(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073432
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183409
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】593069521
【氏名又は名称】株式会社大興製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】三上 仁
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亮
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA24
4C058AA30
4C058BB06
4C058EE29
4C058KK02
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK32
4C058KK44
(57)【要約】
【課題】平面領域に対して万遍なく均一に紫外線を照射できる殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明によれば、紫外線を発光する発光ダイオードと、前記発光ダイオードの発光部側に配置される曲面部と、前記発光ダイオードから発光された紫外線を出射する平面部とを有するシリンドリカルレンズとを備えており、そして前記曲面部には、前記発光部から発光された紫外線を受け入れるための溝部が形成されており、前記溝部の底部には、前記シリンドリカルレンズの横断面視において、前記発光部へ向けて膨らむように湾曲した凸部が形成されていることを特徴とする殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発光する発光ダイオードと、
前記発光ダイオードの発光部側に配置される曲面部と、前記発光ダイオードから発光された紫外線を出射する平面部とを有するシリンドリカルレンズとを備えており、そして
前記曲面部には、前記発光部から発光された紫外線を受け入れるための溝部が形成されており、
前記溝部の底部には、前記シリンドリカルレンズの横断面視において、前記発光部へ向けて膨らむように湾曲した凸部が形成されていることを特徴とする殺菌用光源モジュール。
【請求項2】
前記凸部は、前記シリンドリカルレンズの横断面視において、単一の曲率を有する曲面または複数の異なる曲率を有する曲面から構成されている請求項1に記載の殺菌用光源モジュール。
【請求項3】
前記溝部および前記凸部は、前記シリンドリカルレンズの長手方向の全長に亘って、前記溝部および前記凸部の横断面が同一形状となるように形成されている請求項1又は2に記載の殺菌用光源モジュール。
【請求項4】
前記曲面部は、前記シリンドリカルレンズの横断面視において、溝部を除いて単一の曲率または複数の異なる曲率を有している請求項1から3のいずれか1項に記載の殺菌用光源モジュール。
【請求項5】
紫外線の水平方向の広がり角が90°以上150°以下であり、紫外線の鉛直方向の広がり角が5°以上20°以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の殺菌用光源モジュール。
【請求項6】
前記シリンドリカルレンズは、ガラス、ホウ珪酸ガラス、溶融石英、合成石英、サファイア、アクリル樹脂およびフッ素樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料からできている請求項1から5のいずれか1項に記載の殺菌用光源モジュール。
【請求項7】
平面領域へ紫外線を照射するための複数の請求項1から6のいずれか1項に記載の殺菌用光源モジュールを備えており、そして
前記複数の殺菌用光源モジュールの少なくとも1対の殺菌用光源モジュールは、平面視において、前記平面領域を挟んで対向するように配置されており、且つ前記殺菌用光源モジュールの光軸が前記平面領域の表面に対して0°以上15°以下の範囲で下向きに配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項8】
前記平面領域は、入力操作を行うための操作パネル、テーブル、床または展示ボードの表面である請求項7に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記平面領域の周縁部に配置される枠体を備えており、そして
