(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073316
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】固体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/24 20060101AFI20220510BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20220510BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220510BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20220510BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20220510BHJP
A61P 25/26 20060101ALI20220510BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K9/24
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/36
A61K47/44
A61K31/522
A61K31/525
A61P25/26
A61P3/02 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183232
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】茂木 亮
(72)【発明者】
【氏名】清水 篤史
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA40
4C076AA48
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4C086ZA02
4C086ZC24
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、外層部と内層部を備える固体製剤であり、内層部の速崩性が向上した固体製剤を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、少なくとも一層以上の外層部と、発泡性組成物からなる内層部を備えることを特徴とする、固体製剤を提供する。これによれば、外層部と内層部を備える固体製剤であり、内層部の速崩性が向上した固体製剤を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一層以上の外層部と、発泡性組成物からなる内層部を備えることを特徴とする、固体製剤。
【請求項2】
前記内層部には有効成分を含み、前記固体製剤を精製水に浸漬した時に前記有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間は1時間以上であることを特徴とする、請求項1に記載の固体製剤。
【請求項3】
前記有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間と、前記有効成分の80質量%が溶出するまでの溶出時間との差が、3時間以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固体製剤。
【請求項4】
前記発泡性組成物は、発泡成分、及び発泡助剤を含有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体製剤。
【請求項5】
前記外層部は、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、及び油脂から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の固体製剤。
【請求項6】
前記有効成分は、カフェインであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の固体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体製剤に関する。より詳しくは、医薬品、健康食品などの分野で用いる固体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
固体製剤として、有効成分を含有する内層部を徐放性の外層部でコーティングして、腸などの生体内の特定部位で溶出させる従来のパルス放出製剤が知られている。例えば、腸溶性のパルス放出製剤においては、胃の酸性環境下では溶解せず、腸で溶解するコーティングが外層部として設けられており、コーティングの内部には有効成分を含有する内層部が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内層部に含まれる有効成分の生体内の特定部位での放出をより速やかとするために、内層部に崩壊剤が配合されたパルス放出製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のパルス放出製剤においては、外層部の溶解後に内層部に含有される有効成分が放出されるものの、内層部の速崩性が十分でないため、放出時における有効成分の放出速度は十分とはいえなかった。
【0006】
