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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007343
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】パワーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20220105BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20220105BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301A
H01L23/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110259
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 幸博
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 政光
(72)【発明者】
【氏名】串間 宇幸
【テーマコード(参考)】
4M109
5F044
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA03
4M109ED02
4M109ED03
4M109ED04
5F044AA02
(57)【要約】
【課題】
ゲル封止型のパワーモジュールにおいて、振動を伴う使用環境下であっても、モジュール内部のボンディングワイヤの断線を抑制可能な信頼性の高いパワーモジュールを提供する。
【解決手段】
ヒートシンクを有するベースプレートと、前記ベースプレート上に配置された基板と、前記基板上に配置されたパワー半導体チップと、前記基板に接続されたボンディングワイヤと、前記ベースプレートに接続されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを内包するケースと、前記ケース内に充填されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを封止するゲルと、を備え、前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記ボンディングワイヤの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とする。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクを有するベースプレートと、
前記ベースプレート上に配置された基板と、
前記基板上に配置されたパワー半導体チップと、
前記基板に接続されたボンディングワイヤと、
前記ベースプレートに接続されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを内包するケースと、
前記ケース内に充填されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを封止するゲルと、を備え、
前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記ボンディングワイヤの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ケースに配置された電極端子を備え、
前記ボンディングワイヤは、前記基板の金属回路層と前記電極端子を電気的に接続し、
前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記金属回路層と前記ボンディングワイヤとの接続部および前記電極端子と前記ボンディングワイヤとの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ケースの前記ボンディングワイヤの接続部近傍が前記ベースプレートにネジで固定されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ネジは、前記ベースプレートを貫通していないことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項5】
請求項1または2に記載のパワーモジュールにおいて、
前記樹脂は、前記ゲルよりもヤング率が高い樹脂であることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーモジュールにおいて、
前記樹脂は、ポリアミドイミド樹脂およびエポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項7】
ヒートシンクを有するベースプレートと、
前記ベースプレート上に配置された基板と、
前記基板上に配置されたパワー半導体チップと、
前記基板に接続されたボンディングワイヤと、
前記ベースプレートに接続されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを内包するケースと、
前記ケース内に充填されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを封止するゲルと、を備え、
前記ケースの前記ボンディングワイヤの接続部近傍が前記ベースプレートにネジで固定されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーモジュールにおいて、
前記パワーモジュールを平面視した際の前記パワーモジュールの短辺方向の中央部近傍における前記ケースが前記ベースプレートにネジで固定されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項9】
請求項7に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ボンディングワイヤおよびその接続部が前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項10】
請求項7に記載のパワーモジュールにおいて、
前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記基板と前記ボンディングワイヤとの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項11】