前記殺菌用光源モジュールは、それぞれに前記枠体に取り付けられている請求項7又は8に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記枠体は、前記殺菌用光源モジュールから出射された紫外線を前記平面領域へ向けて反射させるリフレクターを備えている請求項9に記載の紫外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置に関し、特に特殊形状を施したシリンドリカルレンズの曲面部側に発光ダイオード(以下、「LED」ともいう。)を接続し、円錐状に放射される紫外線の範囲を扁平な扇状とすることで、操作パネル等の平面領域の照射に適合させた殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行等の現金自動預け払い機、駅等の券売機、エレベータ等の昇降ボタンなどの操作パネルやテーブル、床、展示ボード等は不特定多数の者の手により触れられることから、操作パネル等に付着したウイルスや細菌が該操作パネル等を介して他の使用者へ拡散するおそれがある。特に近年のコロナウィルス感染拡大による公衆の衛生意識の高まりにより、上述のような操作パネルやテーブル等の殺菌処理が強く望まれている。
【0003】
操作パネルを殺菌処理する技術としては、例えば、特開2006-204824号公報(特許文献1)や特開2011-245305号公報(特許文献2)に記載されているように、紫外線を利用した操作パネルの殺菌手段が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された操作パネルの殺菌手段は、LED等を用いた紫外線ランプを操作パネルの周囲に複数個配置し、紫外線ランプから放射される紫外線を操作パネルへ向けて照射することにより操作パネルを殺菌するというものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の操作パネルの殺菌手段では、操作パネルの操作の邪魔とならないように紫外線ランプの高さ(厚み)を低く抑える必要があるため、例えば極めて小径の小さなLEDを用いなければならない。また、LEDから発せられる紫外線は円錐状に拡散されるため、平面状の操作パネルやテーブル等へ万遍なく均一に照射するためには、多数のLEDを配列して使用しなければならないという問題があった。さらに、特許文献1に記載の殺菌手段では、多数のLEDの使用による発熱の問題や、多数使用によっても操作パネルやテーブル等の全面に紫外線を照射できない(特許文献1の
図3)という問題もあった。
【0006】
特許文献2に記載された操作パネルの殺菌手段は、紫外線ランプから発せられる紫外線ビームを、操作パネルを兼ねた導光体内で拡散(全反射)させることにより、使用者の指が導光体の表面に触れた時、紫外線ビームのエバネセント波を指に照射させて該指を殺菌するというものである。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の操作パネルの殺菌手段は、操作パネルの内部に紫外線ランプを取り付けた上で、操作パネルとして、入射させた紫外線ビームを内部で全反射する導光体を用いなければならない。このため、特許文献2に記載の操作パネルの殺菌手段は、実質的に既存設備の操作パネルやテーブル等へ適用(後付け)することが出来ないという問題があった。
【0008】
一方、LEDから発せられる円錐状に拡散された紫外線を操作パネルやテーブル等のような平面領域へ集光させる技術としては、上述したようにLEDを多数並べる方法(特許文献1)や、エバネセント波を利用するため、操作パネルを兼ねた導光体の中に紫外線を拡散させる方法(特許文献2)の他に、例えば特開2020-3252号公報(特許文献3)や特開2011-70010号公報(特許文献4)に記載されているように、シリンドリカルレンズを用いて紫外線を扇状に集光させる手段が知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の紫外線集光手段は、LEDから発せられる円錐状に拡散された紫外線をLEDに被せた凸レンズを用いて円柱状に集光した上で、さらにLEDの出射側に配置されたシリンドリカルレンズを用いて扇状に広げなければならず、このため照射効率が低下し、紫外線集光手段の平面方向の物理的スペースも嵩み構造も複雑となるという問題があった。
【0010】
特許文献4に記載の紫外線集光手段は、曲面部と平面部とを有するシリンドリカルレンズにおいて、その平面部側にLEDを装着するというものである。しかしながら、特許文献4に記載の紫外線集光手段は、円錐状に放射された紫外線をシリンドリカルレンズの平面部から入射させるものであるため、平面部に対して直交せず、90°よりも小さな角度で入射する紫外線がシリンドリカルレンズの表面で反射されて照射効率を低下させるという問題があった。
