(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073279
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】飲料用紙容器
(51)【国際特許分類】
B65D 3/22 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B65D3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183164
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】栗原 伸一郎
(57)【要約】
【課題】氷の落下充填時において紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が剥離し、破損するのを防止可能な飲料用紙容器を提供する。
【解決手段】容器底部11と、容器底部11の周囲に立設された筒状の容器胴部12とを備え、容器底部11又は容器胴部12は、密度0.85g/cm
3以下であり、かつ流れ方向の比引張強度が60Nm/g以上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上からなる紙製の基材21と、基材21の外側又は内側に接着層23を介して積層された二軸延伸フィルム24とを有する積層体20で構成されていることを特徴とする
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器底部と、上記容器底部の周囲に立設された筒状の容器胴部とを備え、
上記容器底部又は上記容器胴部は、
密度0.85g/cm3以下であり、かつ流れ方向の比引張強度が60Nm/g以
上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上からなる紙製の基材と、
上記基材の外側又は内側に接着層を介して積層された二軸延伸フィルムと
を有する積層体で構成されていること
を特徴とする飲料用紙容器。
【請求項2】
上記基材は、上記二軸延伸フィルムが積層されている外側と反対側の内面、又は上記二軸延伸フィルムが積層されている内側と反対側の外面に、更に樹脂フィルムが被覆されていること
を特徴とする請求項1記載の飲料用紙容器。
【請求項3】
上記二軸延伸フィルムは、二軸延伸PETフィルム、又は二軸延伸ナイロンフィルムであること
を特徴とする請求項1又は2記載の飲料用紙容器。
【請求項4】
氷充填機における充填容器に充填された氷が落下することで充填されること
を特徴とする請求項1~3のうち何れか1項記載の飲料用紙容器。
【請求項5】
氷充填機における充填容器から請求項1~3の何れか1項に記載の飲料用紙容器に落下することで充填可能なサイズに予め製氷されていること
を特徴とする氷。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷飲料を収容する飲料用紙容器において、特に氷の落下充填時において容器底部が剥離し、破損してしまうことを防止する上で好適な飲料用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、ディスペンサーやコーヒーマシンからジュースやアイスコーヒー等の冷飲料をその場で抽出して提供する業態が浸透しつつある。特にアイスコーヒーは、コーヒーマシンの技術の進歩に伴い、エスプレッソ抽出やドリップ抽出等、焙煎方式の切り替えも可能になっている。このため、コーヒーショップのみならずコンビニエンスストアにおいても、このようなコーヒーマシンを設置することで、非常に上質でコクのある風味を醸し出したアイスコーヒーを顧客に提供できるようになっている。
【0003】
例えばコンビニエンストアにおいて冷飲料を提供する場合、氷を充填したプラスチック製の容器をコーヒーマシンにおける載置部に載置し、押しボタンを押圧する。これにより、注出口から冷飲料を容器内に注ぎ込むことができる。このような冷飲料を顧客に提供する上では、事前に容器内に氷を充填する必要があるが、通常は製氷会社の氷充填機により容器内に氷を自動充填し、トップシールして箱詰めし、各コンビニエンスストアにこれらを運搬する。氷充填機により氷を自動充填する場合、氷排出部から氷を容器に落下させることにより実現することができる。
【0004】
ところで、最近の環境保護への社会的要請の下、冷飲料を収容する容器も、材質をプラスチック製から紙製に変更する必要がある。従来より紙製の容器に関する技術は各種提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、何れも紙容器を把持する手への熱伝導を抑えることで火傷を防止するために、特に暖かい飲料を収容する場合において利用されてきた。
【0005】
