(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073201
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B43K 29/02 20060101AFI20220510BHJP
B43K 3/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B43K29/02 Z
B43K29/02 F
B43K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183031
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】福田 将弘
(57)【要約】
【課題】軟質部材を容易に着脱でき、また、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】筒体3の上端部に軸方向上方に開口する取付孔331を設け、取付孔331の内周面に内向突起332を形成し、軟質部材2の外周面は、大径部21と、大径部21の下方に一体に連設される小径部24と、大径部21と小径部24との間に形成される肩部23とからなり、小径部24の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝251と、案内溝251の上端部と周方向に直交する直交溝252と、を含む係合溝25を備え、係合溝25に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させた際、肩部23と筒体3の上端とが軸方向に当接するとともに、筒体3に対する軟質部材2の上下方向の移動を阻止してなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具の軸筒またはキャップ等の筒体の上端部に軟質部材を着脱自在に取り付ける軟質部材の取付構造であって、
前記筒体の上端部に軸方向上方に開口する取付孔を設け、前記取付孔の内周面に内向突起を形成し、
前記軟質部材の外周面は、大径部と、前記大径部の下方に一体に連設される小径部と、前記大径部と前記小径部との間に形成される肩部とからなり、前記小径部の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝と、前記案内溝の上端部と周方向に直交する直交溝と、を含む係合溝を備え、
前記係合溝に前記内向突起を係合させ前記軟質部材と前記筒体とを係合させた際、
前記肩部と前記筒体の上端とが軸方向に当接するとともに、前記筒体に対する前記軟質部材の上下方向の移動を阻止してなることを特徴とする軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記係合溝は、前記直交溝の終端部から軸方向上方に延びる固定溝を備え、前記固定溝の深さは前記直交溝の深さよりも深く、前記固定溝の底面と前記直交溝の底面の境界に段部が形成される請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記係合溝は、前記直交溝の終端部から軸方向下方に延びる脱落防止溝を備える請求項1又は2に記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。詳細には、筆記具の軸筒またはキャップ等の筒体の上端部に軟質部材を取り付ける軟質部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができ、装着された軟質部材を容易に予備の軟質部材に交換することができる熱変色性筆記具が開示されている。当該熱変色性筆記具の構成は、頭冠と、軸筒と、軟質部材と、予備軟質部材と、を備える。軸筒の第1の頭冠装着部は、頭冠の軸筒装着孔に螺合により着脱自在に装着される。軟質部材及び予備軟質部材の第2の頭冠装着部は、頭冠の軟質部材装着孔に螺合により着脱自在に装着される。予備軟質部材は、軸筒内部及び前記頭冠内部に収容される。軟質部材は予備軟質部材と交換可能である。当該熱変色性筆記具によれば、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができると共に、装着された軟質部材を、容易に予備の軟質部材又は摩擦部に交換することができる。
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、軟質部材を着脱するための工具等が不要であり手軽に着脱はできるものの、螺合という動作で着脱するには複数回軟質部材を回転させる必要があり、使用者にとっては手間がかかると感じるおそれがある。また、螺合時の回転量の不足により軟質部材を最後まで確実に螺合させなかった場合には、使用中にゆるんだり脱落したりするおそれがあり、摩擦の際に軟質部材がぐらつき、安定した適切な摩擦ができないおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような知見に鑑みてなされたものであり、軟質部材を着脱するための工具等が不要で、手間がかからず容易に着脱でき、また、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる軟質部材の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筆記具の軸筒またはキャップ等の筒体の上端部に軟質部材を着脱自在に取り付ける軟質部材の取付構造であって、前記筒体の上端部に軸方向上方に開口する取付孔を設け、前記取付孔の内周面に内向突起を形成し、前記軟質部材の外周面は、大径部と、前記大径部の下方に一体に連設される小径部と、前記大径部と前記小径部との間に形成される肩部とからなり、前記小径部の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝と、前記案内溝の上端部と周方向に直交する直交溝と、を含む係合溝を備え、前記係合溝に前記内向突起を係合させ前記軟質部材と前記筒体とを係合させた際、前記肩部と前記筒体の上端とが軸方向に当接するとともに、前記筒体に対する前記軟質部材の上下方向の移動を阻止してなることを要件とする。
