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特開2022-73114医業用収支解析装置、医業用収支解析方法および医業用収支解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073114
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】医業用収支解析装置、医業用収支解析方法および医業用収支解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20120101AFI20220510BHJP
【FI】
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182896
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】506286928
【氏名又は名称】地方独立行政法人 大阪府立病院機構
(71)【出願人】
【識別番号】390000583
【氏名又は名称】小西医療器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】臼井 規朗
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 恵介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】手術ごとの収支をより正確に計上することで、収支評価の適正度を向上させる医業用収支解析装置、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】医業用収支解析システムにおいて、医業用収支解析装置10は、医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、各手術で生じる支出額の算出に用いられる支出因子情報とを取得する情報取得部11と、収入因子情報に基づいて、手術ごとに収入額を算出する収入算出部12と、支出因子情報に基づいて、手術ごとに支出額を算出する支出算出部13と、手術特定情報によって特定される各手術を、算出された収入額および支出額と対応付けることにより、情報取得部11で取得された情報を整理する情報整理部14と、情報整理部14によって整理された情報を出力する出力部15と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、前記複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、前記各手術で生じる支出額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する情報取得部と、
前記収入因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記収入額を算出する収入算出部と、
前記支出因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記支出額を算出する支出算出部と、
前記手術特定情報によって特定される前記各手術を、前記算出された収入額および支出額と対応付けることにより、前記情報取得部で取得された情報を整理する情報整理部と、
前記情報整理部によって整理された情報を出力する出力部と、
を備え、
前記支出因子情報には、前記各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、前記人件費情報は、前記各手術の実施時間を示す手術時間情報であり、
前記支出算出部は、前記支出額の一部として、前記手術時間情報と、前記担当者個々に指定された時間単価とに基づいて前記手術ごとに前記人件費を算出する、
医業用収支解析装置。
【請求項2】
前記担当者が技能によってランク付けされており、前記担当者個々に指定された時間単価は、前記担当者のランクによって異なる値に設定される、
請求項1に記載の医業用収支解析装置。
【請求項3】
前記収入算出部は、前記手術ごとの前記収入額として、当該手術の術式に応じて決定される術式額、当該手術の実施状況に応じて決定される加算額、当該手術で使用された麻酔の手技料を示す麻酔額、および、当該手術で使用された医療材料に応じて決定される償還額のうち、少なくとも1つを算出し、
前記情報整理部は、前記術式額、前記加算額および前記麻酔額に基づいて、術式の難易度を示す情報を生成する、
請求項1または2に記載の医業用収支解析装置。
【請求項4】
前記医療施設が、複数の診療科を有し、前記複数の診療科の各々に、所定期間における手術室の利用可能時間である持枠時間が割り振られており、
前記情報整理部は、前記診療科ごとに、前記所定期間内に実施された前記複数の手術の合計所要時間の、前記持枠時間に対する割合である占有率を算出する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医業用収支解析装置。
【請求項5】
前記医療施設は、複数の診療科によって共用される1以上の手術室を有する、
請求項4に記載の医業用収支解析装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記情報整理部によって整理された情報に基づき、前記医療施設内の手術室の占有時間に関する情報を出力する稼働率モードを実施するように構成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の医業用収支解析装置。
【請求項7】
前記医療施設が、複数の診療科を有し、前記複数の診療科の各々に、所定期間における手術室の利用可能時間である持枠時間が割り振られており、
前記出力部は、前記稼働率モードにおいて、診療科別あるいは曜日別に、前記所定期間内に実施された前記複数の手術の合計所要時間の、前記持枠時間に対する割合である占有率を算出する、
請求項6に記載の医業用収支解析装置。
【請求項8】
医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、前記複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、前記各手術で生じる支出総額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する情報取得工程と、
