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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073067
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】荷役時の船体姿勢自動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 27/00 20060101AFI20220510BHJP
   B63B 43/06 20060101ALI20220510BHJP
   B63B 79/10 20200101ALI20220510BHJP
   B63B 79/20 20200101ALI20220510BHJP
【FI】
B63B27/00 Z
B63B43/06 Z
B63B79/10
B63B79/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182834
(22)【出願日】2020-10-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】501251770
【氏名又は名称】本瓦造船 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】本瓦 誠
(57)【要約】
【課題】
荷役作業の安全性、正確性を向上させ、また船員の労務負荷を軽減すること。
【解決手段】
小型内航タンカーの荷役時には、現載貨状態と新載貨状態によりバラスト水配置計画を策定し、バラスト水配置計画に基づき、貨物弁(元側貨物弁12、末端側貨物弁13)、貨物ポンプ11、バラスト弁22、バラストポンプ21を遠隔操作して荷役作業を開始する。貨物タンク10及びバラストタンク20の液面高さに基づいて、小型内航タンカー1の喫水と船体傾斜を予想し、予想された船体傾斜が、予め定められた許容範囲を超えている場合には、バラストタンク20と貨物タンク10との流量比率を変更する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貨物タンクへの液体貨物の揚げ荷若しくは積み荷をするために配管経路を定める遠隔操作可能な貨物弁と、前記複数の貨物タンクから揚げ荷を行う遠隔操作可能な貨物ポンプと、複数のバラストタンクへのバラスト水の注排水をするために遠隔操作可能なバラスト弁と、複数のバラストタンクへの注排水を行う遠隔操作可能なバラストポンプと、前記複数の貨物タンク及びバラストタンクに夫々の液面高さを測定する液面センサと、船首と船尾の喫水を測定する喫水センサと、前記液面センサと喫水センサから測定値を取得する処理装置とを具備し、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプを遠隔操作可能な小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法であって、
現載貨状態と新載貨状態によりバラスト水配置計画を策定し、
前記バラスト水配置計画に基づき、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプを遠隔操作により荷役作業を開始し、
前記処理装置に、前記複数の貨物タンク及びバラストタンクの液面高さに基づいて、前記小型内航タンカーの喫水と船体傾斜を継続して予想し、前記予想された船体傾斜が、予め定められた許容範囲を超えているかどうかを判定するプログラムを実行させ、
前記許容範囲を超えている判定の場合には、前記液体貨物とバラスト水との流量比率が変更されるように、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプのいずれかを前記変更された流量比率に基づいて遠隔操作することを特徴とする小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法。
【請求項2】
請求項1の小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法において、
前記喫水センサからの測定値から船体傾斜を計算し、
前記計算された船体傾斜が、前記予め定められた許容範囲よりも大きい他の許容範囲を超えているときには、前記バラストポンプと前記貨物ポンプを止めて、荷役作業を一旦停止し、現状の状態からバラスト水配置計画を再策定して荷役作業を再開することを特徴とする小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法。
【請求項3】
請求項1の小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法において、
前記小型内航タンカーは、ライブカメラと、係船ロープの調整、張りの修正を遠隔で操作可能な巻き上げ装置とを船首と船尾に装備し、前記処理装置により、前記ライブカメラからのロープの映像からロープの張りは適切であるかを判断し、適切でない場合は前記ウインチを操作してロープの長さを調整することを特徴とする小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法。