【0011】
さらに、特許文献4に記載の紫外線集光手段は、円錐状に拡散された紫外線をシリンドリカルレンズを介して扇状に集光するため、シリンドリカルレンズの側面には先細りの翼状レンズを設けなければならず、レンズの形状が極めて複雑となり大きくなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-204824号公報
【特許文献2】特開2011-245305号公報
【特許文献3】特開2020-3252号公報
【特許文献4】特開2011-70010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、不特定多数の者の手により触れられる銀行等の現金自動預け払い機、駅等の券売機、エレベータ等の昇降ボタンなどの操作パネルやテーブル、床、展示ボード等のような平面領域に対して、出来るだけ少ない数の発光ダイオードにて万遍なく、少なくとも殺菌効果を達成する意義において均一に紫外線を照射することができる殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、発光ダイオードから円錐状に放射された紫外線を操作パネルやテーブル等の平面領域に対して万遍なく、少なくとも殺菌効果を達成する意義において均一に照射することができるレンズの形状及びそのレンズを用いた光源モジュールの配置などについて鋭意検討を重ねた。その結果、曲面部と平面部とを有するシリンドリカルレンズにおいて、その曲面部に凸レンズを底部に有する溝部を形成し、該溝部へ発光ダイオードを接続することにより、紫外線を水平方向には広角に鉛直方向には狭角に扁平した扇形を形成するように照射できることを見出した。さらに、上述の光源モジュールを操作パネルやテーブル等の平面領域を挟んで対向するように配置すれば、紫外線を該平面領域へより一層万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明によれば、紫外線を発光する発光ダイオードと、前記発光ダイオードの発光部側に配置される曲面部と、前記発光ダイオードから発光された紫外線を出射する平面部とを有するシリンドリカルレンズとを備えており、そして前記曲面部には、前記発光部から発光された紫外線を受け入れるための溝部が形成されており、前記溝部の底部には、前記シリンドリカルレンズの横断面視において、前記発光部へ向けて膨らむように湾曲した凸部が形成されていることを特徴とする殺菌用光源モジュールが提供される。
【0016】
一般的に、曲面部と平面部とを有するシリンドリカルレンズを用いて、発光ダイオードから円錐状に放射される紫外線を扁平した扇状に集光するためには、特許文献3、4に示されているように、紫外線をシリンドリカルレンズの平面部へ入射させる。何故なら、シリンドリカルレンズの曲面部へ紫外線を入射させると、平面部へ入射させる場合よりも入射面に対して直交せず、90°よりも小さな角度で入射する紫外線が多くなる結果、シリンドリカルレンズの表面で反射される紫外線も多くなり照射効率が低下するからである。
【0017】
しかし、発光ダイオードから発せられる全紫外線を曲面部側からシリンドリカルレンズ内へ入射させることができれば、シリンドリカルレンズ内へ入射した紫外線は、寧ろ曲面部において内部反射して効率良く出射面である平面部へ集光されるため、平面部から出射する紫外線の照射効率が向上すると考えられる共に、扁平した扇状に集光させることができる。このため、本発明では、シリンドリカルレンズの曲面部に、凸レンズ(発光ダイオードへ向けて膨らむように湾曲した凸部)を底部に有する溝部を設け、シリンドリカルレンズと全反射ミラーとを組み合わせた形状のレンズとすることで、発光ダイオードとレンズ間の距離を小さくし、発光ダイオードから円錐状に放射される略全部の紫外線をシリンドリカルレンズ内へ導くことができるようにしている。
【0018】
その結果、本発明の殺菌用光源モジュールは、高い照射効率において、紫外線を水平方向の広がり角が90°以上150°以下、鉛直方向の広がり角が5°以上20°以下の扁平した扇形を形成するように照射することができる。このため、本発明の殺菌用光源モジュールは、その中心の光軸の入射角が操作パネルやテーブル等の平面領域に対して好ましくは0°以上15°以下、より好ましくは2.5°以上10°以下となるように下向きに傾けることで、該平面領域を万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射することができるようになる。
