(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073161
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】木質基材及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B27N3/02 D
B27N3/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182966
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 透
【テーマコード(参考)】
2B260
【Fターム(参考)】
2B260AA03
2B260AA12
2B260BA11
2B260BA13
2B260BA15
2B260BA18
2B260CB01
2B260CB04
2B260CD03
2B260CD04
2B260CD06
2B260DA07
2B260DA10
2B260DA18
2B260DB04
2B260DD03
2B260EA05
2B260EB08
(57)【要約】
【課題】本発明は、例えば床や壁等の下地材、建具や家具等に使用され、機械強度及び耐水性に優れた木質基材やそれを用いた化粧材を提供できる。
【解決手段】粉体状ないしチップ状の木質材料41と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物42、及び水分吸着材43とを含む原料混合物40を加熱加圧して形成される木質基材20であって、木質基材20の密度が0.65~1.2g/ccであり、かつ水分吸着材43の含有量が、木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との合計100質量部に対して、2~15質量部であり、原料混合物40において、木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との質量比(木質材料41/熱可塑性樹脂組成物42)が、95/5~60/40である。また、木質基材20の密度が、0.95~1.2g/ccであっても良いし、水分吸着材43がゼオライトであっても良いし、木質材料41が、菌床を原料に含んでいても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、水分吸着材とを含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、
前記木質基材の密度が0.65~1.2g/ccであり、かつ前記水分吸着材の含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、2~15質量部であり、
前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との質量比が、95/5~60/40であることを特徴とする木質基材。
【請求項2】
前記密度が、0.95~1.2g/ccであることを特徴とする請求項1に記載の木質基材。
【請求項3】
前記水分吸着材がゼオライトであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質基材。
【請求項4】
前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の木質基材。
【請求項5】
粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、水分吸着材とを含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材を用いた化粧材であって、
前記水分吸着材の含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して2~15質量部であり、前記木質基材に、意匠性を有する意匠層が積層されてなることを特徴とする化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば床や壁等の下地材、建具や家具等に使用され、機械強度及び耐水性に優れた木質基材及びそれを用いた化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
木質基材の接着剤としては、通常、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤が、ホルムアルデヒドを含む硬化剤とともに用いられる。
ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因となる有害物質であるため、木質基材からの放散が問題となり、放散量の低減のための各種施策が検討されているが、完全に抑制することはできない。
これに対し、ホルムアルデヒドを含まない接着剤として、粉体の糖類と粉体のポリカルボン酸とを主成分とする接着剤を用い、これを植物繊維と混合し、加熱加圧成形することで、繊維ボードを製造する方法が提案されている(特許文献1、明細書の段落「0017」参照)。
また、ポリビニルアルコールと水とからなる接着剤を用いた木質基材を含む積層体の製造方法が提案されている(特許文献2、明細書の段落「0015」及び
