(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073154
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】検眼装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/103 20060101AFI20220510BHJP
A61B 3/028 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B3/103
A61B3/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182958
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】廣藤 諒佑
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA03
4C316AA13
4C316AA21
4C316AA24
4C316AA26
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA18
4C316FB08
4C316FB16
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 被検眼の検査精度を向上させることができる検眼装置を提供する。
【解決手段】 被検眼に検査視標を呈示し、被検眼を検査するための検眼装置であって、被検者の検査視標に対する判読結果を入力するための回答入力手段と、回答入力手段からの入力信号に基づいて、判読結果に関する回答情報を取得する回答取得手段と、被検眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、前眼部画像に基づいて、被検眼の視線に関する視線情報を取得する視線情報取得手段と、回答情報および視線情報に基づいて、前記被検眼に対する検査視標の呈示状態を変更する変更制御手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に検査視標を呈示し、前記被検眼を検査するための検眼装置であって、
被検者の前記検査視標に対する判読結果を入力するための回答入力手段と、
前記回答入力手段からの入力信号に基づいて、前記判読結果に関する回答情報を取得する回答取得手段と、
前記被検眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、
前記前眼部画像に基づいて、前記被検眼の視線に関する視線情報を取得する視線情報取得手段と、
前記回答情報および前記視線情報に基づいて、前記被検眼に対する前記検査視標の呈示状態を変更する変更制御手段と、
を備えることを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
請求項1の検眼装置において、
前記視線情報取得手段は、前記被検眼が前記検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を、前記視線情報として取得することを特徴とする検眼装置。
【請求項3】
請求項2の検眼装置において、
前記検査視標毎に、前記視線の位置と前記検査視標の位置との一致を検出するための検出領域が設けられ、
前記視線情報取得手段は、前記視線の位置が前記検出領域に含まれるか否かに基づいて、前記判定結果を取得することを特徴とする検眼装置。
【請求項4】
請求項3の検眼装置において、
前記視線情報取得手段は、前記回答入力手段からの前記入力信号が得られた際に、前記視線の位置が前記検出領域に含まれていたか否かに基づいて、前記判定結果を取得することを特徴とする検眼装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの検眼装置において、
前記被検眼に向けて視標光束を出射することで、前記被検眼に前記検査視標を呈示する視標呈示手段を備え、
前記変更制御手段は、前記視標呈示手段を制御することによって、前記検査視標の前記呈示状態が異なるように変更することを特徴とする検眼装置。
【請求項6】
請求項5の検眼装置において、
前記視標呈示手段は、前記検査視標を呈示することが可能な複数の呈示領域を有し、
前記変更制御手段は、前記視標呈示手段を制御することによって、前記検査視標が呈示される前記呈示領域が異なるように変更することを特徴とする検眼装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの検眼装置において、
前記被検眼を矯正する矯正度数を変更するために、前記視標光束の光学特性を変化させる矯正手段を備え、
前記変更制御手段は、前記矯正手段を制御することによって、前記被検眼の前記矯正度数が異なるように変更することを特徴とする検眼装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの検眼装置において、
前記視標呈示手段を収納する筐体と、
前記筐体に設けられ、前記筐体の内部にて呈示された前記検査視標を、前記筐体の外部から確認するための視標窓と、
を有し、
前記回答入力手段は、前記被検者が前記視標窓を覗き込んで前記検査視標を判読した判読結果を、前記被検者が入力するための回答入力手段であって、
前記変更制御手段は、前記判読結果の正誤および前記視線情報に基づき、前記呈示状態を変更し、
前記被検眼の視力を自動的に検査することを特徴とする検眼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を測定するための検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査することが可能な、自覚式検眼装置、視力検査装置、等が知られている。例えば、自覚式検眼装置は、被検者の眼前に光学部材(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、等)を配置し、被検者に光学部材を介して検査視標を呈示することで、被検眼の光学特性を測定することができる(特許文献1)。また、例えば、視力検査装置は、被検者が視標窓を覗き込んで検査視標を確認することで、被検眼の視力を測定することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-176893号公報
【特許文献2】特開2000-287926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自覚式検眼装置や視力検査装置を用いた検査において、被検者は検査視標を確認することができなくても、感覚で回答することができる。例えば、ランドルト環視標を注視していなくても、ランドルト環視標の切れ目の方向を勘で回答することができる。被検者が適切に検査視標を確認した際の回答と、このような感覚による回答と、が混在すると、被検眼の正しい検査結果を得ることが難しくなる。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の検査精度を向上させることができる検眼装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示に係る検眼装置は、被検眼に検査視標を呈示し、前記被検眼を検査するための検眼装置であって、被検者の前記検査視標に対する判読結果を入力するための回答入力手段と、前記回答入力手段からの入力信号に基づいて、前記判読結果に関する回答情報を取得する回答取得手段と、前記被検眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、前記前眼部画像に基づいて、前記被検眼の視線に関する視線情報を取得する視線情報取得手段と、前記回答情報および前記視線情報に基づいて、前記被検眼に対する前記検査視標の呈示状態を変更する変更制御手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】自覚式検眼装置の内部を正面方向から見た図である。
【
図4】自覚式検眼装置の内部を側面方向から見た図である。
【
図5】自覚式検眼装置の内部を上面方向から見た図である。
【
図9】自覚式測定の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】最高視力値の取得における変更制御の一例を示すフローチャートである。
【
図11】調節の有無の取得における変更制御の一例を示すフローチャートである。
【
図13】視力検査装置を右側面から見た右眼用光学系の概略図である。
【
図14】視力検査装置の右眼用光学系および左眼用光学系を上部から見たときの概略図である。
【
図15】視力検査装置における変更制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本開示に係る検眼装置の実施形態を説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用され得る。
【0010】
本実施形態の検眼装置は、被検眼に検査視標を呈示し、被検眼を検査するための装置である。なお、被検眼に対して検査視標を呈示する装置であれば、本技術を適用することが可能である。
【0011】
<回答入力手段>
本実施形態の検眼装置は、回答入力手段を備えてもよい。回答入力手段は、被検者の検査視標に対する判読結果を入力するための手段である。
【0012】
例えば、回答入力手段は、被検者の検査視標に対する判読結果を、被検者が自身で入力するための手段であってもよい。この場合、回答入力手段は、レバースイッチ、押しボタンスイッチ、等の操作手段(例えば、被検者用コントローラ8および被検者用コントローラ303)であってもよい。また。回答入力手段は、マイク等の音声入力手段であってもよい。また、回答入力手段は、被検者の視線の移動やジェスチャーを検出する検出手段であってもよい。
【0013】
また、例えば、回答入力手段は、被検者の検査視標に対する判読結果を、検者が代理で入力するための手段であってもよい。この場合、回答入力手段としては、操作手段、音声入力手段、検出手段、等の少なくともいずれかが用いられてもよい。
【0014】
なお、被検者の検査視標に対する判読結果とは、被検者が検査視標を判読したか否かを表す結果であればよい。例えば、検査視標が方向性をもつ場合は、検査視標の方向を回答した結果であってもよい。一例として、ランドルト環視標の切れ目がいずれの方向にあるかを回答した結果であってもよい。
【0015】
<回答情報取得手段>
本実施形態の検眼装置は、回答取得手段(例えば、制御部10および制御部340)を備えてもよい。回答取得手段は、回答入力手段からの入力信号に基づいて、判読結果に関する回答情報を取得する。回答取得手段は、回答入力手段からの入力信号を、回答情報として取得してもよい。例えば、この場合、複数の押しボタンスイッチのうち、所定の押しボタンスイッチが押圧されたことを表す信号を、回答情報として取得してもよい。もちろん、回答取得手段は、回答入力手段による検出信号を、回答情報として取得してもよい。例えば、この場合、被検者の視線の移動方向を検出した信号を、回答情報として取得してもよい。
