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▶ オンキヨーサウンド株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073434
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
H04R1/10 104B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183412
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】720009310
【氏名又は名称】オンキヨーサウンド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 武士
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BA02
5D005BA12
5D005BC00
(57)【要約】
【課題】種々の問題を生じることなく、十分な低音域の再生を可能とする手段を提供とすること。
【解決手段】イヤホン1は、低音域を再生するためのドライバー5と、ドライバー5の背面側を密閉するカバー3と、ドライバー5の前面側を覆うカバー4と、を備える。カバー4は、音響負荷部4aと、音響負荷部4aとドライバー5とによって形成される空間に連通し、外部に音を放音するための音導管4bと、を有する。イヤホン1は、さらに、中高音域を再生するためのドライバー6を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低音域を再生するための第1ドライバーと、
前記第1ドライバーの背面側を密閉する第1カバーと、
前記第1ドライバーの前面側を覆う第2カバーと、を備え、
前記第2カバーは、
音響負荷部と、
前記音響負荷部と前記第1ドライバーとによって形成される空間に連通し、外部に音を放音するための音導管と、を有することを特徴とするイヤホン。
【請求項2】
前記音導管における前記音響負荷部と略平行な断面が、放音方向に向かって、漸次的に変化することを特徴とする請求項1に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記第1ドライバーは、ダイナミック型であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記音響負荷部は、前記第1ドライバーの振動板、及び、エッジに対応する形状を有することを特徴とする請求項3に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記音響負荷部と、前記振動板、及び、前記エッジとは、等近距離であることを特徴とする請求項4に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記第2カバーの、前記音響負荷部と反対側に、第2ドライバーが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記第2カバーの、前記音響負荷部と反対側の面に、前記第2ドライバーを取り付けるためのガイドが設けられていることを特徴とする請求項6に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記第2ドライバーは、中高音域を再生するためのドライバーであることを特徴とする請求項6又は7に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記第2ドライバーは、バランスドアーマチュア型であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記音導管の、前記音響負荷部と略平行な断面積は、放音方向に向かって、漸次的に減少することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項11】
前記音導管に対応する位置に開口を有し、前記第1カバー、及び、前記第2カバーを覆う筐体をさらに備えることを特徴とする1~10のいずれか1項に記載のイヤホン。
【請求項12】
インナーイヤー型のイヤホンであることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般のイヤホンには、インナーイヤー型とカナル(耳栓)型との2タイプが存在する。インナーイヤー型イヤホン(例えば、特許文献1参照。)は、耳の表面の耳介と呼ばれる部分に、イヤホンのパーツを引っ掛けて使用されるタイプのイヤホンである。カナル型イヤホン(例えば、特許文献2参照。)は、耳栓型のイヤーピースを耳の中に入れるようにして装着され、使用されるタイプのイヤホンである。近年では、耳への装着感や高い遮音性による音楽への没入感が得られやすいことから、カナル型の方が主流となっている。
【0003】
しかしながら、カナル型の場合、遮音性が高くなる反面、外部の環境音が遮断されてしまうため、屋外等で使用する場合、非常に危険である。これらの問題を解決するために、最近では、外音取り込み機能を搭載したイヤホン、耳を塞がないイヤホンや骨伝導イヤホンのようなインナーイヤー型が販売されている。耳を塞がないイヤホンは、外耳道を塞いでいないため、ドライバーのF0(基本周波数)以下の帯域を鼓膜に伝えることが難しくなり、中高域寄りの音質になってしまう。
【0004】
