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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073274
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】シート給送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20220510BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B65H3/06 350C
B65H3/06 340E
B65H5/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183155
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】名取 潤
【テーマコード(参考)】
3F049
3F343
【Fターム(参考)】
3F049AA01
3F049DA12
3F049EA24
3F049EA28
3F049LA01
3F049LB03
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC04
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HA16
3F343JA14
3F343JA19
3F343KB04
3F343KB05
3F343KB06
3F343LA15
3F343LC12
3F343MA03
3F343MA15
3F343MA33
3F343MB13
3F343MB14
3F343MB15
3F343MC08
(57)【要約】
【課題】シートのジャム発生を抑制できる構成を提供する。
【解決手段】ピックアップローラ231は、積載トレイに積載されたシートを給送する。第1搬送ローラ232は、ピックアップローラ231にて給送されたシートを搬送し、第2搬送ローラ235は、第1搬送ローラ232のシートの搬送方向下流に設けられている。ピックアップローラ231は、昇降させられ、第1搬送ローラ232は、ピックアップローラ231が下降する際にシートを搬送する方向に駆動される。第2搬送ローラ235は、ピックアップローラ231の下降中に第1搬送ローラ232によって搬送されるシートを搬送方向下流に搬送するように回転する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載トレイと、
前記積載トレイに積載されたシートを給送する給送ローラと、
前記給送ローラにて給送されたシートを搬送する第1搬送ローラと、
前記第1搬送ローラのシートの搬送方向下流に設けられた第2搬送ローラと、
前記給送ローラを昇降させる駆動手段と、を備え、
前記第1搬送ローラは、前記駆動手段により前記給送ローラが下降する際にシートを搬送する方向に回転し、
前記第2搬送ローラは、前記給送ローラの下降中に前記第1搬送ローラによって搬送されるシートを搬送方向下流に搬送するように回転することを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、一方向の回転で前記給送ローラを下降させるとともに前記第1搬送ローラを前記搬送方向に回転させる駆動モータを有することを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
第2搬送ローラは、前記駆動手段による前記給送ローラの下降開始と同時に回転を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラとの間でシートを検出する検出手段を備え、
前記第2搬送ローラは、前記検出手段がシートを検出した時点から一定量回転して停止することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラとの間でシートを検出する検出手段を備え、
前記第2搬送ローラは、前記検出手段がシートを検出したことに基づき回転を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記第2搬送ローラは、前記検出手段がシートを検出した時点から一定量シート回転して停止することを特徴とする請求項5に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記積載トレイが設けられ、装置本体に対して引き出された引出位置と前記装置本体に装着される装着位置とに移動可能な収納庫を備え、
前記駆動手段は、前記収納庫が前記装着位置から引き出されて前記引出位置に到達する前に、前記給送ローラを前記積載トレイ上にシートを載置するための上方位置に上昇させ、前記収納庫が前記装着位置に移動した後に前記給送ローラを前記積載トレイ上のシートに当接するための下方位置に下降させることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記給送ローラ及び前記第1搬送ローラを有する給送部を備え、
前記給送部は、前記収納庫と同時に装置本体に対して引き出し、装着可能に構成されることを特徴とする請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
前記第1搬送ローラと前記第2搬送ローラとの間でシートを検出する検出手段を備え、
前記第2搬送ローラは、前記検出手段がシートを検出した時点から前記第1搬送ローラにてシートを所定量搬送したことに基づき駆動回転を開始することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート給送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを給送するシート給送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを給送するシート給送装置は、積載トレイ上のシートをピックアップローラにより送り出し、搬送ローラにより搬送する。このようなシート給送装置として、ピックアップローラを積載トレイ上のシートに対して昇降させる構成がある。例えば、自動原稿送り装置において、ピックアップローラと搬送ローラを駆動する駆動モータを用いて、ピックアップローラを昇降させる構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の構成の場合、駆動モータの逆転はワンウェイクラッチの作用によってピックアップローラと搬送ローラには伝達されないように構成されている。そして、駆動モータの正転でピックアップローラと搬送ローラをシートを搬送する方向に回転すると共にピックアップローラを下降させ、逆転でピックアップローラを上昇させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-303610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載の構成のように、ピックアップローラの下降動作の際に搬送ローラがシートを搬送する方向に駆動される構成の場合、ピックアップローラの下降動作時にシートが搬送ローラで搬送されてしまう虞がある。
【0006】
搬送ローラ(第1搬送ローラ)の下流側には、シートを更に下流側に搬送する第2搬送ローラがあるが、通常、ピックアップローラの下降時にはこの第2搬送ローラが駆動されていない。このため、ピックアップローラの下降動作時に第1搬送ローラにより搬送されたシートが第2搬送ローラに突き当たり、シートの先端がつぶれたり、損傷してしまう虞がある。この結果、シートが搬送経路で詰まってしまうジャムが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、シートのジャム発生を抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート給送装置は、シートが積載される積載トレイと、前記積載トレイに積載されたシートを給送する給送ローラと、前記給送ローラにて給送されたシートを搬送する第1搬送ローラと、前記第1搬送ローラのシートの搬送方向下流に設けられた第2搬送ローラと、前記給送ローラを昇降させる駆動手段と、を備え、前記第1搬送ローラは、前記駆動手段により前記給送ローラが下降する際にシートを搬送する方向に回転し、前記第2搬送ローラは、前記給送ローラの下降中に前記第1搬送ローラによって搬送されるシートを搬送方向下流に搬送するように回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートのジャム発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略構成断面図。
図2】実施形態に係る多段収納装置の正面図。
図3】実施形態に係る多段収納装置の収納庫を引き出した状態で示す平面図。
図4】実施形態に係る多段収納装置の収納庫を引き出した状態で示す側面図。
図5】実施形態に係る収納庫の模式図。
図6】実施形態に係るシート給送部の駆動構成を示す図。
図7】実施形態に係る多段収納装置の制御構成のブロック図。
