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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073110
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】注射練習用の模擬血管
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/34 20060101AFI20220510BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G09B23/34
G09B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182889
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】390025634
【氏名又は名称】株式会社ケー・シー・シー・商会
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】姫野 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】亀田 公治
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々な態様の注射実習を行うことができつつ、部品点数を抑えて製造コストを低減することを目的とし、さらに模擬血液バックの押圧に障害とならないように小型化した模擬血管を提供する。
【解決手段】模擬血管1は、模擬血液を充填した模擬血液バック2と管状の血管部3とを連結固定部4で連結したもので、模擬血液バック2を押圧して血管部3を緊張した状態で注射練習をするための注射練習用の模擬血管である。連結固定部4は、血管部3の一端に取り付けるアダプタと、アダプタを内包して模擬血液バック2に接続して固定するコネクタ6と、を有する。アダプタは、外筒と、内筒と、外筒と内筒との間に血管部3の一端である開放端を接続する空間を有する。コネクタ6は、アダプタを内包した状態で、アダプタと血管部3との保持状態を締め付ける突出係止部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬血液を充填した模擬血液バックと管状の血管部とを連結固定部で連結したもので、前記模擬血液バックを押圧して前記血管部を緊張した状態で注射練習をするための注射練習用模擬血管であって、
前記連結固定部は、前記血管部の一端に取り付けるアダプタと、該アダプタを内包して前記模擬血液バックに接続して固定するコネクタと、を有し、
前記アダプタは、外筒と、内筒と、前記外筒と前記内筒との間に前記血管部の一端である開放端を接続する空間を有し、
前記コネクタは、前記アダプタを内包した状態で、前記アダプタと前記血管部との保持状態を締め付ける突出係止部を有することを特徴とする注射練習用の模擬血管。
【請求項2】
模擬血液バックは、連結固定部のコネクタに固定されて接続する流出筒を有し、
アダプタは、前記流出筒内への挿入状態を位置決めするために傾斜面を有するアダプタ基端部と、該アダプタ基端部の先端位置からさらに先端方向に延長する外筒と、内筒と、を有し、
前記外筒は、円周方向に分割した複数のスリットを有し、各分割された外筒は基端から先端にかけて先細りとした先細り形態を有し、
前記コネクタは、前記流出筒に螺合する外壁と底部とを有するキャップ状であって、前記底部に血管部を導出する貫通孔と、前記底部から先細り状に突出する突出係止部と、を有し、
前記コネクタが前記アダプタを内包する状態で、前記コネクタを前記流出筒に固定させると、前記突出係止部が前記流出筒の内面と前記外筒の表面との間に挿入して、前記外筒を内方へ締め付けることを特徴とする請求項1に記載の注射練習用の模擬血管。
【請求項3】
模擬血液バックの流出筒は、ねじ部の基端側において、流出筒の表面から突出する突条形状を有する係止部を有し、
コネクタは、外壁の基端側縁を凹ませた被係止部を有し、
前記コネクタを前記模擬血液バックに螺合して固定完了した状態で、突出する前記係止部が前記被係止部の凹み内に位置することを特徴とする請求項2に記載の注射練習用の模擬血管。
【請求項4】
模擬血液を充填した模擬血液バックと管状の血管部の一端とを連結固定部で連結したもので、さらに前記血管部の他端を排出接続部で排出筒状物に接続する注射練習用の模擬血管であって、
前記排出接続部は、前記血管部の他端に取り付ける第2のアダプタと、該第2のアダプタを内包して前記排出筒状物に接続固定する第2のコネクタとからなり、
前記第2のアダプタは、傾斜面を有するアダプタ基端部と、該アダプタ基端部の先端位置から延長する外筒と、内筒と、前記外筒と前記内筒との間に前記血管部の開放端を接続する空間と、を有し、
前記外筒は、円周方向に分割した複数のスリットを有し、各分割された外筒は基端から先端にかけて先細りとした先細り形態を有し、
前記第2のコネクタは、前記排出筒状物に螺合する外壁と底部とを有するキャップ状であって、前記底部に前記血管部を導出する貫通孔と、前記底部から先細り状に突出する突出係止部と、を有し、
前記第2のコネクタが前記第2のアダプタを内包する状態で、前記突出係止部が前記排出筒状物の内面と前記外筒の表面との間に挿入し、前記外筒を内方へ締め付けることで前記第2のアダプタと前記血管部との取付状態を保持することを特徴とする請求項1、2または3のいずれか一項に記載の注射練習用の模擬血管。
【請求項5】
排出接続部に接続する排出筒状物である中間接続部材と、該中間接続部材にさらに接続する連結部材と、を有し、
前記中間接続部材は、内部を排出流路とし、該排出流路を閉塞する遮蔽弁と、前記排出接続部の第2のコネクタと接続するねじ部と、前記連結部材と接続するねじ部と、を有し、
前記連結部材は、前記遮蔽弁を突き破ることにより閉塞状態から開放状態に不可逆的に切り替える連通針を有し、
