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特開2022-73418スタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073418
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】スタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20220510BHJP
   B41K 1/54 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C11B9/00 Z ZAB
B41K1/54 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183387
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古谷 眞
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059BA12
4H059BC10
4H059BC44
4H059DA09
4H059EA31
4H059EA36
4H059EA40
(57)【要約】
【課題】
本発明は、対象物(マスク)の狙った箇所に確実に香料を付着させることができる為、必要最小限の付着量で香料の芳香効果を最大限に活かす事が可能なスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物を提供する。
【解決するための手段】
イソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶剤と香料を少なくとも含有するスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物であり、好ましくはマスク用途としての浸透印用香料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶剤と香料を少なくとも含有するスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物。
【請求項2】
マスク用途としての請求項1に記載のスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物。














【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物(マスク)の狙った箇所に確実に香料を付着させることができる為、必要最小限の付着量で香料の芳香効果を最大限に活かす事が可能なスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉のみならず、ウイルスや微小粒子状物質(PM2.5)等の大気汚染物質から身を守る為、マスクを着用する機会が増えている。しかし、マスク内は湿度が高く、高温になる為、細菌類(臭気源)が繁殖しやすい環境であり、また、呼気(口臭)がマスク内で滞留しやすい為、長時間マスクを着用する事に多くの人が不快に感じている。前記課題を解決する為に、マスク内の臭気を改善する目的でマスク外面に香料組成物をミスト状に噴きつけるスプレーが市販されている。また、特許文献1には一般的な香料組成物として、皮膚への安全性、油分である香料との相溶性を併せ持つイソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコール等の溶剤と香料の配合系の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-3582公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香料組成物の芳香効果を高めるには、マスク外面の鼻の位置に相当する箇所に局所的に香料組成物を付着させることが好ましい。しかしながら、従来のスプレー式の場合、香料組成物がミスト状で噴霧される為、マスク外面の広範囲に付着した香料組成物は芳香効果を十分に発揮できなかった。また、芳香効果を上げる為に噴霧量を増やすと、香料組成物の消費量が早くなり経済的にも問題があった。
【0005】
本発明は、対象物(マスク)の狙った箇所に確実に香料を付着させることができる為、必要最小限の付着量で香料の芳香効果を最大限に活かす事が可能なスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明は、イソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶剤と香料を少なくとも含有するスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物である。
【0007】
上記の課題を解決するために完成された第2の発明は、マスク用途としての第1の発明に記載のスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物である。
【発明の効果】
【0008】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明は、イソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の溶剤と香料を少なくとも含有するスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物である為、対象物の狙った箇所に確実に香料を付着させることができ、必要最小限の付着量で香料の芳香効果を最大限に活かす事ができる。
【0009】
上記の課題を解決するために完成された第2の発明はマスク用途としての第1の発明に記載のスタンプ台用、朱肉用又は浸透印用香料組成物である為、マスク外面の鼻の位置に相当する箇所に局所的に香料組成物を付着させることができる。その為、香料組成物の無駄な浪費を極力抑えつつ、効果的にマスク内の臭気を除去でき、不快に感じることなく長時間マスクを着用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の主溶剤としてはイソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールを用いる。前記溶剤は単独、あるいは複数混合して使用でき、香料組成物全量中40.0~90.0重量%、好ましくは50.0~80.0重量%の範囲で用いられる。これらの溶剤はいずれも沸点が200℃前後であり、香料と併用配合した際に、香料の揮発量を適切にする事ができる。また、皮膚への安全性、油分である香料との相溶性、抗菌性を有している為、皮膚に直接触れ、細菌類が繁殖しやすい環境であるマスク用途として適している。
