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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073469
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】射出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/38 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B29C45/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183468
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】山守 勝也
(72)【発明者】
【氏名】西村 一平
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH17
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK32
4F202CK35
4F202CK52
4F202CK53
4F202CK67
4F202CK84
4F202CM02
4F202CM03
4F202CM09
(57)【要約】
【課題】成形品の剛性が低い場合であってもゲート接続部分において歪、変形、割れ等が生じ難いような、新たなゲートカット手法を組み入れた射出成形装置を提供する。
【解決手段】 ゲートGの内壁面の一部を形成する押当部4がゲートGの開口周辺で樹脂成形体100を押し付ける一方、樹脂成形体100と一体につながった形でゲートGを含む樹脂流路内に残留する樹脂残留体200に対し押出阻止部5がキャビティ2側への押し出しを妨げることで、樹脂成形体100と樹脂残留体200とが切断される。押出阻止部5によりキャビティ2側への押し出しが不可の形で残された樹脂残留体200は、所定の回転軸線Z周りに回転させることで、押出阻止部5から離脱させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとキャビティとの間に形成される成形空間に溶融樹脂を射出して冷却固化することにより樹脂成形体を成形する射出成形装置であって、
前記成形空間に対しコア側からキャビティ側に向けて開口するゲートの内壁面の一部を形成し、その開口周辺で前記樹脂成形体に対しコア側で対面するように位置する押当部と、
キャビティとコアが型開きした状態にて前記押当部をキャビティ側に押し当てる形で前記樹脂成形体をキャビティ側に押し出す第一押出手段と、
前記成形空間へと至る前記ゲートを含む樹脂流路に残留し、前記樹脂成形体の成形に伴い冷却固化される樹脂残留体に対し、キャビティ側への押し出しを妨げる形状をなす押出阻止部と、
を備え、前記樹脂成形体を、前記第一押出手段によってキャビティ側に押し出すことにより、前記押出阻止部によってキャビティ側への押し出しが阻止されている前記樹脂残留体から分離させ、コアから離型させるとともに、
その離型の後、前記樹脂成形体から分離した前記樹脂残留体を前記押出阻止部と共にキャビティ側に押し出す第二押出手段と、
前記第二押出手段によってキャビティ側に所定距離だけ押し出された前記樹脂残留体を、キャビティとコアの型開き方向に延びる所定の回転軸線周りで所定回転方向に回転させる回転手段と、
を備え、前記押出阻止部が、当該回転によって前記樹脂残留体から離脱可能な形状をなしていることを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記回転手段は、前記樹脂残留体に対し前記回転軸線周りを一体回転可能に係合した回転軸部を、その回転軸線周りに回転させる請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記回転軸部と、その回転軸部が貫通配置させるコアの貫通部とには、前記樹脂残留体を前記第二押出手段が前記所定距離だけ押し出した後にさらに押し出す際に、その押し出しに伴い互いを前記回転軸線周りで所定回転方向に相対回転させる回転ガイド部が設けられており、
前記回転手段は、前記第二押出手段と、前記回転軸部と前記貫通部とに設けられた前記回転ガイド部と、を有する請求項2に記載の射出成形装置。
【請求項4】