しかしながら、冷飲料を紙容器に注ぎこむ際には、上述したように氷を容器に対して上から氷を落下させることで充填する。暖かい飲料を収容することを前提とした従来の紙容器では、落下した氷の衝撃に耐えられる構成を備えていないことから、氷の落下衝撃により紙容器の特に底部が剥離し、或いは破損してしまう虞があった。
【0006】
これに加えて、このような紙容器をコーヒーショップやコンビニエンスストアに納品する際には、紙容器同士を互いに積み重ね、トラック等の車両に積んで搬送することになる。この搬送の過程で、積み重ねた紙容器同士が搬送時に加わった衝撃により互いに衝突し合ったり、或いは充填された氷による搬送時の衝撃が紙容器に加わることにより、紙容器の底部が剥離し、破損してしまう虞もあった。これに加えて、氷が充填された紙容器をコーヒーショップやコンビニエンスストアにおける冷凍庫内に陳列する際に、当該紙容器を誤って落としてしまった場合、紙容器の底部が破損してしまう虞もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、氷の落下充填時において、また互いに紙容器同士を積み重ねて搬送する際において、更に、氷が充填された紙容器を誤って落としてしまった場合において、紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が剥離し、破損するのを防止可能な飲料用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、密度0.85g/cm3以下であり、かつ流れ方向の比引張強度が60Nm/g以上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上からなる紙製の基材と、上記基材の外側又は内側に接着層を介して積層された二軸延伸フィルムとを有する積層体で容器底部又は容器胴部を構成した、飲料用紙容器を発明した。
【0010】
第1発明に係る飲料用紙容器は、容器底部と、上記容器底部の周囲に立設された筒状の容器胴部とを備え、上記容器底部又は容器胴部は、密度0.85g/cm3以下であり、かつ流れ方向の比引張強度が60Nm/g以上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上からなる紙製の基材と、上記基材の外側又は内側に接着層を介して積層された二軸延伸フィルムとを有する積層体で構成されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る飲料用紙容器は、第1発明において、上記基材は、上記二軸延伸フィルムが積層されている外側と反対側の内面、又は上記二軸延伸フィルムが積層されている内側と反対側の外面に、更に樹脂フィルムが被覆されていることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る飲料用紙容器は、第1発明又は第2発明において、上記二軸延伸フィルムは、二軸延伸PETフィルム、又は二軸延伸ナイロンフィルムであることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る飲料用紙容器は、第1発明~第3発明の何れかにおいて、氷充填機における充填容器に充填された氷が落下することで充填されることを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る氷は、氷充填機における充填容器から第1発明~第3発明の何れかの飲料用紙容器に落下することで充填可能なサイズに予め製氷されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した構成からなる本発明によれば、その材質を構成する積層体の基材としての原紙の密度を0.85g/cm3以下としている。基材の密度を通常よりも低くすることにより、落下してくる氷に対して積層体がしなやかに撓んで変形する。特に落下してくる氷は、飲料用紙容器の容器底部に先ず衝突し、この容器底部に大きな衝撃力が加わることになるが、容器底部を構成する積層体につき基材の密度を低くすることで、その衝撃力に対して容器底部がしなやかに追従して弾性的に変形し、衝撃を吸収することができる。これにより、容器底部に対して落下した氷の衝撃力により、当該容器底部が剥離し、破損してしまうのを防止することが可能となる。
【0016】
これにより、氷の落下充填時において、また互いに紙容器同士を積み重ねて搬送する際において、更に、氷が充填された紙容器を誤って落としてしまった場合において、紙容器の底部に加わった衝撃により、その底部が剥離し、破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明を適用した飲料用紙容器を一部破断して示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の飲料用紙容器1を側断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の2A-2A断面図である。
