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特開2022-73177トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組
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  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図1
  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図2
  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図3
  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図4
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  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図6
  • 特開-トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073177
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】トルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182993
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】坂 啓太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来よりもより簡易で、かつ短期化可能なトルクセンサ製造技術、およびトルクセンサを提供する。
【解決手段】トルクセンサ10はトルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出するトルクセンサであり、内側構造体2、外側構造体5および両構造体2,5間を繋ぐブリッヂ6とからなり、内側構造体2は、厚さが外側構造体5ならびにブリッヂ6と等しい内側下半部3および内側下半部3に固定された内側上半部4とからなる。外側構造体5、ブリッヂ6、および内側下半部3からなる部分(可変部7)は鋼板製の基礎構造8を用いて形成され、本トルクセンサ10は内側上半部4が可変部7に固定された状態で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出するトルクセンサであって、
該トルクセンサは内側構造体、外側構造体、および両構造体間を繋ぐブリッヂとからなり、
該内側構造体は厚さが該外側構造体ならびに該ブリッヂと等しい内側下半部、および該内側下半部に固定された内側上半部とからなり、
該外側構造体、該ブリッヂおよび該内側下半部(以下「可変部」ともいう)は、鋼板製の基礎構造を用いて形成されており、
該内側上半部が該可変部に固定されている
ことを特徴とする、トルクセンサ。
【請求項2】
前記基礎構造は前記可変部の平面形状と同一形状の薄板状であることを特徴とする、請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記基礎構造が複数枚積層されて前記可変部を形成していることを特徴とする、請求項2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記内側上半部は削り出し加工によることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載のトルクセンサ。
【請求項5】
請求項1、2、3のいずれかに記載のトルクセンサを製造する方法であって、
前記可変部を一または複数の前記基礎構造を積層することにより形成し、
一方、前記内側上半部は別途形成し、
該可変部の内側下半部に該内側上半部を固定する
ことを特徴とする、トルクセンサ製造方法。
【請求項6】
トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出する、内側構造体、外側構造体および両構造体間を繋ぐブリッヂとからなるトルクセンサにおける耐荷重を、簡易に設計可能なトルクセンサ用部品組であって、該部品組は下記<部品A>および<部品B>からなり、用いる<部品A>(基礎構造)の数によって耐荷重設計可能であることを特徴とする、耐荷重設計用トルクセンサ部品組。
<部品A> 該外側構造体、該ブリッヂ、および、厚さが該外側構造体ならびに該ブリッヂと等しい内側構造体の下半部(内側下半部)からなる可変部を積層により形成するための、基礎構造。
<部品B> 該内側構造体の上半部(内側上半部)。
【請求項7】
前記基礎構造は前記可変部の平面形状と同一形状の薄板状であることを特徴とする、請求項6に記載の耐荷重設計用トルクセンサ部品組。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組に係り、特に、トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出するトルクセンサの製造簡易化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来のトルクセンサの構成例を示す説明図であり、図中、(a)は側断面図、(b)は平面図である。図示するように、従来のトルク由来の歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出する方式のトルクセンサ510は、内側構造体52、外側構造体55、および両構造体52、55間を繋ぐブリッヂ56とからなるが、製法としては、鋼材を削り出し加工することによって全体構造が形成される。トルクセンサ510の耐荷重はブリッヂ56の梁幅と厚さにより決まる。従来、所望の耐荷重仕様のトルクセンサの設計は、鋼材を一から削り出し加工して荷重に応じた形状を形成することにより行われていた。
