特開 2022-73436 イヤホン

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022073436

(43)【公開日】2022-05-17

(54)【発明の名称】イヤホン

(51)【国際特許分類】

   H04R 1/10 20060101AFI20220510BHJP

【ＦＩ】

H04R1/10 104Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】13

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020183414

(22)【出願日】2020-11-02

(71)【出願人】

【識別番号】720009310

【氏名又は名称】オンキヨーサウンド株式会社

(72)【発明者】

【氏名】山本 優一

【テーマコード（参考）】

5D005

【Ｆターム（参考）】

5D005BA02

5D005BA03

5D005BA08

5D005BA12

5D005BA16

(57)【要約】

【課題】構造が簡易で、また、設計の自由度が高いイヤホンを提供すること。
【解決手段】イヤホン１は、フロントケース２と、バックケース３と、フロントケース２内に配置されるバランスドアーマチュア５と、フロントケース２、及び、バックケース３内のバランスドアーマチュア５よりも背面側に、放音面が、バランスドアーマチュア５の背面と、対向しないように配置されるダイナミックトランスデューサー６と、フロントケース２、及び、バックケース３内に配置され、バランスドアーマチュア５と、ダイナミックトランスデューサー６の背面と、を隔離するインナーケース４と、を備える。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

正面側に位置する第１筐体と、
背面側に位置する第２筐体と、
前記第１筐体内に配置される第１トランスデューサーと、
前記第１筐体、及び、前記第２筐体内の前記第１トランスデューサーよりも背面側に、放音面が、前記第１トランスデューサーの背面と、対向しないように配置される第２トランスデューサーと、
前記第１筐体、及び、前記第２筐体内に配置され、前記第１トランスデューザーと、前記第２トランスデューサーの背面と、を隔離する内部筐体と、を備えることを特徴とするイヤホン。

【請求項2】

前記内部筐体は、前記第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、前記第１トランスデューサーの背面とを、同一空間内に隔離することを特徴とする請求項１に記載のイヤホン。

【請求項3】

前記第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、前記第２トランスデューサーから出力される音を外部に導くための音響通路とは、前記第１筐体内に共通して設けられていることを特徴とする請求項１又は２に記載のイヤホン。

【請求項4】

前記第１筐体と、前記内部筐体と、前記第２トランスデューサーと、によって、前記第１トランスデューサーが位置する第１筐体室が形成されることを特徴とする請求項１～３のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項5】

前記第１筐体と、前記第２筐体と、前記内部筐体と、前記第２トランスデューサーと、によって、前記第２トランスデューターの背面が位置する第２筐体室が形成されることを特徴とする請求項１～４のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項6】

前記第１トランスデューサーは、前記第２トランスデューサーから出力される音の放音方向に対して、傾斜して配置されることを特徴とする請求項１～５のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項7】

前記第１トランスデューサーの背面、及び、前記第２トランスデューサーの背面に、それぞれ、各トランスデューサーに信号を出力するための信号線が接続されていることを特徴とする請求項１～６のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項8】

前記第１筐体の先端は、前記音響通路を形成するノズルであることを特徴とする請求項１～７のいずれか１項の記載のイヤホン。

【請求項9】

前記音響通路と外部とを連通するためのノズル孔が前記ノズルに設けられていることを特徴とする請求項８に記載のイヤホン。

【請求項10】

前記ノズルの外周面に連結されるイヤーピースをさらに備えることを特徴とする請求項８又は９に記載のイヤホン。

【請求項11】

前記第１トランスデューサーは、バランスドアーマチュア型であることを特徴とする請求項１～１０のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項12】

前記第２トランスデューサーは、ダイナミック型であることを特徴とする請求項１～１１のいずれか１項に記載のイヤホン。

【請求項13】

カナル型であることを特徴とする請求項１～１２のいずれか１項に記載のイヤホン。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、イヤホンに関する。