【0007】
本発明によれば、筒体の上端部に軸方向上方に開口する取付孔を設け、取付孔の内周面に内向突起を形成し、軟質部材の外周面は、大径部と、大径部の下方に一体に連設される小径部と、大径部と小径部との間に形成される肩部とからなり、小径部の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝と、案内溝の上端部と周方向に直交する直交溝と、を含む係合溝を備え、係合溝に内向突起を係合させ軟質部材と筒体とを係合させることで、軟質部材を着脱するための工具等が不要で、手間がかからず容易に着脱できる。また、係合溝に内向突起を係合させ軟質部材と筒体とを係合させた際、肩部と筒体の上端とが軸方向に当接するとともに、筒体に対する軟質部材の上下方向の移動を阻止してなることで、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく、安定した適切な摩擦ができる。
【0008】
また、前記係合溝は、前記直交溝の終端部から軸方向上方に延びる固定溝を備え、前記固定溝の深さは前記直交溝の深さよりも深く、前記固定溝の底面と前記直交溝の底面の境界に段部が形成されることが好ましい。
【0009】
これによれば、固定溝に内向突起を係合させ軟質部材と筒体とを係合させた後に軟質部材を軸方向上方に引き抜く力を加えても、内向突起が段部によって軸方向に抜け止め係止され、軟質部材が容易に軸方向に移動することが無い。また、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく、より安定した適切な摩擦ができる。
【0010】
また、前記係合溝は、前記直交溝の終端部から軸方向下方に延びる脱落防止溝を備えることが好ましい。
【0011】
これによれば、固定溝に内向突起を係合させ軟質部材と筒体とを係合させた後に、軟質部材を軸方向上方に引き抜く大きな力が加わり、内向突起と段部による軸方向の抜け止め係止が解除されてしまった場合でも、内向突起は脱落防止溝に係合される。この状態からは軟質部材に回転方向の力が加わっても内向突起が直交溝に入ることがないため、筒体から軟質部材が脱落するおそれがない。また、固定溝と脱落防止溝は軸方向の延長線上に形成されているため、前述のように内向突起と段部による軸方向の抜け止め係止が解除されてしまった場合でも、再度軟質部材に軸方向下方の力を加えれば抜け止め係止状態にすることが容易で、筒体と軟質部材の正規の係合状態に容易に戻すことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、軟質部材を着脱するための工具等が不要で、手間がかからず容易に着脱でき、また、摩擦の際に軟質部材がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる軟質部材の取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態における筆記具を示す正面図である。
【
図4】本実施形態の軟質部材と頭冠を装着する前の状態を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の軟質部材と頭冠を装着する第1の工程を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態の軟質部材と頭冠を装着する第2の工程を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の軟質部材と頭冠を装着する第3の工程を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態の軟質部材を頭冠から引き抜いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明で、筒体において、「上」とは取付孔331側を指し、「下」とはその反対側を指す。また、本発明で、軟質部材2において、「下」とは取付孔331への挿入側を指し、「上」とはその反対側を指す。また、本実施形態の熱変色性筆記具1において、「上」とは軟質部材側を指し、「下」とはペン先側を指す。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1乃至
図8に、本発明の実施形態を示す。
図1は、本発明の実施形態における筆記具を示す正面図であって、ペン先5(筆記体)が突出している状態を示す図である。
図2は、本実施形態の軟質部材2の斜視図であり、
図3は、本実施形態の頭冠33の縦断面斜視図である。
図4は、本実施形態の軟質部材2と頭冠33を装着する前の状態を示す斜視図である。