インナーイヤー型イヤホンの中でも、比較的低域特性の優れたものとして、アップル社製の「EarPods」があるが、IEC規格に準拠したHATS(頭部:IEC60318-7/耳介:IEC60628-7)では、カナル型特性(図7参照。)のような弾性制御領域が存在しないため、一般的なスピーカーのように、質量制御領域のみに支配された特性となる(図8参照。)。そのため、製造者は、ドライバーの口径を大きくしたり、支持系のスティフネスを小さくしたりする等して、低域拡大に凌ぎを削っている。なお、図7に示す特性のドライバーの口径は、10mmであり、図8に示す特性のドライバーの口径は、14mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-222492号公報
【特許文献2】特開2019-145962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、口径を必要以上に大きくしてしまうと、耳への装着感が損なわれたり、総重量アップに伴う耳への負担が大きくなったりする恐れがある。また、支持系のスティフネスを小さくすると、ローリング等の耐入力低下につながってしまう。
【0007】
本発明の目的は、上述した種々の問題を生じることなく、十分な低音域の再生を可能とする手段を提供とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明のイヤホンは、低音域を再生するための第1ドライバーと、前記第1ドライバーの背面側を密閉する第1カバーと、前記第1ドライバーの前面側を覆う第2カバーと、を備え、前記第2カバーは、音響負荷部と、前記音響負荷部と前記第1ドライバーとによって形成される空間に連通し、外部に音を放音するための音導管と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、低音域を再生するための第1ドライバーと、第1ドライバーの背面側を密閉する第1カバーと、第1ドライバーの前面側を覆う第2カバーと、により、いわゆるケルトン型のウーハーが構成される。これにより、例えば、ドライバーの口径を大きくすることなく、十分な低音域の再生を行うことができる。
【0010】
また、第2カバーは、音響負荷部を有しているため、中低音域のレベルをアップさせることができる。
【0011】
第2の発明のイヤホンは、第1の発明のイヤホンにおいて、前記音導管における前記音響負荷部と略平行な断面が、放音方向に向かって、漸次的に変化することを特徴とする。
【0012】
第3の発明のイヤホンは、第1又は第2の発明のイヤホンにおいて、前記第1ドライバーは、ダイナミック型であることを特徴とする。
【0013】
第4の発明のイヤホンは、第3の発明のイヤホンにおいて、前記音響負荷部は、前記第1ドライバーの振動板、及び、エッジに対応する形状を有することを特徴とする。
【0014】
第5の発明のイヤホンは、第4の発明のイヤホンにおいて、前記音響負荷部と、前記振動板、及び、前記エッジとは、等近距離であることを特徴とする。
【0015】
第6の発明のイヤホンは、第1~第5のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第2カバーの、前記音響負荷部と反対側に、第2ドライバーが設けられていることを特徴とする。
【0016】
第7の発明のイヤホンは、第6の発明のイヤホンにおいて、前記第2カバーの、前記音響負荷部と反対側の面に、前記第2ドライバーを取り付けるためのガイドが設けられていることを特徴とする。
【0017】
第8の発明のイヤホンは、第6又は第7の発明のイヤホンにおいて、前記第2ドライバーは、中高音域を再生するためのドライバーであることを特徴とする。
【0018】
第9の発明のイヤホンは、第6~第8のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第2ドライバーは、バランスドアーマチュア型であることを特徴とする。
【0019】
第10の発明のイヤホンは、第1~第9のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記音導管の、前記音響負荷部と略平行な断面積は、放音方向に向かって、漸次的に減少することを特徴とする。
【0020】
第11の発明のイヤホンは、第1~第10のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記音導管に対応する位置に開口を有し、前記第1カバー、及び、前記第2カバーを覆う筐体をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
第12の発明のイヤホンは、第1~第11のいずれかの発明のイヤホンにおいて、インナーイヤー型のイヤホンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、十分な低音域の再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係るイヤホンを示す斜視図である。
図2】筐体内部のカバーを示す斜視図である。
図3】カバー、及び、内部を示す断面図である。
図4】カバーを示す斜視図である。
図5】本実施形態に係るイヤホンのHATS特性を示すグラフである。
図6】音響負荷部の有無を比較するためのグラフ
図7】カナル型特性を示すグラフである。
図8】インナーイヤー型特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るイヤホン1を示す斜視図である。イヤホン1は、インナーイヤー型のイヤホンである。イヤホン1は、ドライバー5を収容するカバー3、4を覆う筐体2を備えている。筐体2のユーザーの耳に挿入される部分には、開口2aが設けられている。開口2aは、後述する音導管4bに対応する位置に設けられている。ユーザーは、開口2aを耳に挿入するように、耳にイヤホン1を取り付け、イヤホン1を使用する。
