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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073261
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/16 20060101AFI20220510BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B65H9/16
B65H5/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183132
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 男二
【テーマコード(参考)】
3F049
3F102
【Fターム(参考)】
3F049AA02
3F049CA03
3F049DA12
3F049LA07
3F049LB03
3F102AA11
3F102AB01
3F102BA02
3F102BB04
3F102BB05
3F102EA06
(57)【要約】
【課題】厚みや材質等が大きく異なる記録媒体を搬送する場合であっても、搬送不良やシワ・ヨレを発生し難くして搬送可能にする。
【解決手段】記録媒体P1,P2に画像を記録する記録部と、記録部に搬送される記録媒体P1,P2の搬送方向D1に沿って設けられた突き当て部と、記録媒体P1,P2を搬送可能なローラ対を形成する斜送ローラ32およびピンチローラ60を有し、記録媒体P1,P2を搬送方向D1に対して傾斜した方向に搬送し、記録媒体P1,P2の搬送方向D1と交差する方向の端部を突き当て部に突き当てながら記録媒体P1,P2を記録部に向けて搬送する搬送部と、を備える。ピンチローラ60は、ピンチローラ60の最大外径である第1外径を有する第1径部61Aと、第1外径より小さい第2外径を有する第2径部62Aと、を有し、少なくとも第1径部61Aは弾性部材で形成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記記録部に搬送される前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられた突き当て部と、
前記記録媒体を搬送可能なローラ対を形成する駆動ローラおよび従動ローラを有し、前記記録媒体を前記搬送方向に対して傾斜した方向に搬送し、前記記録媒体の前記搬送方向と交差する方向の端部を前記突き当て部に突き当てながら前記記録媒体を前記記録部に向けて搬送する搬送部と、を備え、
前記従動ローラは、前記従動ローラの最大外径である第1外径を有する第1径部と、前記第1外径より小さい第2外径を有する第2径部と、を有し、少なくとも前記第1径部は弾性部材で形成されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1径部は、第1弾性率を有し、
前記第2径部は、前記第1弾性率より大きい第2弾性率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第1径部は、回転軸方向に第1幅を有し、
前記第2径部は、前記回転軸方向に前記第1幅より長い第2幅を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記従動ローラは、前記第1径部を有する外輪と、前記外輪とは別部材からなり前記第2径部を有する内輪とを有し、前記外輪は前記内輪よりも弾性率の小さい部材からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記内輪は、外周部に周方向に沿った溝を有し、
前記外輪は、前記溝に組み付けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1径部および前記第2径部は、一体形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ライン方式で記録を行うインクジェット記録装置として適用可能な記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固定された記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体へ画像を記録する、所謂、ライン方式のインクジェット記録装置が利用されている。このようなライン方式のインクジェット記録装置は、記録媒体への記録位置のズレを防止する目的で、記録媒体の搬送位置を規制する規制手段を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された記録装置は、規制手段として、記録媒体の搬送方向に平行になるように設けた突き当て板と、搬送方向の直交方向に対して回動中心が傾斜するように設けた斜送ローラとを備え、斜送ローラによって記録媒体を突き当て板へ向けて斜めに移動させ、さらに、記録媒体の側端部を突き当て板に沿わせて搬送することで、記録媒体の搬送位置を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-44066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の記録装置では、厚みや材質等が大きく異なる記録媒体を使用すると(例えば薄い紙と、それよりもかなり厚いプラスチックカードとを同じ装置で使用すると)、薄い紙ではシワやヨレを発生する可能性があり、プラスチックカードでは搬送不良を起こす可能性があった。