図8】実施形態に係る、(a)垂れ下がりシートがある状態でピックアップローラが下降開始する状態を、(b)ピックアップローラ231の下降動作時に垂れ下がりシートが搬送される状態を、(c)ピックアップローラの下降終了時の状態を、それぞれ示す図。
図9】実施形態に係るピックアップローラ231の下降中にシートの斜行補正を行う例を示す図。
図10】実施形態に係る、(a)ピックアップローラの下降後、積載トレイが上昇している状態を、(b)シートの給送が開始された状態を、それぞれ示す図。
図11】実施形態に係るエンプティセンサの、(a)積載トレイ上にシートがない場合の、(b)積載トレイ上にシートがある場合の、それぞれ検出状態を示す図。
図12】実施形態に係るピックアップローラの下降動作に伴うシート検出に対するジョブの可否を決定するフローチャート。
図13】実施形態に係る収納庫のオープン時のシート給送部及び積載トレイの動作のフローチャート。
図14】実施形態に係る収納庫のクローズ時のシート給送部及び積載トレイの動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成システムについて、図1を用いて説明する。
【0012】
[画像形成システム]
図1は、本実施形態に係る多段収納装置及び画像形成装置を備える画像形成システムの一例を概略的に示す断面図である。以下の説明では、画像形成部を有する画像形成装置として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステム(以下単にプリンタと呼ぶ)を例に挙げて説明する。なお、画像形成システムを構成する画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。また、画像形成装置は、電子写真方式に関らず、インクジェット方式などの他の方式の構成であっても良い。
【0013】
本実施形態の画像形成システム1000は、画像形成装置100と、この画像形成装置100に接続されたシート給送装置としての多段収納装置200と、給送デッキ500とを有している。多段収納装置200は、詳しくは後述するように、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫を有しており、各収納庫から画像形成装置100にシートを給送可能である。また、給送デッキ500も複数枚のシートを収納可能な収納庫を有しており、シート搬送方向に関して、多段収納装置200の上流側に配置されている。また、給送デッキ500から給送されるシートは、多段収納装置200に設けられた中継搬送装置400を介して画像形成装置100に搬送される。なお、シートとしては、普通紙、薄紙、厚紙などの紙、プラスチックシートなどが挙げられる。また、以下では、シートの搬送方向下流側を単に「下流側」、シートの搬送方向上流側を単に「上流側」という場合もある。
【0014】
画像形成装置100は、画像形成装置本体101に接続された原稿読み取り装置102又は画像形成装置本体101に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)をシートに形成する。本実施形態の場合、原稿読み取り装置102は、画像形成装置本体101の上側に配置されている。
【0015】
原稿読み取り装置102は、原稿を読み取る際には、プラテンガラス103の上に載置された原稿に走査光学系光源によって光を照射すると共に、反射光をCCDに入力することにより原稿画像を読み取るようにしている。また、原稿読み取り装置102は、自動原稿搬送装置(ADF)104を備えており、トレイ105上に載置された原稿をADF104により自動的に原稿読み取り装置102の読み取り部に搬送して、原稿画像を読み取ることも可能である。そして、読み取った原稿画像は電気信号に変換されて、後述する画像形成部110のレーザスキャナ113に伝送される。なお、レーザスキャナ113は、上述したようにパーソナルコンピュータ等から送信されてくる画像データが入力される場合もある。
【0016】
画像形成装置100は、画像形成部110、複数のシート給送装置120、シート搬送装置130等を備える。画像形成装置100は、制御部140により各部が制御される。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0017】
複数のシート給送装置120は、それぞれシートSを収納するカセット121と、ピックアップローラ122と、フィードローラ123及びリタードローラ124から構成される分離搬送ローラ対125とを備えている。カセット121内に収納されたシートSは、所定のタイミングで昇降動作して回転するピックアップローラ122と分離搬送ローラ対125とによって1枚ずつ分離されて給送される。
【0018】
シート搬送装置130は、搬送ローラ対131、レジストローラ対133を備えている。シート給送装置120から給送されたシートSは、搬送ローラ対131によりシート搬送路134を通過させられた後、レジストローラ対133に導かれる。この後、シートSは、レジストローラ対133によって、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0019】
なお、後述する多段収納装置200や給送デッキ500から搬送ローラ対201を介して搬送されるシートは、画像形成装置100との接続経路202を介して画像形成装置100内に搬送される。そして、多段収納装置200や給送デッキ500から画像形成装置100内に搬送されたシートは、画像形成装置100内のシート給送装置120から搬送されるシートと同様に、レジストローラ対133を介して所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0020】
画像形成部110は、感光ドラム111、帯電器112、レーザスキャナ113、現像器114、転写装置115、クリーナ117等を備えている。画像形成時には、感光ドラム111が回転駆動され、まず、帯電器112により感光ドラム111の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて発光されるレーザスキャナ113からのレーザ光が帯電された感光ドラム111に照射されることで、感光ドラム111上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム111上に形成された静電潜像は、この後、現像器114によってトナー像として顕像化される。
【0021】
この後、感光ドラム111上のトナー像は、転写部116において転写装置115によりシートSに転写される。さらに、このようにトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送されてトナー像の定着が行われ、この後、排出ローラ151によって機外の排出トレイ152に排出される。
【0022】
シートSの裏面にトナー像を形成する場合には、定着装置150から排出されたシートSを反転搬送路160に搬送する。そして、反転搬送路160により表裏を反転した状態で、シートSを再度、画像形成部110の転写部116に搬送する。裏面にトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送され、トナー像の定着が行われた後、排出ローラ151により排出トレイ152に排出される。なお、転写後に感光ドラム111上に残った転写残トナーは、クリーナ117により除去される。
【0023】
なお、上述の画像形成システム1000は、シート給送装置として、多段収納装置200及び給送デッキ500を備えていたが、多段収納装置200のみの場合や給送デッキ500のみの場合であってもよい。更には、別の給送デッキなどを備えていてもよい。
【0024】
[多段収納装置]
図1図5を用いて多段収納装置200の概要について説明する。多段収納装置200は、複数の収納庫210、中継搬送装置400等を備える。本実施形態では、3つの収納庫210を上下に3段並べており、一番下の収納庫210と上から2番目の収納庫210との間に中継搬送装置400を配置している。
【0025】
一番上の収納庫210から給送されたシートは、搬送経路212に搬送され、上から2番目の収納庫210から給送されたシートは、搬送経路213に搬送され、一番下の収納庫210から給送されたシートは、搬送経路214に搬送される。また、中継搬送装置400から搬送されたシートは、搬送経路215に搬送される。搬送経路213は、途中で搬送経路212に合流している。また、搬送経路212,214,215は、合流点216で合流し、搬送経路217を通って搬送ローラ対201に搬送され、接続経路202を介して画像形成装置100に搬送される。
【0026】
また、搬送経路213と合流後の搬送経路212、中継搬送装置400、搬送経路214には、それぞれシートの重送を検知する重送検知センサが配置されている。そして、重送検知センサにより重送が検知されたシートは、搬送経路217まで搬送される。搬送経路217の下方には、重送が検知されたシートを収容する重送シート収容部(エスケープトレイ)218が配置されている。重送が検知され、搬送経路217に搬送されたシートは、搬送経路217に設けられた切換部材219により搬送経路が切り換えられることで、重送シート収容部に搬送される。
【0027】