【0016】
また、回答取得手段は、回答入力手段からの入力信号に基づき、入力信号を変換した変換情報を、回答情報として取得してもよい。例えば、この場合、所定の押しボタンスイッチの押圧が被検者の回答(例えば、ランドルト環視標の切れ目の方向が「右」、等)に変換された変換情報を、回答情報として取得してもよい。もちろん、回答取得手段は、回答入力手段による検出信号に基づき、検出信号を変換した変換情報を、回答情報として取得してもよい。例えば、この場合、被検者の視線の移動方向が被検者の回答に変換された変換情報を、回答情報として取得してもよい。
【0017】
<前眼部画像取得手段>
本実施形態の検眼装置は、前眼部画像取得手段(例えば、制御部10)を備えてもよい。前眼部画像取得手段は、被検眼の前眼部画像を取得する。前眼部画像は、被検眼に投影された輝点像を含む画像であってもよいし、輝点像を含まない画像であってもよい。また、前眼部画像は、左右の被検眼がともに撮影された1枚の画像であってもよいし、左右の被検眼がそれぞれに撮影された2枚の画像であってもよい。
【0018】
検眼装置には、被検眼の前眼部を撮影する前眼部撮影手段(例えば、観察光学系50および前眼部観察部330)が備えられていてもよい。例えば、検眼装置を構成する部材(一例として、光学系)と一体的に、前眼部撮影手段が設けられてもよい。この場合、前眼部画像取得手段は、前眼部撮影手段の撮影結果として、前眼部画像を取得してもよい。
【0019】
もちろん、前眼部画像取得手段は、被検眼の前眼部を撮影するための機能を備えた、別の装置による撮影結果を受信することによって、前眼部画像を取得してもよい。例えば、ウェアラブルデバイス(一例として、眼鏡型ウェアラブル端末、ヘッドマウントディスプレイ、等)による撮影結果を、前眼部画像として取得してもよい。
【0020】
<視線情報取得手段>
本実施形態の検眼装置は、視線情報取得手段(例えば、制御部10および制御部340)を備えてもよい。視線情報取得手段は、前眼部画像に基づいて、被検眼の視線に関する視線情報を取得する。
【0021】
視線情報取得手段は、前眼部画像を画像解析することで、被検眼の眼位量を、視線情報として取得してもよい。例えば、この場合、視線情報取得手段は、前眼部画像から瞳孔中心とプルキンエ像を検出し、瞳孔中心の位置およびプルキンエ像の位置に基づいて、眼位量を取得してもよい。なお、瞳孔中心の位置およびプルキンエ像の位置に加えて、角膜曲率半径と前房深度を利用し、眼位量を取得してもよい。
【0022】
視線情報取得手段は、前眼部画像を画像解析することで、被検眼の視線の位置を、視線情報として取得してもよい。例えば、被検眼の視線の位置は、所定の点として取得してもよいし、所定の点を中心とした領域として取得してもよい。例えば、この場合、視線情報取得手段は、前眼部画像から瞳孔中心および角膜頂点の少なくともいずれかを検出し、瞳孔中心の位置および角膜頂点の位置の少なくともいずれかに基づいて、視線の位置を取得してもよい。一例として、瞳孔中心の位置または角膜頂点の位置から視線の方向を推測することで、視線の位置が検出されてもよい。また、一例として、瞳孔中心の位置と角膜頂点の位置とのずれから視線の方向を推測することで、視線の位置が検出されてもよい。なお、眼球電位法、角膜反射法、強膜反射法、等を利用することによっても、視線の位置を取得することができる。
【0023】
なお、視線情報取得手段は、被検眼の視線に関する視線情報として、被検眼の眼位量および視線の位置の少なくともいずれかを取得してもよい。
【0024】
視線情報取得手段は、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を、視線情報として取得してもよい。この場合、視線情報取得手段は、被検眼の眼位量が、検査視標の位置に対応付けられた所定の閾値を超えるか否かを判定することによって、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定してもよい。また、この場合、視線情報取得手段は、被検眼の視線の位置が、検査視標の少なくとも一部に重なったか否かを判定することによって、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定してもよい。もちろん、被検眼の眼位量に対するこのような判定結果と、被検眼の視線の位置に対するこのような判定結果と、をいずれも考慮して、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定してもよい。これによって、被検者の回答が、検査視標を見て回答されたものか、あるいは検査視標を見ずに回答されたものか、が容易に区別される。
【0025】
例えば、本実施例では、検査視標毎に、被検眼の視線の位置と検査視標の位置との一致を検出するための検出領域が設けられてもよい。例えば、検出領域は、被検眼の視線の位置が、検査視標における左右方向および上下方向の少なくともいずれかの位置(呈示位置)に一致するか否かを検出するための検出領域であってもよい。なお、例えば、検出領域は、被検眼から検査視標までの距離(すなわち、検査距離)、検査視標の種類、検査視標の視力値(換言すると、検査視標の大きさ)、等の少なくともいずれかに基づいて、検査視標毎に異なる領域として設けられてもよい。
【0026】
また、検出領域は、検査視標の少なくとも一部を含む領域として設けられてもよい。例えば、検出領域は、検査視標の全体を含む領域であってもよい。この場合、検出領域は、検査視標の中央を基準とした所定の領域であってもよい。また、例えば、検出領域は、検査視標の一部を含む領域であってもよい。この場合、検出領域は、検査視標の所定の部分(一例として、ランドルト環視標の切れ目の部分)を基準とした所定の領域であってもよい。
【0027】
視線情報取得手段は、検査視標毎に検出領域が設けられている場合、視線の位置が検出領域に含まれるか否かに基づいて、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得してもよい。例えば、このとき、視線情報取得手段は、視線の位置が検出領域に含まれた時間を考慮して、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定してもよい。一例として、視線の位置が一定の時間以上で検出領域に含まれた場合に、検査視標を注視していると判定してもよい。これによって、検査視標の注視に対する判定基準が明確化され、判定結果が容易に得られる。
【0028】
さらに、視線情報取得手段は、被検者の回答情報を得たタイミングを考慮して、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得してもよい。これによって、視線が検査視標へ偶然に合った場合が除かれた、精度のよい判定結果が得られる。
【0029】
例えば、視線情報取得手段は、回答入力手段からの入力信号が得られた際に、視線の位置が検出領域に含まれていたか否かに基づいて、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得してもよい。例えば、回答入力手段からの入力信号が得られた第1タイミングと、視線の位置が検出領域に含まれた第2タイミングと、が一致した場合に、検査視標を注視していると判定してもよい。なお、第1タイミングと第2タイミングの一致は、略一致状態も含まれる。また、例えば、視線情報取得手段は、第1タイミングから第1タイミングよりも前の所定のタイミングまでの間に、第2タイミングが含まれた場合に、検査視標を注視していると判定してもよい。
【0030】
<変更制御手段>
本実施形態の検眼装置は、変更制御取得手段(例えば、制御部10および制御部340)を備えてもよい。変更制御手段は、回答取得手段が取得した回答情報と、視線情報取得手段が取得した視線情報と、に基づいて、被検眼に対する検査視標の呈示状態を変更する。これによって、被検者の回答の正誤とともに、被検眼の視線の位置や方向等が考慮された、精度のよい検査結果が得られる。
【0031】
変更制御手段は、後述の視標呈示手段を制御することによって、被検眼に対する検査視標の呈示状態を、検査視標が互いに異なる状態に変更してもよい。例えば、呈示状態の変更前と変更後において、検査視標の方向、視力値、種類、等の少なくともいずれかが異なる状態とされてもよい。これによって、適宜、検査視標が適切な状態とされる。
【0032】
変更制御手段は、後述の視標呈示手段を制御することによって、被検眼に対する検査視標の呈示状態を、検査視標が呈示される後述の呈示領域が互いに異なる状態に変更してもよい。つまり、呈示状態の変更前と変更後において、検査視標の呈示位置が異なる状態とされてもよい。被検眼の視線は、検査視標の呈示位置が無作為(ランダム)に変わることで大きく動くため、これによって視線情報を正確に得やすくなる。なお、視標呈示手段がディスプレイであれば、検査視標の呈示位置を容易に変更できる。
【0033】
変更制御手段は、後述の矯正手段を制御することによって、被検眼に対する検査視標の呈示状態を、被検眼を矯正する矯正度数が互いに異なる状態に変更してもよい。例えば、呈示状態の変更前と変更後において、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかが異なる状態とされてもよい。これによって、適宜、矯正度数が適切な状態とされる。
【0034】
もちろん、変更制御手段は、被検眼に対する検査視標の呈示状態を、検査視標が互いに異なる状態、検査視標の呈示位置が互いに異なる状態、被検眼の矯正度数が互いに異なる状態、の少なくともいずれかの状態に変更してもよい。
【0035】
<視標呈示手段>
本実施形態の検眼装置は、視標呈示手段を備える。指標呈示手段は、被検眼に向けて視標光束を出射することで、被検眼に検査視標を呈示する。
【0036】
例えば、視標呈示手段は、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ61)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源とDMD(Digital Micromirror Device)であってもよい。また、例えば、視標呈示手段は、光源と視標板(例えば、視標照明ランプ323と視標板321)であってもよい。この場合、光源は可視光源であり、視標板は複数の検査視標を有するディスクであってもよい。例えば、被検眼に視標光束が導光される光路上において、視標板がモータ等により回転されることで、被検眼に対して検査視標が切り換えて配置される。
【0037】
視標呈示手段は、右眼用視標呈示手段と左眼用視標呈示手段の少なくとも一部を兼用するように設けられてもよい。また、視標呈示手段は、右眼用視標呈示手段と左眼用視標呈示手段をそれぞれに有し、左右一対に設けられてもよい。この場合、右眼用視標呈示手段と左眼用視標呈示手段は、同一の部材で構成されてもよい。また、この場合、右眼用視標呈示手段と左眼用視標呈示手段は、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されてもよい。
【0038】