前記連通針は、内部を連通用流路とする筒部と、前記筒部の先端から突出する円錐状の針先とからなり、
前記針先はその周面に前記連通用流路の開口を有することを特徴とする請求項4に記載の注射練習用の模擬血管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医師、看護師、助産師、保健師、臨床検査技師、救急救命士、看護学生など医療関係者が注射に関する様々な手技を練習、実習するにあたり、現実の注射感覚に近い状態を再現し、練習効果を向上させるための実習用の模擬血管に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
注射は、医療関係者にとって必要不可欠の技術であり、その技量不足は直ちに患者に苦痛を与えるものである。ところが注射技術の向上は、従来医療関係者各自の経験の積み重ねに依存するところが大きく、効果的な訓練を行なうことが困難であった。
【0003】
特許文献1には、取付本体に貼着した模擬皮下組織層上に模擬血管を配置し、該模擬皮下組織層及び模擬血管を模擬皮膚層で覆い、取付本体を腕に装着して現実の注射感覚に近い状態を再現した注射練習具が開示されている。模擬血管は模擬血液を貯留した模擬血液バックに一端を連結して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-152770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の注射練習具は、模擬血管と模擬血液バックとが密閉した閉鎖状態であるから、模擬血液を抜き取る採血実習は行えるが、点滴投与などの薬液や食塩水を模擬血管に追加することになる投与に関連する手技を練習し難い。注射練習は、採血実習に加え、投与実習も選択的に行えるものが望まれていた。さらに模擬血液バックに対して異なる径(太さ)の血管をもって実習する必要もあり、様々な実習形態が求められていた。これらを別個に成型していたのではコストが増大となり、単一の部材で様々な実習形態に対応できる模擬血管及び注射練習具が求められていた。
【0006】
さらに、模擬血管は注射練習具に備えて模擬血液バックを押圧して使用することを前提としており、模擬血管と模擬血液バックを連結する部材が大型になると適切な押圧を行うことへの障害になることから、できる限り小型化した連結形態が求められてきた。
【0007】
そこで、本発明は、様々な態様の注射実習を行うことができつつ、部品点数を抑えて製造コストを低減することを目的とし、さらに模擬血液バックの押圧に障害とならないように小型化した模擬血管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の模擬血管は、模擬血液を充填した模擬血液バックと管状の血管部とを連結固定部で連結したもので、前記模擬血液バックを押圧して前記血管部を緊張した状態で注射練習をするための注射練習用模擬血管であって、前記連結固定部は、前記血管部の一端に取り付けるアダプタと、該アダプタを内包して前記模擬血液バックに接続して固定するコネクタと、を有し、前記アダプタは、外筒と、内筒と、前記外筒と前記内筒との間に前記血管部の一端である開放端を接続する空間を有し、前記コネクタは、前記アダプタを内包した状態で、前記アダプタと前記血管部との保持状態を締め付ける突出係止部を有することを特徴とする。
【0009】
また、模擬血液バックは、連結固定部のコネクタに固定されて接続する流出筒を有し、アダプタは、前記流出筒内への挿入状態を位置決めするために傾斜面を有するアダプタ基端部と、該アダプタ基端部の先端位置からさらに先端方向に延長する外筒と、内筒と、を有し、前記外筒は、円周方向に分割した複数のスリットを有し、各分割された外筒は基端から先端にかけて先細りとした先細り形態を有し、前記コネクタは、前記流出筒に螺合する外壁と底部とを有するキャップ状であって、前記底部に血管部を導出する貫通孔と、前記底部から先細り状に突出する突出係止部と、を有し、前記コネクタが前記アダプタを内包する状態で、前記コネクタを前記流出筒に固定させると、前記突出係止部が前記流出筒の内面と前記外筒の表面との間に挿入して、前記外筒を内方へ締め付けることが好ましい。
【0010】
また、模擬血液バックの流出筒は、ねじ部の基端側において、流出筒の表面から突出する突条形状を有する係止部を有し、コネクタは、外壁の基端側縁を凹ませた被係止部を有し、前記コネクタを前記模擬血液バックに螺合して固定完了した状態で、突出する前記係止部が前記被係止部の凹み内に位置することが好ましい。
【0011】
また、模擬血液を充填した模擬血液バックと管状の血管部の一端とを連結固定部で連結したもので、さらに前記血管部の他端を排出接続部で排出筒状物に接続する注射練習用の模擬血管であって、前記排出接続部は、前記血管部の他端に取り付ける第2のアダプタと、該第2のアダプタを内包して前記排出筒状物に接続固定する第2のコネクタとからなり、前記第2のアダプタは、傾斜面を有するアダプタ基端部と、該アダプタ基端部の先端位置から延長する外筒と、内筒と、前記外筒と前記内筒との間に前記血管部の開放端を接続する空間と、を有し、前記外筒は、円周方向に分割した複数のスリットを有し、各分割された外筒は基端から先端にかけて先細りとした先細り形態を有し、前記第2のコネクタは、前記排出筒状物に螺合する外壁と底部とを有するキャップ状であって、前記底部に前記血管部を導出する貫通孔と、前記底部から先細り状に突出する突出係止部と、を有し、前記第2のコネクタが前記第2のアダプタを内包する状態で、前記突出係止部が前記排出筒状物の内面と前記外筒の表面との間に挿入し、前記外筒を内方へ締め付けることで前記第2のアダプタと前記血管部との取付状態を保持することが好ましい。
【0012】