図2は、多段収納装置200の正面図である。上述のように、多段収納装置200は、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫210を有する。各収納庫210は、鉛直方向に複数段に並べて配置されており、それぞれ多段収納装置200の筐体(装置本体)204に対して引き出し及び挿入可能である。なお、各収納庫210は、収納可能なシートの枚数が異なるだけで基本的な構成は同じである。但し、各収納庫210は、収納可能なシートの枚数が同じ場合もある。
【0028】
各収納庫210から給送されるシートは、搬送経路212,213,214を経由して接続経路202(図1参照)に搬送される。また、多段収納装置200は、制御部203(図1参照)により各部が制御される。制御部203は、後述する図7に示すように、CPU(Central Processing Unit)203a、ROM(Read Only Memory)203b、RAM(Random Access Memory)203cを有している。また、制御部203は、画像形成装置100の制御部140と通信可能であり、制御部140と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0029】
多段収納装置200は、収納庫210の引き出し動作を行うための操作手段としての引出ボタン(操作部)205を有する。引出ボタン205は、各収納庫210の前面にそれぞれ設けられている。例えば、操作者が引出ボタン205を押すと、引出ソレノイド205a(図7参照)が動作し、収納庫210を装着位置にロックしていたロック機構が解除され、不図示のバネにより収納庫210が筐体204から押し出される。これにより、操作者が収納庫210を、図3及び図4に示すように、シートを収納可能な位置まで引き出すことができる。なお、引出ボタン205を押すことで、モータなどにより収納庫210が自動でシートを収納可能な位置まで移動する構成であっても良い。
【0030】
収納庫210は、図3ないし図5に示すように、シートSを収納可能なシート収納部220と、シート収納部220から画像形成装置100に向けてシートSを給送するシート給送部230とを有する。シート収納部220は、図4に示すように、シートSが積載される積載トレイ221、突き当て部222、後端規制板223、サイド規制板224等を有する。積載トレイ221は、図5に示すように、昇降手段としての昇降機構226により上下方向に昇降可能である。
【0031】
昇降手段としての昇降機構226は、駆動源としての昇降モータ227、駆動プーリ228a、ガイドプーリ228b、ワイヤ228c、レール229を有する。ワイヤ228cは、ガイドプーリ228bを介して、積載トレイ221と駆動プーリ228aとに連結されている。積載トレイ221は、レール229に沿って上下方向に移動可能に支持されている。昇降モータ227により駆動プーリ228aが回転駆動されることで、ワイヤ228cの巻取り或いは引き出し動作が行われ、このワイヤ228cの動作がガイドプーリ228bを介して積載トレイ221に伝達される。この結果、積載トレイ221は、レール229に沿って昇降する。
【0032】
本実施形態の場合、積載トレイ221は、シートSを積載する際には所定の積載位置まで下降し、例えば、収納庫210が引き出されてシートを積載していく際に徐々に下降する。そして、収納庫210が装着され、積載トレイ221上に積載されたシートSが給送されると、積載トレイ221は徐々に上昇していく。なお、所定の積載位置は、中継ぎ位置とも呼ばれ、積載トレイ221が収納庫210の最下位置より上方の中段位置である。これは、シート収納時に積載トレイ221を最下位置まで下げてしまうと、ユーザなどがシートを積載トレイ221上に積載しにくいためである。このため、シート収納時には、積載トレイ221の下降を中継ぎ位置で停止し、シートを積載していく毎に積載トレイ221を下降させるようにしている。
【0033】
また、昇降モータ227は、収納庫210に設けられている。本実施形態では、昇降モータ227を収納庫210に設け、ケーブルにより筐体204側から昇降モータ227に電力の供給などを行えるようにしている。
【0034】
図4に示すように、突き当て部222は、シートが収容される収容空間225において、シート搬送方向下流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向下流端(先端)が突き当てられる。後端規制板223は、収容空間225において、シート搬送方向上流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向上流端(後端)が突き当てられることで、シートの後端位置を規制する。後端規制板223は、シート搬送方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの後端規制位置を調整可能である。サイド規制板224は、収容空間225のシート搬送方向と直交する幅方向両側にそれぞれ配置され、シートの幅方向両端位置を規制する。サイド規制板224は、幅方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの幅方向の規制位置を調整可能である。
【0035】
給送部としてのシート給送部230は、図5に示すように、給送手段及び給送ローラとしてのピックアップローラ231、第1搬送ローラ(搬送ローラ)232とリタードローラ233から構成される分離搬送ローラ対234、第2搬送ローラ235と対向ローラ236から構成される搬送ローラ対(レジストローラ対)237等を有する。ピックアップローラ231や分離搬送ローラ対234は、図4に示すように、収容空間225の上方のシート搬送方向下流端部で、且つ、幅方向略中央に配置されている。
【0036】
ピックアップローラ(送出ローラ)231は、収納庫210に設けられ、収納庫210に収納されたシートを給送する(送出する)。具体的には、ピックアップローラ231は、積載トレイ221の上方に設けられ、上昇した積載トレイ221に積載されたシートSの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231は、図5に示すように、シート搬送方向(矢印α方向)に関してシートSの先端部近傍に、積載トレイ221上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、駆動源としての給送モータ301の駆動により回転することで、最上位シートを矢印α方向に送り出す。
【0037】
分離搬送ローラ対234は、ピックアップローラ231から2枚以上のシートが重なって給送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234の第1搬送ローラ232は、給送モータ301の駆動によりシートを矢印α方向に搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231から給送されたシートを搬送する。一方、リタードローラ233は、第1搬送ローラ232とは逆方向に回転して、ピックアップローラ231から送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221側に押し戻す。なお、リタードローラ233には不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234に送られたシートが1枚のみの場合には、第1搬送ローラ232により搬送されるシートによって連れ回るようになっている。
【0038】
分離搬送ローラ対234に分離搬送されたシートは、搬送モータ235aにより回転駆動される第2搬送ローラ235により多段収納装置200内の搬送経路に搬送される。即ち、図1の最上段の収納庫210内のシートは搬送経路212に、2段目の収納庫210内のシートは搬送経路213に、最下段の収納庫210内のシートは搬送経路214に搬送される。そして、シートは、これらの搬送経路から上述のように接続経路202(図1)を介して画像形成装置100に搬送される。
【0039】
本実施形態の場合、上述のようにシート給送部230が収納庫210に設けられている。このため、収納庫210を多段収納装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入する際には、収納庫210と共に移動する。言い換えれば、シート給送部230は、収納庫210と同時に装置本体としての筐体204に対して引き出し、装着可能に構成される。このように、シート給送部230を収納庫210と共に引き出せるように構成することで、シート給送部230の各ローラの交換などのメンテナンスを容易にしている。
【0040】
[駆動機構]
上述のシート給送部230を構成する、第1搬送ローラ232及びピックアップローラ231は給送モータ301により、第2搬送ローラ235は搬送モータ235aによりそれぞれ回転駆動される。また、ピックアップローラ231は、給送モータ301の駆動により上下方向に昇降する。
【0041】
以下、図6を用いて、第1搬送ローラ232及びピックアップローラ231の駆動伝達機構(給送駆動部)300と、第2搬送ローラ235の駆動伝達機構(搬送駆動部)600について説明する。なお、図6では、給送モータ301からピックアップローラ231までの駆動伝達経路と、搬送モータ235aから第2搬送ローラ235までの駆動伝達経路とを、それぞれ抜き出して示している。