前記収入因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記収入額を算出する収入算出工程と、
前記支出因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記支出額を算出する支出算出工程と、
前記手術特定情報によって特定される前記各手術を、前記算出された収入額および支出額と対応付けることにより、前記情報取得工程において取得された情報を整理する情報整理工程と、
前記整理された情報を出力する出力工程と、
を備え、
前記支出因子情報には、前記各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、前記人件費情報は、前記各手術の実施時間を示す手術時間情報であり、
前記支出算出工程では、前記支出額の一部として、前記手術時間情報と、前記担当者個々に指定された時間単価とに基づいて前記手術ごとに前記人件費を算出する、
医業用収支解析方法。
【請求項9】
医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、前記複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、前記各手術で生じる支出総額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する情報取得工程と、
前記収入因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記収入額を算出する収入算出工程と、
前記支出因子情報に基づいて、前記手術ごとに前記支出額を算出する支出算出工程と、
前記手術特定情報によって特定される前記各手術を、前記算出された収入額および支出額と対応付けることにより、前記情報取得工程において取得された情報を整理する情報整理工程と、
前記整理された情報を出力する出力工程と、
を備え、
前記支出因子情報には、前記各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、前記人件費情報は、前記各手術の実施時間を示す手術時間情報であり、
前記支出算出工程では、前記支出額の一部として、前記手術時間情報と、前記担当者個々に指定された時間単価とに基づいて前記手術ごとに前記人件費を算出する、
医業用収支解析方法をコンピュータに実行させる、医業用収支解析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設内で実施された手術の収支を解析するための装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設では、連日、患者に対して、複数の医療従事者が関わる様々な手術が行われている。そして、手術の実施には、例えば、複数の医療従事者、多数の手術用器具、麻酔装置、手術室の確保等の複雑な情報管理が必要である。
例えば、特許文献1には、手術業務に関する情報を統括的に管理する手術管理システムについて開示されている。この手術管理システムは、手術ごとの費用を算出すると共に、手術ごとの収入を算出することにより、手術業務の収支比較が容易化され、医療機関の営業改善が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-164217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の手術管理システムでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された手術管理システムでは、手術ごとの費用および収入について、人件費等を含め漏れなく正確に計上することが困難であるため、収支の評価が適正か否かを判断しにくいという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、手術ごとの収支をより正確に計上することで、収支評価の適正度を向上させることが可能な医業用収支解析装置、方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る医業用収支解析装置は、情報取得部と、収入算出部と、支出算出部と、情報整理部と、出力部と、を備えている。情報取得部は、医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、各手術で生じる支出総額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する。収入算出部は、収入因子情報に基づいて、手術ごとに収入額を算出する。支出算出部は、支出因子情報に基づいて、手術ごとに支出額を算出する。情報整理部は、手術特定情報によって特定される各手術を、算出された収入額および支出額と対応付けることにより、情報取得部で取得された情報を整理する。出力部は、情報整理部によって整理された情報を出力する。支出因子情報には、各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、人件費情報は、各手術の実施時間を示す手術時間情報である。支出算出部は、支出額の一部として、手術時間情報と、担当者個々に指定された時間単価とに基づいて手術ごとに人件費を算出する。
【0007】
これにより、手術特定情報と収入因子情報と支出因子情報とがバラバラに管理あるいは記録されていても、これらの情報を組み合わせることができる。そして、組合せに際し、各手術を収入額と支出額と紐づけるようにして情報が整理される。したがって、医療施設内で実施された複数の手術の収支を個別に容易に把握することができるため、当該医療施設の業務の改善に役立てることができる。特に、手術ごとの担当者の人件費が、各手術の支出額の一部として具体的に計上されるため、手術ごとのコストを適正に評価することができる。
【0008】
第2の発明に係る医業用収支解析装置は、第1の発明に係る医業用収支解析装置であって、担当者が技能によってランク付けされており、担当者個々に指定された時間単価が、担当者のランクによって異なる値に設定される。ここで、担当者の技能は収入差に影響を及ぼすと考えられる。上記構成によれば、担当者間で技能による収入差があっても、手術ごとに発生する人件費の算出精度が保たれる。
【0009】