【0006】
本発明は、厚みや材質等が大きく異なる記録媒体を搬送する場合であっても、搬送不良やシワ・ヨレを発生し難くして搬送可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、記録媒体に画像を記録する記録部と、前記記録部に搬送される前記記録媒体の搬送方向に沿って設けられた突き当て部と、前記記録媒体を搬送可能なローラ対を形成する駆動ローラおよび従動ローラを有し、前記記録媒体を前記搬送方向に対して傾斜した方向に搬送し、前記記録媒体の前記搬送方向と交差する方向の端部を前記突き当て部に突き当てながら前記記録媒体を前記記録部に向けて搬送する搬送部と、を備え、前記従動ローラは、前記従動ローラの最大外径である第1外径を有する第1径部と、前記第1外径より小さい第2外径を有する第2径部と、を有し、少なくとも前記第1径部は弾性部材で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の記録装置によれば、厚みや材質等が大きく異なる記録媒体を搬送する場合であっても、搬送不良やシワ・ヨレを発生し難くして搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態における記録装置の斜視図である。
図2図1の記録装置の搬送部の斜視図である。
図3図1の記録装置の搬送部の上視図である。
図4】斜送ローラ周辺の上視図である。
図5図4の斜送ローラ周辺をV1方向から見た正面図である。
図6】(a)はピンチローラの外輪の上視図、(b)はピンチローラの外輪の正面図、(c)はピンチローラの内輪の上視図、(d)はピンチローラの内輪の正面図、(e)はピンチローラの上視図、(f)はピンチローラの正面図である。
図7】記録媒体によるピンチローラの形状変化を示した模式図であり、(a)は薄い記録媒体の場合、(b)は厚い記録媒体の場合である。
図8】斜送ローラとピンチローラの内輪との間隔と、記録媒体Pの厚みとの関係を示した模式図である。
図9】第1の実施形態における記録媒体Pの厚みと搬送力との関係を示したグラフである。
図10】本発明の第2の実施形態における搬送部の上視図である。
図11】第2の実施形態の斜送ローラおよびピンチローラを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図12】第2の実施形態における記録媒体Pの厚みと搬送力との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、図1図9を参照しながら詳細に説明する。本発明の記録装置は、断続的に搬送される紙やカードなどの記録媒体に対して、インクを吐出する記録ヘッドを用いて画像を記録する、所謂、ライン方式のインクジェット記録装置である。
【0011】
[記録装置]
本発明の記録装置1であるインクジェット記録装置は、図1に示すように、記録装置1に画像情報を送るためのパーソナルコンピュータ(ホスト装置)100に接続される。紙やカードなどの記録媒体Pは、後述する搬送部30によって矢印で示す搬送方向D1に搬送される。記録装置1には、図3に示すように、記録部を構成する4つの記録ヘッド10K,10C,10M,10Yが記録媒体Pの搬送方向D1に沿って並んで配置されている。それぞれの記録ヘッド10K,10C,10M,10Yは、記録媒体Pの幅方向に延在する長尺なライン型ヘッドであり、インクを吐出可能な複数のノズルが搬送方向D1と交差(本実施形態の場合は、直交)する方向に配列されることによって、ノズル列が形成されている。それぞれの記録ヘッド10K,10C,10M,10Yにおけるノズル列の長さは、記録媒体Pの記録可能な最大幅よりも長い。記録ヘッド10K,10C,10M,10Yからは、それぞれブラック,シアン,マゼンタ,イエローのインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド10K,10C,10M,10Yは固定されており、それらの下方を搬送方向D1に沿って断続的に搬送される記録媒体Pに対してインクを吐出することにより記録媒体Pに画像を記録し、例えば、多数枚の名刺を高速で作成することができる。
【0012】
[搬送部]