【0042】
駆動モータとしての給送モータ301及び搬送モータ235aは、それぞれ、例えば、パルスモータであり、多段収納装置200の筐体204(図4など参照)に設けられている。このため、収納庫210を筐体204から引き出した場合、給送モータ301から第1搬送ローラ232までの駆動伝達経路が途中で離れるように、駆動伝達機構300は、接続手段としてのカップリング302を有する。同様に、収納庫210を筐体204から引き出した場合、搬送モータ235aから第2搬送ローラ235までの駆動伝達経路が途中で離れるように、駆動伝達機構600は、接続手段としてのカップリング601を有する。
【0043】
即ち、駆動伝達機構300は、給送モータ301からカップリング302までのモータ側駆動伝達機構310と、カップリング302からピックアップローラ231までのローラ側駆動伝達機構320とを有する。カップリング302は、収納庫210を筐体204に挿入した状態で給送モータ301とピックアップローラ231との間を駆動伝達可能に接続し、収納庫210が引き出される際に給送モータ301とピックアップローラ231との間の駆動接続を解除する。
【0044】
同様に、駆動伝達機構600は、搬送モータ235aからカップリング601までのモータ側駆動伝達機構610と、カップリング601から第2搬送ローラ235までのローラ側駆動伝達機構620とを有する。カップリング601は、収納庫210を筐体204に挿入した状態で搬送モータ235aと第2搬送ローラ235との間を駆動伝達可能に接続し、収納庫210が引き出される際に搬送モータ235aと第2搬送ローラ235との間の駆動接続を解除する。
【0045】
駆動手段としての駆動伝達機構300は、一方向の回転(正回転)でピックアップローラ231を下降させるとともに第1搬送ローラ232をシートの搬送方向に回転させる駆動モータとしての正逆回転が可能な給送モータ301を有する。給送モータ301の正回転駆動は、プーリP1からプーリP2にタイミングベルトT1を介して伝達される。そして、プーリP2の駆動は、カップリング302を介してギヤZ1、ギヤZ2、第1搬送ローラ232の駆動軸232aに取り付けられたギヤZ3の順に伝達されて、第1搬送ローラ232がシートを搬送する方向に回転する。第1搬送ローラ232の駆動軸232aにはプーリP3が設けられており、ピックアップローラ231の駆動軸231aに設けられたプーリP4との間に張架したタイミングベルトT2を介してピックアップローラ231にも駆動が伝達される。
【0046】
また、第1搬送ローラ232の駆動軸232aには、ピックアップローラ231を支持する支持部材としての昇降アーム350a、350bの一端側が取り付けられており、この駆動軸232aの搬送方向の回転(給送モータ301の正転駆動)により昇降アーム350a、350bが回動してピックアップローラ231が下降する。そして、ピックアップローラ231が積載トレイ221上のシートに当接すると、バネクラッチCL1、バネクラッチCL2の作用により昇降アーム350a、350bに対して第1搬送ローラ232の駆動軸232aは空転するように構成している。
【0047】
一方、給送モータ301の逆転駆動も同様に、第1搬送ローラ232の駆動軸232aに伝達され、昇降アーム350a、350bを回動させることによりピックアップローラ231を上昇させる。この際、第1搬送ローラ232は、その内部に設けられたワンウェイクラッチOW1の作用で回転しない。上昇された昇降アーム350a、350bは、不図示の規制部材に当接し、バネクラッチCL3の作用により昇降アーム350a、350bは第1搬送ローラ232の駆動軸232aに対し空転するように構成している。
【0048】
このようにピックアップローラ231は、給送モータ301の正逆転によって昇降アーム350a、350bが回動することで昇降させる。これにより、駆動手段としての駆動伝達機構300は、ピックアップローラ231を積載トレイ221上のシートに当接するための下方位置と、下方位置よりも上方で積載トレイ221上にシートを載置するための上方位置とに昇降させる。
【0049】
具体的には、後述する図8(a)に示すように、ピックアップローラ231が上方位置にある状態で給送モータ301を正回転させると、昇降アーム350a、350bは、積載トレイ221上のシート上面側(下方)に回動してピックアップローラ231を下降させる(後述する図8(c)の状態)。そして、上述のように昇降機構226により積載トレイ221を上昇させることで、積載トレイ221上の最上位シートがピックアップローラ231に当接する(後述する図10(a)の状態)。これによって、駆動軸232aに所定のトルクが発生し、このトルクの発生によってバネクラッチCL1、CL2が作用し、駆動軸232aに対して昇降アーム350a、350bが空転し、ピックアップローラ231はシートの上面に当接した状態を保持する。
【0050】
また、給送モータ301を逆回転させると、駆動軸232aが搬送方向と逆方向に回転し、駆動軸232aの逆回転に伴って昇降アーム350a、350bは、積載トレイ221上のシートから離間する方向(上方)に回動してピックアップローラ231を上昇させる。そして、昇降アーム350a、350bの一部が不図示の規制部材に当接して、その回動が停止する。この位置が上方位置(退避位置)である。これによって、第1搬送ローラ232の駆動軸232aに所定のトルクが発生し、バネクラッチCL1、CL2が作用し、駆動軸232aに対して昇降アーム350a、350bが空転する。そして、ピックアップローラ231が上方位置に保持される。
【0051】
一方、駆動伝達機構600において、搬送モータ235aの回転駆動は、プーリP5からプーリP6にタイミングベルトT3を介して伝達される。そして、プーリP6の駆動は、カップリング601を介してギヤZ4、第2搬送ローラ235の駆動軸235bに取り付けられたギヤZ5の順に伝達されて、第2搬送ローラ235がシートを搬送する方向に回転する。ギヤZ5の内部にはワンウェイクラッチOW2が配置されており、ジャム処理時に搬送ローラ対237に挟持されたシートを引き抜く際に、第2搬送ローラ235が空転するようにしている。
【0052】
[制御構成]
次に、本実施形態の多段収納装置200の制御構成について、図5を参照しつつ図7を用いて説明する。上述したように、制御部203は、CPU203a、ROM203b、RAM203cを有している。上述の給送モータ301、搬送モータ235a、昇降モータ227は、制御部203に接続され、それぞれ制御部203により制御されている。また、制御部203は、引出ボタン205が押されると、上述したように引出ソレノイド205aを制御して収納庫210を引き出し可能とする。また、多段収納装置200は、報知手段としての表示部206を有し、制御部203は、表示部206により各種情報を報知可能である。
【0053】
表示部206は、例えば、LEDなどであり、収納庫210内のシートがなくなった場合や、搬送経路の途中でシートがジャムした場合などにLEDを点灯させてその旨をユーザなどの操作者に知らせる。本実施形態では、表示部206は、各収納庫210の例えば引出ボタン205の近傍に設けられた緑色と赤色のLEDであり、例えば、緑色のLEDが点灯している場合にはその収納庫210にシートが有り、赤色のLEDが点灯した場合にその収納庫210にシートがないことを示すようにしても良い。また、表示部は、このようなLEDに加えて、或いは、LEDに代えて、液晶画面などの画像を表示可能なものであっても良いし、設置個所は、引出ボタン205の近傍に限らず、また、各収納庫210毎に設けずに1か所であっても良い。
【0054】
また、多段収納装置200は、上面検出センサ700、下限検出センサ701、エンプティセンサ702、装着センサ703、第1シート検出センサ704、第2シート検出センサ705などの各種センサを備えている。上面検出センサ700は、図5に示すようにピックアップローラ231の近傍に配置され、積載トレイ221に積載された最上位のシートと接触することで該シートを検出する。制御部203は、上面検出センサ700がシートを検出したらピックアップローラ231によるシートの送り出しが可能な状態である。
【0055】
下限検出センサ701は、積載トレイ221の下限位置を検出する。上述したように、積載トレイ221は、シート積載時に徐々に下降していく。そして、下限検出センサ701が積載トレイ221が下限位置に到達したことを検出すると、制御部203は、積載トレイ221の下降を停止する。
【0056】
第1検出手段としてのエンプティセンサ702は、積載トレイ221上のシートを検出する。本実施形態では、図5及び後述する図11(a)、(b)に示すように、積載トレイ221の上方に位置し、積載トレイ221上のシートの有無を検出する。エンプティセンサ702は、ピックアップローラ231に対し上流側に離れた位置でシートの有無を検出する。なお、制御部203は、エンプティセンサ702の検出結果などに基づいて積載トレイ221上(積載トレイ上)にシートがない(即ち、その収納庫210にシートがない)と判断した場合に、上述のように表示部206によりその旨を報知する。エンプティセンサ702の詳しい構成については後述する。
【0057】