前記第一押出手段によって前記樹脂成形体が押し出されているときに、その樹脂成形体と共に前記樹脂残留体がキャビティ側に押し出されないよう、前記押出阻止部をキャビティとは逆側に付勢する付勢手段を備える請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のパネル部材には、例えば所定方向に長いもの等の大物部品がある。こうした大物部品を成形する場合、多点ゲートからの樹脂射出がなされることが多い。しかしながら、多点ゲートの場合は、ゲート内に残留する樹脂残留体と成形品とのつながりを断つようカットして双方を分離するゲートカット作業が、ゲートの数だけ必要となる。ゲートカット作業は、型開きした後になされる作業であり、カットのための専用治具やカットするための時間が必要となるから、ゲートが多いほど手間がかかるという課題がある。これに対し特許文献1の技術によれば、成形品の押し出しの際にゲートが自動的にカットされるため、成形後のゲートカット作業の手間を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-14211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、成形品の剛性が低い場合に、ゲート接続部分において歪、変形、割れが生じる可能性があった。具体的には、特許文献1において図3に示されているように、成形品を押し出す2つの押付部10がゲートを挟むような位置関係を有しており、それぞれがゲートから離れた位置にある。このため、剛性の低い成形品では、成形品を押し出す際にゲート付近を凹ませる形で曲がる撓み変形を生じ、さらにはその曲がり変形部分で白化を生じる等の問題が生じた。
【0005】
なお、特許文献1の図5A図5Eやそれに対応する図については、あくまで模式図であり、説明容易化のために押付部10の位置が、図3のような実際の位置とは異なって図示されている。ただし、これら模式図においても、押付部10がゲート直近位置を押し付けてはいない。つまり、仮に図5A図5Eのような位置関係であっても、成形品に撓み変形を生じる可能性があった。
【0006】
本発明の課題は、成形品の剛性が低い場合であってもゲート接続部分において歪、変形、割れ等が生じ難いような、新たなゲートカット手法を組み入れた射出成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の射出成形装置は、
コアとキャビティとの間に形成される成形空間に溶融樹脂を射出して冷却固化することにより樹脂成形体を成形する射出成形装置であって、
前記成形空間に対しコア側からキャビティ側に向けて開口するゲートの内壁面の一部を形成し、その開口周辺で前記樹脂成形体に対しコア側で対面するように位置する押当部と、
キャビティとコアが型開きした状態にて前記押当部をキャビティ側に押し当てる形で前記樹脂成形体をキャビティ側に押し出す第一押出手段と、
前記成形空間へと至る前記ゲートを含む樹脂流路に残留し、前記樹脂成形体の成形に伴い冷却固化される樹脂残留体に対し、キャビティ側への押し出しを妨げる形状をなす押出阻止部と、
を備え、前記樹脂成形体を、前記第一押出手段によってキャビティ側に押し出すことにより、前記押出阻止部によってキャビティ側への押し出しが阻止されている前記樹脂残留体から分離させ、コアから離型させるとともに、
その離型の後、前記樹脂成形体から分離した前記樹脂残留体を前記押出阻止部と共にキャビティ側に押し出す第二押出手段と、
前記第二押出手段によってキャビティ側に所定距離だけ押し出された前記樹脂残留体を、キャビティとコアの型開き方向に延びる所定の回転軸線周りで所定回転方向に回転させる回転手段と、
を備え、前記押出阻止部が、当該回転によって前記樹脂残留体から離脱可能な形状をなしていることを特徴とする。
【0008】
上記本発明によれば、押出部が、ゲートの内壁面の一部を形成するとともに樹脂成形体に対しコア側に回り込んで対面するように位置している。このため、押出部は、第一押出手段によるキャビティ側への押し出しのときに、樹脂成形体のゲート直近位置を押すことができる。ゲート直近位置で成形品が押されることにより、従来のような撓み変形を生じにくい。
【0009】
また、上記本発明によれば、ゲート内を含む樹脂残留体は、押出阻止部によってキャビティ側への押し出しが阻止される。これにより、成形品の押し出しの際に自動的にゲートカットすることができる。そしてその後は、残された樹脂残留体を排出するために、まずは第二押出手段により、樹脂残留体と押出阻止部とを、上記の押し出し阻止状態を保持したまま、例えば樹脂残留体がPL面を超えるまで所定距離だけ押し出す。押出阻止部は、その樹脂残留体に対しキャビティ側への押し出しを不可とするが、型開き方向に延びる所定の回転軸線周りの回転は可能な形状をなすから、次はこの回転軸線周りで樹脂残留体を回転させることで、樹脂残留体を押出阻止部から分離する。この後は、ロボットアーム等で、樹脂残留体を適宜回収すればよい。このように、ゲートカットのために設けられた押出阻止部は、キャビティ側に押し出すのではなく、回転という押し出し方向とは別方向への移動によって樹脂残留体から分離できるから、樹脂残留体を金型から容易に排出できる。