また、排出接続部に接続する排出筒状物である中間接続部材と、該中間接続部材にさらに接続する連結部材と、を有し、前記中間接続部材は内部を排出流路とし、該排出流路を閉塞する遮蔽弁と、前記排出接続部の第2のコネクタと接続するねじ部と、前記連結部材と接続するねじ部と、を有し、前記連結部材は、前記遮蔽弁を突き破ることにより閉塞状態から開放状態に不可逆的に切り替える連通針を有し、前記連通針は、内部を連通用流路とする筒部と、前記筒部の先端から突出する円錐状の針先とからなり、前記針先はその周面に前記連通用流路の開口を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明により、アダプタに接続する血管の太さを異なるものとして共通のコネクタに接続して利用することができ、異なる太さの血管部を共通の部材で利用することが可能になる。さらに、血管部の一端に取り付けたアダプタを内包してコネクタを模擬血液バックに接続、固定することにより、異なる径を接続するための接続部位を小型化することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明により、コネクタの突出係止部の挿入によりアダプタが血管部を締め付けて固定することにより、血管部を強固に保持することができる。この締付は、先端側に向けて先細り形状となった外筒の外側に、基端側に向けて先細り形状となった突出係止部を挿入するものであるから、突出係止部の挿入が容易になり、血管部を保持し易くなる。
【0015】
請求項3に記載の発明により、コネクタのねじ込みが完了した位置に、コネクタの被係止部の凹みに、流出筒の係止部の突条(凸)が位置することになり、コネクタが不意に回動することを防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明により、薬液などを血管部に過剰に投与しても廃液容器に排出されるから、針の状態確認、生食ロック、ヘパリンロックによるパルシングフラッシュや陽圧ロックの確認などの実務に近い点滴投与などの投与実習を行うことができる。さらにアダプタ及びコネクタを共通部品とし、コストを抑えることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明により、連通針が遮蔽弁を突き刺して連通する中間接続部材と連通部材を有することで、閉塞状態と開放状態とを切り替え可能な模擬血管を提供することができ、さらに、閉塞状態と開放状態とを連結部材の回動だけの容易な手段で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る模擬血管の斜視図である。
図2】模擬血管を分解した平面図であって、上段に模擬血液バックとアダプタとコネクタを示し、下段に血管部を示すものである。
図3】連結固定部を分解した拡大縦断面図であって、(a)が通常血管部に用いる連結固定部であり、(b)が細血管部に用いる連結固定部である。
図4図3(a)の連結固定部の動作説明図であって、(a)が血管部にアダプタを取り付けてコネクタと連結する直前の状態であり、(b)がコネクタと連結固定した状態である。
図5】排出接続部及び廃液容器を取り付けた模擬血管の説明図である。
図6】排出接続部を分解した拡大平面図であって、(a)が血管部と第2アダプタと第2コネクタを示し、(b)が中間接続部材と連結部材を示すものである。
図7】排出接続部の拡大縦断面図である。
図8】中間接続部材と連結接続部材との動作説明図であり、(a)が遮蔽弁により閉塞した初期状態であり、(b)が遮蔽弁を破って閉塞を開放した状態である。
図9】本発明の模擬血管を注射練習具に備えた状態の全体斜視図である。
図10図9より取付本体をデッキから取り外し、模擬血管も外した状態の斜視図である。
図11】本発明の注射練習具に用いる従来の模擬血管を示す斜視図である。
図12】取付本体の基端支持部を示す一部拡大斜視図である。
図13】中央の基端支持部を後方から見た一部拡大側面図であり、(a)が従来の模擬血管を取り付けた状態であり、(b)が新たな模擬血管を取り付けた状態である。
図14】取付本体の後端の起立片を後方からみた背面端面図である。
図15】取付本体後方の切除部を示す一部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る模擬血管の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、本説明に際し、図面上の左側(例えば図2の模擬血液バック側)を基端側とし、図面上の右側(例えば図2の血管部側)を先端側として説明する。
【0020】
模擬血管1は、図1に示すように、模擬血液を貯留した模擬血液バック2と、血管を模擬した円筒形状、管状で長尺な血管部3と、模擬血液バック2と血管部3とを接続して固定する連結固定部4とからなる。特に図示しないが模擬血液は赤く着色して臨場感を持たせた液体からなり、模擬血液バック2に注入されて模擬血管1の内部に空気が入らない状態で密封される。なお、模擬血管1は、使用済みとなると廃棄されるもので、所謂使い捨て材である。
【0021】
図2に示すように、模擬血管1の連結固定部4は、アダプタ5とコネクタ6とからなり、血管部3をアダプタ5に接続したうえで、アダプタ5をコネクタ6に内包しつつ模擬血液バック2の流出筒11に接続することで、模擬血液バック2と血管部3とを模擬血管1内で連通した状態で接続固定する。血管部3は軟質樹脂から成型され、アダプタ5とコネクタ6も樹脂材により成型されたものである。
【0022】
模擬血管1の模擬血液バック2について説明する。模擬血液バック2は、中空矩形状の貯留部10と、貯留部10の一面から突出する円筒形状の流出筒11とからなる。流出筒11は基端側内周から内方に突出した円環形状の受け部12を有する(図3参照)。受け部12は、後述するアダプタ5を受けて係合して軸方向に位置決め、固定する。
【0023】
