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特開2022-73392処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073392
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20060101AFI20220510BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/60 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220510BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20220510BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 8/22 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220510BHJP
【FI】
C02F3/28 A
B01D53/56 200
B01D53/60 200
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C02F1/72 C
B01D53/50 200
H01M8/22
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183347
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】清川 達則
【テーマコード(参考)】
4D002
4D040
4D050
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA09
4D002AA12
4D002AB01
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002CA06
4D002DA12
4D002DA35
4D002EA01
4D002GA01
4D002GA03
4D002GB03
4D002HA01
4D040AA24
4D040AA26
4D040AA27
4D040AA31
4D040AA42
4D050AA13
4D050AA15
4D050AB31
4D050AB35
4D050AB41
4D050BB01
4D050BB20
4D050BD02
4D050BD03
4D050BD04
4D050BD06
4D050CA15
4D050CA16
4D050CA17
4D050CA20
5H126BB08
5H126BB10
5H126FF05
5H127AA08
5H127AB21
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA02
5H127BB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理を可能とする処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を提供する。
【解決手段】被処理物を嫌気処理する消化設備を備える処理システムにおいて、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応により発電又は脱硫処理を行う処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を提供する。本発明によれば、濾液水中に含まれる還元性物質を直接電子供与体とした反応により、嫌気処理後に発生する排出物を活用し、発電や脱硫処理を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物に対する嫌気処理を行う消化設備を備える処理システムであって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応により発電を行うことを特徴とする、処理システム。
【請求項2】
被処理物に対する嫌気処理を行う消化設備を備える処理システムであって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応により脱硫処理を行うことを特徴とする、処理システム。
【請求項3】
前記濾液と電極とを接触させ、発電を行う発電部を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記電極間にイオン交換体を配置することを特徴とする、請求項3に記載の処理システム。
【請求項5】
前記発電部の電極表面と、前記濾液中の還元性物質を含む電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段を備えることを特徴とする、請求項3又は4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記接触効率向上手段は、前記電極表面に対し、前記電極反応成分の移動速度を速める移動速度制御手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の処理システム。
【請求項7】
前記移動速度制御手段として、前記濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応に関する温度制御手段を設けることを特徴とする、請求項6に記載の処理システム。
【請求項8】
前記接触効率向上手段は、前記電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の処理システム。
【請求項9】
前記濃度制御手段として、前記濾液中の還元性物質を、前記濾液中に溶存させるためのpH制御手段を設けることを特徴とする、請求項8に記載の処理システム。
【請求項10】
前記接触効率向上手段は、前記電極表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段を備えることを特徴とする、請求項5に記載の処理システム。
【請求項11】
前記発電部に対し、燃焼装置で生じた排ガスを供給する排ガス供給手段を設けることを特徴とする、請求項3又は4に記載の処理システム。
【請求項12】
前記燃焼装置は、嫌気処理後の排出物を固液分離した固形物を焼却するもの及び/又は嫌気処理で生じたガスを燃焼するものであることを特徴とする、請求項11に記載の処理システム。
【請求項13】
前記発電部の電極に含まれる気体を除去する脱気手段を備えることを特徴とする、請求項3又は4に記載の処理システム。
【請求項14】
被処理物を嫌気処理する処理システムに設ける発電装置であって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として発電を行うことを特徴とする、発電装置。
【請求項15】
被処理物を嫌気処理する処理システムに設ける脱硫処理装置であって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として脱硫処理に供することを特徴とする、脱硫処理装置。
【請求項16】
被処理物の嫌気処理における発電方法であって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として発電を行う工程を備えることを特徴とする、発電方法。
【請求項17】
被処理物の嫌気処理における脱硫方法であって、
嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として脱硫処理に供する工程を備えることを特徴とする、脱硫方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電あるいは脱硫処理を伴う処理システムに関するものである。また、本発明は、嫌気処理における発電装置及び発電方法に関するものである。さらに、本発明は、嫌気処理における脱硫処理装置及び脱硫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機物を含む被処理物を処理する方法として、種々の微生物を利用した生物処理が知られている。特に、嫌気的な環境下での生物処理(以下、「嫌気処理」と呼ぶ)は、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入のメリットが高いことから広く用いられており、例えば、被処理物が固形分を多く含むバイオマスの場合、消化槽を用いた嫌気処理などが知られている。また、嫌気処理に付随して、様々な処理工程や技術を組み合わせることも行われている。例えば、嫌気処理に付随させる技術の一つとしては、嫌気処理により発生したメタンなどのバイオガスを燃料として用い、発電を行うことが知られている。
【0003】
一方、微生物を利用した処理として、微生物による酸化還元反応を利用した発電を行う微生物燃料電池が知られている。微生物燃料電池とは、微生物の代謝能力を利用して電気エネルギーを得るものである。より具体的には、微生物燃料電池とは、微生物によって有機物などの基質が酸化分解する過程で生じた電子をアノード側で回収し、カソード側に電子を移動させることで電流を得る構成を有するものである。
【0004】
例えば、特許文献1には、一対の電極の一方をアノードとして嫌気性下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液(懸濁液)と接触させ、他方の電極をカソードとして構造上空隙を有する材料によって形成して空気と接触させ、アノードとカソードを電気的に接続して閉回路を形成させた発電装置が記載されている。また、特許文献1には、アノード表面に微生物を付着させることも記載されている。さらに、特許文献1には、この発電装置により、アノードにおける有機性物質を電子供与体とする微生物による酸化反応、及び、カソードにおける酸素を電子受容体とする還元反応を進行させる発電方法についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-442412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるような微生物燃料電池による発電は、エネルギー変換効率が低く、実用化に際しては発電出力の向上が大きな課題となっている。これは、微生物を直接電極に接触あるいは担持させるため、電極への物質移動が微生物により阻害されることや、微生物の代謝速度が律速となることに起因しているものと推察される。
【0007】
また、近年、嫌気処理に限らず、被処理物の各種処理を行う処理システムの設備駆動電力を抑え、省エネルギー化に優れるものとするために、処理システムに付随させる技術として、効率的なエネルギーの回収・利用が可能な技術が求められている。このような技術の一つとして、被処理物の処理システムに微生物燃料電池を適用し、被処理物の処理と発電を同時に行うことに係る技術が検討されているが、上記したように、十分な発電出力を得ることが困難であるという課題がある。
【0008】
さらに、被処理物の処理に付随させる技術としては、効率的なエネルギーの回収・利用以外にも、嫌気処理などの処理時に発生する被処理物中の有害物質を効率的に除去する技術が求められる。このような技術としては、特に、嫌気処理時に発生する硫化水素を除去する脱硫処理を効率的に行うことが求められている。
【0009】
特に、嫌気処理においては、嫌気処理後の排出物を再度嫌気処理に供することや、嫌気処理後の排出物に対する別処理が必要となることがある。このとき、嫌気処理後に発生する排出物を活用し、発電や脱硫処理を行うことで、被処理物の処理に係るランニングコストの低減や、処理全体に係る処理能力の向上が期待される。
【0010】
本発明の課題は、被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理を可能とする処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とした反応を行うことにより、排水処理において、発電による効率的なエネルギーの回収・利用や脱硫処理が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の処理システムは、被処理物に対する嫌気処理を行う消化設備を備える処理システムであって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応により発電を行うという特徴を有する。
【0013】
本発明の処理システムは、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて発電を行うことで、微生物による物質移動の阻害が生じることがないため、効率的な発電が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することが可能となる。さらに、嫌気処理後に発生する排出物を活用し、発電を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明の処理システムの別の態様としては、被処理物に対する嫌気処理を行う消化設備を備える処理システムであって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応により脱硫処理を行うという特徴を有する。
【0015】
本発明の処理システムは、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて脱硫処理を行うことで、還元性物質である硫化水素を硫黄に変換することができ、被処理物中の硫化水素を効率的に除去することが可能となる。また、嫌気処理後に発生する排出物に対して脱硫処理を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
【0016】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、濾液と電極とを接触させ、発電を行う発電部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、濾液と接触するように電極を設置することで、被処理物の処理における一連の処理過程の中で発電を実施することが可能となる。これにより、設備を大型化することなく、効率的な発電を実施することが可能となる。また、このとき、濾液中に含まれる硫化水素を電子供与体とする電極反応が進行することで、硫黄に変換される。このため、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。
【0017】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、電極間にイオン交換体を配置するという特徴を有する。
この特徴によれば、一対の電極間における電子の移動効率を高めることが可能となるため、発電効率や脱硫処理効率をより向上させることが可能となる。
【0018】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、発電部の電極表面と、濾液中の還元性物質を含む電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることが可能となる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0019】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極表面に対し、電極反応成分の移動速度を速める移動速度制御手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極表面に対して速やかに電極反応成分を供給することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることで、電極反応の効率低下を抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0020】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、移動速度制御手段として、濾液中の還元性物質を電子供与体とする反応に関する温度制御手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、還元性物質を電子供与体とする反応について、物質移動速度の向上や反応効率の向上が生じるように、温度を制御することが可能となる。これにより、発電効率や脱硫処理効率を高めることが可能となる。
【0021】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極反応に関与する電極反応成分量を増大させることが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることで、電極反応の効率低下を抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0022】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、濃度制御手段として、濾液中の還元性物質を、濾液中に溶存させるためのpH制御手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、pHに応じて溶液中への溶解度が変わる還元性物質を、濾液中により多く留めることが可能となり、電子供与体として反応に供する還元性物質の量を増加させることができる。これにより、発電効率や脱硫処理効率を高めることが可能となる。
【0023】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、接触効率向上手段は、電極表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極表面の堆積物を除去することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0024】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、発電部に対し、燃焼装置で生じた排ガスを供給する排ガス供給手段を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する排ガス供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0025】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、燃焼装置は、嫌気処理後の排出物を固液分離した固形物を焼却するもの及び/又は嫌気処理で生じたガスを燃焼するものであるという特徴を有する。
この特徴によれば、燃焼対象を容易に得ることができるとともに、固形物処理やガス利用に係る既設の燃焼装置を利用することができる。これにより、本発明の処理システムのために、新たに燃焼装置を設ける必要がなく、イニシャルコストを大幅に低減することが可能となる。
