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▶ オンキヨーサウンド株式会社の特許一覧

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  • 特開-加振器 図1
  • 特開-加振器 図2
  • 特開-加振器 図3
  • 特開-加振器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073437
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】加振器
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B06B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183415
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】720009310
【氏名又は名称】オンキヨーサウンド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 創
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA09
5D107AA16
5D107CC09
5D107CC10
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】過大振幅が原因となって生じる問題を解決可能とすること。
【解決手段】加振器1は、磁気回路2と、磁気回路2を軸方向に貫通する軸部材3と、軸部材3に対応した軸受4と、磁気回路2を振動させるためのばね部材5と、軸部材3と軸受4との間に設けられた磁性流体6と、を備える。軸部材3は、磁性体で形成され、軸受4は、非磁性体で形成されている。ばね部材5は、コイルドウェーブスプリングである。2つのばね部材5が、磁気回路2の軸方向の一方側と、他方側と、に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路と、
前記磁気回路を軸方向に貫通する軸部材と、
前記軸部材に対応した軸受と、
前記磁気回路を振動させるためのばね部材と、
前記軸部材と前記軸受との間に設けられた磁性流体と、
を備えることを特徴とする加振器。
【請求項2】
前記軸部材は、磁性体で形成され、
前記軸受は、非磁性体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加振器。
【請求項3】
前記ばね部材は、コイルドウェーブスプリングであることを特徴とする請求項1又は2に記載の加振器。
【請求項4】
2つの前記ばね部材が、前記磁気回路の軸方向の一方側と、他方側と、に設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の加振器。
【請求項5】
前記磁気回路は、外径を規定する外径側面に軸方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、
前記溝に嵌合する止め輪部材をさらに備え、
前記ばね部材は、前記溝に嵌合して固定される、前記止め輪部材に固定されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の加振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加振器に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、小型、高出力、且つ、耐久性に優れた加振器として、特殊コイルばね(コイルドウェーブスプリング)と軸受とを備えた加振器を出願している(特許文献1参照。)。図4は、コイルドウェーブスプリング102が用いられた従来の加振器101を示す図である。図4(a)は、加振器101の外観を示す図である。図4(b)は、加振器101の断面を示す図である。図4(c)は、図4(b)の一部を省略した図である。図4(d)は、コイルドウェーブスプリング102を示す図である。図4(c)に示すように、加振器101は、コイルドウェーブスプリング(特殊コイルばね)102、軸部材103、軸受104、磁気回路105等を備える。
【0003】
特許文献1に記載の加振器は、加振器の小型化における物理的な難点を解消した実用的な発明である。しかしながら、共振の先鋭度が急峻(相対的に制動成分が小さい)という特徴があるため、マスの過大振幅(共振時)による底当たり現象が発生しやすかった。そもそも、そのような状況においても、破損しない耐久性こそが優れた特徴であったが、底当たりの際、部品同士の衝突音は避けられず、音声再生における音質的な妨害要素となっていた。これは、加振器の扱いにくさとして、設計者を苦しめる要因ともなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-209315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の加振器は、過大振幅を原因とする問題を生じていた。