また、前記溶剤に加えて他の有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコールや、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール類またはトリオール類を用いることができる。その配合量は香料組成物全量に対し1.0重量%~30重量%であることが好ましく、1.0重量%~25重量%であることがより好ましい。
【0011】
香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油等の植物性香料を挙げることができる。この香料として、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。さらに、上記香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。その配合量は香料組成物全量に対し0.5重量%~30重量%であることが好ましく、1.0重量%~25重量%であることがより好ましい。
【0012】
本発明では着色剤を配合してもよく、顔料・染料の両方用いる事ができる。着色剤を配合する事で印影を際立たせ、マスク表面をスタンプで装飾する事ができる。
顔料としては、特に制限されることなく従来公知の有機顔料及び無機顔料を単独又は混合して使用することができる。例えば、アゾ系、縮合アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ・チオインジゴ系、ベリノン・ベリレン系、イソインドレノン系、アゾメチレンアゾ系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料や、カーボンブラック、マイカ、パール顔料、酸化鉄・真鍮等金属顔料などの無機顔料を用いることができる。これらの顔料は通常、ニトロセルロース、エチルセルロース、テルペンフェノール、塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、ロジンエステル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの公知の樹脂などに練り込んで加工顔料としておくと、溶剤と混合する際に容易に分散するので便利である。また、C.I.ベーシックイエロー40、C.I.ベーシックレッド1、C.I.ベーシックバイオレット1、C.I.ベーシックバイオレット11:1、C.I.ベーシックブルー3、C.I.アシドイエロー7、C.I.アシドレッド92、C.I.アシドブルー9等の蛍光染料を合成樹脂中で固溶体とした蛍光顔料等の有機顔料等も適宣選択して用いることができる。
染料としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、金属錯塩型モノアゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系など従来公知の染料を特に制限されることなく使用することができる。
上記染料及び顔料は単独或いは混合して任意に使用することができ、その配合量は香料組成物全量に対して1~30重量%が好ましい。
【0013】
また、本発明で使用する主溶剤、イソプレングリコール、1、3ブチレングリコール、プロピレングリコールには抗菌効果があるが、不十分である場合、公知の防腐・防カビ剤を更に添加する事が出来る。
防腐防・カビ剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)、ピリジン、安息香酸ナトリウムなど、安息香酸やソルビン酸やデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物、1,3-ジメチロール5,5‐ジメチルヒダントイン、1又は3-モノメチロール5,5ジメチルヒダントイン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト等公知の防腐カビ剤を単独或いは混合して任意に使用することが出来る。
【0014】
本発明の香料組成物は、上記物質を適量選択して、撹拌機にて常温で約1時間混合分散して製造する。
【0015】
実施例及び比較例の香料組成物の配合を表1に示す。
実施例1~3と比較例1~3はそれぞれ同じ配合であり、香料組成物の充填装置が異なっている。実施例1~3は浸透式・気密性のスタンプ(シヤチハタ株式会社製「タートスタンパー丸型11号(品番:XQT-11C)」)に含浸させ、比較例1~3は市販のスプレー容器に充填した。
実施例及び比較例について、以下の条件で香気試験を行った。
■香気試験
実施例の香料組成物を含浸したスタンプの1回捺印で消費する重量及び、比較例の香料組成物を充填したスプレーの1回噴霧で消費する重量を共に0.01mgに調整した。次に、マスク外面の鼻の位置に相当する箇所にスタンプ及びスプレーでそれぞれ1回量の香料組成物を付着させ、その状態でマスクを着用し、マスク内の香りの持続時間を官能評価した。
持続時間が1時間以上を「○」、30分以下を「×」とした。
【0016】
表1の実施例1~3、比較例1~3より明らかなように、マスク外面にスタンプ式で香料組成物を付着させた方がスプレー式に比べて香りの持続時間が格段に長くなっている。これはスタンプの特性上、マスク外面の鼻の位置に相当する箇所に局所的に香料組成物を付着させる事ができる為であり、結果的に香料組成物の芳香効果を最大限に活かすことが可能となる。一方、スプレー式の場合、香料組成物がミスト状で噴霧される為、マスク外面の広範囲に付着した香料組成物は芳香効果を十分に揮できない。
【0017】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う香料組成物もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。