(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073433
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】結像光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220510BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183411
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 健
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA03
2H087MA07
2H087NA14
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA19
2H087PB11
2H087PB12
2H087PB13
2H087QA02
2H087QA05
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA38
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】適切にレンズを配置することによって画角80°から100°程度で大口径かつ小型でありながら諸収差の良好な補正とフォーカス群の小型軽量化を両立した結像光学系を提供する
【解決手段】物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、からなり、至近へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群G2が像側に移動すると共に前記第1レンズ群G1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群G3は像面に対して固定であり、前記第2レンズ群G2は正レンズLpを含む2枚以上のレンズを有し、特定の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、
開口絞りSと、
負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、
正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、
からなり、
至近へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群G2が像側に移動すると共に前記第1レンズ群G1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群G3は像面に対して固定であり、
前記第2レンズ群G2は正レンズLpを含む2枚以上のレンズを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
-5.0 < f2/f < -2.5 (1)
但し、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【請求項2】
前記第1レンズ群G1は以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の結像光学系
0.2 < pp2G1/f1 < 1.0 (2)
但し、
pp2G1は第1レンズ群G1の最像側面の面頂から第1レンズ群G1の後ろ側主点までの光軸上の距離、
f1は第1レンズ群G1の焦点距離である。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の結像光学系
2.0 < f3/f < 3.5 (3)
但し、
f3は前記第3レンズ群G3の焦点距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【請求項4】
前記正レンズLpが以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の結像光学系
0.7< fLp/|f2| (4)
但し、
fLpは前記正レンズLpの焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【請求項5】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の結像光学系
0.05 < D_EXP_G2×IH/(D_EXP_IMG×f) < 0.25 (5)
但し、
D_EXP_G2は結像光学系の射出瞳から前記第2レンズ群G2の最像側面の光軸上の距離、
IHは最大像高、
D_EXP_IMGは前記結像光学系の射出瞳から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【請求項6】
前記第2レンズ群G2は負レンズLnと前記正レンズLpからなる請求項1乃至5のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項7】