装着センサ703は、収納庫210が筐体204の装着位置に装着されたか否かを検出する。制御部203は、装着センサ703により収納庫210が筐体204に装着されたことを検出すると、後述するように、ピックアップローラ231を下方位置に移動させる。第1シート検出センサ704は、第1搬送ローラ232の近傍の下流に配置され、シートの有無を検出する。具体的には、分離搬送ローラ対234で分離搬送されたシートの先端を検出する。
【0058】
検出手段及び第2検出手段としての第2シート検出センサ705は、第1搬送ローラ232と第2搬送ローラ235との間でシートを検出するセンサであり、第1シート検出センサ704の下流側に位置する。制御部203は、第2シート検出センサ705によりシートが検出されることで、該シートが第1搬送ローラ232と第2搬送ローラ235との間に存在すると判断する。なお、シートを検出するセンサは、多段収納装置200の搬送経路の複数個所に配置され、それぞれの位置におけるシートの有無を検出する。制御部203は、これらのシートを検出センサの情報に基づいて、シートのジャムを検出し、ジャムが発生した位置を、例えば、多段収納装置200が接続された画像形成装置100の操作パネルなど画像形成システム1000が備える表示画面に表示可能である。
【0059】
[収納庫の引き出し及び装着動作]
次に、収納庫210の筐体204からの引き出し動作について説明する。まず、制御部203は、引出ボタン205(図2など参照)が押されたことを検出すると、給送モータ301を逆回転する。これによって、ピックアップローラ231が第1搬送ローラ232の駆動軸232aを支点として上方に回動を開始し、上方位置に移動する。
【0060】
本実施形態の場合、図8(a)に示すように、ピックアップローラ231を支持する昇降アーム350a(又は350b)の一部にフラグ351を設け、ピックアップローラ231が上昇位置に移動した際に、フラグ351がフォトインタラプタ352の発光部と受光部との間に侵入することで、制御部203は、ピックアップローラ231が上昇位置に移動したことを把握する。そして、制御部203は、フォトインタラプタ352によりフラグ351を検出したときに、給送モータ301の駆動を停止する。なお、制御部203は、ピックアップローラ231の上昇開始から上昇位置までの一定時間が経過したときに給送モータ301の駆動を停止して、ピックアップローラ231を上昇位置に停止させるようにしても良い。
【0061】
上方位置では、図8(a)に示すように、ピックアップローラ231はその外周の一部が第1搬送ローラ232の直上になる位置に移動する。制御部203は、ピックアップローラ231が上方位置に移動すると、収納庫210のロックを解除する。収納庫210のロックが解除されると、操作者がシート給送部230を含む収納庫210を手動で引き出すことが可能となる。
【0062】
上方位置は、収納庫210にシートを収納可能な位置で、シート収納部220にシートを収納する際に、ピックアップローラ231が下方位置よりも収容空間225から退避した位置である。即ち、本実施形態では、シート給送部230が収納庫210に設けられており、収納庫210と共に引き出される。この際、ピックアップローラ231が下方位置に位置していた場合、シートを積載トレイ221に積載する際にピックアップローラ231とシートとが干渉し易く、シートの積載がしにくい。このため、本実施形態では、収納庫210が引き出される際に、ピックアップローラ231をシートの積載の邪魔になりにくい位置である上方位置まで移動させるようにしている。
【0063】
次に、収納庫210を筐体204内の装着位置に挿入した際のシート給送部230の動作について説明する。まず、制御部203は、収納庫210が装着位置に装着されたことを装着センサ703により検出すると、給送モータ301を正回転する。これによって、ピックアップローラ231が第1搬送ローラ232の駆動軸232aを支点として下方に回動を開始し、図8(a)の状態から図8(b)、図8(c)の状態に移動して、下方位置に位置する。このように本実施形態では、駆動伝達機構300は、収納庫210が装着位置から引き出されて引出位置に到達する前に、ピックアップローラ231を上方位置に上昇させ、収納庫210が装着位置に移動した後にピックアップローラ231を下方位置に下降させるようにしている。なお、上方位置から下方位置へのピックアップローラ231の移動量は、第1搬送ローラ232の回転中心とピックアップローラ231の回転中心とを通る仮想線が第1搬送ローラ232の回転中心を中心として60°以上、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上回動する量である。
【0064】
[垂れ下がりシート]
ここで、シート給送部230によりシートの給送動作を行っている際に、シートが重送される場合がある。このとき、重送されたシートは、分離搬送ローラ対234により分離されるが、シートの給送動作終了時に分離されたシートが分離搬送ローラ対234にニップされたまま残る場合がある。この場合、分離搬送ローラ対234から収容空間225に跨るようにシートが垂れ下がった状態となる。以下、このようなシートを垂れ下がりシートという。
【0065】
このように垂れ下がりシートがある状態で、上述のように収納庫210の引き出し動作及び装着動作を行うと、以下のような問題が発生する虞がある。即ち、垂れ下がりシートがある状態で収納庫210を引き出すべく、操作者が引出ボタン205を操作すると、上述のようにピックアップローラ231が上方位置に移動する。この際、給送モータ301を逆回転させており、分離搬送ローラ対234を構成する第1搬送ローラ232はワンウェイクラッチOW1により回転しない。このため、垂れ下がりシートがある状態で収納庫210が引き出されてしまう。
【0066】
次いで、操作者が垂れ下がりシートがある状態で収納庫210を装着位置に装着すると、ピックアップローラ231が上方位置から下方位置に移動する。この際、給送モータ301を正回転させており、ピックアップローラ231及び第1搬送ローラ232がシートを搬送する方向に回転する。このため、図8(a)に示すように、分離搬送ローラ対234に挟持された垂れ下がりシートS1は、ピックアップローラ231の下降動作により、図8(b)に示すように、更に下流に搬送されてしまう。
【0067】
[垂れ下がりシートの有効利用]
上述したように、第1搬送ローラ232の下流側には第2シート検出センサ705があり、判断手段としての制御部203は、第2シート検出センサ705の検出状態に基づいて、シートのジャムの有無を判断すると共に、シートのジャム有りと判断した場合に、シート給送部230によるシートの給送動作を停止する。また、制御部203は、シートのジャム有りと判断した場合には、上述したように、表示部206にその旨を報知させる。
【0068】
ここで、上述のようにピックアップローラ231の下降動作に伴って第1搬送ローラ232により搬送された垂れ下がりシートS1が、第2シート検出センサ705により検出される場合がある。この垂れ下がりシートS1は、ジャムしたものではなく、画像形成に使用可能なシート(有効シート)である。したがって、このような有効シートが第2シート検出センサ705により検出された場合に、一律にジャム有りと判断してしまうと、このシートを有効に利用できない。また、ジャム有りと判断した場合、このシートを取り除かないとシートの給送を再開できないため、生産性が低下する。
【0069】
そこで、本実施形態では、制御部203は、ピックアップローラ231の下降動作中に第2シート検出センサ705が検出したシートに対しては、シートをジャムしたシートとして取り扱わないようにしている。即ち、ジャム無しと判断するようにしている。このため、上述の垂れ下がりシートS1が第2シート検出センサ705により検出された場合、表示部206にジャム有りと通知されない。
【0070】
また、制御部203は、シートの給送開始の指示を受けた時点の第2シート検出センサ705のシート検出状況に応じてシートのジャムの有無及びシートの給送動作の可否を判断する。即ち、制御部203の判断がジャム有りであれば給送動作を不可とし、制御部203の判断がジャム無しであれば給送動作を可能とする。具体的には、制御部203は、給送開始の指示を受けたときに、多段収納装置200の各搬送経路に配置されたシート検出センサの状況を見て、何れかのシート検出センサでシートが検出されている場合には、当該箇所でシートのジャムを発生していると判断し、表示部206にその旨を表示させると共に、シートの給送動作を停止する。
【0071】
但し、制御部203は、ピックアップローラ231の下降動作時に第2シート検出センサ705の検出状況を監視している。そして、制御部203は、ピックアップローラ231の下降動作時に第2シート検出センサ705によりシートが検出されていた場合には、給送開始の指示を受けた時点で第2シート検出センサ705によりシートが検出されていたとしても、該シートをジャムしたシートとして扱わない。これにより、ジャムの発生頻度を減らせて、生産性の低下を抑制できると共に、シートの有効利用を図れる。
【0072】