視標呈示手段は、検査視標を呈示することが可能な、1つの呈示領域を有していてもよい。また、視標呈示手段は、検査視標を呈示することが可能な、複数の呈示領域を有していてもよい。例えば、複数の呈示領域は、一部が重なる領域であってもよい。
【0039】
例えば、視標呈示手段がディスプレイである場合、ディスプレイの表示面を1つの表示領域とすることで、検査視標の呈示領域が1つに設定されてもよい。また、ディスプレイの表示面を複数の表示領域に分割することで、検査視標の呈示領域が複数に設定されてもよい。また、例えば、視標呈示手段が光源および視標板である場合、視標板の一部をマスクするマスク部材の形状等を変化させることによって、検査視標の呈示領域が1つあるいは複数に設定されてもよい。一例として、マスク部材は、開口をもつディスクであってもよいし、筐体の一部を兼用するものであってもよい。
【0040】
なお、被検眼には、視標呈示手段からの視標光束が、直接的に導光されてもよい。すなわち、視標光束が種々の光学部材(一例として、レンズ、ミラー、等)を介すことなく導光されてもよい。また、被検眼には、視標呈示手段からの視標光束が、間接的に導光されてもよい。すなわち、視標光束が種々の光学部材を介して導光されてもよい。この場合、視標光束は、投光光学系(例えば、投光光学系60)、矯正光学系(例えば、矯正光学系80)、等を構成する種々の光学部材を介して、導光されてもよい。
【0041】
<矯正手段>
本実施形態の検眼装置は、矯正手段を備える。矯正手段は、被検眼を矯正する矯正度数を変更するために、視標光束の光学特性を変化させる。例えば、視標光束の光学特性は、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかであってもよい。
【0042】
矯正光学系は、視標光束の光学特性を変化させることができる構成であればよい。
【0043】
一例として、矯正光学系は、光学素子を有し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。例えば、光学素子は、球面レンズ、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリプリズム、波面変調素子、可変焦点レンズ、等の少なくともいずれかであってもよい。もちろん、光学素子は、これらとは異なってもよい。
【0044】
また、一例として、矯正光学系は、被検眼に対する視標の呈示位置(呈示距離)を光学的に変更することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。この場合、視標呈示手段を光軸方向に移動させてもよいし、光路中に配置された光学素子(例えば、球面レンズ等)を光軸方向に移動させてもよいし、光路中にて光学素子を挿抜させてもよい。もちろん、これらの2つ以上の構成の組み合わせでもよい。
【0045】
また、一例として、矯正光学系は、投光光学系からの視標光束を被検眼に向けて導光するための光学部材と、視標呈示手段と、の間に光学素子を配置し、光学素子を制御することによって、視標光束の光学特性を変化させてもよい。すなわち、矯正光学系は、ファントムレンズ屈折計(ファントム矯正光学系)であってもよい。
【0046】
矯正手段は、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段の少なくとも一部を兼用するように設けられてもよい。また、矯正手段は、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段をそれぞれに有し、左右一対に設けられてもよい。この場合、右眼用矯正手段と左眼用矯正手段は、同一の部材で構成されてもよい。また、この場合、右眼用視矯正手段と左眼用矯正手段は、少なくとも一部の部材が異なる部材で構成されてもよい。
【0047】
なお、本実施形態の検眼装置は、被検者の眼前に光学部材を配置し、被検者に光学部材を介した検査視標を呈示することで、被検眼の光学特性を測定する、自覚式検眼装置でもよい。また、検眼装置は、被検者が視標窓を覗き込んで検査視標を確認することで、被検眼の視力を測定する、視力検査装置であってもよい。もちろん、これらとは異なる装置であってもよい。
【0048】
例えば、検眼装置が視力検査装置である場合、視力検査装置は、視標呈示手段を収納する筐体と、筐体に設けられ、筐体の内部にて呈示された検査視標を筐体の内部から確認するための視標窓と、を有していてもよい。このとき、回答入力手段は、被検者が視標窓を覗き込んで検査視標を判読した判読結果を、被検者が入力するための手段として用いられ、変更制御手段は、回答情報としての判読結果の正誤と、視線情報と、に基づき、被検眼に対する前記検査視標の呈示状態を変更してもよい。例えば、視力検査装置は、このような構成を備えることによって、被検眼の視力を自動的に検査してもよい。
【0049】
<第1実施例>
本実施形態における検眼装置の一実施例について説明する。
【0050】
以下では、被検眼の光学特性を自覚的に測定するため自覚式検眼装置を例に挙げて説明する。
【0051】
図1は、自覚式検眼装置100の外観図である。例えば、自覚式検眼装置100は、筐体2、呈示窓3、額当て4、顎台5、検者用コントローラ6、被検者用コントローラ8、撮像部9、等を備える。
【0052】
筐体2は、後述の、測定部7、偏向ミラー91、反射ミラー94、凹面ミラー95、等を内部に有する。呈示窓3は、被検眼Eに視標を呈示するために用いる。額当て4は、被検眼Eと装置との距離を一定に保つために用いる。顎台5は、被検眼Eと装置との距離を一定に保つために用いる。
【0053】
検者用コントローラ6は、スイッチ部6b、モニタ6a、等を備える。スイッチ部6bは、各種の設定(例えば、測定開始、等)を行うための信号を入力する。モニタ6aは、各種の情報(例えば、被検眼Eの測定結果、等)を表示する。なお、モニタ6aは、スイッチ部6bを兼ねたタッチパネルとして機能してもよい。検者用コントローラ6からの信号は、有線通信あるいは無線通信により、制御部10へ出力される。
【0054】
被検者用コントローラ8は、回答レバー8a、回答ボタン8b、等を備える。回答レバー8aは、被検者が呈示された検査視標を判読した判読結果を入力する際に用いる。例えば、ランドルト環視標の切れ目の方向に対応する上下左右の4方向の信号を、傾倒操作によって入力することができる。回答ボタン8bは、被検者が呈示された検査視標を判読できない際に用いる。被検者用コントローラ8からの信号は、有線通信あるいは無線通信により、制御部10へ出力される。
【0055】
撮像部9は、被検者の顔を撮像するために用いる。撮像部9は、図示なき撮像光学系を備える。撮像光学系は、撮像素子とレンズにより構成されてもよい。
【0056】
<測定部>
測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。本実施例において、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rは、同一の部材で構成される。もちろん、各々の測定部は、少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。
【0057】
図2は、測定部7の概略図である。
図2では、測定部7として左眼用測定部7Lを例に挙げる。例えば、左眼用測定部7Lは、自覚式測定光学系20、第1指標投影光学系30、第2指標投影光学系40、観察光学系50、等を備える。なお、例えば、左眼用測定部7Lは、さらに他覚式測定光学系を備えてもよい。
【0058】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系20は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、眼屈折力が測定される。なお、被検眼Eの光学特性としては、眼屈折力の他、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等が測定されてもよい。例えば、自覚式測定光学系20は、投光光学系60、矯正光学系70、等で構成される。
【0059】
<投光光学系>
投光光学系60は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系60は、ディスプレイ61、投光レンズ62、投光レンズ63、反射ミラー64、対物レンズ65、ダイクロイックミラー66、ダイクロイックミラー67、等を備える。
【0060】
ディスプレイ61には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。ディスプレイ61から出射した視標光束は、投光レンズ62からダイクロイックミラー67までの光学部材を順に経由し、被検眼Eに投影される。
【0061】
<矯正光学系>
矯正光学系70は、投光光学系60の光路内に配置される。また、矯正光学系70は、ディスプレイ61から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系70は、乱視矯正光学系80、駆動機構75、等を備える。
【0062】
乱視矯正光学系80は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系80は、投光レンズ62と投光レンズ63との間に配置される。乱視矯正光学系80は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ81aと円柱レンズ81bで構成される。円柱レンズ81aと円柱レンズ81bは、回転機構82aと回転機構82bの駆動によって、光軸L1を中心として、各々が独立に回転する。
【0063】
なお、本実施例では、乱視矯正光学系80として、円柱レンズ81aと円柱レンズ81bを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。乱視矯正光学系80は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系60の光路に、矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0064】
駆動機構75は、モータおよびスライド機構からなる。駆動機構75は、ディスプレイ61を光軸L1方向へ移動させる。これにより、自覚式測定では、被検眼Eに対する視標の呈示距離を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系として、ディスプレイ61を光軸L1方向へ移動させる構成が用いられ、被検眼Eの球面度数が、ディスプレイ61の位置を変更することにより矯正される。なお、球面矯正光学系は、多数の光学素子を光路内に配置することで球面度数を矯正する構成でもよい。また、球面矯正光学系は、レンズを光路内に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正する構成でもよい。
【0065】
なお、駆動機構75は、自覚式測定光学系20におけるディスプレイ61と、他覚式測定光学系を構成する一部の光学部材と、を一体的に同期させる駆動ユニット76を移動させてもよい。
【0066】