本発明は、外層部と内層部を備える固体製剤であり、内層部の速崩性が向上した固体製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、外層部と内層部を備える固体製剤において、内層部を発泡性組成物から構成することにより、内層部の速崩性をより向上することができるという知見に至り、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]少なくとも一層以上の外層部と、発泡性組成物からなる内層部を備えることを特徴とする、固体製剤。
これにより、内層部の速崩性が向上した固体製剤を提供することができる。
[2]前記内層部には有効成分を含み、前記固体製剤を精製水に浸漬した時に前記有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間は1時間以上であることを特徴とする、[1]に記載の固体製剤。
これにより、所定の時間の後に有効成分を速やかに放出できる固体製剤を提供することができる。
[3]前記有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間と、前記有効成分の80質量%が溶出するまでの溶出時間との差が、3時間以下であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の固体製剤。
これにより、内層部の有効成分を急速に放出できる固体製剤を提供することができる。
[4]前記発泡性組成物は、発泡成分、及び発泡助剤を含有することを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の固体製剤。
これにより、発泡性組成物の発泡力及び保存安定性を向上することができる。
[5]前記外層部は、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、及び油脂から選択される1種以上を含有することを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の固体製剤。
これにより、外層部の溶解時間を制御することにより内層部の成分の溶出時間をより正確に制御することができる。
[6]前記有効成分は、カフェインであることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の固体製剤。
これにより、所定時間経過後に、カフェインを内層部からの急速に放出する固体製剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外層部と内層部を備える固体製剤であり、内層部の速崩性が向上した固体製剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る固体製剤の溶出試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る固体製剤の実施形態を詳細に説明する。
なお、実施形態に記載する固体製剤については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0012】
本発明の固体製剤は、少なくとも一層以上の外層部と、発泡性組成物からなる内層部を備えることを特徴とする製剤である。これにより、内層部の速崩性が向上した、好ましくは内層部からの有効成分の放出速度が向上した固体製剤を提供することができる。
【0013】
本発明の固体製剤は、外層部が内層部への水分の侵入を抑制し、崩壊時間を制御する。そして、所定時間経過後、内層部へ水分が侵入すると、発泡性組成物からなる内層部からガスが発生して急速に内層部の崩壊が生じるというものである。このような特徴を利用することにより、内層部に有効成分を含有する固体製剤を摂取後、所定時間経過後に体内に有効成分を放出するという固体製剤を提供することができる。
【0014】
内層部に有効成分を含む固体製剤において、有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間は1時間以上であることが好ましい。下限値としては、より好ましくは2時間以上であり、更に好ましくは3時間以上であり、特に好ましくは4時間以上である。上限値としては、好ましくは20時間以下であり、より好ましくは15時間以下であり、更に好ましくは12時間以下であり、特に好ましくは9時間以下である。なお、内層部の有効成分の溶出時間は、外層部の溶解性や崩壊性を調整することにより制御することができる。有効成分の20質量%が溶出するまで溶出時間を制御することにより、例えば、胃を通過して腸で崩壊するという製剤や、睡眠時間などの所定の設定時間が経過した後に崩壊するという製剤を得ることができる。
【0015】
また、内層部に有効成分を含む固体製剤において、有効成分の20質量%が溶出するまでの溶出時間(以下、「20%溶出時間」という。)と、有効成分の80質量%が溶出するまでの溶出時間(以下、「80%溶出時間」という。)との差(以下、「溶出時間差」という。)が、3時間以下であることが好ましい。なお、溶出時間差は、「80%溶出時間-20%溶出時間」である。溶出時間差の上限値は、より好ましくは2時間以下であり、更に好ましくは1時間以下であり、特に好ましくは30分以下である。溶出時間差を小さくすることにより、内層部から有効成分が急速に放出される固体製剤を提供することができる。
【0016】