一方、上述のようにピックアップローラ231の下降動作により搬送された垂れ下がりシートS1が、収納庫210と筐体204の搬送経路とに跨った状態で停止している場合がある。そして、このような場合に操作者が引出ボタン205を操作することで収納庫210が引き出されてしまうと、垂れ下がりシートS1が破れたり、ねじれるなどして損傷する虞がある。そこで、本実施形態では、制御部203は、引出ボタン205を操作したときに第2シート検出センサ705がシートを検出している場合には、収納庫210の引き出しを不可とするようにしている。
【0073】
具体的には、制御部203は、引出ボタン205が押されたときに第2シート検出センサ705の検出状況を見て、第2シート検出センサ705によりシートが検出されている場合には、収納庫210のロックを解除しない。そして、表示部206にシートのジャム有りを報知させ、操作者にジャムしたシートの除去を促す。
【0074】
なお、制御部203は、引出ボタン205が押されたときに第2シート検出センサ705の検出状況を見て、第2シート検出センサ705によりシートが検出されている場合には、該シートを重送シート収容部(エスケープトレイ)218に排出し、シートの排出後に収納庫210のロックを解除するようにしても良い。
【0075】
また、制御部203は、収納庫210の引出ボタン205が押されたときに、他の収納庫210からシートの給送動作中であり、且つ、第2シート検出センサ705によりシートが検出されている場合には、この引出ボタン205による指示を保留するようにしても良い。そして、給送動作を継続し、他の収納庫210からの給送動作が終了した後に、上述のような動作を行っても良い。即ち、給送動作終了後に、シートのジャム有りの報知を行う、或いは、シートを重送シート収容部218に排出し、排出後に収納庫210のロックの解除を行うようにしても良い。なお、このような場合に、制御部203は、引出ボタン205の操作自体を無視し、給送動作終了後にあらためて引出ボタン205が操作された場合に、上述のような動作を行うようにしても良い。
【0076】
[垂れ下がりシートのジャム発生の抑制]
上述のように、ピックアップローラ231の下降動作により垂れ下がりシートS1が更に下流に搬送されると、次のような問題が発生する虞がある。即ち、第1搬送ローラ232の下流には、第2搬送ローラ235と対向ローラ236から構成される搬送ローラ対(レジストローラ対)237がある。そして、ピックアップローラ231の下降動作時に、第2搬送ローラ235の駆動が停止していると、ピックアップローラ231の下降動作に伴って第1搬送ローラ232により搬送された垂れ下がりシートS1が搬送ローラ対237に突き当たってしまう虞がある。
【0077】
特に本実施形態の場合、シート給送部230が収納庫210と共に筐体204から引き出される構成であり、積載トレイ221へのシートの積載を容易にすべく、収納庫210の引き出し時にピックアップローラ231を上方位置まで移動させている。したがって、収納庫210を筐体204に装着し、ピックアップローラ231が上方位置から下方位置に移動する際の移動量が大きく、ピックアップローラ231の下降動作に伴う垂れ下がりシートS1の搬送量も大きくなる。
【0078】
垂れ下がりシートS1が搬送ローラ対237に突き当たると、シートの先端がつぶれたり、損傷してしまう虞がある。このようなシートをそのまま給送した場合、搬送経路の何れかでジャムが発生し易く、ジャムが発生した場合には、そのシートを取り除くなどの作業が発生する。そこで、本実施形態では、ピックアップローラ231の下降動作時には、第2搬送ローラ235を駆動して、図8(c)に示すように、垂れ下がりシートS1が搬送ローラ対237に突き当たらずに下流に搬送されるようにしている。
【0079】
即ち、第2搬送ローラ235は、ピックアップローラ231の下降中に第1搬送ローラ232によって搬送されるシートを更に搬送方向下流に搬送するように回転する。本実施形態では、制御部203は、第2搬送ローラ235を駆動する搬送モータ235aをピックアップローラ231の下降中にも駆動している。第2搬送ローラ235の回転開始タイミングは、垂れ下がりシートS1が搬送ローラ対237に到達する前であればいつでも良いが、その際の垂れ下がりシートS1の先端の位置が定まらない場合があるため、ピックアップローラ231の下降開始と同時に第2搬送ローラ235の回転を開始することが好ましい。
【0080】
或いは、第1搬送ローラ232と第2搬送ローラ235との間にある第2シート検出センサ705がシートを検出したことに基づき、第2搬送ローラ235を駆動するようにしても良い。具体的には、ピックアップローラ231の下降開始時に既に第2シート検出センサ705によりシートが検出されている場合には、第2搬送ローラ235は、ピックアップローラ231の下降開始と同時に回転を開始される。また、ピックアップローラ231の下降開始時には第2シート検出センサ705によりシートが検出されておらず、ピックアップローラ231の下降途中で第2シート検出センサ705によりシートが検出された場合には、この時に第2搬送ローラ235の回転を開始する。
【0081】
なお、分離搬送ローラ対234の下流に配置された搬送ローラ対237は、駆動を停止された状態で分離搬送ローラ対234により搬送されたシートを突き当て、シートにループを形成することで、このシートの斜行を補正するレジストローラでもある。本実施形態の場合、上述のように垂れ下がりシートS1がピックアップローラ231の下降中に搬送されている場合には、搬送ローラ対234によるシートの突き当てを行わないが、シートの突き当てを行うようにしても良い。
【0082】
即ち、図9に示すように、ピックアップローラ231の下降中に搬送される垂れ下がりシートS1を、駆動停止中の搬送ローラ対234に突き当ててループを形成する。この際、ピックアップローラ231の下降動作を途中で停止させ、シートの斜行補正を行う。その後、ピックアップローラ231の下降動作を再開すると共に、第2搬送ローラ235の駆動を開始し、垂れ下がりシートS1の搬送を行う。垂れ下がりシートS1が搬送ローラ対234に突き当たるタイミングは、第2シート検出センサ705により垂れ下がりシートS1の先端を検知することで把握する。ピックアップローラ231の下降動作は、垂れ下がりシートS1にループが形成される第2シート検出センサ705によるシート検出から所定のタイミングで停止する。そして、垂れ下がりシートS1の斜行を補正した後、上述のようにピックアップローラ231の下降動作を再開すると共に、第2搬送ローラ235の駆動回転を開始する。具体的には、第2搬送ローラ235は、第2シート検出センサ705がシートを検出した時点から第1搬送ローラ232にてシートを所定量搬送したことに基づき駆動回転を開始する。
【0083】
なお、上述のような垂れ下がりシートS1の斜行補正は、収納庫210が装着されピックアップローラ231の下降が開始するときに第2シート検出センサ705によりシートが検出されていない場合に行うようにすることが好ましい。例えば、ピックアップローラ231の下降開始時に第1シート検出センサ704によりシートが検出されているが、第2シート検出センサ705ではシートが検出されていない場合に、第2搬送ローラ235の駆動を停止した状態でピックアップローラ231の下降を開始し、垂れ下がりシートS1の突き当て及びループ形成を行ってピックアップローラ231の下降を停止する。そして、斜行補正が行われた後に、第2搬送ローラ235の駆動の開始及びピックアップローラ231の下降の再開を行う。
【0084】
一方、収納庫210が装着されピックアップローラ231の下降が開始するときに第2シート検出センサ705によりシートが検出されている場合には、垂れ下がりシートS1の斜行補正を行わずに、前述のようにピックアップローラ231の下降開始又は第2シート検出センサ705によるシート検出のタイミングで第2搬送ローラ235の駆動を開始する。
【0085】
このような場合、ピックアップローラ231の下降中に垂れ下がりシートS1を搬送ローラ対237に突き当てるが、ピックアップローラ231の下降動作の再開に伴い第2搬送ローラ235を駆動するようにしている。即ち、この場合も、ピックアップローラ231の下降中に第2搬送ローラ235の駆動を開始している。なお、搬送ローラ対237により斜行補正を行わない場合には、多段収納装置200の搬送ローラ対237よりも下流側の搬送経路で斜行補正を行ってからシートを画像形成装置100に搬送する。
【0086】
このように、ピックアップローラ231の下降動作時に第2搬送ローラ235を駆動することで、垂れ下がりシートS1の先端を損傷させずに、シートの給送開始の指示を待機でき、このシートを上述したような有効シートとして取り扱える。
【0087】
[垂れ下がりシートの位置管理]
ここで、垂れ下がりシートS1は、このように有効シートとして取り扱うようにしているが、ピックアップローラ231の下降開始時に垂れ下がりシートS1の先端位置がどこにあるかは定まらない。このため、第2搬送ローラ235によるシートの搬送量を管理しないと、垂れ下がりシートS1を有効シートとして扱いにくい。
【0088】
そこで、本実施形態の場合、第2搬送ローラ235は、第2シート検出センサ705がシートを検出した時点から一定量回転して停止するようにしている。言い換えれば、制御部203は、垂れ下がりシートS1の先端位置が所定位置に位置するように、第2シート検出センサ705に検出結果に基づいて第2搬送ローラ235の駆動量を制御している。