<第1指標投影光学系および第2指標投影光学系>
第1指標投影光学系30および第2指標投影光学系40は、ダイクロイックミラー67と、後述の偏向ミラー91と、の間に配置される。第1指標投影光学系30は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系40は、第1指標投影光学系30とは異なる位置に配置され、被検眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系40から出射される近赤外光(アライメント光)は、被検眼の前眼部を観察光学系50により撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。
【0067】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、ダイクロイックミラー67、対物レンズ51、撮像レンズ52、撮像素子53、等を備える。ダイクロイックミラー67は、前眼部観察光およびアライメント光を透過する。撮像素子53は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子53からの出力は、制御部10に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子53により撮像され、モニタ6a上に表示される。なお、観察光学系50は、第1指標投影光学系30および第2指標投影光学系40により被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ねている。
【0068】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系は、被検眼Eの光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる。被検眼Eの光学特性としては、眼屈折力、眼軸長、角膜形状、等が測定されてもよい。例えば、他覚式測定光学系は、投影光学系と、受光光学系と、で構成されてもよい(詳細については、例えば、特開2018-47049号公報を参考されたい)。
【0069】
<内部構成>
図3~
図5は、自覚式検眼装置100の内部の概略構成図である。
図3は、自覚式検眼装置100の内部を正面方向から見た図である。
図4は、自覚式検眼装置100の内部を側面方向から見た図である。
図5は、自覚式検眼装置100の内部を上面方向から見た図である。なお、
図4および
図5では、便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示す。
【0070】
自覚式検眼装置100は、自覚式測定部を備える。例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー91、駆動機構92、駆動部93、反射ミラー94、凹面ミラー95、等で構成される。なお、自覚式測定部は、この構成に限定されない。例えば、自覚式測定部は、反射ミラー94を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー91を介した後に、凹面ミラー95の光軸L2に対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、自覚式測定部は、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー95の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。
【0071】
自覚式検眼装置100は、左眼用駆動部96Lと、右眼用駆動部96Rと、を有し、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、をそれぞれX方向に移動させることができる。例えば、左眼用測定部7Lおよび右眼用測定部7Rを移動させることによって、測定部7と偏向ミラー91との間の距離が変化し、測定部7からの視標光束のZ方向における呈示位置が変更される。これによって、被検眼Eに、矯正光学系70で矯正された視標光束を導光し、被検眼Eの眼底に矯正光学系70で矯正された視標光束の像が形成されるように、測定部7がZ方向に調整される。
【0072】
例えば、偏向ミラー91は、左右一対にそれぞれ設けられた右眼用偏向ミラー91Rと左眼用偏向ミラー91Lとを有する。例えば、偏向ミラー91は、矯正光学系70と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系70は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用偏向ミラー91Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用偏向ミラー91Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー91は、瞳共役位置に配置されることが好ましい。
【0073】
例えば、左眼用偏向ミラー91Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射して、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用偏向ミラー91Lは、左眼ELからの眼底反射光束を反射して、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用偏向ミラー91Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射して、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用偏向ミラー91Rは、右眼ERからの眼底反射光束を反射して、右眼用測定部7Rに導光する。なお、本実施例では、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射させて導光する偏向部材として、偏向ミラー91を用いる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。偏向部材は、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射して導光することができればよく、例えば、プリズム、レンズ、等であってもよい。
【0074】
例えば、駆動機構92は、モータ(駆動部)等からなる。例えば、駆動機構92は、左眼用偏向ミラー91Lを駆動するための駆動機構92Lと、右眼用偏向ミラー91Rを駆動するための駆動機構92Rと、を有する。例えば、駆動機構92の駆動によって、偏向ミラー91は回転移動する。例えば、駆動機構92は、水平方向(X方向)の回転軸、および鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して偏向ミラー91を回転させる。すなわち、駆動機構92は偏向ミラー91をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー91の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。
【0075】
例えば、駆動部93は、モータ等からなる。例えば、駆動部93は、左眼用偏向ミラー91Lを駆動するための駆動部93Lと、右眼用偏向ミラー91Rを駆動するための駆動部93Rと、を有する。例えば、駆動部93の駆動によって、偏向ミラー91はX方向に移動する。例えば、左眼用偏向ミラー91Lおよび右眼用偏向ミラー91Rが移動されることによって、左眼用偏向ミラー91Lおよび右眼用偏向ミラー91Rとの間の距離が変更され、被検眼Eの瞳孔間距離にあわせて、左眼用光路と右眼用光路との間のX方向における距離を変更することができる。
【0076】
なお、例えば、偏向ミラー91は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれに、2つの偏向ミラーを設ける構成(例えば、左眼用光路に2つの偏向ミラーを設ける構成、等)が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。例えば、偏向ミラー91が回転移動されることによって、視標光束の像を被検眼の眼前に形成するためのみかけの光束を偏向させ、視標光束の像の形成位置を光学的に補正することができる。
【0077】
例えば、凹面ミラー95は、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、で共有される。例えば、凹面ミラー95は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、で共有される。すなわち、凹面ミラー95は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、を共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー95は、左眼用光路と右眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、のそれぞれに凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。例えば、凹面ミラー95は、被検眼Eに矯正光学系70を通過した視標光束を導光し、被検眼Eの眼前に矯正光学系70を通過した視標光束の像を形成する。
【0078】
<自覚式測定部の光路>
自覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。なお、右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。例えば、左眼用の自覚式測定部において、自覚式測定光学系20におけるディスプレイ61から出射した視標光束は、投光レンズ62を介して乱視矯正光学系80へと入射し、乱視矯正光学系80を通過すると、投光レンズ63、反射ミラー64、対物レンズ65、ダイクロイックミラー66、およびダイクロイックミラー67、を経由して、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー91Lに向けて導光される。左眼用偏向ミラー91Lで反射された視標光束は、反射ミラー94により凹面ミラー95に向けて反射される。ディスプレイ61から出射した視標光束は、このように各光学部材を経由し、呈示窓3を介して、左眼ELに到達する。
【0079】
これにより、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左眼ELの眼底上に、矯正光学系70で矯正された視標光束の像が形成される。従って、球面度数の矯正光学系(本実施例では、駆動機構75の駆動)による球面度数の調整が眼前で行われたことと、乱視矯正光学系80があたかも眼前に配置されたことと、が等価になっている。被検者は、自然な状態で、凹面ミラー95を介して光学的に所定の検査距離で眼前に形成された視標光束の像を視準することができる。
【0080】