【0026】
また、本発明の処理システムの一実施態様としては、発電部の電極に含まれる気体を除去する脱気手段を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、電極に含まれる気体を除去する脱気手段を備えることにより、電極内部の比表面積が低下するという問題を解決することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0027】
また、上記課題を解決するための本発明の発電装置としては、被処理物を嫌気処理する処理システムに設ける発電装置であって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として発電を行うという特徴を有する。
本発明の発電装置は、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて発電を行うことで、微生物による物質移動の阻害が生じることがないため、効率的な発電が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することが可能となる。さらに、嫌気処理後に発生する排出物を活用し、発電を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
また、本発明の発電装置は、既存の処理システムに適用することで、処理システム全体を大規模に更新することなく、発電を行うことができる処理システムに更新することが可能となる。
【0028】
また、上記課題を解決するための本発明の脱硫処理装置としては、被処理物を嫌気処理する処理システムに設ける脱硫処理装置であって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として脱硫処理に供するという特徴を有する。
本発明の脱硫処理装置は、被処理物中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて脱硫処理を行うことで、硫化水素を系外に排出することなく、効率的な脱硫が可能となる。また、嫌気処理後に発生する排出物に対して脱硫処理を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
また、本発明の脱硫処理装置は、既存の処理システムに適用することで、処理システム全体を大規模に更新することなく、脱硫処理を行うことができる処理システムに更新することが可能となる。
【0029】
また、上記課題を解決するための本発明の発電方法としては、被処理物を嫌気処理する排水処理における発電方法であって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として発電を行う工程を備えるという特徴を有する。
本発明の発電方法は、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて発電を行うことで、微生物による物質移動の阻害が生じることがないため、効率的な発電が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することが可能となる。さらに、嫌気処理後に発生する排出物を活用し、発電を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
【0030】
また、上記課題を解決するための本発明の脱硫方法としては、被処理物を嫌気処理する排水処理における脱硫方法であって、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中の還元性物質を電子供与体として脱硫処理に供する工程を備えるという特徴を有する。
本発明の脱硫方法は、被処理物中に含まれる還元性物質を直接電子供与体として用いて脱硫処理を行うことで、硫化水素を系外に排出することなく、効率的な脱硫が可能となる。また、嫌気処理後に発生する排出物に対して脱硫処理を行うことができ、嫌気処理に係るランニングコストの低減や、処理システム全体に係る処理能力の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理を可能とする処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施態様における処理システムの概略説明図である。
図2】本発明の第2の実施態様における処理システムの概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様における処理システムの別態様を示す概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様における処理システムの概略説明図である。
図5】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける接触効率向上手段(移動速度制御手段)を示す概略説明図である。
図6】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図7】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図8】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図9】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図10】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける移動速度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図11】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける接触効率向上手段(濃度制御手段)の別態様を示す概略説明図である。
図12】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける濃度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図13】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける濃度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図14】本発明の第3の実施態様の処理システムにおける濃度制御手段の別態様を示す概略説明図である。
図15】本発明の第4の実施態様の処理システムにおける接触効率向上手段(洗浄手段)を示す概略説明図である。
図16】本発明の第4の実施態様の処理システムにおける洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
図17】本発明の第4の実施態様の処理システムにおける洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
図18】本発明の第4の実施態様の処理システムにおける洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
図19】本発明の第4の実施態様の処理システムにおける洗浄手段の別態様を示す概略説明図である。
図20】本発明の第5の実施態様における処理システムの概略説明図である。
図21】本発明の第5の実施態様における処理システムの別態様を示す概略説明図である。
図22】本発明の第6の実施態様の処理システムにおける脱気手段を示す概略説明図である。
図23】本発明の第6の実施態様の処理システムにおける脱気手段の別態様を示す概略説明図である。
図24】本発明の第6の実施態様の処理システムにおける脱気手段の別態様を示す概略説明図である。
図25】本発明の第7の実施態様の処理システムにおける絶縁機構を示す概略説明図である。
図26】本発明の第7の実施態様の処理システムにおける絶縁機構の別態様を示す概略説明図である。
図27】本発明の第7の実施態様の処理システムにおける絶縁機構の別態様を示す概略説明図である。
図28】本発明の第8の実施態様における処理システムの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法の実施態様を詳細に説明する。本発明における発電方法及び脱硫方法は、本発明における処理システム、発電装置及び脱硫処理装置の作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法については、本発明に係る処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の処理システムにおいて、処理対象である被処理物は、特に限定されない。なお、被処理物としては、処理システムにおける処理経過に伴って還元性物質が生成されることが好ましい。具体的な被処理物の例としては、例えば、家庭や各種工場から排出する生ごみや食品廃棄物、木などバイオマスのほか、各種工場から排出される工業排水や下水などの生活排水を処理した後の余剰汚泥などが挙げられる。なお、以下の実施態様においては、被処理物として、処理を経ることで還元性物質が生成するものについて主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明において、還元性物質とは、電子供与体として機能するものであればよく、特に限定されない。ある物質が電子供与体として機能するか否かは、電子受容体として機能する物質(以下、単に「電子受容体」と呼ぶ)との組み合わせによって相対的に決まるものである。つまり、本発明における還元性物質は、電子受容体よりも電子を放出しやすいもの、すなわち電子受容体よりも酸化還元電位が低いものとすることが挙げられる。例えば、電子受容体として酸素を用いた場合、本発明における還元性物質は、酸素よりも酸化還元電位が低いものであればよく、このような還元性物質としては、硫化水素、水素、アンモニアなどが挙げられる。
【0036】
〔第1の実施態様〕
(処理システム)
図1は、本発明の第1の実施態様における処理システムの構造を示す概略説明図である。
本実施態様における処理システム1Aは、図1に示すように、処理槽2と、固液分離部3と、発電部4とを備えるものである。また、処理システム1Aは、処理槽2に被処理物Sを導入する導入配管L1、処理槽2と固液分離部3を接続する接続配管L2、固液分離部3で分離された濾液Fを発電部4に導入する導入配管L3、固液分離部3で分離された固形物を系外に排出する排出配管L4、発電部4から処理水W2を系外に排出する排出配管L5を備えている。
【0037】
図1に示した処理システム1Aでは、被処理物Sに対して処理槽2による嫌気処理を行い、固液分離部3において嫌気処理を経た後の排出物(処理液W1)を濾液Fと固形物に分離し、濾液Fを発電部4に導入する。これにより、被処理物Sの嫌気処理後の排出物を活用し、より効率的なエネルギーの回収・利用あるいは脱硫処理が可能となる。
以下、処理システム1Aの各構成について説明する。
【0038】
(処理槽)
処理槽2は、被処理物Sに対して嫌気処理を行うための槽である。
処理槽2で行う処理は、被処理物S中に含まれる処理対象に合った嫌気処理であり、処理後の排出物(処理液W1)中に還元性物質を含むものであれば、特に制限されない。例えば、酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵や、脱窒菌により硝酸・亜硝酸の還元を行う脱窒処理や、硫酸還元菌により硫酸の還元を行う硫酸還元処理等が挙げられる。
本実施態様における処理槽2で行う嫌気処理としては、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、メタンを生成するメタン発酵が特に好ましい。したがって、処理槽2は、被処理物Sの消化を行う消化設備として機能する構造を有することが好ましい。より具体的には、処理槽2は、消化槽として公知の構造を有することが好ましく、消化槽に係る具体的な構造については特に限定されない。
【0039】
処理槽2において、嫌気処理のうち、特にメタン発酵を行う場合、被処理物Sを処理した後の排出物(処理液W1)中には、メタンのほか、硫化水素、水素、アンモニア等が生成する。なお、これら生成物は、本発明における還元性物質に相当するものである。
【0040】
処理槽2で処理された被処理物Sは還元性物質を含有する排出物(処理液W1)となり、接続配管L2を介して、固液分離部3へ導入される。
【0041】
(固液分離部)
固液分離部3は、処理槽2から導入された処理液W1を、固形物と濾液Fに分離処理するためのものである。
ここで、固液分離部3で分離処理される処理液W1は、処理槽2で嫌気処理された後の排出物であり、余剰汚泥などの泥状物を含む固液混合物(スラッジ)である。また、処理液W1中には、メタン発酵により生成した還元性物質が含有されている。
したがって、固液分離部3で処理液W1を固液分離し、還元性物質を含有する濾液Fを回収して後段の発電部4に導入することで、還元性物質を電子供与体とする反応を進行させることが可能となる。
【0042】
固液分離部3としては、処理液W1中に含まれる固形物と濾液Fとを分離することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、凝集沈殿槽、沈殿槽のような沈降分離式によるものや、遠心分離機を備える遠心分離式によるもののほか、ベルトプレス脱水機やスクリュープレス脱水機のような加圧濾過装置を備えるものなどが挙げられる。
【0043】
固液分離部3で分離された濾液Fは、還元性物質を含有する処理水W2として導入配管L3を介し、発電部4へ導入される。一方、固液分離部3で分離された固形物は、排出配管L4を介して系外に排出される。このとき、排出配管L4の後段に、固形物を処理する処理設備を設けるものとしてもよい。
【0044】
(発電部(発電装置・脱硫処理装置))
発電部4は、濾液F中の還元性物質を電子供与体として発電を行うためのものである。また、本実施態様における発電部4は、濾液F中の還元性物質のうち、硫化水素などの硫黄含有化合物を電子供与体とすることで、脱硫処理を行うことも可能となる。
以下、本実施態様の発電部4の構造について、発電に係る観点から説明する。なお、本実施態様の発電部4による脱硫処理の詳細については後述する。
【0045】
本実施態様の発電部4は、図1に示すように、固液分離部3の後段に設けられ、第1のセル41a及び第2のセル41bと、セル41a、41bの間を仕切るように設けられたイオン交換体45と、セル41a、41bにそれぞれ配置された電極43a、43bとを備えている。ここで、第1のセル41aは、固液分離部3から導入配管L3を介して導入された濾液Fが電極43aに接触するように形成されており、第1のセル41aに配置された電極43aはアノードとして機能する。一方、第2のセル41bは、電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されており、第2のセル41bに配置された電極43bはカソードとして機能する。また、電極43a、43bは導線により外部回路と接続されている(不図示)。これにより、発電部4において、還元性物質が電子供与体として作用することで発生する電気エネルギーの回収及び利用が可能となる。
【0046】
第1のセル41aは、電極43aを備え、濾液Fが電極43aに接触するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。例えば、図1に示すように、導入配管L3を介して導入口42aから導入された濾液Fを一時的に貯留可能なスペースを有し、電極43aに接触した後の処理水W2を排出口42bから排出するための排出配管L5を備えるものとすること等が挙げられる。これにより、濾液F中の還元性物質は電子供与体として電極43aに電子を供与した後、排出配管L5を介して速やかに排出される。なお、導入口42a及び排出口42bの位置関係は特に限定されない。例えば、図1に示すように、導入口42aを第1のセル41aの側面に設け、排出口42bを第1のセル41aの底面に設けるもののほか、導入口42a及び排出口42bを第1のセル41aの側面に設け、導入口42aよりも垂直方向に高い位置に排出口42bを設けるものなどが挙げられる。
【0047】
また、導入配管L3及び/又は排出配管L5に、バルブ等の流量調整機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極43aに接触させる濾液Fの量及び流速を調整し、電極43aに対する物質移動速度を制御することが可能となる。
【0048】
排出配管L5を介して排出された処理水W2は、河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出配管L5の後段に、処理水W2を更に処理するための処理設備を設け、処理水W2を処理した後、系外へ排出するものとしてもよい。このような処理設備としては、処理水W2が系外あるいは河川への放流が可能な水質となるように処理できるものであれば特に限定されない。例えば、曝気槽やpH調整槽などが挙げられる。
【0049】
第2のセル41bは、電極43bを備え、濾液F中の還元性物質に対する電子受容体を貯留ないしは供給するように形成されているものであればよく、特に素材や形状は問わない。
【0050】
ここで、電子受容体の形態は、気体、液体のいずれであってもよい。なお、液体としては、固体薬剤を溶解させた溶液であってもよく、気体を混合(溶解)させた溶液であってもよい。
本実施態様において電子受容体の具体的な例については、例えば、気体としては、酸素及び酸素を含む気体が挙げられる。なお、酸素を含む気体とは、空気のように混合物として酸素を含むものや、二酸化炭素のように化合物を構成する元素として酸素を含むものが挙げられる。電子受容体として気体を用いた場合、反応後に排出したものの処理が不要(あるいは容易)であることや、入手に係るコストを低減できるという利点がある。なお、これらの利点を最大限活用するためには、電子受容体として、空気を用いることが特に好ましい。
また、本実施態様において電子受容体の他の例としては、例えば、液体として、溶存酸素を含む溶液や、フェリシアン化カリウム水溶液のような酸化剤の水溶液等が挙げられる。電子受容体として液体を用いた場合、電子受容体として効果の高い化合物(酸化剤)の取り扱いが容易となるため、発電効率をより向上させることができるという利点がある。なお、発電効率を向上させるという観点からすると、電子受容体としては、フェリシアン化カリウム水溶液を用いることが特に好ましい。
【0051】