【背景技術】

【0002】

イヤホンにおいて、音質の向上を目的として、１つの筐体に、複数のスピーカーを備えるものがある。特に、ダイナミックトランスデューサーとバックケースとを併用する、いわゆる、ハイブリッド型と称される構成は、低域高域再生に優れるダイナミックトランスデューサーと、中低域再生に優れるバランスドアーマチュアとが、互いに音域を補完することができることから、採用機会が多い構成である。図４、及び、図５は、従来のハイブリッド型のイヤホンを示す図である。図４に示すイヤホンは、ダイナミックトランスデューサー前面の音響通路に、バランスドアーマチュアの音響出口が露出する構成である。図５に示すイヤホンは、バランスドアーマチュアの設置位置の自由度を上げるために、バランスドアーマチュアに音響導管を備える構成である。

【0003】

図４、及び、図５に示す従来のハイブリッド型のイヤホンにおいては、音響通路に現れる音は、ダイナミックトランスデューサーから出力される音と、バランスドアーマチュアから出力される音と、の加算となる。両スピーカーは、ともに、低域再生に優れるため、両スピーカーの加算された音は、概して、低音が強過ぎる音色になる。最も簡単な対策は、フィルター回路を用いることだが、構造での工夫による改善を図った例がある。

【0004】

特許文献１では、ダイナミックトランスデューサーのみの構成ではあるが、音響通路とバックケースチャンバーとに通気路を設けることにより、低音の調整を図っている。ダイナミックトランスデューサーの正面（音響通路側）と背面（バックケースチャンバー側）で低域音波位相が逆であることを利用して、低域音波の相殺を発生させるものである。しかしながら、通気路の設置空間が必要なこと、及び、構造が複雑になるデメリットがある。また、特許文献２では、音響通路内にバランスドアーマチュアの全体を入れ込むことにより、低音の調整を図っている。バランスドアーマチュアは、ダイナミックトランスデューサーと同じく、音響出口の低域音波とは位相が逆になる低域音波を背面から放出しているため、音響出口側と背面側の低域音波の相殺を発生させるものである。しかしながら、バランスドアーマチュアの配置の自由度が低い。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【特許文献1】特開平０１－１０１７９５号公報

【特許文献2】特開２００９－２１９１２２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

上述したように、従来のハイブリッド型のイヤホンには、構造が複雑で、設計の自由度が低い等の問題があった。

【0007】

本発明の目的は、構造が簡易で、また、設計の自由度が高いイヤホンを提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0008】

第１の発明のイヤホンは、正面側に位置する第１筐体と、背面側に位置する第２筐体と、前記第１筐体内に配置される第１トランスデューサーと、前記第１筐体、及び、前記第２筐体内の前記第１トランスデューサーよりも背面側に、放音面が、前記第１トランスデューサーの背面と、対向しないように配置される第２トランスデューサーと、前記第１筐体、及び、前記第２筐体内に配置され、前記第１トランスデューザーと、前記第２トランスデューサーの背面と、を隔離する内部筐体と、を備えることを特徴とする。

【0009】

本発明では、内部筐体は、第１トランスデューザーと、第２トランスデューサーの背面と、を隔離している。すなわち、内部筐体は、第１トランスデューサーが位置する、音響通路が含まれる空間と、第２トランスデューサーの背面が位置する空間と、を隔離している。これにより、第２トランスデューサーの背面が位置する空間の状態が、音響通路内の状態に影響し難くなる。つまり、第２トランスデューサーの背面が位置する、第２筐体周辺の設計の自由度が高まる。

【0010】

また、第１トランスデューサーの背面を、第２トランスデューサーの放音面（正面）から外れたところに設置できるため、第１トランスデューサーへの配線が容易である（構造の容易化）。

【0011】

また、第２トランスデューサーの音響通路（ノズル）内部に、第１トランスデューサー全体を挿入する必要がないため、スピーカー配置の自由度が高い。

【0012】

このように、本発明によれば、構造が容易で、また、設計の自由度が高い。

【0013】

第２の発明のイヤホンは、第１の発明のイヤホンにおいて、前記内部筐体は、前記第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、前記第１トランスデューサーの背面とを、同一空間内に隔離することを特徴とする。