図1参照))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-55620号公報
【特許文献2】特許第5553279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の接着剤を用いた木質基材は、曲げ強度等の機械特性や耐水性が実用上十分なものではなかった。
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、機械強度及び耐水性に優れた木質基材及びそれを用いた化粧材を提供することを課題とする。
発明者は上記した課題を解決すべく鋭意検討した結果、木質材料と熱可塑性樹脂組成物の粉体混合物とを加熱加圧して形成する木質基材において、粉体混合物に水分吸着材を含有させることで、上記した課題が解決することを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る木質基材は、粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、水分吸着材とを含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材であって、前記木質基材の密度が0.65~1.2g/ccであり、かつ前記水分吸着材の含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して、2~15質量部であり、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との質量比が、95/5~60/40であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る木質基材は、前記密度が、0.95~1.2g/ccであることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記水分吸着材がゼオライトであることを特徴とする。
本発明の一態様に係る木質基材は、前記木質材料が、菌床を原料に含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る化粧材は、粉体状ないしチップ状の木質材料と、粉体状の熱可塑性樹脂組成物と、水分吸着材とを含む原料混合物を加熱加圧して形成される木質基材を用いた化粧材であって、前記水分吸着材の含有量が、前記木質材料と前記熱可塑性樹脂組成物との合計100質量部に対して2~15質量部であり、前記木質基材に、意匠性を有する意匠層が積層されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、機械強度及び耐水性に優れた木質基材及びそれを用いた化粧材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係わる原料混合物の模式図である。
【
図2】実施形態1に係わる化粧材の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
本発明の実施形態1について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(化粧材10)
図2中、10は、化粧材であって、化粧材10は、例えば床や壁等の下地材、建具や家具等、幅広い用途で使用される。
化粧材10は、
図2に示すように、次の層から構成されている。
なお、次の各層については、後述する。
(1)木質基材20
(2)意匠層30
なお、化粧材10は、上記(1)及び(2)に限定されず、意匠層30の表面にトップコートを塗布したり、エンボス加工を施しても良い。
【0011】
(木質基材20)
木質基材20は、化粧材10の支持体となるものであって、具体的には、
図1に示すように、(1)粉体状またはチップ状の木質材料41と、(2)粉体状の熱可塑性樹脂組成物42と、(3)水分吸着材43とを含む原料混合物40を、加熱加圧することで形成される。
上記「粉体状」、「チップ状」には、サイズや形状の定義は一般に存在しないが、本実施形態1では、サイズが概ね数十ミクロン~数センチメートルの範囲にあるものを想定している。
木質基材20は、基材単独でも、化粧材10として実用に供することができる。
すなわち、木質基材20は、
図2に示すように、意匠性を付与するため、絵柄等の意匠が付与された紙やフィルム等の意匠層2を積層し、化粧材10としても良い。
【0012】
(意匠層30)
意匠層30は、木質基材20の表面に位置し、意匠性を付与するものであって、必要に応じて適宜設けられるものである。
【0013】
(木質基材20の主な特徴)
木質基材20の主な特徴は、次の通りである。
(1)木質基材20の密度が0.65~1.2g/ccである。
木質基材20の密度が0.65g/cc未満であると、基材密度が不足し、機械強度に劣る。密度が1.2g/ccを超えると、水蒸気が滞留しやすく、基材変形が生じやすい。また、変形が生じた基材は、内部に空隙が生じている状態であると考えられ、外観だけでなく、機械強度と耐水性も損なわれやすい。
さらに、木質基材20の密度が、0.95~1.2g/ccであることが望ましい。
木質基材20の密度が、0.95g/cc未満であると、機械強度が悪化する。
【0014】