【0089】
上述の垂れ下がりシートS1の先端を停止させる所定位置は、垂れ下がりシートS1をジャムしたシート(ジャムシート)として取り扱った場合に、ジャム処理し易い位置とすることが好ましい。例えば、上述のように垂れ下がりシートS1がある状態で引出ボタン205が操作された場合に、この垂れ下がりシートS1をジャムシートとして扱う場合がある。また、多段収納装置200のジャム処理のために設けられた扉を開いたりした場合には、垂れ下がりシートS1が操作者に触られる可能性があり、位置管理できない状態であると判断し、垂れ下がりシートS1をジャムシートとして扱う場合がある。そこで、本実施形態では、所定位置を、垂れ下がりシートS1の先端が第2搬送ローラ235と対向ローラ236から構成される搬送ローラ対237のニップ部の下流端から所定量下流に位置し、扉をあけてアクセスした操作者がこの垂れ下がりシートS1を摘み易い位置としている。
【0090】
但し、垂れ下がりシートS1の先端位置が第2搬送ローラ235から突出し過ぎた場合、他の収納庫210から給送されるシートと干渉する虞があるため、所定位置は、他の収納庫210から給送されるシートの搬送経路と合流する位置よりも上流側に垂れ下がりシートS1の先端位置が停止する位置とする。
【0091】
なお、垂れ下がりシートがある場合において、他の収納庫210からの給送でシートがジャムした場合には、制御部203は、ジャムの通知を行わず、垂れ下がりシートを有効シートとして利用可能としても良い。これは、他の収納庫210から給送されたシートのジャム処理を行った場合、垂れ下がりシートが取り除かれてしまうなど有効利用できない虞があるためである。なお、垂れ下がりシートの給送が終了した後は、他の収納庫210から給送されたシートのジャムを通知するようにすれば良い。
【0092】
[エンプティセンサの検出状況に対する垂れ下がりシートの取り扱い]
上述のように、本実施形態では垂れ下がりシートS1を有効シートとして取り扱うようにしているが、垂れ下がりシートS1があったとしてもエンプティセンサ702によりこのシートが検出されない場合、収納庫210にシートがないと判断される可能性がある。例えば、垂れ下がりシートS1が搬送方向の長さが短い小サイズのシートの場合、分離搬送ローラ対234に垂れ下がりシートS1が挟持されている状態であっても、シートがエンプティセンサ702により検出されず、制御部203は収納庫210が空である判断する可能性がある。
【0093】
そこで、本実施形態では、制御部203は、エンプティセンサ702によりシートが検出されていなくても、ピックアップローラ231の下降動作により第2シート検出センサ705がシートを検出している場合には、ピックアップローラ231にて給送可能なシートがあると判断するようにしている。即ち、制御部203は、垂れ下がりシートS1が第2シート検出センサ705により検出されている場合には、エンプティセンサ702により垂れ下がりシートS1が検出されていなくても、収納庫210が空であるとは判断しない。
【0094】
ここで、積載トレイ221上のシートを給送する際の動作について、図10(a)、(b)を用いて説明する。まず、収納庫210を筐体204の装着位置に装着し、ピックアップローラ231が下方位置に位置した状態で、図10(a)に示すように、積載トレイ221が昇降機構226(図5)により上昇させられる。そして、積載トレイ221上の最上位シートがピックアップローラ231に当接し、上面検出センサ700(図5、7)により検出されると、図10(b)に示すように、シートの給送を開始する。
【0095】
一方、積載トレイ221が上昇してもシートがエンプティセンサ702により検出されなかった場合には、通常、制御部203は、積載トレイ221上にシートがないと判断し、表示部206に収納庫210内にシートがない旨を報知させる。勿論、シートの給送も開始されない。
【0096】
ここで、本実施形態のエンプティセンサ702の詳しい構成について、図11(a)、(b)を用いて説明する。エンプティセンサ702は、回動軸702aを中心に回動自在に支持された揺動部材としてのアーム702bと、アーム702bの位置を検出する検出手段としてのフォトインタラプタ702cとを有する。アーム702bにはフラグ702dが一体に設けられており、アーム702bの揺動によりフラグ702dがフォトインタラプタ702cを通過可能に構成されている。
【0097】
一方、積載トレイ221のシートが積載される積載面221aには凹部221bが形成されており、図11(a)に示すように、アーム702bの先端が凹部221b内に位置するときにはフラグ702dがフォトインタラプタ702cから外れるように構成されている。図11(b)に示すように、アーム702bの先端が積載トレイ221上のシートと接触している場合には、フラグ702dがフォトインタラプタ702cの発光部と受光部との間に位置し、制御部203は、フォトインタラプタ702cの信号から積載トレイ221上にシートがあると判断する。
【0098】
このような構成において、図11(a)に示すように、垂れ下がりシートが小サイズのシートS2であり、シートS2の後端がエンプティセンサ702のアーム702bの先端よりも下流に位置する場合、アーム702bの先端は積載トレイ221の凹部221bに侵入してしまう。この結果、垂れ下がりシートがあるにも拘らず、エンプティセンサ702によりこのシートS2が検出されない状態となる。このため、本実施形態では、シートS2が第2シート検出センサ705により検出されている場合には、エンプティセンサ702の検出結果に拘わらず、収納庫210内にシートがあると判断し、このシートS2を給送可能としている。
【0099】
また、本実施形態では、上述のように積載トレイ221が上昇することで、積載トレイ221上の最上位シートを給送可能な位置に位置させるようにしている。このため、制御部203は、昇降機構226により積載トレイ221を積載トレイ221上のシートをピックアップローラ231により給送可能な位置まで上昇させた際にエンプティセンサ702によりシートが検出されていなくても、ピックアップローラ231の下降動作により第2シート検出センサ705がシートを検出している場合には、積載トレイ221から給送可能なシートがあると判断するようにしている。
【0100】
また、制御部203は、エンプティセンサ702によりシートが検出されておらず、ピックアップローラ231の下降動作により第2シート検出センサ705がシートを検出している場合には、昇降機構226により積載トレイ221を所定の積載位置(中継ぎ位置)まで下降させる。即ち、このような場合には垂れ下がりシートが給送された後、表示部206により収納庫210にシートがない旨を報知することになるが、積載トレイ221を所定の積載位置に移動させておくことで、操作者がシートを補給すべく収納庫210を引き出した際に積載トレイ221をシートを積載し易い位置に位置させておくことができる。
【0101】
なお、制御部203は、エンプティセンサ702によりシートが検出されていなくても、ピックアップローラ231の下降動作により第2シート検出センサ705がシートを検出している場合には、表示部206に積載トレイ221上にシートがない旨を報知させない。即ち、垂れ下がりシートがある場合、このシートがエンプティセンサ702により検出されていなくても、表示部206に収納庫210が空である旨の表示をしないようにしている。
【0102】
また、制御部203は、上述のようにエンプティセンサ702により検出されない垂れ下がりシートがある場合には、装置の電源がOFFされてもその旨を記憶しておき、次回の電源投入時にも、この状態を維持する。即ち、エンプティセンサ702により検出されない垂れ下がりシートがある場合には、装置の電源のON/OFFに拘わらず、表示部206に収納庫210が空である旨の表示をしない。これにより、次の電源投入時にも、制御部203が垂れ下がりシートの存在を把握でき、このシートを有効利用することができる。
【0103】
[ジョブ開始時の制御]
次に、上述のような本実施形態の制御の具体例について説明する。まず、図12を用いて、多段収納装置200がシートの給送開始の指示を受け、シートの給送動作(ジョブ)を開始する際の制御について説明する。まず、制御部203は、シート給送開始の指令を受けると、多段収納装置200の何れかの搬送経路上に残留しているシートが有るか否かを確認する(S1)。残留シートの確認は、上述したように、各搬送経路上に配置されたシート検出センサにより行う。何れの搬送経路にも残留シートがなければ(S1のY)、制御部203は、ジョブを許可し、シートの給送を開始する(S2)。
【0104】
一方、制御部203は、何れかの搬送経路に残留シートがあれば(S1のN)、そのシートが垂れ下がりシートであるか否かを確認する(S3)。残留シートが垂れ下がりシートではない場合(S3のN)、制御部203は、ジョブを禁止し、シートの給送を開始せずにジャムが発生していることを表示部206により報知する(S4)。S3において、残留シートが垂れ下がりシートである場合には(S3のY)、S2に進み、ジョブを許可して垂れ下がりシートの給送を開始する。
【0105】
[収納庫の引き出し時の制御]