記録媒体Pを搬送方向D1に搬送するための搬送部30は、図2および図3に示すように、搬送ベルト31と斜送ローラ(駆動ローラ)32とを含む。搬送ベルト31は、プーリ41,ベルト42,プーリ43によって形成される動力伝達系を介して、搬送モータ35によって駆動される。斜送ローラ32に対しては、プーリ43に取り付けられるプーリ44,ベルト45などによって形成される動力伝達系を介して、搬送ベルト31の駆動力が伝達される。この斜送ローラ32の動力伝達系には不図示のクラッチが備えられており、そのクラッチによって、斜送ローラ32に対する駆動力が伝達および遮断される。搬送ベルト31の上方には、搬送ベルト31との間で記録媒体Pを挟む複数のピンチローラ36が配備されている。
【0013】
斜送ローラ32は、その回動中心C1が図2および図4に示すように搬送方向D1の直交方向に対して傾斜しており、搬送方向D1に対して記録媒体Pを斜めに搬送する。斜送ローラ32の上方には、斜送ローラ32と対を成して記録媒体Pを挟むピンチローラ(従動ローラ)60が配備されている。即ち、搬送部30は、記録媒体Pを搬送可能なローラ対を形成する斜送ローラ32およびピンチローラ60を有している。
【0014】
ピンチローラ60は、図4に示すように、両端が支持されたコイルばねからなるスプリング38によって回転自在に軸支されている。これによりピンチローラ60は、図5に示すようにスプリング38によって斜送ローラ32に押し付けられる方向に付勢され、かつ、スプリング38の変形を伴って全方向に変位可能に軸支されている。ピンチローラ60の回動中心C2は、斜送ローラ32の回動中心C2と平行に設けられており、斜送ローラ32と同様に搬送方向D1の直交方向に対して傾斜している。
【0015】
斜送ローラ32は、その回動中心C1が搬送方向D1の直交方向に対して傾斜しているため、給紙トレイ3(図1参照)から1枚ずつピックアップされた記録媒体Pは、突き当て板(突き当て部)40に向かうように斜めに、即ち、搬送方向D1に対して傾斜した方向に搬送される。突き当て板40は、記録ヘッド10K,10C,10M,10Yに搬送される記録媒体Pの搬送方向D1に沿って設けられている。
【0016】
その後、記録媒体Pの幅方向(搬送方向D1と交差する方向)の端部が突き当て板40に突き当てられると、記録媒体Pは突き当て板40に沿うように突き当てられながら記録ヘッド10K,10C,10M,10Yに向けて搬送されて、位置および姿勢が規制される。したがって、斜送ローラ32、ピンチローラ60、および突き当て板40は、記録媒体Pの位置を規制するための位置規制部として機能する。また、記録媒体Pは、突き当て板40によって位置決めされた後、搬送ベルト31によって搬送方向D1へ搬送される。搬送ベルト31には複数の吸引孔31Aが形成されており、その吸引孔31Aから空気を吸引することにより、搬送ベルト31上に位置する記録媒体Pを吸着保持したまま搬送方向D1に搬送する。
【0017】
図2に示すように、搬送ベルト31によって回転される従動軸39には、コードホイール21が設けられており、そのコードホイール21の回転に応じてエンコーダ22がパルスを発生する。端部検知センサ23が記録媒体Pの先端を検知すると、エンコーダ22が所定数のパルスを出力し、記録媒体Pの記録位置に合わせて記録ヘッド10K,10C,10M,10Yからインクが吐出され画像が記録される。その後、端部検知センサ23が記録媒体Pの後端を検知すると、エンコーダ22が所定数のパルスを出力して記録が終了する。その後、画像が記録された記録媒体Pは搬送方向D1に排出される。
【0018】
以上が記録媒体Pの給紙から排出までの一連の流れである。
【0019】
[ピンチローラ]
本発明で使用されるピンチローラ60は、回転軸と直交する方向に外径が異なる領域を少なくとも2つ有する。具体的には、図6(e),(f)に示すように、ピンチローラ60は、外輪61と、外輪61とは別部材の内輪62とで構成されている。図6(a),(b)に示すように、外輪61は、略円環形状で、外径部として第1径部61Aを有している。第1径部61Aでは、外径はピンチローラ60の最大外径である第1外径d1、回転軸方向の幅は第1幅W1、弾性率は第1弾性率E1としている。図6(c),(d)に示すように、内輪62は、中心にスプリング38を通過させる貫通穴62Bを有する略円板形状で、外径部として第2径部62Aを有している。第2径部62Aでは、外径は第2外径d2、回転軸方向の幅は第2幅W2、弾性率は第2弾性率E2としている。
【0020】
外輪61の第1外径d1は、内輪62の第2外径d2より大きくなるように設定されている。即ち、第1外径d1>第2外径d2となる。また、外輪61の第1幅W1は、内輪62の第2幅W2より短くなるように設定されている。即ち、第1幅W1<第2幅W2となる。更に、内輪62は、外周部に周方向に沿った溝62Cを有している。外輪61は、溝62Cに組み付けられている。ここで、内輪62において、第2幅W2のうちの溝62C以外の部分の長さを幅W3とすると、第1幅W1+幅W3=第2幅W2となるようにする。即ち、外輪61の第1幅W1は、内輪62の溝62Cと同幅に設定されている。
【0021】
