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特開2022-73452モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法
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  • 特開-モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法 図1
  • 特開-モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法 図2
  • 特開-モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法 図3
  • 特開-モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073452
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20220101AFI20220510BHJP
   H02K 1/17 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02K1/27 501M
H02K1/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183444
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】安藤 亜矢子
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA01
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622CB03
5H622PP01
5H622PP19
5H622QA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、マグネットの機械的強度を向上させることである。
【解決手段】本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法は、モータのステータ又はロータに設けられたマグネット(6)と、前記マグネット(6)の表面(6a)に設けられたポリウレア樹脂によるポリウレア樹脂層(7)とからなり、モータ用マグネットの機械的強度を従来よりも大幅に向上させる構成と方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのステータ又はロータ(1)に設けられたマグネット(6)と、前記マグネット(6)の表面(6a)に設けられたポリウレア樹脂によるポリウレア樹脂層(7)と、からなることを特徴とするモータ用マグネットの表面保護構造。
【請求項2】
前記マグネット(6)は、前記ロータ(1)の外周に設けられた複数のセグメントマグネット(4)又は筒状マグネット(6A) 又は前記ステータに設けられたステータ用セグメントマグネットからなることを特徴とする請求項1記載のモータ用マグネットの表面保護構造。
【請求項3】
モータのステータ又はロータ(1)に設けられた状態のマグネット(6)の表面(6a)に対して、ポリウレア樹脂を吹き付け又は塗布又は浸潰によって、ポリウレア樹脂層(7)を前記表面(6a)に形成することを特徴とするモータ用マグネットの表面保護方法。
【請求項4】
前記マグネット(6)は、前記ロータ(1)の外周に設けられた複数のセグメントマグネット(4)又は筒状マグネット(6A)又は前記ステータに設けられたステータ用セグメントマグネットからなることを特徴とする請求項3記載のモータ用マグネットの表面保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用マグネットの表面保護構造及びその方法に関し、特に、モータに用いられるマグネットの表面にポリウレア樹脂層を設けることにより、マグネットの機械的強度を上げ、マグネットの割れや欠け等を低減させるための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のマグネットの割れや欠けに対する強度を上げるためには、特許文献1から特許文献3に示されるように、いくつかの方法が提案されている。
すなわち、特許文献1のインナーロータモータおよびそれのロータの製造方法の場合、ロータ本体部の全外周面に多数個のセグメントマグネットを接着配設し、各セグメントマグネットの表面をエポキシ樹脂を含浸したテープで覆っていた。
【0003】
また、特許文献2のインナーロータモータ、そのロータ、およびロータ製造方法の場合、ロータコアの外周面に接着された複数個のマグネットの外周には、マグネット保護テープが巻き付けられることによって、マグネットの割れや欠けに対する強度を向上させるようにしていた。また、特許文献3のリニアDCブラシレスモータの場合、電着手段やエポキシ樹脂系塗料などにより、磁石破損塵粉発生防止薄膜を塗装した希土類系マグネット系からなる磁石を用いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-136692号公報
【特許文献2】特開2016-100974号公報
【特許文献3】実用平3-104084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマグネットの強度を上げるための方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の場合、エポキシを含浸したテープをマグネットの外周に巻回していたが、高速回転、例えば、18000回転/RPMになると、極めて大きい遠心力が作用し、高速回転には、マグネットに対しては、極めて大きい強度が要求されていた。
【0006】
また、特許文献2の場合、ロータコアの外周面に接着されたマグネットの外周には、マグネット保護テープが巻き付けられているが、前述のような高速回転になると、マグネットの割れや欠けを防止することは困難であった。
【0007】