【0010】
前記回転手段は、前記樹脂残留体に対し前記回転軸線周りを一体回転可能に係合した回転軸部を、その回転軸線周りに回転させるようにできる。この構成によれば、樹脂残留体をキャビティ側に押す押当部として回転軸部を用いる。この回転軸部は、樹脂残留体に対し回転軸線周りに一体回転できるように食い込む。このため、回転手段は、この回転軸部を回転させるだけの簡単な構成で実現できる。
【0011】
前記回転軸部と、その回転軸部が貫通配置させるコアの貫通部とには、前記樹脂残留体を前記第二押出手段が前記所定距離だけ押し出した後にさらに押し出す際に、その押し出しに伴い互いを前記回転軸線周りで所定回転方向に相対回転させる回転ガイド部が設けられており、前記回転手段は、前記第二押出手段と、前記回転軸部と前記貫通部とに設けられた前記回転ガイド部と、を有するようにできる。この構成によれば、第二押出手段が樹脂残留体を押し付けていくだけで、樹脂残留体が自動的に回転し、押出阻止部から分離できる。
【0012】
前記第一押出手段によって前記樹脂成形体が押し出されているときに、その樹脂成形体と共に前記樹脂残留体がキャビティ側に押し出されないよう、前記押出阻止部をキャビティとは逆側に付勢する付勢手段を備えることができる。樹脂成形体の成形直後、樹脂残留体は樹脂残留体とつながっているため、樹脂成形体がキャビティ側に押し出されるときには、連れて樹脂残留体も押し出される可能性があるが、付勢手段が押出阻止部を確実にコア側に止めるため樹脂残留体の押し出しを防ぐことができ、確実にゲートカットを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例である射出成形装置により成形された樹脂成形体を示した平面図。
図2図1のA-A断面図。
図3図1の射出成形装置の型開き直後のコアを平面視により示した模式図。
図4図1の射出成形装置を用いた射出成形方法を、図3のB-B断面を用いて簡略的に示した模式図。
図5図4に続く図。
図6図5に続く図。
図7図6に続く図。
図8図7に続く図。
図9図8に続く図。
図10図9に続く図。
図11】回転軸部先端のランナー押当部の形状を簡略的に示した斜視図。
図12図8を、平面視を用いてより簡略的に示した模式図。
図13図9を、平面視を用いてより簡略的に示した模式図。
図14図12のC部分拡大図。
図15】ゲート付近に残留した樹脂残留体を図14のD1部分(a)と、E1方向視(b)と、F1-F1断面(c)とを拡大して示した図。
図16】本発明の変形例において、図12のC部分に相当する部分を示した拡大図。
図17】ゲート付近に残留した樹脂残留体を図17のD2部分(a)と、E2方向視(b)と、F2-F2断面(c)とを拡大して示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施例の射出成形装置1を用いて成形される樹脂成形体100である。ここでの樹脂成形体100は、車両用外装部品(例えばモール)であって、所定方向(図1の上下方向)に長手状に延び出す長手状部材(ここではパネル部材)である。この樹脂成形体100は、図2の断面図に示すように、意匠面をなす主表面101aを有した成形体主部101と、成形体主部101の一端からその成形体主部101の主裏面101b側に屈曲する形で延び出す屈曲端部102と、を有した屈曲形状をなす。成形体主部101の主表面101aから連続する屈曲端部102における表面102aも意匠面をなしている。
【0016】
射出成形装置1は、図3及び図4に示すように、コア3とキャビティ2との間に成形空間9が内部に形成される金型10と、第一押出手段40と、第二押出手段50と、回転手段70と、を備える。また、金型10は、コア3とキャビティ2と共に、コア3側に押当部4(成形体押当部)及び押出阻止部5を有する。
【0017】
金型10は、図4及び図5に示すように、コア3とキャビティ2との間(成形空間9)に成形される樹脂成形体100に対しその主表面101aに面して位置する第一型をなすキャビティ2と、その主表面101aの裏側の主裏面101bに面して位置する第二型をなすコア3と、を備える。ここでの成形空間9は、成形体主部101を成形する主部成形空間91と屈曲端部102を成形する屈曲端部成形空間92と、が連通する成形空間9が内部に形成される。ここでの成形空間9は、図3に示すように、同形状の樹脂成形体100を2つ同時に成形できるよう、互いの近い側で屈曲端部102を対向させる形で横方向に並んで形成される。