【0014】

本発明では、内部筐体は、第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、第１トランスデューサーの背面とを、同一空間内に隔離している。すなわち、内部筐体は、第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、第１トランスデューサーの背面とを、同一空間内に位置させている。第１トランスデューサーは、音響出口の低域音波とは位相が逆になる低域音波を背面から放出しているため、音響出口側と背面側の低域音波の相殺を発生させることができる。これにより、第１トランスデューサーのためのフィルター回路が不要となる。

【0015】

第３の発明のイヤホンは、第１又は第２の発明のイヤホンにおいて、前記第１トランスデューサーの音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路と、前記第２トランスデューサーから出力される音を外部に導くための音響通路とは、前記第１筐体内に共通して設けられていることを特徴とする。

【0016】

第４の発明のイヤホンは、第１～第３のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１筐体と、前記内部筐体と、前記第２トランスデューサーと、によって、前記第１トランスデューサーが位置する第１筐体室が形成されることを特徴とする。

【0017】

第５の発明のイヤホンは、第～第４のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１筐体と、前記第２筐体と、前記内部筐体と、前記第２トランスデューサーと、によって、前記第２トランスデューターの背面が位置する第２筐体室が形成されることを特徴とする。

【0018】

第６の発明のイヤホンは、第１～第５のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１トランスデューサーは、前記第２トランスデューサーから出力される音の放音方向に対して、傾斜して配置されることを特徴とする。

【0019】

本発明では、第１トランスデューサーが、第２トランスデューサーから出力される音の放音方向に対して、傾斜して配置されることで、第２トランスデューサーの放音面が、第１トランスデューサーの背面と、対向しないようになっている。

【0020】

第７の発明のイヤホンは、第１～第６のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１トランスデューサーの背面、及び、前記第２トランスデューサーの背面に、それぞれ、各トランスデューサーに信号を出力するための信号線が接続されていることを特徴とする。

【0021】

第８の発明のイヤホンは、第１～第７のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１筐体の先端は、前記音響通路を形成するノズルであることを特徴とする。

【0022】

第９の発明のイヤホンは、第８の発明のイヤホンにおいて、前記音響通路と外部とを連通するためのノズル孔が前記ノズルに設けられていることを特徴とする。

【0023】

第１０の発明のイヤホンは、第８又は第９のイヤホンにおいて、前記ノズルの外周面に連結されるイヤーピースをさらに備えることを特徴とする。

【0024】

第１１の発明のイヤホンは、第１～第１０のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第１トランスデューサーは、バランスドアーマチュア型であることを特徴とする。

【0025】

第１２の発明のイヤホンは、第１～第１１のいずれかの発明のイヤホンにおいて、前記第２トランスデューサーは、ダイナミック型であることを特徴とする。

【0026】

第１３の発明のイヤホンは、第１～第１２のいずれかの発明のイヤホンにおいて、カナル型であることを特徴とする。

【発明の効果】

【0027】

本発明によれば、構造が容易で、また、設計の自由度が高い。

【図面の簡単な説明】

【0028】

【図1】本発明の実施形態に係るイヤホンを示す図である。

【図2】本発明の実施形態に係るイヤホンを示す図である。

【図3】本発明の実施形態に係るイヤホン等の音圧を示す図である。

【図4】従来のハイブリッド型のイヤホンを示す図である。

【図5】従来のハイブリッド型のイヤホンを示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0029】

以下、本発明の実施形態について説明する。図１、及び、図２は、本発明の実施形態に係るイヤホン１を示す図である。イヤホン１は、耳栓型のイヤーピースを耳の中に入れるようにして装着され、使用されるカナル型のイヤホンである。図示するように、イヤホン１は、フロントケース２、バックケース３、インナーケース４、バランスドアーマチュア型トランスデューサー５、ダイナミック型トランスデューサー６等を備える。イヤホン１は、バランスドアーマチュア型トランスデューサー（以下、「バランスドアーマチュア」という。）５と、ダイナミック型トランスデューサー（以下、「ダイナミックトランスデューサー」という。）６と、を備えるハイブリッド型のイヤホンである。