第2のセル41bとしては、例えば、図1に示すように、第2のセル41bに、気体状の電子受容体(酸素、空気など)を電極43bに対して供給するために、気体を供給するための電子受容体供給口44a及び反応後の気体を排出するための電子受容体排出口44bを設けることが挙げられる。また、第2のセル41bの他の例としては、第2のセル41bに、液体を貯留可能なスペースを設け、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bとして、それぞれ電子受容体の溶液の供給及び反応後の溶液の排出が可能なものを設けること等が挙げられる。これにより、電極43aからの電子を、電極43bを介して電子受容体が受け取ることができ、電極43aと電極43b間に電流が流れて発電が行われる。また、反応後の電子受容体は電子受容体排出口44bを介して速やかに発電部4の外部に排出される。
なお、電子受容体供給口44a及び/又は電子受容体排出口44bにバルブ等の流量調整機構を設け、第2のセル41bにおける電子受容体の濃度を調整できるものとしてもよい。さらに、電極43aにおける反応により生成した電子量に応じた電子受容体濃度が維持されるように流量調整機構を制御する制御機構を設けるものとしてもよい。これにより、電極43a及び電極43b間の電子移動に係る反応効率の低下を抑制し、発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0052】
図1において、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bは、それぞれ1つずつ設けたものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bを複数設けるものとしてもよい。特に、電子受容体として酸素を含む気体を用いた場合、後述するように、電極43bにおける反応によって水が生成する。したがって、電子受容体排出口44bを複数設ける場合、例えば、気体を排出するものと液体を排出するものをそれぞれ分けて設けること等が挙げられる。
【0053】
イオン交換体45は、イオンを透過することのできる公知の構成であればよく、特に限定するものではない。特に、電極43a(アノード側)で発生する水素イオンを透過することのできる陽イオン交換膜とすることが挙げられる。これにより、電極43a(アノード側)から電極43b(カソード側)へ水素イオンが移動することで、電極43bでの電子受容体の反応効率を高めることができ、発電効率を向上させることができる。また、イオン交換体45は、酸素透過性が低いものとすることがより好ましい。これにより、電極43b(カソード側)に供給される電子受容体(酸素)が電極43a側に移動することを抑制し、電極43aにおける電子供与体の反応効率が酸素により低下することを抑制することが可能となる。
なお、図1において、イオン交換体45は、電極43a及び電極43bと別体として設けるものを示しているが、これに限定されるものではない。例えば、イオン交換能を有する材料と電極43a及び/又は電極43bを一体とすること等が挙げられる。これにより、発電部4全体を小型化することが可能となるとともに、メンテナンス作業に係る時間短縮が可能となる。
【0054】
電極43aは、濾液F中の還元性物質から電子を回収する電極であり、いわゆるアノードとして機能するものである。また、本実施態様における電極43aは、固液分離部3から導入された濾液Fと接触するように第1のセル41a内に配置されている。
【0055】
電極43aとしては、アノードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極43aの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極43aにおける還元性物質の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極43aの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極43aの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
【0056】
本実施態様における電極43aは、電極表面に微生物を接触あるいは担持させるものではない。したがって、還元性物質の物質移動が微生物によって阻害されることがなく、電子供与体としての反応効率(電極43aに対する還元性物質の物質移動速度)を向上させることができ、発電効率を向上させることができる。
また、本実施態様における電極43aは、微生物の代謝により生成した電子を回収するものではなく、還元性物質から直接電子を回収するものである。したがって、微生物の代謝が律速となることがなく、電子供与体としての反応効率(電極43aにおける電子の回収速度)が向上し、発電効率を向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施態様における電極43aは、電極43aの構造を微生物の保持に適したものとなるように加工する必要がなく、電極43a作成に係るコストを低減させることができる。また、電極43aに対する微生物の保持量や微生物による反応効率を鑑みて、電極43aを大型化する必要もないため、処理システムに係る設備の小型化が可能となる。
【0058】
電極43bは、電極43aの対極であって、電子受容体へ電子を受け渡す電極であり、いわゆるカソードとして機能するものである。また、本実施態様における電極43bは、第2のセル41b内に配置されている。
【0059】
電極43bとしては、カソードとして機能するものであればよく、材質及び形状については特に限定されない。電極43bの材質及び形状については、材料調達や加工に係るコスト、電極43bにおける電子受容体の反応効率などを鑑みて、適宜選択することができる。電極43bの材質の例としては、例えば、電気化学分野で電極材料として広く用いられている炭素や金属(ステンレス、白金、銅等)が挙げられる。また、電極43bの形状の例としては、例えば、平板状、棒状、メッシュ状などが挙げられる。
【0060】
第2のセル41b内に供給される電子受容体が気体(空気)である場合、電極43bは、一方の面は気体と接するが、もう一方の面は濾液Fと接する。このため、電極43bは、いわゆるエアカソードとして適した形態とすることが好ましい。エアカソードとして適した形態としては、例えば、気体透過性と不透水性の両方の性質を備えることが挙げられる。電極43bが気体透過性を備えた形態とすることにより、電子受容体である気体を電極43bで効果的に反応させることが可能となる。また、電極43bが不透水性を備えることにより、第1のセル41a内の濾液Fが電極43bを透過し、第2のセル41b内に流入することを抑制することが可能となる。このような電極43bの具体例としては、炭素繊維からなるものや、金属メッシュ表面に対して気体透過性及び不透水性を有する材料の塗布あるいはフィルムの積層等の表面処理を行ったもの等が挙げられる。なお、ここでの不透水性とは、水を通さないことを指し、例えば、電極43bを防水化、撥水化、疎水化、あるいは止水化することについても、不透水性を備えることに含まれるものである。
【0061】
本実施態様における処理システム1Aは、濾液F中の還元性物質を電子供与体として用い、電気化学反応(電極反応)により発電あるいは脱硫処理を行うものである。一般に、電気化学反応を行う場合、実際に電気化学反応を行う箇所(発電部4)以外へ電子が移動することで、電気化学反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、本実施態様における処理システム1Aは電気化学反応を行う箇所(発電部4)以外を絶縁処理することが好ましい。絶縁処理の具体例としては、例えば、処理槽2及び固液分離部3を絶縁体の上部に設置することのほか、処理槽2及び固液分離部3の外壁あるいは内壁を絶縁体で構成することや、処理槽2及び固液分離部3の外壁あるいは内壁を絶縁材料でコーティングすることなどが挙げられる。また、各配管L1~L5の絶縁処理としては、例えば、それぞれの配管を絶縁体からなるものとすることや、それぞれの配管に絶縁材料をコーティングすること等が挙げられる。
【0062】
上述した本実施態様における処理システム1Aにおいて、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応により発電あるいは脱硫処理を行うことができる。
以下、処理システム1Aにおける発電及び脱硫処理について詳細に説明する。
【0063】
(処理システムにおける発電及び脱硫処理)
図1に基づき、本発明の第1の実施態様の処理システム1Aにおける発電及び脱硫処理に係る反応及び工程を説明する。本実施態様の処理システムにおける発電に係る反応及び工程は、被処理物Sを嫌気処理した後の排出物(処理液W1)を固液分離した濾液Fに含まれる還元性物質を電子供与体として用い、空気(酸素)を電子受容体として用いるものについて説明するものである。特に、硫化水素を電子供与体として用いたものは、本実施態様の処理システムにおける脱硫処理に係る反応及び工程に相当するものである。
なお、図1に基づく反応及び工程に係る説明は、本実施態様における発電及び脱硫処理の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。また、以下の説明は、処理槽2から発電部4に係る反応及び工程について述べたものであり、その他の構成(導入配管L1及びL3、接続配管L2、排出配管L4及びL5、並びに排出配管L4及びL5の後段に設けられる処理設備など)に係る反応及び工程については説明を省略している。さらに、反応R1~R4及び工程S1~S4の表記については、説明のために番号を付したものであり、反応及び工程順序を特定するものではない。
【0064】
図1に示すように、処理槽2に導入された被処理物Sは、処理槽2内の嫌気性微生物(酸生成菌及びメタン生成菌)により嫌気処理され、処理液W1が生成する(工程S1)。このとき、メタンのほかに、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が生成する。
【0065】
処理槽2で処理された排出物(処理液W1)は、還元性物質を含む固液混合物として、接続配管L2を介して固液分離部3に導入される(工程S2)。ここで、処理液W1は、固形物と濾液Fに分離される。
【0066】
そして、還元性物質を含む濾液Fは、発電部4における第1のセル41a内に導入される(工程S3)。ここで、還元性物質(水素、硫化水素、アンモニア等)が電極43aに接触することで、還元性物質が電子供与体として機能し、電極43aへ電子が供与される。このとき、電子供与体として機能する還元性物質として、硫化水素を例にとると、電極43aにおける反応(反応R1)は、以下の反応式(式1)で示される。
【数1】
【0067】
また、硫化水素の一部は硫化水素イオンとして反応する。このときの反応は、以下の反応式(式2)で示される。
【数2】
【0068】
式1及び式2で示されるように、反応R1において、濾液Fに含まれる硫化水素は電極43aに電子を供与するとともに、硫化水素自身は酸化処理されることで無害化、無臭化する。このため、本実施態様の処理システムは、発電とともに、脱硫処理・脱臭処理が可能となる。なお、硫化水素以外の有害物質・臭気物質である還元性物質(アンモニア等)についても、同様に電子供与体として機能し、反応が進行することで、無害化・無臭化が可能になる。
【0069】
式1及び式2に示された反応式に基づき、電極43aにおける反応が進行した後、電子は電極43aから導線を介して電極43bへ移動する(反応R2)。なお、このとき、電極43aにおける反応で生成した水素イオンは、イオン交換体45を介して第2のセル41b側へ移動する(反応R3)。
【0070】
一方、第2のセル41bには、電子受容体供給口44aから電子受容体として空気(酸素)を導入する(工程S4)。ここで、反応R2により、電極43aから電極43bに移動した電子を、電極43bを介して電子受容体が受け取る。また、このとき、反応R3により、イオン交換体45を介して第2のセル41b側に移動した水素イオンも電子受容体(酸素)と反応する。このときの電極43bにおける反応(反応R4)は、以下の反応式(式3)で示される。
【数3】
【0071】
上述した反応R1~R4及び工程S1~S4に基づき、電極43aと電極43bの間に電流が流れる。これにより、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応が進行し、本実施態様の処理システム1Aにおける発電及び脱硫処理が行われる。
また、発電により得られた電気エネルギーは、電極43a及び電極43bに接続した外部回路を通じて回収・利用することができる。なお、電気エネルギーの利用については、特に限定されない。例えば、処理システムの設備駆動に用いるものであってもよく、処理システム外で利用するものであってもよい。
【0072】
以上のように、本実施態様の処理システム1Aを用いることで、被処理物の嫌気処理後の排出物を活用し、嫌気処理において、発電による効率的なエネルギーの回収・利用や脱硫処理を行うことが可能となる。特に、嫌気処理後の排出物を固液分離した濾液中に含まれる還元性物質を用いた電極反応を可能とすることで、微生物による物質移動の阻害や、微生物の代謝速度に基づく律速段階がなく、発電効率や脱硫処理効率の向上が可能となる。また、微生物燃料電池による発電と比べて設備を小型化することができる。さらに、脱硫処理のための設備を別途設けることなく、効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。
【0073】
従来技術である微生物燃料電池を用いた発電においては、排水処理に必要な微生物の濃度を高めることで、電極への物質移動が微生物によって一層阻害されることになるため、排水処理効率と発電効率がトレードオフの関係となる問題が生じることが知られている。一方、本実施態様の処理システム及び発電方法は、被処理物の処理(嫌気処理)と発電を分けて行うことができる。したがって、本実施態様の処理システム及び発電方法においては、被処理物の処理効率と発電効率がトレードオフの関係とならず、効率的な発電が可能となる。
【0074】
なお、本実施態様における発電部4に係る構成は、本発明に係る発電装置あるいは脱硫処理装置として独立したものとすることができる。この発電装置あるいは脱硫処理装置は、既設の処理システムに適用することができる。これにより、処理システム全体を大規模に更新することなく、本発明の処理システムを提供することができる。また、この処理システムを用いた発電方法や脱硫方法を提供することができる。
【0075】
〔第2の実施態様〕
図2は、本発明の第2の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る処理システム1Bは、第1の実施態様における処理システム1A中の発電部4において、処理水W2の貯蔵部46を設け、第1のセル41aと貯蔵部46間で処理水W2を循環させるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0076】
本実施態様における処理システム1Bの発電部4は、図2に示すように、第1の実施態様における発電部4に、処理水W2を貯蔵する貯蔵部46と、発電部4のカソード側(第1のセル41a)と貯蔵部46とを接続する循環流路47とを備えている。
【0077】
貯蔵部46は、処理水W2を貯蔵することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、密閉可能なタンクなどが挙げられる。
循環流路47を介し、貯蔵部46内に処理水W2を貯蔵し、また、処理水W2を再度第1のセル41aに返送することで、処理水W2を繰り返し電極反応に供することが可能となる。これにより、処理水W2に含まれる還元性物質についても電極反応で効率的に消費させることができ、特に脱硫処理効率を高めることが可能となる。
【0078】
また、本実施態様における貯蔵部46は、処理水W2を繰り返し電極反応に供すること以外の機能を備えるものとしてもよい。
図3は、本実施態様の処理システム1Bの別態様を示す概略説明図である。
図3に示すように、処理システム1Bの別態様として、図2で示した貯蔵部46に対し、処理槽2で生じたガスG(バイオガス)を導入するため、処理槽2と貯蔵部46を接続する接続配管L6と、貯蔵部46からガスGを排出する排出配管L7を設けることが挙げられる。
接続配管L6を設け、処理槽2で発生したバイオガスを処理水W2に接触させることで、バイオガス中に含まれる硫化水素を低減させる脱硫処理を行うことが可能となる。また、排出配管L7を設けることで、脱硫処理後のバイオガスを排出あるいは回収することが可能となる。これにより、貯蔵部46は、処理槽2で発生したガスG(バイオガス)の脱硫処理及び回収に係る機能を備えるものとなる。
なお、排出配管L7の後段には、ガスの貯留設備等、バイオガスの利用に係る設備を設けることが好ましい(不図示)。これにより、脱硫処理を行い、回収したバイオガスについて、エネルギー源としての利用が容易となる。
【0079】
以上のように、本実施態様の処理システム1Bを用いることで、発電部における電極反応後のカソード側の処理水を繰り返し発電部に導入することができ、還元性物質を電子供与体とする反応効率を高め、特に効率的な脱硫処理を実施することが可能となる。
また、本実施態様の処理システム1Bは、処理槽2で発生したバイオガスの脱硫処理及び回収を効果的に行うことも可能となる。
【0080】
また、本実施態様の処理システム1Bにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0081】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。
第3の実施態様に係る処理システム1Cは、第1の実施態様における処理システム1Aの構造に対し、発電部4の電極表面と、濾液F中の還元性物質を含む電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段5を更に備えるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0082】
上述したように、本実施態様における電極43aは、濾液F中の還元性物質から直接電子を回収するものである。したがって、電極43aに対し、電極反応成分である還元性物質の接触効率を向上させることにより、電極反応効率の低下を抑制し、発電効率を向上させることができる。同様に、電極43bに対しても、電極反応成分である電子受容体の接触効率を向上させることにより、電極反応効率の低下を抑制し、発電効果を向上させることが可能となる。
【0083】
(接触効率向上手段)
接触効率向上手段5は、発電部4における電極43a及び/又は電極43bの表面に対し、電極反応成分の接触効率を向上させるためのものである。
【0084】
接触効率向上手段5としては、電極43a及び/又は電極43bの表面に対し、電極反応成分の接触効率を向上させることができるものであればよく、特に限定されない。本実施態様における接触効率向上手段5としては、例えば、電極43a及び/又は電極43bの表面に対する電極反応成分の移動速度を速めるものや、電極反応成分の濃度を高めるものなどが挙げられる。