流出筒11の外周には、後述するコネクタ6に固定するために突出するねじ部13と、ねじ部13の基端側となる貯留部10の中央下端から下方に向けた突条となる2つの係止部14、14を有する。係止部14、14は、流出筒11の表面と裏面にあり、円周方向に180度離れて並んでいる。係止部14、14は、コネクタ6を流出筒11に固定(螺合)が完了した状態で、コネクタ6の被係止部35、35に嵌まり込んで係合し、コネクタ6の螺進を停止するとともに、係止状態でコネクタ6が不意の回動を起こさないようにロックしている。
【0024】
模擬血液バック2と血管部3とが接続、固定されることで、貯留部10と血管部3との内部が連通し、貯留部10から模擬血液を血管部3内に供給可能としている。模擬血液バック2は、真空採血管より陽圧側の負圧状態で模擬血液を貯留し、真空採血管に模擬血液を供給可能としつつ、採血などにより血管部3に生じた針孔からの液漏れを抑制している。
【0025】
血管部3について説明する。血管部3は、長手方向の基端側を開口する基端部分3a、他端側を閉塞する先端部分3bを有し、所定の長さを有する管状物であり、基端部分3aを連結固定具4により模擬血液バック2に接続する。血管部3は注射針や点滴針などを複数回突き刺せるエラストマーなどの軟質素材により形成し、自由曲線状に屈曲して配置して個体差のある血管を模擬可能としている。血管部3は径方向の厚さ(内側直径と外側直径との差の半分)を薄手として、約0.4mmとしている。
【0026】
連結固定部4について説明する。上記のとおり連結固定部4は、血管部3を取り付けて保持するアダプタ5と、このアダプタ5を流出筒11に螺合することで接続、保持するコネクタ6とからなる。連結固定部4はこの接続により不可逆的に血管部3を模擬血液バック2に固定して、互いの内部を連通させ、模擬血液の流路としている。
【0027】
アダプタ5について説明する。アダプタ5は、図2、3、4に示すように、外筒21と内筒22とからなる先端側の面が開口した二重筒構造としている。アダプタ5は、2つの筒21、22の間の空間に、血管部3の基端部分3aを挿入して保持する空間を有する。この空間の径方向の厚さ(内側直径と外側直径との差の半分)を血管部3の厚さより大きい寸法として、約0.44mmとしている。内筒22の内周に両端が開口された長手方向の空間を有し、流出筒11と血管部3とを連通する流路となる。
【0028】
アダプタ5は、基端側位置にあって外周に向けて傾斜するアダプタ基端部23があり、このアダプタ基端部23の先端側から血管部3を挿入する開口側、内側に若干傾斜して延長された外筒21が形成される。外筒21は、アダプタ基端部23側から先端側にかけて厚みが徐々に薄くなる先細り形状を有し、円周方向に分割されて、複数のスリット24、24が形成されている。
【0029】
模擬血液バック2の流出筒11内へアダプタ5を挿入したとき、傾斜面を有する円錐筒形状に形成されたアダプタ基端部23が、流出筒11内に突出する受け部12に係合し、かつ、食い込むことで、アダプタ5を軸方向(長手方向)に位置決めして、固定する。また、後述するが、コネクタ6を模擬血液バック2の流出筒11へ固定していく(螺入していく)ことで、アダプタ5の外筒21は血管部3の基端部分3aを徐々に締め付けて固定する。
【0030】
本実施形態では血管部3として、図3(a)に示すように、通常の血管を模擬する血管部3を用いているが、通常の血管部3と異なる径の血管部を用いることができる。図3(b)に血管部3より細く、細血管を模擬する細血管部15を示す。通常の血管部3の内径(内側直径)を1.5mmとし、細血管部15の内径を1.3mmとしている。アダプタも、通常の血管部3に用いるアダプタ5と、細血管部15を保持するための細型アダプタ5aとを有している。
【0031】
細型アダプタ5aは、外筒21の内径をアダプタ5より細くし、内筒22の外径をアダプタ5より太い形状として、細血管部15のサイズに合わせている。細型アダプタ5aは、外筒21の外径とアダプタ基端部23の形状、寸法を、通常のアダプタ5と同じにすることで、コネクタ6及び流出筒11(模擬血液バック2)とを取付、保持可能としている。上記通常の血管部3、細血管部15の他に、より細い血管部や、太い血管部といった異なる径の血管部を用いることができる。
【0032】
次に、コネクタ6について説明する。コネクタ6は、図2、3、4に示すように、外壁31と底部32とからなる円筒状の箱型(キャップ型)形態である。外壁31は、その内面から中心方向に突出するねじ部31aを有し、模擬血液バック2の流出筒11のねじ部13に螺合して係合するナット状物である。円盤状の底部32は、中心位置が開口し、血管部3を挿通する貫通孔33が形成される。コネクタ6は、ナット状の外壁31を流出筒11のねじ部13に螺合した状態で、外壁31の内側空間に血管部3の基端部分3aを保持した状態のアダプタ5を内包し、貫通孔33より血管部3を導出する。
【0033】
コネクタ6の貫通孔33の周囲から外壁31の内方に向けて延長された、言い換えると、先端側から基端側に向けて突出する突出係止部34が形成される。突出係止部34は、厚みが先端側から基端側にかけて徐々に薄くなる先細り形状を有し、さらにいうと突出係止部34の外側面は水平に形成されるが、内側面は外側面に向けて傾斜する傾斜面となっている。
【0034】
突出係止部34は、底部32の貫通孔33の縁部に形成され、軸方向に沿うように外壁31の内部空間に向けて突出している。突出係止部34は、先細り状となった円筒形状であり、血管部3を装着したアダプタ5を模擬血液バック2の流出筒11内に挿入した状態でコネクタ6を流出筒11に螺入していくと、先細りとなった突出係止部34の先端からアダプタ5の外筒21と流出筒11の内周面との間に挿入されていく。基端側から先端側にかけて徐々に太くなる突出係止部34がコネクタ6の螺入に従って挿入されていくことで、徐々にアダプタ5の外筒21が血管部3の基端部分3aに押圧され、血管部3のアダプタ5による保持状態が強固になる。
【0035】