【0030】

フロントケース２（第１筐体）は、イヤホン１の正面側、すなわち、イヤホン１から音が放音される放音面側に位置する。バックケース３（第２筐体）は、イヤホン１の背面側に位置する。フロントケース２とバックケース３とは、連結されており、フロントケース２とバックケース３とによって、イヤーピースを除いたイヤホン１の外形が規定されている。言い換えれば、フロントケース２とバックケース３とによって、イヤホン１のケーシング（筐体）が構成されている。

【0031】

バランスドアーマチュア型トランスデューサー５（第１トランスデューサー）は、フロントケース２内に配置されている。ダイナミック型トランスデューサー６（第２トランスデューサー）は、フロントケース２、及び、バックケース３内のバランスドアーマチュア５よりも背面側に配置されている。また、ダイナミックトランスデューサー６は、放音面（正面）が、バランスドアーマチュア５の背面と、対向しないように配置されている。バランスドアーマチュア５は、ダイナミックトランスデューサー６から出力される音の放音方向Ｅ（破線矢印方向）に対して、傾斜して配置されている。これにより、ダイナミックトランスデューサー６の放音面（正面）が、バランスドアーマチュア５の背面と、対向しないようになっている。バランスドアーマチュア５は、フロントケース２内部の壁に沿って配置されている。

【0032】

インナーケース４（内部筐体）は、フロントケース２、及び、バックケース３内に配置されている。インナーケース４は、バランスドアーマチュア５と、ダイナミックトランスデューサー６の背面と、を隔離している。また、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、バランスドアーマチュア５の背面とを、同一空間（後述するフロントケースチャンバー９）内に隔離している。すなわち、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、バランスドアーマチュア５の背面とを、同一空間（フロントケースチャンバー９）内に位置させている。バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、バランスドアーマチュア５の背面とは、同一空間（フロントケースチャンバー９）内に位置しているため、バランスドアーマチュア５の背面から出力される音は、音響通路１１に繋がっている。言い換えれば、フロントケースチャンバー９は、音響通路１１と繋がっている。

【0033】

フロントケース２と、インナーケース４と、ダイナミックトランスデューサー６と、によって、フロントケースチャンバー９（第１筐体室）が形成されている。すなわち、フロントケースチャンバー９は、フロントケース２と、インナーケース４と、ダイナミックトランスデューサー６と、によって、囲まれた空間である。バランスドアーマチュア５は、フロントケースチャンバー９内に位置している。

【0034】

また、フロントケース２と、バックケース３と、インナーケース４と、ダイナミックトランスデューサー６と、によって、バックケースチャンバー１０（第２筐体室）が形成されている。すなわち、バックケースチャンバー１０は、フロントケース２と、バックケース３と、インナーケース４と、ダイナミックトランスデューサー６と、によって、囲まれた空間である。ダイナックトランスデューサー６の背面は、バックケースチャンバー10内に位置している。ダイナミックトランスデューサー６は、フロントケース２とインナーケース４とによって支持されている。言い換えれば、ダイナミックトランスデューサー６は、フロントケース２とインナーケース４とに取り付けられている。フロントケース２とバックケース３とによって、フロントケースチャンバー９とバックケースチャンバー１０とが形成され、インナーケース４とダイナミックトランスデューサー６とによって、フロントケースチャンバー９とインナーケースチャンバー１０とが、分けられている。

【0035】

フロントケース２の先端は、後述する、音響通路１１を形成するノズル１２となっている。ノズル１２の外周面に、イヤーピース（不図示）が連結される。ノズル１２の外周面には、イヤーピースを連結するための凹部１３が設けられている。イヤーピースは、凹部１３に嵌合することで、ノズル１２３に連結される。また、ノズル１２３には、音響通路１１と外部とを連通するためのノズル孔１４が設けられている。ノズル１２３の延びる方向と、ダイナミックトランスデューサー６から出力される音の報音方向Ｅと、は一致している。