次に、図13を用いて、収納庫210の引き出し時の制御(収納庫オープン時の制御)について説明する。制御部203は、引出ボタン205が押されると(S101)、垂れ下がりシートの有無を確認する(S102)。垂れ下がりシートがある場合には(S102のN)、収納庫210のロックを解除せずに、表示部206にジャムが発生している旨を通知する(S103)。
【0106】
一方、制御部203は、垂れ下がりシートがない場合には(S102のY)、ピックアップローラ231を下方位置から上方位置に上昇させる(S104)。これと共に、積載トレイ221を所定の積載位置に向けて下降を開始する(S105)。そして、ピックアップローラ231の上方位置への上昇が完了するのを待ち(S106)、完了したら(S106のY)、収納庫210のロックを解除する(S107)。即ち、引出ソレノイド205a(図7参照)をONして、収納庫210を装着位置にロックしていたロック機構を解除する。この結果、収納庫210は、不図示のバネにより筐体204の装着位置から引出位置に向けて押し出される。制御部203は、引出ソレノイド205aがONされてから一定時間が経過したら(S108のY)、引出ソレノイド205aをOFFする(S109)。
【0107】
収納庫210が引き出されている間も積載トレイ221の下降動作は継続しており、積載トレイ221が所定の積載位置(中継ぎ位置)に到達すると(S110)、積載トレイ221の下降を停止する(S111)。これにより、ピックアップローラ231が上方位置に位置し、且つ、積載トレイ221が中継ぎ位置に位置した状態で収納庫210が引出位置に位置するため、操作者のシートの補充をし易い。
【0108】
[収納庫の装着時の制御]
次に、図14を用いて、収納庫210の装着時の制御(収納庫クローズ時の制御)について説明する。収納庫210が装着位置に装着されると、制御部203は、装着センサ703(図7)の検出結果により、これを確認できる(S201)。次いで、制御部203は、ピックアップローラ231の上方位置から下方位置への下降を開始させる(S202)。この際、第2搬送ローラ235の駆動も開始する(S203)。これは、上述のように垂れ下がりシートがあった場合に、このシートが第2搬送ローラ235で突き当たることなく搬送されるようにするためである。
【0109】
ここで、ピックアップローラ231が下方位置への移動完了は、上方位置からの移動開始からの経過時間で判断している。即ち、上方位置から移動開始してから所定時間経過した場合に、ピックアップローラ231が上方位置から下方位置まで移動が完了したと判断している。このため、制御部203は、ピックアップローラ231の下降開始からの時間をカウントし、所定時間が経過したか否かを確認する(S204)。
【0110】
ピックアップローラ231の下降開始から所定時間経過したら(S204のY)、制御部203は、ピックアップローラ231を駆動する給送モータ301の駆動を停止し(S205)、第2搬送ローラ235を駆動する搬送モータ235aの駆動も停止する(S206)。これにより、ピックアップローラ231、第1搬送ローラ232及び第2搬送ローラ235の回転が停止する。
【0111】
次に、制御部203は、積載トレイ221の上昇を開始し(S207)、上面検出センサ700(図5、7)がONになったか否かを確認する(S208)。そして、上面検出センサ700がONなると、積載トレイ221の上昇を停止する(S209)。上面検出センサ700は、積載トレイ221上にシートがあれば最上位のシートを検出する。一方、積載トレイ221上にシートがなければ積載トレイ221の積載面を検出する。
【0112】
この際、制御部203は、エンプティセンサ702により積載トレイ221上のシートの有無を確認する(S210)。エンプティセンサ702によりシート有りと検出されたら(S210のY)、ピックアップローラ231によりシートを送り出すことが可能な状態なので、制御部203は、これで制御を終了し、シートの給送開始指示を待機する。
【0113】
一方、制御部203は、S204において、ピックアップローラ231が移動開始してから所定時間経過する前に(S204のN)、第2シート検出センサ705がシートを検出したか否かを確認する(S211)。ここでは、ピックアップローラ231の下降動作時に垂れ下がりシートの有無を確認している。S211で、第2シート検出センサ705がシートを検出した場合(S211のY)、即ち、垂れ下がりシートがある場合、第2シート検出センサ705がシートを検出したときから一定量、そのシートを搬送する(S212)。実際には、一定量搬送されるようにローラの駆動時間を管理している。即ち、第2シート検出センサ705がシートを検出してから一定時間経過したら、第1搬送ローラ232及び第2搬送ローラ235の駆動を停止する。
【0114】
このようにシートを一定量搬送するのは、上述したように、垂れ下がりシートの先端位置が所定位置となるようにすることで、このシートを取り除くことになった場合にこのシートを摘み易い位置で、且つ、他の収納庫210から給送されるシートと干渉しない位置に、シートの位置を管理するためである。また、制御部203は、垂れ下がりシートが待機状態である旨を記憶して置く(S213)。そして、S205に進む。
【0115】
また、S210において、エンプティセンサ702によりシートが検出されなかった場合(S210のN)、上述のS213で垂れ下がりシートが待機状態であったか否かを確認する(S214)。垂れ下がりシートが待機している場合(S214のY)、この垂れ下がりシートを給送可能であるため、制御部203は、これで制御を終了し、シートの給送開始指示を待機する。
【0116】
一方、S213で、垂れ下がりシートがない場合(S214のN)、制御部203は、表示部206に収納庫210内にシートがない旨の通知を行う(S215)。そして、積載トレイ221の所定の積載位置への下降を開始する(S216)。制御部203は、積載トレイ221が所定の積載位置に到達したか否かを確認し(S217)、到達した場合には(S216のY)、積載トレイ221の下降を停止する(S218)。積載トレイ221が所定の積載位置(中継ぎ位置)に到達したか否かは、不図示のセンサにより積載トレイ221が所定の積載位置に到達したことを検出することで行う。なお、このセンサが故障している場合などを考慮し、下限検出センサ701により積載トレイ221を検出した場合にも、積載トレイ221の下降を停止する。積載トレイ221の下降が停止したら、制御部203は、制御を終了する。
【0117】
本実施形態の場合、上述のように垂れ下がりシートがある場合には、シートの給送動作を停止せず、有効シートとして取り扱うようにしている。即ち、垂れ下がりシートをジャムシートとして扱わないようにすることで、ジャムの発生頻度を減らして生産性の低下を抑制できる。
【0118】
また、このように垂れ下がりシートを有効シートとし取り扱うことで、シートの無駄を抑制できる。特に、垂れ下がりシートが小サイズのシートで、エンプティセンサ702により検出されていなくても、第2シート検出センサ705がシートを検出していれば、収納庫210内にシートがあると判断し、このシートを給送できるようにしている。
【0119】
また、上述のような垂れ下がりシートは、ピックアップローラ231の下降動作により搬送される。本実施形態の場合、ピックアップローラ231の上方位置が、積載トレイ221にシートを積載し易いように下方位置から大きく退避した位置となっている。このため、ピックアップローラ231の上方位置から下方位置への移動量が多く、その分、垂れ下がりシートも搬送されてしまう。但し、本実施形態では、ピックアップローラ231の下降中に分離搬送ローラ対234の下流にある第2搬送ローラ235を駆動している。このため、ピックアップローラ231の下降中に搬送されるシートが第2搬送ローラ235に突き当たらずに搬送され、シートのジャム発生を抑制できる。
【0120】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、シート給送装置が多段収納装置200である場合について説明したが、本発明のシート給送装置はこれに限らず、1つの収納庫を備えたものでも良い。例えば、図1に示した給送デッキ500であっても良いし、画像形成装置100が備えるシート給送装置120であっても良い。
【0121】
また、上述の実施形態では、給送モータ301などを制御する制御部203を多段収納装置200に設けたが、これらの制御を画像形成装置100の制御部140により行うようにしても良い。また、シート給送装置は、上述の多段収納装置に関わらず1段のデッキなど他の構成であっても良い。
【符号の説明】
【0122】
200・・・多段収納装置(シート給送装置)/203・・・制御部(判断手段)/204・・・筐体(装置本体)/205・・・引出ボタン(操作手段)/206・・・表示部(報知手段)/210・・・収納庫/221・・・積載トレイ/226・・・昇降機構(昇降手段)/230・・・シート給送部(給送部)/231・・・ピックアップローラ(給送ローラ)/232・・・第1搬送ローラ(搬送ローラ)/235・・・第2搬送ローラ/300・・・駆動伝達機構(駆動手段)/301・・・給送モータ(駆動モータ)/702・・・エンプティセンサ(第1検出手段)/705・・・第2シート検出センサ(検出手段、第2検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14