第3の発明に係る医業用収支解析装置は、第2の発明に係る医業用収支解析装置であって、収入算出部は、収入額として、手術の術式に応じて決定される術式額、手術が実施された状況に応じて決定される加算額、手術で使用した麻酔の手技料を示す麻酔額、および、手術において使用された器材に応じて決定される償還額のうち、少なくとも1つを算出する。情報整理部が、術式額、加算額および麻酔額に基づいて、術式の難易度を示す情報を生成する。
【0010】
これにより、手術ごとに得られる収入を具体的に算出することができる。収入に、術式額、加算額、麻酔額および償還額を考慮に入れることで、手術ごとの収支を適正に評価することができる。また、出願人は、術式額、加算額および麻酔額は、使用した材料に応じて発生する償還額と比べて、術式の難易度が高くなるほど高額になる傾向が強く、術式の難易度と相関を有するとの知見を得た。上記構成によれば、術式の難易度を、術式の難易度と相関を有する収入因子に基づいて、定量的に評価することができる。
【0011】
第4の発明に係る医業用収支解析装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る医業用収支解析装置であって、医療施設が、複数の診療科を有し、複数の診療科の各々には、所定期間内における手術室の利用可能時間である持枠時間が割り振られている。情報整理部は、診療科ごとに、所定期間内に実施された手術の合計時間の、所定期間内に割り振られた持枠時間に対する割合である占有率を算出する。これにより、各診療科が手術室を効率的に運用できているか否か、医療施設が全体として手術室を効率的に運用できているか否かを評価し易くなる。
【0012】
第5の発明に係る医業用収支解析装置は、第4の発明に係る医業用収支解析装置であって、医療施設は、複数の診療科によって共用される1以上の手術室を有する。これにより、医療施設が、複数の診療科で手術室を共用する「中央集中型」を採用している場合、診療科ごとに占有率の高低を評価することができる。評価結果は、持枠時間の割り振りの最適化に役立てることができる。
【0013】
第6の発明に係る医業用収支解析装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る医業用収支解析装置であって、出力部は、情報整理部によって整理された情報に基づき、医療施設内の手術室の占有時間に関する情報を出力する稼働率モードを実施するように構成されている。これにより、ユーザは、稼働率モードを利用することで、手術室の使用効率を簡便に把握することができる。
【0014】
第7の発明に係る医業用収支解析装置は、第6の発明に係る医業用収支解析装置であって、医療施設が、複数の診療科を有し、複数の診療科の各々には、所定期間内における手術室の利用可能時間である持枠時間が割り振られている。出力部は、稼働率モードにおいて、診療科別あるいは曜日別に、所定期間内に実施された手術の合計時間の、所定期間内に割り振られた持枠時間に対する割合である占有率を出力する。これにより、ユーザは、診療科別に占有率を比較して、持枠時間の最適設定に活用することができる。曜日別に占有率を把握することができ、空きが少ない曜日の手術を減らして、空きが多い曜日の手術を増やすなど、医療施設内の手術室の占有率を均等化して、全体として手術室の稼働効率を改善することができる。
【0015】
第8の発明に係る医業用収支解析方法は、情報取得工程と、収入算出工程と、支出算出工程と、情報整理工程と、出力工程と、を備えている。情報取得工程は、医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、各手術で生じる支出総額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する。収入算出工程は、収入因子情報に基づいて、手術ごとに収入額を算出する。支出算出工程は、支出因子情報に基づいて、手術ごとに支出額を算出する。情報整理工程は、手術特定情報によって特定される各手術を、算出された収入額および支出額と対応付けることにより、情報取得工程において取得された情報を整理する。出力工程では、整理された情報を出力する。支出因子情報には、各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、人件費情報は、各手術の実施時間を示す手術時間情報である。支出算出工程では、支出額の一部として、手術時間情報と、担当者個々に指定された時間単価とに基づいて手術ごとに人件費を算出する。支出因子情報には、各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、人件費情報は、各手術の実施時間を示す手術時間情報である。支出算出部は、支出額の一部として、手術時間情報と、担当者個々に指定された時間単価とに基づいて手術ごとに人件費を算出する。
【0016】
これにより、手術特定情報と収入因子情報と支出因子情報とがバラバラに管理あるいは記録されていても、これらの情報を組み合わせることができる。そして、組合せに際し、各手術を収入額と支出額と紐づけるようにして情報が整理される。したがって、医療施設内で実施された複数の手術の収支を個別に容易に把握することができるため、当該医療施設の業務の改善に役立てることができる。特に、手術ごとの担当者の人件費が、各手術の支出額の一部として具体的に計上されるため、手術ごとのコストを適正に評価することができる。
【0017】
第9の発明に係る医業用収支解析プログラムは、情報取得工程と、収入算出工程と、支出算出工程と、情報整理工程と、出力工程と、を備えている医業用収支解析方法をコンピュータに実行させる。情報取得工程は、医療施設内で実施された複数の手術を個々に特定する手術特定情報と、複数の手術の各々から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、各手術で生じる支出総額の算出に用いられる支出因子情報と、を取得する。収入算出工程は、収入因子情報に基づいて、手術ごとに収入額を算出する。支出算出工程は、支出因子情報に基づいて、手術ごとに支出額を算出する。情報整理工程は、手術特定情報によって特定される各手術を、算出された収入額および支出額と対応付けることにより、情報取得工程において取得された情報を整理する。出力工程では、整理された情報を出力する。支出因子情報には、各手術の担当者の人件費を算出するための人件費情報が含まれ、人件費情報は、各手術の実施時間を示す手術時間情報である。支出算出工程では、支出額の一部として、手術時間情報と、担当者個々に指定された時間単価とに基づいて手術ごとに人件費を算出する。