<制御部>
図6は、自覚式検眼装置100の制御系を示す図である。例えば、制御部10には、モニタ6a、不揮発性メモリ15(以下、メモリ15)、測定部7が備えるディスプレイ61、撮像素子53、等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部10には、駆動機構75、駆動部93、駆動部96、等がそれぞれ備える図示なき駆動部が電気的に接続されている。
【0081】
例えば、制御部10は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、自覚式検眼装置100における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、自覚式検眼装置100の動作を制御するための各種プログラム、視標、初期値、等が記憶されている。なお、制御部10は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0082】
例えば、メモリ15は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ15としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。
【0083】
<制御動作>
自覚式検眼装置100の制御動作について説明する。
【0084】
自覚式検眼装置を用いた自覚式測定では、被検者に検査視標が確認できるか否かが問われ、被検眼に呈示する検査視標や被検眼を矯正する矯正度数が、被検者の回答の正誤によって切り換えられる。例えば、被検者にランドルト環視標の切れ目の方向が判読できるか否かが問われ、検査視標や矯正度数が判読結果の正誤によって切り換えられる。しかし、被検者は、ランドルト環視標を注視していなくても、勘で回答すれば一定の確率で正答を出すことができてしまう。検者には勘による正答か否かを判断することが難しく、また、このような正答が混在し得るため、従来の測定では正しい測定結果を得られていない可能性があった。
【0085】
そこで、本実施例における自覚式測定では、被検者の回答のみならず、被検眼の視線情報も利用することで、勘による正答を考慮した測定結果を取得する。特に、被検眼が検査視標を見ていないにもかかわらず正答した場合を考慮した測定結果を取得する。これによって、被検眼Eの測定精度を向上させることができる。
【0086】
以下、詳細に説明する。
【0087】
<被検眼と測定部のアライメント>
検者は、被検者の顔を額当て4および顎台5に当接させ、被検眼Eにディスプレイ61に表示された固視標を固視させる。制御部10は、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影させるとともに前眼部を撮影させ、アライメント指標像(後述の輝点像)を含む前眼部画像を取得する。また、制御部10は、被検眼Eに対する測定部7のX方向、Y方向、およびZ方向のずれ量をアライメント指標像により検出し、このずれ量に基づいて測定部7を移動させる。これによって、被検眼Eと測定部7とのアライメントが自動的に行われる。
【0088】
<自覚式測定>
続いて、検者は、被検眼Eに対する自覚式測定を行う。本実施例では、被検者が検査視標を判読した判読結果に関する回答情報と、被検者の視線に関する視線情報と、が取得され、これらの情報に基づく後述の変更制御が行われる。
【0089】
<回答情報の取得>
まず、被検者の回答情報の取得について説明する。例えば、被検者には、ランドルト環視標が呈示窓3を介して呈示され、その切れ目の方向が問われる。被検者は、ランドルト環視標の切れ目の方向を判読して、回答レバー8aを傾倒するか、あるいは、回答ボタン8bを押圧する。制御部10は、被検眼に呈示したランドルト環視標の切れ目の方向と、回答レバー8aまたは回答ボタン8bからの信号と、に基づき、被検者による回答の正誤を検出した検出結果を、回答情報として取得する。
【0090】
例えば、回答レバー8aからの信号の入力があれば、被検者の回答は正答または誤答と検出される。一例として、ランドルト環視標の切れ目の方向と回答レバー8aの傾倒方向が一致していれば正答と検出され、一致していなければ誤答と検出される。また、例えば、回答ボタン8bからの信号の入力があれば、被検者の回答は無回答(わからない)と検出される。
【0091】
<視線情報の取得>
次に、被検者の視線情報の取得について説明する。
図7は、被検眼Eの前眼部画像200の一例である。前眼部画像200には、第1指標投影光学系30および第2指標投影光学系40の赤外光源によって現れる、輝点像Rが含まれる。例えば、第1指標投影光学系30の赤外光源により現れるリング指標像R1と、第2指標投影光学系40の赤外光源により現れるリング指標像R2と、で輝点像Rが構成されてもよい。
【0092】
制御部10は、前眼部画像200を画像処理し、瞳孔と輝点像Rを検出する。例えば、前眼部画像200の輝度情報を利用して瞳孔を検出し、さらに瞳孔の中心を計算することで、瞳孔中心Pを検出してもよい。また、例えば、前眼部画像200の輝度情報を利用して輝点像Rを検出し、リング指標像R1またはリング指標像R2のいずれかの中心を計算することで、角膜頂点Kを検出してもよい。さらに、制御部10は、瞳孔中心Pに対する角膜頂点Kの方向とずれ量Δdを検出し、被検眼Eの視線の方向を特定する。例えば、瞳孔中心Pの画素位置と、角膜頂点Kの画素位置と、の間の画素数を算出することで、ずれ量Δdを求めてもよい。なお、被検眼Eの視線が移動し、被検眼Eの眼位量(例えば、被検眼の回旋中心を基準とした光軸L1に対する回旋角度)が大きくなるほど、ずれ量Δdは大きくなる。被検眼Eの視線の方向は、ずれ量Δdを算出することで、適切に特定される。制御部10は、被検眼Eの視線の方向と、被検眼Eからディスプレイ61までの距離(すなわち、検査距離)と、に基づいて、被検眼Eがランドルト環視標を注視する視線の位置V(
図10参照)を検出することができる。
【0093】
図8は、ディスプレイ61の一例である。ランドルト環視標Tには、ランドルト環視標Tに視線の位置が一致するか否かを検出するための検出領域D1が設けられる。例えば、検出領域D1は、ランドルト環視標Tの全体に対して設けられてもよいし、一部分(一例として、切れ目の部分)に対して設けられてもよい。また、例えば、検出領域D1は、ランドルト環視標Tの全体または一部分を見ているとされる一定の領域(つまり、一定の大きさおよび形状)として設けられてもよい。なお、例えば、検出領域D1の大きさや形状は、検者が手動で設定できてもよいし、実験やシミュレーションの結果に基づいて自動で設定されてもよい。本実施例では、検出領域D1が、ランドルト環視標Tの全体に対して、自動的に、設定される。
【0094】
制御部10は、被検眼の視線の方向に基づいて、被検眼がランドルト環視標Tを注視しているか否かを判定した判定結果を、視線情報として取得する。例えば、被検眼Eの前眼部画像200を前述のように解析処理して得た被検眼Eの視線の位置Vが、ランドルト環視標毎に設定された検出領域D1に含まれるか否かを検出した検出結果に基づいて、被検眼がランドルト環視標Tを注視しているか否かを判定した判定結果を取得する。
【0095】
一例として、制御部10は、被検眼Eの視線の位置Vが、検出領域D1に所定の時間以上(一例として、1秒間以上、等)含まれたことを検出した場合に、被検眼Eがランドルト環視標Tを注視していると判定してもよい。また、被検眼Eの視線の位置Vが、検出領域D1に所定の時間未満で含まれたことを検出した場合、あるいは、検出領域D1に含まれないことを検出した場合に、被検眼Eがランドルト環視標Tを注視していないと判定してもよい。
【0096】
なお、視線の位置Vが検出領域D1に含まれるか否かの検出には、回答レバー8aまたは回答ボタン8bからの信号が入力されたタイミングが考慮されてもよい。例えば、視線の位置Vが検出領域D1に含まれた状態で、回答レバー8aまたは回答ボタン8bが操作されたかが考慮されてもよい。もちろん、例えば、回答レバー8aまたは回答ボタン8bが操作されたタイミングと、このタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミング(一例として、1秒間前のタイミング)と、の間の時間に、視線の位置Vが検出領域D1に含まれた状態があったかが考慮されてもよい。
【0097】
図9は、自覚式測定の流れの一例を示すフローチャートである。例えば、自覚式測定は、被検眼Eの矯正度数の調整(ステップA)、被検眼Eの最高視力値の取得(ステップB)、被検眼Eの調節の有無の取得(ステップC)、の順に行われ、これらの結果に基づいて、被検眼Eの自覚値が取得される(ステップD)。なお、被検眼の自覚値は、被検眼の完全矯正値であってもよいし、処方値であってもよい。完全矯正値は、被検眼の最高視力が得られるもっともプラス度数の矯正度数の値である。また、処方値は、眼鏡を処方する際に用いる値であり、所定の視力が得られる矯正度数の値である。
【0098】
以下、被検眼の自覚値として完全矯正値を取得する場合を例に挙げて、ステップA、ステップB、ステップC、およびステップDを順に説明する。
【0099】
<矯正度数の調整(ステップA)>
検者は、自覚式測定を開始するため、モニタ6aを操作する。制御部10は、モニタ6aからの信号に応じ、被検眼Eの予め取得された他覚値に基づいて、被検眼Eを所定の眼屈折力に矯正するための矯正度数を設定する。例えば、制御部10は、設定した矯正度数に基づいて、矯正光学系70と投光光学系60の少なくともいずれかを制御する。一例として、ディスプレイ61を光軸L1方向へ移動させて、被検眼Eの球面度数を矯正してもよい。また、一例として、制御部10は、円柱レンズ81aと81bを光軸L1周りに回転させて、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度の少なくともいずれかを矯正してもよい。例えば、これによって、被検眼Eは0Dに矯正される。
【0100】
制御部10は、被検眼Eに対する複数の検査を行うことで、被検眼Eの矯正度数を、適宜、調整する。例えば、まず、被検眼Eのレッドグリーン検査を行うため、ディスプレイ61にレッドグリーン視標が表示される。被検者は、赤色視標と緑色視標のいずれをはっきり視認できたかを回答する。制御部10は、被検者の回答に基づいて球面度数を変更する。例えば、続いて、被検眼Eのクロスシリンダ検査を行うため、ディスプレイ61に点群視標が表示される。被検者は、2つの点群視標のいずれをはっきり視認できたかを回答する。制御部10は、被検者の回答に基づいて乱視軸角度および円柱度数を変更する。
【0101】
なお、制御部10は、後述のように、被検眼Eの視線情報(被検眼Eが各々の視標を注視しているか否か)を取得してもよい。この場合、被検者の回答情報(被検者による回答)とともに、被検眼Eの視線情報を利用して、被検眼Eの矯正度数を適切に変更してもよい。例えば、これによって、被検眼Eの矯正度数が適切に調整される。
【0102】
<最高視力値の取得(ステップB)>