請求項9に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ケースと前記ベースプレートの接触部が前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項12】
請求項7に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ケースに配置された電極端子を備え、
前記ボンディングワイヤは、前記基板の金属回路層と前記電極端子を電気的に接続し、
前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記金属回路層と前記ボンディングワイヤとの接続部および前記電極端子と前記ボンディングワイヤとの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項13】
請求項7に記載のパワーモジュールにおいて、
前記ネジは、前記ベースプレートを貫通していないことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項14】
請求項9から12のいずれか1項に記載のパワーモジュールにおいて、
前記樹脂は、前記ゲルよりもヤング率が高い樹脂であることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項15】
請求項14に記載のパワーモジュールにおいて、
前記樹脂は、ポリアミドイミド樹脂およびエポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とするパワーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールの構造に係り、特に、鉄道車両や自動車等の振動を伴う環境下で使用されるパワーモジュールに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車分野においては、高い環境性能や運転性能を実現するための制御の高度化に対応するために、モータやソレノイド等のアクチュエータにECU(Electronic Control Unit)を実装する「機電一体化」技術が求められている。
【0003】
しかし、高度に電子化された自動車の制御システムでは、ECUの信頼性が自動車全体の信頼性に及ぼす影響が重大であり、機電一体化を実現するためには、アクチュエータの発熱に耐える高耐熱化に加えて、走行時に発生する車体の振動やエンジンの低周波数振動に耐える高耐振化が必要になる。
【0004】
また、家電分野においても、例えばエアコンの小型化・高性能化に伴い、電子制御部品と機械部品を組み合わせた機電一体型のモータが採用されるようになり、モータ駆動に伴う振動に対する電子制御部品の耐振性向上が求められている。
【0005】
ECUや機電一体型モータには、マイコンやメモリ等の半導体素子と共に、パワー半導体素子を含む複数のIC(Integrated Circuit)を組み合わせて電源制御用の回路を集積したパワーモジュールが搭載されており、パワーモジュールの耐振性向上が重要な課題となっている。
【0006】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「リードフレームの上面に半導体チップと回路部品を実装した回路基板を並置搭載し、かつその相互間をワイヤ接続した上で周域をモールド樹脂で封止した樹脂封止型半導体装置であり、前記半導体チップはフレームに半田マウントした上で、該半導体チップに保護樹脂をコーティングし、回路基板は樹脂接着剤を用いてフレームに接合した構成になるものにおいて、前記リードフレームの上面における半導体チップの搭載領域と絶縁基板の搭載領域との境界に、半導体チップおよびその周域にコーティングした保護樹脂が回路基板の搭載領域に流動拡散するのを阻止するダム部を設けた樹脂封止型半導体装置」が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には「基板と、この基板上に固着された半導体チップと、この半導体チップ表面にワイヤボンディングで接続されたワイヤと、このワイヤボンディング部を薄く覆う15×10-6/℃以下の線膨張係数を持つ被覆樹脂と、これら部品を収容するケースと、このケース内部の前記被覆樹脂の上からケース内部品全体を覆うように充填された充填樹脂を備えた半導体パワーモジュールにおいて、前記被覆樹脂は、前記半導体チップの上面の少なくとも端部を残して前記ワイヤボンディング部を覆うように形成し、前記充填樹脂は、(17~24)×10-6/℃の線膨張係数を持つ樹脂とした半導体パワーモジュール」が開示されている。
【0008】
また、特許文献3には「基板と、前記基板とは非接合とされた半導体チップと、一端が前記半導体チップに接続され、他端が前記基板に接続されたワイヤと、前記ワイヤが前記半導体チップに接続する第1のワイヤ接続部を被覆する第1の被覆部材と、を含む半導体装置」が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には「第1のパッド電極を有する配線基板と、半導体素子が搭載され、前記半導体素子に接続された第2のパッド電極を有するサブマウント基板と、前記第1のパッド電極と前記第2のパッド電極との間に接続されたボンディングワイヤと、前記ボンディングワイヤを鞘状に被覆する被覆樹脂と、を有する半導体装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-93635号公報
【特許文献2】特開2005-311019号公報
【特許文献3】特開2017-10994号公報
【特許文献4】特開2019-9171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、様々な分野において機電一体化が進んでおり、パワーモジュールに対する耐振性向上の要求が高まっている。
【0012】
代表的なパワーモジュールとして、パワー半導体素子とセンス端子や制御端子等の電極端子をボンディングワイヤで接続し、それらをシリコーンゲルで封止したゲル封止型のパワーモジュールが広く普及しているが、このゲル封止型のパワーモジュールを車載ECUや機電一体型モータに採用した場合、振動によりパワー半導体素子と電極端子を接続するボンディングワイヤが断線し、パワーモジュールの故障に繋がる可能性がある。
【0013】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2には、上記のゲル封止型のパワーモジュールでの振動によるボンディングワイヤの断線の課題やそれを解決するための方法は開示されていない。
【0014】