また、接触効率向上手段5は、被処理物Sを処理する処理工程を利用することが好ましい。これにより、被処理物Sの処理手段と接触効率向上手段5を兼用させ、電極と電極反応成分の接触効率向上に係る付帯設備を削減し、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0085】
以下、接触効率向上手段5の具体例について説明する。なお、以下に示す接触効率向上手段5に係る説明は、本実施態様における接触効率向上手段5の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0086】
本実施態様における接触効率向上手段5の例としては、電極43a及び/又は電極43bの表面に対し、電極反応成分の移動速度を制御する移動速度制御手段6を設けることが挙げられる。
【0087】
移動速度制御手段6としては、電極43a及び/又は電極43bの表面に対し、電極反応成分の移動速度を制御し、少なくとも電極反応成分の移動速度を速めることができるものが挙げられる。具体的には、発電部4に対して濾液Fを供給する際の流速を制御することや、発電部4のセル(第1のセル41a、第2のセル41b)内で乱流を生じさせることのほか、電極反応に関する温度を制御すること等が挙げられる。
【0088】
ここで、移動速度制御手段6として濾液F全体の流速を制御するものを用いる場合、濾液Fの全体量を鑑みると、この流速制御には多大な動力を必要とすることが想定される。したがって、移動速度制御手段6としては、発電部4のセル内において乱流を形成し、電極反応成分の移動速度を速めることができるものが好ましい。さらに、発電部4内の電極表面近傍において乱流を形成するものがより好ましい。これにより、電極反応成分の移動速度の制御に係る動力を抑制することができ、省エネルギー化及び省コスト化が可能となる。
【0089】
移動速度制御手段6の具体例としては、電極43a及び電極43bの表面に対して流体(気体又は液体)を供給し、乱流を形成することが挙げられる。
図5は、本実施態様の移動速度制御手段6として、電極43a及び電極43bの表面に対して流体を供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、図5は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0090】
図5に示すように、移動速度制御手段6として、第1のセル41a及び第2のセル41bに、それぞれ流体供給口61a、61bと流体供給手段62を設け、電極43a及び電極43bの表面近傍に流体が供給されるように配置することが挙げられる。なお、図5における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。
【0091】
流体供給手段62としては、流体を供給することができるものであればよく、特に限定されない。なお、流体供給手段62としては、流体を圧縮可能な設備を設け、圧縮流体を供給するものとしてもよい。圧縮流体を用いることで、電極43a及び電極43bの表面近傍における乱流形成に係る流速制御を容易に行うことが可能となる。
【0092】
流体供給手段62から供給する流体として気体を用いる場合、例えば、被処理物Sを処理する処理工程から発生する気体を供給することや、被処理物Sを処理する処理工程で使用する気体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、処理槽2で発生するバイオガスを回収して流体供給口61a、61bから供給することや、処理水W2の処理設備として曝気槽を設けた際の曝気用気体の一部を流体供給口61a、61bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理物Sの処理手段と移動速度制御手段6の気体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。
【0093】
また、流体供給手段62から供給する流体として液体を用いる場合、例えば、被処理物Sを処理する処理工程で使用する液体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、排出配管L5内の処理水W2の一部を流体供給口61a、61bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理物Sの処理手段と移動速度制御手段6の液体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。
【0094】
移動速度制御手段6の別の態様として、図5に示した流体供給口61a、61bを別体として設けることなく、処理水導入口42a、処理水排出口42b、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bを、流体供給口61a、61bとして兼用させることが挙げられる。これにより、発電部4に接触効率向上手段5(移動速度制御手段6)としての新たな構造を設ける必要がなく、設備コストの低減が可能となる。
【0095】
また、移動速度制御手段6において、第1のセル41a及び第2のセル41b内に供給された流体は、そのまま処理水や電子受容体等とともに排出口42b及び電子受容体排出口44bから排出するものとしてもよいが、供給した流体を回収する回収手段63を設けるものとしてもよい。特に、移動速度制御手段6の流体として処理槽2から発生したバイオガスを用いた場合、流体の回収手段63を設けることが好ましい。これにより、発電部4で使用したバイオガスを、再度エネルギー源として回収・利用することができ、処理システム1Cとしてエネルギー回収・利用効率を高めることが可能となる。
【0096】
回収手段63としては、移動速度制御手段6における流体を、第1のセル41a及び第2のセル41bから排出・回収することができるものであればよく、特に限定されない。
【0097】
図6及び図7は、本実施態様における処理システム1Cの別態様を示す概略説明図である。図6及び図7における処理システム1Cは、図5で示した移動速度制御手段6において回収手段63を設けるものに係る概略説明図である。
【0098】
図6に示すように、流体の回収手段63として第1のセル41a及び第2のセル41bに流体排出口64a及び64bを設け、第1のセル41a及び第2のセル41b内に供給したバイオガスを、流体排出口64a及び64bから回収することが挙げられる。
また、流体の回収手段63の他の例としては、処理水排出口42b及び電子受容体排出口44bから排出された流体を分離・回収する気液分離部65を備えることが挙げられる。例えば、図7に示すように、処理水排出口42bに接続されている排出配管L3上に気液分離部65を設け、第1のセル41a内に供給したバイオガスを回収することが挙げられる。このとき、図7で示すように、導入口42a及び排出口42bを第1のセル41aの側面に設け、導入口42aよりも垂直方向に高い位置に排出口42bを設けるものとすることが好ましい。これにより、流体(バイオガス)が混合した状態の処理水W2を効率よく回収することが可能となる。
さらに、回収手段63(流体排出口64a及び64b、あるいは気液分離部65)の後段には、ガスの貯留設備等、バイオガスの利用に係る設備を設けることが好ましい(不図示)。これにより、回収手段63で回収したバイオガスについて、エネルギー源としての利用が容易となる。
【0099】
ここで、第1のセル41a内の濾液F、あるいは第2のセル41b内の溶液に対し、バイオガスを供給し、回収手段63を介して回収する場合、バイオガス中に含まれる水溶性の成分(特に硫化水素)が濾液F等に溶解し、除去することが可能となる。これにより、処理システム1Cに対して、排水処理、発電及び脱硫処理以外に、バイオガス精製の機能も付与させることが可能となる。
【0100】
移動速度制御手段6の別の態様としては、第1のセル41a及び第2のセル41b内に撹拌機構を設け、乱流を形成することが挙げられる。これにより、外部からの流体供給に係る構造を設けることがなく、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。また、撹拌機構の駆動制御により、電極反応成分の移動速度を容易に制御することが可能となる。
【0101】
更に、移動速度制御手段6の別の態様としては、温度制御手段66を設けることが挙げられる。
図8図10は、本実施態様の移動速度制御手段6として、温度制御手段66を設けた際の概略説明図である。なお、図8図10は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0102】
上述したように、発電部4においては濾液F中の還元性物質を電子供与体とする電極反応が進行している。また、一般的に、電極反応では、温度が高くなることで物質移動速度の向上や反応効率の向上が生じることが知られている。
したがって、移動速度制御手段6として、処理システム1C内において電極反応に関する温度を制御する温度制御手段66を設けることで、電極反応の効率を向上させ、発電効率や脱硫処理効率を高めることが可能となる。
【0103】
温度制御手段66は、発電部4に係る温度の調整を行うことができるものであればよく、特に限定されない。例えば、発電部4自体の温度調整を行うことや、発電部4に導入する溶液(濾液F等)の温度調整を行うことなどが挙げられる。
また、温度制御手段66としては、熱源に係る設備を新設したり、処理システム1C外から熱源を持ち込んだりしてもよいが、処理システム1C内にある熱源を利用することがより好ましい。これにより、処理システム1Cに係る設備のイニシャルコストやランニングコストを低減させることが可能となる。
【0104】
本実施態様における温度制御手段66としては、処理槽2における嫌気処理を進行させるために設けられている既設の熱交換設備67を利用することが挙げられる。例えば、図8に示すように、既設の熱交換設備67の近傍に発電部4を設け、発電部4のセル(第1のセル41a及び第2のセル41b)、電極(電極43a及び電極43b)、導入配管L3、導入口42a及び電子受容体供給口44aに対し、既設の熱交換設備67からの熱が供給されるように配置することで、発電部4自体並びに発電部4に導入する濾液F及び電子受容体を加温することが挙げられる。これにより、温度制御に係る設備を新設することなく、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応を行う箇所及び反応に用いる物質について、温度を制御することが可能となり、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。
【0105】
温度制御手段66の他の例としては、図9に示すように、既設の熱交換設備67と発電部4とを接続する配管68a、68bを設け、配管68a、68b内を空気や水等の熱媒体が移動することで、既設の熱交換設備67からの熱を発電部4に供給することが挙げられる。これにより、発電部4の温度制御を行い、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応を行う箇所について温度を制御し、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。なお、配管68a、68bと発電部4の接続手段については特に限定されない。例えば、配管68a、68bが発電部4全体を囲むように配置されることや、配管68a、68bが発電部4の構成部材(電極43a及び電極43b、あるいは第1のセル41a、第2のセル41b)のいずれか一つに対して接するように配置されることなどが挙げられる。
また、温度制御手段66の他の例としては、図10に示すように、既設の熱交換設備67と導入配管L3を接続する配管69a、69bを設け、配管69a、69b内を空気や水等の熱媒体が移動することで、既設の熱交換設備67からの熱を導入配管L3内の濾液Fに供給することが挙げられる。これにより、発電部4に導入する濾液Fの温度制御を行い、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応に用いる物質(還元性物質)について温度を制御し、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。
さらに、配管69a、69bが接続する箇所として、導入配管L3に代えて、電子受容体供給口44aとすることが挙げられる。これにより、既設の熱交換設備67からの熱を電子受容体に供給し、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応に用いる物質(電子受容体)について温度を制御し、電極表面に対する電極反応成分の移動速度を制御することが可能となる。
なお、図9及び図10に示す温度制御手段66は、それぞれ単独で設けるものとしてもよく、複数を組み合わせるものとしてもよい。温度制御手段66による温度制御効率や設備に係るコストを鑑み、適宜選択することが可能である。
【0106】
さらに、温度制御手段66の他の例としては、既設の熱交換設備67に代えて、処理槽2から発生するバイオガス(メタン発酵により発生するメタン等)を用いたガス発電における排熱を用いることが挙げられる。より具体的には、この排熱を用いて加温された空気や水等の熱媒体を、配管を通して発電部4や導入配管L3等に接触させ、熱を供給することで、濾液F中の還元性物質を電子供与体とする反応に関する温度を制御することが可能となる。これにより、発電効率や脱硫処理効率を高めるとともに、メタンガス発電に係る排熱の有効利用が可能となる。
【0107】
本実施態様における接触効率向上手段5の他の例としては、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段7を設けることが挙げられる。
【0108】
濃度制御手段7としては、発電部4における電極反応成分の濃度を制御し、少なくとも電極反応成分の濃度を高めることができるものが挙げられる。具体的には、発電部4に対して電極反応成分を追加供給することや、発電部4内の電極反応成分を電極43a及び電極43bの近傍に集約することのほか、濾液F中に電極反応成分を溶存させる環境条件を維持すること等が挙げられる。
【0109】
濃度制御手段7の具体例としては、第1のセル41a及び第2のセル41b内に、電極反応成分を追加供給することが挙げられる。
図11は、本実施態様の濃度制御手段7として、第1のセル41a及び第2のセル41b内に電極反応成分を追加供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、図11は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0110】
図11に示すように、濃度制御手段7として、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ電極反応成分添加口71a、71bと電極反応成分添加手段72を設けることが挙げられる。
【0111】
電極反応成分添加手段72は、第1のセル41a及び第2のセル41bに対して電極反応成分を追加供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、電極反応成分添加手段72としては、電極反応成分を貯留する貯留部や、電極反応成分の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0112】
電極反応成分添加手段72により添加される電極反応成分の種類は、電極43a及び電極43bそれぞれにおいて、電極反応が進行するものであればよく、特に限定されない。例えば、第1のセル41aには、電極反応成分添加手段72を介し、電極反応成分として還元性物質を添加することが挙げられる。一方、第2のセル41bは、電極反応成分添加手段72を介し、電極反応成分として電子受容体を添加することが挙げられる。
【0113】
なお、上述した移動速度制御手段6における流体として電極反応成分を用いることで、電極反応成分添加手段72の機能を兼ねるものとしてもよい。これにより、発電部4の電極表面と電極反応成分との接触効率をより一層向上させることが可能となる。特に、処理槽2からのバイオガスを発電部4の第1のセル41aに供給し、移動速度制御手段6における流体及び電極反応成分添加手段72における電極反応成分として活用することが好ましい。このとき、バイオガス中の水溶性成分(特に硫化水素)が濾液F内に溶解し、濾液F中の還元性物質濃度が高まる一方で、バイオガスからは硫化水素を除去することが可能となる。これにより、発電効率及び脱硫処理効率が向上するという効果に加え、バイオガス精製の機能も備えることができるという効果も奏する。
【0114】
また、濃度制御手段7の他の具体例としては、発電部4内の電極反応成分を電極43a及び電極43bの近傍に集約することが挙げられる。
図12は、本実施態様の濃度制御手段7として、電極43a及び電極43bの近傍に電極反応成分を集約するものを用いた際の概略説明図である。なお、図12は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0115】
図12に示すように、濃度制御手段7として、第1のセル41a及び第2のセル41bに吸着材73を備えるものが挙げられる。
【0116】
吸着材73は、電極反応成分を吸着することができるものであればよく、材質や形状については特に限定されない。例えば、第1のセル41aには、電極反応成分として還元性物質を吸着することができる吸着材73を設けることが挙げられる。一方、第2のセル41bには、電極反応成分として電子受容体を吸着することができる吸着材73を設けることが挙げられる。また、吸着材73は、電極43a及び電極43bの近傍に設けるものであってもよく、電極43a及び電極43bとして多孔質からなるものを用い、電極43a及び電極43b自体が吸着材73としての機能を有するものとしてもよい。これにより、電極43a及び電極43bの近傍に電極反応成分を集約し、電極反応成分の濃度を制御することが可能となる。
【0117】
さらに、濃度制御手段7の他の具体例としては、濾液F中に電極反応成分を溶存させる環境条件を維持することが挙げられる。
図13は、本実施態様の濃度制御手段7として、濾液F中に電極反応成分を溶存させる環境条件を維持するものを用いた際の概略説明図である。なお、図13は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0118】
上述したように、処理槽2においては、嫌気処理(メタン発酵処理など)の進行に伴い、還元性物質である硫化水素が発生する。
一方、硫化水素はpHに応じて溶液中への溶解度が変化し、pH6以上のアルカリ寄りとすることで溶解度が高まり、溶液外への硫化水素の放出が抑制されることが知られている。
したがって、処理液W1や濾液FのpHを調整するpH制御手段74を設けることで、還元性物質(特に硫化水素)の溶解度を変化させ、濾液F中の還元性物質を濾液F中に溶存させる環境条件を維持することが可能となる。これにより、濾液F中における還元性物質の量を増加させ、反応に供する電子供与体の量を増加させることで、発電部4における発電効率や脱硫処理効率を高めることが可能となる。