前記負レンズLnが物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであることを特徴とする請求項6に記載の結像光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、銀塩カメラ及びビデオカメラ等に最適であり、特に、画角が80°から100°程度で、小型で、バックフォーカスの短いミラーレスカメラに最適な結像光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ交換式デジタルカメラにおいてはミラーレスカメラのシェアが拡大している。ミラーレスカメラはショートフランジバックを利用することで一眼レフカメラよりも小型化する傾向にある。小型化したカメラボディに合わせ交換レンズにおいても小型化が求められている。ミラーレスカメラはショートフランジバックの為、小型化するためには一眼レフカメラ用レンズと比べて光学全長が短くバックフォーカスも短い製品が求められる。
【0003】
またミラーレスカメラが普及するにつれて動画機能が重要視されるようになった。動画撮影時に映像に音が入らないようにオートフォーカスに伴う駆動音は小さく抑える必要があり、レンズ本体の小型化の必要性も考慮するとモーターも大きくはできないためフォーカス時に駆動するパーツは軽量であることが求められる。
【0004】
しかしながら小型化が望まれつつも出力機器の高画素化やスマートフォンカメラとの差別化のため交換レンズの大口径化、高性能化も望まれている。
【0005】
以下の特許文献において画角80°から100°程度の従来の結像光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6374713号公報
【特許文献2】特許6413392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において画角が78°から100°のミラーレスカメラに適した小型なインナーフォーカスの結像光学系が開示されている。この結像光学系ではフォーカス群を1枚のレンズで構成することによりフォーカス群を軽量化している。しかしながらフォーカシング時の倍率色収差の変動が大きい。
【0008】
特許文献2において画角が83°から94°のリアフォーカスの結像光学系が開示されている。この結像光学系では大口径でありながら諸収差が良く補正され、フォーカシング時の色収差の変動も小さい。しかしながらフォーカス群を構成するレンズ枚数が多くまた開口絞りもフォーカシング時に動くためフォーカシング時の可動部重量が大きい。また光学全長が大きく、第1レンズ群の先頭レンズの径も大きいためミラーレスカメラ用の交換レンズとして十分に小型化することが困難である。
【0009】
そこで、本発明は、従来の結像光学系の課題を解決し、適切にレンズを配置することによって画角80°から100°程度で大口径かつ小型でありながら諸収差の良好な補正とフォーカス群の小型軽量化を両立した結像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段である本発明を実施の結像光学系は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、からなり、至近へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群G2が像側に移動すると共に前記第1レンズ群G1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群G3は像面に対して固定であり、前記第2レンズ群G2は正レンズLpを含む2枚以上のレンズを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
-5.0 < f2/f < -2.5 (1)
但し、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【0011】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに前記第1レンズ群G1は以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
0.2 < pp2G1/f1 < 1.0 (2)
但し、
pp2G1は第1レンズ群G1の最像側面の面頂から第1レンズ群G1の後ろ側主点までの光軸上の距離、
f1は第1レンズ群G1の焦点距離である。
【0012】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
2.0 < f3/f < 3.5 (3)
但し、
f3は前記第3レンズ群G3の焦点距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【0013】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに前記正レンズLpが以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
0.7< fLp/|f2| (4)
但し、
fLpは前記正レンズLpの焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【0014】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系
0.05 < D_EXP_G2×IH/(D_EXP_IMG×f) < 0.25 (5)
但し、
D_EXP_G2は結像光学系の射出瞳から前記第2レンズ群G2の最像側面の光軸上の距離、
IHは最大像高、
