛星(例えば準天頂衛星)を含んでもよい。
【0015】
情報処理装置20は、例えばサーバであり、車両10から、高精度ロケータにより取得される車両10の位置情報等を取得する。また、情報処理装置20は、後述するとおり、車両10により検出された管理対象物に関する情報を取得し、この管理対象物と、検出された際の高精度な位置とを用いて道路の状態を管理する。なお、情報処理装置20は、複数の情報処理装置から構成されてもよい。
【0016】
<地図データの概要>
ここで、本実施形態で用いられる地図データの概要について説明する。本実施形態で用いる地図データは、例えば、自動運転等に用いられる高精度な3次元地図のデータである。具体例としては、この地図データは、周辺車両の情報や交通情報といった、より動的な情報が付加されたリアルタイムに提供されるダイナミックマップと呼ばれる地図のデータである。本実施形態で用いられる地図データは、例えば4つの階層に分類される。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る地図データの階層構造の一例を示す図である。
図2に示す例では、地図データは、静的情報SI1、準静的情報SI2、準動的情報MI1、動的情報MI2に分類される。
【0018】
静的情報SI1は、3次元の高精度な基盤的地図データ(高精度3次元地図データ)であって、路面情報、車線情報、3次元構造物等を含み、地物を示す3次元位置座標や線形ベクトルデータから構成される。準静的情報SI2、準動的情報MI1及び動的情報MI2は、時々刻々と変化する動的データであって、位置情報を基に静的情報に重畳されるデータである。
【0019】
準静的情報SI2は、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報などを含む。準動的情報MI1は、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報などを含む。動的情報MI2は、ITS(Intelligent Transport System)情報を含み、周辺車両、歩行者、信号情報などを含む。
【0020】
ダイナミックマップの実現には、静的情報SI1に対応する高精度3次元地図データ(以下、「HD(High Definition)マップ」とも称する。)の構築が重要になる。HDマップは、レーン単位(車線単位)で管理可能な所定の精度レベルを有する。例えば、精度レベルとして、デジタル化された地図でその位置や高さの精度を示すために用いられる地図情報レベルが用いられると、HDマップは、地図情報レベル500(相当縮尺1/500)程度及び地図情報レベル500より精緻なレベルを有するマップである。
【0021】
以下、本実施形態に係る、道路管理に用いられる車両10や情報処理装置20等について説明する。
【0022】
<車両の構成>
図3は、本発明の一実施形態に係る車両10の構成の一例を示す図である。
図1に示す例では、車両10は、車載機として、高精度ロケータ101と、プロセッサ102と、各種センサ103と、通信装置104とを備える。また、車両10は、車載機を含む情報処理装置を備えてもよい。
【0023】
高精度ロケータ101は、例えば精度50cmで高精度に自車位置を演算するロケータであり、精度50cm程度以下であるので結果的にレーン単位での位置を測定することが可能になる。また、高精度ロケータ101は、測位衛星30からの測位補強信号や搬送波位相を用いた測位を行ったり、カメラを用いたレーンマップマッチングを行ったり、GNSSのRawデータを用いて精度評価を行ったりしてもよい。
【0024】
プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、車両10の運転制御等を行い、又は、外部の装置とのデータの送受信を制御する。各種センサ103は、車載カメラ、車速センサ、加速度センサを含む。通信装置104は、外部の装置とデータの送受信を行う。例えば、通信装置104は、高精度ロケータ101により取得された車両10の位置情報を情報処理装置20に送信したり、各種センサ103により検出された管理対象物に関する情報を送信したりする。管理対象物に関する情報は、例えば、車載カメラにより撮像される画像を含む。
【0025】
<車両のプロセッサの構成>