【0019】
本発明において、溝部の底部に設けられた凸部は、発光ダイオードから円錐状に放射される紫外線の水平方向の成分を、略その放射角度(水平方向の広がり角)を維持するようにシリンドリカルレンズ内を直進させ、紫外線の鉛直方向の成分については、シリンドリカルレンズの平面部に対して略直交する方向へ屈折させてシリンドリカルレンズ内を直進させる。また、凸部に到達しない紫外線は、溝部の上下側面部から、水平成分についても鉛直成分についても略その放射角度(広がり角)を維持するようにシリンドリカルレンズ内へ取り込まれ、そして鉛直方向の成分のみ、シリンドリカルレンズの曲面部で反射されることにより平面部に対して略直交する方向へ屈折されてシリンドリカルレンズ内を直進する。
【0020】
このように、溝部および凸部は、紫外線の無用な屈折や反射を防いで、発光ダイオードからシリンドリカルレンズへ放射される紫外線の入射効率を向上させるためにも機能する。そのため、溝部の中の凸部は、シリンドリカルレンズの横断面視において、単一の曲率を有する曲面または複数の異なる曲率を有する曲面から構成されていることが好ましい。また、凸部の形状は、シリンドリカルレンズの厚みや材料(屈折率)、発光ダイオードの発光面と凸部との距離などに基づいて決定することができる。
【0021】
さらに、溝部および凸部は、シリンドリカルレンズの長手方向の全長に亘って、溝部および凸部の横断面が同一形状となるように構成されていることが好ましい。溝部および凸部の横断面をシリンドリカルレンズの長手方向の全長に亘って同一形状に形成することで、シリンドリカルレンズのどの横断面においても、発光ダイオードから円錐状に放射される紫外線の水平方向の広がりを維持又は拡大し、鉛直方向の広がりのみを一様に抑制することができる。この結果、発光ダイオードから放射される紫外線は、シリンドリカルレンズを通過することにより、殺菌効果を達成する観点から極めて均一な照度において扁平した扇形を形成するように照射される。なお、溝部および凸部は、発光ダイオードから放射される紫外線の内、水平方向(シリンドリカルレンズの長手方向)へ広がる成分が極めて少ない場合、シリンドリカルレンズの長手方向の全長に亘って設ける必要はない。
【0022】
本発明において、シリンドリカルレンズの曲面部は、溝部からシリンドリカルレンズ内へ入射した紫外線を内部反射により効率良く平面部へ反射し、そして平面部から所望の広がりをもって扇状に出射させるため、シリンドリカルレンズの横断面視において、溝部を除いて単一の曲率または複数の異なる曲率を有するように構成することができる。また、曲面部の形状は、シリンドリカルレンズの厚みや材料(屈折率)、溝部から入射する紫外線の光路などに基づいて決定することができる。
【0023】
シリンドリカルレンズの材料は、屈折率を示す紫外線透過材料であれば特に制限されることなく、ガラスのような無機材料であっても樹脂のような有機材料であっても使用することができる。より具体的には、シリンドリカルレンズの材料は、ガラス、ホウ珪酸ガラス、溶融石英、合成石英、サファイアおよびアクリル樹脂やフッ素樹脂等の紫外線透過樹脂などから選ばれる。
【0024】
本発明によれば、上述した平面領域へ紫外線を照射するための複数の殺菌用光源モジュールを備えており、そしてその中の少なくとも1対の殺菌用光源モジュールが、平面視において、該平面領域を挟んで対向するように配置されており、且つ殺菌用光源モジュールの光軸が該平面領域の表面に対して0°以上15°以下の範囲で下向きに配置されている紫外線照射装置が提供される。なお、平面領域とは、例えば入力操作を行うための操作パネル、テーブル、床または展示ボードの表面など不特定多数の者の手により触れられる有体物の平面的な区域を意味する。
【0025】
本発明の殺菌用光源モジュールは、紫外線を水平方向の広がり角が90°以上150°以下、鉛直方向の広がり角が5°以上20°以下の扁平した扇形を形成するように照射することができる。このため、本発明の紫外線照射装置は、殺菌用光源モジュールを、その中心の光軸の入射角を操作パネルやテーブル等の平面領域に対して好ましくは0°以上15°以下、より好ましくは2.5°以上10°以下となるように下向きに傾け、さらに少なくとも1対の殺菌用光源モジュールを該平面領域を挟んで対向するように配置することで、該平面領域を万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射することができるようになる。
【0026】