D_EXP_IMGは前記結像光学系の射出瞳から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【0015】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに前記第2レンズ群G2は負レンズLnと前記正レンズLpからなる結像光学系。
【0016】
また、本発明を実施の結像光学系は、さらに前記負レンズLnが物体側に凸面を向けたメニスカスレンズである結像光学系。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、適切にレンズを配置することによって画角80°から100°程度で大口径かつ小型でありながら諸収差の良好な補正とフォーカス群の小型軽量化を両立した結像光学系を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の結像光学系の実施例1に係るレンズ構成図である。
【
図2】実施例1の結像光学系の撮影距離無限遠における縦収差図である。
【
図3】実施例1の結像光学系の撮影距離255mmにおける縦収差図である。
【
図4】実施例1の結像光学系の撮影距離無限遠における横収差図である。
【
図5】実施例1の結像光学系の撮影距離255mmにおける横収差図である。
【
図6】本発明の結像光学系の実施例2に係るレンズ構成図である。
【
図7】実施例2の結像光学系の撮影距離無限遠における縦収差図である。
【
図8】実施例2の結像光学系の撮影距離275mmにおける縦収差図である。
【
図9】実施例2の結像光学系の撮影距離無限遠における横収差図である。
【
図10】実施例2の結像光学系の撮影距離275mmにおける横収差図である。
【
図11】本発明の結像光学系の実施例3に係るレンズ構成図である。
【
図12】実施例3の結像光学系の撮影距離無限遠における縦収差図である。
【
図13】実施例3の結像光学系の撮影距離265mmにおける縦収差図である。
【
図14】実施例3の結像光学系の撮影距離無限遠における横収差図である。
【
図15】実施例3の結像光学系の撮影距離265mmにおける横収差図である。
【
図16】本発明の結像光学系の実施例4に係るレンズ構成図である。
【
図17】実施例4の結像光学系の撮影距離無限遠における縦収差図である。
【
図18】実施例4の結像光学系の撮影距離265mmにおける縦収差図である。
【
図19】実施例4の結像光学系の撮影距離無限遠における横収差図である。
【
図20】実施例4の結像光学系の撮影距離265mmにおける横収差図である。
【
図21】本発明の結像光学系の実施例5に係るレンズ構成図である。
【
図22】実施例5の結像光学系の撮影距離無限遠における縦収差図である。
【
図23】実施例5の結像光学系の撮影距離245mmにおける縦収差図である。
【
図24】実施例5の結像光学系の撮影距離無限遠における横収差図である。
【
図25】実施例5の結像光学系の撮影距離245mmにおける横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る光学系の実施例について詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明は本発明の光学系の一例を説明したものであり、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において本実施例に限定されるものではない。
【0020】
本発明の実施例の結像光学系は、
図1、
図6、
図11、
図16、
図21に示すレンズ構成図からわかるように、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、からなり、至近へのフォーカシングに際して前記第2レンズ群G2が像側に移動すると共に前記第1レンズ群G1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群G3は像面に対して固定であり、前記第2レンズ群G2は正レンズLpを含む2枚以上のレンズを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
-5.0 < f2/f < -2.5 (1)
但し、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【0021】
至近へのフォーカシングに際して第1レンズ群G1と第3レンズ群G3は像面に対して固定であることで結像光学系をインナーフォーカスとすることができ、防塵防滴構造を取り入れやすい。また至近へのフォーカシングに際して開口絞りSが固定であることでフォーカシングに際して可動させるパーツの重量を低減できる。
【0022】
開口絞りSは第1レンズ群G1と第2レンズ群G2の間に配置することでいずれかの群中に配置する場合と比べて結像光学系を保持するために必要なメカパーツの点数を少なくすることができる。また周辺画角の光束は開口絞りSから離れるほど光軸から見て高い位置を通るため開口絞りSの直後にフォーカス群を配置することはフォーカス群の小型軽量化に有利である。
【0023】
前記第2レンズ群G2は負の屈折力を有し、少なくとも1枚の正レンズを含む2枚以上のレンズを有することによって前記第2レンズ群G2内で発生する色収差を補正することができ、フォーカシング時の色収差の変動を小さくすることができる。
【0024】
条件式(1)は結像光学系の小型化と高性能化を両立するため、前記第2レンズ群G2の焦点距離を規定したものである。
【0025】