図4は、本発明の一実施形態に係る車両10のCPU102の構成の一例を示す図である。CPU102は、車両10内の記憶装置(不図示)に記憶されるプログラムを実行することで、走行制御部112、第1取得部113、第1検出部114、第1管理部115、第1送受信部116を構成する。
【0026】
また、CPU102は、後述する各部の処理を制御し、車両10の走行制御又は道路管理に関する処理を実行するように構成されてもよい。
【0027】
走行制御部112は、各種データを用いて、車両10の走行を制御する。例えば、走行制御部112は、車両10の自動運転を制御したり、高精度ロケータ101、各種センサ103、通信装置104を制御したりする。
【0028】
第1取得部113は、各種センサ103によりセンシングされた各センサ情報を取得する。各センサ情報は、例えば、加速度センサにセンシングされる加速度情報、車載カメラにより撮像される画像情報、角速度センサによりセンシングされる角速度情報などの少なくとも1つを含む。
【0029】
また、第1取得部113は、高精度ロケータ101により測定される位置情報を取得してもよい。取得された高精度な位置情報は、第1管理部115に出力される。
【0030】
第1検出部114は、各種センサ103の車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて、道路における所定の管理対象物を検出する。例えば、第1検出部114は、車載カメラにより撮像される画像を用いて物体認識することで、所定の管理対象物を検出したり、過去画像と比較することで、過去画像と相違する部分を管理対象物として検出したりする。また、第1検出部114は、加速度センサや角速度センサを用いて路面の振動状態を認識し、この振動状態に基づき管理対象物を検出したりする。なお、車両10から各センサ情報が情報処理装置20に送信される場合、第1検出部114は、情報処理装置20に設けられてもよい。
【0031】
管理対象物は、例えば、道路の劣化に関する対象物、道路沿いの設置物、道路上の走行を妨げる障害物、道路上の人又は車両、及び車載センサに含まれる撮像装置の制御に変化を与える対象物の少なくとも1つを含む。
【0032】
道路の劣化に関する対象物は、例えば、道路の轍、かすんだ区画線(白線、中央線など)、標識、標示、水たまり箇所、車両振動箇所(ポットホール、パンプ、段差、マンホール、ジョイント部など)などを含む。これらの対象物を検出することにより、例示として、道路補修を適切に実行したり、所定の管理会社に連絡したりすることが可能になる。
【0033】
道路沿いの設置物は、例えば、植栽、瓦礫、土砂などを含む。これらの対象物を検出することにより、例示として、植栽の伐採のタイミングを把握したり、対象物の管理会社に連絡したり、土砂等の除去要請などを役所に連絡したりすることが可能になる。
【0034】
道路上の走行を妨げる障害物は、例えば、車線規制を示すオブジェクト(カラーコーン(登録商標)、三角灯、規制線など)、災害による不通箇所(土砂崩れ、雪崩、冠水など)、水たまり箇所、車両振動箇所(ポットホール、パンプ、段差、マンホール、ジョイント部など)、位置が低いカーブミラー、段ボールなどの落下物などを含む。これらの対象物を検出することにより、例示として、不通であることを周辺のユーザ(ドライバ)に知らせたり、対象物の管理会社に連絡したり、走行の妨げになる対象物を取り除いたりすることが可能になる。
【0035】
道路上の人又は車両は、例えば、歩道や道路の歩行者又は自転車を含む。これらの対象物を検出することにより、例示として、人や車両の数を管理したり、この数を管理したり会社に連絡したりすることが可能になる。
【0036】
車載センサに含まれる撮像装置の制御に変化を与える対象物は、例えば、カメラ制御の変化箇所を含み、具体例としては、トンネルの入口又は出口の前後、ガラス張りの建物(太陽光反射を受ける)、夜間において、自車ライト以外での光源が少ない箇所などを含む。これらの対象物を検出することにより、例示として、カメラよりもLiDARなどに優先度を上げるよう制御パラメータの重要度を変更することが可能になる。
【0037】