【請求項4】
請求項1の小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法において、
前記処理装置は、遠隔線若しくはインターネットを介して陸上の電子計算機と通信し、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプの作動状況および貨物タンク液面、バラストタンク液面、船体姿勢についての陸上の電子計算機へ送ることを特徴とする小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法。
【請求項5】
複数の貨物タンクと複数のバラストタンクとを具備する小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢を監視する監視装置であって、
前記複数の貨物タンク及びバラストタンクに夫々の液面高さを測定する液面センサと、
船首と船尾の喫水を測定する喫水センサと、
前記液面センサと喫水センサから測定値を取得する処理装置と、
前記処理装置に実装され、前記複数の貨物タンク及びバラストタンクの液面高さに基づいて、前記小型内航タンカーの喫水と船体傾斜を継続して予想し、前記予想された船体傾斜が、予め定められた許容範囲を超えているかどうかを判定するソフトウェアを有することを特徴とする監視装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油や化学薬品等の液体貨物を運搬するタンカーにおける荷役時の船体姿勢自動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型内航船は、総トン(GT)が99~999の輸送機関であり、その多くは、船主経営の都合から199GT型、499GT型である。鉄鋼、石炭、液体貨物等の国内の産業基礎輸送を担う存在であるが、船員不足、高齢化(小型内航タンカー200GT~500GT未満で、平均51.4才)が大きな課題になっている。さらに、船齢が14年を超える老齢船も多く、自動化は遅れている。
【0003】
水深が4.5m以上の深さを持つ係船施設を岸壁というが、499GT型は5m程度である。499GT型が水深の浅い岸壁に着船して荷役作業をする際には、干満を考慮し、船底クリアランスを確保した上で行う必要がある。499GT型においては、一般的な船員定員は5名であり、各船員が夫々の担当持ち場において、荷役作業を行っている。
【0004】
尚、水深が4.5m未満の係船施設を物揚場といい、喫水が4m程度の199GT型が着船可能である。タンカー用途においては、199GT型は多くはないが、石油についての地域の配送基地になっている物揚場も国内には少なからず有り、199GT型は必要とされている。物揚場の浅い水深においても、船底クリアランスの確保は難しく、199GT型では船員定員も4名程度と少ないため船員の負担はさらに重い。
【0005】
図5に、小型内航タンカーにおける荷役作業例を示す。船員は、操舵室(船によっては荷役事務室を有し、そこで作業をする場合もある)、ポンプ室、荷役甲板の夫々の場所で分担して、荷役作業を行う。操舵室の室内には、液面監視装置、計測喫水を表示する喫水計と、電子計算機とが備えられている。液面監視装置により、船員は操舵室から貨物タンクの液面を監視することができる。電子計算機には、積付計算機と、復原性計算を行う復原性計算機(ソフトウェア)が実装されている。ここにおいて、積付計算機とは、船の安定性・船体強度などを評価するソフトウェアであり、船の運航に必要な各データ(貨物・バラスト・燃料・清水など)を入力するごとに計算が行われ、即座に喫水・トリム及び復原性(専ら、船の重心により支配される)の計算結果を表示する。積付計算機は、さらに船体強度の許容値を超える場合や喫水・排水量などが計画値を超えた場合などに、警告を表示することができる。
【0006】
ポンプ室には、バラスト弁(注水弁または排水弁)、貨物弁(元側貨物弁)、貨物ポンプ及びバラストポンプと貨物ポンプの操作パネルが備えられている。また、荷役甲板には、貨物タンクへ到る経路を決定するための貨物弁(末端側貨物弁)が設けられている。
【0007】
小型内航タンカーでは、通常3~4人の船員により荷役作業が行われる。船員は操舵室、ポンプ室、荷役甲板、船首尾甲板に配置(複数箇所を担当することもある)される。荷役事務室の船員は、荷役状況の確認と作業完了まで全体の指揮・進行を行う。ポンプ室の船員は、バラスト弁、元側貨物弁、バラストポンプ、貨物ポンプの運転と監視を行う。荷役甲板の船員は末端側貨物弁により貨物タンクまでの経路設定および、監視を行う。船首尾甲板の船員は、係船ロープの調整、張りの修正を行う。
【0008】
以下、図5に従い、操舵室の手順を中心に説明する。尚、積み荷の際には貨物は陸上に設置されたポンプ(陸上ポンプ)により送液され、揚げ荷の際には、船に設置された貨物ポンプにより送液される。