ここで溶出時間とは、第17改正日本薬局方に規定された溶出試験法(パドル法)により測定したものである。溶出試験は、試験液として精製水900mLを用い、パドルの回転数は50rpm、試験液の温度は37℃の条件で行う。溶出した有効成分の定量は、所定の時間ごとに試験液をサンプリングし、有効成分の含有量を測定する。なお、試験液としては、固体製剤の用途に応じて精製水、第17改正日本薬局方溶出試験第1液(pH1.2)、第2液(pH6.8)又は薄めたMcIlvaineの緩衝液(pH5.0)などを選択してもよい。
【0017】
本発明の固体製剤の剤型としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではないが、錠剤、カプセル剤が好ましい。錠剤としては、例えば、有核錠(内層部:内核錠、外層部:外層)、フィルムコーティング錠(内層部:錠剤、外層部:フィルムコート層)、糖衣錠(内層部:錠剤、外層部:フィルムコート層及び/又は糖衣層)などが挙げられる。カプセル剤としては、ハードカプセル製剤(内層部:充填物、外層部:ハードカプセル)、ソフトカプセル製剤(内層部:充填物、外層部:ソフトカプセル)などが挙げられる。これらの中でも、崩壊時間を制御しやすいという観点から、錠剤が好ましく、有核錠がより好ましい。
【0018】
本発明の固体製剤を構成する内層部と外層部について以下に詳細に説明する。
[固体製剤の内層部]
本発明の固体製剤は、発泡性組成物からなる内層部を備える。外層部の溶解により内層部と水が接触すると、内層部の発泡性組成物が生体内の水の存在下で発泡して内層部が急速に崩壊する。これにより、内層部の有効成分が速やかに溶出する。
【0019】
本発明の内層部に用いられる発泡性組成物は、水と接触することによりガスを発生する組成物であり、特に制限されないが、発泡成分、発泡助剤を含有することが好ましい。
なお、発泡性組成物には、水分を実質的に含まない。なお、「実質的に含まない」とは、例えば、5体積%未満である。
【0020】
(発泡成分)
発泡性組成物に含有される発泡成分は、水の存在下で発泡助剤と反応して炭酸ガスを発生するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。発泡成分としては、例えば、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
発泡成分の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。好ましい発泡成分としては、汎用性の観点から、炭酸水素ナトリウムである。また、これらの発泡成分は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
発泡性組成物中の発泡成分の含有量は、特に制限されるものではない。発泡成分の含有量としては、例えば、20質量%以上80質量%以下である。下限値としては、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
発泡成分の含有量を上記範囲とすることで、発泡性組成物の発泡性を向上することができる。
【0022】
(発泡助剤)
発泡性組成物に含有される発泡助剤は、発泡成分と反応して炭酸ガスを発生するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。発泡助剤としては、例えば、炭素数2~6の有機酸などが挙げられる。
発泡助剤の具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、コハク酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸などが挙げられる。好ましい発泡助剤としては、汎用性の観点から、クエン酸である。また、これらの発泡助剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0023】
発泡性組成物中の発泡助剤の含有量は、特に制限されるものではない。発泡性組成物中の発泡助剤の含有量としては、例えば、10質量%以上70質量%以下である。下限値としては、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
また、発泡性組成物中の発泡成分の含有量に対する発泡助剤の含有量の比は、特に制限されるものではない。発泡成分の含有量に対する発泡助剤の含有量の比としては、例えば、0.1以上2.0以下である。下限値としては、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.5以上である。一方、上限値としては、より好ましくは1.7以下、更に好ましくは1.6以下、特に好ましくは1.5以下である。
発泡助剤の含有量を上記範囲とすることで、発泡性組成物の発泡性を向上することができる。
【0024】
本発明の発泡性組成物における発泡成分と発泡助剤の合計量は、特に制限されないが、好ましくは30~99質量%である。下限値は、発泡性の観点から、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。上限値は、有効成分の配合量の観点から、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは90質量%以下である。
【0025】
(クエン酸カルシウム)
本発明の発泡性組成物は、発泡成分、発泡助剤に加えて、クエン酸カルシウムを含有することが好ましい。クエン酸カルシウムは、発泡成分と発泡助剤の反応を阻害するためのものである。発泡成分と発泡助剤の反応をクエン酸カルシウムが阻害することにより、保存安定性が改善した発泡性組成物を効率よく製造することができる。クエン酸カルシウムは、発泡成分と発泡助剤の反応をより阻害するために、発泡助剤をコーティングしていることが好ましい。