外輪61は弾性部材で形成され、内輪62は外輪61よりも硬い素材(少なくとも、外輪61よりも弾性率が高い素材)で形成されている。即ち、外輪61の第1弾性率E1は、内輪62の第2弾性率E2に対して、第1弾性率E1<第2弾性率E2となるように構成されている。外輪61を形成する弾性部材としては、従来より公知の天然ゴム、合成ゴム、スポンジ、ウレタンフォーム、フェルト、レザー、フィルム、プラスチック等が利用でき、本実施形態では、外輪61をゴムで形成し、内輪62をプラスチックで形成している。このような構成とすることで、図7(a)に示すように、例えば、薄紙のように厚みの小さい記録媒体P1に対しては外輪61のみが接触し、図7(b)に示すように、例えば、厚いプラスチックカードのように厚みの大きい記録媒体P2に対しては、圧縮された外輪61と内輪62との両方が接触するように設定できる。外輪61が記録媒体Pと接触して潰れた際の潰れた部分の外径は、内輪62の第2外径d2と一致する。
【0022】
また、図8に示すように、斜送ローラ32と内輪62との隙間をt1、記録媒体Pの厚みをt2とすると、記録媒体Pの搬送力は、その厚みによって次のように変化する。
(i)0<t2<t1のとき
記録媒体P(P1)は、図6(a)の外輪61の第1径部61A、即ち、第1幅W1の領域に接触して搬送され、記録媒体Pの厚みと搬送力との関係は、図9に示す領域Ar1で推移する。
(ii)t1≦t2のとき
記録媒体P(P2)は、図6(e)の外輪61の第1径部61Aおよび内輪62の第2径部62Aの両方、即ち、外輪61の第1幅W1と内輪62の幅W3を合わせた第2幅W2の全領域に接触して搬送され、記録媒体Pの厚みと搬送力との関係は、図9に示す領域Ar2で推移する。
【0023】
このように、記録媒体Pと接触するピンチローラ60の幅が、記録媒体Pの厚みに応じて変化するように構成したことで、t1=t2となる点を境に搬送力を変化させることができる(図9参照)。これにより、薄い記録媒体P1(例えば、紙)に対しては搬送力を抑制し、シワ・ヨレなどの発生を防止することができる。また、厚い記録媒体P2(例えば、プラスチックカード)に対しては大きな搬送力が確保できるので、搬送不良を防止することが可能となる。
【0024】
上述したように本実施形態の記録装置1によれば、ピンチローラ60は、最大外径である第1外径d1を有する外輪61は弾性部材で形成されているので、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良を抑制する効果がある。
【0025】
また、本実施形態の記録装置1によれば、ピンチローラ60は、第1弾性率E1を有する第1径部61Aと、第1弾性率E1より大きい第2弾性率E2を有する第2径部62Aと、を有するので、t1=t2となる点を境に搬送力をより大きく変化させることができる。このため、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良をより効果的に抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態の記録装置1によれば、第1径部61Aは第1幅W1を有し、第2径部62Aは第1幅W1より長い第2幅W2を有するので、t1=t2となる点を境に搬送力をより大きく変化させることができる。このため、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良をより効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態の記録装置1によれば、ピンチローラ60は、外輪61と、外輪61とは別部材からなる内輪62とを有し、外輪61は内輪62よりも弾性率の小さい部材からなるので、第1径部61Aの第1弾性率E1と第2径部62Aの第2弾性率E2とを大きく異ならせることができる。このため、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良をより効果的に抑制することができる。
【0028】
また、本実施形態の記録装置1によれば、内輪62は外周部に周方向に沿った溝62Cを有し、外輪61は溝62Cに組み付けられているので、外輪61と内輪62とを例えば、接着や溶着などにより固定する場合に比べて、組立作業を簡易化することができる。
【0029】