【
図4】
図4は、積層体の一部の他の断面拡大図である。
【
図5】
図5は、氷充填機により氷を自動充填する例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した飲料用紙容器について、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0019】
図1は、本発明を適用した飲料用紙容器1を一部破断して示す斜視図である。
図2(a)は、
図1の飲料用紙容器1を側断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の2A-2A断面図である。
【0020】
飲料用紙容器1は、アイスコーヒーやアイスティー、ジュース等の冷飲料が収容される容器であって、容器底部11と、容器底部11の周囲に立設された筒状の容器胴部12とを備えている。即ち、筒状に形成される容器胴部12の下端部側に設けられる容器底部11により、筒の下端部が閉塞される形態とされる。
【0021】
容器底部11は、平面視円形状に形成され、周縁から下方に向けて突出された突出部11aを有する。容器底部11は、紙製の基材21と、基材21の内側に積層された二軸延伸フィルム22を少なくとも有する積層体20で構成されている。
【0022】
容器胴部12は、積層体20を筒状にすることで形成される。容器胴部12は、積層体20を筒状にして周方向の端部を互いに貼り合わせることによりシーム部31が形成される。容器胴部12は、上方に向かうにつれて拡径されて形成されるが、これに限らず、上下方向に拡径されることなく、円筒状等の筒状に形成されてもよい。容器胴部12の上端は外側に丸め込むことでトップカール2aが形成されるものであってもよい。
【0023】
図3は、この積層体20の一部の断面を拡大して示している。このうち
図3(a)に示す積層体20_1の例では、容器の内側から容器の外側にかけて樹脂フィルム24a、接着層23b、二軸延伸フィルム22、接着層23a、基材21の順に積層されている。
【0024】
基材21は、紙製で構成されており、市販のコップ原紙で構成されている。この基材21は、紙コップとして適用する上で最適な厚みで構成されてなり、例えば0.2mm~0.5mm程度で構成されるが、これに限定されるものではない。また、基材21の坪量は、例えば200g/m2~300g/m2程度で構成されるが、これに限定されるものではない。基材21は、機械的にすりつぶしてパルプを製造する、いわゆる機械パルプにより形成されるものであってもよいし、化学的に繊維を抽出する、いわゆる化学パルプにより形成されるものであってもよい。
【0025】
基材21は、積層体20の強度を増強させるべく、密度0.85g/cm3以下であり、かつ流れ方向の比引張強度が60Nm/g以上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上で構成することが前提となる。ここでいう流れ方向とは基材21としての原紙を抄紙するときの原紙の進行方向または紙繊維の配向方向に相当する。
【0026】
基材21の内側に積層される接着層23aは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。この接着層23aは、基材21と二軸延伸フィルム22とを接着するために用いられる。接着層23aは、PPやPEの代替として接着剤を使用してもよい。この接着剤としては、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ樹脂等を使用してもよい。
【0027】
接着層23aの内側に積層される二軸延伸フィルム22は、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにより構成される場合を例にとり説明にするが、これに限定されるものでは無く、二軸方向に延伸されたいかなる延伸フィルムで構成されるものであってもよい。二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムは、共に、引張強度が200MPa以上であり、突刺強度5N以上で構成されていることから、積層体20の強度をより補強することが可能となる。
【0028】
二軸延伸フィルム22の内側に積層される接着層23bは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ樹脂等の接着剤からなるが、これに限定されるものではなく、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等により構成されていてもよい。接着層23bは、樹脂フィルム24aと二軸延伸フィルム22との両者間の密着性を向上させるために介装されている。