【0018】
また、金型10は、図3図5に示すように、成形空間9内に射出される溶融樹脂の流路(樹脂流路)となるよう、ゲートG及びランナーLをコア3側に有する。金型10は、成形空間9にゲートGから溶融樹脂を射出して冷却固化することにより樹脂成形体100を成形する一方で、ゲートG及びランナーLでは、残留した溶融樹脂が樹脂成形体100の成形に伴う冷却固化により樹脂残留体200として成形され、内部に残る。
【0019】
ゲートGは、成形空間9に至る樹脂流路を形成し、成形空間9と連通する開口を有する。ここでのゲートGは、図3に示すように、1つの成形空間9に対しその長手方向(図3の上下方向)に複数(ここでは3つ)設けられる。また、図4において横に並ぶ2つの成形空間9に対する各ゲートGは、図3に示すように、長手方向(図3の上下方向)における同じ位置にそれぞれ形成される。各ゲートGは、図4及び図5に示すように、屈曲端部成形空間92のうち成形される屈曲端部102の先端面102cと対向する位置に、成形空間9に対しコア3側からキャビティ2側に向けて開口(図4及び図5の上方向に向けて開口)する。
【0020】
押当部4は、図4に示すように、コア本体30と共にゲートGを形成するコア3のゲート形成部をなす。押当部4はゲートGの内壁面の一部を形成し、コア本体30はそれ以外のゲートGの内壁面を形成し、ゲートGはそれらの対向間に形成される。また、押当部4は、樹脂成形体100(先端面102c)に対しコア3側で対面するように位置して成形空間9の内壁面の一部(符号4c)を形成している。具体的にいえば、押当部4は、ゲートGの開口の縁から続く成形空間9の内壁面の一部(4c)を形成している。
【0021】
第一押出手段40は、図6に示すように樹脂成形体100の成形後、キャビティ2とコア3が型開きした状態において、押当部4(押付部ともいえる)をキャビティ2側(図6の上方向)に押し当てる形(押し付ける形)で、樹脂成形体100をキャビティ2側に押し出す。ここでの第一押出手段40は、押出プレート41と、押出軸部42と、電動や油圧等といった周知の駆動源43(図4参照)と、を有し、その駆動源43からの駆動力に基づいて押出プレート41をキャビティ2側に向けて移動できる。具体的には、第一押出手段40は、押出プレート41をキャビティ2側に所定の第一距離dだけ移動させる。これにより、押出軸部42がキャビティ2側に押し出され、その押出軸部42が押当部4をキャビティ2側に押し出され、その押当部4によって樹脂成形体100がキャビティ2側に押し出される。その結果、押当部4が樹脂成形体100の一端面(先端面102c)をキャビティ2側へ押す形になり、樹脂成形体100をコア3から離脱(離型)させることができる。コア本体30には、押出軸部挿通孔34が型開き方向(図4の上下方向)に貫通形成されており、押出軸部42が挿通配置されている。押出軸部42は、押出軸部挿通孔34から突出する一端側にて突出して押出プレート41と対面・当接する一方、他端側にてボルトやナット等の締結部材によって押当部4が一体に固定されている。
【0022】
なお、上記の第一距離dは、樹脂成形体100と樹脂残留体200との切断(ゲートカット)が確実に生じる距離として設定されていればよい。
【0023】
ランナーLは、金型10内においてゲートGに対し成形空間9とは逆側で連通し、ゲートGと共に成形空間9に至る樹脂流路を形成する。ここでのランナーLは、図3において横に並ぶ2つの成形空間9の間に位置し、それら成形空間9の長手方向(図3の上下方向)において同位置にあるゲートGの中間点Mを中心とした回転対称形状をなす。これはゲートGも同様であり、ゲートGとランナーLからなる樹脂流路、及びその内部に残留して樹脂成形体100の成形に伴い冷却固化される形で成形される樹脂残留体200は、上記中間点M(後述する回転軸線Z)を中心とした回転対称形状をなす。ここでは、ランナーLの中間点Mにおいて、キャビティ2側からスプルー(図示省略)が接続する。
【0024】