図10は、最高視力値の取得における変更制御の一例を示すフローチャートである。制御部10は、被検眼Eに対する検査視標の呈示状態を、初期状態に設定する。例えば、制御部10は、被検眼EをステップAで調整した矯正度数にて矯正し(ステップB1)、ディスプレイ61に所定の検査視標を表示する(ステップB2)。一例として、所定の検査視標として、切れ目が右方向を向いた視力値1.0のランドルト環視標を表示する。
【0103】
なお、例えば、ディスプレイ61には、検査視標を呈示するための呈示領域J(換言すると、検査視標を表示するための表示領域J)が設けられる。一例として、ディスプレイ61の中央を基準に呈示領域Jが設けられ、呈示領域Jの中央を基準に検査視標が表示される。これによって、被検眼Eは、所定のランドルト環視標を視認することができる。
【0104】
被検眼に対する検査視標の呈示状態が初期状態に設定されると、図示なきスピーカ等から音声ガイドが発生され、ランドルト環視標の切れ目の方向が問われる。このとき、制御部10は、被検者の回答情報(被検者による回答の正誤)と、被検眼の視線情報(ランドルト環視標Tを注視しているか否か)と、に基づいて、被検眼に対するランドルト環視標の呈示状態を変更する。例えば、ステップAで調整した矯正度数が与えられ、切れ目が右方向を向いた視力値1.0のランドルト環視標が呈示された初期状態(換言すれば、第1状態)から、矯正度数またはランドルト環視標の少なくともいずれかが異なる第2状態へと、呈示状態を変更する。なお、矯正度数が異なる状態とは、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、の少なくともいずれかが異なる状態であればよい。また、ランドルト環視標が異なる状態とは、ランドルト環視標の切れ目の方向と視力値との少なくともいずれかが異なる状態であればよい。
【0105】
制御部10は、被検眼Eの初期状態において、被検眼Eが視標を注視しているか否かを判定し(ステップB3)、さらに、被検者の回答の正誤を検出すると(ステップB4)、これらの結果に基づいて、初期状態を第2状態に変更する。
【0106】
制御部10は、まず、被検眼Eが視標を注視しているか否かの判定結果を考慮することによって、被検者がランドルト環視標を見ずに切れ目の方向を回答した可能性を排除する。例えば、被検眼Eが視標を注視していないとの判定結果が得られた場合(ステップB3:NO)は、被検者の回答の正誤にかかわらず、ランドルト環視標の視力値を下げるように変更してもよい。一例として、ランドルト環視標の視力値を1段階低い視力値に変更してもよい(つまり、ランドルト環視標の視力値を1.0から0.9に変更してもよい)。また、例えば、被検者の回答の正誤にかかわらず、ランドルト環視標の切れ目の方向を変化させてもよい。一例として、ランドルト環視標の切れ目の方向を右から左に変化させてもよい。もちろん、ランドルト環視標の視力値を下げ、かつ、切れ目の方向を変化させてもよい。
【0107】
これによって、初期状態に対し、ランドルト環視標の視力値または切れ目の方向の少なくともいずれかが異なる第2状態が設定される(ステップB5)。また、ランドルト環視標を見ていないにもかかわらず正答したこと等が、測定結果に反映されることが抑制される。なお、この後は、第2状態にてステップB3に戻り、フローチャートに基づく制御が行われてもよい。
【0108】
例えば、被検眼Eが視標を注視しているとの判定結果が得られた場合(ステップB3:YES)は、被検者の回答の正誤を検出した検出結果を考慮することによって、被検者にランドルト環視標が視認されているかを判定する。
【0109】
例えば、被検者の回答が誤答または無回答との検出結果が得られた場合(ステップB4:NO)は、ランドルト環視標の視力値を下げるように変更する。なお、このとき、ランドルト環視標の視力値とともに、ランドルト環視標の切れ目の方向が変更されてもよい。これによって、初期状態に対し、少なくともランドルト環視標の視力値が低い第2状態が設定される(ステップB6)。
【0110】
例えば、被検者の回答が正答との検出結果が得られた場合(ステップB4:YES)は、ランドルト環視標の視力値を上げるように変更する。一例として、ランドルト環視標の視力値を1段階高い視力値に変更する(つまり、ランドルト環視標の視力値を1.0から1.2に変更する)。なお、このとき、ランドルト環視標の視力値とともに、ランドルト環視標の切れ目の方向が変更されてもよい。これによって、初期状態に対し、少なくともランドルト環視標の視力値が高い第2状態が設定される(ステップB10)。
【0111】
被検眼Eに対するランドルト環視標の呈示状態が各々の第2状態に変更されると、再び、ランドルト環視標の切れ目の方向が問われる。制御部10は、ステップB3およびステップB4と同様に、被検眼Eが視標を注視しているか否かの判定結果と、被検者の回答の正誤を検出した検出結果と、に基づく変更制御を行う(ステップB7~ステップB9、および、ステップB11~ステップB13)。
【0112】
第2状態の設定でステップB6に進んだ場合、被検眼Eが視標を注視し、かつ回答が正答であれば、被検眼EをステップAで調整した矯正度数で矯正した状態における最高視力値が得られる(ステップB14)。例えば、被検眼Eに第2状態で呈示したランドルト環視標(つまり、正答したランドルト環視標)の視力値が、最高視力値として得られる。
【0113】
また、第2状態の設定でステップB10に進んだ場合、被検眼Eが視標を注視し、かつ回答が誤答または無回答であれば、被検眼EをステップAで調整した矯正度数で矯正した状態での最高視力値が得られる(ステップB14)。例えば、被検眼Eに第2状態で呈示したランドルト環視標の視力値ではなく、1つ前の状態(ここでは、初期状態)で呈示し正答したランドルト環視標の視力値が、最高視力値として得られる。
【0114】
なお、第2状態の設定でステップB6に進んだ場合、被検眼Eがランドルト環視標を注視し、かつ回答が誤答であれば、ステップB6に戻ってランドルト環視標の視力値が低い第3状態が設定されてもよい。また、第2状態の設定でステップB10に進んだ場合、被検眼Eがランドルト環視標を注視し、かつ回答が正答であれば、ステップB10に戻ってランドルト環視標の視力値が高い第3状態が設定されてもよい。
【0115】
なお、第2状態の設定でステップB6とステップB10のいずれに進んだ場合であっても、視線がランドルト視標に一致しなければ、ステップB5と同一の変更制御が行われ、ランドルト環視標の視力値または切れ目の方向の少なくともいずれかが異なる第3状態が設定されてもよい(ステップB9およびステップB13)。
【0116】
制御部10は、被検眼Eに対するランドルト環視標の呈示状態を、初期状態から各々の第2状態、第3状態、…、第n状態へと、フローチャートに沿って変更する。例えば、制御部10は、このような制御を繰り返し、呈示状態を逐次変更することによって、被検眼EをステップAで調整した矯正度数で矯正した際の最高視力値を取得する。
【0117】
<調節の有無の取得(ステップC)>
図11は、調節の有無の取得における変更制御の一例を示すフローチャートである。制御部10は、被検眼EをステップAで調整した矯正度数にて矯正し(ステップC1)、ディスプレイ61にランドルト環視標を表示する(ステップC2)。例えば、被検眼Eの最高視力値をステップBにて取得した状態を再現する。なお、ステップBでは初期状態から矯正度数を変更しないため、ステップBからステップCへと移行した際に、ランドルト環視標のみを変更すればよい。
【0118】
続いて、制御部10は、被検眼Eの矯正度数を、初期状態(最高視力値を得た状態)から下げるように変更する(ステップC3)。一例として、球面度数を1段階低い度数に変更する(つまり、球面度数を+0.25Dだけ増加させる)。もちろん、球面度数に限定されず、円柱度数や乱視軸角度を変更してもよい。
【0119】
ここで、被検者には、ランドルト環視標の切れ目の方向が問われる。制御部10は、被検眼Eが視標を注視しているか否かの判定結果と、被検者の回答の正誤を検出した検出結果と、に基づく変更制御を行う(ステップC4~ステップC6)。なお、これらの詳細はステップBと同様であるため省略する。
【0120】
例えば、被検眼Eが視標を注視し、かつ回答が正答であれば、調節が働いていると判定される(ステップC7)。この場合、ステップB6に戻って矯正度数がさらに1段階低い状態が設定され、フローチャートに基づく制御が行われてもよい。
【0121】
また、例えば、被検眼Eが視標を注視し、かつ回答が誤答または無回答であれば、調節が働いていないと判定される(ステップC8)。制御部10は、被検眼Eに調節が働いていないと判定されるまで、被検眼Eの矯正度数を、フローチャートに沿って繰り返し変更する。
【0122】
<完全矯正値の取得>
制御部10は、ステップAにて被検眼Eを所定の矯正度数に調整し、ステップBにて被検眼Eを所定の矯正度数で矯正した状態における最高視力値を取得し、さらに、ステップCにて被検眼Eの調節が働かなくなるまで矯正度数を下げることによって、被検眼Eの最高度の視力が得られる最弱の矯正度数を、被検眼Eの完全矯正値として取得する。また、制御部10は、被検眼Eの完全矯正値をメモリ15に記憶させる。
【0123】
<光学収差成分の補正>
なお、被検眼Eに対する自覚式測定では、自覚式測定部によって発生する第1光学収差成分と、被検眼Eがもつ光学特性(眼屈折力)によって発生する第2光学収差成分と、に基づく第3光学収差成分が発生する。例えば、第1光学収差成分は、被検眼Eのアライメント状態、矯正光学系70にて設定される矯正度数(すなわち、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、視標光束の輻輳角度、等の少なくともいずれかによって、凹面ミラー95上における視標光束の反射位置または反射面積(つまり、視標光束の光束径)が変化するために生じる。例えば、第2光学収差成分は、被検眼Eの球面度数、円柱度数、および乱視軸角度の少なくともいずれかによって、視標光束の形状が変化するために生じる。例えば、第3光学収差成分は、第1光学収差成分と第2光学収差成分が合成された合成光学収差成分である。なお、これらの光学収差成分についての詳細は、例えば、特開2019-118551号公報を参照されたい。
【0124】
このため、制御部10は、第3光学収差成分を求め、これを補正してもよい。例えば、実験やシミュレーションの結果に基づいて予め作成されたテーブルや演算式を利用して第3光学収差成分を求め、第3光学収差成分に基づいて矯正度数を変化させることで、このような収差を補正してもよい。また、例えば、計算上で矯正度数を変化させた際の視標光束を追跡するシミュレーションを適宜行い、第3光学収差成分を取り除く矯正度数の値を見つけ、これに従って矯正度数を変化させることで、このような収差を補正してもよい(すなわち、最適化が行われてもよい)。この場合には、設計上既知であるディスプレイ61と矯正光学系80の位置関係に基づき、シミュレーションが行われてもよい。制御部10は、第3光学収差成分による影響を軽減させることで、被検眼の自覚値をより精度よく取得してもよい。
【0125】
<第2実施例>
上記では自覚式検眼装置を例に挙げて説明したが、視力検査装置においても、被検者の回答情報と被検眼Eの視線情報に基づいて、被検眼Eに対するランドルト環視標の呈示状態を適宜変更し、適切に視力を測定することができる。