【0009】
前段階において、操舵室の船員は、電子計算機に現積載状態(貨物・バラスト・燃料・清水など)と喫水状態、及び、積み荷若しくは揚げ荷の予定量を電子計算機に入力する。電子計算機は、荷役終了時の新載貨状態、および荷役終了時の喫水およびトリムを計算する。船員は、電子計算機を使って目標の喫水/トリムとなるように各バラストタンクに対してどの程度のバラスト量を注水(または排水)したらよいか決めバラスト水配置計画を策定する。操舵室の船員は、バラスト水配置計画に基づきポンプ室、荷役甲板の船員に作業開始を指示すると、バラスト弁、貨物弁が開閉され、陸上ポンプ又は貨物ポンプ及びバラストポンプの運転が開始される。
【0010】
荷役作業の実行中において、操舵室の船員は、喫水計の計測喫水により船の喫水を確認する。また、液面監視装置により、貨物タンクの液面が目標液位に到達したかどうかを監視する。船体姿勢が不適正であれば、若しくは、復原性(船体重心位置等)が不適正であれば、一旦、陸上ポンプ又は貨物ポンプとバラストポンプを停止し、再度現在の喫水、現在の貨物タンクの液位に基づいてバラスト水配置計画を策定する。そして、これに基づいて、ポンプ室、荷役甲板の船員は、バラスト弁、貨物弁を開閉し、バラストポンプ(揚げ荷の場合は、貨物ポンプも)の運転が開始する。
【0011】
荷役作業の実行中において、操舵室の船員は、液面監視装置により、液面が目標の液位に到達したら貨物ポンプ又は陸上ポンプとバラストポンプの停止を指示する。
【0012】
以上が小型内航タンカーによる荷役作業の手順ではあるが、小型内航タンカーは、水深の浅い岸壁で荷役作業を行うことが多く、甲板上の船員は酷暑/極寒の中で荷役作業が完了するまで、その場に待機しなければならず、船員の労務負担の観点でも問題が大きい。
【0013】
荷役作業の自動化に関する技術が多くの特許文献に開示されている。例えば、特許文献1には、バラストタンクの液位計と、船首および船尾の喫水計に接続された中央制御部(マイクロコンピュータ)を有し、喫水に対するトリムおよびヒールの許容範囲を定めておき、荷役時に喫水、トリムおよびヒールを測定し、トリムまたはヒールが上記許容範囲を外れたときに、上記許容範囲内に戻すようにバラストタンクの弁の開閉を制御する船体姿勢自動制両方法が開示されている。単位時間当たりの荷役量と荷役総量をもとに、荷役時間を計算し、バラスト漲水/排水に要する時間との比較をし、一定値を超えていなければ、トリム上限/下限を超えないようにバラストタンクの弁の開閉制御をする。弁が全開でトリムが修正できない事態が発生したら制御不能のアラームを発する。特許文献1の技術では、中央制御部に喫水、トリムが取得され、単位時間当たりの荷役量と荷役総量をもとに計算された荷役時間をもとに、バラストタンクの弁の開閉を制御することにより、自動化を進めている。
【0014】
また、特許文献2には、搬入されるべき荷物の重量及び洋上倉庫内の位置を荷物搬入前に予め予測し、この予測値及び洋上倉庫の現実の水平度、喫水に基づいてバラストタンク内への液体の注排出を制御する洋上倉庫が開示されている。荷役の重量と配置位置により載荷状態を予測し、洋上倉庫を略水平に保つようにバラストタンクの海水の配置計画を立てる。荷役が開始されたら、海水の配置計画に基づきバラストタンクへの注排水の開閉弁を行う。荷役の終了時に喫水及びトリムが許容範囲になければ、バラストタンクの海水配置を再度計画する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭57-104491号公報
【特許文献2】特開平3-10988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1においては、荷役作業は予め定めた一定の順序に従って作業中に変えられることはなく、単位時間当たり決められた荷役量が積み荷/揚げ荷されることを前提とし、トリムおよびヒールを測定してバラストタンクへの漲水/排水を制御している。また、特許文献2でも荷役の終了時において、喫水及びトリムが測定されて修正が行われている。特許文献2における荷役作業は特許文献1と同様に予め定めた一定の順序に従って作業中に変えられることはない。
【0017】
先に説明した小型内航タンカーにおいても、荷役時間の制約があるために貨物ポンプ又は陸上ポンプは一般的に定格吐出し量による運転がされて、作業中に吐出量が調整されることが殆どない。よって、喫水及びトリムを測定して問題が生じた時点でバラスト水配置計画により制御しているのである。
【0018】
しかしながら、喫水や船体姿勢は船体が傾いた時点で初めて分かるものである。また、小型内航タンカーによる荷役作業では、少ない人数で数カ所に分かれて人員が配置されている。船体姿勢の不適切を観測してからバラスト水配置計画の再策定をするという対応がはじまる従来の小型内航タンカーにおいては、船体が傾いた時点で作業手順の間違い、連絡遅延が発生すると、災害や貨物の積付不良を引き起こすリスクがある。船員は常に緊張感を強いられている。
【0019】