【0026】
クエン酸カルシウムの含有量は、特に制限されるものではない。クエン酸カルシウムの含有量としては、例えば、0.2質量%以上9.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは6.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下、特に好ましくは3.0質量%以下である。
また、発泡助剤の含有量に対するクエン酸カルシウムの含有量の比は、特に制限されるものではない。発泡助剤の含有量に対するクエン酸カルシウムの含有量の比としては、例えば、0.01以上0.11以下である。下限値としては、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.04以上である。一方、上限値としては、より好ましくは0.09以下、更に好ましくは0.07以下、特に好ましくは0.06以下である。
クエン酸カルシウムの含有量を上記範囲とすることで、発泡性組成物の発泡力(発泡量の増大)及び保存安定性を向上することができる。
【0027】
(結合剤)
発泡性組成物は、結合剤により造粒して、発泡性顆粒としてもよい。結合剤は、組成物の結合力を高めるものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。結合剤としては、例えば、セルロース類、合成樹脂、糖類、ポリエーテル、ワックス類などが挙げられる。
結合剤の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、クロスカルメロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、パラフィン、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、デンプン、プルラン、シェラック、ツェインなどが挙げられる。好ましい結合剤としては、発泡性組成物の発泡力及び保存安定性を向上や、成形性の観点から、ヒドロキシプロピルセルロース、シェラック、ツェインである。また、これらの結合剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
発泡性顆粒とすることにより、発泡性組成物の発泡力(発泡量の増大)及び保存安定性を一層向上することができる。また、錠剤化における加工適性も向上する。
【0028】
(発泡成分、発泡助剤の被膜材によるコーティング)
発泡成分と発泡助剤の反応を阻害するための他の手段としては、例えば、発泡成分及び発泡助剤のいずれか一方または両方を、被膜材によりコーティングする手段が挙げられる。このようなコーティングの被膜材としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ゼラチン、シェラック、ツェイン、硬化油脂などが挙げられる。
発泡成分及び発泡助剤のいずれか一方または両方を被膜材でコーティングすることにより発泡性組成物の保存安定性を向上させることができる。
【0029】
なお、発泡成分、発泡助剤を被膜材でコーティングする方法は、本技術分野において使用されている通常のものであれば、特に制限されるものではない。コーティング方法としては、例えば、造粒コーティング法、パンコーティング法、転動コーティング法、流動コーティング法、ドライコーティング法などが挙げられる。
【0030】
発泡成分、発泡助剤の粒径は、特に制限されるものではないが、例えば、10μm以上、1mm以下である。下限値としては、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上である。上限値としては、より好ましくは500μm以下である。
発泡成分、発泡助剤の粒径を10μm以上とすることにより、表面積が小さくなるため、被膜材によるコーティング性能を向上することができる。また、粒径を1mm以下とすることにより、錠剤化などの加工適性に優れる。
【0031】
(有効成分)
有効成分は、効能、効果を発揮するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、医薬品、医薬部外品、OTC医薬品、漢方薬、生薬、化粧品、化粧料、健康食品、サプリメント、動物用薬品、飼料などに用いられる医薬成分、機能性成分などが挙げられる。
医薬成分、機能性成分の具体例としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、クロム、モリブデン、ポリグルタミン酸、藤茶ポリフェノール、カフェイン、脂質調整剤、抗糖尿病剤、食欲抑制剤、降圧剤、血管拡張剤、βアドレナリン受容体遮断薬、強心イオンチャンネル剤、不整脈治療剤、抗凝血剤、中枢神経機能改善剤、交感神経刺激剤、副交感神経刺激剤、抗ムスカリン様作動剤、ドーパミン作動剤、精神安定剤、抗鬱剤、抗癲癇剤、抗不安剤、催眠剤、覚醒剤、動物由来物質、植物由来物質、ラピジン、ノビレチン、スルフォラファン、アンペロプシン、クルクミン類、レスベラトロール類、ゲラニオール、オサジン、イソリキリチゲニン、ヒドロキシチロソール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、S-アデノシルメチオニン、アントシアニン、アスコルビン酸2-グルコシド、プロテオグリカン、N-アセチルグルコサミン、コラーゲン、ビルベリーエキス、ニンジン末、ゴカヒ、カンゾウ、シャクヤク、ケイヒ、ウイキョウ、シュクシャ、ビフィズス菌、乳酸菌、酵母、ポリデキストロースなどの食物繊維などが挙げられる。また、これらの医薬成分、機能性成分は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0032】