本発明の紫外線照射装置は、既存設備の操作パネルやテーブル等の平面領域へ後付けできるという特徴を有している。このため、本発明の紫外線照射装置は、紫外線を照射する平面領域の周縁部に配置される枠体を備えており、該枠体に紫外線照射装置で使用される複数の殺菌用光源モジュールが取り付けられていることが好ましい。
【0027】
複数の殺菌用光源モジュールを1つの枠体に一体的に取り付けることで、特に既存設備の操作パネルやテーブル等の平面領域への取り付けが極めて容易になるばかりでなく、紫外線照射装置の美観も向上し、殺菌用光源モジュールの保護にも役立つ。また、枠体に、殺菌用光源モジュールから出射された紫外線を平面領域へ向けて反射させるためのリフレクターを設けることで、殺菌用光源モジュールから出射される紫外線を無駄なく該平面領域へ反射させることができ、紫外線照射装置の照射効率が向上すると共に紫外線による殺菌力も向上する。
【0028】
なお、枠体は、紫外線の照射対象となる平面領域の周縁部に配置できるものであればその形状や材料に特に限定はないが、一般的には樹脂や金属などからなるアングルまたはチャンネルが好適に使用される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の殺菌用光源モジュールによれば、シリンドリカルレンズの曲面部に、凸レンズを底部に有する溝部を設けることで、発光ダイオードから円錐状に放射される略全部の紫外線をシリンドリカルレンズ内へ導くことができる結果、高い照射効率において、紫外線を水平方向の広がり角が90°以上150°以下、鉛直方向の広がり角が5°以上20°以下の扁平した扇形を形成するように照射することができる。
【0030】
本発明の紫外線照射装置によれば、殺菌用光源モジュールを操作パネルやテーブル等の平面領域を挟んで対向するように配置し、且つ殺菌用光源モジュールの光軸が該平面領域の表面に対して所定の入射角となるように下向きに配置することで、極めて少ない数の発光ダイオードにて該平面領域を紫外線で万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌用光源モジュールの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る殺菌用光源モジュールの平面図である。
【
図3】
図2に示される殺菌用光源モジュールをA-A断面で切り取った断面図である。
【
図4】紫外線を照射するための平面領域に殺菌用光源モジュールを配置した本発明の一実施形態に係る照射装置の斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る照射装置を用いて紫外線を平面領域に照射した時のシミュレーション条件を示す概要図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る照射装置を用いて紫外線を照射した時の平面領域における照度をシミュレートした照度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態に係る殺菌用光源モジュール及びそれを用いた照射装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例0033】
図1には、本実施形態に係る光源モジュール1の斜視図が示されており、
図2には、本実施形態の光源モジュール1の平面図が示されており、そして
図3には、
図2に示された光源モジュール1をA-A断面で切り取った断面図が示されている。なお、
図1~3では、光源モジュール1の構造がよく理解されるように、光源モジュール1を覆うカバー11や放熱フィン12等は点線にて省略して図示されている。
【0034】
図1~3を参照してよく理解されるように、本実施形態の光源モジュール1は、紫外線3を発光する発光ダイオード2と、発光ダイオード2から発光された紫外線3を扁平な扇形に広げて出射させるためのシリンドリカルレンズ4とを備えている。シリンドリカルレンズ4とは、円柱又は楕円柱を軸方向に割った蒲鉾形状を有しており、一方は曲率を有する曲面で、他方は曲率を有さない平面とから構成されるレンズである。
【0035】
本実施形態で使用されるシリンドリカルレンズ4は、発光ダイオード2から発せられる紫外線3が入射する曲面部40と、曲面部40へ入射した紫外線3が出射する平面部41とを備えており、曲面部40が発光ダイオード2の発光部20に当接するように配置される。また、シリンドリカルレンズ4の曲面部40には、発光ダイオード2から発せられる紫外線3を受け入れるための溝部42が形成されており、溝部42の底部には、シリンドリカルレンズ4の横断面視において、発光部20へ向けて膨らむように湾曲した凸部43が形成されている(
