(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073158
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】耐火ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/295 20060101AFI20220510BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20220510BHJP
H01B 3/44 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H01B7/295
H01B7/02 Z
H01B3/44 M
H01B3/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182962
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加茂 司
【テーマコード(参考)】
5G305
5G309
5G315
【Fターム(参考)】
5G305AA02
5G305AB25
5G305BA13
5G305BA25
5G305CA04
5G305CA07
5G305CA54
5G305CD13
5G309RA04
5G309RA05
5G309RA07
5G309RA10
5G309RA15
5G315CA01
5G315CB02
5G315CC08
5G315CD04
5G315CD11
(57)【要約】
【課題】ケーブルの耐火性能、物性を向上させつつ、製造時の生産性並びにコスト性に優れた耐火ケーブルを提供する。
【解決手段】一本または複数本の絶縁線心2を有する耐火ケーブル1であって、前記絶縁線心2が、導体6と、前記導体6の外周面に設けられた耐火絶縁層8と、を備え、前記耐火絶縁層8は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)と、マイカと、を含み、前記耐火絶縁層8中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ前記マイカの平均粒径が、1000μm以下である耐火ケーブル1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本または複数本の絶縁線心を有する耐火ケーブルであって、
前記絶縁線心が、導体と、前記導体の外周面に設けられた耐火絶縁層と、を備え、
前記耐火絶縁層は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含み、
前記耐火絶縁層中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ
前記マイカの平均粒径が、1000μm以下であることを特徴とする耐火ケーブル。
【請求項2】
前記耐火絶縁層の外周面に絶縁体部が設けられて構成されることを特徴とする請求項1に記載の耐火ケーブル。
【請求項3】
前記耐火絶縁層が、ドリップ防止剤を前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐火ケーブル。
【請求項4】
前記耐火絶縁層が、難燃剤を前記樹脂100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の割合で含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の耐火ケーブル。
【請求項5】
前記耐火絶縁層の厚みが、0.10mm以上3.00mm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の耐火ケーブル。
【請求項6】
前記耐火絶縁層が架橋されてなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の耐火ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の人が集合する劇場やデパート等においては、火災等が発生した場合に場内の人々を安全に非常口まで案内するため、避難誘導灯などを一定時間(避難が完了する程度の時間)点灯させておく必要がある。社団法人日本電線工業会では、避難誘導灯などの避難設備の配線に用いられる耐火ケーブルに関して独自の認定基準を設けており、この認定基準によって性能、構造、および材料等の品質確保を図ることが可能である。
【0003】
下記特許文献1に開示された耐火ケーブルは、一又は複数本の絶縁線心が、導体と、該導体の導体外周面に設けられる耐火テープ部と、該耐火テープ部のテープ外周面に設けられる絶縁体部とを備えて構成され、前記耐火テープ部は、前記導体側に位置する内層耐火テープ部と、前記絶縁体部側に位置する外層耐火テープ部と、前記内層耐火テープ部および前記外層耐火テープ部の間に位置する中間耐火部とを備えて構成され、前記絶縁体部は、押し出し成形にて前記外層耐火テープ部の周面に設けられる内層絶縁体部と、該内層絶縁体部の外周面に設けられる外層絶縁体部とを備えて構成され、さらに、前記中間耐火部は、前記内層耐火テープ部の外周面にマイカ粉を塗布してなり、且つ、前記内層絶縁体部は、マイカ粉を練り込んだポリエチレンからなる。
【0004】
しかし前記特許文献1に開示された耐火ケーブルは、前記のような構成の耐火テープ部を設けるために生産性が低下し、コストもかかるという問題点がある。また、ポリエチレンに対するマイカの分散性が乏しく、マイカの比率を増加させることができず、耐火性能に改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルの耐火性能、物性を向上させつつ、製造時の生産性並びにコスト性に優れた耐火ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「耐火ケーブル」は、下記(1)~(6)を特徴としている。
(1)
一本または複数本の絶縁線心(2)を有する耐火ケーブル(1)であって、
前記絶縁線心(2)が、導体(6)と、前記導体(6)の外周面に設けられた耐火絶縁層(8)と、を備え、
前記耐火絶縁層(8)は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含み、