【0018】
これにより、手術特定情報と収入因子情報と支出因子情報とがバラバラに管理あるいは記録されていても、これらの情報を組み合わせることができる。そして、組合せに際し、各手術を収入額と支出額と紐づけるようにして情報が整理される。したがって、医療施設内で実施された複数の手術の収支を個別に容易に把握することができるため、当該医療施設の業務の改善に役立てることができる。特に、手術ごとの担当者の人件費が、各手術の支出額の一部として具体的に計上されるため、手術ごとのコストを適正に評価することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、手術ごとの収支をより正確に計上することで、収支評価の適正度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る医業用収支解析装置が適用される医療機関を示す模式図である。
図2図1の医業用収支解析装置を含む医業用収支解析システムの構成を示すブロック図である。
図3図2の医業用収支解析装置を示すブロック図である。
図4図2の医業用収支解析装置によって実行される医業用収支解析方法を示すフローチャートである。
図5図2の医業用収支解析装置によって出力されるモード選択画面を示す図である。
図6】検索モードの選択後に表示される診療科別検索画面を示す図である。
図7】診療科別検索画面の一段下層に設定される術式別検索画面を示す図である。
図8】術式別検索画面の一段下層に設定される材料検索画面を示す図である。
図9】材料検索画面の一段下層に設定される手術一覧画面を示す図である。
図10】手術一覧画面の一段下層に設定される手術毎収支解析画面を示す図である。
図11】稼働率モードの選択後に表示される検索形式選択画面を示す図である。
図12】診療科別検索画面を示す図である。
図13】曜日別検索画面を示す図である。
図14】患者別検索画面を示す図である。
図15】一括出力モードの選択後に表示される出力様式選択画面を示す図である。
図16】一括出力モードで出力される帳票の一例を示す図である。
図17】一括出力モードで出力される帳票の一例を示す図である。
図18】一括出力モードで出力される帳票の一例を示す図である。
図19】月別の手術室利用状況の集計を表した帳票の一例を示す図である。
図20】技能と時間単価との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る医業用収支解析装置、医業用収支解析方法および医業用収支解析プログラムについて、図面を参照しながら説明する。
(診療科)
図1は、本実施形態に係る医業用収支解析装置10を含む医業用収支解析システム1が適用される医療機関100を示す模式図である。医療機関100は、複数の診療科101(例えば、小児外科、整形外科、消化器内科、耳鼻科、産科等)を有する。複数の医師および看護師が、各診療科101に在籍し、手術を含む様々な医療行為を患者に対して行う。
【0022】
(手術室)
医療機関100には、手術が実施される複数の手術室110が設置されている。手術室110は、「個別型」と「中央集中型」に大別される。個別型では、手術室が診療科ごとに設置される。中央集中型では、複数の手術室が医療機関100内の複数の診療科で共有される。本実施形態では、一例として、医療機関100が中央集中型を採用しているものとする。
【0023】
(持枠時間・占有率)
手術を実施する曜日および時間帯と、手術室110の数とに基づいて、医療機関100が全体として所定単位期間(例えば、1か月間、数か月間、1年間)内に手術を実施できる時間である「総時間」が決まる。中央集中型では、各診療科に「持枠時間」が与えられる。持枠時間は、医療行為として手術を実施する場合がある診療科101の数に応じて総時間を細分した時間であり、所定単位期間内で各診療科101が手術室110を利用可能な時間である。持枠時間は、複数の診療科101間で一律ではない。手術が頻発する診療科に、相対的に長い持枠時間が与えられてもよい。
【0024】
なお、本書で「占有率」とは、ある診療科101において、所定単位期間内における手術室110の利用時間合計の、持枠時間に対する割合をいう。100%を超える占有率は、持枠時間を決める段階での想定を超えて、当該診療科が手術室を利用したことを意味する。「占有率」に代えて「稼働率」と称する場合もある。
【0025】
(医事部門・情報部門・倉庫)
医療機関100は、診療科101以外の部門として、医事部門102および情報部門103を有する。医事部門102は、医事データが記録された医事データベースを管理する。情報部門103は、各患者の電子カルテが記録された電子カルテデータベースを管理する。
医療機関100には、医療材料を保管する倉庫109が設置される。「医療材料」とは、手術を始めとする医療行為に必要な、医療機器、医療器具および医薬品などの物品をいう。倉庫109の管理者は、医療材料の在庫を管理するとともに、手術実施データが記録された手術実施データベースを管理する。なお、これらの管理業務は、医療材料を医療機関100(倉庫109)に納入する業者に委託されるケースもある。
【0026】
(手術の流れ・データ管理例)
上記のような医療機関100における手術の流れと、手術に関するデータ管理の一例について説明する。
【0027】
<術前>
ある診療科で、ある患者の治療に手術を実施すると決まると、当該診療科101が手術室を予約し、当該患者の電子カルテに「手術特定情報」を入力する。手術特定情報は、医療機関100内の手術を個々に特定する情報である。
手術特定情報には、当該手術の術式を示す術式情報、当該手術を実施する診療科を特定する診療科情報、当該手術を担当する医師および看護師(担当者)を特定する担当者基本情報、当該手術を受ける患者を特定する患者基本情報、当該手術を実施する予定日時を示す手術予定日時情報、および予約された手術室を特定する手術室特定情報が含まれる。担当者基本情報には、担当者の氏名を示す情報が含まれ、患者基本情報には、患者の氏名を示す情報が含まれる。同時的に、手術予定表が発行されて倉庫109に配布される。手術予定表は、上記のような手術特定情報が記載された帳票である。
【0028】