条件式(1)の下限値を超えて第2レンズ群G2の焦点距離が小さくなるとフォーカス群である第2レンズ群G2の負の屈折力が小さくなりフォーカシング時の移動距離が大きくなるため結像光学系の小型化に不利になる。
【0026】
条件式(1)の上限値を超えて第2レンズ群G2の焦点距離が大きくなるとフォーカス群である第2レンズ群G2の負の屈折力が大きくなりフォーカシング時の諸収差の変動を抑えることが困難になる。
【0027】
なお、上述した条件式(1)について、上限値を-2.7、下限値を-4.5とすることで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0028】
さらに本発明の結像光学系は前記第1レンズ群G1が以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.2 < pp2G1/f1 < 1.0 (2)
但し、
pp2G1は第1レンズ群G1の最像側面の面頂から第1レンズ群G1の後ろ側主点までの光軸上の距離、
f1は第1レンズ群G1の焦点距離である。
【0029】
本発明の結像光学系は第2レンズ群G2をフォーカスレンズ群とするために第1レンズ群G1をレトロフォーカスのパワー配置にして第1レンズ群G1より像側の空間を確保している。また第1レンズ群G1をレトロフォーカスのパワー配置とすることで、広い画角を確保するために径方向に大きくなりがちな第1レンズ群G1の先頭部分の径方向の小型化を実現している。一方で第1レンズ群G1の像側には開口絞りSとフォーカスレンズ群があるため第1レンズ群G1のレトロフォーカスの傾向が強くなりすぎると軸上光束が光軸から高い位置を通ってしまい開口絞りS及びフォーカス群の小型軽量化の観点から望ましくない。
【0030】
条件式(2)は第1レンズ群G1の小型化とフォーカスレンズ群の小型軽量化の両立のために望ましい第1レンズ群G1内のパワー配置を規定している。
【0031】
条件式(2)の上限値を超えて第1レンズ群G1の最像側面から第1レンズ群G1の後ろ側主点までの距離が大きくなると第1レンズ群G1から射出される軸上光束が太くなり、開口絞りS及び第2レンズ群G2の軽量化に不利になるため望ましくない。
【0032】
条件式(2)の下限値を超えて第1レンズ群G1の最像側面から第1レンズ群G1の後ろ側主点までの距離が小さくなると第1レンズ群G1の先頭部の径が大きくなり小型化に不利なため望ましくない
【0033】
上述した条件式(2)について、その上限値を0.9に、下限値を0.3に規定することで前述の効果をより確実にすることができる。
【0034】
さらに本発明の結像光学系は以下の条件式を満足することを特徴とする。
2.0 < f3/f < 3.5 (3)
但し、
f3は前記第3レンズ群G3の焦点距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【0035】
条件式(3)は全系の焦点距離と第3レンズ群G3の焦点距離の比を規定することでレンズの小型化と非点収差の補正を両立させている。
【0036】
条件式(3)の上限値を超えて第3レンズ群G3の焦点距離が大きくなるとバックフォーカスが長くなりレンズの小型化に不利になるため望ましくない。
【0037】
条件式(3)の下限値を超えて第3レンズ群G3の焦点距離が小さくなると第3レンズ群G3で発生する非点収差を全系で補正することが困難になる。
【0038】
上述した条件式(3)について、その上限値を3.0に、下限値を2.2に規定することで前述の効果をより確実にすることができる。
【0039】
さらに本発明の結像光学系は前記正レンズLpが以下の条件式を特徴とする。
0.7 < fLp/|f2| (4)
但し、fLpは前記正レンズLpの焦点距離、
f2は前記第2レンズ群G2の焦点距離である。
【0040】
条件式(4)はフォーカス群の軽量化のために正レンズLpの焦点距離の望ましい範囲を規定している
【0041】
条件式(4)の下限値を超え正レンズLpの焦点距離が小さくなると、正レンズLPの曲率半径が小さくなるためフォーカス群の軽量化に不利になる。また第2レンズ群G2は全体として負の屈折力を有するため正レンズLpの焦点距離が小さくなると負レンズの屈折力も大きくしなければならず負レンズの曲率半径が小さくなりやはりフォーカス群の軽量化に不利になる
【0042】
上述した条件式(4)について、その下限値を0.8に規定することで前述の効果をより確実にすることができる。
【0043】
さらに本発明の結像光学系は以下の条件式を満足することを特徴とする
0.05 < D_EXP_G2×IH/(D_EXP_IMG×f) < 0.25 (5)
但し、
D_EXP_G2は結像光学系の射出瞳から前記第2レンズ群G2の最像側面の光軸上の距離、
IHは最大像高、
D_EXP_IMGは前記結像光学系の射出瞳から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時のレンズ全系の焦点距離である。
【0044】
軸上光束に着目したフォーカス群の小径化については条件式(2)で望ましい範囲を記述した。次に周辺画角の光束に着目する。
【0045】
フォーカス群からみて結像光学系の射出瞳が物体に近づくほどフォーカス群における周辺画角の光束が光軸から高い位置を通ることになる。
【0046】
条件式(5)はフォーカス群の小型軽量化と結像光学系の小型化のために好ましい結像光学系の射出瞳と第2レンズ群G2の最像側面と像面の位置関係を規定している。