(その他の成分)
本発明の発泡性組成物は、上記した発泡成分、発泡助剤、結合剤、有効成分以外に、必要に応じて医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に用いられる添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、賦形剤、甘味剤、酸味剤、香料、着色剤などが挙げられる。
【0033】
賦形剤は、顆粒の成分組成物のかさを調節するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。賦形剤としては、例えば、デキストリン、澱粉、糖類、糖アルコール、セルロース、結晶セルロースなどが挙げられる。また、これらの賦形剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0034】
[固体製剤の外層部]
本発明の固体製剤は少なくとも一層以上の外層部を備える。外層部としては、生体外、生体内部の水から内層部を保護することができ、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、有核錠の外層のように粉体組成物を打錠することにより得られたもの、フィルムコーティングや糖衣のようなコーティング、ハードカプセルやソフトカプセルなどのカプセル等が挙げられる。外層部は、腸溶性、徐放性などの特性を備えたものが好ましい。本発明の固体製剤はこれらの外層部を1種又は2種以上備えてもよい。また、外層部は少なくとも一層以上であればよく、二層以上備えてもよい。
【0035】
外層部として粉体組成物を打錠することにより得る場合、粉体組成物としては、特に制限されないが、油性成分、結合剤などを含有することが好ましい。
油性成分は、外層部に添加する量を調節することにより外層部の溶解時間を制御することができる。油性成分としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。天然ワックス類、高級脂肪酸類、パラフィン類、油脂、高級アルコール類が挙げられる。この中でも、好ましくは油脂であり、より好ましくは硬化油であり、特に好ましくは硬化菜種油である。
【0036】
結合剤は、粉体組成物の結合力を向上し、さらに溶出時間をより正確に制御することができる。結合剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。結合剤としては、例えば、セルロース類、合成樹脂、糖類、ポリエーテルなどが挙げられる。
結合剤の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、クロスカルメロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、デンプン、プルラン、シェラック、ツェインなどが挙げられる。徐放性及び成形性を向上するという観点から、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。また、これらの結合剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0037】
粉体組成物は、油性成分、結合剤以外にも、必要に応じて医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に用いられる添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、賦形剤、甘味剤、酸味剤、香料、着色剤などが挙げられる。
【0038】
外層部にコーティングを用いる場合、腸溶性コーティング、徐放性コーティング、フィルムコーティング、糖衣などが用いられる。好ましくは腸溶性コーティング又は徐放性コーティングコーティングである。
【0039】
腸溶性コーティングの組成としては、例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0040】
徐放性コーティングの組成としては、例えば、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースが挙げられる
【0041】
糖衣コーティングには、単糖、二糖、糖アルコールなどが含まれ、例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどが挙げられる。また、これらの糖類は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0042】
フィルムコーティングには、合成樹脂、多糖類などのフィルムコーティング剤が含まれ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プルラン、ツェイン、シェラック、イーストラップなどが挙げられる。また、これらのフィルムコーティング剤は、単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0043】