尚、上述した本実施形態における記録装置1では、第1幅W1は第2幅W2より短い場合について説明したが、これには限られず、例えば、第1幅W1は第2幅W2と同じであってもよい。この場合も、t1=t2となる点を境に搬送力をより大きく変化させることができるので、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良を抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態における記録装置1では、外輪61を内輪62の溝62Cに組み付ける場合について説明したが、これには限られず、外輪61を内輪62の外周部に接着、溶着、ねじ止め等の既知の方法により固定するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施形態における記録装置1では、外輪61の第1弾性率E1が、内輪62の第2弾性率E2に対して、第1弾性率E1<第2弾性率E2となる場合について説明したが、これには限られず、内輪62を外輪61と同じ素材で形成し、外輪61の第1弾性率E1を、内輪62の第2弾性率E2に対して、第1弾性率E1=第2弾性率E2となるように構成してもよい。この場合も、t1=t2となる点を境に搬送力をより大きく変化させることができるので、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良を抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態における記録装置1では、記録装置1としてインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、これには限られず、インクジェット以外の他の方法による記録装置に適用してもよい。
【0033】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を、図10図12を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、ピンチローラ160の第1径部160Aおよび第2径部160Bが一体形成されている点で、第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
【0034】
図10および図11に示すように、ピンチローラ160は円周方向に垂直な方向の断面がクラウン形状になっており、全体が弾性部材で形成されている。ピンチローラ160を形成する弾性部材としては、第1の実施形態と同様で、従来より公知の天然ゴム、合成ゴム、スポンジ、ウレタンフォーム、フェルト、レザー、フィルム、プラスチック等を利用できる。
【0035】
図11(a),(b)に示すように、ピンチローラ160は、第1径部160Aと第2径部160Bとを有している。即ち、第1径部160Aと第2径部160Bとは一体形成されている。第1径部160Aでは、ピンチローラ160の最大外径である外径は第1外径d1、回転軸方向の幅は第1幅W1、弾性率は第1弾性率E1としている。第2径部160Bでは、外径は第2外径d2、回転軸方向の幅は第2幅W2、弾性率は第2弾性率E2としている。
【0036】
第1径部160Aの第1外径d1は、第2径部160Bの第2外径d2より大きくなるように設定されている。即ち、第1外径d1>第2外径d2となる。また、第1径部160Aの第1幅W1は、第2径部160Bの第2幅W2より短くなるように設定されている。即ち、第1幅W1<第2幅W2となる。
【0037】
ピンチローラ160をクラウン形状にしたことで、記録媒体Pの厚みと搬送力との関係は図12に示すように推移する。即ち、記録媒体Pの厚みに応じてピンチローラ160の接触面積が変化し、薄い記録媒体P1(紙)に対しては搬送力を抑制して、シワ・ヨレなどの発生を防止することができる。また、厚い記録媒体P2(プラスチックカード)に対しては大きな搬送力が確保でき、搬送不良を防止することが可能となる。
【0038】
上述したように本実施形態の記録装置1によれば、ピンチローラ160は、最大外径である第1外径d1を有する第1径部160Aは弾性部材で形成されているので、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良を抑制する効果がある。
【0039】
尚、上述した本実施形態における記録装置1では、第1弾性率E1及び第2弾性率E2は同等である場合について説明したが、これには限られない。例えば、ピンチローラ160の形成時に第2弾性率E2を第1弾性率E1よりも高める処理を行ったり、形成後に後処理によって第2径部160Bの弾性率を高めることで、第1弾性率E1<第2弾性率E2となるようにしてもよい。この場合、図7に示す第1の実施形態のように、t1=t2となる点を境に搬送力をより大きく変化させることができるので、記録媒体Pの厚みおよび材質等が異なる場合でも、記録媒体Pへのシワ・ヨレなどの発生や搬送不良を抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…記録装置、10K,10C,10M,10Y…記録ヘッド(記録部)、30…搬送部、32…斜送ローラ(駆動ローラ)、40…突き当て板(突き当て部)、60,160…ピンチローラ(従動ローラ)、61…外輪、61A,160A…第1径部、62…内輪、62A,160B…第2径部、62C…溝、D1…搬送方向、d1…第1外径、d2…第2外径、E1…第1弾性率、E2…第2弾性率、P,P1,P2…記録媒体、W1…第1幅、W2…第2幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12