ここでいう災害とは、例えば船体が傾斜した場合に係船ロープが破断し作業者や工場関係者に強打し怪我をする、若しくは船舶の動揺により甲板上にいる作業者が海に転落する人身事故である。また、船体が傾斜により、船体が岸壁に接触し損傷させる物損事故である。さらに、積付不良とは、例えば船体姿勢(傾斜、喫水)を正確に把握できない状態で荷役を行うことにより、貨物タンクの液面計の読みが不正確になり、計測ミスによる荷役のやり直しや出港遅延を起こすことである。
【0020】
この発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、作業の安全性、正確性を向上させ、また船員の労務負荷を軽減することにより、近年の乗務員不足や高齢化に対処可能な船体姿勢自動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明による船体姿勢自動制御装置は、複数の貨物タンクへの液体貨物の揚げ荷若しくは積み荷をするために配管経路を定める遠隔操作可能な貨物弁と、前記複数の貨物タンクから揚げ荷を行う遠隔操作可能な貨物ポンプと、複数のバラストタンクへのバラスト水の注排水をするために遠隔操作可能なバラスト弁と、複数のバラストタンクへの注排水を行う遠隔操作可能なバラストポンプと、前記複数の貨物タンク及びバラストタンクに夫々の液面高さを測定する液面センサと、船首と船尾の喫水を測定する喫水センサと、前記液面センサと喫水センサから測定値を取得する処理装置とを具備し、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプを遠隔操作可能な小型内航タンカーの荷役時の船体姿勢自動制御方法であって、
現載貨状態と新載貨状態によりバラスト水配置計画を策定し、
前記バラスト水配置計画に基づき、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプを遠隔操作により荷役作業を開始し、
前記処理装置により、前記複数の貨物タンク及びバラストタンクの液面高さに基づいて、前記小型内航タンカーの喫水と船体傾斜を継続して予想させるとともに、前記予想された船体傾斜が、予め定められた許容範囲を超えているかどうかを判定させ、
前記許容範囲を超えている場合には、前記液体貨物とバラスト水との流量比率が変更されるように、前記貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプのいずれかを前記変更された流量比率に基づいて遠隔操作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、荷役作業中に喫水計により船体が傾いたことを検出する以前に、貨物タンク液面及びバラストタンク液面から船体傾斜を予想して、早期に送液量の修正を行うことにより、船体傾斜の変動を極めて少なくすることができる。小型内航タンカーの船体傾斜の変動を極めて少なくできるので、荷役作業を操舵室からの遠隔で1箇所で行うことが可能になる。この結果、荷役作業を操舵室6からの遠隔で1箇所で行うことにより荷役甲板上やポンプ室内での作業が不要になることで、貨物液や有毒ガスによる人身事故、船舶の動揺による甲板上作業者の海への転落事故がなくなるなど作業の安全性が向上する。また、元側貨物弁、末端側貨物弁、貨物ポンプ、バラスト弁、バラストポンプの作動状況および貨物タンク液面、バラストタンク液面、船体姿勢、復原性等の小型内航タンカー全体の状態を同時かつ瞬時に確認でき、極めて正確な荷役オペレーションが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】小型内航タンカーを示す図であり、図1Aは側面図、図1Bは荷役甲板の平面図、図1Cは操舵室のX-X断面図、図1Dは船槽のY-Y断面である。
図2】処理装置において実行される積み荷作業の手順である。
図3】処理装置において実行される揚げ荷作業の手順である。
図4】処理装置において実行される係船ロープの調整、張りの修正の作業を行う場合の掲載器の処理フローである。
図5】従来の小型内航タンカーにおける荷役作業例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
大型のタンカーでは、荷役作業中の喫水や船体姿勢の変化は緩やかで有り、喫水を測定してバラスト制御に反映する。一方、小型内航タンカーにおいては、船体傾斜(トリム/ヒール)や喫水の変化は大型のタンカーに比べて早く、また少ない作業員により水深の浅い岸壁で荷役作業をする場合が多く、作業手順の間違いが発生すると直ちに喫水の変化が進み、上記のような災害や積付不良が生じる。
【0025】
貨物の搭載量を測定するために、貨物タンクの液体貨物の液面や、バラストタンクのバラスト水の液面を測定する装置を実装する船は存在しているが、船体傾斜が発生すると液面が正確には測定できない。船体の傾きの影響を受けないように、貨物タンクやバラストタンクの中央に液面センサを取り付ける様にしているが、実際の船では構造上、中央に取り付けることは殆ど困難で有る。また、船体傾斜が発生したら、そのときの船体傾斜に基づいて貨物タンクの液面計の読みを修正するソフトウェアも存在しているが、船体傾斜が取得できていることを前提としており、また、注文生産の小型内航タンカーの比較的小さな容積の貨物タンクやバラストタンク構造を全て把握した上で、液面計の読みを正確に修正することは汎用のソフトウェアでは殆ど困難である。