(2)水分吸着材43の含有量が、木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との合計100質量部に対して、2~15質量部である。
水分吸着材43の含有量が、2質量部未満であると、木質基材20の変形抑制効果が十分に得られず、又、15質量部を超えると、木質基材20の機械強度と耐水性とが顕著に低下する。
【0015】
(3)原料混合物40において、木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との質量比(木質材料41/熱可塑性樹脂組成物42)が、95/5~60/40である。
質量比(木質材料41/熱可塑性樹脂組成物42)が、95/5未満であると、熱可塑性樹脂組成物42が不足し、機械特性に劣る。質量比が60/40を超えると、機械強度に劣る。
【0016】
(4)水分吸着材43は、ゼオライトが望ましい。
例えば、「ゼオライト」を「シリカゲル」に置き換えると、基材変形が悪化する。
(5)木質材料41には、菌床を原料に含むことが望ましい。
木質材料41に菌床を含むと、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床を、木質基材20に活用でき、菌床のリサイクルを図ることができる。
【0017】
(木質材料41)
木質材料41は、例えば、木粉、木質繊維、木材をチップ状に破砕したものが挙げられ、原料としてはし間伐材、オガ粉、廃木材なども用いることができる。また、木材以外でも、竹、麻、ヤシ繊維、クルミ殻など、木材と同様にセルロース成分を含むものであれば候補とすることができる。
【0018】
(木質材料41の原料)
木質材料41の原料としては、キノコ栽培時に大量に発生する使用済み菌床が好適である。菌床はキノコ栽培に用いる培地であり、木材チップやオガ粉にフスマや米ぬか等の栄養分を混ぜたものであり、キノコ栽培後の菌床は国内で年間30万トン前後が廃棄されていると推定され、バイオマスとして有望であるが、リサイクルが進んでいないのが現状である。
【0019】
(木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との質量比)
木質材料41と熱可塑性樹脂組成物42との質量比は、次の範囲である。
木質材料41/熱可塑性樹脂組成物42=95/5~50/50
質量比は、好ましくは95/5~60/40の範囲である。
木質材料41の含有量がこの範囲より大きくなると、木質基材20に十分な曲げ強度や耐水性を付与することができない。一方、木質材料41の含有量がこの範囲より小さくなると、加熱加圧時に木質基材20の変形が生じやすくなり、好ましくない。
【0020】
(熱可塑性樹脂組成物42)
熱可塑性樹脂組成物42が含有する熱可塑性樹脂は、ポリエスエル、ポリアミド、ポリオレフィン、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレンビニルアセテート、シリコーンゴム等の候補から、単一種または複数種を混合して用いることができるが、木質基材20の機械強度と耐水性の点でポリエチレンを含むことが好適である。
ポリエチレンは、特に限定されるものでなく、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等。既存の材料から、加熱加圧時の反応性や原料混合物の流動性等を考慮し適宜選択して用いられる。
【0021】
(酸含有樹脂の配合)
熱可塑性樹脂組成物42は、木質材料41の熱可塑性樹脂に対する接着性を向上させるため、酸含有樹脂を配合しても良い。
例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無水マレイン酸ポリプロレン等、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、及び無水イタコン酸変性ポリエチレン等を用いることができる。
これらは、酸変性ポリマーであり、ポリオレフィン系樹脂をカルボン酸又はカルボン酸無水物をグラフト変性したもの、又はオレフィンとアクリル酸や無水マレイン酸等との共重合体のいずれでも良い。
【0022】
(有機過酸化物の配合)
熱可塑性樹脂組成物42は、基材形成における熱プレス時に熱可塑性樹脂を架橋させるため有機過酸化物を配合しても良い。
また、熱可塑性樹脂は、架橋により木質基材の強度や耐水性が向上する場合がある。例えば、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル等の既存材料から、反応性や安定性を考慮し、適宜選択して用いられる。
【0023】
(熱可塑性樹脂組成物42の作製)
熱可塑性樹脂組成物42は、各種公知の方法で作製することが可能であり、例えば、一軸混錬機やバッチ式混錬機を用い、熱可塑性樹脂とその他の原料を加熱混錬後、機械的粉砕や凍結粉砕等の方法で粉体化することで作製できる。
【0024】
(水分吸着材43)
水分吸着材43は、木質基材形成時の基材変形を抑制するために用いられる。
原料混合物40の熱プレスにおいては、主に木質材料41から発生する水蒸気が内部に滞留し、プレス解除時に水蒸気が急激に外部に放出されることで、基材変形が生じることがあり、致命的な品質の低下につながる。
特に、高強度を狙った密度の大きな木質基材を作製しようとすると、水蒸気が滞留しやすく、基材変形が生じやすい。