また、上記特許文献3は、半導体チップの周囲を中空とした中空構造の半導体装置を対象としており、軽微で一時的な衝撃や振動には有効であるが、車載ECUや機電一体型モータのように振動による応力が恒常的に発生するような場合には耐久性が問題となる。
【0015】
また、上記特許文献4では、ボンディングワイヤ全体を鞘状に被覆する必要があり、製造方法や製造コストの面で課題が残る。
【0016】
そこで、本発明の目的は、ゲル封止型のパワーモジュールにおいて、振動を伴う使用環境下であっても、モジュール内部のボンディングワイヤの断線を抑制可能な信頼性の高いパワーモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、ヒートシンクを有するベースプレートと、前記ベースプレート上に配置された基板と、前記基板上に配置されたパワー半導体チップと、前記基板に接続されたボンディングワイヤと、前記ベースプレートに接続されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを内包するケースと、前記ケース内に充填されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを封止するゲルと、を備え、前記基板と前記ケースとの間に接続された前記ボンディングワイヤのうち、前記ボンディングワイヤの接続部のみ前記ゲルよりも硬度が高い樹脂で被覆されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、ヒートシンクを有するベースプレートと、前記ベースプレート上に配置された基板と、前記基板上に配置されたパワー半導体チップと、前記基板に接続されたボンディングワイヤと、前記ベースプレートに接続されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを内包するケースと、前記ケース内に充填されて、前記基板と前記パワー半導体チップと前記ボンディングワイヤを封止するゲルと、を備え、前記ケースの前記ボンディングワイヤの接続部近傍が前記ベースプレートにネジで固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ゲル封止型のパワーモジュールにおいて、振動を伴う使用環境下であっても、モジュール内部のボンディングワイヤの断線を抑制可能な信頼性の高いパワーモジュールを実現することができる。
【0020】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係るパワーモジュールの概略構成を示す平面図(上面図)である。
図2図1のB-B’方向矢視図(側面図)である。
図3図1のC-C’方向矢視図(側面図)である。
図4図1の裏面側から見た図(底面図)である。
図5図1のA-A’方向矢視図(断面図)である。
図6】本発明の実施例2に係るパワーモジュールの概略構成を示す平面図(上面図)である。
図7図5の変形例を示す図である。(変形例1)
図8図5の変形例を示す図である。(変形例2)
図9】従来のパワーモジュールの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0023】
図1から図5、及び図9を参照して、本発明の実施例1に係るゲル封止型のパワーモジュールについて説明する。図1は、本実施例のパワーモジュール1の概略構成を示す平面図(上面図)である。図2は、図1のB-B’方向矢視図(側面図)であり、図3は、図1のC-C’方向矢視図(側面図)である。図4は、図1の裏面側から見た図(底面図)である。また、図5は、図1のA-A’方向矢視図(断面図)である。なお、図9は、本発明の構成が分かり易くなるように、比較のために示す従来のパワーモジュールの一部断面図であり、本実施例の図5に対応している。
【0024】
本実施例のパワーモジュール1は、図1に示すように、パワー半導体素子や回路基板を内包する樹脂製のケース2を備えている。ケース2は、パワーモジュール1の保護カバーの役割を果たしている。パワーモジュール1の上面には、入出力端子である主端子5が複数設けられている。
【0025】
図2及び図3に示すように、パワーモジュール1の底部には、ヒートシンク(冷却フィン)4を有する金属製のベースプレート3を備えており、ヒートシンク(冷却フィン)4を図示しない冷却水流路に配置することで、パワーモジュール1内部のパワー半導体素子からの発熱を放熱する。
【0026】
なお、本実施例では、パワーモジュール1に内蔵されるパワー半導体素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を前提に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、ダイオードやパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等にも適用可能である。
【0027】
パワーモジュール1には、センス端子や制御端子、補助端子等の電極端子6が、上面から突出するように設けられている。
【0028】
図4に示すように、ベースプレート3は、後述する接着剤及びネジ7によりケース2に接続固定されている。
【0029】
図5を用いて、本実施例のパワーモジュール1の内部構造を詳しく説明する。
【0030】
本実施例のパワーモジュール1は、図5に示すように、ヒートシンク(冷却フィン)4を有する金属製のベースプレート3と、ベースプレート3上に配置された基板12と、基板12上に配置されたパワー半導体チップ14と、基板12に接続されたボンディングワイヤ15と、ベースプレート3に接続されて、基板12とパワー半導体チップ14とボンディングワイヤ15を内包する樹脂製のケース2と、ケース2内に充填されて、基板12とパワー半導体チップ14とボンディングワイヤ15を封止する封止材16を備えている。封止材16には、例えば、シリコーンゲルが用いられる。
【0031】
上述したように、ベースプレート3は、接着剤8及びネジ7(図4参照)によりケース2に接続固定されている。
【0032】
基板12は、絶縁層9と、絶縁層9の上面(表面)に設けられた金属回路層10と、絶縁層9の下面(裏面)に設けられた金属層11で構成されている。
【0033】
そして、基板12は、はんだ13により金属層11とベースプレート3を接合することで、ベースプレート3上に配置されている。
【0034】
また、はんだ13により金属回路層10とパワー半導体チップ14を接合することで、基板12上にパワー半導体チップ14が配置されている。
【0035】