【0026】
また、先に述べたように、タンカーにおいては、貨物ポンプ又は陸上ポンプは一般的に定格吐出し量による運転がされ、役務作業もバラスト水配置計画も当初の計画通りに行われていれば、船体姿勢はオープン制御でもよいはずであるが、実際には船体傾斜が発生する。
【0027】
船体傾斜が無い状態であれば、貨物タンクやバラストタンクに取り付けた液面センサによる液位測定値は略正確である。よって、本発明においては、船体傾斜が無い初期から継続的に液位を測定する。また、貨物タンクやバラストタンクは船体より容量は小さく、計画された液位からの変動は、将来的に船体が傾斜する要因となる。そのような液位を検出したときには、船体傾斜が顕著になる以前に、バラスト水と液体貨物との流量比率を変更する。そして、そのような吐出量の比率を変更によっても、現実の喫水の測定値から求めた船体姿勢が不適切になったと判明したときには、従来通り、一旦、バラストポンプと貨物ポンプ又は陸上ポンプを止めて、現状の状態からバラスト水配置計画を再策定することとした。船体傾斜するような要因を早期に検出して修正を試みることにより、船体傾斜を安定させるのである。
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1は原油や化学薬品など液体貨物を運搬する小型内航タンカー1を示しており、図1Aは側面図、図1Bは荷役甲板の平面図、図1Cは操舵室のX-X断面図、図1Dは船槽のY-Y断面を示している。図1は、本発明の実施形態に係る船体構造の船舶を示す概略側面図である。小型内航タンカー1として、小型内航タンカー(499GT型)の例を示した。図1A図1Bにおいて、破線は、甲板若しくは隔壁を示している。
【0029】
小型内航タンカー1は、液体貨物を積載する貨物タンク10、船体を沈下させるためや船体の姿勢を調整するためのバラストタンク20、貨物ポンプ11やバラストポンプ21や元側貨物弁12、バラスト弁22が配置されたポンプ室4を有している。また、荷役甲板2上には多数の配管と末端側貨物弁13が配置されている。荷役甲板2上の配管と末端側貨物弁13により貨物タンク10と元側貨物弁12との経路が決定される。元側貨物弁12と末端側貨物弁13とを纏めて単に「貨物弁」と呼ぶことがある。船首、船尾の両舷には、現在の喫水を測定する喫水センサ3が夫々装着されている。図1Bにおいて、貨物タンク10は、船体の中央から左右対称に複数設けられている。また、バラストタンク20は、貨物タンクの外側に船体の中央から左右対称に複数、そして船首側にも複数個が設けられている。バラストタンク20は、貨物タンク10と船底5の間にも設けられている(図1D)。各貨物タンク10、バラストタンク20には、夫々の液面を測定する液面センサ9a、9bが設けられている。
【0030】
末端側貨物弁13、元側貨物弁12、バラスト弁22は、遠隔操作が可能であり、かつ開度調整が可能なバタフライ弁である。具体的には、遠隔からの指令に基づいてサーボモータを制御し、サーボモータによりバタフライ弁を旋回させている。また、貨物ポンプ11やバラストポンプ21も同様に、遠隔操作が可能になっている。操舵室6には、貨物ポンプ操作盤6a、貨物ポンプ監視装置6b、貨物弁操作盤6c、貨物タンク液面監視装置6d、船首尾喫水計6e、バラストポンプ操作盤6f、バラスト弁操作盤6g、バラストタンク液面監視装置6h、処理装置7とそのモニタ8が設けられている(図1C)。貨物ポンプ操作盤6aは、貨物ポンプ11の運転開始停止の制御をする。貨物ポンプ監視装置6bは、貨物ポンプの稼働状態を表示する。バラストポンプ操作盤6fは、バラストポンプ21の運転開始停止の制御とその稼働状態を表示する。貨物弁操作盤6cは、元側貨物弁12、末端側貨物弁13の開閉を制御する。バラスト弁操作盤6gは、バラスト弁の開閉を制御する。船首尾喫水計6eは喫水センサ3の測定値を表示する。貨物タンク液面監視装置6dは、各貨物タンク10の液面高さを表示する。バラストタンク液面監視装置6hは、各バラストタンク20の液面の高さを表示する。
【0031】
貨物ポンプ操作盤6a、貨物ポンプ監視装置6b、貨物弁操作盤6c、バラストポンプ操作盤6f、バラスト弁操作盤6gが操舵室6の一箇所に設けられているため、操舵室6から貨物ポンプ11、バラストポンプ21、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、バラスト弁22の操作が可能である。従来、ポンプ室と荷役甲板に配置されていた船員が行う作業を操舵室6の1人の船員が行うことができるようになっているのである。
【0032】