第1管理部115は、上述した管理対象物のうち、少なくとも1つの管理対象物が検出されると、検出時点の位置情報を特定し、この位置情報と、検出された管理対象物に関する情報とを用いて道路の状態を管理する。道路の状態管理については後述する。なお、第1管理部115の道路管理機能の一部が別の装置(例えば情報処理装置20)に設けられる場合は、第1管理部115は、特定した位置情報と、管理対象物に関する情報とを所定の情報処理装置、例えば情報処理装置20に送信するように制御してもよい。
【0038】
第1送受信部116は、第1管理部115の制御により、管理対象物に関する情報と、位置情報とを、通信装置104を介して情報処理装置20に送信する。また、第1送受信部116は、第1取得部113が取得した各種センサのセンサ情報や、位置情報を情報処理装置20に送信するようにしてもよい。また、第1送受信部116は、管理対象物に関する情報と、位置情報とともに、車両10の識別情報(ID)を情報処理装置20に送信してもよい。
【0039】
これにより、車両10側で管理対象物を検出し、高精度ロケータ101で高精度な位置情報を測定すれば、車両10側で、位置情報(例えばレーン単位での位置情報)と管理対象物とを管理することが可能になる。また、検出された管理対象物の種類やカテゴリに応じて、車両10は、この車両10に接続される他の車両に対して、管理対象物の状態について報知することができる。例えば、管理対象物が車線不通(車線走行不可)のカテゴリに属する場合、どの車線が走行不可なのかを周辺の車両に報知することができる。
【0040】
<情報処理装置の構成>
図5は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の構成の一例を示す図である。情報処理装置20は、1つ又は複数の処理装置(CPU)210、1つ又は複数のネットワーク通信インタフェース220、記憶装置230、ユーザインタフェース250及びこれらの構成要素を相互接続するための1つ又は複数の通信バス270を含む。なお、ユーザインタフェース250は必ずしも必要ではない。
【0041】
記憶装置230は、例えば、DRAM、SRAM、他のランダムアクセス固体記憶装置などの高速ランダムアクセスメモリである。また、記憶装置230は、1つ又は複数の磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、又は他の不揮発性固体記憶装置などの不揮発性メモリでもよい。また、記憶装置230は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体でもよい。
【0042】
また、記憶装置230の他の例として、CPU210から遠隔に設置される1つ又は複数の記憶装置でもよい。ある実施形態において、記憶装置230はCPU210により実行されるプログラム、モジュール及びデータ構造、又はそれらのサブセットを格納する。
【0043】
記憶装置230は、情報処理システム1により用いられるデータを記憶する。例えば、記憶装置230は、車両10の道路管理に関するデータを記憶する。具体例としては、ダイナミックマップ、HDマップ、道理管理情報などが記憶装置230に記憶される。
【0044】
図6は、本発明の一実施形態に係るデータベースの一例を示す図である。
図6に示す例では、記憶装置230はダイナミックマップデータを高精度地図データベースとして記憶する。上述したように、ダイナミックマップデータは、静的情報SI1と、準静的情報SI2と、準動的情報MI1と、動的情報MI2とを含み、それぞれの情報が関連付けられている。
【0045】
ダイナミックマップデータに含まれる静的情報SI1は、HDマップを含み、HDマップは、地物データを含む。この地物データは、アプリケーションがダイナミックマップを利用する際に基本となる情報であり、信号機、車道、車線などの地物に関するデータを含む。
【0046】
図7は、本発明の一実施形態に係る道路管理情報の一例を示す図である。
図7に示す例では、道路管理情報は、記憶装置230に記憶され、車両IDに関連付けて、管理対象物の種類や位置情報、日時情報、画像情報などが含まれる。
【0047】
図7に示す「車両ID」は、車両を識別可能な情報である。「管理対象物」の情報は、各車両10により検知された管理対象物である。「位置情報」は、管理対象物が検出された位置を示し、レーン単位で特定可能であり高精度な位置情報である。「日時情報」は、管理対象物が検出された日時を示す情報である。画像情報は、管理対象物を含む画像の情報である。また、