ケース2には、センス端子や制御端子、補助端子等の電極端子6が配置されており、ボンディングワイヤ15は、基板12の金属回路層10と電極端子6を電気的に接続している。
【0036】
ここで、図5に示すように、本実施例のパワーモジュール1では、基板12とケース2との間に接続されたボンディングワイヤ15のうち、基板12の金属回路層10とボンディングワイヤ15との接続部及び電極端子6とボンディングワイヤ15との接続部のみを封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆している。
【0037】
図9に示す従来のパワーモジュールでは、接続部を含むボンディングワイヤ15全体が、基板12やパワー半導体チップ14と同じように封止材(シリコーンゲル)16で被覆されている。車載ECUや機電一体型モータのように振動による応力が恒常的に発生するような場合、特にケース2と基板12とが別々に振動するため、ケース2と基板12との間を接続するボンディングワイヤ15は、封止材(シリコーンゲル)16の被覆のみでは、ボンディングワイヤ15の接続部の保護が不十分なため、ボンディングワイヤ15、特に、ボンディングワイヤ15の接続部が断線し、パワーモジュールの故障に繋がる恐れがある。
【0038】
そこで、基板12とケース2との間に接続されたボンディングワイヤ15のうち、基板12の金属回路層10とボンディングワイヤ15との接続部及び電極端子6とボンディングワイヤ15との接続部のみを封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆することで、ボンディングワイヤ15の接続部の断線を防止することができる。
【0039】
なお、パワーモジュールの構造設計や使用環境により、ボンディングワイヤ15の接続部の断線が起こり難い箇所がある場合が考えられる。その場合は、基板12とケース2との間に接続されたボンディングワイヤ15のうち、基板12の金属回路層10とボンディングワイヤ15との接続部及び電極端子6とボンディングワイヤ15との接続部のいずれか一方のみを封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆することも可能である。
【0040】
ボンディングワイヤ15の全体ではなく、必要な箇所のみを封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆することで、生産性やコスト面でのデメリットを抑制しつつ、振動を伴う使用環境下であっても、モジュール内部のボンディングワイヤ15の断線を抑制することができる。
【0041】
なお、硬質樹脂17には、封止材(シリコーンゲル)16よりもヤング率が高い樹脂を用いるのが望ましい。具体的には、ポリアミドイミド樹脂やエポキシ樹脂等を用いることができる。
【実施例0042】
図6から図8を参照して、本発明の実施例2に係るゲル封止型のパワーモジュールについて説明する。図6は、本実施例のパワーモジュール1の概略構成を示す平面図(上面図)である。図7及び図8は、図6のパワーモジュール1の一部を示す断面図であり、それぞれ実施例1の図5の変形例に相当する。
【0043】
本実施例のパワーモジュール1は、図6に示すように、図4で説明したネジ7とは異なる別のネジ18により、ケース2のボンディングワイヤ15の接続部近傍をベースプレート3に固定している。
【0044】
ケース2のボンディングワイヤ15の接続部近傍をベースプレート3にネジ18で固定することにより、ケース2の振動が抑制されて、ボンディングワイヤ15の接続部の断線を防止することができる。特に、図6のように、パワーモジュール1を平面視(上面視)した際のパワーモジュール1の短辺方向の中央部近傍におけるケース2をベースプレート3にネジ18により固定することで、ケース2の振動をより効果的に抑制することができる。
【0045】
なお、本実施例では、ネジ18による固定により、ボンディングワイヤ15の接続部を補強できるため、実施例1のように金属回路層10とボンディングワイヤ15との接続部や電極端子6とボンディングワイヤ15との接続部を封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆することなく、ボンディングワイヤ15の接続部の断線を防止することができる。つまり、図9に示すような従来のパワーモジュール構造を採用することも可能である。
【0046】
また、パワーモジュールの構造設計や使用環境に応じて、図7に示すように、ボンディングワイヤ15及びその接続部全体を封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆したパワーモジュール構造を採用してもよく、図8に示すように、さらにケース2とベースプレート3の接触部を封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆したパワーモジュール構造を採用してもよい。
【0047】
また、実施例1のように、基板12とケース2との間に接続されたボンディングワイヤ15のうち、基板12の金属回路層10とボンディングワイヤ15との接続部及び電極端子6とボンディングワイヤ15との接続部のみを封止材(シリコーンゲル)16よりも硬度が高い樹脂(硬質樹脂17)で被覆したうえで、さらに、本実施例のように、ケース2のボンディングワイヤ15の接続部近傍をベースプレート3にネジ18で固定してもよい。
【0048】
ネジ18による固定との組み合わせにより、ボンディングワイヤ15の接続部の断線をより確実に防止することができる。
【0049】
なお、ネジ18は、ネジ7とは異なり、ベースプレート3を貫通しないように設ける必要がある。上述したように、ベースプレート3のヒートシンク(冷却フィン)4は冷却水流路に配置されるため、ネジ18がベースプレート3を貫通した場合、水漏れの原因となるためである。
【0050】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施例は本発明に対する理解を助けるために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…パワーモジュール
2…ケース
3…ベースプレート
4…ヒートシンク(冷却フィン)
5…主端子(入出力端子)
6…電極端子(センス端子,制御端子,補助端子)
7…ネジ
8…接着剤
9…絶縁層
10…金属回路層
11…金属層
12…基板
13…はんだ
14…パワー半導体チップ
15…ボンディングワイヤ
16…封止材(シリコーンゲル)
17…硬質樹脂(被覆樹脂)
18…ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9