図5乃至
図7は、本実施形態の軟質部材2と頭冠33を装着する工程を順に示す斜視図である。
図8は本実施形態の軟質部材2を頭冠33から引き抜いた状態を示す斜視図である。
【0017】
図1に示す本実施形態の筆記具は、出没式のボールペンであり、前端に開口を有する筒体3(言い換えれば軸筒)を備えている。当該筒体3は、先細状の円筒体からなる前軸31と、当該前軸31の後端部と螺合または嵌合により取り付けられる円筒状の後軸32と、当該後軸32の後端部と螺合または嵌合により取り付けられる円筒状の頭冠33と、からなる。また、本実施形態の筆記具は、筆記体(不図示)の内部に熱変色性インキを備える熱変色性筆記具1である。筒体3の内部には、筒体3の軸方向に移動可能な筆記体が交換可能に収容されている。筆記体は、上方側にインク収容筒を有しており、当該インク収容筒の下方端にチップホルダー及びペン先5が固定されている。チップホルダー及びペン先5は、筆記体の移動に伴って、前軸31の前端開口から出没可能となっている。
【0018】
本実施形態の出没機構(不図示)は、回転カム機構を用いたサイドスライド式出没機構である。当該出没機構は、後軸32の上部内面に形成されたカム部と、該カム部に係合し且つ筆記体の後端に当接する回転部材と、該回転部材に係合し且つスライド孔より径方向外方に突出する操作部であるクリップ4と、前軸31内に収容され且つ筆記体を上方に付勢するコイルバネ(例えば圧縮コイルスプリング)とからなる。また、本実施形態の出没機構は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部であるクリップ4を下方にスライド操作するダブルノック式である。具体的には、筆記体が没入している状態でクリップ4が下方にスライド移動されると、筆記体が下方側に移動され、チップホルダーの下方部(ペン先5)が前軸31の開口から突出する。そして、当該突出状態が、不図示のカム部と回転部材との係止作用によって維持される。
【0019】
チップホルダーの下方部が突出している状態(
図1の状態)でクリップ4が下方にスライド移動されると、不図示のカム部と回転部材の係止状態が解除される。これにより、コイルバネの作用により、チップホルダーが上方側に戻され、チップホルダーの下方部が前軸31の開口から退没する。
【0020】
出没機構は、これ以外にも、筒体3上方に設けた操作部を下方に押圧することによりペン先が出没する後端ノック式、筒体3側壁外面より突出する操作部を径方向内方に押圧することによりペン先が出没するサイドノック式、筒体3上方の操作部を回転操作することによりペン先が出没する回転式等が挙げられる。
【0021】
・筆記体
筆記体は、ペン先5と、該ペン先5が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管と、該インキ収容管内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。本実施の形態の熱変色性筆記具1に適用される熱変色性インキ組成物を収容した筆記体は、筒体3内に1本収容されるが、本発明は、筒体3内に複数本の筆記体を備える多芯筆記具にも適用できる。
【0022】
ペン先5は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、またはボールペンチップの上方外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成が挙げられる。また、インキ収容管の後端開口部に、インキ収容管と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓が取り付けられる。ペン先5の内部には、前端のボールを下方に押圧するスプリングが収容される。スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、スプリングの下方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先5の前端からのインキの漏出及びインキの蒸発を防止できる。
【0023】
・熱変色性インキ
本発明において、熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0024】
また、可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が好適に用いられる。
【0025】
・軟質部材
以下、
図2、
図4乃至
図8を参照して、本実施形態の軟質部材2について説明する。熱変色性筆記具1は軟質部材2を備える。軟質部材2は、筆記具の軸筒またはキャップ等の筒体3の上端部に着脱自在に設けられる。軟質部材2の大径部21の上方には摩擦部22を備える。本実施の形態において、軟質部材2は内部に熱変色性インキを内蔵し且つ該熱変色性インキを筆記体より吐出可能な熱変色性筆記具1の後端に設ける構成が好ましい。
【0026】
本実施の形態において、軟質部材2を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)又は2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物等が挙げられる。軟質部材2を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料が好ましい。軟質部材2は筆記具と別体の任意形状の部材である摩擦具とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に軟質部材2を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