倉庫109の管理者は、手術予定表に記載される術式に必要な医療材料のリスト(以下、ピッキングリスト)を作成する。なお、術式が同じでも、担当者の嗜好により必要な医療材料が異なる場合もある。次いで、倉庫109の管理者は、ピッキングリストの記載に従って、倉庫109から医療材料を出庫し、出庫した医療材料をカートに載せる。
【0029】
<手術>
手術当日、倉庫109の管理者は、カートを倉庫109から手術室へ搬送する。手術では、手術の担当者によって、カート内の医療材料が使用される。
【0030】
<術後>
手術が終わると、倉庫109の管理者が、手術室からカートを回収し、カートに残存する医療材料を倉庫に戻す。倉庫109の管理者は、ピッキングリストに記載される医療材料と、カートに残存した医療材料とを照合し、手術で使用された医療材料の品目およびその個数を特定する。
倉庫109の管理者は、手術特定情報(例えば、手術が実施された日時を示す手術日程情報、前述した術式情報、診療科情報、担当者特定情報および患者特定情報を含む)と共に、照合結果(すなわち、当該手術で使用された医療材料の品目およびその個数を示す情報)を、実施データベースに記録する。
手術を実施した診療科は、当該患者の電子カルテに、手術特定情報として、前述した手術日程情報を入力する。
【0031】
医事部門102は、手術特定情報(例えば、前述した手術日程情報、術式情報、診療科情報、担当者特定情報および患者特定情報を含む)と共に、当該手術で使用された術式および麻酔に応じた診療報酬に関する情報を、医事データベースに記録する。診療報酬に加算して患者に請求する金額(加算額)があれば、加算額に関する情報も併せて医事データベースに記録する。加算額には、一例として、休日料金、深夜料金、低年齢料金などがある。
【0032】
このように、1回の手術が行われると、手術実施データベース、電子カルテデータベースおよび医事データベースの3つのデータベースに、手術特定情報およびこれと関連付けされた多数の情報が記録される。手術実施データベースには、主として医療機関100にとって経済的に支出となる情報が記録されている。
医事データベースには、主として医療機関100にとって経済的に収入となる情報が記録されている。電子カルテデータベースには、患者の経過を示す情報だけでなく、手術室の利用状況に関する情報も記録されている。
これら3つのデータベースは、異なる部門によって管理されている。本実施形態に係る医業用収支解析システムは、上記のような医療機関100に適用された場合に、これら複数のデータベースに記録されている手術に関する情報を組み合わせることができ、手術に関する収支の解析に資する。
【0033】
(医業用収支解析システム1)
本実施形態に係る医業用収支解析システム1は、図2に示すように、医業用収支解析装置10と、医業用収支解析装置10外の複数のデータベースDB1~DB3と、を備えている。医業用収支解析装置10は、複数のデータベースと、ネットワークを介して有線または無線で通信可能に接続されている。
【0034】
医業用収支解析装置10は、制御部2、記憶部3および入出力インターフェイス4を有したコンピュータである。医業用収支解析装置10は、記憶部3に記憶された制御プログラムPを実行することによって、複数のデータベースDB1~DB3から情報を取得し、取得した情報を整理し、整理された情報を出力するように構成されている。
医業用収支解析装置10は、医療機関100内に設置された電子カルテを閲覧するための電子カルテ端末によって実現されてもよい。
【0035】
医業用収支解析装置10は、ユーザが整理された情報を検索および閲覧するためにユーザによって操作される入力装置21と接続され、また、整理された情報を出力する表示装置22と接続されている。入力装置21および表示装置22は、医業用収支解析装置10に接続されたキーボードおよびディスプレイでもよい。入力装置21および表示装置22は、医業用収支解析装置10とネットワークを介して無線で通信可能に接続された携帯情報端末(スマートフォンあるいはタブレット)23のタッチパネルでもよい。
【0036】
図3に示すように、医業用収支解析装置10は、コンピュータが記憶部3に保存された制御プログラムを読み込んで実行することで、情報取得部11、収入算出部12、支出算出部13、情報整理部14および出力部15を生成する。
ここで、図4に示すフローチャートも参照しつつ、医業用収支解析装置10内に形成される各機能ブロック(情報取得部11、収入算出部12、支出算出部13、情報整理部14および出力部15)による処理について、以下で説明する。
【0037】
情報取得部11は、医療機関内で実施された手術を個々に特定する手術特定情報と、各手術から得られる収入額の算出に用いられる収入因子情報と、各手術で生じる支出額の算出に用いられる支出因子情報とを取得する(情報取得工程S1)。
本実施形態において、これらの情報は、医業用収支解析装置10と接続された複数のデータベースから取得される。複数のデータベースは、収入因子情報および支出因子情報を分散して記録している。分散して記録されている複数の情報が、情報取得部により取得され、医業用収支解析装置10にて集約される。
【0038】
収入算出部12は、収入因子情報に基づいて手術ごとに収入額を算出する(収入算出工程S2)。
支出算出部13は、支出因子情報に基づいて手術ごとに支出額を算出する(支出算出工程S3)。
情報整理部14は、手術特定情報によって特定される各手術を、算出された収入額および支出額と対応付けることにより情報取得部11で取得された情報を整理する(情報整理工程S4)。
【0039】
出力部15は、ユーザからの要求に従った形式で、整理された情報を出力する(出力工程S5)。情報の出力先は、典型的には、前述した表示装置22である。
収入算出工程S2で算出される収入額には、手術の術式に応じて決定される術式額、手術の実施状況に応じて加算される加算額、手術で使用された麻酔の手技料を示す麻酔額、および、手術で使用された医療材料に応じて決定される償還額が含まれる。
【0040】
支出算出工程S3で算出される支出額には、手術ごとに生じる人件費、および、手術で使用された医療材料の購入に要した材料費が含まれる。
1回の手術に関する収入額と支出額とが上記のように算出される。それにより1回の手術における収支の解析を行うことが可能になる。特に、本実施形態では、手術ごとに生じる人件費が収支解析の対象に含まれているため、収支をより適正に評価することができる。
【0041】