前記耐火絶縁層(8)中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ前記マイカの平均粒径が、1000μm以下であること。
(2)
上記(1)に記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)の外周面に絶縁体部(9)が設けられて構成されること。
(3)
上記(1)または(2)に記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が、ドリップ防止剤を前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で含有すること。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が、難燃剤を前記樹脂100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の割合で含有すること。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)の厚みが、0.10mm以上3.00mm以下であること。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が架橋されてなること。
【0008】
上記(1)の構成の耐火ケーブルによれば、耐火絶縁層に用いられる樹脂の種類、樹脂およびマイカの含有量並びにマイカの平均粒径を特定化している。
すなわち、前記絶縁耐火層は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含み、前記耐火絶縁層中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ前記マイカの平均粒径が、1000μm以下である。
前記耐火絶縁層に用いられる樹脂の種類、樹脂およびマイカの含有量並びにマイカの平均粒径を特定化することにより、従来の耐火テープ部を省略でき、製造時の生産性並びにコスト性を改善できる。また、前記耐火絶縁層に使用される樹脂に対するマイカの分散性が向上するため、耐火性能も改善される。
以上から、本発明によればケーブルの耐火性能、物性を向上させつつ、製造時の生産性並びにコスト性に優れた耐火ケーブルを提供できる。
【0009】
上記(2)の構成の耐火ケーブルによれば、記耐火絶縁層の外周面に絶縁体部が設けられて構成されているため、耐火絶縁層と絶縁体部との適度な密着性が確保され、外観の悪化を防止できる。
【0010】
上記(3)の構成の耐火ケーブルによれば、前記耐火絶縁層(8)が、ドリップ防止剤を前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で含有するので、燃焼時の樹脂だれ(ドリップ)を防止でき、耐火性能が向上する。
【0011】
上記(4)の構成の耐火ケーブルによれば、前記耐火絶縁層(8)が、難燃剤を前記樹脂100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の割合で含有するので、耐火ケーブルの物性を損なうことなく、耐火性能が向上する。
【0012】
上記(5)の構成の耐火ケーブルによれば、前記耐火絶縁層(8)の厚みが、0.10mm以上3.00mm以下であるので、耐火ケーブルの物性を損なうことなく、耐火性能が向上する。また生産性も向上する。
【0013】
上記(6)の構成の耐火ケーブルによれば、前記耐火絶縁層(8)が架橋されてなるので、耐火ケーブルの物性を損なうことなく、耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブルの耐火性能、物性を向上させつつ、製造時の生産性並びにコスト性に優れた耐火ケーブルを提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の耐火ケーブルの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の耐火ケーブルの構成図である。また、
図2は
図1の絶縁線心の構成図であり、
図3は
図2のA-A線断面図である。
【0018】
図1において、耐火ケーブル1は、二本の絶縁線心2と、この二本の絶縁線心2を撚り合わせた時に外側に設けられる介在3と、介在3の上から巻き付けられる押さえ巻きテープ4と、この押さえ巻きテープ4の上に押し出し成形されるシース5とを備えて構成される。なお、本実施形態の耐火ケーブル1は、絶縁線心2を二本、構成に含むが、これに限らず一本や三本等で構成したケーブルであってもよいものとする。
【0019】
図1ないし
図3において、絶縁線心2は、導体6と、耐火絶縁層8と、絶縁体部9とを備えて構成される。導体6は、導電性を有し、断面円形状の適宜サイズに形成される。導体6は、公知のものが採用される。耐火絶縁層8は、絶縁線心2における特徴部分である。
【0020】
図2および
図3において、耐火絶縁層8は、導体6の外周面に設けられる。また、耐火絶縁層8の外周面に絶縁体部9を設けてもよい。
【0021】
耐火絶縁層8は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含む。
【0022】
前記EVAの酢酸ビニル含量は、15~30質量%であることがさらに好ましい。
前記EEAのエチルアクリレート含量は、15~30質量%であることがさらに好ましい。
前記EMAのメチルアクリレート含量は、15~25質量%であることがさらに好ましい。
前記EMMAのメチルメタクリレート含量は、15~25質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
耐火絶縁層8中の前記樹脂の割合は、20質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明で使用されるマイカは、例えば微粒子の軟質天然集成マイカ(金雲母)の鱗片状マイカ片であることができる。本発明で使用されるマイカは、その平均粒径が、2μm以上1000μm以下であることが必要である。該平均粒径が2μm以下であると耐火絶縁層8の耐火性能が悪化する。1000μmを超えると、引張特性が低下する。マイカのさらに好ましい平均粒径は、150μm~600μmである。
【0025】
耐火絶縁層8中のマイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、40質量部以上70質量部以下であることがさらに好ましい。前記マイカの割合が25質量部未満では耐火絶縁層8の耐火性能が悪化する。逆に80質量部を超えると引張伸び率が悪化する。