【0027】
軟質部材2は、ポリプロピレン樹脂及びスチレン系熱可塑性エラストマーの混合物、またはポリプロピレン樹脂及びポリプロピレン系熱可塑性エラストマーの混合物から形成されてもよい。混合物の配合比率がそれぞれ重量比で1:1~1:4であり、研磨剤、可塑剤、充填剤を含有せず、JIS K6251に規定されたデュロメータ硬度Aが70°~100°となる材質からなり、JIS S 6050-2002に規定する鉛筆描線の消し能力(消字率)が70%以下のものである可塑剤を含有しない低摩耗性の弾性材料から形成される。それによって軟質部材2は、擦過時に消しカスが生じにくく、熱変色性も優れているので有効である。
【0028】
軟質部材2は、摩擦部22による摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料から形成されるが、摩擦する面の種類若しくは状態又は摩擦の方法によっては、少しずつ摩耗又は破損する可能性がある。摩耗又は破損した軟質部材2では適切な摩擦ができず、熱変色性インキの筆跡を摩擦し、その際に生じる摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色させることが困難となるおそれがある。
【0029】
また、軟質部材2は、摩擦する面に鉛筆等で筆記された筆跡があった場合又は摩擦する面が汚れていた場合は、鉛筆等の芯のカス又は汚れが軟質部材2に転写され、軟質部材2が汚損する可能性がある。汚損した軟質部材2では、別の紙面等を摩擦した際に軟質部材2に付着した汚れ等を紙面に転写してしまい、紙面を汚してしまうおそれがある。
【0030】
軟質部材2が摩耗若しくは破損又は汚損等した場合に、摩耗若しくは破損又は汚損等した軟質部材2を新しい軟質部材2に交換することで再度適切な摩擦をすることが可能となる。
【0031】
図2又は
図4に示すように、本実施形態の軟質部材2の外周面は、大径部21と、大径部21の下方に一体に連設される小径部24と、大径部21と小径部24との間に形成される肩部23とからなり、小径部24の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝251と、案内溝251の上端部と周方向に直交する直交溝252と、を含む係合溝25を備える。係合溝25に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させた際、肩部23と筒体3の上端とが軸方向に当接するとともに、筒体3に対する軟質部材2の上下方向の移動を阻止することができる。
【0032】
また、本実施形態において、係合溝25は、直交溝252の終端部から軸方向上方に延びる固定溝253を備え、固定溝253の深さは直交溝252の深さよりも深く、固定溝253の底面と直交溝252の底面の境界に段部254が形成される。
【0033】
また、本実施形態において、係合溝25は、直交溝252の終端部から軸方向下方に延びる脱落防止溝255を備える。
【0034】
また、本実施形態において、案内溝251の底面から小径部24の外径までの高さ(言い換えれば、案内溝251の深さ)は、後述する内向突起332の高さ(言い換えれば、内向突起332の径方向内方への出長さ)よりも大きい。即ち、軟質部材2と筒体3(頭冠33)とを係合させる際に、内向突起332の径方向内方の先端は、案内溝251の底面に接触しない状態か、又はわずかに接触するがほとんど抵抗がない状態で摺動しながら係合させることができる。これにより、案内溝251に内向突起332を容易に挿入させることができる。
【0035】
また、本実施形態において、直交溝252の底面から小径部24の外径までの高さ(言い換えれば、直交溝252の深さ)は、後述する内向突起332の高さ(言い換えれば、内向突起332の径方向内方への出長さ)よりも小さい。即ち、軟質部材2と筒体3(頭冠33)とを係合させる際に、内向突起332の径方向内方の先端は、直交溝252の底面に接触して抵抗がある状態で摺動しながら係合させることができる。これにより、軟質部材2を筒体3に係合した後に、内向突起332が不意に案内溝251に戻ってしまうことを防ぐことができる。その結果、軟質部材2が脱落してしまうことを防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態において、固定溝253の底面から小径部24の外径までの高さ(言い換えれば、固定溝253の深さ)は、後述する内向突起332の高さ(言い換えれば、内向突起332の径方向内方への出長さ)よりも大きい。即ち、固定溝253の深さは直交溝252の深さよりも深く、固定溝253の底面と直交溝252の底面の境界に段部254が形成される。これにより、内向突起332の径方向内方の先端部は、段部254によって係止され、軟質部材2と筒体3(頭冠33)との係合は完了する。内向突起332の径方向内方の先端部は、段部254によって係止(軸方向に抜け止め係止)されることで、内向突起332が容易に直交溝252に戻ることがなく、軟質部材2と筒体3が固定された状態を維持することができる。なお、軟質部材2と筒体3(頭冠33)との係合が完了した状態においては、内向突起332の径方向内方の先端は、固定溝253の底面に接触しない状態か、又はわずかに接触する状態である。