【0029】
接着層23bの内側に積層される樹脂フィルム24aは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。樹脂フィルム24aを上述した防水性を有する薄膜で構成することにより、紙製の基材21からの水漏れを防止する役割を担うとともに、積層体20の強度を補強する役割を担う。
【0030】
基材21をベースとして接着層23a、二軸延伸フィルム22、接着層23b、樹脂フィルム24aの各層を積層させ、積層体20_1を形成する上では、水溶性またはエマルジョンタイプの接着剤を使用することでラミネート加工するウェットラミネート、基材21表面に接着剤を塗布した後、乾燥装置内で溶剤を一旦蒸発させ、熱圧着するドライラミネートの何れの方法を利用してもよい。
【0031】
なお積層体20_1は、上述した形態に限定されるものではなく、
図3(b)に示すように、容器の内側から容器の外側にかけて樹脂フィルム24a、接着層23b、二軸延伸フィルム22、接着層23a、基材21、樹脂フィルム25が順に積層されている。この
図3(b)に示す積層体20_1´において、上述した積層体20_1と同様の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0032】
樹脂フィルム25は、基材21の外側に積層されており、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。樹脂フィルム25を上述した防水性を有する薄膜で構成することにより、紙製の基材21からの水漏れを外側から防止する役割を担うとともに、積層体20の強度を補強する役割を担う。
【0033】
基材21は、二軸延伸フィルム22が積層されている内側と反対側の外面21aに更に樹脂フィルム25が被覆されている。この樹脂フィルム25により、積層体20の強度を更に補強することができる。
【0034】
図4は、基材21の外側に二軸延伸フィルム22を積層させた積層体20_2を示している。この積層体20_2は、
図4(a)に示すように、容器の内側から容器の外側にかけて基材21、接着層23c、二軸延伸フィルム22、接着層23d、樹脂フィルム24cが順に積層されている。この
図4(a)に示す積層体20_2において、上述した積層体20と同様の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0035】
基材21の外側に積層される接着層23cは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。接着層23cは、PPやPEの代替として接着剤を使用してもよい。この接着剤としては、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ樹脂等を使用してもよい。
【0036】
接着層23cの外側に積層される二軸延伸フィルム22は、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムにより構成される場合を例にとり説明にするが、これに限定されるものでは無く、二軸方向に延伸されたいかなる延伸フィルムで構成されるものであってもよい。
【0037】
二軸延伸フィルム22の外側に積層される接着層23dは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ樹脂等の接着剤からなるが、これに限定されるものではなく、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等により構成されていてもよい。
【0038】
接着層23dの外側に積層される樹脂フィルム24cは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。
【0039】
なお積層体20_2は、上述した形態に限定されるものではなく、
図4(b)に示すように、容器の内側から容器の外側にかけて樹脂フィルム25、基材21、接着層23c、二軸延伸フィルム22、接着層23d、樹脂フィルム24cが順に積層されている積層体20_2´として具現化されるものであってもよい。この
図4(b)に示す積層体20_2´において、上述した積層体20_2と同様の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0040】
樹脂フィルム25は、基材21の内側に積層されており、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等からなる薄膜により構成されている。
【0041】
基材21は、二軸延伸フィルムが積層されている外側と反対側の内面21bに更に樹脂フィルム25が被覆されている。この樹脂フィルム25により、積層体20の強度を更に補強することができる。