【0126】
図12は、視力検査装置300の外観図である。視力検査装置300は、筐体301、呈示窓302、被検者用コントローラ303、スピーカ305、プリンタ306、ランプ307、コントロールボックス308、等を備える。
【0127】
筐体301は、後述の光学系を内部に有する。また、筐体301は、呈示窓302、被検者用コントローラ303、前眼部照明ランプ304、スピーカ305、等を前面に有する。また、筐体301は、プリンタ306、ランプ307、コントロールボックス308、等を側面に有する。
【0128】
呈示窓302は、筐体301の内部から外部に向けて検査視標を呈示する。呈示窓302は、左眼用呈示窓302Lと右眼用呈示窓302Rを有している。例えば、被検者は呈示窓302(左眼用呈示窓302Lおよび右眼用呈示窓302R)を覗き込むことによって、視標窓314(
図13および
図14参照)に呈示された検査視標を確認し、視力を測定することができる。
【0129】
被検者用コントローラ303は、入力ボタン303a03a、応答ボタン303b、応答レバー303c、等を備える。入力ボタン303aは、被検者が視力検査を開始する際に用いる。応答ボタン303bは、被検者が呈示された検査視標を判読できない際に用いる。応答レバー303cは、被検者が呈示された検査視標を判読した判読結果を入力する際に用いる。
【0130】
前眼部照明ランプ304は、被検眼Eを照明するための近赤外光を発することで、被検眼Eを照明する。前眼部照明ランプ304は、左眼用前眼部照明ランプ304Lと右眼用前眼部照明ランプ304Rを有する。なお、前眼部照明ランプ304は、左右で1つを兼用する構成であってもよい。前眼部照明ランプ304は、被検眼Eを照明することが可能な位置に配置される。本実施例では、呈示窓302の周囲に配置される。もちろん、例えば、被検者の鼻が位置する窪み309等に配置されてもよい。また、例えば、後述の前眼部観察部330において、撮像素子333と撮像レンズ332との間の光路を、ビームスプリッタ等で分岐した先に配置されてもよい。
【0131】
スピーカ305は、音声ガイド等を出力する。スピーカ305は、左右に1つずつ設ける構成であっても、左右で1つを兼用する構成であってもよい。プリンタ306は、検査結果を出力する。ランプ307は、検者に検査状況や検査結果等を報知する。ランプ307は、被検者が呈示窓302を覗き込んだときに見えない位置に配置されている。ランプ307は、複数のLED(発光ダイオード)を備えており、多色(例えば、緑色と橙色の2色)発光が可能である。もちろん、ランプ307は1つのLEDからなり、単色発光する構成であってもよい。
【0132】
コントロールボックス308は、モニタ308aを備える。モニタ308aは、検者がパラメータ等を入力するための操作部と、入力されたパラメータ等を確認するための表示部と、を兼ねたタッチパネルとして機能する。コントロールボックス308からの信号は、ケーブル310を介して制御部340へ出力される。なお、コントロールボックス308は、筐体301と一体的に設ける構成であってもよい。
【0133】
<光学系>
図13は、視力検査装置300を右側面から見た右眼用光学系の概略図である。なお、視力検査装置300を左側面から見た左眼用光学系は、右眼用光学系と同様の構成であるため、説明を省略する。
図14は、視力検査装置300の右眼用光学系および左眼用光学系を上部から見たときの概略図である。なお、
図14では、制御系の構成をともに図示している。
【0134】
例えば、筐体301の内部は、接眼レンズ311Lおよび311R、内部カバー312Lおよび312R、内部照明ランプ313Lおよび313R、視標窓314Lおよび314R、視標呈示部320、前眼部観察部330、等を備える。
【0135】
接眼レンズ311Lおよび311Rは、左眼用呈示窓302Lと右眼用呈示窓302Rにそれぞれ配置されている。これによって、呈示窓302(左眼用呈示窓302Lおよび右眼用呈示窓302R)に対して奥側に設けられた視標窓314に検査視標を配置すると、被検眼Eにはみかけ上の遠用距離(例えば、5m)だけ先に検査視標が呈示されているようにみえる。
【0136】
内部照明ランプ313Lおよび313Rは、内部カバー312Lおよび312Rによる視野空間を照明する。内部カバー312Lおよび312Rは、中央に仕切り板をもつ筒状のカバーである。これによって、左眼ELと右眼ERとが検査視標をみるための視野空間を個別に確保し、左右の光路を区分けすることができる。
【0137】
例えば、本実施例において、内部カバー312Lおよび312Rは同一形状である。また、例えば、内部カバー312Lおよび312Rは、後述の視標照明ランプ323Lから出射して接眼レンズ311Lを通過する光軸M1Lと、視標照明ランプ323Rから出射して接眼レンズ311Rを通過する光軸M1Rと、のそれぞれを中心として、左右の内壁面が対称に形成されている。また、例えば、内部カバー312Lおよび312Rの背面には、視標窓314Lおよび314Rがそれぞれ設けられる。このため、両被検眼(すなわち、左被検眼ELと右被検眼ERの両眼)で呈示窓302を覗き込んだ場合には、視標窓314Lおよび視標窓314Rが融像して1つにみえるとともに、内部カバー312Lおよび312Rにおける左右の内壁面が1つの視野空間として観察される。例えば、これにより、被検者はみかけ上の遠用距離に置かれる検査視標を違和感なくみることができる。
【0138】
なお、内部カバー312Lおよび312Rの内面にはつや消しの白塗装が施されており、通常の視力検査時や視力回復時間測定のための明順応時には、内部照明ランプ313Lおよび313Rの点灯によって共に所定の明るさにされる。内部照明ランプ313Lおよび313Rは、その照明光が被検眼に直接入射しない位置に配置されている。
【0139】
視標呈示部320は、視標窓314に検査視標を切り換えて配置するために用いられる。例えば、視標呈示部320は、視標板321、モータ322、視標照明ランプ323Lおよび323R、を備える。視標板321は透光性をもつガラス板からなる。このガラス板上には、方向性のある検査視標(例えば、上下左右に方向性をもつランドルト環視標等)が、遮光性をもつクロムコートによって形成されている。例えば、このような検査視標は、視力値0.1~1.0、1.2、1.5、の12段階で形成されていてもよい。また、例えば、このような検査視標は、左眼ELおよび右眼ERに対して、対となる同一の左眼用検査視標と右眼用検査視標を同時に呈示できるように、それぞれを視標窓314Lおよび314Rの位置に対応させて形成してもよい。
【0140】
モータ322は、視標板321を回転させる。これにより、左眼用検査視標と右眼用検査視標とが、視標窓314Lと視標窓314Rとにそれぞれ配置される。視標照明ランプ323Lおよび323Rは、視標板321を背面から照明する。これにより、視標窓314Lおよび314Rに配置された検査視標は、呈示窓302Lおよび呈示窓302Rに向けて呈示される。
【0141】
本実施例においては、視標呈示部320としてディスプレイが用いられ、ディスプレイの表示を制御することによって、検査視標が切り換えて配置される構成であってもよい。例えば、この場合には、内部カバー312Lおよび312Rの内部背面に、ディスプレイが設けられてもよい。
【0142】
前眼部観察部330は、被検眼Eの前眼部を観察するために用いられる。前眼部観察部330は、ビームスプリッタ331、撮像レンズ332、撮像素子333、等を備える。ビームスプリッタ331は、視標照明ランプ323Lおよび323Rが検査視標を照明することによる視標光束を透過させる。また、ビームスプリッタ331は、前眼部照明ランプ304Lおよび304Rが前眼部にて反射された反射光束を反射させる。撮像素子333は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子333からの出力は、制御部340に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像が、撮像素子333により撮像され、取得される。
【0143】
例えば、前眼部観察部330は、左眼用前眼部観察部と、右眼用前眼部観察部と、のそれぞれを有し、左右一対に設けられてもよい。もちろん、例えば、前眼部観察部330は、左眼用前眼部観察部と、右眼用前眼部観察部とにおいて、少なくとも一部を兼用するように設けられてもよい。一例としては、撮像素子333のみを兼用してもよい。また、一例としては、ビームスプリッタ331、撮像レンズ332、撮像素子333をすべて兼用してもよい。なお、この場合は、内部カバー312の中央にある仕切り板の一部をなくして、そこへビームスプリッタ331を配置してもよい。
【0144】
<制御系>
例えば、制御部340は、視力検査装置300の各部を統括・制御する。例えば、制御部340は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を含んで構成されてもよい。例えば、CPUは、視力検査装置300における各部材の駆動を制御する。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、CPUが実行するプログラム等が記憶されている。なお、制御部340は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0145】
例えば、制御部340には、入力ボタン303a、応答ボタン303b、応答レバー303c、スピーカ305、プリンタ306、ランプ307、前眼部照明ランプ304Lおよび304R、内部照明ランプ313Lおよび313R、モータ322、視標照明ランプ323Lおよび323R、不揮発性メモリ345(メモリ345)、コントロールボックス308、等が電気的に接続されている。
【0146】
例えば、メモリ345は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ345としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。
【0147】
<制御動作>
視力検査装置300の制御動作について説明する。
【0148】
検者は、被検者に呈示窓302を覗き込ませる。制御部340は、被検者が近づいたことを図示なき近接センサにより検出する。
【0149】
例えば、このとき、「視力を自動で計ります。軽くレバーを倒して下さい。」との音声ガイドがスピーカ305から発生される。制御部340は、応答レバー303cが傾倒された信号に応じて、前眼部照明ランプ304(前眼部照明ランプ304Lおよび304R)、内部照明ランプ17(内部照明ランプ313Lおよび313R)、視標照明ランプ323(視標照明ランプ323Lおよび323R)を点灯させる。
【0150】
例えば、続いて、「視力を計ります。輪の切れた方向に軽くレバーを倒して下さい。輪の切れた方向が分からないときは、手前のボタンを押して下さい。」との音声ガイドがスピーカ305から発生される。被検者が応答レバー303cまたは応答ボタン303bを用いて応答すると、被検眼の視力を判定するための視力検査プログラムが実行される。なお、例えば、このような視力検査プログラムでは、被検眼Eの裸眼における最高視力値が取得される。