コネクタ6の外壁31は、底部32と反対側端縁であって模擬血液バック2に形成される2つの係止部14、14に相当する位置を凹ませた凹所状とした2つの被係止部35、35が形成される。この被係止部35、35の凹み形状は、コネクタ6を模擬血液バック2の流出筒11に最深位置まで螺合した状態で、突条の係止部14、14が凹み部分に位置させることで、螺合完了位置に位置決め、固定される。また、この係合によりコネクタ6が不意に回転したときに突条の係止部14、14がコネクタ6の凹んだ被係止部35、35に当たり、コネクタ6の緩みを防止することができる。
【0036】
上記のとおり、模擬血管1のアダプタ5とコネクタ6とからなる連結固定部4により模擬血液バック2と血管部3とを接続、固定することができる。血管部は異なる径のものを使用することができることで様々な径の模擬血管をもって実習を行うことができる。さらにコネクタ6と模擬血液バック2(流出筒11)を共通部品として、部品点数を抑えることができるとともに、コネクタ6がアダプタ5を包み込むように接続、固定していることから、連結固定部4を小型化して、模擬血液バック2の押圧や、実習を阻害しないようにすることができる。
【0037】
次に、上記の接続固定部4に加え、採血実習に加えて投与実習を行うことができる模擬血管1(第2実施形態)について説明する。第2の実施形態は、上記の第1実施形態において使用したアダプタ5とコネクタ6とを模擬血管1の先端部分3bに配して点滴等の投与実習を行うもので、アダプタとコネクタとを共有して用いることで、部品点数を少なくすることができる。
【0038】
図1に示す模擬血管1(第1実施形態)は、基端部分を接続固定部4で模擬血液バック2に接続し、先端部分3bは閉塞された状態である。一方、図5に示すように、第2実施形態である模擬血管1は、先端部分3bの端部を基端部分3aと同じように開口し(図6参照)、血管部3を貫通管状に形成して、排出接続部7を取り付けるものである。第2実施形態の排出接続部7は、中間接続部材8、連結部材9を取り付け、連結部材9に廃液チューブ43の一端を接続し、廃液チューブ43の他端に外部の廃液容器41を接続して、血管部3に投与した薬液などを廃液容器41に排出可能としている。
【0039】
排出接続部7は、図5、6、7に示すように、第2のアダプタ45と第2のコネクタ46とからなり、第2のアダプタ45は第1のアダプタ5と共通する形態を有し、第2のコネクタ46は第1のコネクタ6と共通する形態を有する。第2のコネクタ46に螺合される中間接続部材8と、中間接続部材8を連結する連結部材9を介して廃液チューブ43を接続することが好ましいが、排出接続部7(第2のコネクタ46)に直接、廃液容器41に接続してもよい。
【0040】
第2のアダプタ45は、第1のアダプタ5と同一形状を有し、共通部品としている。第1のアダプタ5と同じく、外筒51、内筒52、アダプタ基端部53、スリット54、54が形成され、外筒51と内筒52との間の空間に血管部3の先端部分3bを保持する。
【0041】
第2のコネクタ46は、第1のコネクタ6と同一形状を有し、共通部品としている。第1のコネクタと同じく、外壁61、ねじ部61a、底部62、貫通孔63、突出係止部64、凹状の被係止部65、65が形成され、第2のコネクタ46を中間接続部材8に螺入していくと、突出係止部64、64が外筒61を内方に締め付けていくことも同じである。
【0042】
中間接続部材8について説明する。図6図7に示すように、中間接続部材8は、流出筒11と同じ形状、寸法の流入筒71と、流入筒71より先端側に位置して内部で連通する円筒状の排出部72と、を有する。中間接続部材8は、長手方向にかけて部材中心を貫通した内部空間を有し、血管部3から連通する廃液の排出流路73となる。
【0043】
流入筒71は、外周にネジ山が形成されたねじ部74を有する。また、後述する排出部72の一部である鍔72aの表面と裏面に長手方向に沿って上方に突出する突条の係止部75、75を有し、基端側内周に受け部76を有している。これらの形状及び寸法は、模擬血液バック2の流出筒11のねじ部13、係止部14、14、受け部12と同じとなる。
【0044】
流入筒71は、血管部3を保持した第2のアダプタ45を挿入した状態で受け部76により位置決められて固定される。さらに、突条の係止部75、75により、第2のコネクタ46の凹状の被係止部65、65の凹み位置に至って係止されるまで第2のコネクタ46を螺進することができ、係止部75、75と第2のコネクタ46の被係止部65、65との係合により、第2のコネクタ46の不意の回動等による緩みを防止することも、流出筒11と第1のコネクタ6と同じとなる。
【0045】
中間接続部材8の排出部72は、流入筒71と同心円の円筒形状とし、長手方向において流入筒71の反対側に向けて突出形成している。流入筒71の基端部分が外方に正六角板状に突出した鍔72a、鍔72aから円筒状に突出する基部72b、基部72bの先端からさらに突出する円筒形状の連結筒72cとからなる。連結筒72cは、表面にネジ山からなるねじ部72fを有し、外径を流入筒71と同じ寸法としている。
【0046】
基部72bの先端(連結筒72c側端)が外方に突出する環状凸部72dを有し、鍔72aからは連結部材9の螺進を停止する2つの中間係止部72e、72eが凸状に突出形成されている。中間係止部72e、72eは表面、裏面に形成され、円周に180度離れている。
【0047】
中間接続部材8は、流入筒71から排出部72にかけての長手方向を、部材の中心を貫通する排出流路73が形成されるが、排出部72の先端付近内部で排出流路73を遮蔽する薄膜の遮蔽弁77が配置される(図7参照)。この遮蔽弁77により、中間接続部材8に連結部材9を完了位置まで螺入させなければ、血管部3の先端部分3bを閉塞した状態を維持できる。
【0048】
次に、連結部材9について説明する。連結部材9は、図6、7に示すように、外壁81と底部82とからなる円筒状の箱型(キャップ型)形態である。外壁81は、その内面から中心方向に突出するねじ部81aを有し、中間接続部材8の排出部72のねじ部72fに螺合して係合するナット状物である。
【0049】