また、特許文献3の場合、磁石破損塵粉発生防止薄膜を、マグネットの表面に塗布しているが、前述の高速回転には好適ではなかった。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、モータに用いられるマグネットの表面にポリウレア樹脂を設けることにより、マグネットの割れや欠け等を低減させるようにしたモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造は、モータのステータ又はロータに設けられたマグネットと、前記マグネットの表面に設けられたポリウレア樹脂によるポリウレア樹脂層と、からなる構成であり、また、前記マグネットは、前記ロータの外周に設けられた複数のセグメントマグネット又は筒状マグネット又は前記ステータに設けられたステータ用セグメントマグネットからなる構成であり、また、本発明によるモータ用マグネットの表面保護方法は、モータのステータ又はロータに設けられた状態のマグネットの表面に対して、ポリウレア樹脂を吹き付け又は塗布又は浸潰によって、ポリウレア樹脂層を前記表面に形成する方法であり、また、前記マグネットは、前記ロータの外周に設けられた複数のセグメントマグネット又は筒状マグネット又は前記ステータに設けられたステータ用セグメントマグネットからなる方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法は、モータのステータ又はロータに設けられたマグネットと、前記マグネットの表面に設けられたポリウレア樹脂によるポリウレア樹脂層と、からなることにより、モータに設けるマグネットの機械的な強度を、ポリウレア樹脂を設けていない従来のマグネットに比べると、大幅に向上させることができ、あらゆる環境下におけるモータの駆動を確保できる。
また、前記マグネットは、前記ロータの外周に設けられた複数のセグメントマグネット又は筒状マグネット又は前記ステータに設けられたステータ用セグメントマグネットからなることにより、あらゆるモータに用いられるあらゆる形状のマグネットの強度を向上させ、モータの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態によるモータ用マグネットの表面保護構造におけるセグメントマグネットを用いたロータを示すための斜視図である。
図2図1のセグメントマグネットの表面にポリウレア樹脂層が形成された状態を示すための横断面図である。
図3図1の他の形態を示す筒状マグネットを用いたロータを示す斜視図である。
図4図3のロータの筒状マグネットの外周に、ポリウレア樹脂層を形成した状態を示すための横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法は、モータに用いられるマグネットの表面にポリウレア樹脂層を設けることにより、マグネットの機械的強度を上げ、マグネットの割れや欠け等を低減させることである。
【実施例0013】
以下、図面と共に本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、図示しないモータ内に、回転軸2を介して回転自在に設けられるロータであり、このロータ1の回転軸2に設けられたロータヨーク3の外周には、多数のセグメントマグネット4(断面扇形)が、接着剤等で固定されている。
隣接する前記セグメントマグネット4間には、前記ロータヨーク3に貼り付けて設けられた状態では、軸方向に沿って形成された多数の溝5が形成され、各セグメントマグネット4によってマグネット6が形成されている。
【0014】
前記マグネット6の外周には、周知のポリウレア樹脂が、塗布、噴霧、貼り付け及び浸潰の何れかによって設けられ、ポリウレア樹脂層7が形成されている。
前記マグネット6の外周に設けられたポリウレア樹脂層7のポリウレア樹脂は、各セグメントマグネット4間の溝5内に入り込んで充填された状態で設けられている。
従って、前記マグネット6の外周に設けられたポリウレア樹脂層7は、前記マグネット6の表面全てを覆うように構成されているため、前記各マグネット6の強度は、マグネット6のみの場合、前述のマグネットの表面をエポキシ樹脂等で覆った構成と比べると、その強度は大幅に向上している。
【0015】
次に、図3で示されるものは、図1のロータ1の他の形態であり、前記マグネット6は、図4で示されるように、円筒状に形成され、この筒状マグネット6Aの表面6aには、図示しない治具又は成形機を用いて円筒状のポリウレア樹脂層7が形成されている。
従って、前記マグネット6の強度は、前述のように、従来構成のエポキシ等を用いた構成と比べると、大幅に向上している。
尚、図3及び図4の構成は、図1及び図2の構成と等しい部分には、同一符号を付してその説明は省略している。
【0016】
前記ポリウレア樹脂は、周知のように、その特徴は、強度と柔軟性であり、コンクリート並の強度を持ちながら、そのグレードによっては、400%以上の伸長率を誇るものもあり、その柔軟性がもたらす強度は、軍事施設の防爆対策として用いられるほどのものである。
また、その施工法は極めて簡単で、スプレーによる塗布によって100平方メートル/1日の施工が可能で、マグネットに施した場合には、マグネットの割れや欠け等に絶大な保護、絶大な外部衝撃に対する防止力を発揮するものである。
また、このポリウレア樹脂は、対薬品性にもすぐれ、水中、油中、ガス中においても、マグネットの保護が完全に行われ、また、過酷な屋外環境下でもマグネットの保護は完全に行われる。
従って、耐薬品腐食性、耐爆性及び耐摩耗性にすぐれた特性を発揮することができる。
【0017】
また、図1のマグネット6は、その全面にポリウレア樹脂層7を、スプレー等によって塗布して設けることにより、マグネット6全面をポリウレア樹脂層7で覆っている状態を示しているが、前記マグネット6の一部を図示しない相手方へ取付けるための取付面として用いる場合は、この取付面には、ポリウレア樹脂層7を設けなくても、前述の全面形成の時と同様の強度をもつことができる。
【0018】
また、前述のマグネット6の強度が向上するのは、ポリウレア樹脂層7を設けていない時の前記マグネット6の強度よりも向上していることを示しており、前記ポリウレア樹脂は、イソシアネートとアミンが反応して生成されるウレア結合を主体とする化合物で、固化する前は溶融物である。
また、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性、弾性や引張り強度等にすぐれ、物性が非常に安定している。
また、硬化までの時間も短く安定した施工性もあるため、ポリウレア樹脂の被膜はコンクリートや金属のライニングとして利用される場合が多く、モータ等のマグネットに用いられることは、前述したように最適であると云える。
【0019】
また、本発明による前述のマグネット6は、セグメント型円筒型の形状で構成されているが、マグネット6の面としては、その一部を除き、マグネット6全体がポリウレア樹脂層7で覆われている。
さらに、前述の実施の形態では、ロータ1のマグネット6のみについて述べたが、図示しないモータのステータのマグネットについても、前述のように、ポリウレア樹脂を用いることにより、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によるモータ用マグネットの表面保護構造及びその方法は、モータに用いるマグネットを、ポリウレア樹脂層を設けて、マグネットの強度を向上させることができるため、ポリウレア樹脂層を設けたマグネットを用いるモータの品質及び信頼性を著しく向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ロータ
2 回転軸
3 ロータヨーク
5 溝
6 マグネット(4セグメントマグネット)
6A 筒状マグネット
6a 表面
7 ポリウレア樹脂層
図1
図2
図3
図4