図7に示す情報以外にも、管理対象物のカテゴリ(災害、車線不通、落下物、走行妨害、補修、数把握など)が道路管理情報に含まれてもよい。
【0048】
図5に戻り、本実施形態に係る車両10の道路管理に関する処理を実行するCPU210について説明する。CPU210は、記憶装置230に記憶されるプログラムを実行することで、道路管理部212、第2送受信部213、第2取得部214、第2特定部215、第2管理部216を構成する。
【0049】
CPU210は、後述する各部の処理を制御し、各車両10によりセンシングされるセンサ情報を用いて検出される管理対象物に基づき、道路の状態を管理する処理を実行するように構成される。
【0050】
道路管理部212は、各種データを用いて、各車両10が走行する道路の管理を制御する。例えば、道路管理部212は、各車両10から、管理対象物に関する情報と位置情報とを取得すると、両者を対応付けて、高精度な位置での道路管理を制御する。
【0051】
第2送受信部213は、外部装置に対して、ネットワーク通信インタフェース220を介してデータの送受信を行う。例えば、第2送受信部213は、車両10や各測位衛星30からデータや信号等を受信する受信部として構成され、車両10や各測位衛星30にデータや信号等を送信する送信部としても構成される。具体例として、第2送受信部213は、各車両10から、高精度ロケータ101により取得される位置情報を受信し、道路の状態を含む道路状態情報を、所定のエリアに位置する各車両10に送信する。
【0052】
第2取得部214は、レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを取得する。例えば、第2取得部214は、記憶装置230から、地図情報レベル500又はそれ以上の精度を有するHDマップを取得する。
【0053】
また、第2取得部214は、衛星測位システムからの信号に基づきレーン単位での位置を測定可能なロケータ(例えば高精度ロケータ101)により出力される各車両10の位置情報を順に取得する。例えば、第2取得部214は、第2送受信部213により受信される車両10の位置情報を順に取得する。第2取得部214は、ネットワーク通信インタフェース220を介して、各車両10の位置情報を直接取得してもよい。
【0054】
また、第2取得部214は、各車両10から、車載センサにより取得されるセンサ情報を用いて検出される、道路における管理対象物に関する情報を取得する。例えば、第2取得部214は、車載カメラによる撮像画像の画像認識、又は加速度センサによる加速度情報の閾値判定などを用いて検出された所定の管理対象物に関する情報を、第2送受信部213から取得する。また、第2取得部214は、各車両10からセンサ情報を取得してもよい。
【0055】
第2特定部215は、レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データを用いて、管理対象物が検出された第1位置を特定する。例えば、第2特定部215は、第2取得部214により取得された高精度な位置情報を用いて、地図データ上において、管理対象物が検出された第1位置を特定する。
【0056】
第2管理部216は、検出された管理対象物に関する情報に基づいて、特定された第1位置の道路の状態管理を行う。例えば、第2管理部216は、
図7に示す例のように、車両IDに関連付けて、検出された位置情報と、管理対象物に関する情報に含まれる管理対象物の種類、画像情報、日時情報とを管理する。また、第2管理部216は、地図データにおける第1位置に、管理対象物の種類を示す情報を対応付けてもよい。
【0057】
これにより、道路における管理対象物が検出されると、適切な位置情報を用いて容易に道路状態を管理することが可能になる。例えば、走行不能なレーンや、落下物、災害時の不通などの管理対象物が、高精度な位置(例えばレーン単位)に対応付けられるので、高精度で、かつ適切に道路を管理することができるようになる。
【0058】
また、第2管理部216は、地図データにおいて、第1位置の道路の状態を更新することを含んでもよい。例えば、第2管理部216は、HDマップの第1位置に関連付けて、道路管理情報内のこの第1位置の道路の状態を、管理対象物に関する情報に基づいて更新する。HDマップと道理管理情報とは、例えば位置情報を用いて関連付けられる。