外壁81は、底部82と反対側端縁を一部凹ませたもので、中間接続部材8の鍔72aに形成される中間係止部72e、72eに相当する位置に、2つの被係止部83、83が形成される。この係止部83、83により、不意に連結部材9が回動することを防止し、螺合状態を継続させることができる。また、外壁81の底部82と反対側端縁は、内面側に向けて周縁から突出した抜け止め突出部84が形成され、中間接続部材8の環状凸部72dと係合し、一定範囲以上で抜けないようにしている。
【0050】
連結部材9は、底部82の円中心位置から、外壁81の内方に向けて針状に突出する連通針85と、同じく底部82の円中心位置から連通針85の反対側に突出するジョイント管部86が配置される。連通針85は、内部に連通用流路である排出流路87を有する筒部と、その先端から突出する円錐状の針先とを有し、連通針85とジョイント管部86とは内部空間を連通する排出流路87が形成される。ジョイント管部86は、先端にカエシがついた部材であり、廃液チューブ43のチューブ内に差し込んで連結することができる。
【0051】
連結部材9を中間接続部材8に螺入していくと、連結部材9の内方に向けて突出する連通針85が、中間接続部材8の排出流路73内に侵入する。さらに螺入を継続すると、連通針85の針先が、上述した中間接続部材8の排出流路73を閉塞する遮蔽弁77を突き破る。この状態で、中間接続部材8の排出流路73から排出される排出液が、連通針85に形成された開口85aから連結部材9の排出流路87内に流入し、ジョイント管部86の先端の開口86aから排出される。
【0052】
このように、第2実施形態の模擬血管1は、先端部分3bに第2のアダプタ45、第2のコネクタ46とからなる排出接続部7を配置することで、直接に廃液容器41と接続することもでき、さらに中間接続部材8と連結部材9とを接続することで、閉塞状態と排出状態とを容易に切り替えることができる。すなわち、中間接続部材8を排出接続部7に接続し、中間接続部材8と連結部材9との螺合を完全にせずに緩めた状態としておくと、中間接続部材8に形成される遮蔽弁77により、模擬血管1の先端側で遮蔽された状態となる。この状態から連結部材9を中間接続部材8に螺合させていくと、上記のとおり、連通針85が遮蔽弁77を突き破り、ジョイント管部86から廃液チューブ43を介して廃液容器41へと廃液を排出する。このように螺合の動作だけで切り替えることが可能になる。これにおり、閉塞状態で行う採血実習と、排出状態で行う投与実習とを、簡単に切り替えて、行うことが可能になる。
【0053】
以下、本発明に係る新たな模擬血管1を使用できる注射練習具の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。なお、本説明にあたり、取付本体101の長手方向を前後方向とし、図9の左奥側を前側若しくは基端側とし、右手前側を後側若しくは先端側として説明する。また、取付本体101の長手方向と直交する方向を幅方向若しくは側方として説明する。
【0054】
本発明に係る注射練習具の基本的な形態は、図9、10に示すように、取付本体101と、取付本体101の上面に配置する模擬皮下組織層102と、模擬皮下組織層102の上方を覆う模擬皮膚層104を張設する上カバー105とを備えたものである。模擬皮下組織層102上に模擬血管1、161を配し(図1、11参照)、上カバー105を被せて模擬皮膚組織層104から模擬血管1、161を探り当てて注射実習を行うものである。
【0055】
まず、注射練習具の取付本体101について説明する。取付本体101は、硬質樹脂からなる略板状体を全体として突弧形状、アーチ形状に湾曲した形態を有するものである。図10に示すように、突弧形状、アーチ形状となる取付本体101の裏面側となる内方が開放されており、その開放された内方部分が腕通し部分142となる。取付本体101は、図9に示すようにデッキ140に取り付けた状態で卓上に置いて使用することもできるが、図10に示すように、デッキ140から取り外して、取付本体101の内方部分となる腕通し部分142を疑似被用者の腕に巻いて使用することもできる。
【0056】
疑似被用者の腕に巻いて使用する場合、図10に示すデッキから取付本体101を取り外した状態で使用する。取付本体101を腕の肘関節と手首との間の位置で、腕通し部分142を腕に巻いて装着する。そして、腕に装着させた状態で上カバー105の模擬皮膚層104の表面(上面)から模擬血管1に注射針を刺して、血管注射の練習をすることができる。疑似被用者の腕に装着することで、対面した疑似被用者の腕への血管注射を模すことができ、疑似被用者の個人差や対面実施等の臨場感を再現することができる。
【0057】
取付本体101の構成について説明する。図9、10に示すように、取付本体101は、ABS樹脂など硬質の合成樹脂材を用いて、幅方向の中心部を突弧状に湾曲させて全体として突弧状、アーチ状に成型する。このように硬質素材を用いることにより、練習者が誤って使用した場合に、注射針が取付本体101を貫通することを防ぐのみならず、模擬皮膚層104や模擬皮下組織層102等を除いた全体及び外観が硬質素材によって成型されているものであるため、注射練習が未経験であっても安心して利用することができる。
【0058】
取付本体101は、長手方向の両前後端が起立した起立片131、131を有する。取付本体101の表面では、この長手方向に沿って、前側の起立片131から後側の起立片131にかけて、湾曲変更手段である2本の折り曲げ溝132、132を有する。この折り曲げ溝132、132に対応する前後の起立片131、131の位置で切り欠かれた切欠き133、133が形成され、アーチ状の取付本体101のアーチ形態を広げたり、狭めたりすることができる。これにより、疑似被用者の腕の太さに応じて、取付本体101の幅や湾曲状態、アーチ状態を調整することが可能になる。
【0059】