情報取得工程S1に関し、手術特定情報は前述した通りである。手術特定情報は、複数のデータベースのいずれにも記録されている。情報取得部11は、各データベースから、収入因子情報および/または支出因子情報とともに、手術特定情報を取得する。
収入因子情報は、収入額の算出に用いられる情報である。情報取得部11は、収入因子情報として、医事データベースから、術式額の算出に用いられる診療報酬情報を取得する。情報取得部11は、収入因子情報として、医事データベースから、加算額の算出に用いられる加算額情報を取得する。情報取得部11は、収入因子情報として、医事データベースから、種類別に区分され麻酔額の算出に用いられる麻酔額情報を取得する。情報取得部11は、収入因子情報として、手術実施データベースから、償還額を算出するための償還情報を取得する。
【0042】
支出因子情報は、支出額の算出に用いられる情報である。情報取得部11は、支出因子情報として、電子カルテデータベースから、人件費の算出に用いられる人件費情報を取得する。人件費情報は、各手術の実施時間を示す手術時間情報であり、手術日程情報から実施時間を割り出すことができる。支出算出部13は、手術時間情報と、担当者個々に指定された時間単価(〇〇医師:××円/h、△△看護師:~~円/hなど)とに基づいて、手術ごとに人件費を算出する。ここで、図20に示すように、医師は、技能(例えば、経験年数あるいは職責など)によってランク付けされており、時間単価がこのランクに応じて異なる値に定められている。技能が高い(例えば、経験年数が多く職責が大きい)ことを示すランクほど、時間単価は高くなる。各医師の時間単価は、ランクに応じて異なる値に設定されている。これにより、なお、担当者個々の時間単価を示す情報は、医業用収支解析装置10の記憶部に予め記憶されている。
【0043】
収入因子情報および支出因子情報は、3つのデータベースに分散しているが、いずれも各データベースにおいて手術特定情報と対応付けられた(紐づけされた)状態で記録されている。情報取得部11は、収入因子情報および支出因子情報を手術特定情報とともに取得する。収入算出部12によって算出される1回の手術における支出額は、収入因子情報に紐づけされていた手術特定情報と紐づけされる。支出額についても同様である。
【0044】
情報整理部14は、収入算出部12によって算出される1回の手術における収入額を、当該収入額の算出に用いられた収入因子情報に紐づけされていた手術特定情報と対応付けることにより、情報を整理する。また、情報整理部14は、支出算出部13によって算出される1回の手術における支出額を、当該支出額の算出に用いられた支出因子情報に紐づけされていた手術特定情報と対応付けることにより、情報を整理する。
【0045】
このように、分散して管理および記録されていた手術特定情報と収入因子情報と支出因子情報とが、情報整理部14によって組み合わされる。組合せに際しては、各手術を収入額と支出額と紐づけるようにして情報が整理される。したがって、医療機関内で多数の手術が実施されても、手術ごとに収支を容易に把握することができる。医療機関の業務の改善に役立てることができる。
【0046】
また、情報整理部14は、1年間などの所定期間に実施された全ての手術の各々について、収入額および加算額および麻酔額の合計金額を算出し、術式ごとに平均金額を算出する。情報整理部14は、この平均金額に基づいて術式の難易度を示す情報を生成する。情報整理部14は、術式の難易度を示す情報の一例として、術式を難易度でランク付けする。平均金額の上位1/nの術式には、最高難易度を示すAランクが付与され、次の1/nの術式には、次点の難易度を示すBランクが付与され、n段階に分けて難易度を識別する情報が生成される(nは2以上の整数)。
【0047】
なお、情報の取得および情報の整理の周期は、特に限定されるものではない。ユーザが要望する即時性に見合った適当な周期に設定される。例えば、1日おきに通常営業時間外の決まった時刻に情報が取得され、情報が整理される。整理された情報は、出力部15において出力されることができ、ユーザが検索および閲覧することができる。
【0048】
(出力方法)
以下、ユーザが医業用収支解析装置10に接続された入力装置としてのキーボードを操作し、その操作に応じて出力部15が医業用収支解析装置10に接続された表示装置22に情報を出力する場合を例として挙げて、医業用収支解析装置10による情報出力について説明する。
なお、医業用収支解析装置10は、印刷装置と接続されており、整理された情報を紙媒体に出力することができる。また、医業用収支解析装置10は、ユーザの要望に応じて、コンピュータ内にインストールされた表計算ソフトおよび文書閲覧ソフトに、整理された情報を出力することができる。
医業用収支解析のためのアプリを立ち上げると、出力部15は、ユーザに出力モードを選択させるためのモード選択画面(図5参照)を表示装置22に表示させる。医業用収支解析装置10は、図5に示すように、出力モードとして、検索モードM1、一括出力モードM2および稼働率モードM3の3つのモードを有している。
【0049】
検索モードM1は、情報整理部によって整理された収支に関する情報をドリルダウン形式で表示し、ユーザに検索および閲覧させる。
稼働率モードM3は、情報整理部によって整理された手術室の稼働状況に関する情報を表示し、ユーザに検索および閲覧させる。
一括出力モードM2は、収支および手術室の稼働状況に関する情報を、予め定めた様式の表にまとめ、帳票として印刷装置に出力する。
【0050】
モード選択画面は、図5に示すように、表示モードを選択する複数のモードボタン(検索モードM1、一括出力モードM2、稼働率モードM3)と、診療科を入力するためのブロックB1とを含む。ユーザには、管理者権限を有するものと、情報の閲覧および出力できる情報の範囲が一診療科に限定されたものとが含まれる。閲覧情報範囲が限られたユーザは、情報検索対象の診療科ID、パスワードを入力し、いずれかのモードボタンを押すことで各出力モードM1~M3を選択する。管理者権限を有するユーザは、管理者権限を示すID、パスワードを入力し、いずれかのモードボタンを押下することで、各出力モードM1~M3を選択する。
【0051】
(検索モード)
検索モードM1が選択されると、出力部15は、診療科別検索情報を出力する。
図6に示される診療科別検索画面には、診療科別検索情報として、指定期間の診療科別の収支解析データが表示される。
診療科別検索画面は、検索期間を指定するブロックB2を有する。検索期間がブロックB2に入力されると、診療科別検索画面上に、診療科別検索情報が出力される。