処理装置7は、キーボード、通信装置等の入出力装置を備えた一般的な電子計算機である。積付計算機はパソコンなどで実行され、船員はこれを用いてバラスト水配置計画を策定することができる。本実施例では処理装置7に積付計算機を実装した。処理装置7の入出力装置は、さらに、貨物タンク液面監視装置6d、船首尾喫水計6e、バラストタンク液面監視装置6hに接続されている。処理装置7には、これらの各機器から貨物タンク液面、バラストタンク液面、船首尾喫水及び船体傾斜の情報が随時自動的に入力可能であり、処理装置7は、無線若しくはインターネットを介して陸上の電子計算機と通信可能で有る。処理装置7は、貨物ポンプ操作盤6a、貨物ポンプ監視装置6b、貨物弁操作盤6c、バラストポンプ操作盤6f、バラスト弁操作盤6gと接続されており、これらの機器から動作状況についてのログを取得するサーバーでもある。
【0033】
図2、3を用いて、荷役作業の作業手順を、積み荷、揚げ荷の夫々の場合について分けて説明する。なお、操舵室6に待機した船員が行う作業と、処理装置7において実行されるプログラムとが図中に併記されている。プログラムにより、処理装置7は、液面センサ9a、9bと協働して、監視装置として機能する。積み荷、揚げ荷の夫々の初期状態では、船体姿勢(喫水と傾斜)は正常な状態であって、貨物タンク液面とバラストタンク液面は、正確な値が測定されている。
【0034】
図2の積み荷では、ステップS1、S2、S3、S20が操舵室6の船員による手順である。ステップS1において、処理装置7に現積載状態(貨物・バラスト・燃料など)と喫水状態、及び、積み荷の予定量、及び単位時間当たりの陸上ポンプの吐出量、単位時間当たりのバラストポンプ21の吐出量を入力する。ステップS2において、荷役終了時の新載貨状態、および荷役終了時の喫水および船体姿勢を計算させる。ステップS20は、積み荷予定の全貨物を貨物タンク10に積載するまでステップS3、S4を繰り返す。
【0035】
ステップS4は、船員の作業手順であり、ステップS5~7、S14~S17までを含んでいる。ステップS5において、処理装置7はバラスト水配置計画を策定する。バラスト水配置計画では、目標の喫水・船体傾斜となるように各バラストタンク20に対してどの程度のバラスト量を注水(または排水)したら良いかが決められる。ステップS6において、処理装置7はバラスト弁22、元側貨物弁12、末端側貨物弁13を遠隔操作により開閉を行う。ステップS7において、陸上ポンプの稼働に応じて、バラストポンプ21の運転を開始する。
【0036】
ステップS4は、処理装置7による処理であり、ステップS8~S13までを含んでいる。ステップS4は、荷役作業中は、継続して実行される。ステップS8において、処理装置7は船首尾喫水計6eから喫水を取得して船体傾斜を求める。船体傾斜に不適性が発見された場合は、バラストポンプ21、陸上ポンプの停止指示をモニタ8に表示する(ステップS10)。ステップS11において、貨物タンク液面監視装置6dとバラストタンク液面監視装置6hから貨物タンク液面とバラストタンク液面の現時点における液面高さを求め、これから現在の積載量を求め、喫水・傾斜を求めて船体姿勢を予測する。ステップS12において、船体姿勢が適切かどうか判定する。予め定められた許容範囲を超えている場合には、ステップS13において、液体貨物とバラスト水との流量比率の修正指示をモニタ8に表示する。当初設定されていた液体貨物とバラスト水の流量に基づき算出される貨物タンクとバラストタンクの液面の高さと、実際の液面の高さから流量比率の修正値が求められる。ステップS9において、船首尾喫水計6eから取得した喫水から小型内航タンカー1の重心を求める。復原性に不適性が発見された場合は、陸上ポンプの停止指示をモニタ8に表示する(ステップS10)。
【0037】
ステップS3に戻り、停止指示および修正指示がモニタ8に表示された際の手順を説明する。船員は、バラストポンプ停止の指示を確認したら(ステップS15)、バラストポンプ操作盤6fによりバラストポンプ21を停止する(ステップS16)。ステップS5に戻りバラスト水配置計画から再策定する。船員は、バラストポンプ21、陸上ポンプを停止させて(ステップS15、S16)、ステップS6に戻りバラスト水配置計画から再策定する。また、船員は流量比率の修正指示を確認したら(ステップS17)、操舵室6内の設備を用いて流量比率の変更を行う。流量比率を変更するためには、バラストポンプ21と陸上ポンプと吐出量の比率を変更してステップS7に戻る方法と、元側貨物弁12とバラスト弁22の開度を変更してステップS6に戻る方法によって実現できる。バラストポンプ21と陸上ポンプと吐出量の比率は、両ポンプを操作しなくても、バラストポンプ21だけ、若しくは陸上ポンプだけの吐出量を変更するだけでも実現できる。同様に、元側貨物弁12とバラスト弁22の開度の変更は、全ての弁を操作しなくても、バラスト弁22だけ、若しくは元側貨物弁12(若しくは末端側貨物弁13)だけの吐出量を変更するだけでも実現できる。いずれの方法でも良い。ステップS8における船体姿勢が不適合とされる許容範囲は、ステップS12における船体姿勢の不適合の許容範囲よりも大きい。従って、船体姿勢の変化が小さい場合には、専ら、ステップS11~ステップS12の処理により船体傾斜する要因の修正が試みられる。殆どの場合、ステップS11~ステップS12の処理により船体は安定する。それでも船体傾斜が修正できない場合には(例えば、船体が傾斜することにより、液体貨物の液面やバラスト水の液面の測定値を正確に求めることができない場合などが想定される。)、喫水計から取得した喫水からステップS8~ステップS10の処理による対応がなされる。