取付本体1は、図9、10に示すように、前側の起立片131の後側に模擬血管1の模擬血液バック2を配置するためのバック配置部111、111が幅方向に複数並び、その後側に従来及び新たな模擬血管1、161の基端部分である連結部64、連結固定部4を収容する基端支持部106を有し、その後方に突弧平面状に形成された模擬皮下組織層102を配し、その後方に後側の起立片131が配される。
【0060】
模擬皮下組織層102は、取付本体101の上面の湾曲形状と一致する突弧状、アーチ状体であり、皮下組織の感触を再現し、取付本体101の湾曲形状の変形に耐え得るために低反発性発泡材とからなる。低反発性発泡材は例えば低発泡ウレタンなどであり、メモリーフォーム(登録商標)が好ましい。模擬皮下組織層102は着脱自在としており、その平面は起立片131の上縁付近に至る。
【0061】
次に模擬皮膚層104を張設する上カバー105について説明する。模擬皮下組織層102の上側を覆う模擬皮膚層104は、取付本体101の上面に配置する上カバー105に張設される。この上カバー105は、取付本体101上面の湾曲形状と一致するアーチ状に形成され、その中央部分が切除され、模擬皮膚層104が張設される。上カバー105の前側には押え具108が形成され、上カバー105と押え具108との間は、幅方向両側を開放した押え具連結部107が形成される。押え具108は、上カバー105を閉じた状態で後述するバック配置部111、111の上側に位置し、押え具連結部107は基端支持部106の上側に位置する。
【0062】
模擬皮膚層104は、ウレタン系材料で形成することで、シリコン系材料で形成した場合と異なり、消毒アルコールの乾燥状態(濡れ具合)を目視で確認でき、乾燥が不十分な未消毒状態での注射を防ぐことができる。また、ウレタン系マイクロセルポリマーシートを用いることで、アルコールによる膨張から未消毒状態を確認することができる。
【0063】
上カバー105は、長手方向の側縁部分に取付本体101への固定手段として、その側方に係止爪134が形成される。一方、取付本体101に被係止部135が形成され、これらの係合により、上カバー105を取付本体101に対して着脱自在に取り付けることができる。
【0064】
次に、取付本体101に配置する模擬血管について説明する。従来の模擬血管161は、図11に示すように、血管部163と模擬血液バック162とを連結部164により連結固定したものであり、使い捨てのものとして供給している。模擬血液バック162は、図面上方形の袋(バック)に模擬血液を収容し、このバック162の基端部分と模擬血管161の基端部163aとを円筒状の連結部64で接続している。この血管部163は天然ゴムなどで形成する筒状の管を使用し、連結部164は血管部163とほぼ同じ太さ(径)の樹脂成型品を用いている。
【0065】
本発明の新たな模擬血管1は、図1に示すように、血管部3と模擬血液バック2とを連結固定部4で連結する。上述のとおり、この連結固定部4は、図2に示すように、血管部3の基端部分3aにアダプタ5を配し、このアダプタ5を模擬血液バック2の流出筒11に螺合することで接続、保持するコネクタ6により接続する。コネクタ6はアダプタ5を内包するようにして接続するため、従来の連結部164よりも太さ、外径が大きくなる(図11参照)。この新たな模擬血管1の連結固定部4により太さの異なる血管部3を連結固定することが可能になる。
【0066】
従来及び新たな模擬血管1、161に充填する模擬血液は、図1、11に示すように、赤く着色し臨場感を持たせるとともに、血管部3、163を含めその内部に空気が入らない状態で密封している。模擬血液バック2、162や血管部3、163内に空気が入らない状態としておくことによって、練習者が針を刺した時、液体と空気が混じりあった気泡がシリンジ内に入るのを防止することができる。また、模擬血液バック2、162を完全な密封包装とすることによって、模擬血液バック2、162や天然ゴムである血管部3、163の劣化を防止することができる。
【0067】
本発明の基端支持部106について図12、13を示して説明するが、模擬血管については図1、5、11も参照されたい。基端支持部106は、血管部3、163の基端部分3a、163aを支持するもので、模擬血液バック2、162から突出する接続部分、連結部164や連結固定部4を支持するものである(図9参照)。幅方向に3つ並んだバック配置部111、111の後方に複数の段部112、112が形成され、この段部112、112の間に凹所113、113が形成される。この凹所113、113は、新たな模擬血管1の連結固定部4を収容できるように所定の幅長さを有している。この幅長さは従来の連結部164の太さ(径)の2倍以上の長さを有することが好ましい(図14参照)。
【0068】
凹所113、113は、段部112、112の側面となる側方支持壁112a、112aに幅方向両側を囲まれ、後方に連通支持部114があるが、前方は開放されている。連通支持部114は、段部112、112の後方部分が各々凹所を形成する方向にせり出すように突出する幅延長部分114a、114aを有し、この幅延長部分114a、114aの延長した先であって連通支持部114、114の上縁から下方に、かつ、各々の対向する幅延長部分114a、114aに向けて傾斜するように切欠かれて形成された通し孔114b、114bが配される。この傾斜して切欠く傾斜部分(通し孔114bの外縁)は下方で湾曲して連続するようにした丸みのあるV字状となり、通し孔114b、114bの下端は模擬皮下組織層102の上表面よりも下方に位置している。連通支持部114、114は、単なる板状体ではなく、所定の前後方向の厚みを有し、傾斜するように切欠く部分においても同じく厚みを有する通し孔支持面114c、114cを有する。
【0069】