【0037】
軟質部材2は、軸心方向に空気流路を備えることが好ましい。これにより、軟質部材2を幼児が誤って飲み込んだ場合でも、軟質部材2の空気流路が通気可能となり気道を確保することができ、窒息事故を回避できる。
【0038】
軟質部材2の大径部21の外面には、二面幅部やローレット部よりなる回転操作部を形成してもよい。回転操作部を把持し操作することにより、筒体3と軟質部材2との容易な着脱が可能になる。回転操作部とは、例えば、スパナ掛け可能な6角形や8角形等の二面幅部、又はローレット部等を挙げることができる。
【0039】
・筒体
図1に示すように、本実施形態の熱変色性筆記具1は、先細状の円筒体からなる前軸31と、当該前軸31の後端部と螺合または嵌合により取り付けられる円筒状の後軸32と、当該後軸32の後端部と螺合または嵌合により取り付けられる円筒状の頭冠33と、からなる筒体3を備えている。本実施形態においては、
図3に示すように、頭冠33は連結部333によって後軸32の後端部(不図示)と嵌合によって連結される。前軸31の前端には、筆記体のペン先5が突出可能な開口が軸方向に貫設されている。筒体3は、合成樹脂(例えば、ポリカーボネイト等)または金属により形成される。
【0040】
図3及び
図4に示すように、筒体3は上端部に軸方向上方に開口する取付孔331を設け、取付孔331の内周面には内向突起332が形成される。本実施形態においては、内孔突起は径方向に対向する2か所に設けられているが、少なくとも1か所設けられてあればよい。前述の軟質部材2の係合溝25に内向突起332を係合させて、筒体3に軟質部材2を装着する。軟質部材2と筒体3とを係合させた際、肩部23と筒体3の上端とが軸方向に当接するとともに、筒体3に対する軟質部材2の上下方向の移動を阻止してなる。また、筒体3は筆記具のキャップであってもよい。この場合、取付孔331はキャップの閉塞端側に形成される。
【0041】
以上のような構成の熱変色性筆記具1は、以下のように作用する。
【0042】
本発明によれば、筒体3の上端部に軸方向上方に開口する取付孔331を設け、取付孔331の内周面に内向突起332を形成し、軟質部材2の外周面は、大径部21と、大径部21の下方に一体に連設される小径部24と、大径部21と小径部24との間に形成される肩部23とからなり、小径部24の外周面に、軸方向下方に開口し軸方向上方に延びる案内溝251と、案内溝251の上端部と周方向に直交する直交溝252と、を含む係合溝25を備え、係合溝25に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させることで、軟質部材2を着脱するための工具等が不要で、手間がかからず容易に着脱できる。また、係合溝25に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させた際、肩部23と筒体3の上端とが軸方向に当接するとともに、筒体3に対する軟質部材2の上下方向の移動を阻止してなることで、摩擦の際に軟質部材2がぐらつくことがなく、安定した適切な摩擦ができる。
【0043】
また、係合溝25は、直交溝252の終端部から軸方向上方に延びる固定溝253を備え、固定溝253の深さは直交溝252の深さよりも深く、固定溝253の底面と直交溝252の底面の境界に段部254が形成されることより、固定溝253に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させた後に軟質部材2を軸方向上方に引き抜く力を加えても、内向突起332が段部254によって軸方向に抜け止め係止され、軟質部材2が容易に軸方向に移動することが無い。また、摩擦の際に軟質部材2がぐらつくことがなく、より安定した適切な摩擦ができる。
【0044】
係合溝25は、直交溝252の終端部から軸方向下方に延びる脱落防止溝255を備えることより、固定溝253に内向突起332を係合させ軟質部材2と筒体3とを係合させた後に、軟質部材2を軸方向上方に引き抜く大きな力が加わり、内向突起332と段部254による軸方向の抜け止め係止が解除されてしまった場合でも、内向突起332は脱落防止溝255に係合される。この状態からは軟質部材2に回転方向の力が加わっても内向突起332が直交溝252に入ることがないため、筒体3から軟質部材2が脱落するおそれがない。また、固定溝253と脱落防止溝255は軸方向の延長線上に形成されているため、前述のように内向突起332と段部254による軸方向の抜け止め係止が解除されてしまった場合でも、再度軟質部材2に軸方向下方の力を加えれば抜け止め係止状態にすることが容易で、筒体3と軟質部材2の正規の係合状態に容易に戻すことができる。
【0045】
以上の通り、本発明の軟質部材2の取付構造によれば、軟質部材2を着脱するための工具等が不要で、手間がかからず容易に着脱でき、また、摩擦の際に軟質部材2がぐらつくことがなく安定した適切な摩擦ができる軟質部材2の取付構造を提供できる。
【符号の説明】
【0046】
1 熱変色性筆記具
2 軟質部材
21 大径部
22 摩擦部
23 肩部
24 小径部
25 係合溝
251 案内溝
252 直交溝
253 固定溝
254 段部
255 脱落防止溝
3 筒体
31 前軸
32 後軸
33 頭冠
331 取付孔
332 内向突起
333 連結部
4 クリップ
5 ペン先