【0052】
すなわち、閲覧情報範囲が限定されたユーザは、初めに選択された診療科に関し、指定期間内に実施された複数の手術の収支の総計と、占有率と、材料比率等を示す情報が出力される。材料比率とは、収入額あるいは支出額に対する材料費の割合である。診療科別検索画面上で、ユーザは、指定された診療科の収支を容易に確認することができる。管理者権限を有するユーザは、複数(典型的には全部)の診療科についての診療科別検索情報が示される。
【0053】
診療科別検索画面は、データ出力ボタンB11と、詳細表示ボタンB12とを有する。詳細表示ボタンが押下されると、出力部15は、選択された診療科に関する術式別検索情報を出力する。
図7に示される術式別検索画面は、診療科別検索画面の一段下層に設定され、術式別検索情報として、選択された診療科の指定期間中に実施された手術の収支解析の結果を表示する。
【0054】
術式別検索画面は、検索期間を指定するブロックB3を有するが、診療科別検索画面での入力結果が術式別検索画面でも引き継がれ、診療別検索情報が画面遷移と同時的に出力される(この仕様は、更に下層に設定された画面でも同様)。すなわち、既に指定された期間内に実施された複数の手術の収支が、術式別に表示される。
ここで表示される「収支」には、加算額の術式別小計、償還額の術式別小計、収入額の術式別総計、材料費の術式別小計が含まれる。なお、ここには、人件費の術式別小計が含まれていてもよい。これら収支を示す情報と共に、指定期間内における術式別の手術実施件数が表示されてもよい。術式別検索画面上で、ユーザは、ある診療科における術式別の収支を容易に確認することができる。
【0055】
術式別検索画面は、データ出力ボタンB13と、詳細表示ボタンB14とを有する。ユーザが、術式を一つ選択して詳細表示ボタンB14を押下すると、出力部15は、選択された術式に関する医療材料の使用明細を出力する。
図8に示される材料検索画面は、術式別検索画面の一段下層に設定され、使用明細として、選択された術式で、ブロックB4に入力された指定期間中に使用された物品使用明細を表示する。使用明細は、選択された術式を採用して実施された手術において使用された医療材料に関する情報の詳細である。使用明細は、医療材料ごとに、物品名、定価単価、償還単価、購入単価、使用個数、償還金額および購入金額に関する情報を含む。
【0056】
例えば、図8では、物品として、血管内手術カテーテル(償還分類:償還)と、栄養カテーテルチューブ(償還分類:条件償還)とについて、定価単価、償還単価、購入単価、準備数、実施数、単位、使用率、償還金額、購入金額、償還率が表示されている。
このように材料分類で比較することにより、差益率の良い物品への切り替えを効果的に促すことができる。
【0057】
また、材料検索画面では、償還、条件償還等の償還分類に従って、色分けして表示される。例えば、償還分類が「償還」である場合には、背景を赤色で表示し、償還分類が「条件償還」である場合には、背景を緑色で表示する。
これにより、ユーザは、償還分類を一目で見分けることができる。
材料検索画面は、医療材料ごとに詳細表示ボタンB15を有する。ユーザが一つを選択して詳細表示ボタンB15を押すと、出力部15は、選択された医療材料を使用した手術の一覧を出力する。
【0058】
図9に示される手術一覧画面は、材料検索画面の一段下層に設定され、手術の一覧を出力する。手術の一覧は、選択された医療材料を使用して実施された手術に関する情報をまとめたものである。一覧には、手術の実施日、担当医師、患者基本情報、当該手術における当該医療材料の使用個数に関する情報が含まれる。
手術検索画面は、手術ごとに詳細表示ボタンB16を有する。ユーザが一つを選択して詳細表示ボタンB16を押下すると、出力部15は、選択された手術に関する収支に関する情報を出力する。
【0059】
図10に示される手術毎収支解析画面では、選択された1つの手術毎(患者毎)の情報が網羅的に表示される。すなわち、診療科、術式、患者基本情報、手術実施日、担当者基本情報、収入額、支出額、当該手術で使用された医療材料の使用明細が表示される。ユーザは、手術毎収支解析画面上で、選択された手術における収支を詳細に把握できる。
ユーザは、検索モードを利用することで、指定期間内にある診療科で実施された手術の収支を巨視的に把握することができ、そこから深堀りして1つの手術の収支を微視的に詳細に把握することができる。
【0060】
(稼働率モード)
稼働率モードM3が選択されると、出力部は、検索形式選択画面を表示装置22に出力する。
図11に示される検索形式選択画面は、検索期間を指定するブロックB5と、複数の検索形式に対応した複数のボタンB17とを有する。ユーザが、ブロックB5に検索期間を入力し、ボタンB17を押すと、出力部15は、ユーザの要求に従った形式で手術室の稼働状況に関する情報を出力する。
【0061】
医業用収支解析装置10は、ボタンB17のいずれか1つが押下されて選択される検索形式として、診療科別検索モード、曜日別検索モードおよび患者別検索モードを有する。
診療科別検索モードでは、図12に示されるように、出力部15が診療科別稼働率画面を表示する。
診療科別稼働率画面には、診療科別に手術室の占有率が表示される。診療科ごとに、術前に計画された手術予定時間と、術前計画なしに緊急で行う必要が生じた緊急手術実施時間と、実際に手術の実施に要した手術実績時間とが表示される。
【0062】
診療科別稼働率画面は、診療科ごとに手術実施一覧ボタンB18を有する。ユーザが、手術実施一覧ボタンB18を押下すると、出力部15は、対応する診療科ごとに実施された手術の一覧を出力する。
曜日別検索モードでは、図13に示されるように、出力部15が、曜日別稼働率画面を表示する。
【0063】
曜日別稼働率画面には、曜日別に手術室の占有率が表示される。曜日別稼働率画面は、曜日ごとに、診療科別ボタンB19および実施述一覧ボタンB20を有する。
診療科別ボタンB19は、診療科別の詳細情報を表示させるためのボタンである。診療科別ボタンB19が押されると、出力部15は、選択された曜日において診療科別の手術室の使用状況を示す画面を表示する。
【0064】
実施述一覧ボタンB20が押されると、出力部15は、選択された曜日に実施された手術の一覧を出力する。
患者別検索モードでは、図14に示されるように、出力部15が手術別(患者別)の稼働率画面を表示する。