【0042】
なお、本発明によれば、積層体20を実際の容器胴部12に構成していく上で、
図1に示すように、基材21を構成する原紙の流れ方向(MD)を容器胴部12の上方向となるように形成されていてもよい。これに伴い、流れ方向と垂直な方向(CD)は、容器胴部12の周方向に配向することになる。また、積層体20を実際の容器底部11に構成していく上で、
図2(b)に示すように、基材21の流れ方向(MD)が、シーム部31を基点として時計周りWに0~180°の方向に配向してなるようにしてもよい。
【0043】
また、本発明によれば、上述した構成からなる積層体20は、少なくとも容器底部11に適用されていればよく、容器胴部12に適用されていなくてもよい。かかる場合には、容器底部11のみに積層体20が用いられ、容器胴部12には、他の材質からなる紙材が適用されることとなる。
【0044】
更に本発明によれば、上述した構成からなる積層体20は、少なくとも容器胴部12に適用されていればよく、容器底部11に適用されていなくてもよい。かかる場合には、容器胴部12のみに積層体20が用いられ、容器底部11には、他の材質からなる紙材が適用されることとなる。
【0045】
上述した構成からなる飲料用紙容器1は、コンビニエンストア等において氷を充填してコーヒーメーカーから冷飲料を提供する場合において、特に顕著な効果を発揮する。氷は、製氷会社の氷充填機により氷を自動充填された上でコンビニエンストア等へ搬送される。
図5に示すように氷充填機10は、氷Iが予め充填された充填容器52と、レバー53と、載置台51とを備えている。載置台51上に本発明を適用した飲料用紙容器1を載置し、レバー53を引くと、充填容器52に充填された氷Iが飲料用紙容器1内に落下することにより、これに充填される。氷Iを一つずつアイストングで挟んで容器に入れる作業と比較して、レバー53を引くだけで極めて容易に飲料用紙容器1に氷Iを充填することができる。
【0046】
このとき、飲料用紙容器1内に氷Iが上から落下することになるが、本発明を提供した飲料用紙容器1は、その材質を構成する積層体20の基材21としての原紙の密度を0.85g/cm3以下としている。基材21の密度を通常よりも低くすることにより、落下してくる氷Iに対して積層体20がしなやかに撓んで変形する。特に落下してくる氷Iは、飲料用紙容器1の容器底部11に先ず衝突し、この容器底部11に大きな衝撃力が加わることになるが、容器底部11を構成する積層体20につき基材21の密度を低くすることで、その衝撃力に対して容器底部11がしなやかに追従して弾性的に変形し、衝撃を吸収することができる。これにより、容器底部11に対して落下した氷Iの衝撃力により、当該容器底部11が剥離し、破損してしまうのを防止することが可能となる。
【0047】
なお、本発明は、氷充填機10における充填容器52から飲料用紙容器1に落下することで充填可能なサイズに予め製氷されている氷Iであってもよい。
【0048】
これに加えて、本発明を提供した飲料用紙容器1は、その材質を構成する積層体20の基材21について、流れ方向の比引張強度が60Nm/g以上、流れ方向と垂直な方向の比引張強度が30Nm/g以上の高強度な原紙で構成している。これにより、容器底部11に対して落下した氷の衝撃力に対して高強度な基材21により対抗することができ、容器底部11が剥離し、破損してしまうのを防止することが可能となる。
【0049】
また、飲料用紙容器1は、コーヒーショップやコンビニエンスストアに納品される際には、互いに積み重ね、トラック等の車両に積んで搬送するが、この搬送の過程で、積み重ねた飲料用紙容器1同士が搬送時に加わった衝撃により互いに衝突し合うことがあり、また搬送時には充填された氷による衝撃が加わる場合もある。上述した構成からなる本発明を適用した飲料用紙容器1によれば、搬送時に加わった衝撃に対しても、基材21の密度を低くすることで弾性的に変形自在とすることで衝撃を吸収し、高強度な基材21によりその衝撃力に対抗することができる。
【0050】
本発明は更に、基材21における、二軸延伸フィルム22が積層されている内側と反対側の外面21aに樹脂フィルム25を被覆させることで、又は基材21における、二軸延伸フィルムが積層されている外側と反対側の内面21bに更に樹脂フィルム25を被覆させることで、積層体20の強度をより向上させることができ、上述した衝撃力に対して更に耐久性を持たせることが可能となる。
【実施例0051】
以下、本発明の効果を確認するために行った実験的検証結果について説明をする。
【0052】