【0151】
図15は、視力検査装置300における変更制御の一例を示すフローチャートである。例えば、制御部340は、被検眼Eに対する検査視標の呈示状態を、初期状態に設定する。一例として、制御部340は、視標板321を回転させ、視標窓314(視標窓314Lおよび314R)に、初期検査視標として視力値0.5のランドルト環視標を配置する(ステップN1)。続いて、例えば、制御部10は、スピーカ305から「方向は」との音声ガイドを発生させる。被検者は、ランドルト環視標を注視し、ランドルト環視標の切れ目の方向を判読して、応答レバー303cをその方向に傾倒するか、あるいは応答ボタン303bを押圧する。
【0152】
ここで、制御部340は、前眼部観察部330によって撮影および取得された前眼部画像を利用して、第1実施例と同様に、被検眼Eがランドルト環視標Tを注視しているか否かを判定する(ステップN2)。また、制御部340は、被検眼に呈示したランドルト環視標の切れ目の方向と、応答レバー303cまたは応答ボタン303bからの信号と、に基づき、第1実施例と同様に、被検者による回答の正誤を検出する(ステップN3)。さらに、制御部340は、ステップN2にて得られた判定結果(すなわち、被検眼Eの視線情報)と、ステップS3にて得られた検出結果(すなわち、被検者の回答情報)と、に基づき、被検眼に対するランドルト環視標の呈示状態を、初期状態から第2状態に変更する。
【0153】
なお、
図15におけるステップN2~ステップN13は、
図10におけるステップB3~ステップB14までの流れと基本的には同様であるため、詳細な説明を省略する。制御部10は、被検眼Eに対するランドルト環視標の呈示状態を、初期状態から各々の第2状態、第3状態、…、第n状態へと、フローチャートに沿って変更する。例えば、制御部10は、このような制御を繰り返し、視標窓314に呈示するランドルト環視標の視力値および切れ目の方向の少なくともいずれかを、適宜、異なる状態に変更することによって、被検眼Eの裸眼における最高視力値を取得することができる。
【0154】
以上、説明したように、例えば、本実施例における検眼装置は、被検者の検査視標に対する判読結果に関する回答情報と、被検眼の視線に関する視線情報と、を取得し、回答情報および視線情報に基づいて、被検眼に対する検査視標の呈示状態を変更する。これによって、被検者の回答の正誤とともに、被検眼の視線の位置や方向等が考慮された、精度のよい検査結果を得ることができる。
【0155】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼の視線に関する視線情報として、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得する。これによって、被検者の回答が、検査視標を見て回答されたものか、あるいは検査視標を見ずに回答されたものか、を容易に区別し、精度のよい検査結果を得ることができる。
【0156】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼の視線の位置と検査視標の位置との一致を検出するための検出領域が検査領域毎に設けられ、視線の位置が検出領域に含まれるか否かに基づいて、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果が取得される。これによって、検査視標の注視に対する判定基準が明確化され、容易に判定結果を得ることができる。
【0157】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検者の検査視標に対する判読結果が入力された入力信号を得た際に、視線の位置が検出領域に含まれていたか否かに基づいて、被検眼が検査視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得する。これによって、視線が検査視標へ偶然に合った場合が考慮され、精度よく判定結果を得ることができる。
【0158】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼を矯正する矯正度数を変更するために、視標光束の光学特性を変化させる矯正手段を備え、矯正手段の制御によって、被検眼に対する検査視標の呈示状態が、矯正度数が互いに異なる呈示状態に変更される。一例として、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等の少なくともいずれかが、変更前と変更後で異なる状態に変更される。これによって、回答情報および視線情報に基づき、適宜、矯正度数が適切な状態とされるため、検査精度が向上される。
【0159】
<変容例>
なお、本実施例では、ランドルト環視標の呈示位置が、ディスプレイ61あるいは視標窓314の中央である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、ランドルト環視標の呈示位置は、必ずしも固定の位置である必要はなく、無作為な(ランダムな)位置であってもよい。
【0160】
自覚式検眼装置100にてランドルト環視標を無作為な位置に配置する場合、ディスプレイ61には、複数の表示領域が設けられてもよい。例えば、ディスプレイ61の表示面が、縦方向および横方向の各々に対し、任意の数で分割されることによって、複数の表示領域が設けられてもよい。一例として、本実施例では、ディスプレイ61の表示面が、3×3分割(縦方向および横方向にそれぞれ3分割)される。もちろん、複数の表示領域の一部は重なってもよいし、これとは異なるレイアウトでもよい。
【0161】
例えば、
図10のフローチャートに沿った変更制御において、制御部10は、複数の表示領域のうちの1つを無作為に選択する。また、制御部10は、選択した表示領域の中央に、視力値あるいは切れ目の方向が異なるランドルト環視標を表示させる。例えば、このようにして、ランドルト環視標を無作為な位置に配置することができる。
【0162】
視力検査装置300にてランドルト環視標を無作為な位置に配置する場合は、視標呈示部320における視標窓314を大きく設け、視標窓314に複数のランドルト環視標を配置してもよい。また、視標板321の前面に、ランドルト環視標にマスクを施すためのマスク板を、回転可能に配置してもよい。例えば、視標板321とマスク板は、独立に制御される。
【0163】
例えば、
図15のフローチャートに沿った変更制御において、制御部340は、視標板321を回転させ、視力値あるいは切れ目の方向が異なるランドルト環視標を含む、複数のランドルト環視標を呈示する。また、制御部340は、マスク板を回転させ、目的とするランドルト環視標を除き、残りのランドルト環視標にマスクを施す。例えば、このようにして、ランドルト環視標を無作為な位置に配置することができる。
【0164】
例えば、このように、本実施例における検眼装置は、被検眼に向けて視標光束を出射することで、被検眼に検査視標を呈示する視標呈示手段を備え、視標呈示手段の制御によって、被検眼に対する検査視標の呈示状態が、検査視標が互いに異なる呈示状態に変更される。一例として、ランドルト環視標等の方向性をもつ検査視標であれば、検査視標の向き、検査視標の視力値、等の少なくともいずれかが、変更前と変更後で異なる状態に変更される。これによって、回答情報および視線情報に基づき、適宜、検査視標が適切な状態とされるため、検査精度が向上される。
【0165】
なお、本実施例では、被検眼Eに投影された輝点像Rを利用して、被検眼Eの視線情報を取得する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、被検眼Eの視線の動きを予め取得し、これに基づいて、被検眼Eの視線情報を取得してもよい。この場合、制御部は、自覚式測定または視力検査を開始する前に、被検眼Eに対して固視標を呈示し、被検眼Eが固視標を注視する視線の位置、瞳孔位置、眼球運動、等を検出した、第1検出結果を得る。自覚式測定または視力検査を開始した後は、被検眼Eがランドルト環視標(検査視標)を注視する視線の位置、瞳孔位置、眼球運動、等を検出した第2検出結果を得る。例えば、制御部は、事前に得た第1検出結果と、第2検出結果と、を比較することによって、被検眼がランドルト環視標を注視しているか否かを判定した判定結果を取得することができる。もちろん、ランドルト環視標の呈示位置を無作為な位置とする際には、各々の位置にて、第1検出結果を得ておけばよい。
【0166】
なお、本実施例では、被検眼Eに対する自覚式測定または視力検査の際、1つのランドルト環視標が呈示される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、複数のランドルト環視標が呈示されてもよい。一例として、視力値は同一だが切れ目の方向が異なる、複数のランドルト環視標が呈示されてもよい。また、一例として、視力値は異なるが切れ目の方向が同一な、複数のランドルト環視標が呈示されてもよい。また、一例として、視力値が異なりかつ切れ目の方向が異なる、複数のランドルト環視標が呈示されてもよい。なお、これらの複数のランドルト環視標は、回答レバー8a(応答レバー303c)の傾倒方向に合わせて配置されてもよい。
【0167】
この場合、制御部は、右向きのランドルト環視標はどれか、または、もっともよく視認できるランドルト環視標はどれか、等を問うようにしてもよい。また、制御部は、各々のレバーから入力された信号に基づく回答情報と、被検眼Eの視線情報と、を利用して、被検眼Eに対するランドルト環視標の呈示状態を変更してもよい。
【0168】
なお、本実施例では、第1実施例の自覚式検眼装置100にて、被検眼Eの裸眼視力を測定してもよい。この場合、例えば、ディスプレイ61は無限遠に相当する0Dの位置に配置され、ステップA~ステップDのうちのステップBのみが実施されてもよい。また、ステップBでは、ステップB1を省略して、ステップB2以降が順に実行されればよい。
【0169】
なお、本実施例では、第2実施例の視力検査装置300に、被検眼Eを屈折矯正するための矯正部が設けられてもよい。例えば、矯正部は、接眼レンズ311からビームスプリッタ331までの間の光路に設けられてもよい。例えば、矯正部は、被検眼を矯正するための光学部材と、光学部材を光路中に挿抜させるためのモータと、を有してもよい。光学部材としては、レンズ、プリズム、等のいずれかを用いることができる。
【0170】
これによって、例えば、視力検査装置300を用いて、被検眼Eの裸眼視力と、被検眼Eを矯正した場合の矯正視力と、を測定してもよい。つまり、視標呈示部320からの視標光束が被検眼に導光される光路中において、光学部材を抜去することで、被検眼Eの裸眼視力を測定してもよい。また、視標呈示部320からの視標光束が被検眼に導光される光路中において、光学部材を挿入することで、被検眼Eの矯正視力を測定してもよい。
【符号の説明】
【0171】
6 検者用コントローラ
10 制御部
20 自覚式測定光学系
50 観察光学系
60 投光光学系
70 矯正光学系
100 自覚式検眼装置
300 視力測定装置
320 視標呈示部
330 前眼部観察部