【0006】
本発明の目的は、過大振幅が原因となって生じる問題を解決可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の加振器は、磁気回路と、前記磁気回路を軸方向に貫通する軸部材と、前記軸部材に対応した軸受と、前記磁気回路を振動させるためのばね部材と、前記軸部材と前記軸受との間に設けられた磁性流体と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、軸部材と軸受との間に磁性流体が設けられている。これにより、加振器の変位が抑制されるため、従来の加振器で発生していた、過大振幅が原因となって生じる問題を解決することができる。
【0009】
第2の発明の加振器は、第1の発明の加振器において、前記軸部材は、磁性体で形成され、前記軸受は、非磁性体で形成されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明の加振器は、第1又は第2の発明の加振器において、前記ばね部材は、コイルドウェーブスプリングであることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の加振器は、第1~第3のいずれかの発明の加振器において、2つの前記ばね部材が、前記磁気回路の軸方向の一方側と、他方側と、に設けられていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明の加振器は、第1~第4のいずれかの発明の加振器において、前記磁気回路は、外径を規定する外径側面に軸方向と直交する周方向に沿って形成される溝を有し、前記溝に嵌合する止め輪部材をさらに備え、前記ばね部材は、前記溝に嵌合して固定される、前記止め輪部材に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来の加振器で発生していた、過大振幅が原因となって生じる問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る加振器を示す図である。
図2】加振器において発生する磁束等を示す図である。
図3】加振器の変位特性を示すグラフである。
図4】コイルドウェーブスプリングが用いられた従来の加振器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る加振器1を示す図である。本発明の実施形態に係る加振器1は、出願人による特願2018-193029(特開2019-209315号公報)の実施例3に係る加振器と比較すると、主に、磁性流体が設けられている点が、特願2018-193029(特開2019-209315号公報)の実施例3に係る加振器と相違する。このため、本明細書において、説明を省略している事項については、特開2019-209315号公報を参照されたい。
【0016】
図1に示すように、加振器1は、磁気回路2、軸部材3、軸受4、コイルドウェーブスプリング5、磁性流体6等を備える。この他、加振器1は、特開2019-209315号公報に記載されているように、加振器1の全体形状を規定するフランジ部、及び、フレームを備える。フランジ部、及び、フレームにより、加振器1のハウジング(筐体、ケーシング)が構成されている。
【0017】
加振器1は、ハウジングによって規定される内部空間内に、内磁型の磁気回路2を備える動電型の加振器である。加振器1は、軸方向に沿って、交流的に変化する駆動力を発生させることで、加振器1が載置される板材等を振動させる。軸部材3は、ハウジングの内部空間に配置されている。軸部材3の両端は、ハウジングに支持されている。具体的には、軸部材3の一端(上端)は、ハウジングを構成するフランジ部に支持され、軸部材3の他端(下端)は、ハウジングを構成するフレームに支持されている。軸部材3は、例えば、磁性の金属材料(磁性体)で形成される軸状の部材である。軸部材3は、例えば、所定の直径の丸棒のステンレス鋼である。軸部材3は、磁気回路2を軸方向に貫通している。
【0018】
内磁型の磁気回路2は、ヨークと、磁石であるマグネットと、プレートと、から構成されている。磁気回路2は、入力される電気音声信号を振動に変換するために、ボイスコイルが配置される磁気空隙を有する。円環状の磁気空隙は、円盤状のプレートの外周端面と、凹状のヨークの内周端面と、の間に規定され、マグネットからの磁力により、強い直流磁界が発生する。
【0019】
軸受4は、軸部材3に対応し、軸部材3に対して摺動する。軸受4は、略円筒形状の基体の中央に貫通孔が設けられ、軸部材3が摺動するように貫通する。軸受4は、例えば、非磁性の金属材料(非磁性体)で形成されている。ヨークと、マグネットと、プレートとは、それぞれ、軸部材8が貫通する貫通孔を有している。本実施形態では、ヨークに設けられる貫通孔に軸受4が固定されている。磁気回路2は、軸部材3、及び、軸受4により、中心保持され、軸方向にのみ振動可能である。