【0059】
これにより、地図データ上における第1位置に関連付けて、道路の状態を更新することが可能であり、地図データが他の装置等から参照される場合は、更新後の道路の状態を提供することが可能になる。
【0060】
また、第2管理部216は、地図データが静的データを含む第1情報と動的データを含む第2情報とを含む場合、管理対象物に基づいて、第2情報に含まれる道路の状態を更新することを含んでもよい。例えば、第2管理部216は、動的に変更しうる車線規制や災害時の車線不通の状態などを、地図データの動的データとして管理し、位置情報又は地物データに関連付けて、管理対象物に基づいて道路の状態を更新する。動的データは、例えば、上述した準静的情報SI2、準動的情報MI1、動的情報MI2のいずれかである。
【0061】
これにより、動的に変化しうる管理対象物に基づく道路の状態について、地図データの動的データに含まれる道路の状態として管理することで、更新された道路の状態を配信すること等が可能になる。その結果、管理対象物の周辺の装置に、現在の状態を報知することが可能になる。
【0062】
また、第2管理部216は、管理対象物の種類に応じて特定される他の情報処理装置に、管理対象物に関する情報を送信することを含んでもよい。例えば、第2管理部216は、管理対象物が、以下の種類に該当すれば,道路管理会社の情報処理装置に、位置情報と管理対象物に関する情報(画像等)とを送信する。
・道路上や標識を覆う物(植栽、瓦礫、ごみ等)
・補修が必要な道路、標識、区画線等の地物
・路上駐車(駐車場の待ち行列等を含む)
・落下物(段ボール、パンクの要因物(ねじ、釘等))
・車両振動箇所、乗り心地に影響する箇所
・災害などによる不通箇所(土砂崩れ、冠水、橋落下箇所等)
【0063】
また、第2管理部216は、管理対象物が、以下の種類に該当すれば,この管理対象物の位置から所定距離以内にいる車両等に、位置情報と管理対象物に関する情報(画像等)とを送信する。
・工事、事故などの車線規制
・災害などによる不通箇所(土砂崩れ等)
・交通量(人の混雑状況)
・道路上の一時設置物(カラーコーン(登録商標)、三角灯等)
・カメラ制御の変化箇所
なお、上記例は一例を示すものであり、管理対象物の状態を示す情報が適切な装置に送信されればよい。
【0064】
また、第2管理部216は、所定範囲内で管理対象物が所定回以上検出された場合に、道路の状態を管理することを含んでもよい。例えば、第2管理部216は、同一の所定エリア内で、同一の管理対象物が所定回以上検出された場合は、誤検出された管理対象物又は移動するような対象物などではなく、その位置に存在する管理対象物であると判定する。第2管理部216は、この管理対象物に基づいて、道路の状態を管理する。
【0065】
これにより、所定位置に存在する管理対象物を管理することができ、移動するような管理対象物を排除することが可能になる。その結果、道路の管理状態の信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、第2管理部216は、所定時間内に管理対象物が所定回以上検出された場合に、道路の状態を管理することを含んでもよい。例えば、第2管理部216は、所定時間(例えば10分)以内で、同一の管理対象物が所定回以上検出された場合は、誤検出された管理対象物又は一時的な管理対象物などではなく、定常的に存在する管理対象物であると判定する。第2管理部216は、この管理対象物に基づいて、道路の状態を管理する。
【0067】
これにより、定常的に存在する管理対象物を管理することができ、瞬間的又は一時的に存在する管理対象物を排除することが可能になる。その結果、道路の管理状態の信頼性を向上させることができる。なお、第2管理部216は、所定範囲内及び所定時間内に所定回以上検出される管理対象物に基づいて、道路の状態を管理してもよい。
【0068】
また、情報処理装置20は、気象情報を管理するサーバと連携し、気象データを取得し、地図データと気象データとを対応付けてもよい。この場合、情報処理装置20の第2特定部215は、所定の車両10の地図データ上の位置を特定し、特定された位置の気象データを特定する。また、第2特定部215は、車両10の進行方向又は目的地のエリアの所定時間後又は到着予定時刻の天気予報を特定する。