図3)。
【0036】
このため、本実施形態では、発光ダイオード2から円錐状の放射される紫外線3は、外部へ洩れることなく、略紫外線3の全部がシリンドリカルレンズ4内へ導かれる。また、シリンドリカルレンズ4内へ誘導された紫外線3は、曲面部40において内部反射して効率良く平面部41へ反射されるので、平面部41から出射する紫外線3の照射効率が向上する。
【0037】
本実施形態において、溝部42の底部に設けられた凸部43は、発光ダイオード2から円錐状に放射される紫外線3の水平方向の成分を、略その放射角度(水平方向の広がり角)を維持するようにシリンドリカルレンズ4内を直進させ(
図2)、紫外線3の鉛直方向の成分については、シリンドリカルレンズ4の平面部41に対して略直交する方向へ屈折させてシリンドリカルレンズ内を直進させる(
図3)。
【0038】
また、凸部43に到達しない紫外線3は、溝部42の上下側面部44から、水平成分についても鉛直成分についても略その放射角度(広がり角)を維持するようにシリンドリカルレンズ4内へ取り込まれ、そして鉛直方向の成分のみ、シリンドリカルレンズ4の曲面部40で反射されることにより平面部41に対して略直交する方向へ屈折されてシリンドリカルレンズ4内を直進する(
図3)。
【0039】
その結果、本実施形態の殺菌用光源モジュール1は、高い照射効率において、紫外線3を水平方向の広がり角αが90°以上150°以下(
図2)、鉛直方向の広がり角βが5°以上20°以下(
図3)の扁平した扇形を形成するように照射することができる。このように、溝部42および凸部43は、シリンドリカルレンズ4表面での紫外線3の無用な屈折や反射を防いで、発光ダイオード2からシリンドリカルレンズ4へ放射される紫外線3の入射効率を向上させるためにも機能する。
【0040】
本実施形態において、溝部42の中の凸部43は、シリンドリカルレンズ4の横断面視において単一の曲率を有する曲面から構成されているが、複数の異なる曲率を有する曲面から構成することもできる。凸部43の形状は、シリンドリカルレンズ4の厚みや材料(屈折率)、発光ダイオード2の発光部20と凸部43との距離などに基づいて決定される。
【0041】
また、溝部42および凸部43は、シリンドリカルレンズ4の長手方向の全長に亘って、溝部42および凸部43の横断面が同一形状となるように構成されているが、発光ダイオード2から放射される紫外線3の内、水平方向(シリンドリカルレンズ4の長手方向)へ広がる成分が極めて少ない場合、シリンドリカルレンズ4の長手方向の全長に亘って設ける必要はない。
【0042】
本実施形態では、溝部42および凸部43の横断面をシリンドリカルレンズ4の長手方向の全長に亘って同一形状に形成することで、シリンドリカルレンズ4のどの横断面においても、発光ダイオード2から円錐状に放射される紫外線3の鉛直方向の成分を同じ入射角度でシリンドリカルレンズ4内へ取り込むことが可能になる結果、紫外線3の水平方向の広がりを維持又は拡大しながら(
図2)、鉛直方向の広がりのみを一様に抑制することができる(
図3)。この結果、発光ダイオード2から放射される紫外線3は、シリンドリカルレンズ4を通過することにより、殺菌効果を達成する観点から極めて均一な照度において扁平した扇形を形成するように照射される。
【0043】
本実施形態において、シリンドリカルレンズ4の曲面部40は、溝部42からシリンドリカルレンズ4内へ入射した紫外線3を内部反射により効率良く平面部41へ反射し、そして平面部41から所望の広がりをもって扇状に出射させるため、シリンドリカルレンズ4の横断面視において、溝部42を除いて単一の曲率を有するように構成しているが、複数の異なる曲率を有するように構成することもできる。また、曲面部40の形状は、シリンドリカルレンズ4の厚みや材料(屈折率)、溝部42から入射する紫外線3の光路などに基づいて決定することができる。
【0044】
シリンドリカルレンズ4の材料は、屈折率を示す紫外線透過材料であれば特に制限されることなく、ガラスのような無機材料であっても樹脂のような有機材料であっても使用することができる。より具体的には、シリンドリカルレンズ4の材料は、ガラス、ホウ珪酸ガラス、溶融石英、合成石英、サファイアおよびアクリル樹脂やフッ素樹脂等の紫外線透過樹脂などから選ばれる。
【0045】
図4には、紫外線3を照射するための平面領域6に光源モジュール1を配置した本実施形態に係る紫外線照射装置5の斜視図が示されている。
【0046】