【0038】
ステップS14において、貨物タンク10内の液体貨物の液面が目的の高さに達したら、ステップS3に戻り、積み荷作業を終了する。そうでなければ、次の貨物タンク10への積み荷作業をするためにステップS6へ戻る。
【0039】
以上において、貨物タンク10液体貨物液面とバラストタンク20のバラスト水の液面、現在の単位時間当たりの陸上ポンプの吐出量、単位時間当たりのバラストポンプの吐出量、船体傾斜と船の重心、船体姿勢の不適、復原性の不適は、バラストポンプの停止指示若しくは比率修正指示との形でモニタ8上に表示されて、船員は状況を確認することができる。
【0040】
図3の揚げ荷では、ステップS21、S22、S23、S40が操舵室6の船員による手順である。ステップS1において、処理装置7に現積載状態(貨物・バラスト・燃料など)と喫水状態、及び、積み荷の予定量、及び単位時間当たりの陸上ポンプの吐出量、単位時間当たりのバラストポンプ21の吐出量を入力する。ステップS22において、荷役終了時の新載貨状態、および荷役終了時の喫水および船体姿勢を計算させる。ステップS40では、揚げ荷予定の全貨物を貨物タンク10に積載するまでステップS23、S24を繰り返す。
【0041】
ステップS24は、揚げ荷作業中の船員の作業手順であり、ステップS25~27、S14~S17までを含んでいる。ステップS25において、処理装置7はバラスト水配置計画を策定する。ステップS26において、処理装置7は、バラスト弁22、元側貨物弁12、末端側貨物弁13を遠隔操作により開閉を行う。ステップS27において、貨物ポンプ11とバラストポンプ21の運転を開始する。
【0042】
ステップS4は、処理装置7による処理であり、ステップS28~S33までを含んでいる。ステップS4は、荷役作業中は、継続して実行される。ステップS28において、処理装置7は船首尾喫水計6eから喫水を取得して船体傾斜を求める。船体傾斜に不適性が発見された場合は、バラストポンプ21、貨物ポンプ11の停止指示をモニタ8に表示する(ステップS30)。同様に、ステップS29において、船首尾喫水計6eから取得した喫水から小型内航タンカー1の重心を求める。復原性に不適性が発見された場合は、バラストポンプ21、貨物ポンプ11の停止指示をモニタ8に表示する(ステップS30)。
【0043】
ステップS31において、貨物タンク液面監視装置6dとバラストタンク液面監視装置6hから貨物タンク液面とバラストタンク液面の現時点における液面高さを求め、これから現在の積載量を求め、喫水・傾斜を求めて船体姿勢を予測する。ステップS32において、船体姿勢が適切かどうか判定する。予め定められた許容範囲を超えている場合には、ステップS33において、液体貨物とバラスト水との流量比率の修正指示をモニタ8に表示する。流量比率の求め方は積み荷のときと同じである。ステップS31において、貨物タンク液面監視装置6dとバラストタンク液面監視装置6hから貨物タンク液面とバラストタンク液面の現時点における液面高さを求め、これから現在の積載量を求め、喫水・傾斜(トリムとヒール)を求めて船体姿勢を予測する。ステップS32において、船体姿勢が適切かどうか判定する。予め定められた許容範囲を超えている場合には、ステップS33において、液体貨物とバラスト水との流量比率の修正指示をモニタ8に表示する。
【0044】
ステップS3に戻り、停止指示および修正指示がモニタ8に表示された際の手順を説明する。船員は、バラストポンプ停止の指示を確認したら(ステップS35)、バラストポンプ操作盤6fによりバラストポンプ21を停止する(ステップS36)。ステップS25に戻りバラスト水配置計画から再策定する。また、船員は流量比率の修正指示を確認したら(ステップS27)、操舵室6内の設備を用いて流量比率の変更を行う。流量比率を変更するためには、積み荷作業と同様に、ステップS26による操作と、ステップS27による操作によって実現できる。いずれの方法でも良い。積み荷作業の際と同様に、ステップS28における船体姿勢の不適合許容範囲は、ステップS32における船体姿勢の不適合許容範囲よりも大きい。
【0045】
ステップS34において、貨物タンク10の液面が目的の高さに達したら、ステップS23に戻り、揚げ荷作業を終了する。そうでなければ、次の貨物タンク10への揚げ荷作業をするためにステップS26へ戻る。
【0046】
以上において、貨物タンク液面とバラストタンク液面、現在の単位時間当たりの貨物ポンプ11の吐出量、単位時間当たりのバラストポンプ21の吐出量、船体傾斜と重心、ステップS8又はステップS28において喫水から求めた船体姿勢が不適であることの警告、復原性が不適であることの警告は、モニタ8上に表示されて、船員は状況を確認することができる。
【0047】