【0025】
図2は、筐体2内部のカバー3、4を示す斜視図である。図3は、カバー3、4、及び、内部を示す断面図である。図4は、カバー4を示す斜視図である。図示するように、カバー3、4の内部に、ドライバー5が収容されている。ドライバー5(第1ドライバー)は、低音域を再生するためのドライバーである。ドライバー5は、例えば、ダイナミック型のドライバーである。ドライバー5の口径は、例えば、14mmである。ドライバー5において、振動板5aは、例えば、カーボンペーパーにより形成されている。また、エッジ5bは、例えば、TPUにより形成されている。なお、振動板5aは、特にカーボンペーパーに限定されず、例えば、セルロースナノファイバー、アルミニウム、マグネシウム等であってもよい。
【0026】
カバー3(第1カバー)は、ドライバー5の背面側を密閉する。カバー3は、断面視、扁平な略U字形状である。カバー4(第2カバー)は、ドライバー5の前面側を覆う。カバー4は、音響負荷部4a、音導管4b、ガイド4cを有する。音響負荷部4aは、カバー4において、ドライバー5と対向するように、設けられている。音響負荷部4aは、ドライバー5の振動板5a、及び、エッジ5bに対応する形状となっている。例えば、音響負荷部4aにおいて、振動板5a、及び、エッジ5bの凸状部分に対向する部分は、凹状となっている。上述のように、音響負荷部4aは、ドライバー5の振動板5a、及び、エッジ5bに対応する形状となっているため、音響負荷部4aと、振動板5a、及び、エッジ5bとは、等近距離となっている。
【0027】
音導管4b(ダクト)は、ドライバー5からの音を、外部に放音するためのものである。音導管4bの先端には、開口4dが設けられている。音導管4bは、音響負荷部4aとドライバー5とによって形成される空間(ドライバー前室)に連通している。音導管4bにおいて、音響負荷部4aと略平行な断面は、放音方向に向かって、漸次的に変化している。具体的には、音道管4bにおいて、音響負荷部4aと略平行な断面積は、放音方向に向かって、漸次的に減少している。上述したように、音響負荷部4aと、振動板5a、及び、エッジ5bとを、等近距離とし、ドライバー前室の容積を極めて小さくすることで、音を音導管4bから一気に放射させる構成となっている。
【0028】
カバー4の、音響負荷部4aと反対側に、ドライバー6(第2ドライバー)が設けられている(図1参照)。ドライバー6は、中高音域を再生するためのドライバーである。ドライバー6は、例えば、バランスドアーマチュア(BA)型のドライバーである。なお、中高音域を再生するドライバーとして、BA型のドライバーを例示したが、これに限らず、例えば、ダイナミック型のドライバーであってもよい。
【0029】
ガイド4cは、ドライバー6を取り付けるためのものであり、カバー4の、音響負荷部4aと反対側の面に設けられている。ガイド4cは、所定の間隔を開けて立設された2つの支持壁によって構成されており、ドライバー6は、2つの支持壁の間に配置される。
【0030】
本実施形態では、ドライバー5とカバー3、4とにより、いわゆるケルトン型ウーハーが構成されている。また、イヤホン1は、ダイナミック型のドライバー5と、BA型のドライバー6と、により、ハイブリッド型のインナーイヤホンとなっている。
【0031】
図5は、本実施形態に係るイヤホン1のHATS特性を示すグラフである。図5において、点線で示されているように、音響負荷部4aを備えたケルトン型ウーハーでは、バンドパス型フィルターのような特性となり、インナーイヤー型であっても、低音域拡大を図ることができる。このため、口径を必要以上に大きくしたり、支持系のスティフネスを小さくしたりするといった工夫は不要となる。また、F0以上では-6dB~12dB/octの間で減衰するため、ハイブリッド型であっても、ネットワークを介入させる必要はない。
【0032】
図6は、音響負荷部の有無を比較するためのグラフである。図示するように、音響負荷部がある場合、音響負荷部がない場合に比べて、中高音域のレベルがアップしていることがわかる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、低音域を再生するためのドライバー5と、ドライバー5の背面側を密閉するカバー3と、ドライバー5の前面側を覆うカバー4と、により、いわゆるケルトン型のウーハーが構成される。これにより、例えば、ドライバー5の口径を大きくすることなく、十分な低音域の再生を行うことができる。
【0034】
また、カバー4は、音響負荷部4aを有しているため、中低音域のレベルをアップさせることができる。
【0035】
また、本実施形態では、いわゆるケルトン型ウーハーにおいて、ドライバー5の振動板5a、及び、エッジ5bと同形状を有する音響負荷部4aを配置することで、振動板5aの動きに対して、ドライバー前室の空気が圧縮・膨張された状態を保ったまま音導管4a(ダクト)から一気に放射され、インナーイヤー型でも迫力のある重低音を実現できる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、イヤホンに好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0038】
1 イヤホン
2 筐体
2a 開口
3 カバー(第1カバー)
4 カバー(第2カバー)
4a 音響負荷部
4b 音導管
4c ガイド
4d 開口
5 ドライバー(第1ドライバー)
6 ドライバー(第2ドライバー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8