連通支持部114、114の幅延長部分114a、114aにより、凹所113、113に配された模擬血管1、161の連結部164、連結固定部4が模擬皮下組織層102に抜け出さないように支持しつつ、V字状の通し孔114b、114bは太さ(径)の異なる血管部3、163をいずれも配することができるようにしている。しかも、通し孔114b、114bの下端が模擬皮下組織層102の上表面よりも下方に位置して、通し孔114b、114bと模擬皮下組織層102との間に所定の前後方向間に隙間を設けることで血管部3、163の遊びの位置を確保して、上カバー105を閉じた状態で模擬皮下組織層102の上縁で傷ついたり破損することを防止している。一般に径の細い血管部の方が強度が弱いところ、径の細い血管部になればなるほど、連通支持部114、114では下方で支持されることになり、破損し難いものとしている。また、連通支持部114、114の通し孔114b、114bの上平面に所定の前後方向長さの通し孔支持面114c、114cが形成されることにより、通し孔114b、114bでの上カバー105の押圧で血管部3、163が破損せずに支持するようにしている。
【0070】
また、基端支持部106、106の前側のバック配置部111、111は、取付本体101の下面に形成されるもので、模擬血液バック2、162がずれないように所定大きさの凹みが形成される。また、前側の起立片131には、模擬血液バック2、162の基端位置に配される突出片を挿入して固定するための支持孔131aが形成される。この支持孔131aは、異なる大きさの突出片に対応できるよう、上側に幅狭、下側に幅広の孔を組み合わせた形態としている。
【0071】
バック配置部111、111は、使用時に駆血帯を巻くことで、上カバー105の前側に形成された押え具108により、複数の模擬血液バック2、2、162、162を一度に圧迫することができる。押え具108を下方に向けて押し込むと、模擬血液バック2、162を上方から圧迫し、その内部に充填している模擬血液の内圧を上昇させる。この内圧上昇は、血管部3、163内の模擬血液も同じであり、現実の怒張状態と似た状態を実現する。駆血帯を巻くために、取付本体101に並ぶバック配置部111、111の両側と、押え具108の両側に駆血帯を保持し易くするための凹状に切欠いた駆血帯通し孔115、115が形成される(図9参照)。
【0072】
取付本体101の後端の起立片131にある切除部121及び短溝122について説明する。図14、15に示すように、後端の起立片131は、折り曲げ溝132、132に対応した切欠き133、133が形成されるが、この切欠き133、133の間であって、取付本体101の湾曲する頂点位置に起立片131を下方まで切り欠いた切除部121が形成される。切除部121は、切欠き133、133と異なり幅広であって、起立片131から傾斜して下方を湾曲したV字状に形成される。切除幅は、少なくとも太い血管部を通す程度であり、複数の血管部3を通すことができる程度の幅が好ましく、基端支持部106の連通支持部114の通し孔114bと同程度が好ましい。この切除部121を有することにより、取付本体101の長手方向よりも長い血管部3を使用することもできる。これのみでなく図5、9に示すように、血管部3の先端側に排出接続部7や中間接続部8、連結部材9を設けて排出することが可能となり、投与型の実習が可能になる。
【0073】
また、起立片131の切除部121の付近の模擬皮下組織層102は、切除部121の下端に至る短溝122が形成される。短溝122は、その基端(前側端)から徐々に下降して切除部121の下端に至ることが好ましく、切除部121の幅と同程度の幅であることが好ましいが、基端は直角に下降するものであってもよい。短溝122は、切除部121を有する後側の起立片131の近傍のみに配され、その他の模擬皮下組織層102には溝形状のものは存在していない。
【0074】
短溝122の長手方向長さは起立片131の立ち上がり高さと同程度の長さであって、模擬皮下組織層102の長手方向長さの10分の1乃至2程度の長さ、より好ましくは同長さの10分の1である。短溝122の深さは、血管部3、163が完全に没入する深さを有し、短溝122の幅方向長さよりも深い。
【0075】
この短溝122が形成されることにより、上カバー105の後端縁で排出する血管部3を傷つけて破損することを防止し、さらには起立片131の切除部121で血管部3の破損が発生することを防止している。また、本実施形態の模擬皮下組織層102自体には、他製品に存するような血管部を保持する溝などがなく、自由に血管部3を這わせることができ、複数の血管や太さの異なる血管を自由に配することができ、使用者が手探りで血管の位置を確認するようにしている。その一方、押え具108で模擬血液バック2、162を押圧して血管部3、163を怒張させた状態で実習することもあり、この状態で血管部3を損傷させることなく、切除部121から排出する必要がある。そのため、短溝122はできる限り短くしつつ、怒張した血管部3を没入するために必要な長さを有することが好ましい。
【0076】
さらに、図9に示すように、取付本体1は、机などに載置するために底面が平坦となったデッキ140を設けている。このデッキ140にも起立片131の切除部121に対応する位置に、デッキ切除部123を設けている。このデッキ切除部123を有することで、デッキ140に取付本体101を配して卓上で実習する場合においても、長い血管部を使用したり、投与型の実習を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0077】
1…模擬血管、2…模擬血液バック、3…血管部、3a…基端部分、3b…先端部分、4…連結固定部、5…アダプタ、6…コネクタ、7…排出接続部、8…中間接続部材、11…流出筒、14…係止部、21…外筒、22…内筒、23…アダプタ基端部、24…スリット、31…外壁、32…底部、33…貫通孔、34…突出係止部、35…被係止部、9…連結部材、45…第2のアダプタ、46…第2のコネクタ、51…外筒、52…内筒、53…アダプタ基端部、54…スリット、61…外壁、62…底部、63…貫通孔、64…突出係止部、74…ねじ部、72f…ねじ部、73…排出流路、77…遮蔽弁、85…連通針、85a…開口、87…排出流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15