【0069】
次に、第2管理部216は、例えば、車両10の進行方向又は目的地が大雨予報であり、進行方向又は目的地のエリアに大雨による冠水又は浸水する可能性がある道路又は車線が存在する場合、事前にその道路又は車線を車両10に報知してもよい。第2管理部216は、大雨による冠水又は浸水可能性がある道路は、過去に管理対象物として管理したことがあるか否かで特定可能である。また、情報処理装置20は、災害時の浸水エリアを提示することが可能なアプリケーションがあれば、そのアプリケーションと提携し、浸水エリアのデータを取得するようにしてもよい。
【0070】
また、情報処理装置20は、地図データ上に仮想的な情報を付加し、車両10に危険を知らせてもよい。例えば、大雨時に、道路上で浸水した高さに応じて、浸水の深さを推定することが可能になる。そのため、情報処理装置20の第2管理部216は、は、高さ方向に延伸する地物(例えば電柱、信号機等)に対し、事前に仮想ラインを設定する。例えば、第1ラインは浸水1m、第2ラインは、浸水2mなどである。
【0071】
例えば、大雨時に冠水した窪んだ道路があり、どの車両も、この冠水した窪んだ道路を走行していなければ、管理対象物として冠水道路であることが検出されていない。この場合であっても、この窪んだ道路に到着する前の道路において、車両10が、地図データ上に設定された信号機等の仮想ラインと、車載センサなどで検知された実際の浸水ラインとを比較することで、現在何mまで浸水しているかを予想でき、進行方向の先にある冠水道路を把握することができる。
【0072】
これにより、事前に仮想情報と現在の状態とを比較することで、車両10に迫り得る危険を事前に察知させることができる。
【0073】
<管理対象物の検出例>
図8は、本発明の一実施形態に係る管理対象物の検出例を示す図である。
図8に示す例において、車両10又は情報処理装置20の第1検出部114は、道路上にある物体A1を検出する。例えば、第1検出部114は、車載カメラにより撮像された撮像画像を用いて物体認識を行い、物体A1を検出する。第1検出部114は、例えば、道路上に所定サイズ以上の物体A1を検出し、走行を妨げる障害物のカテゴリに分類してもよい。
【0074】
また、第1検出部114は、道路のひびA2を検出する。例えば、第1検出部114は、車載カメラにより撮像された撮像画像を用いて物体認識を行い、ひびA2を検出する。なお、物体認識について、第1検出部114は、検出したい管理対象物を事前に学習し、この学習済みモデルを用いて、管理対象物を検出してもよい。学習済みアルゴリズムは、画像を入力し、認識される管理対象物を出力する推論アルゴリズムを含む。
【0075】
また、第1検出部114は、道路沿いの区画線を覆う植栽A3を検出する。例えば、第1検出部114は、車載カメラにより撮像された撮像画像を用いて、区画線を覆う物体を検出する。第1検出部114は、区画線を遮る物体があれば検出すればよい。また、第1検出部114は、過去の画像との比較で、区画線を覆う物体を検出してもよい。
【0076】
第1検出部114が車両10に備えられる場合、第1送受信部116は、第1検出部114により管理対象物が検出されると、検出時点の撮像画像(例えば
図8に示すような画像)を含む管理対象物に関連する情報と、検出時点の位置情報とを情報処理装置20に送信する。
【0077】
<動作処理>
次に、情報処理システム1の車両10側の処理と、情報処理装置20側の処理とについて説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る車両側の処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、各車両10が走行中に実行する処理である。
【0078】
ステップS102において、車両10の第1取得部113は、車載センサから各種のセンサ情報を取得する。各種のセンサ情報は、画像情報、加速度情報などを含んでもよい。
【0079】
ステップS104において、車両10の第1取得部113は、高精度ロケータ101から車両10の位置情報を取得する。なお、ステップS102とS104との順序は問わない。
【0080】