図4に示すように、ランナーLの中間点M(図3参照)を含むランナー中間部LMには、その空間内にコア3側から回転軸部71の先端(先端部71A)が進入している。回転軸部71は、キャビティ2とコア3の型開き方向(図4の上下方向)に延びる所定の軸線Zに沿って延びる棒状をなし、その軸線Zは上記中間点Mを通過する(図3参照)。回転軸部71は、樹脂残留体200(図5参照)と回転軸線Z周りにおいて一体回転可能となるよう、その先端(71A)が樹脂残留体200に対し係合している。ここでの回転軸部71は、先端(71A)が図11に示すように先細りする角柱状(ここでは四角柱状)に形成され、樹脂残留体200がそれを取り囲むようにして成形され、樹脂残留体200に対し食い込んだ状態となる。樹脂残留体200とこれに食い込んだ先端(71A)は、樹脂残留体200と回転軸部71とを回転軸線Z周りにおいて一体回転可能な係合状態を形成している。コア本体30には、図4に示すように、回転軸部挿通孔37(貫通部)が型開き方向(図4の上下方向)に貫通形成され、回転軸部71が挿通配置されている。回転軸部71は、一端側にて回転軸部挿通孔37から突出して押出プレート41と所定の第一距離dをおいて対面する一方、他端側には上記先端(71A)が形成されている。
【0025】
図4及び図6に示すように、ゲートG及びランナーLを含む樹脂流路には、流路内で成形される樹脂残留体200のキャビティ2側への押し出しを妨げるように押出阻止部5が進入する形で配置される。押出阻止部5は、コア3側に設けられ、樹脂残留体200の一部201(押出阻止係止部:図6参照)に対しキャビティ2側に回り込む楔形状をなし、これにより、樹脂残留体200のキャビティ2側への移動・押し出しを阻止している。ここでの押出阻止部5は、キャビティ2とコア3の型開き方向(図4及び図6の上下方向)に延びる棒状の付勢軸部51の先端に設けられる。コア本体30には、付勢軸部挿通孔35が型開き方向に貫通形成され、付勢軸部51が挿通配置されている。付勢軸部51は、一端側にて付勢軸部挿通孔35から突出して押出プレート41と所定の第一距離d(図4参照)をおいて対面する一方、他端側には押出阻止部5が形成される。
【0026】
また、付勢軸部51の押出阻止部5を含む他端側(キャビティ2側)が、キャビティ2側へ押し出される力を受けた時に、その逆の一端側に向けて引き込むように付勢する付勢手段52(ここではばね部材)が設けられる。これにより、樹脂残留体200がキャビティ2側に押し出されても、この付勢手段52の付勢力がそれに対抗し、押出阻止部5が樹脂残留体200のキャビティ2側への押し出しを阻止する。
【0027】
第二押出手段50は、図7に示すように、樹脂成形体100をコア3から離脱させた後(離型後)に、樹脂残留体200を押出阻止部5と共に(ここでは同時に)キャビティ2側(図7の上方向)に押し出す。ここでの第二押出手段50は、押出プレート41と、付勢軸部51と、回転軸部71と、駆動源43(図4参照)と、を有し、駆動源43の駆動力に基づいて押出プレート41をキャビティ2側に移動できる。具体的には、第一押出手段40によって第一距離dだけキャビティ2側に移動した押出プレート41を、さらに所定の第二距離e(図8参照)だけキャビティ2側に移動させる。これにより、押出プレート41によって付勢軸部51及び回転軸部71がキャビティ2側に押し出される。押し出された付勢軸部51は、その先端(ランナー押当部)を樹脂残留体200のランナーLの両端LN付近(ゲートG付近)に押し当てる形で樹脂残留体200を押し出す。他方、押し出された回転軸部71は、その先端(ランナー押当部)で樹脂残留体200のランナー中間部LM内の部分に押し当てる形で樹脂残留体200を押し出す。それらの結果、図8に示すように、樹脂残留体200をコア本体30から離脱させる。
【0028】
なお、図4に示すように、付勢軸部51と回転軸部71とを連結する連結部材8がコア3側に設けられる。押出軸部42は、連結部材8を貫通するように配置される。連結部材8によって一体化された付勢軸部51と回転軸部71とは、型開き方向において押出プレート41に対し所定の第一距離d(図4参照)を離して位置することにより、付勢軸部51及び回転軸部71は、押出軸部42よりも遅れてキャビティ2側に押し出される。その結果、押当部4による樹脂成形体100のキャビティ2側への押し出し(図6図7)が先に生じ、それに一定期間遅れて付勢軸部51及び回転軸部71による樹脂残留体200のキャビティ2側への押し出し(図7図8)が生じる。そして、その一定期間の間(先の押し出しの期間中)に、樹脂成形体100と樹脂残留体200との分離・切断(ゲートカット)が生じる。この一定期間の遅れ・遅延を生じさせるのは、押出プレート41に対し第一距離d(図4参照)を離して付勢軸部51及び回転軸部71を配置した構造である。このようにして構成される遅延機構53(図4参照)は、第二押出手段50に含まれる遅延手段であり、これにより、押出プレート41の移動に基づいて生じる第一押出手段40による押し当て・押し出しに対し、同じ押出プレート41の移動に基づいて生じる第二押出手段50による押し当て・押し出しを、遅延させることができる。