変形が生じた基材は、内部に空隙が生じている状態であると考えられ、外観だけでなく、機械強度と耐水性も損なわれやすい。
水分吸着材43としては、具体的にはシリカゲル、活性アルミナ、珪藻土、ゼオライト等の無機酸化物の粉末を用いることができるが、熱プレス時の高温下でも水分吸着性能が優れたゼオライトが特に好ましい。
【0025】
(水分吸着材43の配合量)
水分吸着材43の配合量は、木質材料と熱可塑性樹脂組成物とを合計した100質量部に対して2~15質量部である。配合量が2質量部に満たないと、木質基材20の変形抑制効果が十分に得られず、又、15質量部を超えると、木質基材20の機械強度と耐水性が顕著に低下する。
【0026】
(原料混合物40の加熱加圧の方法)
原料混合物40の加熱加圧は、各種公知の方法を用いることができるが、枠型を用いたプレス成型が好適である。
加熱温度は、通常、120℃~250℃であり、熱可塑性樹脂の融点以上であることが必要であるが、250℃を超えると、木質材料41の熱劣化が顕著に生じ場合がある。
加圧圧力は、通常は10~200kgf/cm2であり、所望する木質基材の密度により適宜設定した値を用いる。
木質基材20の密度や形状は、用途に応じて適宜決定されるが、密度については0.65~1.2g/ccが好ましく、更に0.95~1.2g/ccが好ましい。
【0027】
(木質基材20の製造方法)
まず、熱可塑性樹脂組成物42の製造方法は、次の通りである。
(1)低密度ポリエチレン樹脂(LDPE):90質量部
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂:10質量部
上記(1)~(2)を、バッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の熱可塑性樹脂組成物42を得る。
つぎに、木質材料41には、使用済み菌床を洗浄し、乾燥して木質材料41を得る。
水分吸着材43を加え、
図1に示すように、所定の質量比で混合することで、原料混合物40を得た。
この原料混合物40をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、木質基材20を製造する。
(化粧材10の製造方法)
製造した木質基材20の表面に、
図2に示すように、意匠層30を積層し、化粧材10を製造する。
【実施例0028】
実施例1の主な条件は、次の表1の通りである。
なお、次の表1には、実施例1の外、実施例2~実施例6、比較例1~比較例5の条件を併記している。
【0029】
【0030】
実施例1の熱可塑性樹脂組成物は、次の通りである。
(1)低密度ポリエチレン樹脂(LDPE):90質量部
(2)酸変性ポリオレフィン樹脂(商品名:ユーメックス100TS、三洋化成工業(株)製):10質量部
上記(1)~(2)を、バッチ式混錬装置で加熱混錬後、機械粉砕することで、粉体状の「熱可塑性樹脂組成物」を得た。
つぎに、木質材料には、使用済み菌床を洗浄し、乾燥した材料、水分吸着材には粉末状シリカゲル(商品名:マイクロド、(株)東海化学工業所 製)を用い、木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材=85/15/5の質量比で混合することで、原料混合物を得た。
この原料混合物をアルミ製の型枠に導入し、熱プレス装置で加熱加圧することで、実施例1の木質基材を得た(プレス条件:100kgf/cm2、200℃で10分、基材材厚:10mm)。
基材密度は、0.9g/ccである。
【0031】
(実施例2)
実施例2においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を実施例1の「85/15/5」から「85/15/10」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で、第2実施例の木質基材を得た。
基材密度は、0.9g/ccである。
(実施例3)
実施例3においては、実施例2の「粉末状シリカゲル」を「粉末状ゼオライト(商品名:ゼオラムA4、東ソー(株)製)」に置き換え、それ以外は実施例2と同様の方法で、実施例3の木質基材を得た。
基材密度は、0.9g/ccである。
【0032】
(実施例4)
実施例4においては、実施例3の基材密度「0.9g/cc」を「1.1g/cc」に変更し、それ以外は実施例3と同様の方法で、実施例4の木質基材を得た。
(実施例5)
実施例5においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を、実施例4の「85/15/10」から「85/15/5」に変更し、それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例5の木質基材を得た。
基材密度は、1.1g/ccである。
(実施例6)
実施例6においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を、実施例4の「85/15/10」から「60/40/10」に変更し、それ以外は実施例4と同様の方法で、実施例6の木質基材を得た。
基材密度は、1.1g/ccである。
【0033】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1の原料混合物から水分吸着材を除外した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の木質基材を得た。