【0047】
条件式(5)の上限値を超えて結像光学系の射出瞳と第2レンズ群G2の最像側面の光軸上の距離が大きくなると第2レンズ群G2において周辺画角の光束が高い位置を通るために第2レンズ群G2を径方向の小型化に不利になる。
【0048】
条件式(5)の下限値を超えて結像光学系の射出瞳と像面の光軸上の距離が大きくなると第3レンズ群G3が径方向に大きくなるかバックフォーカスが大きくなりやすく結像光学系の小型化に不利になる。
【0049】
上述した条件式(5)について、その下限値を0.06に、上限値を0.24に規定することで前述の効果をより確実にすることができる。
【0050】
さらに本発明の結像光学系は前記第2レンズ群G2が負レンズLnと正レンズLpからなることを特徴とする。
【0051】
フォーカシング時に動く第2レンズ群G2を負レンズLnと正レンズLpの2枚の単レンズのみで構成することにより第2レンズ群G2内において発生する色収差を補正しつつもフォーカス群を軽量にすることができる。
【0052】
さらに負レンズLnが物体側に凸面を向けたメニスカスレンズであることを特徴とする。
【0053】
負レンズLnには正の第1レンズ群G1からの収束光が入射するため物体側に凸面を向けたメニスカス形状であることでアプラナティックに近くなり球面収差やコマ収差の発生を抑制しやすい。
【0054】
本発明の結像光学系では、以下の構成を伴うことがより効果的である。
【0055】
さらに本発明の結像光学系では第3レンズ群G3は非球面レンズを有することが望ましい。正レンズに非球面形状を形成する場合は周辺に向かって正の屈折力が弱くなるような形状に、負レンズに非球面形状を形成する場合は周辺に向かって負の屈折力が強くなるような形状とすることが望ましい。このような形状の非球面を第3レンズ群G3に配置することで主に像面湾曲を効果的に補正することができる。
【0056】
次に、本発明の結像光学系に係る実施例のレンズ構成について説明する。なお、以下の説明ではレンズ構成を物体側から像側の順番で記載する。
【0057】
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面または開口絞りSの番号、rは各レンズ面の曲率半径、dは各レンズ面の間隔、ndはd線(波長587.56nm)に対する屈折率、vdはd線に対するアッベ数、θgFはg線(波長長435.84nm)とF線(波長486.13nm)の部分分散比を示している。
【0058】
面番号に付した*(アスタリスク)は、そのレンズ面形状が非球面であることを示している。また、BFはバックフォーカス、物面の距離は被写体からレンズ第1面までの距離を示している。
【0059】
面番号に付した(絞り)は、その位置に開口絞りSが位置していることを示している。平面又は開口絞りSに対する曲率半径には∞(無限大)を記入している。
【0060】
[非球面データ]には、[面データ]において*を付したレンズ面の非球面形状を与える各係数の値を示している。非球面の形状は、下記の式で表される。以下の式において、光軸に直交する方向への光軸からの変位をy、非球面との光軸の交点から光軸方向への変位(ザグ量)をz、基準球面の曲率半径をr、コーニック係数をKで表している。また、4、6、8、10、12、14次の非球面係数をそれぞれA4、A6、A8、A10、A12、A14で表している。
【0061】
[各種データ]には、各撮影距離合焦状態における焦点距離等の値を示している。
【0062】
[可変間隔データ]には、各種撮影距離合焦状態における可変間隔およびBFの値を示している。
【0063】
[レンズ群データ]には、各レンズ群を構成する最も物体側の面番号および群全体の合成焦点距離を示している。
【0064】
また、各実施例に対応する収差図において、d、g、Cはそれぞれd線、g線、C線を表しており、ΔS、ΔMはそれぞれサジタル像面、メリジオナル像面を表している。
なお、以下のすべての諸元の値において、記載している焦点距離f,曲率半径r,レンズ面間隔d,その他の長さの単位は特記のない限りミリメートル(mm)を使用するが、光学系では比例拡大と比例縮小においても同様の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【実施例0065】
図1は、本発明の実施例1の結像光学系のレンズ構成図である。
【0066】
実施例1は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。また、至近へのフォーカシングに際して、第2レンズ群G2が光軸上を像側に向かって移動し、第1レンズ群G1と開口絞りSと第3レンズ群G3は、像面に対して固定されている。
【0067】
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL12と、両凹形状の負レンズL13と両凸形状の正レンズL14とからなる接合レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL15と、両凸形状の正レンズL16と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL17と両凸形状のL18とからなる接合レンズとにより構成されている。また両凸形状の正レンズL16の物体側面と像側面の両面は所定の非球面形状となっている。
【0068】