図14に示す例では、診療科、手術日、曜日、患者ID、医師名、区分、術式、手術の開始時間、終了時間、日勤内、日勤外、入替時間等の情報が表示される。
【0065】
(一括出力モード)
一括出力モードM2が選択されると、出力部15は、出力様式選択画面を表示装置22に出力する。
図15に示される出力様式選択画面は、出力する情報の期間を指定するブロックB6と、出力様式を選択するための複数のボタンB21とを有する。
【0066】
ユーザがブロックB6に指定期間を入力して、いずれかのボタンB21を押すと、押下されたボタンB21に応じて、出力部15が、ユーザの要望に従って、情報整理部14によって整理された情報に基づいて、表形式計算ソフトあるいは文書閲覧ソフトで開くことが可能なデータファイルを作成する。
ユーザは、作成されたデータファイルを対応するソフトで開き、医業用収支解析装置10と接続された印刷装置によってデータファイルを印刷することで、予め定められた様式の帳票を簡易に作成することができる。
【0067】
医業用収支解析装置10は、出力様式として、診療科別集計の様式と、術式別集計の様式と、術式毎の材料一覧の様式と、患者毎(すなわち、手術症例毎)の材料一覧の様式と、患者別(すなわち、手術症例別)集計の様式を有する。図16図18に、出力様式の一例を示す。
図16は、診療科別集計を表した帳票の一例を示す。診療科別集計は、診療科ごとに、指定期間内の収入額、支出額および利益額を一覧として示す。
【0068】
診療科別集計は、これらの金額と併せて、手術担当者の延べ人数、手術の所要時間、手術実施数などの情報も併せて示す。診療科は、利益額の順に上から下に並べられる。
このような帳票を参照すれば、診療科間での利益額の高低を簡単に把握することができる。
図17は、術式別集計を表した帳票の一例を示す。術式別集計は、術式ごとに、指定期間内の収入額、支出額および利益額を一覧として示す。術式別集計は、これらの金額と併せて、手術担当者の延べ人数、手術の所要時間(合計でもよいし平均でもよい)、手術実施数などの情報も併せて示す。術式は、利益額の順に上から下に並べられる。
【0069】
このような帳票を参照すれば、術式間での利益額の高低を簡単に把握することができる。
診療科の数が多ければ、取扱い可能な術式も多数となり、例えば、数百に及ぶ。そこで、利益額に応じて術式を複数の群に分類してもよい。
例えば、術式を4群に分け、利益額上位1/4がAランク、次群の1/4がBランク、次群の1/4がCランク、利益額下位1/4がDランクとランク付けされてもよい。そのうえで、ランクごとに、収入額に示す各小計の割合、支出額に占める各小計の割合を算出し、ランク同士で算出結果を比較してもよい。
【0070】
これにより、利益が高い術式は、収入額の小計のうちどの項目から利益を得ているのか、利益が低い術式は、収入額の小計のうちどの項目から利益を得難いのか、など大まかな傾向を解析することも容易となる。
出力部15は、このような解析を助けるため、各ランクについて、収入額に示す小計の割合を表した円グラフを帳票の一部として出力してもよい。
【0071】
図18は、患者別(手術症例別)集計を表した帳票の一例を示す。患者別集計は、患者ごと(すなわち、手術症例ごと)に、指定期間内の収入額、支出額および利益額を一覧として示す。患者および手術症例は、利益額の順に上から下に並べられる。
このような帳票を参照すれば、手術症例間での利益額の高低を簡単に把握することができる。
【0072】
なお、患者別集計でも、術式別集計と同様にして、利益額に応じたランク付けと、ランク同士で支出に関するデータを比較するための情報整理を行ってもよい。また、前述した術式毎に付与された難易度を示す情報(ランク)が併せて表示される。これにより、術式の定量評価の結果を容易に把握することができる。
以上に説明したとおり、本実施形態に係る医業用収支解析装置10によれば、医療機関内で手術に関する情報が分散して記録されていても、これら情報を組み合わせて整理することができる。
【0073】
整理された情報は、ユーザの要望に従って出力される。したがって、医療機関内で複数の手術を実施していても、手術ごとに収支を容易に把握でき、当該医療機関の業務の改善に役立てることができる。
特に、手術の担当者の人件費が、各手術の支出額の一部として計上される。したがって、手術ごとのコストを適正に評価することができる。
【0074】
図19は、手術室稼働状況の集計を表した帳票の一例を示す。なお、当該帳票は、一括出力モードにおいて作成されてもよいし、稼働率モードにおいて作成されてもよい。
上記のとおり、稼働率モードでは診療科別の手術室の使用状況を検索および閲覧可能である。この集計は、全診療科(すなわち、当該医療機関の全体)の月別の手術時間の推移を一覧として示す。
【0075】
手術時間を示す情報は、詳細には、持枠時間の総計、実際に手術が実施された時間の合計である合計時間、日勤内に実施された手術時間、日勤外に実施された手術時間、ある手術が終わってから同じ手術室で次の手術が始まるまでに要する入替時間を含む。
また、この集計は、術前に計画された手術の予定時間に基づく予定稼働率(予定時間の総計/持枠時間)と、実際に手術の実施に要した時間に基づく実稼働率(合計時間/持枠時間)を一覧として含む。そして、集計結果を棒グラフおよび折れ線グラフで表し、時間同士を比較できるようにしてもよい。
【0076】
このような帳票を参照することで、手術室の混雑状況を月ごとに比較することができる。
これまで実施形態について説明したが、上記構成および方法は、単なる一例であり、本発明の範囲内で適宜変更、追加および/または削除可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 医業用収支解析システム
2 制御部
3 記憶部
4 入出力インターフェイス
10 医業用収支解析装置
11 情報取得部
12 収入算出部
13 支出算出部
14 情報整理部
15 出力部
21 入力装置
22 表示装置
23 携帯情報端末
100 医療機関
101 診療科
102 医事部門
103 情報部門
109 倉庫
110 手術室
DB1~DB3 データベース
M1 検索モード
M2 一括出力モード
M3 稼働率モード
S1 情報取得工程
S2 収入算出工程
S3 支出算出工程
S4 情報整理工程
S5 出力工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20