【0119】
pH制御手段74は、処理液W1あるいは濾液FのpHを調整し、濾液F中の還元性物質を濾液F中に溶存させることができるものであればよく、特に限定されない。
pH制御手段74としては、図12に示すように、pH調整剤を貯留する貯留部75と、pH調整剤を濾液F中に添加する添加部76と、pH検出部77とを備えるものが挙げられる。
【0120】
貯留部75は、pH調整剤を貯留することができるものであればよく、特に限定されない。また、貯留部75内に貯留するpH調整剤についても特に限定されず、還元性物質の溶解度のpH依存性に応じ、pH調整剤の種類を選択することが好ましい。例えば、還元性物質が硫化水素である場合、硫化水素の溶解度を高めるために、濾液FのpHをアルカリ寄りにするようなpH調整剤を用いることが挙げられる。より具体的には、pH調整剤として、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムのような水酸化物を用いることが挙げられる。また、pH調整剤としては、塩酸や硫酸などの酸を用いるものとしてもよい。
【0121】
添加部76は、貯留部75内のpH調整剤を濾液F中に添加するためのものである。また、本実施態様における添加部76は、図13に示すように、導入配管L3上に設けられている。このとき、添加部76としては、導入配管L3内の濾液F中にpH調整剤を添加することができる構造を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、導入配管L3と貯留部75とを接続し、流量調整機能を備える配管からなるものなどが挙げられる。
【0122】
添加部76の配置位置は特に限定されないが、濾液FのpHを調整し、還元性物質の溶解度を適切に制御することができる箇所を選択することが好ましい。例えば、図13に示すように、導入配管L3上に添加部76を設けること以外に、処理槽2と固液分離部3の接続配管L2上に設けることが挙げられる。これにより、処理槽2内における嫌気処理により発生した硫化水素を処理液W1中に溶存させた状態で、固液分離部3に導入することができる。その結果、濾液F中の還元性物質を濾液F中に溶存させる環境条件を維持した状態で、濾液Fを発電部4に導入することが可能となる。
【0123】
また、pH制御手段74の他の例としては、処理システム内の他の設備を活用することが挙げられる。
図14は、本実施態様の濃度制御手段7におけるpH制御手段の別態様を示す概略説明図である。なお、図14は、処理システム1Cにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
図14に示すように、pH制御手段74として、発電部4に処理水W2を循環供給する貯蔵部46及び貯蔵部46に処理槽2で発生したガスG(バイオガス)を供給する接続配管L6を設け(図3参照)、ガスGが導入された処理水W2をpH調整剤として用いることが挙げられる。このとき、貯蔵部46は、上述した貯留部75としても機能することになる。これにより、pH制御手段74として新たな構造を設ける必要がなく、かつ、発電効率や脱硫効率を向上させるとともに、処理槽2で発生したバイオガス精製を行うことも可能となる。
【0124】
図13に示すように、導入配管L3上にpH検出部77を設け、pH検出部77の検出結果に応じ、添加部76から添加するpH調整剤の量を制御することが好ましい。また、pH検出部77は、図14に示した貯留部75(貯蔵部46)や循環流路47上に設け(不図示)、処理水W2の循環量を調整するものとしてもよい。これにより、濾液FのpH調整が容易になるとともに、適切なタイミングで行うことが可能となる。この結果、発電部4に導入する濾液F中における還元性物質の量を増加させ、反応に供する電子供与体の量を増加させることで、発電部4における発電効率や脱硫処理効率を高めることが可能となる。
なお、pH検出部77の検出結果に応じた添加部76の制御手段や処理水W2の循環量調整手段は特に限定されない。例えば、pH検出部77の検出結果を作業員が目視で確認し、その結果に応じて添加部76や処理水W2の循環流路47を手動で作動させることや、pH検出部77と添加部76(あるいは循環流路47)を制御可能に接続し、濾液FのpH検出とpH調整剤の添加(あるいは処理水W2の循環量)を自動制御することなどが挙げられる。
【0125】
本実施態様における接触効率向上手段5は、作動に係る条件を適宜設定することが可能である。例えば、発電部4の駆動時(発電時)において、常に作動させるものであってもよく、作動の間隔やタイミング等を定期あるいは不定期に変更するものであってもよい。これにより、処理システム1Cによる発電や脱硫処理を効率的に実施することができる作動条件を設定し、効率的なエネルギーの回収・利用及び脱硫処理効率の向上が可能となる。
【0126】
本実施態様における処理システム1Cは、電極43a及び電極43bの表面に堆積物が堆積することを抑制するために、移動速度制御手段6や濃度制御手段7の作動条件を設定するものとしてもよい。また、電極表面の堆積物を除去するために、移動速度制御手段6や濃度制御手段7自体が、後述する洗浄手段8の機能を兼ねるものとしてもよい。これにより、接触効率向上手段5を、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させるための複数の機能を備えるものとし、装置構成を簡略化することができる。
【0127】
以上のように、本実施態様の処理システム1Cにおいて、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させる接触効率向上手段を備えることにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0128】
また、本実施態様の処理システム1Cにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0129】
特に、本実施態様の処理システム1Cにおける接触効率向上手段として、電極表面に対し、前記電極反応成分の移動速度を制御する移動速度制御手段を備えることにより、電極表面に対して速やかに電極反応成分を供給することが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0130】
また、本実施態様の処理システム1Cにおける接触効率向上手段として、電極反応成分の濃度を制御する濃度制御手段を備えることにより、電極反応に関与する電極反応成分量を増大させることが可能となる。これにより、電極表面と電極反応成分との接触効率を向上させることができ、電極反応の効率低下を抑制し、発電効率の向上が可能となる。
【0131】
さらに、本実施態様の処理システム1Cにおける接触効率向上手段として、上述した移動速度制限手段及び濃度制御手段を兼ねるものを用いることで、より一層電極反応の効率低下を抑制することが可能となる。特に、処理槽で発生したバイオガスを活用し、移動速度制御手段における乱流形成のための流体、及び、濃度制御手段における追加供給のための電極反応成分として用いることで、発電部の電極表面と電極反応成分との接触効率をより一層向上させるとともに、バイオガス中の水溶性成分(特に硫化水素)を除去することが可能となる。したがって、本実施態様における処理システム1Cは、排水処理、発電及び脱硫処理以外に、バイオガス精製の機能を備えることができるという効果も奏する。
【0132】
〔第4の実施態様〕
第4の実施態様に係る処理システム1Dは、第1の実施態様における処理システム1Aに対し、接触効率向上手段5として、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段8を設けるものである。なお、第1及び第3の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0133】
電極43aの表面には、式1及び式2に示すように、電極反応により生成した生成物(硫黄など)や、発電部4に一部流入した微生物などが電極43aの表面に付着し、堆積物として堆積する。このとき、電極43aに対する還元性物質の物質移動速度が堆積物により阻害され、電極反応効率を低下させるという問題が生じる。また、電極43bにおいても同様に、電子受容体として導入した物質及び混入した不純物が電極43bに付着し、堆積物として堆積することで、電極反応の効率が低下するという問題が生じる。したがって、接触効率向上手段5として洗浄手段8を設けることで、電極表面の堆積物を除去し、電極と電極反応成分との接触効率を向上させることができる。また、発電部4における電極反応効率の低下を抑制し、発電効率及び脱硫処理効率を向上させることができる。
【0134】
洗浄手段8は、発電部4における電極43a及び電極43bの表面を洗浄し、電極反応効率の低下を抑制するためのものである。
洗浄手段8としては、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物を除去することができるものであればよく、特に限定されない。なお、本実施態様における洗浄手段8としては、電極43a及び電極43bを発電部4内に留めたまま洗浄を行うものや、発電部4から電極43a及び電極43bを取り出して洗浄を行うものが挙げられるが、洗浄効果や作業の容易さ等を鑑みて適宜選択することが可能である。
【0135】
以下、洗浄手段の具体例について説明する。なお、以下に示す洗浄手段8に係る説明は、本実施態様における洗浄手段8の一例について示すものであり、これに限定されるものではない。
【0136】
本実施態様の洗浄手段8としては、電極表面に堆積した堆積物に外力を与えて剥離する剥離手段8Aを備えるものが挙げられる。
剥離手段8Aとしては、堆積物に外力を与えて剥離させることができるものであればよく、例えば、電極43a及び電極43bの表面を機械的に擦る手段や、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対し、気体や液体による剪断力を与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として剥離手段8Aを用いることで、堆積物を強制的に電極43a及び電極43bの表面から引き剥がすことができ、堆積物の種類によらず高い洗浄効果を得ることができる。また、剥離手段8Aを用いることで、洗浄手段8によって第1のセル41a及び第2のセル41b内の環境条件(pH、各種化合物の濃度等)を変えることなく洗浄を行うことができる。
【0137】
剥離手段8Aの具体例としては、スポンジやスクレーパーなど、電極43a及び電極43bの表面を擦る部材を設けることが挙げられる。
電極43a及び電極43bの表面を擦る部材を用いる例としては、電極43a及び電極43bの表面を自動的に擦ることができるように駆動部や制御部を設け、洗浄の頻度やタイミングを設定するものとすることが挙げられる。これにより、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物の洗浄作業が容易となる。また、定期的に部材を動かすことで、堆積物が電極43a及び電極43bの表面に堆積すること自体を抑制することが可能となる。
また、電極43a及び電極43bの表面を擦る部材を用いる別の例としては、作業者が電極43a及び電極43bの表面を直接洗浄するものとすることが挙げられる。これにより、電極43a及び電極43bの表面の洗浄とともに、作業者の目視によるメンテナンスを行うことが可能となる。
【0138】
剥離手段8Aの他の具体例としては、電極43a及び電極43bの表面に対して気泡や圧縮流体(気体又は液体)を当てることが挙げられる。
図15は、本実施態様の剥離手段8Aとして、電極43a及び電極43bの表面に対して流体(気体又は液体)を当てるものを用いた際の概略説明図である。なお、図15は、処理システム1Dにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0139】
図15に示すように、剥離手段8Aとして、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ流体供給口81a、81bと流体供給手段82を設け、電極43a及び電極43bの表面に流体が当たるように配置することが挙げられる。なお、図15における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。また、流体供給口81a、81bと流体供給手段82は、上述した移動速度制御手段6における流体供給口61a、61bと流体供給手段62と同様の構造を有するものとし、移動速度制御手段6と剥離手段8Aの機能を兼ねるものとしてもよい。
【0140】
流体供給手段82としては、流体を供給することができるものであればよく、特に限定されない。
【0141】
流体供給手段82から供給する流体として気体を用いる場合、例えば、被処理物Sを処理する処理工程から発生する気体を供給することや、被処理物Sを処理する処理工程で使用する気体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、処理槽2で発生するバイオガスを回収して流体供給口81a、81bから供給することや、処理水W2を処理する処理設備として曝気槽を設けた際の曝気用気体の一部を流体供給口81a、81bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理物Sの処理手段と洗浄手段8の気体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。このとき、流体供給手段82として、気体を圧縮可能な設備(ブロワー、コンプレッサー等)を設け、圧縮気体を供給するものとしてもよい。圧縮気体を用いることで、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対する剪断力が強まり、洗浄効果を高めることができる。
【0142】
また、流体供給手段82から供給する流体として液体を用いる場合、例えば、被処理物Sを処理する処理工程で使用する液体を一部流用して供給するものなどが挙げられる。より具体的には、排出配管L5内の処理水W2の一部を流体供給口81a、81bから供給すること等が挙げられる。これにより、被処理物Sの処理手段と洗浄手段8の液体供給源を兼用することができ、処理コストの低減が可能となる。このとき、流体供給手段82として、液体を圧縮可能な設備(高圧ポンプ等)を設け、高圧液体を供給するものとしてもよい。高圧液体を用いることで、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対する剪断力が強まり、洗浄効果を高めることができる。
【0143】
剥離手段8Aとして、流体供給口81a、81bと流体供給手段82を設ける場合、図15に示すように、流体の移動方向は、濾液F及び電子受容体の移動方向と逆方向になることが好ましい。これにより、濾液F及び電子受容体の移動方向に沿って電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対し、逆方向の剪断力を加えて剥離することになるため、洗浄効果をより一層高めることができる。
【0144】
剥離手段8Aの別の態様として、図15に示した流体供給口81a、81bを別体として設けることなく、導入口42a、排出口42b、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bを、流体供給口81a、81bとして兼用させることが挙げられる。これにより、発電部4に洗浄手段8としての新たな構造を設ける必要がなく、設備コストの低減が可能となる。
【0145】
図16は、本実施態様の剥離手段8Aの別態様を示した概略説明図である。なお、図16は、処理システム1Dにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。また、図16における破線の矢印は、流体の移動方向を示している。
【0146】
図16に示すように、剥離手段8Aとしては、例えば、導入配管L3及び排出配管L5上に液体の加圧が可能なポンプP1、P2を設け、電極43aの表面に向けて高圧液体を供給して洗浄することが挙げられる。このとき、導入配管L3側から導入口42aに向かって高圧液体を供給することや、排出配管L5側から排出口42bに向かって高圧液体を供給することが挙げられる。また、このとき、図16に示すように、導入配管L3上のポンプP1と排出配管L5上のポンプP2の駆動を切り換える制御部83を設けるものとしてもよい。これにより、通常の排水処理工程と洗浄工程の切り換えを容易に行うことができる。また、導入配管L3側及び排出配管L5側から交互に高圧液体を供給可能なものとしてもよい。これにより、電極43a表面の洗浄効果を向上させることが可能となる。
【0147】
また、図16に示すように、剥離手段8Aとしては、例えば、電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bから圧縮流体を供給することで、電極43bの表面を洗浄することが挙げられる。このとき、被処理物Sを処理する処理工程から発生した気体や、被処理物Sの処理に用いた流体などをポンプなどで圧縮し、供給するものとしてもよい(不図示)。これにより、剥離手段8Aとして新たに設ける構造を最小限とし、設備コストを低減することが可能となる。
【0148】
また、剥離手段8Aにおいて、第1のセル41a及び第2のセル41b内に供給された流体は、洗浄後、排出口42b及び電子受容体排出口44bから排出するものとしてもよく、別途、流体排出口(不図示)を設けて排出させるものとしてもよい。特に、剥離手段8Aの流体として処理槽2から発生したバイオガスを用いた場合、流体排出口から洗浄後の流体を回収することが好ましい。なお、洗浄後の流体を回収する場合、上述した回収手段63と同様の構造を設けることなどが挙げられる。これにより、洗浄後の流体をバイオガスとして再度回収・利用することができ、処理システム1Dとしてエネルギー回収・利用効率を高めることが可能となる。
【0149】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面に堆積した堆積物を溶解する溶解手段8Bを備えるものが挙げられる。
溶解手段8Bとしては、堆積物を溶解させることができるものであればよく、例えば、電極43a及び電極43bに対して堆積物を溶解させる薬剤を添加する手段や、電極43a及び電極43b間の電圧・電流を制御する電気化学的手段などが挙げられる。洗浄手段8として溶解手段8Bを用いることで、新たに加える装置構成が少なく、設備の小型化が可能である。また、特に電極43a及び電極43bの表面が多孔質である場合、電極43a及び電極43bの表面及び内部に堆積した堆積物に対して高い洗浄効果を奏する。
【0150】
溶解手段8Bの具体例としては、堆積物を溶解させる薬剤を添加することが挙げられる。
図17は、本実施態様の溶解手段8Bとして、電極43a及び電極43bの表面に対して薬剤を添加するものを用いた際の概略説明図である。なお、図17は、処理システム1Dにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0151】