【0026】
また、耐火絶縁層8は、耐火性能向上のためにドリップ防止剤を含有することができる。ドリップ防止剤は、例えばフッ素を含有するフッ素含有化合物を含み、燃焼時の樹脂だれ(ドリップ)を防止することが可能なものであればよい。このようなフッ素含有化合物としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と呼ぶ)、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素系樹脂が挙げられる。ドリップ防止剤を配合することにより、マイカの配合量を少なくしても良好な耐火性能を提供できる。
ドリップ防止剤は、耐火絶縁層8中に、前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で含有されることが好ましい。前記のようにドリップ防止剤を前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で配合することにより、加工性を悪化させずにドリップ防止効果を発現することができる。
ドリップ防止剤は、耐火絶縁層8中に、前記樹脂100質量部に対して0.5質量部以上3質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0027】
また、耐火絶縁層8は、耐火性能向上のために好ましくは難燃剤を前記樹脂100質量部に対して5質量部以上25質量部以下、さらに好ましくは10質量部以上20質量部以下の割合で含有するのがよい。
難燃剤としては、耐火ケーブルに使用可能な難燃剤を適宜選択して使用することができ、例えば、臭素化エチレンビスフタルイミド誘導体、ビス臭素化フェニルテレフタルアミド誘導体、臭素化ビスフェノール誘導体、及び1,2-ビス(ブロモフェニル)エタン等の有機系臭素含有難燃剤;水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウム等の金属水酸化物のような無機系難燃剤;芳香族縮合リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、及びメラミンリン酸塩等のリン酸系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、及びピロリン酸ピペラジン等のイントメッセント系難燃剤等が挙げられる。
【0028】
また、耐火絶縁層8の厚みは、0.10mm以上3.00mm以下が好ましく、0.3mm以上1.5mm以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
また、耐火性能向上のために耐火絶縁層8は架橋されていてもよい。
架橋剤としては、有機過酸化物が挙げられるが、これに限定されるものではない。具体的には、架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、およびtert-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
架橋助剤としては、とくに制限されないが、例えば分子内に二重結合を二個以上有する化合物が挙げられ、具体的には、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、およびポリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート;1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、およびポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、およびペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、およびトリメチロールエタントリメタクリレートなどのトリメタクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびテトラメチロールメタンテトラアクリレートなどのテトラアクリレート;ジビニルベンゼンなどのジビニル芳香族化合物;トリアリルシアヌレート、およびトリアリルイソシアヌレートなどのシアヌレート;ジアリルフタレートなどのジアリル化合物;トリアリル化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
架橋剤および架橋助剤の使用量は、例えば架橋剤は樹脂に対して0.03~0.10質量%、架橋助剤は0.03~0.10質量%であることができる。
【0032】
絶縁体部9は、絶縁性を確保する部分(所謂絶縁体)であって、耐火絶縁層8の外周面に設けることができる。
図2および3の形態では、絶縁体部9は、押し出し成形にて耐火絶縁層8の外周面に設けられる内層絶縁体部92と、この内層絶縁体部92の外周面に設けられる外層絶縁体部94とを備えて構成される。
【0033】
内層絶縁体部92および外層絶縁体部94は、一般的な耐火ケーブルに用いられる樹脂材料を押し出し成形することにより所定の厚みで形成される。上記樹脂材料としては、例えばポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル系樹脂が挙げられる。そして、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。一方、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0034】
図1に戻り、介在3は、二本の絶縁線心2を撚り合わせる際に、耐火ケーブル1が断面円形状になるようにするためのものである。介在3は、紙、ジュート、PP解繊糸等からなるのが一般的である。
【0035】
押さえ巻きテープ4は、ポリエステル不織布、ナイロン不織布、ポリプロピレンテープ、ポリエステルテープ、ガラステープ、紙テープ、セラミックス紙等が採用されるのが一般的である。
【0036】