【0036】

イヤホン１には、イヤホン１に信号等を出力するためのケーブル７が接続されている。ケーブル７には、バランスドアーマチュア５、及び、ダイナミックトランスデューサー６に信号を出力するための信号線８が含まれている。信号線８は、それぞれ、バランスドアーマチュア５の背面、及び、ダイナミックトランスデューサー６の背面に接続されている。

【0037】

ここで、バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、ダイナミックトランスデューサー６から出力される音を外部に導くための音響通路１１とは、フロントケース２内に共通して設けられている。上述したように、バランスドアーマチュア５の背面から出力される音は、音響通路１１に繋がっているため、音響通路１１は、バランスドアーマチュア５の背面から出力される音を外部に導くための音響通路でもある。

【0038】

イヤホン１が組み立てられる（アセンブリされる）場合、フロントケース２に、バランスドアーマチュア５が設置された後、ダイナミックトランスデューサー６、及び、インナーケース４が設置される。

【0039】

図３は、人工耳で収録した、本実施形態に係るイヤホン１の音圧と、従来のイヤホン（図４）の音圧と、を示す図である。なお、本実施形態、従来ともに、フィルター回路を用いていない状態の結果であり、純粋に、機械的構造の効果を観察することができる。図３に示すように、実施形態の方が、1,000[Hz]以下の帯域で、音圧を低減できていることがわかる。

【0040】

以上説明したように、本実施形態では、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５と、ダイナミックトランスデューサー６の背面と、を隔離している。すなわち、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５が位置する、音響通路１１が含まれる空間と、ダイナミックトランスデューサー６の背面が位置する空間と、を隔離している。これにより、ダイナミックトランスデューサー６の背面が位置する空間の状態が、音響通路１１内の状態に影響し難くなる。つまり、ダイナミックトランスデューサー６の背面が位置する、バックケース３周辺の設計の自由度が高まる。

【0041】

また、バランスドアーマチュア５の背面を、ダイナミックトランスデューサー６の放音面（正面）から外れたところに設置できるため、バランスドアーマチュア５への配線が容易である（構造の容易化）。

【0042】

また、ダイナミックトランスデューサー６の音響通路１１（ノズル１２）内部に、バランスドアーマチュア５全体を挿入する必要がないため、スピーカー配置の自由度が高い。

【0043】

このように、本実施形態によれば、構造が容易で、また、設計の自由度が高い。

【0044】

また、本実施形態では、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、バランスドアーマチュア５の背面とを、同一空間（フロントケースチャンバー９）内に隔離している。すなわち、インナーケース４は、バランスドアーマチュア５の音響出口から出力される音を外部に導くための音響通路１１と、バランスドアーマチュア５の背面とを、同一空間（フロントケースチャンバー９）内に位置させている。バランスドアーマチュア５は、音響出口の低域音波とは位相が逆になる低域音波を背面から放出しているため、音響出口側と背面側の低域音波の相殺を発生させることができる。これにより、バランスドアーマチュア５のためのフィルター回路が不要となる。フィルター回路は、例えば、ハイパスフィルター回路である。

【0045】

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。

【0046】

上述の実施形態においては、イヤホン１は、バランスドアーマチュア５と、ダイナミックトランスデューサー６と、を備えるハイブリッド型のイヤホンであるが、２つのトランスデューサーを備えるイヤホンであれば、バランスドアーマチュアとダイナミックトランスデューサーとに限られない。

【産業上の利用可能性】

【0047】

本発明は、イヤホンに好適に採用され得る。

【符号の説明】

【0048】

１ イヤホン
２ フロントケース（第１筐体）
３ バックケース（第２筐体）
４ インナーケース（内部筐体）
５ バランスドアーマチュア（第１トランスデューサー）
６ ダイナミックトランスデューサー（第２トランスデューサー）
８ 信号線
９ フロントケースチャンバー
１０ バックケースチャンバー
１１ 音響通路
１２ ノズル
１４ ノズル孔

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】