基材密度は、0.9g/ccである。
(比較例2)
比較例2においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を、実施例3の「85/15/5」から「85/15/20」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の木質基材を得た。
基材密度は、0.9g/ccである。
【0034】
(比較例3)
比較例3においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を、実施例2の「85/15/5」から「85/15/20」に変更し、それ以外は実施例1と同様の方法で、比較例3の木質基材を得た。
基材密度は、0.9g/ccである。
(比較例4)
比較例4においては、比較例1の基材密度「1.1g/cc」を「0.6g/cc」に変更し、それ以外は比較例1と同様の方法で、比較例4の木質基材を得た。
(比較例5)
比較例5においては、原料混合物の質量比(木質材料/熱可塑性樹脂組成物/水分吸着材)を、実施例4の「85/15/10」から「97/3/10」に変更し、それ以外は実施例4と同様の方法で、比較例5の木質基材を得た。
基材密度は、1.1g/ccである。
【0035】
(木質基材の評価)
木質基材の物性評価は、次の3点で評価した。
(1)機械強度、(2)耐水性、(3)基材変形
(機械強度)
機械強度は、JISA5908に準拠する方法で曲げ強度を測定した。
測定値(単位:N/mm2)に対する機械強度の評価基準は、次の通り、「◎」「○」「△」「×」の4段階とし、「◎」「○」「△」を合格、「×」を不合格とした。
◎:18以上(合格)
○:13以上18未満(合格)
△:8以上13未満(合格)
×:8未満(不合格)
【0036】
(耐水性)
耐水性は、JISA5908に準拠する方法で吸水厚さ膨潤率を測定した。
測定値(単位:%)に対する評価基準は、次の通り、「○」「△」「×」の3段階とし、「○」「△」を合格、「×」を不合格とした。
○:8未満(合格)
△:8以上12未満(合格)
×:12以上(不合格)
【0037】
(基材変形)
基材変形の評価は、外観目視及び表面触覚により実施し、評価基準は次の通り、「○」「△」「×」の3段階とし、「○」「△」を合格、「×」を不合格とした。
○:外観、触覚の何れも基材変形が認められない(合格)
△:外観は基材変形を認めないが、触覚より僅かな表面凹凸が認められる(合格)
×:外観より表面フクレが認められる(不合格)
(評価結果)
木質基材の評価結果は、前掲の表1の通り、3点の物性評価のすべてが「合格」なのは、実施例1~6であり、比較例1~5は1個以上の不合格を含んでいた。
【0038】
(機械強度の評価結果)
機械強度が不合格なものは、比較例1~比較例5の5件であった。
比較例1は、原料混合物に水分吸着材を用いていないこと、比較例2及び比較例3は水分吸着剤の配合量が過剰であること、比較例4は基材密度が不足していること、比較例5は熱可塑性樹脂組成物の配合量が不足していることが原因と推測できる。
【0039】
(耐水性の評価結果)
耐水性が不合格なものは、比較例1~比較例3及び比較例5の4件であった。
比較例1は、原料混合物に水分吸着材を用いていないこと、比較例2及び比較例3は水分吸着剤の配合量が過剰であること、比較例5は熱可塑性樹脂組成物の配合量が不足していることが原因と推測できる。
【0040】
(基材変形の評価結果)
基材変形が不合格なものは、比較例1の1件であった。
比較例1は、原料混合物に水分吸着材を用いていないことが原因であり、熱プレス時に内部に滞留した水蒸気が吸着されず、プレス開放時に急激に放出されたためと推測できる。基材変形が生じた基材は、内部に空隙が生じている状態であると考えられ、前述の比較例1の木質基材の機械強度と耐水性とが悪化し、不合格となった原因であると考えられる。
【0041】
(実施例1~6の評価結果)
実施例1~6の評価結果は、3点の物性評価のすべてが「合格」であった。
実施例1~6の評価結果を比較すると、3点の物性評価のすべてが「○」ないし「◎」であるのは、実施例3、実施例4及び実施例6の3件であり、実施例4がベストモードである。
機械強度の評価結果に「△」を含むのは、実施例1及び実施例2の2件である。
これらは水分吸着剤を実施例3の「ゼオライト」から「シリカゲル」に置き換えたため、後述のとおり基材変形が悪化し、機械強度低下の原因となっていると推測できる。
【0042】
耐水性の評価結果に「△」を含むのは、実施例2の1件である。
水分吸着剤「シリカゲル」の配合量を、実施例1の「5部」から「10部」に増加させたことが原因と推測できる。
基材変形の評価結果に「△」を含むのは、実施例1、実施例2及び実施例5の3件である。
【0043】
実施例1及び実施例2では、水分吸着剤を実施例3の「ゼオライト」から「シリカゲル」に置き換えたことが原因と推測できる。
プレス温度付近の水分吸着量は、「シリカゲル」は「ゼオライト」に対して大幅に小さいため、プレス時の水蒸気の滞留量が大きくなり、基材変形が悪化したと推測できる。
実施例5では、実施例4の「ゼオライト」の配合量を「10部」から「5部」に減少させたことが原因と推測できる。