【0020】
加振器1は、磁気回路2とハウジングとを、弾性を有して、振動可能に連結する2つのコイルドウェーブスプリング5(ばね部材)を備える。2つのコイルドウェーブスプリング5のうち、一方のコイルドウェーブスプリング5は、磁気回路2の上側であって、フランジ部側に配置される。また、他方のコイルドウェーブスプリング5は、磁気回路2の下側であって、フレーム側に配置される。加振器1において、フレーム、及び、ボイスコイルが、板材等に対して、動かないように固定されるため、磁気回路2の磁気空隙に配置されるコイルで発生する駆動力は、相対的に磁気回路2を変位させるように振動させる。
【0021】
すなわち、軸部材3、及び、軸受4により、中心保持され、軸方向に摺動可能な磁気回路2は、2つのコイルドウェーブスプリング5に対して、弾性的に、支持・連結されるため、磁気回路2は、軸方向に振動可能になる。磁気回路2は、磁性材であるヨーク及びプレートと、磁石であるマグネットと、から構成されているため、比較的に重量が重くなる。従って、磁気回路2が振動するのにつれて、駆動力に対する反作用の力が作用し、板材等が振動する。
【0022】
コイルドウェーブスプリング5は、所定厚さ、所定幅のバネ用ステンレス鋼を材料とする板状鋼線を、軸方向に所定直径の螺旋状に多重に所定周余り巻回した圧縮コイルバネである。
【0023】
磁気回路2には、外径を規定する外径側面に軸方向と直交する周方向に沿って形成される溝が設けられており、溝に嵌合して固定される止め輪部材7にコイルドウェーブスプリング5が固定されている。具体的には、磁気回路2を構成するヨークの外径側面に、切削加工などにより形成することが容易な溝が設けられている。溝の幅及び深さは、嵌合して固定される止め輪部材7に応じて設定することができる。ヨークの製造後、ヨークには切削加工などにより溝を形成することができるため、ヨークの製造が容易になり、低コストにすることができる。
【0024】
止め輪部材7は、コイルドウェーブスプリング5を構成するのと同様の板状鋼線を用いて形成できる。例えば、本実施例の止め輪部材7は、コイルドウェーブスプリング5の弾性変形部の内径寸法よりも若干小さい内径寸法を有し、切れ目が1カ所設けられた略環状の部材として形成することができる。止め輪部材7を外側に広げるようにして磁気回路2を内部に挿入すれば、容易に溝に止め輪部材7を嵌合して固定させることができる。
【0025】
磁性流体6は、軸部材3と軸受4との間に設けられている。磁性流体6の粘性によって、最適な機械抵抗が得られる。軸部材3と軸受4とのわずかな隙間を満たす量の磁性流体6により、所望の機械抵抗が得られるため、費用対効果が高い。すなわち、コストパフォーマンスに優れる。
【0026】
例えば、軸部材と軸受とによる摺動部への潤滑材(グリス等)の付加は、普遍的な処置・技術である。しかしながら、長期的な観点では、潤滑材の消耗(飛散・偏り等)というリスクが避けられない。潤滑材の消耗は、加振器の性能の逓減を意味するため、時間経過とともに、製品の魅力が損なわれていくこととなる。一方、磁性流体であれば、必要な機械抵抗の付与はもちろんのこと、磁束による保持が可能となるため、磁性流体を保持しておきたい箇所のみに留めておくことができる(図2参照。)。
【0027】
磁性流体の保持には、漏れ磁束を用いる。漏れ磁束とは、磁気回路において本来あるべき空間に留めることができずに、有効ではない領域にあふれ出た磁束のことを示す。組み合わされる部品(軸部材、軸受)の磁性を最適化することで、漏れ磁束を保持用の磁束として有効活用することができる。これにより、部品、重量の増加を伴うことなく、目的が達成されるわけである。結果的に、普通の潤滑材の利用では実現できなかった長期安定性を、構造の複雑化を伴わずに獲得することができるわけである。
【0028】
図3は、加振器の変位特性を示すグラフである。横軸は、周波数[Hz]、縦軸は、変位[mm]を示す。図中の「original」は、磁性流体が付与されていない場合の変位である。図から、共振時に大振幅していることがわかる。「X06」は、ある粘性の磁性流体を付与した場合の変位である。図から、共振峰が低く抑えられていることがわかる。「X05」は、「X06」よりも粘性が低い磁性流体を付与した場合の変位を示している。結果として、「original」と「X06」との中間的な特性となった。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、軸部材3と軸受4との間に磁性流体6が設けられている。これにより、加振器1の変位が抑制されるため、従来の加振器で発生していた、過大振幅が原因となって生じる問題を解決することができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、加振器に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0032】
1 加振器
2 磁気回路
3 軸部材
4 軸受
5 コイルウェーブドスプリング(ばね部材)
6 磁性流体
7 止め輪部材
図1
図2
図3
図4