シース5は、一般的な耐火ケーブルに用いられる樹脂材料を押さえ巻きテープ4の上に押し出し成形することにより所定の厚みで形成される。上記樹脂材料としては、外層絶縁体部16と同様であって、例えばポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル系樹脂が挙げられる。そして、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。一方、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂が挙げられる。尚、ポリオレフィン系樹脂として単独で使用することも、複数種類を併用することも可能である。例えば、EEAやEVAに比べて機械的特性は良いが難燃剤を多く添加することができないポリエチレンと、難燃剤を多く添加することのできるEEAやEVAとを併用することで、機械的特性と難燃剤の受容性の良い材料を構成することが可能になる。
【0037】
本発明の耐火ケーブル1における各部材には、必要に応じて、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、加工助剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、分散剤等の公知の各種添加剤を配合することもできる。
【0038】
本発明の耐火ケーブル1は、公知の手段によって製造することができ、例えば以下の工程を有する。
【0039】
(1)前記導体6の外周面に前記耐火絶縁層8を形成するための樹脂組成物を押出し、前記耐火絶縁層8を形成する工程
(2)必要に応じて、前記耐火絶縁層8の外周面に前記内層絶縁体部92を形成するための樹脂組成物を押出し、前記内層絶縁体部92を形成する工程
(3)必要に応じて、前記内層絶縁体部92の外周面に前記外層絶縁体部94を形成するための樹脂組成物を押出し、前記外層絶縁体部94を形成する工程
なお、前記押出しの際には、公知の単軸押出機や二軸押出機等の押出機を用いることができる。
【実施例0040】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0041】
下記表1に記載の材料および配合量に基づき、各成分を温度160℃のニーダーにて混練し、耐火絶縁層8用の樹脂組成物を作製した。
【0042】
直径2.0mmの銅線上に、押出成形機を用いて耐火絶縁層8用の樹脂組成物を押出し、各種試験電線を作製した。
なお、耐火絶縁層8の厚みは、1.0mmとした。
【0043】
得られた試験電線に対し、次の項目を測定した。
引張伸び率:JIS C3005に基づき、測定した。50%以上を合格とする。
耐火試験合否:耐火電線の基準(平成9年消防庁告示10)を満たすものを合格(○)とし、満たさないものを不合格(×)する。
結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
*1:EVA(宇部丸善ポリエチレン株式会社製UBEポリエチレンV215、酢酸ビニル含量=15%)
*2:マイカ(株式会社岡部マイカ工業所製集成マイカ、平均粒径=200μm)
*3:リン系難燃剤(株式会社ADEKA製アデカスタブFP-2100JC)
*4:フッ素系ドリップ防止剤(三菱ケミカル(株)製メタブレンA-3000)
【0046】
表1の各実施例の結果から、耐火絶縁層8が、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含み、前記耐火絶縁層8中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ前記マイカの平均粒径が、1000μm以下である耐火ケーブルは、耐火性能、引張伸び率のような物性を向上させ、また従来のように耐火テープ部を設ける必要性がないため、製造時の生産性並びにコスト性に優れる。
【0047】
比較例1は、マイカの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、引張伸び率が不合格であり、耐火性能も不合格であった。
比較例2は、マイカの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、引張伸び率が不合格であった。
【0048】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
ここで、上述した本発明に係る耐火ケーブルの実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)~(6)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
一本または複数本の絶縁線心(2)を有する耐火ケーブル(1)であって、
前記絶縁線心(2)が、導体(6)と、前記導体(6)の外周面に設けられた耐火絶縁層(8)と、を備え、
前記耐火絶縁層(8)は、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン-エチルアクリレート樹脂(EEA)、エチレン-メチルアクリレート樹脂(EMA)およびエチレン-メチルメタクリレート樹脂(EMMA)から選択された1種以上の樹脂と、マイカと、を含み、
前記耐火絶縁層(8)中の前記マイカの割合は、前記樹脂100質量部に対して25質量部以上80質量部以下であり、かつ
前記マイカの平均粒径が、1000μm以下であることを特徴とする耐火ケーブル(1)。
(2)
上記(1)の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)の外周面に絶縁体部(9)が設けられて構成されることを特徴とする、耐火ケーブル(1)。
(3)
上記(1)または(2)の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が、ドリップ防止剤を前記樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5質量部以下の割合で含有することを特徴とする、耐火ケーブル(1)。
(4)
上記(1)~(3)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が、難燃剤を前記樹脂100質量部に対して5質量部以上25質量部以下の割合で含有することを特徴とする、耐火ケーブル(1)。
(5)
上記(1)~(4)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)の厚みが、0.10mm以上3.00mm以下であることを特徴とする、耐火ケーブル(1)。
(6)
上記(1)~(5)のいずれかに記載の耐火ケーブルにおいて、
前記耐火絶縁層(8)が架橋されてなることを特徴とする、耐火ケーブル(1)。