図17に示すように、溶解手段8Bとして薬剤を添加するものを用いる例としては、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ薬剤添加口84a、84bと薬剤添加手段85を設け、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対して薬剤が供給されるように配置することが挙げられる。なお、図17における破線の矢印は、薬剤の添加方向を示している。
【0152】
薬剤添加手段85は、第1のセル41a及び第2のセル41bに対して薬剤を添加することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、薬剤添加手段85としては、薬剤を貯留する貯留部や、薬剤の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0153】
薬剤添加手段85により添加される薬剤の種類は、堆積物を溶解させることができるものであればよく、特に限定されない。薬剤としては、例えば、塩酸、硫酸などの酸や、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリを用いることが挙げられる。また、被処理物Sを処理する処理工程で使用されるpH調整剤などの薬剤を利用するものとしてもよい。これにより、洗浄手段8のために新たな薬剤を用意する必要がなく、ランニングコストを低減させることが可能となる。
【0154】
溶解手段8Bとして、薬剤添加口84a、84bと薬剤添加手段85を設ける場合、図17に示すように、薬剤の添加方向は、電極43a及び電極43bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル41a及び第2のセル41b内に貯留されているものが液体である場合、電極43a及び電極43bの上部から薬剤を添加することで、セル41a、41b内に薬剤が速やかに拡散する。これにより、電極43a及び電極43bの表面全体に効率的に薬剤が行き渡るため、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0155】
また、導入配管L3に薬剤添加手段85を接続し、薬剤を導入口42aから電極43aに対して供給するものとしてもよい。これにより、薬剤添加口84aを別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0156】
溶解手段8Bの別の態様として、電極43a及び電極43bと接続するように電圧・電流制御装置を設け、電気化学的処理を行うことが挙げられる。より具体的には、電極43a及び電極43b間に高電圧を印加することや、発電時の電極反応とは逆の方向に電流を流すこと等が挙げられる。これにより、電極43a及び電極43bが多孔質であった場合、電極43a及び電極43bの表面及び多孔質内に堆積した堆積物を効果的に溶解させることが可能となる。特に、堆積物が主に電極反応により生成したものからなる場合において、発電時の電極反応とは逆の方向に電流を流すことによって、堆積物を強制的に酸化(又は還元)させることができ、高い洗浄効果を奏する。
【0157】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面に堆積した堆積物を分散して離散させる分散手段8Cを備えるものが挙げられる。
分散手段8Cとしては、電極表面の堆積物を分散させ、その結果電極表面から堆積物を離散させることができるものであればよく、例えば、電極43a及び電極43bに対して堆積物の分散効果がある薬剤を添加する手段や、電極43a及び電極43b表面に対して振動を与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として分散手段8Cを用いることで、堆積物を一度分散させ、電極43a及び電極43bの表面から離散させるため、電極43a及び電極43b表面に対する負荷が少ない状態で洗浄を行うことが可能となる。また、電極43a及び電極43bが多孔質である場合、多孔質内に堆積した堆積物に対しても高い洗浄効果を奏する。
【0158】
分散手段8Cの具体例としては、堆積物を分散させる効果がある薬剤を添加することが挙げられる。
図18は、本実施態様の分散手段8Cとして、電極43a及び電極43bの表面に対して薬剤を添加するものを用いた際の概略説明図である。なお、図18は、処理システム1Dにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0159】
図18に示すように、分散手段8Cとして薬剤を添加するものを用いる例としては、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ薬剤添加口86a、86bと薬剤添加手段87を設け、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物に対して薬剤が供給されるように配置することが挙げられる。なお、図18における破線の矢印は、薬剤の添加方向を示している。
【0160】
薬剤添加手段87は、第1のセル41a及び第2のセル41bに対して薬剤を添加することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、薬剤添加手段87としては、薬剤を貯留する貯留部や、薬剤の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0161】
薬剤添加手段87により添加される薬剤の種類は、堆積物を分散させることができるものであればよく、特に限定されない。薬剤としては、例えば、界面活性剤、酵素などを用いることが挙げられる。このとき用いる薬剤は、電極43a及び電極43bに対する腐食などの影響が小さく、電極43a及び電極43bの表面に対し必要以上の負荷をかけることがないという効果がある。また、特に堆積物が主に微生物からなる場合、界面活性剤や酵素を用いることで、電極43a及び電極43bの表面で微生物を分散させ、電極43a及び電極43bの表面から微生物を離散させることが可能となる。これにより、電極43a及び電極43bの表面で死滅した微生物が堆積物として残り続けることを回避し、電極反応効率の低下を抑制することが可能となる。
【0162】
分散手段8Cとして、薬剤添加口86a、86bと薬剤添加手段87を設ける場合、図16に示すように、薬剤の添加方向は、電極43a及び電極43bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル41a及び第2のセル41b内に貯留されているものが液体である場合、電極43a及び電極43bの上部から薬剤を添加することで、セル41a、41b内に薬剤が速やかに拡散する。これにより、電極43a及び電極43bの表面全体に効率的に薬剤が行き渡るため、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0163】
また、導入配管L3に薬剤添加手段87を接続し、薬剤を導入口42aから電極43aに対して供給するものとしてもよい。これにより、薬剤添加口86aを別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0164】
分散手段8Cの別の態様として、電極43a及び電極43bに対して振動を与えることが挙げられる。より具体的には、電極43a及び電極43bに対して超音波を照射することができるように超音波発生装置を配設すること等が挙げられる。これにより、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物を細分化して分散させ、電極43a及び電極43bの表面から離散させることが可能となる。特に、堆積物が微生物の集合体である場合や、電極反応による生成物が塊状になっている場合などにおいて、超音波によって一旦細分化させることができるため、電極43a及び電極43bの表面には負荷をかけることなく堆積物を容易に引き剥がすことが可能となる。
【0165】
本実施態様の洗浄手段8の別の態様としては、電極表面の周辺環境を変化させる周辺環境変化手段8Dを備えるものが挙げられる。
周辺環境変化手段8Dとしては、電極表面の周辺環境を変化させるものであればよく、例えば、加熱・冷却のような温度制御手段、第1のセル41a及び第2のセル41b内の物性を変化させる添加物を供給する手段、堆積物に一定のダメージを与える手段などが挙げられる。洗浄手段8として周辺環境変化手段8Dを用いることで、堆積物が微生物を含む場合、微生物が電極表面周辺の環境変化に耐えられず、電極表面から離れる方向に微生物を自発的に移動させることが可能となる。これにより、電極表面から効果的に微生物を剥離させることが可能となり、電極表面に対する高い洗浄効果を得ることができる。
【0166】
周辺環境変化手段8Dの具体例としては、第1のセル41a及び第2のセル41b内の物性を変化させる添加物を供給することが挙げられる。
図19は、本実施態様の周辺環境変化手段8Dとして、電極43a及び電極43bの表面に対して添加物を供給するものを用いた際の概略説明図である。なお、図19は、処理システム1Dにおける発電部4周辺の拡大図であり、処理槽2及び固液分離部3については図示を省略している。
【0167】
図19に示すように、周辺環境変化手段8Dとして添加物を供給するものを用いる例としては、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ添加物供給口88a、88bと添加物供給手段89を設け、電極43a及び電極43bの表面及び堆積した堆積物の周辺環境を変化させることが挙げられる。なお、図19における破線の矢印は、添加物の添加方向を示している。
【0168】
添加物供給手段89は、第1のセル41a及び第2のセル41bに対して添加物を供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、添加物供給手段89としては、添加物を貯留する貯留部や、添加物の供給量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0169】
添加物供給手段89により供給される添加物の種類は、第1のセル41a及び第2のセル41b内の物性を変化させることができるものであればよく、特に限定されない。添加物としては、例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩類や、電解水などのイオンを含まないものを用いることが挙げられる。これにより、第1のセル41a及び第2のセル41b内の塩濃度を変えることができ、その結果、電極43a及び電極43bの表面周辺における浸透圧が変化し、微生物が電極43a及び電極43bの表面から自発的に移動することを促すことができる。
【0170】
周辺環境変化手段8Dとして、添加物供給口88a、88bと添加物供給手段89を設ける場合、図19に示すように、添加物の供給方向は、電極43a及び電極43bの上部から下部に向かうようにすることが好ましい。特に、第1のセル41a及び第2のセル41b内に貯留されているものが液体である場合、電極43a及び電極43bの上部から添加物を供給することで、電極43a及び電極43bの表面に沿って添加物が広がっていく。これにより、電極43a及び電極43bの表面周辺における物性変化を効果的に行うことができ、洗浄効果を高めることが可能となる。
【0171】
周辺環境変化手段8Dの別の態様として、堆積物に一定のダメージを与えることが挙げられる。より具体的には、電極43a及び電極43b表面の堆積物が微生物である場合に、微生物に対して塩素やオゾンを供給することや、紫外線を照射すること等が挙げられる。これにより、電極43a及び電極43bの表面に堆積した堆積物(微生物)に対して一定のダメージを与えることができる。このとき、微生物はダメージを与えられるという環境変化に耐えられず、自発的に電極43a及び電極43bの表面から移動するように促すことが可能となる。なお、塩素やオゾンの供給量、あるいは紫外線照射量が過多になると、微生物が電極43a及び電極43bの表面で死滅してしまい、堆積物となって残存する。したがって、塩素やオゾンの供給量、あるいは紫外線照射量は抑えることが好ましく、これにより、ランニングコストを低減させることができるという効果も奏する。
【0172】
本実施態様の処理システム1Dにおける洗浄手段8としては、上記した剥離手段8A、溶解手段8B、分散手段8C及び周辺環境変化手段8Dをそれぞれ単独で行うものに限定されるものではなく、上記手段8A~8Dを複数組み合わせるものとしてもよい。これにより、堆積物の種類によって好適な洗浄手段8を選択して実施することが可能となり、より高い洗浄効果が得られる。特に、洗浄手段8の手段8B~8Dにおいて、第1のセル41a及び第2のセル41b内に薬剤・添加物などの添加を行う構成については、添加する薬剤や添加物を変更することのみで、それぞれの手段8B~8Dを実施することが可能である。したがって、堆積物の種類に応じて手段8B~8Dを容易に切り換えることができ、効果的な洗浄を行うことが可能となる。
【0173】
以上のように、本実施態様の処理システム1Dにおいて、接触効率向上手段として、電極表面に堆積した堆積物を洗浄する洗浄手段を備えることで、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0174】
また、本実施態様の処理システム1Dにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0175】
さらに、本実施態様の処理システム1Dの発電部4において、電極表面に堆積物が堆積することで、発電部4内におけるセル(第1のセル41a及び第2のセル41b)内の容積減や、電極(電極43a及び電極43b)内部の詰まりが生じ、圧力損失の要因となることがある。したがって、本実施態様における処理システム1Dのように、接触効率向上手段として洗浄手段を設け、電極表面の堆積物を除去することにより、装置内の圧力損失を抑制することも可能となる。
【0176】
〔第5の実施態様〕
図20は、本発明の第5の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。また、図21は、本発明の第5の実施態様における処理システムの別の態様を示す概略説明図である。
第5の実施態様に係る処理システム1Eは、図20及び図21に示すように、第1の実施態様に係る処理システム1Aにおいて、カソード側のpH上昇を抑制する手段として排ガス供給手段9を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。また、図20及び図21は、処理システム1Eの発電部4周辺に係る拡大説明図であり、処理槽2及び固液分離部3に係る構成については図示を省略している。
【0177】
上述したように、本実施態様の処理システムにおける電極反応では、反応R3によりカソード側に水素イオン(H)が移動することで、式3に基づく反応R4が進行する。しかし、反応R3ではイオン交換体45を介して水素イオンが移動するため、カソード側である電極43bに対し、式3に基づく反応における十分な水素イオンが供給される前に、電極反応が進行することがある。このとき、電極43bでは、式3に基づく水(HO)を生成する反応ではなく、水酸化物イオン(OH)が生成する反応が進行し、電極43b(カソード側)ではpH上昇が起こる。これにより、電極反応効率が低下するという問題が生じる。
【0178】
このため、処理システムには、発電部4におけるカソード側のpH上昇を抑制するための手段を設けることが好ましい。pH上昇を抑制する手段としては、例えば、酸性成分を添加することが挙げられる。ここで、pH上昇を抑制する手段としては、薬剤として酸性成分を添加する手段を新設すること以外に、より好ましい例として、既設装置等から排出される排出物を活用できる構成とすることが挙げられる。これにより、処理システム1Eの省コスト化や省エネルギー化が可能となる。
既設装置等から排出される排出物を活用し、pH上昇を抑制する手段としては、例えば、各種燃焼装置で生じた排ガスを処理システム1Eに供給することが挙げられる。燃焼装置で生じた排ガスには、二酸化炭素(CO)、硫黄酸化物(SO)、窒素酸化物(NO)などが含まれており、これらの排ガス成分は水溶液に溶解すると酸性を示すことが知られている。したがって、燃焼装置で生じた排ガスを活用することで、発電部4におけるpH上昇を抑制することが可能となる。
【0179】
(排ガス供給手段)
排ガス供給手段9は、発電部4に対して燃焼装置で生じた排ガスを供給し、pH上昇を抑制することで、電極反応効率の低下を抑制するためのものである。
排ガス供給手段9としては、発電部4に対して燃焼装置で生じた排ガスを供給することができるものであればよく、特に限定されない。なお、本実施態様における排ガス供給手段9としては、カソード側である電極43bを配した第2のセル41b内に排ガスを供給するものとすることが特に好ましい。このような排ガス供給手段9としては、第2のセル41bに直接排ガスを供給するための構造を設けるものや、電子受容体とともに排ガスを供給する構造を設けるもの等が挙げられる。
【0180】
排ガス供給手段9の具体例としては、発電部4内の第2のセル41bに、燃焼装置で生じた排ガスを供給する機構を直接設けることが挙げられる。
図20は、本実施態様の排ガス供給手段9として、第2のセル41bに排ガスを供給する機構を直接設ける際の概略説明図である。
【0181】
図20に示すように、排ガス供給手段9として、第2のセル41bに排ガス供給口91を設け、排ガス供給口91には、燃焼装置(不図示)で発生した排ガスを供給するための配管92を接続することが挙げられる。ここで、図20における破線の矢印は、排ガスの流入方向を示している。また、図20では、排ガス供給手段9として、第2のセル41bの上部に排ガス供給口91を設け、排ガスを供給するものを図示しているが、これに限定されるものではない。排ガス供給手段9の他の例としては、例えば、排ガス供給口91を第2のセル41bの下部に設け、排ガスが第2のセル41b内の下方から上方に向かって上昇するように供給するものとすることなどが挙げられる。
【0182】
排ガス供給口91及び配管92は、気体の供給・移送に係る公知の構成を用いることができ、具体的な構造は特に限定されない。
また、配管92は、燃焼装置で生じた排ガスを移送するためのものであればよく、燃焼装置と直接接続するものであってもよく、間接的に接続するものであってもよい。
【0183】
排ガス供給手段9としては、図20に示すように、発電部4に対し、排ガス供給口91と配管92を設けるものに限定されない。例えば、排ガス供給手段9として、電子受容体の貯留箇所や電子受容体を供給するライン上に配管92を接続し、排ガスを電子受容体供給口44aから電極43bに対して供給するものとしてもよい。これにより、排ガス供給口91を別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0184】