【0003】
トルクセンサについては従来、技術的な提案も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、印加されるトルクに応じて歪みを生じる起歪部に歪センサを取付け、歪センサの検出値に基づきトルクを算出する装置の高精度化を目的として、1次側構造体―2次側構造体間に架け渡された金属製かつ梁状の起歪部(ブリッヂ)、起歪部におけるトルク中心軸に垂直な面に配置され起歪部の歪量を検出する薄膜型歪センサ、およびこれによって検出された歪量に基づき直接トルク計算を行う信号処理部を備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-11567号公報「トルク計測装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通りトルクセンサの耐荷重設計は、所望のの耐荷重に応じてブリッヂの幅と厚さ寸法を決め、その形状を一から削り出すことで対応していた。しかし、かかるオーダーメイド的あるいは一品製作的な製造方法には相応の技能・技術力が要求され、したがって製造時間も相応にかかり、決して製造容易なことではない。よってコスト低減にも限界がある。より簡易で、かつ短期化可能な製造技術が求められている。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、従来よりもより簡易で、かつ短期化可能なトルクセンサ製造技術、およびトルクセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、ブリッヂの梁の幅が一定の、積層して用いるトルクセンサ部材を鋼板により作製し、部材の積層数のみによって厚さを調整する方式により、所望の耐荷重仕様を簡単に設計・製造可能であることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〔1〕 トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出するトルクセンサであって、該トルクセンサは内側構造体、外側構造体、および両構造体間を繋ぐブリッヂとからなり、該内側構造体は厚さが該外側構造体ならびに該ブリッヂと等しい内側下半部、および該内側下半部に固定された内側上半部とからなり、該外側構造体、該ブリッヂおよび該内側下半部(以下「可変部」ともいう)は、鋼板製の基礎構造を用いて形成されており、該内側上半部が該可変部に固定されていることを特徴とする、トルクセンサ。
〔2〕 前記基礎構造は前記可変部の平面形状と同一形状の薄板状であることを特徴とする、請求項1に記載のトルクセンサ。
〔3〕 前記基礎構造が複数枚積層されて前記可変部を形成していることを特徴とする、請求項2に記載のトルクセンサ。
〔4〕 前記内側上半部は削り出し加工によることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載のトルクセンサ。
【0009】
〔5〕 請求項1、2、3のいずれかに記載のトルクセンサを製造する方法であって、前記可変部を一または複数の前記基礎構造を積層することにより形成し、一方、前記内側上半部は別途形成し、該可変部の内側下半部に該内側上半部を固定することを特徴とする、トルクセンサ製造方法。
〔6〕 トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出する、内側構造体、外側構造体および両構造体間を繋ぐブリッヂとからなるトルクセンサにおける耐荷重を、簡易に設計可能なトルクセンサ用部品組であって、該部品組は下記<部品A>および<部品B>からなり、用いる<部品A>(基礎構造)の数によって耐荷重設計可能であることを特徴とする、耐荷重設計用トルクセンサ部品組。
<部品A> 該外側構造体、該ブリッヂ、および、厚さが該外側構造体ならびに該ブリッヂと等しい内側構造体の下半部(内側下半部)からなる可変部を積層により形成するための、基礎構造。
<部品B> 該内側構造体の上半部(内側上半部)。
〔7〕 前記基礎構造は前記可変部の平面形状と同一形状の薄板状であることを特徴とする、請求項6に記載の耐荷重設計用トルクセンサ部品組。
【発明の効果】
【0010】
本発明のトルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組は上述のように構成されるため、これらによれば、従来よりもより簡易にかつ短時間で、種々の耐荷重のトルクセンサを設計・製造することができ、したがってコスト低減や短納期化の効果も得ることができる。
【0011】
つまり、本発明のトルクセンサ製造方法および耐荷重設計用トルクセンサ部品組を用いれば、耐荷重仕様の設計は、規格化された所定の一部品の積層数を調整することのみによって可能であり、特別な技能・技術も不要な簡便かつ効率のよい方式であり、したがって、十分な製造期間短縮およびコスト低減効果も見込める。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明トルクセンサの基本構成を示す説明図である(図中、(a)は側断面図、(b)は平面図)。
図2図1に示したトルクセンサの内側上半部の構成を示す説明図である(図中、(a)は側断面図、(b)は平面図)。
図3図1に示したトルクセンサの可変部の構成を示す説明図である(図中、(a)は側断面図、(b)は平面図)。
図4】本発明耐荷重設計用トルクセンサ部品組の構成を示す説明図である。
図5図4の耐荷重設計用トルクセンサ部品組によるトルクセンサ設計例を示す側断面視の説明図である(その1)。
図6図4の耐荷重設計用トルクセンサ部品組によるトルクセンサ設計例を示す側断面視の説明図である(その2)。