【0029】
回転手段70は、図8に示すように、第二押出手段50によってキャビティ2側に所定の第二距離e(所定距離)だけ押し出された樹脂残留体200を、キャビティ2とコア3の型開き方向に延びる所定の回転軸線Z周りで所定回転方向に回転させる。ここでの回転手段70は、回転軸部71と、第三押出手段60と、回転軸部71及び回転軸部挿通孔37に設けられた回転ガイド部79、39と、を有する。第三押出手段60は、押出プレート41と、駆動源43(図4参照)と、を有しており、駆動源43の駆動力に基づいて押出プレート41をキャビティ2側に移動させることができる。
【0030】
具体的には、回転手段70は、第二押出手段50によってキャビティ2側に第二距離eだけ移動した押出プレート41を、第三押出手段60によってキャビティ2側にさらに押し出す(移動させる)。そのさらなる押し出し(移動)に伴い互い、回転ガイド部79、39によって、回転軸部71を回転軸線Z周りで所定回転方向Rに所定角度だけ回転させる(図12及び図13参照)。ここでの回転ガイド部79は、図4に示すように、円柱状の回転軸部71の外周に型開き方向に延びる形で形成されるガイド溝79であり、回転ガイド部39は、そのガイド溝79に進入する形で配置されるようコア3(ここではコア本体30)の固定位置に設けられたガイドピン39である。
【0031】
ガイドピン39は、回転軸部71のキャビティ2側への押し出しに伴いガイド溝79に沿って移動する。回転軸部71の外周面に形成されるガイド溝79は、第一押出手段40によって樹脂成形体100がキャビティ2側に押し出される直前位置の状態においてガイドピン39が進入する位置を開始位置(図6参照)とすると、その開始位置から、第二押出手段50によって樹脂残留体200がキャビティ2側に押し出されて第二距離eを移動して樹脂残留体200がPL面を越えた中間位置(図8参照)まで、型開き方向をコア3側に向かって直線的に形成される。これにより、樹脂成形体100がキャビティ2側に押し出され、樹脂残留体200がPL面を越えるまでの間、ガイドピン39が設けられるコア3(コア本体30)に対し、ガイド溝79が形成される回転軸部71は非回転状態が維持される。
【0032】
ところが、ガイド溝79は、中間位置(図8参照)から先においては、型開き方向をコア3側に向かって周方向に向けて曲がる形で設けられる。これにより、樹脂残留体200がPL面を越えた先では、ガイドピン39が設けられるコア3(コア本体30)に対し、ガイド溝79が形成される回転軸部71が回転する。その回転方向Rは、ガイド溝79の曲がり方向によって決定され、その回転角度は、曲がった先の周方向位置によって決定される。ここでのガイド溝79は、樹脂残留体200がPL面を越えた先で、図11に示す所定回転方向Rに所定角度(ここでは90度)だけ回転するように形成される。なお、ここでのガイド溝79は、曲がりが終了したその先で、型開き方向をコア3側に向かって直線的にわずかに延びる形で終了位置に達するよう形成されている。
【0033】
以下、本実施例における射出成形方法について具体的に説明する。
【0034】
まずは図4に示す型締めされた金型10の成形空間9内にランナーL及びゲートGを介して溶融樹脂が射出され、冷却固化される。これにより、図5に示すように、成形空間9内に樹脂成形体100が成形される(成形ステップ)。また、この成形と同時に、ランナーL及びゲートGを含む樹脂流路内にも樹脂残留体200が成形される(成形ステップ)。成形された樹脂残留体200は、樹脂成形体100と一体につながっている。
【0035】
これらの成形後は、図6に示すように、キャビティ2とコア3を離間させる型開きが実行される(型開きステップ)。これにより、コア3上に樹脂成形体100が露出する。
【0036】
次は図6から図7へと示すように、樹脂成形体100の突き出し・押し出しが実行される。ここでは、キャビティ2とコア3が型開きした状態で、第一押出手段40が押当部4をキャビティ2側に押し出す(成形体押出ステップ)。
【0037】