なお、本実施態様において、排ガス供給手段9と接続する燃焼装置自体の構造や、燃焼装置で燃焼させる対象などについては特に限定されない。
燃焼装置としては、物質の燃焼を行うことができる公知の構成を用いることができる。燃焼装置としては、本実施態様における処理システムのために新設するものとしてもよいが、コスト面を鑑み、既設の燃焼装置を利用するものとしてもよい。例えば、ごみ焼却施設における燃焼装置のほか、バイオガス等のガス燃焼による発電施設における燃焼装置などが挙げられる。
また、燃焼装置で燃焼させる物質としては、炭素成分、硫黄成分、窒素成分の少なくとも1つ以上を含み、燃焼後に、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物など、水溶液に溶解することで酸性を示す成分を含む排ガスを生じるものであればよく、具体的な物質としては特に限定されない。
【0185】
燃焼装置の例としては、排水処理の処理過程で生じた排出物を燃焼対象とするものが挙げられる。これにより、排水処理における一連の処理過程の中で電極反応を行うことに加え、電極反応効率の低下抑制に係る工程も併せて実施することが可能となる。このため、処理システム1Eとして、エネルギーの回収・利用効率が向上するとともに、省コスト化が可能となる。
このような燃焼装置の具体的な例としては、例えば、固液分離部3で分離した固形物(汚泥)を焼却するものや、処理槽2における嫌気処理で発生したガス(バイオガス)を燃焼するものなどが挙げられる。これにより、燃焼対象を容易に得ることができるとともに、排出配管L4から排出された固形物(汚泥)処理やバイオガス利用等における既設の燃焼装置を利用することができる。さらに、本発明の処理システムのために、新たに燃焼装置を設ける必要がなく、イニシャルコストを大幅に低減することが可能となる。
また、燃焼対象を汚泥とした場合、汚泥には有機物が多く含まれるため、燃焼処理により二酸化炭素を多く含む排ガスが発生する。近年、環境への影響を鑑み、二酸化炭素の排出規制が厳しくなっている。このため、二酸化炭素を含む排ガスを発電部4に供給することで、発電部4における電極反応効率の低下を抑制するとともに、二酸化炭素が発電部4内の電解質溶液に溶解するため、二酸化炭素の系外への排出を抑制することが可能となるという効果も奏する。
なお、燃焼装置は1つに限定するものではなく、複数のものを組み合わせてもよい。例えば、固形物を焼却するものとガスを燃焼するものを組み合わせることなどが挙げられる。これにより、排ガス供給手段9に対して安定して排ガスを供給することができるとともに、各燃焼装置から排出される排ガス処理を低コストで行うことが可能となる。
【0186】
本実施態様の排ガス供給手段9の別の態様としては、排ガスの温度を調整するための機構を備えるものとしてもよい。
燃焼装置で生じた排ガスの温度は、100度を超えることもあることが知られている。一方、本実施態様における処理システム1Eの発電部4は、水溶液中に配置した電極による電気化学反応を実施するものであり、100度を超える排ガスをそのまま供給すると、電極の劣化を速めるとともに、発電部4内の電解質溶液が蒸発(気化)することで、電極反応効率の低下が生じるなど、熱による不具合が発生するおそれがある。したがって、排ガスの温度を調整し、発電部4に供給することが好ましい。
【0187】
図21は、本実施態様における排ガス供給手段9として、排ガスの温度を調整する機構を設けた際の概略説明図である。
図21に示すように、排ガスの温度を調整する機構として、配管92上に温度調整機構93を設け、排ガスの温度調整を行うことが挙げられる。より具体的には、温度調整機構93により、排ガスの温度を100度以下に冷却すること等が挙げられる。これにより、排ガスを発電部4(第2のセル41b)内に供給した際に、熱による不具合が発生することを抑制することが可能となる。
【0188】
温度調整機構93としては、ガス(排ガス)の温度調整が可能なものであればよく、公知の構成を用いることができる。温度調整機構93の一例としては、空気等の気体や冷却水等の液体を用いた熱交換器が挙げられる。また、温度調整機構93の他の例としては、本実施態様の処理システム1Eにおける処理槽2等の処理設備に対し、排ガスを用いた加温が可能となるように排ガスの配管等の配置を行うことが挙げられる。これにより、処理槽2等の処理設備を加温処理した後に冷却された排ガスを、配管92を介して発電部4に供給することで、電極反応効率の低下を抑制するとともに、処理システム1E全体としての省エネルギー化が可能となる。
【0189】
以上のように、本実施態様の処理システム1Eにおいて、燃焼装置で生じた排ガスを発電部へ供給する排ガス供給手段を備えることにより、電極反応におけるカソード側のpH上昇を抑制することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0190】
また、本実施態様の処理システム1Eにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0191】
〔第6の実施態様〕
図22は、本発明の第6の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。また、図23及び図24は、本発明の第6の実施態様における処理システムの別態様を示す概略説明図である。
第6の実施態様に係る処理システム1Fは、図22図24に示すように、第1の実施態様に係る処理システム1Aにおいて、発電部4の電極41a、41bに含まれる気体を脱気する脱気手段10を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。また、図22図24においては、処理システム1Fの発電部4周辺に係る拡大説明図であり、処理槽2及び固液分離部3に係る構成については図示を省略している。
【0192】
本実施態様における電極43aは、濾液F中の還元性物質から直接電子を回収するものである。したがって、電極43aと還元性物質との接触効率を向上させることで電子供与体としての反応効率(電極43aにおける電子の回収速度)が向上し、発電効率を向上させることが可能となる。また、電極43bにおいても同様に、電極43bと電子受容体との接触効率を向上させることで、発電効率を向上させることが可能となる。
【0193】
一方、電極43aや電極43bとして、発電効率を鑑み、比表面積の大きい多孔質体を用いた場合、電極内部に気体が入り込む空間が存在することになる。したがって、多孔質体からなる電極43a、43bをそのまま処理水等の液体を貯留するセル(第1のセル41a、第2のセル41b)に設置すると、電極43a、43b内には気泡が存在し、電極43a、43bの表面と濾液F等の液体との接触面積が低下することになる。このとき、電極43a、43bにおいて、還元性物質や電子受容体による電極反応効率が低下するという問題が生じる。
【0194】
(脱気手段)
脱気手段10は、発電部4における電極43a及び電極43bに含まれる気体を除去し、電極反応効率の低下を抑制するためのものである。
脱気手段10としては、電極43a及び電極43bに含まれる気体を除去することができるものであればよく、特に限定されない。なお、本実施態様における脱気手段10としては、電極43a及び電極43bを発電部4内に設置したまま脱気を行うものや、発電部4に設置する前や発電部4から取り出した後など、発電部4外部において電極43a及び電極43bの脱気を行うものが挙げられる。発電部4内の電極43a、43bに対し、脱気を行う場合、電極43a、43bの輸送や設置は通常通り行うことができ、発電工程の合間に脱気工程を行うことが容易である。このため、脱気処理に係る操作のタイミング等を容易に設定することが可能である。一方、発電部4外部において電極43a、43bの脱気を行う場合、発電部4に脱気に係る設備を追加することなく、複数の電極を一括で処理することができるため、作業コストを低減させることができる。したがって、脱気手段10は、発電部4内部あるいは発電部4外部のいずれで行うものとしてもよく、脱気効果や作業効率等を鑑みて適宜選択することが可能である。
【0195】
本実施態様の脱気手段10としては、電極に対して薬剤を添加する薬剤添加手段10Aを備えるものが挙げられる。
薬剤添加手段10Aとしては、薬剤を加えることで電極に含まれる気体を除去することができるものであればよく、例えば、発電部4外で電極43a及び電極43bに薬剤を添加するものや、発電部4内に薬剤を添加するものなどが挙げられる。脱気手段10として薬剤添加手段10Aを用いることで、薬剤を添加するという比較的簡易な手段により、電極の脱気を行うことができる。この場合、電極の脱気に係る付帯設備の大型化を抑制し、イニシャルコストを低減することが可能となる。
【0196】
薬剤添加手段10Aの具体例としては、発電部4内に設置した電極43a及び電極43bに対して薬剤を添加する機構を設けることが挙げられる。
図22は、本実施態様の薬剤添加手段10Aとして、発電部4内の電極43a及び電極43bに対して薬剤を添加する機構を設ける際の概略説明図である。
図22に示すように、薬剤添加手段10Aとして、第1のセル41a及び第2のセル41bにそれぞれ薬剤供給口101a、101bと薬剤供給手段102を設け、電極43a及び電極43bの表面に薬剤が触れるように配置することが挙げられる。なお、図22における破線の矢印は、薬剤の流入方向を示している。
【0197】
薬剤供給手段102としては、薬剤を添加することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、薬剤供給手段102としては、薬剤を貯留する貯留部や、薬剤の添加量を決定・調整するための制御部等を備えること等が挙げられる。
【0198】
薬剤供給手段102から供給する薬剤としては、電極43a、43b内の気体と置換し、気体を電極43a、43b外に押し出すもの、電極43a、43b内の気体が溶解するもの、電極43a、43b内の気体を破泡するものなどが挙げられる。より具体的には、アルコールなどの有機溶剤のほか、消泡剤として知られる物質が挙げられる。これにより、発電部4に配置された電極43a、43bに含まれる気体を除去することが可能となる。
【0199】
薬剤添加手段10Aとしては、図22に示すように、発電部4に対し、薬剤供給口101a、101bと薬剤供給手段102を設けるものに限定されない。例えば、導入配管L3に薬剤供給手段102を接続し、薬剤を導入口42aから電極43aに対して供給するものとしてもよい。これにより、薬剤供給口101aを別体として設ける必要がなくなるため、装置構成の簡略化が可能となる。
【0200】
薬剤添加手段10Aの別の態様として、発電部4外で、電極43a、43bに薬剤を添加する設備を設け、一括で脱気処理を行った後、保存溶液で満たした保存容器に電極43a、43bを収容したものを発電部4に輸送、配置することが挙げられる。
【0201】
このとき、保存溶液としては、脱気処理後の電極43a、43b内に再度気体が流入することを抑制することができる液体であればよく、例えば、脱気処理に使用した薬剤(溶液)のほか、純水等が挙げられる。また、保存溶液としては、純水等の水溶液を用いることが好ましい。これにより、発電部4に電極43a、43bを配置した際、保存溶液が処理水と置換されやすく、また、処理水中に保存溶液が流出しても、第1のセル41a及び第2のセル41b内の環境条件に対する影響を抑えることができる。
【0202】
また、このとき、保存容器としては、電極43a、43b及び保存溶液を収容し、脱気処理後の電極43a、43b内に再度気体が流入することを抑制することができる容器であればよく、例えば、通気性及び通水性を有さない材質からなる箱体や袋体等が挙げられる。このような保存容器の具体的な例としては、例えば、プラスチックフィルムや金属薄膜からなる袋体や、プラスチック板や金属板からなる箱体等が挙げられる。
【0203】
薬剤添加手段10Aとして、発電部4外で薬剤による脱気処理を行うものとした場合、発電部4内に直接薬剤を投入することがないため、第1のセル41a及び第2のセル41b内の環境変化が少なく、電極反応に対する影響を抑制することができるという効果も奏する。
【0204】
本実施態様の脱気手段10の別の態様としては、電極に対して電圧印加を行う電気的処理手段10Bを備えるものが挙げられる。
電気的処理手段10Bとしては、処理水等の溶液に浸漬した状態で電極に対して電圧印加を行うことができるものであればよく、例えば、発電部4内に配置した電極43a及び電極43b間の電圧・電流を制御する電気化学的装置を設けることや、発電部4外において電極43a及び電極43b間に印加する電圧・電流を制御する電気化学的装置を備えた設備を設けることなどが挙げられる。特に、脱気手段10として、発電部4内に電気的処理手段10Bを設けることで、新たに加える装置構成が少なく、設備の小型化が可能となる。
【0205】
図23は、本実施態様の電気的処理手段10Bとして、発電部4内の電極43a及び電極43b間に電圧印加するものを用いた際の概略説明図である。
図23に示すように、電気的処理手段10Bとして、電極43a及び電極43bと接続するように電圧・電流制御装置103を設け、電気化学的処理を行うことが挙げられる。より具体的には、電極43a及び電極43bからガスが発生する電極反応が進行するように電圧を印加すること等が挙げられる。これにより、電極43a、43bに含まれる気体は、電極反応により発生するガスによって電極43a、43bの外部に押し出されるため、電極の脱気処理が可能となる。このとき、ガスが発生する電極反応としては、第1のセル41a及び第2のセル41b内に貯留された水溶液(水)の電気分解が挙げられる。発電部4内での水の電気分解によって水素及び酸素が発生し、電極43a、43bに含まれる気体ごと電極43a、43b外に放出し、電極の脱気を行うことができる。これにより、脱気手段10として新たな設備追加がほとんど不要となるため、設備コストを大幅に削減することが可能となる。
【0206】
本実施態様の脱気手段10の別の態様としては、電極に対して減圧処理を行う減圧手段10Cを備えるものが挙げられる。
減圧手段10Cとしては、少なくとも電極に対して減圧処理を行い、その結果電極に含まれる気体を除去することができるものであればよく、例えば、発電部4内に電極43a及び電極43bを配置した状態でセル(第1のセル41a及び/又は第2のセル41b)内を減圧する手段や、発電部4外で電極43a及び電極43bに対して減圧処理を行った後、減圧状態を保ったまま保存容器に収容する手段などが挙げられる。脱気手段10として減圧手段10Cを用いることで、第1のセル41a及び第2のセル41b内の環境条件(pH、各種化合物の濃度等)を変えることなく電極の脱気を行うことができる。
【0207】
図24は、本実施態様の減圧手段10Cとして、発電部4内に電極43a及び電極43bを配置した状態で第1のセル41a及び第2のセル41b内を減圧するものを用いた際の概略説明図である。
図24に示すように、減圧手段10Cとしては、流量調節弁104a~104dと減圧装置105を設けることが挙げられる。
図24に基づき、本実施態様の減圧手段10Cの一例を説明する。図24に示した減圧手段10Cは、第1のセル41aに対して濾液Fを導入・排出する導入配管L3及び排出配管L5上に流量調節弁104a、104bを設け、第2のセル41bに対して電子受容体を導入・排出する電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bに接続する配管106、107上に流量調節弁104c、104dを設けている。これにより、流量調節弁104a~104dの開閉操作により、第1のセル41a及び第2のセル41を、処理システム1Fに係る他の設備(処理槽2や固液分離部3等)から区画することが可能となる。そして、区画した空間内を減圧するために、図24に示した減圧手段10Cでは、第1のセル41a及び第2のセル41bと接続するように減圧装置105を設けている。これにより、減圧装置105を駆動することで、区画された空間である第1のセル41a及び第2のセル41b内が減圧される。このとき、電極43a、43bに含まれる気体は、電極43a、43b外に放出されるため、電極の脱気を行うことができる。
【0208】
減圧装置105は、第1のセル41a及び第2のセル41b内の圧力を低減することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、減圧装置105としては、減圧ポンプとして知られるもの等が挙げられる。
【0209】
減圧手段10Cとしては、図24に示す構成に限定されない。例えば、第2のセル41bに供給する電子受容体が気体であり、電極43bにおいて脱気処理が不要である場合、第1のセル側のみに減圧手段10Cを設けるものとしてもよい。このとき、減圧手段10Cとしては、流量調節弁104a、104bと、第1のセル41aのみに接続されている減圧装置105を設けることが挙げられる。これにより、濾液Fと接触し、気体を除去する必要のある電極43a側のみ脱気処理を行うことができ、処理システム1F全体としての簡略化が可能となる。
一方、第1のセル41aあるいは第2のセル41bのどちらか片方のみに減圧手段10Cを設け、減圧による脱気処理を行うと、セル間の圧力差により、電極43a、43bやイオン交換体45の破損が生じるおそれがある。したがって、脱気手段10として減圧手段10Cを用いる場合、図24に示すように、流量調節弁104a~104dを設けることで、第1のセル41a及び第2のセル41bの両方を含むように区画し、区画された空間内を減圧することがより好ましい。これにより、電極43a及び電極43bの脱気処理を安定して行うことが可能となる。
【0210】
また、減圧装置105を、第1のセル41a及び第2のセル41bに接続する際、新たな配管を設けるものとしてもよく、既設の配管を活用するものとしてもよい。特に、既設の配管を活用することにより、装置構成の簡略化が可能となる。
【0211】
本実施態様の処理システム1Fにおける脱気手段10としては、上記した薬剤添加手段10A、電気的処理手段10B及び減圧手段10Cをそれぞれ単独で行うものに限定されるものではなく、上記手段10A~10Cを複数組み合わせるものとしてもよい。これにより、電極43a、43bの形態や配設状況等に応じて好適な脱気手段10を選択して実施することが可能となり、より高い脱気効果が得られる。
【0212】
本実施態様における脱気手段10による電極の脱気を実施する条件(実施回数や実施時期等)については特に限定されない。例えば、各脱気手段10(手段10A~10C)は、発電部4に電極を設置する前や設置した後に、1回だけ行うものとしてもよく、複数回繰り返すものとしてもよい。なお、脱気手段10を繰り返し実施することで、脱気効率を高めることができるが、脱気手段10の駆動に係るコスト(薬剤コストや電力コスト等)を鑑み、実施の回数を適宜設定することができる。また、脱気手段10を実施する時期については、例えば、電極の交換時など、新規の電極を使用するタイミングのほか、電極のメンテナンス(洗浄等)後のタイミングなどが挙げられる。