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22とにより構成されている。なお、負メニスカスレンズL21は負レンズLnに、正メニスカスレンズL22は正レンズLpにそれぞれ該当する。
【0069】
第3レンズ群G3は、両凸形状のL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL33とにより構成されている。また両凸形状の正レンズL31の物体側面と像側面の両面は所定の非球面形状となっている。
【0070】
以下に実施例1に係る結像光学系の諸元値を示す。
数値実施例1
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd
物面 ∞ (d0)
1 45.6037 1.5000 1.59349 67.00
2 15.3074 6.6756
3 58.8288 1.0000 1.55032 75.50
4 36.6369 5.9203
5 -40.7794 1.2000 1.43700 95.10
6 43.7469 5.3060 1.92119 23.96
7 -75.3943 3.6449
8 -19.2777 0.9000 1.85451 25.15
9 -1000.0000 0.1500
10* 55.4577 6.0921 1.85135 40.10
11* -23.0246 1.0000
12 33.0246 1.0000 1.85451 25.15
13 16.1065 8.1410 1.55032 75.50
14 -51.0371 1.2000
15(絞り) ∞ (d15)
16 79.4580 0.9000 1.64769 33.84
17 20.0170 1.5960
18 26.0329 1.9148 1.98613 16.48
19 35.2306 (d19)
20* 71.4730 5.6621 1.69350 53.20
21* -31.7907 0.1500
22 31.6561 1.0000 1.85451 25.15
23 22.5636 5.4420
24 -83.9654 1.0000 1.85451 25.15
25 -197.3656 (BF)
像面 ∞
[非球面データ]
10面 11面
K 0.00000 0.00000
A4 -1.14330E-05 6.80065E-06
A6 9.28267E-09 -2.99492E-09
A8 -2.05847E-12 6.42501E-11
A10 3.52257E-13 -7.03480E-14
A12 -2.10462E-15 -3.63922E-16
A14 0.00000E+00 0.00000E+00
20面 21面
K 0.00000 0.00000
A4 -1.35312E-05 5.37598E-07
A6 1.54289E-08 -3.68634E-08
A8 1.78792E-10 5.74454E-10
A10 -1.96390E-12 -4.41849E-12
A12 9.36503E-15 1.46830E-14
A14 0.00000E+00 0.00000E+00
[各種データ]
INF 255mm
焦点距離 24.00 23.36
Fナンバー 2.07 2.18
全画角2ω 90.08 83.27
像高Y 21.63 21.63
レンズ全長 90.00 90.00
[可変間隔データ]
INF 255mm
d0 ∞ 165.0000
d15 3.2000 8.5816
d19 8.2253 2.8436
BF 17.1800 17.1800
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
G1 1 25.00
G2 16 -74.47
G3 20 59.89
実施例2は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3とからなる。また、至近へのフォーカシングに際して、第2レンズ群G2が光軸上を像側に向かって移動し、第1レンズ群G1と開口絞りSと第3レンズ群G3は、像面に対して固定されている。
第1レンズ群G1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、両凹形状の負レンズL12と両凸形状の正レンズL13とからなる接合レンズ、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL14と、両凸形状の正レンズL15と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL16と両凸形状のL17とからなる接合レンズとにより構成されている。また両凸形状の正レンズL15の物体側面と像側面の両面は所定の非球面形状となっている。
第2レンズ群G2は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL21と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22とにより構成されている。なお、負メニスカスレンズL21は負レンズLnに、正メニスカスレンズL22は正レンズLpにそれぞれ該当する。
第3レンズ群G3は、両凸形状のL31と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL32と、像側面が平面である負レンズL33とにより構成されている。また両凸形状の正レンズL31の物体側面と像側面の両面は所定の非球面形状となっている。