図7】従来のトルクセンサの構成例を示す説明図である(図中、(a)は側断面図、(b)は平面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明トルクセンサの基本構成を示す説明図である。また、
図2図1に示したトルクセンサの内側上半部の構成を示す説明図、図3図1に示したトルクセンサの可変部の構成を示す説明図である。いずれの図においても、図中の(a)は側断面図、(b)は平面図である。これらに示すように本トルクセンサ10はまず、トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出するトルクセンサであって、内側構造体2、外側構造体5、および両構造体2、5間を繋ぐブリッヂ6とからなる。そして内側構造体2は、厚さが外側構造体5ならびにブリッヂ6と等しい内側下半部3、および内側下半部3に固定された内側上半部4とからなる。外側構造体5、ブリッヂ6、および内側下半部3からなる部分を「可変部7」ともいうが、この可変部7は鋼板製の基礎構造8を用いて形成されており、本トルクセンサ10は内側上半部4が可変部7に固定されている形態で構成されている。以上が本発明トルクセンサ10の基本的な構成である。
【0014】
すなわち図1に示す本発明トルクセンサ10は、図3に示した外側構造体5・ブリッヂ6・内側下半部3からなる可変部7の上に、図2に示した内側上半部4が固定されてなるものであり、従来のような、鋼材からの削り出し加工を用いて全体形状が形成され、部品同士の結合を一切用いない構成とは異なり、複数の部分が相互に固定されることによってなされている構成である。また、内側構造体2は内側上半部4と、可変部7中の内側下半部3により構成される。
【0015】
可変部7と内側上半部4、両部分の間の固定方法は、接着、ねじ止めなど従来公知の方法を適宜用いればよい。要するに、検出トルク範囲の最大荷重を受けた場合であっても破損・変形しない耐荷重性を備えられる固定方法であれば、特に限定されない。
【0016】
図3に示すように可変部7は、鋼板製の基礎構造8を、一または複数枚用いて形成される。基礎構造8は、可変部7の平面形状と同一形状の薄板状である。また、厚さも同一・共通とすることが望ましい。異なる厚さのヴァリエーションを備えた基礎構造8の構成とすることも、本発明から除外されないが、製造にも設計時の使用にも複雑さが生じる。したがって、厚さを規格化することにより、耐荷重の設計における調整事項を、基礎構造8の枚数のみに単純化できるからである。
【0017】
図3では、三枚の基礎構造8が積層されて、可変部7が形成されている例を示している。この積層数は、追って詳述するように限定されない。基礎構造8の積層数によって、本トルクセンサ10の耐荷重を設計することができる。
【0018】
なお、基礎構造8が積層される場合、各基礎構造8、8間の固定方法も、接着、ねじ止めなど従来公知の方法を適宜用いればよい。要するに、検出トルク範囲の最大荷重を受けた場合であっても破損・変形しない耐荷重性を備えられる固定方法であれば、特に限定されない。
【0019】
図2に示す内側上半部4の作製方法は特に限定されないが、従来同様の削り出し加工を用いることで何ら問題ない。内側上半部4は、ブリッヂ6の梁の幅寸法を一定のものとして規格化することができる。
【0020】
以上説明したトルクセンサ10は、可変部7を、一または複数の基礎構造8を積層することにより形成し、一方、内側上半部4は別途形成し、可変部7の内側下半部3に該内側上半部4を固定することにより製造することができ、かかる製造方法も本発明の範囲内である。なお、一枚の基礎構造8を内側上半部4に固定し、その後、必要枚数の基礎構造8を積層するという方法でもよい。
【0021】
図4は、本発明耐荷重設計用トルクセンサ部品組の構成を示す側断面視の説明図である。図示するように本耐荷重設計用トルクセンサ部品組29は、トルクに応じて生じる歪みをブリッヂ回路による電圧差を用いて検出する、内側構造体・外側構造体・両構造体間を繋ぐブリッヂからなるトルクセンサにおける耐荷重を簡易に設計可能なトルクセンサ用部品組であって、
<部品A> 外側構造体・ブリッヂ・厚さが外側構造体ならびにブリッヂと等しい内側構造体の下半部(内側下半部)からなる可変部を積層により形成するための基礎構造28
<部品B> 内側構造体の上半部(内側上半部)24
からなることを、主たる構成とする。図示する基礎構造28の数は例示であり、5枚に限定されない。また、基礎構造28は可変部の平面形状と同一形状の薄板状とする。
【0022】
図5、6は、図4の耐荷重設計用トルクセンサ部品組によるトルクセンサ設計例を示す側断面視の説明図その1、その2である。いずれも、基礎構造28の積層数によって所望の可変部27、27Xが形成されている。その2では、その1の約3倍の積層数で基礎構造28が積層され、したがって約3倍の厚さの可変部27Xが形成されており、より大きい荷重に対する耐荷重性を備えたトルクセンサ210Xが得られている。このように、用いる<部品A>(基礎構造28)の数によって耐荷重設計が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のトルクセンサ、トルクセンサ製造方法、および耐荷重設計用トルクセンサ部品組によれば、従来よりもより簡易にかつ短時間で、種々の耐荷重のトルクセンサを設計・製造することができ、したがってコスト低減や短納期化の効果も得ることができる。したがって、トルクセンサ製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0024】
2…内側構造体
3…内側下半部
4、24…内側上半部
5…外側構造体
6…ブリッヂ
7、27、27X…可変部
8、28…基礎構造
10、210、210X…トルクセンサ
29…耐荷重設計用トルクセンサ部品組
52…内側構造体
55…外側構造体
56…ブリッヂ
510…トルクセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7