上記のコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される可塑剤、賦形剤、滑沢剤、隠蔽剤、着色剤、防腐剤等の添加剤を配合してもよい。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【0045】
実験1.固体製剤の製造
本発明の固体製剤として、発泡性組成物からなる内層部と、外層部を有する有核錠を製造して、その溶出時間と溶出率の変化について観察した。
【0046】
(内層部の製造)
有核錠の内層部として表1の組成の内核錠を製造した。
内層部1の製造は、炭酸水素ナトリウム(発泡剤)及びクエン酸カルシウムでコーティングしたクエン酸(発泡助剤)をヒドロキシプロピルセルロースで造粒した発泡性顆粒、微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学社製)、ステアリン酸カルシウム、ビタミンB2(有効成分)を混合し、打錠用粉末とした。また、比較例1の製造は、内層部1の発泡性顆粒を結晶セルロース(セオラスFD-101、旭化成社製)と置き換えたものを使用した。
【0047】
【0048】
(外層部の製造)
有核錠の外層部として表2の組成の粉体組成物を製造した。
外層部の製造は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズNE-4000、信越化学工業社製)、デキストリン(パインデックス#2、松谷化学工業社製)、結晶セルロース(セオラスFD-101、旭化成社製)、硬化菜種油(ラブリワックス102H、フロイント産業社製)、微粒二酸化ケイ素(サイロページ720、富士シリシア化学社製)、ステアリン酸カルシウムを混合し、粉体組成物とした。
【0049】
有核錠の製造は、打錠圧縮機(N-30E型単発式打錠機、岡田精工社製)を用いて製造した。
内層部粉末を、1000kgfで打錠し、平杵直径5mm、粒重量75mgの内核錠を得た。
外層部となる粉体組成物と内核錠を打錠し、直径9mm、最終粒重量300mgの有核錠を得た。
【0050】
【0051】
(溶出試験)
製造した有核錠について、日本薬局方一般試験法溶出試験法のパドル法によるビタミンB2の溶出試験を行った。試験液(精製水)の液量は900mLとし、パドル回転数50rpmにて、試験開始0分後、1時間後及び4時間後~9時間後までの所定時間経過後の溶出率(%)を紫外可視吸光度測定法により測定した。この試験は、それぞれ3回実施した。得られた結果を
図1に示す。
【0052】
実験の結果、
図1のグラフに示すように内層部1を用いた有核錠(発泡あり)では、試験開始後約7時間で内層部からの急速なビタミンB2の急速な溶出が観察された。溶出時間、即ち内層部からのビタミンB2の溶出率が20%となる時間は、試験開始後6.5~7.5時間であった。溶出時間差(80%溶出時間-20%溶出時間)は、約20分であった。一方、比較例1の有核錠(発泡なし)ではビタミンB2の溶出は8時間後においてもほとんど観察されなかった。
【0053】
実験2.内層部の組成の検討
表3に示す内層部を用いて、実験1と同様に、内核錠を製造した。なお、部分アルファー化澱粉は(PCS-FC-30、旭化成社製)を使用した。
【0054】
(内核錠の硬度)
内核錠について、錠剤硬度計(ニュースピードチェッカーTS-75N、岡田精工社製)を用いて、硬度を測定した。
【0055】
(内層部の崩壊性の評価)
実験2で製造した内核錠について、日本薬局方一般試験法崩壊試験法により内核錠の崩壊性を評価した。試験液は精製水を用いた。外層部が溶解し、内核錠の溶け始めから崩壊するまでの時間を測定した。結果は、表3の「崩壊時間」に示す。
【0056】
【0057】
実験の結果、発泡性組成物からなる内層部は、内核錠が溶け始めると、急速に崩壊することがわかる。また、発泡性組成物からなる内層部を有する内核錠では、崩壊剤(部分アルファー化澱粉)を含有する内核錠と比較しても、優れた崩壊性が観察された。
また、内核錠の硬度は、10.0kgf以下で優れた崩壊性が認められた。
【0058】
実験3.外層部の組成の検討
表4に示す外層部を用いて、実験1と同様に、有核錠を製造した(内核錠は内層部1)。
【0059】
(外層部の徐放性の評価)
実験3で製造した有核錠について、日本薬局方一般試験法崩壊試験法により有核錠の崩壊性を評価した。試験液は精製水を用いた。外層部が溶解し、内核錠の溶け始めるまでの時間を測定した。結果は、表4の「内核錠の溶け始めの時間(分)」に示す。
【0060】
【0061】
実験3の結果から、外層部の処方を調整することにより、外層部の徐放性を制御できることがわかる。外層部3~5を比較すると、デキストリンと結晶セルロースを含有することにより、外層部の徐放性が向上することが認められた。また、外層部1と2、又は、外層部6~9を比較すると、油脂の含有量を調整することにより溶出時間の制御が可能であることが示された。
本発明によって、内層部からの成分の放出速度が向上した固体製剤を提供することができる。これにより、本発明は、内層部からの成分の放出速度が向上した医薬品、医薬部外品、飲む化粧料、飲む化粧品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、飼料などを提供することができる。
本発明によれば、有効成分の放出が制御された固体製剤を提供することができる。例えば、有効成分としてカフェインを使用し、内層部の溶け始めまでの時間を約6時間に調整することにより、覚醒促進用の固体製剤と提供することができる。この覚醒促進用の固体製剤は、寝る前に摂食すると、約6時間後にカフェインが急速に放出され、目覚めを促進することができる。