本実施例によれば、喫水計により船体が傾いたことを検出する以前に、貨物タンク液面及びバラストタンク液面から船体傾斜を予想して、早期に送液量の修正を行うことにより、船体傾斜の変動を極めて少なくすることができる。小型内航タンカーで有りながら、船体傾斜の変動を極めて少なくできるので、荷役作業を操舵室6からの遠隔で1箇所で行うことが可能になる。この結果、荷役甲板2上やポンプ室4内での作業が不要になることで、貨物液や有毒ガスによる人身事故、船舶の動揺による甲板上作業者の海への転落事故がなくなり作業の安全性が向上する。
【0048】
操舵室6の一箇所にて、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、貨物ポンプ11、バラスト弁22、バラストポンプ21の作動状況および貨物タンク液面、バラストタンク液面、船体姿勢(喫水/トリム/ヒール)、復原性等の小型内航タンカー1全体の状態を同時かつ瞬時に確認でき、極めて正確な荷役オペレーションが可能となる。
【0049】
また、処理装置7、貨物ポンプ監視装置6b、貨物弁操作盤6c、貨物タンク液面監視装置6d、船首尾喫水計6e、バラスト弁操作盤6g、バラストタンク液面監視装置6hは、無線若しくはインターネットを介して陸上の電子計算機と通信可能である。そこで、処理装置7から、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、貨物ポンプ11、バラスト弁22、バラストポンプ21の作動状況および貨物タンク液面、バラストタンク液面、船体姿勢、復原性等の小型内航タンカー1全体の状態を同時かつ瞬時に陸上の電子計算機へ送ることができる。その結果、船舶オーナーや管理監督者が荷役作業をリアルタイムに監視することができ、複数の人員で状況判断ができ、作業ミスを防ぐことができるという効果がある。
【0050】
さらに、荷役作業を操舵室6の1人で行うことが可能となり、荷役に関わる作業時間を一人当たり約36時間/月、削減できる。荷役甲板2上での酷暑または極寒下での作業、数十回に及ぶポンプ室4内の階段昇降、数十個あるバルブの開閉作業(待機時間含む)がほぼなくなり、作業者の労働環境が改善する。
【0051】
本実施例において、処理装置7における荷役作業に関する全てのオペレーションのデータを陸上サーバーに保管することでデータの蓄積ができ、そのデータをフィードバックすることで、より安全で効率的な荷役手順の策定ができるという効果も期待できる。
【0052】
本実施例は、荷役時の船体姿勢自動制御の全ての手順を処理装置7で自動化をさせた例ではなく、貨物ポンプ11、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、バラストポンプ21、バラスト弁22に対して船員が遠隔操作により操作した例である。しかしながら、処理装置7が、貨物ポンプ11、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、バラストポンプ21、バラスト弁22操作可能なようにインターフェースを接続すれば、ステップS10、S30の停止指示/ステップS13、S33の比率変更指示を用いて、貨物ポンプ11、元側貨物弁12、末端側貨物弁13、バラストポンプ21、バラスト弁22を操作しても良い。
【0053】
本実施例においては、処理装置7は貨物タンク10とバラストタンク20に対する制御を実行したが、処理装置7において並行して船首尾甲板の船員が行う係船ロープの調整、張りの修正の作業を実行させても良い。図4は、係船ロープの調整、張りの修正の作業のフローを示している。図中、上記下実施例において使用した引用符号と同一の引用符号が付されているステップは、図2図3に示した各ステップと同じであるので説明を省略する。
【0054】
図4では、処理装置7のステップS4(若しくはステップS24)に並行して、さらにステップS50が加えられている。小型内航タンカー1には、船首尾甲板にライブカメラが配置され、かつ係船ロープの調整、張りの修正を遠隔で操作可能な巻き上げ装置が追加されている。ステップS51において、ライブカメラからロープの映像を取得する。ステップS52において、ロープの映像を解析してロープの張りは適切であるかを判断する。ステップS53において、適切でない場合はウインチを操作してロープの長さを調整する。この作業を荷役作業が終了するまで繰り返す。
【0055】
本実施例によれば、船首尾甲板での係船ロープ調整作業が不要になることでロープ破断による人身事故がなくなると言う効果がある。
【符号の説明】
【0056】
1 小型内航タンカー
2 荷役甲板
3 喫水センサ
4 ポンプ室
5 船底
6 操舵室
6a 貨物ポンプ操作盤
6b 貨物ポンプ監視装置
6c 貨物弁操作盤
6d 貨物タンク液面監視装置
6e 船首尾喫水計
6f バラストポンプ操作盤
6g バラスト弁操作盤
6h バラストタンク液面監視装置
7 処理装置
8 モニタ
9a、9b 液面センサ
10 貨物タンク
11 貨物ポンプ
12 元側貨物弁
13 末端側貨物弁
20 バラストタンク
21 バラストポンプ
22 バラスト弁

図1
図2
図3
図4
図5