【0213】
また、本実施態様の脱気手段10により脱気処理が行われた電極43a、43bは、本発明の電極として独立した構成とすることができる。本発明の電極は、脱気手段10により脱気処理を行われているものであればよく、形態等については特に限定されない。例えば、発電部4外に備えた脱気手段10により脱気処理を行い、保存容器等に収容されて輸送可能な形態となっているものなどが挙げられる。
本発明の電極は、被処理物に対する嫌気処理を行う処理システム(本実施態様における処理システム1F)で処理された後の排出物(処理液W1)を固液分離した濾液Fと接触させ、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施するための電極として、電極内部の比表面積が低下するという問題を解決することができるものである。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、処理システムにおける発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0214】
以上のように、本実施態様の処理システム1Fにおいて、電極内部に含まれる気体を除去する脱気手段を備えることにより、電極内部の比表面積が低下するという問題を解決することができる。これにより、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電及び脱硫処理の効率向上が可能となる。
【0215】
また、本実施態様の処理システム1Fにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0216】
さらに、本実施態様の電極により、電極内部の比表面積の低下を抑制し、排水処理における一連の処理過程の中で発電を実施する際に、発電及び電気化学処理の効率向上が可能となる。特に、既設の処理システムに対して発電や脱硫処理の機能を付加する際に、本実施態様の電極を用いることで、電極反応の効率が低下することを抑制し、発電や脱硫処理を高効率で実施することが可能となる。
【0217】
〔第7の実施態様〕
図25は、本発明の第7の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。また、図26及び図27は、本発明の第7の実施態様における処理システムの別態様を示す概略説明図である。
第7の実施態様に係る処理システム1Gは、図25図27に示すように、第1の実施態様に係る処理システム1Aにおいて、第1のセル41aから排出される処理水W2を絶縁するための絶縁機構11を設けるものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。また、図25図27においては、処理システム1Gの発電部4周辺に係る拡大説明図であり、処理槽2及び固液分離部3に係る構成については図示を省略している。
【0218】
上述したように、電極反応を行う場合、電極反応を行う箇所(発電部4)以外を絶縁することが好ましい。
本実施態様における処理システム1Gは、処理水W2を絶縁する絶縁機構11を設けるものである。これにより、発電部4で生成した電子が電極43a及び電極43bの間以外に流れることを防ぎ、電極反応効率を向上させるものである。また、この結果、発電効率及び脱硫処理効率を向上させることができる。なお、本実施態様における処理システム1Gは、第1の実施態様に示したような処理システムを構成する構造物(処理槽や配管)に係る絶縁を併せて行うものとしてもよい。これにより、より一層の絶縁効果を得ることができ、発電部4における電極反応効率を向上させることが可能となる。
【0219】
絶縁機構11は、処理水W2を絶縁することができるものであればよく、特に限定されない。絶縁機構11による処理水W2の絶縁手段としては、例えば、発電部4の電極43aと処理水W2との電気的な接触(液絡)の解消あるいは液絡時間の短縮が挙げられる。このような液絡解消手段又は液絡時間の短縮手段の例としては、処理水W2の流れを不連続(断続的)とする手段や、処理水W2に空気などの絶縁体を介在させる手段、あるいはこれらの手段を組み合わせるもの等が挙げられる。
【0220】
図25は、本実施態様における処理システム1Gの絶縁機構11を示す概略説明図である。
図25に示すように、本実施態様における絶縁機構11は、貯留槽111と、処理水W2を貯留槽111内に散水する散水手段112を備えている。
【0221】
貯留槽111は、発電部4から排出配管L5を介して排出された処理水W2を貯留するものである。貯留槽111は、処理水W2を貯留可能な槽であればよく、特に限定されない。なお、貯留槽111内に存在する空気が処理水W2に対する絶縁体として機能するため、貯留槽111内における水位が最大(満水状態)とならないよう、貯留槽111内の水位の調節を行うことが好ましい。これにより、処理水W2の絶縁効果をより一層高めることが可能となる。
【0222】
散水手段112は、処理水W2を水滴状にして放出するものである。散水手段112によって放出された処理水W2の水滴間には、貯留槽111内の空気が絶縁体として介在するため、液絡の解消又は液絡時間の短縮が可能となるものである。
なお、散水手段112としては、処理水W2を水滴状にすることができるものであればよく、特に限定されない。散水手段112の具体的な例としては、例えば、図25に示すように、排出配管L5の排出口に接続し、かつシャワーヘッドのように複数の孔を有する構造物を設けることが挙げられる。また、散水手段112の他の例としては、排出配管L5の排出口に対向し、かつ所定距離だけ離間した平皿状の構造物を貯留槽111内に設けることなどが挙げられる。
【0223】
図26は、本実施態様における処理システム1Gの絶縁機構11の別態様を示す概略説明図である。
図26に示すように、本実施態様における絶縁機構11は、貯留槽113と、貯留槽113内の処理水W2を断続的に放出する放水手段114を備えている。
【0224】
貯留槽113は、発電部4から排出配管L5を介して排出された処理水W2を貯留するものである。貯留槽113は、処理水W2を貯留可能な槽であればよく、特に限定されない。
放水手段114は、貯留槽113内の処理水W2を断続的に放出することができるものであればよく、特に限定されない。放水手段114としては、貯留槽113から処理水W2を放出する放水配管115に電磁弁114aを設け、電磁弁114aを定期的に開閉することが挙げられる。これにより、貯留槽113から放水配管115を介して放出される処理水W2の流れが断続的となるため、処理水W2の液絡の解消又は液絡時間の短縮が可能となる。
【0225】
図27は、本実施態様における処理システム1Gの絶縁機構11の別態様を示す概略説明図である。
図27に示すように、本実施態様における絶縁機構11は、排出配管L5上に、排出配管L5の管径の一部を狭くするための管径縮小手段116と、管径縮小手段116の上流側から排出配管L5内に気体を供給する気体供給手段117を備えている。
【0226】
管径縮小手段116は、排出配管L5の管径を一部狭くすることができるものであればよく、特に限定されない。管径縮小手段116としては、例えば、排出配管L5内に管径を狭くする構造物を設けるもの、排出配管L5の外側から構造物を挿入するもの、排出配管L5の外側から押圧することで排出配管L5自体を変形させること等が挙げられる。
気体供給手段117は、管径縮小手段116の上流側から排出配管L5内に気体を供給することができるものであればよく、特に限定されない。気体供給手段117としては、空気に圧力をかけて送風するポンプ等を用い、排出配管L5内に空気を供給するものが挙げられる。なお、気体供給手段117により供給する気体は、空気に限定されるものではない。例えば、空気以外に、処理槽2で発生するバイオガスやバイオガス燃焼後の排出ガスを用いることが挙げられる。
【0227】
気体供給手段117により、管径縮小手段116の上流側から気体(空気)を供給することで、管径縮小手段116により狭くなった箇所では断続的に気体のみが流入し、排出配管L5内の処理水W2の流れを不連続とすることが可能となる。これにより、排出配管L5内の処理水W2の液絡の解消又は液絡時間の短縮が可能となるものである。
【0228】
以上のように、本実施態様における処理システム1Gは、処理水W2を絶縁する絶縁機構11を設けることで、発電部4と処理水W2における液絡解消あるいは液絡時間の短縮が可能となる。これにより、発電部4で生成した電子が電極43a及び電極43bの間以外に流れて電気化学反応(電極反応)効率が低下することを防ぎ、発電効率及び脱硫処理効率を向上させることができる。
【0229】
また、本実施態様の処理システム1Gにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0230】
〔第8の実施態様〕
図28は、本発明の第8の実施態様における処理システムを示す概略説明図である。
第8の実施態様に係る処理システム1Hは、図28に示すように、第1の実施態様に係る処理システム1Aにおいて、発電部4の排出配管L5から排出された処理水W2を処理する曝気槽12を設け、曝気槽12と発電部4の第2のセル41bに設けられた電子受容体供給口44aとを接続配管L8で接続するものである。なお、第1の実施態様の構成と同じものについては、説明を省略する。
【0231】
本実施態様における処理システム1Hは、曝気槽12内の処理水W2を発電部4に供給して、発電部4における電子受容体として用いるものである。なお、接続配管L8により発電部4に供給されるもの以外の処理水W2については、系外へ排出する。
【0232】
曝気槽12は、曝気装置12aにより、槽内に導入された処理水W2に対し、酸素を含む気体(酸素、空気など)の曝気を行い、好気性微生物による好気処理や溶存酸素による酸化反応を進行させるものである。
【0233】
曝気装置12aは、酸素を含む気体を曝気槽12内の処理水W2に供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、曝気処理において広く用いられているものとして、ブロワーと曝気管の組み合わせからなるもの等が挙げられる。
【0234】
曝気槽12内には、曝気装置12aにより酸素を含む気体が導入されるため、曝気槽12内の処理水W2は、溶存酸素を含む液体となっている。したがって、接続配管L8を介して発電部4の第2のセル41b内に導入した処理水W2は、発電部4における電子受容体となる。これにより、処理システム1H内における処理工程で発生するものを有効活用した発電を行うことができる。
【0235】
発電部4において電子受容体として用いられた後の処理水W2は、電子受容体排出口44bから排出される。このとき、排出された処理水W2は河川などへの放流が可能な水質を満たすものであれば、そのまま放流することが可能である。また、排出された処理水W2を曝気槽12に返送し、再度曝気処理を行うものとしてもよい。これにより、系外へ放流する処理水W2の水質制御をより確実に行うことが可能となる。
【0236】
また、本実施態様の処理システムにおける曝気槽内の処理水W2を、上述した接触効率向上手段5に活用するものとしてもよい。例えば、接触効率向上手段5としては、第3の実施態様に示した移動速度制御手段6あるいは第4の実施態様に示した洗浄手段8である溶解手段8Bを適用することが挙げられる。より具体的には、例えば、曝気槽12内の処理水W2を、接続配管L8を介して第1のセル41aに導入することが挙げられる。このとき、処理水W2は、移動速度制御手段6における流体として機能する。また、後述するように、処理水W2には微生物が含まれているため、処理水W2中の微生物が、溶解手段8Bにおける堆積物を溶解させる薬剤の代わりとして機能する。
【0237】
式1及び式2に示したように、電極43aの表面には析出した硫黄が堆積物となって堆積している。一方、曝気槽12内では好気条件下において硫黄を亜硫酸イオンに酸化する好気性微生物が存在している(式4)。
【数4】
【0238】
したがって、曝気槽12内の処理水W2を電極43a側に導入することで、電極43a表面の硫黄が溶解して電極43aの表面が洗浄される。
また、洗浄手段8として、電極43aを発電部4から取り出し、曝気槽12内に浸漬するものとしてもよい。これにより、濾液F中の還元性物質による発電及び脱硫処理手段と電極の洗浄手段8を兼用させ、電極の洗浄に係る付帯設備を削減することができ、ランニングコストを大幅に低減することが可能となる。
【0239】
また、本実施態様の処理システム1Hは、曝気槽12内の処理水W2を発電部4に導入するため、電極43a及び電極43bの表面には、主に微生物からなる堆積物が堆積しやすい状態となっている。したがって、上記した溶解手段8Bに加え、剥離手段8A、分散手段8C及び周辺環境変化手段8Dのいずれかを更に備え、電極43a及び電極43bの表面に堆積した微生物を引き剥がすものとすることが好ましい。これにより、電極43a及び電極43bの表面の洗浄効率を向上させることが可能となる。
【0240】
以上のように、本実施態様における処理システム1Hは、処理システム1H内で進行する処理工程で生じたものを、発電部4における電子供与体及び電子受容体として利用することができ、発電及び脱硫処理に係るランニングコストを低減させることが可能となる。
【0241】
また、本実施態様の処理システム1Hにおいては、第1の実施態様と同様の工程により発電及び脱硫処理を行うことが可能である。
【0242】
なお、上述した実施態様は、処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法の一例を示すものである。本発明に係る処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る処理システム、発電装置、脱硫処理装置、発電方法及び脱硫方法を変形してもよい。
【0243】
例えば、本実施態様の処理システムは、上述した接触効率向上手段(移動速度制御手段、濃度制御手段、洗浄手段)、排ガス供給手段、脱気手段、絶縁機構、曝気槽のいずれか一つ以上を選択し、複数の構成を組み合わせて備えるものとしてもよい。これにより、電極反応の効率向上に係る効果を高めることが可能となる。
【0244】
また、例えば、本実施態様における処理システムは、複数の発電部(発電装置)を備えるものとしてもよい。これにより、処理システム内での処理を有効活用した電極反応を複数箇所で行うことが可能となるとともに、濾液の処理効率と電極反応効率の両方を向上させることが可能となる。
【0245】
また、例えば、本実施態様における処理システムは、電極43bを曝気槽12内に設け、曝気槽12が発電部4の第2のセル41bとして機能するものとしてもよい。これにより、発電部4と曝気槽12を一体化し、設備をより一層小型化することが可能となる。
【0246】
また、例えば、本実施態様における処理システムは、電極43a及び電極43bに対して微生物の付着、堆積を防ぐような手段を設けるものとしてもよい。このような手段としては、例えば、電極表面を微生物の付着を防ぐ材質でコーティングすることや、電極の構造そのものが微生物の付着を困難にするような形状となっているものとすること等が挙げられる。これにより、発電部4の第1のセル41a及び第2のセル41b内に微生物が流入した際においても、電極43a及び電極43bでの電極反応に対する微生物による阻害を抑制することが可能となる。
【0247】
さらに、例えば、本実施態様における処理システムは、一部の構造を省略し、装置構成をより簡略化するものとしてもよい。
省略可能な構造としては、例えば、イオン交換体45が挙げられる。これにより、発電部4(発電装置・脱硫処理装置)の簡略化が可能となるとともに、メンテナンス作業が容易となる。
また、省略可能な構造の他の例としては、第2のセル41bにおける電子受容体供給口44a及び電子受容体排出口44bが挙げられる。これにより、発電部4(発電装置・脱硫処理装置)をより簡略化することが可能となる。このとき、電極43bの一面が濾液F又はイオン交換体45に接触し、もう一方の面が全体的に外気(空気)に直接接触する構造とすること等が挙げられる。さらに、外気側の電極43b表面に交換又は洗浄容易な通気性素材を設けることが好ましい。これにより、塵などの固体不純物が電極43b表面に付着することを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0248】
本発明の処理システム、発電方法及び脱硫方法は、被処理物の嫌気処理に利用される。特に、被処理物を嫌気処理した後の排出物中に還元性物質が含有される嫌気処理において好適に利用されるものである。
【0249】
本発明の発電装置は、既設の処理システムに適用することにより、処理システム全体を大規模に更新することなく、本発明の処理システム及び発電方法を提供することができる。
また、本発明の脱硫処理装置は、既設の処理システムに適用することにより、処理システム全体を大規模に更新することなく、本発明の処理システム及び脱硫方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0250】
1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H 処理システム、2 処理槽、3 固液分離部、4 発電部、41a 第1のセル、41b 第2のセル、42a 導入口、42b 排出口、43a,43b 電極、44a 電子受容体供給口、44b 電子受容体排出口、45 イオン交換体、46 貯蔵部、47 循環流路、5 接触効率向上手段、6 移動速度制御手段、61a,61b 流体供給口、62 流体供給手段、63 回収手段、64a,64b 流体排出口、65 気液分離部、66 温度制御手段、67 既設の熱交換設備、68a,68b,69a,69b 配管、7 濃度制御手段、71a,71b 電極反応成分添加口、72 電極反応成分添加手段、73 吸着材、74 pH制御手段、75 貯留部、76 添加部、77 pH検出部、8 洗浄手段、8A 剥離手段、8B 溶解手段、8C 分散手段、8D 周辺環境変化手段、81a,81b 流体供給口、82 流体供給手段、83 制御部、84a,84b 薬剤添加口、85 薬剤添加手段、86a,86b 薬剤添加口、87 薬剤添加手段、88a,88b 添加物供給口、89 添加物供給手段、9 排ガス供給手段、91 排ガス供給口、92 配管、93 温度調整機構、10 脱気手段、10A 薬剤添加手段、10B 電気的処理手段、10C 減圧手段、101a,101b 薬剤供給口、102 薬剤供給手段、103 電圧・電流制御装置、104a,104b,104c,104d 流量調節弁、105 減圧装置、11 絶縁機構、111,113 貯留槽、112 散水手段、114 放水手段、114a 電磁弁、115 放水配管、116 管径縮小手段、117 気体供給手段、12 曝気槽、12a 曝気装置、L1,L3 導入配管、L2,L6,L8 接続配管、L4,L5,L7 排出配管、F 濾液、S 被処理物、W1 処理液、W2 処理水
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