実験的検証では、バルクの基材21の衝撃抵抗力について確認をするため、以下の表1に示す基材21の原紙(本発明例1~2、比較例1~3)の供試材を準備した。これらの検証用の供試材の紙厚(mm)、密度(g/cm3)、引張強度(kN/m)、比引張強度(Nm/g)、伸び(%)のデータは、この供試材を提供するメーカーから入手したものである。ちなみに、比引張強度は、引張強度(kN/m)を紙の坪量(g/m2)で割った値である。引張強度(kN/m)、比引張強度(Nm/g)、伸び(%)については、流れ方向(MD)、流れ方向と垂直な方向(CD)についてそれぞれデータを示している。また、パルプ処理は、原紙の製造方法を示すものであり、機械パルプか、化学パルプ、機械パルプと化学パルプの両方を経たものなのかを示している。
【0053】
これらの供試材のうち、本発明例1、2は、何れも密度が0.85g/cm3以下であり、かつ比引張強度(MD)が60Nm/g以上、比引張強度(CD)が30Nm/g以上であるのに対して、比較例1、2は、共に密度が0.85g/cm3を超えており、比引張強度(MD)が60Nm/g以上、比引張強度(CD)が30Nm/g以上である。また、比較例3は、密度が0.85g/cm3以下であるが、比引張強度(MD)が60Nm/g未満、比引張強度(CD)が30Nm/g未満である。
【0054】
これらの各供試材(本発明例1~2、比較例1~3)について、それぞれ落球試験を行った。落球試験は、60gの錘を各落球高さから各供試材に落下させる。そして錘を落下させた後の各供試材について観察し、破壊されたか否かを確認する。落球試験の結果は、錘を落下させることで破壊した供試材数/N数で結果を表す。以下の表1に示す実験的検証では、N数を5としている。つまり、5回ずつ試験を行い、N数である5を分母とし、破壊した供試材数を分子に示している。本実験的検証においては、破壊した供試材数/N数が2/5以下であれば衝撃に対して抵抗があるものと判断する。これに対して、破壊した供試材数/N数が2/5超であれば衝撃に対して抵抗が無いものと判断する。ちなみに落球高さは、本実験的検証の場合、800mm、900mm、1000mmとしている。
【0055】
【0056】
落球試験の結果、本発明例1、2は、破壊した供試材数/N数が、何れも0/5~1/5であり、良好な結果が得られた。
【0057】
これに対して、比較例1は、落球高さが800mmの場合には、破壊した供試材数/N数が1/5であるものの、落球高さが900mm、1000mmの場合には、破壊した供試材数/N数が3/5、5/5と悪化していく傾向が見られた。また比較例2も、落球高さが800mmの場合には、破壊した供試材数/N数が2/5であるものの、落球高さが900mm、1000mmの場合には、破壊した供試材数/N数が4/5、5/5と悪化していく傾向が見られた。このため、密度が0.85g/cm3を超える比較例1、2は、何れも錘の落下による衝撃が加わると、密度が高くなることで、しなやかに追従して弾性的に変形追従できず、衝撃を吸収することができなくなり、破壊に至ったものと考えられる。
【0058】
また比較例3は、落球試験の結果が、何れの落球高さにおいても破壊した供試材数/N数が5/5であった。このため、比引張強度(MD)が60Nm/g未満、比引張強度(CD)が30Nm/g未満では、そもそもの原紙としての強度が得られていないため、衝撃に対して抵抗することができないことが示されている。
【0059】
以上の落球試験の結果から、上述した本発明の範囲に含まれる本発明例1、2が、落下による衝撃に対して、剥離、破損するのを防止することができることが示唆されている。
本発明例3は、内側から外側にかけて樹脂フィルム(PE)15μm、接着層(PE)15μm、二軸延伸フィルム(PETフィルム)12μm、接着層(PE)15μm、基材(本発明例1)により構成される積層体20である。
本発明例4は、内側から外側にかけて樹脂フィルム(PE)15μm、接着層(PE)15μm、二軸延伸フィルム(ナイロンフィルム)12μm、接着層(PE)15μm、基材(本発明例1)により構成される積層体20である。
落球試験では、実際の積層体20の飲料用紙容器1への適用形態を考慮し、積層体20の内側に対して錘を落下させる。即ち、積層体20の内側を上方に向けた状態で載置し、その積層体20の内側に対して上から錘を落下させる。
即ち、本発明例3、4は何れも積層構造は互いに同一であるが、本発明例3は、二軸延伸フィルムがPETフィルムであるのに対して、本発明例4は、二軸延伸フィルムがナイロンフィルムである点が互いに相違する。基材に関しては、何れも本発明例1の原紙を利用している。
これらの各供試材(本発明例3~4)について、それぞれ落球試験を行った。落球試験の条件は、実施例1と同様であり、落球高さは、本実験的検証の場合、800mm、900mm、1000mmとしている。表2に落球試験の結果を示す。
以上の落球試験の結果から、上述した本発明の範囲に含まれる本発明例3、4が、落下による衝撃に対して、剥離、破損するのを防止することができることが示唆されている。また、二軸延伸フィルムとして、PETフィルム、ナイロンフィルム間ともに衝撃力に対する抵抗力は大差ないことが示されている。