ステップS106において、第1検出部114は、取得された画像情報や加速度情報に基づいて、管理対象物を検出したか否かを判定する。管理対象物が検出されれば(ステップS106-YES)、処理はステップS108に進み、管理対象物が検出されなければ(ステップS106-NO)、処理はステップS102に戻る。
【0081】
ステップS108において、第1送受信部116は、管理対象物に関連する情報と、位置情報とを情報処理装置20に送信する。
【0082】
以上の処理によれば、車両10が高精度ロケータ101を搭載することにより、レーン単位での位置が測定可能な車両10の位置情報を取得することが可能になる。また、車両10は、各種センサ情報を用いて道路における管理対象物を検出し、この管理対象物に関連する情報と高精度な位置情報とを情報処理装置20に送信する。
【0083】
図10は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS202において、第2取得部214は、車両10から送信された位置情報と管理対象物に関連する情報を取得したか否かを判定する。両情報が取得されれば(ステップS202-YES)、処理はステップS204に進み、両情報が取得されなければ(ステップS202-NO)、処理はステップS202に戻る。
【0084】
ステップS204において、第2特定部215は、レーン単位で管理可能な所定の精度レベルを有する地図データと、取得された位置情報とを用いて、管理対象物が検出された第1位置を特定する。
【0085】
ステップS206において、第2管理部216は、管理対象物に関する情報に基づいて、地図データ上の第1位置の道路の状態を管理する処理を実行する。
【0086】
図11は、本発明の一実施形態に係る状態管理処理の一例を示すフローチャートである。
ステップS302において、第2管理部216は、検出された管理対象物と、位置情報とに基づいて、地図データ上の第1位置の状態を更新する。例えば、第2管理部216は、管理対象物が検出された第1位置における道路の状態を、検出された管理対象物に関連する情報を用いて更新する。具体的には、第2管理部216は、第1位置に対し、車線規制、冠水、落下物などの情報を対応付ける。
【0087】
ステップS304において、第2管理部216は、管理対象物の種類又はカテゴリに応じて、報知処理が不要か否かを判定する。報知処理が不要であれば(ステップS304-YES)、処理は終了し、報知処理が必要であれば(ステップS304-NO)、処理はステップS306に進む。
【0088】
ステップS306において、第2管理部216は、管理対象物の種類に基づいて、報知先を特定する。報知先として、例えば、道路管理会社、所定位置の周辺にいる車両10等がある。報知先の特定について、第2管理部216は、例えば、管理対象物の種類に関連付けられた報知先の連絡先情報を参照すればよい。連絡先情報は、例えば記憶装置230に記憶される。
【0089】
ステップS308において、第2管理部216は、特定された報知先に、管理対象物に応じた内容を報知する。例えば、車線規制、冠水注意、補修道路あり等の情報が報知される。
【0090】
以上の処理によれば、各車両10により検出された管理対象物に関する情報と高精度な位置情報とを取得することで、管理対象物を高精度な位置を用いて容易に管理することができるようになる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。例えば、本発明は、車両10又は情報処理装置20が実行する処理について、一部の処理を、他の情報処理装置に移行したり、複数の情報処理装置を適宜統合したりしてもよい。
【0092】
<変形例>
【0093】
また、上述した実施形態や変形例では、車両10の走行について説明したが、走行レーンを走行する飛行体の場合にも本開示の技術を適用することができる。飛行体は、例えば、無人又は有人の飛行体、ドローン等を含む。
【符号の説明】
【0094】
1…情報処理システム、10…車両、20…情報処理装置、30…測位衛星、101…高精度ロケータ、102…プロセッサ、103…各種センサ、104…通信装置、112…走行制御部、113…第1取得部、114…第1検出部、115…第1管理部、116…第1送受信部、210…CPU、212…道路管理部、213…第2送受信部、214…第2取得部、215…第2特定部、216…第2管理部、220…ネットワーク通信インタフェース、230…記憶装置、250…ユーザインタフェース