具体的には、第一押出手段40は、駆動源43(図4参照)の駆動力によって押出プレート41をキャビティ2側に第一距離d(図4参照)だけ押し出す。これにより押出軸部42がキャビティ2側に押し出され、その押し出しにより押出軸部42の先端の押当部4が樹脂成形体100をキャビティ2側に押し出す。ところが、樹脂成形体100は樹脂残留体200と一体につながっており、その樹脂残留体200は押出阻止部5によってキャビティ2側への押し出しを妨げられている。このため、樹脂成形体100と樹脂残留体200との接続部分(ゲートGの開口付近)において切断(ゲートカット)が生じ、切り離された樹脂成形体100のみがキャビティ2側へ押し出される。樹脂成形体100を押し出す押当部4は、ゲートGの内壁を形成するゲートGの開口に近い部位であり、その押当部4が樹脂成形体100を押し出すことになるから、従来のように、樹脂成形体100のゲートGとの接続部分において歪、変形、割れ等が生じ難い。
【0038】
この切断(ゲートカット)に伴い樹脂成形体100は、図7から図8へと示すように、コア3から離型する。離型後には、樹脂成形体100から分離した樹脂残留体200と、押出阻止部5とを、第二押出手段50が同時にキャビティ2側に押し出す(残留体押当ステップ)。
【0039】
具体的には、第二押出手段50は、駆動源43(図4参照)の駆動力によって、第一押出手段40によってキャビティ2側に第一距離dだけ押し出された押出プレート41(図7参照)を、キャビティ2側にさらに第二距離e(図8参照)だけ押し出す。第一押出手段40によってキャビティ2側に第一距離d(図4参照)だけ押し出された押出プレート41は、図7に示すように、付勢軸部51及び回転軸部71の基端と当接する位置に達している。この当接位置に達した押出プレート41は、キャビティ2側にさらに押し出されることにより、付勢軸部51及び回転軸部71を(押出軸部42と共に)キャビティ2側へ押し出し、それらの押し出しにより付勢軸部51及び回転軸部71の先端(符号5、71A)が樹脂残留体200をキャビティ2側に押し出す(図8参照)。
【0040】
なお、第二距離eは、樹脂残留体200が後述する回転を生じたときにコア3と干渉しない位置となるよう設定されている。ここでの第二距離eは、樹脂残留体200全体がキャビティ2とコア3の分割面PLよりもキャビティ2側へ押し出される距離となるよう設定されている。
【0041】
第二押出手段50によってキャビティ2側に所定距離だけ押し出された樹脂残留体200は、図8から図9へと、図12から図13へと示すように、押出阻止部5から樹脂残留体200が離脱し、キャビティ2側への抜けが可能となるように、回転手段70が回転軸線Z周りで回転方向Rに向けて所定角度だけ回転させる(回転ステップ)。
【0042】
具体的には、回転手段70は、第二押出手段50によってキャビティ2側に第二距離e(図8参照)だけ押し出された押出プレート41を、図8から図9へと示すように、第三押出手段60によってキャビティ2側にさらに押し出すことにより付勢軸部51及び回転軸部71を(押出軸部42と共に)キャビティ2側に押し出す。回転軸部71は、第一及び第二押出手段40、50によるキャビティ2側への押し出しの際、コア3(コア本体30)から突出するガイドピン39が外周面に直線状に設けられたガイド溝79に進入した状態を維持する形で、その押し出し方向に移動する。このため、回転軸部71は回転軸線Z周りにおいて非回転に維持されていた(図6図7図8)。ところが、第三押出手段60による押し出し(図8図9)の際には、ガイド溝79がその押し出し方向に向かうに従い外周面を所定の周方向に曲がっていく曲線形状をなすから、回転軸部71は、図12から図13へと示すように、回転軸線Z周りにおいて所定回転方向に所定角度(90度)回転する。
【0043】
この回転により、図9及び図13に示すように、樹脂残留体200に対してキャビティ2側への移動を阻止していた押出阻止部5から、樹脂残留体200が離脱する。押出阻止部5から離脱した樹脂残留体200は、図10に示すように、キャビティ2側への移動が可能となり、回転軸部71の先端(71A)から取り外すことができる。このため、この回転の後は、自然落下やロボットアームによる回収等の周知の手法によって回収される(回収ステップ)。
【0044】
最後に押出阻止部5の形状について具体的に説明する。押出阻止部5は、図15(b)に示すように、樹脂残留体200の一部201に対しキャビティ2側(図上側)に回り込む楔形状をなし、この楔形状部201により、樹脂残留体200のキャビティ2側への移動・押し出しを阻止している。図4に示すように、ここでの楔形状部201はゲートGの直下に位置にしており、これに隣接して係止する押出阻止部5が樹脂成形体100の押し出しの力に対し対抗している。一方で、押出阻止部5は、図14に示すように、樹脂残留体200が回転軸線Z周りを回転方向Rに回転することにより離脱可能な形状をなしている。
【0045】