図4を参照して理解されるように、本実施形態の紫外線照射装置5は、平面領域6へ紫外線3を照射するのに適した本発明の4個の殺菌用光源モジュール1を備えており、そしてその中の2対の光源モジュール1が、平面視において、平面領域6を挟んで対向するように配置されている。なお、図示しないが、本実施形態における光源モジュール1は、2以上の光源モジュール1の中の少なくとも1対の光源モジュール1が平面領域6を挟んで対向するように配置されていれば足り、そのため、光源モジュール1の総数が2個、4個、6個・・・のように偶数個であっても、3個、5個、7個・・・のように奇数個であってもよい。
【0047】
また、本実施形態の紫外線照射装置5では、各光源モジュール1の光軸10が照射する平面領域6の表面に対して0°以上15°以下の範囲で下向きに配置されている。
【0048】
本発明の殺菌用光源モジュール1は、上述したように、紫外線3を水平方向の広がり角αが90°以上150°以下、鉛直方向の広がり角βが5°以上20°以下の扁平した扇形を形成するように照射することができる。このため、本実施形態の紫外線照射装置5は、2対の光源モジュール1を平面領域6を挟んで対向するように配置し、さらに、光源モジュール1の中心の光軸10を操作パネルやテーブル等の平面領域6に対して好ましくは0°以上15°以下、より好ましくは2.5°以上10°以下の入射角となるように下向きに傾けることで、特に扇状に広がった紫外線3の水平方向の成分の略全部をロスなく平面領域6へ向けることができ、平面領域6を万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射することが可能になる。
【0049】
また、本実施形態の殺菌用光源モジュール1および紫外線照射装置5は極めて薄くコンパクトであるため、既存設備の操作パネルやテーブル等の平面領域6であっても後付けすることができる。このため、本実施形態の紫外線照射装置5は、紫外線3を照射する平面領域6の周縁部に配置される枠体7を備えており、枠体7には各光源モジュール1が取り付けられている(
図4)。
【0050】
各光源モジュール1を1つの枠体7に一体的に取り付けることで、特に既存設備の操作パネルやテーブル等の平面領域6への取り付けが1回の取付作業で済み、極めて容易になるばかりでなく、紫外線照射装置5の美観も向上し、光源モジュール1の保護にも役立つ。また、図示しないが、枠体7には、各光源モジュール1間に該光源モジュール1から出射された紫外線3を平面領域6へ向けて反射させるためのリフレクターを設けてもよい。この場合、光源モジュール1から出射される紫外線3を無駄なく平面領域6へ反射させることができ、紫外線照射装置5の照射効率が向上すると共に紫外線3による殺菌力もより向上する。
【0051】
なお、枠体7は、紫外線3の照射対象となる平面領域6の周縁部に配置できるものであればその形状や材料に特に限定はないが、一般的には樹脂や金属などからなるアングルまたはチャンネルが好適に使用される。
【0052】
図5には、本実施形態に係る紫外線照射装置5を用いて紫外線3を平面領域6に照射した時のシミュレーション条件(光源モジュール1の配置等)の概要が示されており、
図6には、本実施形態の紫外線照射装置5を用いて紫外線3を照射した時の平面領域6における照度をシミュレートした照度分布および平面領域6の横方向Wの照度分布と縦方向Lの照度分布が示されている。
【0053】
[シミュレーション条件]
1.光源モジュール1の仕様:DeepUV-LED(265nm)
(1)水平方向の広がり角α:90°
(2)鉛直方向の広がり角β:15°
2.光源モジュール1の配置
(1)水平方向:平面領域6の四隅に、中心光軸10が平面領域6の対角線上に整列するように光源モジュール1を4個(2対)配置した。
(2)鉛直方向:中心光軸10が平面領域6に対して下向きに3°の入射角となるように各光源モジュール1を配置した。
3.平面領域6の大きさ:12.1インチ(横250mm×縦190mm)
4.光源モジュール1の照射条件:平面領域6の中心部Pにおける照度が46μW/cm2となるように、各光源モジュール1の照射強度を均等に調節した。
5.シミュレーションソフト:Zemax Optic studio
【0054】
図6に示される照度分布より、本実施形態の殺菌用光源モジュール1およびそれを用いた紫外線照射装置5によれば、シリンドリカルレンズ4により扇状に制御された紫外線3は平面領域6を万遍なく、殺菌効果を達成する意義において均一に照射されることが判った。また、平面領域6の横方向Wの照度分布および縦方向Lの照度分布により、本実施形態の紫外線照射装置5は、光源モジュール1に近い平面領域6の縁部付近の照度と、光源モジュール1から離れた平面領域6の中心部の照度との照度差も約20%以内に小さく抑えられることが判った。