ここでの押出阻止部5は、図15(b)に示すように、楔形状部201が回転方向R側に形成される。図15(a)及び図15(b)に示すように、楔形状部201の係止面201fは、上端位置f1が回転方向R側、下端位置f2が回転方向Rとは逆側に位置しており、上端位置f1から下端位置f2に向かって回転方向R側へと傾斜して広がる平坦面として形成されている。このため、樹脂残留体200は、回転方向Rとは逆方向への回転が禁止された、一方向回転可能な形をなしている。
【0046】
以上、本発明の実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施例において一部の構成要件を省略する、さらには他の構成要件を追加する等、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
【0047】
以下、上記した実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0048】
上記実施例において、樹脂残留体200は、ゲートG及びランナーL内を含む一体の樹脂体であったが、ゲートGとランナーLとスプルー(図示無し)内を含む一体の樹脂体であってもよい。
【0049】
上記実施例において、回転軸部71の先端(71A)は、ランナー中間部内LMに進入する形で配置され、その周囲を取り囲む形で樹脂残留体200が形成されることにより、樹脂残留体200に対し一体回転可能な係合状態とされているが、成形された樹脂残留体200に対し、回転軸部71が第二押出手段50によって押し出されることによりその先端(71A)が食い込み、樹脂残留体200に対し一体回転可能な係合状態とされてもよい。
【0050】
上記実施例において、第一押出手段40と第二押出手段50と第三押出手段60は、いずれも押出プレート41を移動させる共通の機構を利用した単一の遅延機能付きの押出手段(主押出手段)として形成されている。さらにいえば、回転手段70に第三押出手段60が含まれているため、遅延機能及び回転機能付きの押出機構(主押出手段)として形成されているともいえる。しかしながら、それぞれの押出手段40、50、60及び回転手段70が異なる別の機構として形成され、各対象をそれぞれのタイミングで押し出す、回転させるといった構成でもよい。
【0051】
上記実施例において、回転手段70は、溝とピンによるガイド構造によって回転軸部71のキャビティ2側への押し出しに連動して回転する機械式の機構であったが、第二押出手段50による押し出し完了後にモータ等によって回転軸部71を所定方向に所定角度だけ回転させる電動式のものでもよい。この回転の際、上記実施例の第三押出手段60による押し出し・移動を伴う必要は無く、押し出し・移動の無い形で回転する構成でもよい。
【0052】
上記実施例において、押出阻止部5は、樹脂残留体200のキャビティ2側への移動・押し出しを阻止するが、回転手段70による樹脂残留体200の回転によって当該樹脂残留体200が離脱可能となる形状であれば、その形状は上記実施例と異なっていてもよい。
【0053】
例えば押出阻止部5は、図16及び図17に示すように形成できる。この押出阻止部5は、図17(c)に示すように、樹脂残留体200の一部である楔形状部201に対し回転半径方向の外側又は内側(ここでは内側:図17(c)の左側)にあって、キャビティ2側(図上側)に回り込む楔形状をなす。ここでの楔形状部201は、図17(a)に示すように、係止面201rは、上端位置r1が回転半径方向外側(図右側)、下端位置r2が回転半径方向内側(図左側)にあり、回転軸線Z(図16参照)上の所定位置を中心とする球面状をなす。これにより、樹脂残留体200は、回転軸線Z周りに回転することで、押出阻止部5から離れ、キャビティ2側への抜けが可能になる。なお、この実施例では、所定回転方向Rとは逆方向に回転しても樹脂残留体200は押出阻止部5から離れることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 射出成形装置
2 キャビティ
3 コア
30 コア本体
37 回転軸部挿通孔(貫通部)
39 ガイドピン(回転ガイド部)
4 押当部
40 第一押出手段
41 押出プレート
42 押出軸部
5 押出阻止部
50 第二押出手段
51 付勢軸部
52 付勢手段
53 遅延機構(遅延手段)
60 第三押出手段
70 回転手段
71 回転軸部
71A 回転軸部の先端部
79 ガイド溝(回転ガイド部)
100 樹脂成形体
200 樹脂残留体
G ゲート
L ランナー
PL 分割面
Z 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17