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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073486
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】建築物の通気ダクト用断熱壁材
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20220510BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F16L59/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183505
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】393012068
【氏名又は名称】三立化工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】八幡 伸行
(72)【発明者】
【氏名】中澤 元宏
(72)【発明者】
【氏名】江水 友弘
(72)【発明者】
【氏名】野上 泰照
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宣
【テーマコード(参考)】
3H036
3L080
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB13
3H036AB24
3H036AC02
3L080AE01
(57)【要約】
【課題】所望の壁形状に成形しやすく、かつ自立して保形可能であり、かつ軽くて、ある程度の脱水性を有する通気ダクト用断熱壁材を提供する。
【解決手段】断熱壁材2は、建築物の通気ダクト1の流路に沿う所定の壁形状に成形された断熱成形体10を備えている。断熱成形体10は、ガラス繊維の解繊体11aが積み重ねられて圧縮された積重圧縮体11と、積重圧縮体11内に拡散されて解繊体11aどうしを接合する無機バインダ硬化物12とを含む。断熱成形体10における積重圧縮11体の密度は、190kg/m~370kg/mである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の通気ダクトにおける断熱壁材であって、
前記通気ダクトの流路に沿う所定の壁形状に成形された断熱成形体を備え、前記断熱成形体が、ガラス繊維の解繊体が積み重ねられて圧縮された積重圧縮体と、前記積重圧縮体内に拡散されて前記解繊体どうしを接合する無機バインダ硬化物とを含み、
前記断熱成形体における前記積重圧縮体の密度が、190kg/m~370kg/mであることを特徴とする通気ダクト用断熱壁材。
【請求項2】
当該通気ダクト用断熱壁材の両面を当て板で挟み、ボルトを貫通させて20Nmの締め付けトルクを付与したときの減厚度合が、60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の通気ダクト用断熱壁材。
【請求項3】
当該通気ダクト用断熱壁材における、実質完全吸水時の重量に対する、吸水後の脱水開始から25時間経過後の重量減少割合が、温度20℃~30℃、相対湿度60%RH~80%RHにおいて、6%超であることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気ダクト用断熱壁材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に設けられる通気ダクト用の断熱壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に建築物の厨房排気ダクト、空調ダクト、煙突などの通気ダクトには、耐熱や保温用の断熱材が設けられている。この種の通気ダクト用断熱材は、ガラス繊維フェルトやケイ酸カルシウムによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-112329号公報
【特許文献2】特開2020-003105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス繊維フェルト製の通気ダクト用断熱材は、所望の壁形状に成形しにくく、成形したとしても、自立してその壁形状を保持させるのは難しい。
ケイ酸カルシウム製の通気ダクト用断熱材は、比較的密度が高く重い。また、水分を吸収した後の脱水性に劣り、乾燥するのに時間がかかる。
本発明は、かかる事情に鑑み、所望の壁形状に成形しやすく、かつ自立して保形可能であり、かつ軽くて、脱水性も確保できる通気ダクト用断熱壁材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、建築物の通気ダクトにおける断熱壁材であって、
前記通気ダクトの流路に沿う所定の壁形状に成形された断熱成形体を備え、前記断熱成形体が、ガラス繊維の解繊体が積み重ねられて圧縮された積重圧縮体と、前記積重圧縮体内に拡散されて前記解繊体どうしを接合する無機バインダ硬化物とを含み、
前記断熱成形体における前記積重圧縮体の密度が、190kg/m~370kg/m程度であることを特徴とする。
これによって、所望の壁形状に成形しやすく、かつ自立して保形可能であり、かつ軽量で、ある程度の脱水性も確保できる通気ダクト用断熱壁材が得られる。
【0006】
当該通気ダクト用断熱壁材の両面を当て板で挟み、ボルトを貫通させて20Nmの締め付けトルクを付与したときの減厚度合が、60%以下であることが好ましい。これによって、断熱壁材の耐締付力ひいては自立保形性を確実に確保できる。断熱壁材の耐締付力ひいては自立保形性の確保の観点からは、前記密度が250kg/m超370kg/m程度以下であることがより好ましい。
当該通気ダクト用断熱壁材における、実質完全吸水時の重量に対する、吸水後の脱水開始から25時間経過後の重量減少割合が、温度20℃~30℃、相対湿度60%RH~80%RHにおいて、6%超であることが好ましく、8%以上であることがより好まししく、9%以上であることが一層好ましい。これによって、断熱壁材の脱水性を確保できる。断熱壁材の軽量化の観点又は脱水性確保の観点からは、前記密度が190kg/m程度以上200kg/m未満であることがより好ましい。
実質完全吸水時であるから、断熱壁材が完全に吸水した段階に限らず、ほぼ完全に吸水した段階でもよく、具体的には完全吸水状態の90%程度以上、吸水した段階であればよい。通常、当該断熱壁材を水に漬けると数分でほぼ完全に吸水した状態になり、それ以後、吸水を継続しても、吸水による重量増大はほとんど起きない。
【0007】
前記解繊体が積み重ねられた圧縮前の積重体の密度は、100kg/m~200kg/m程度であることが好ましい。
前記積重圧縮体には、厚み方向へ延びる筋状部が面内方向に分散して多数形成されており、各筋状部においては前記解繊体が互いに絡み合っていることが好ましい。
前記厚み方向は、断熱壁材における内側面(前記流路を向く面)と外側面を結ぶ方向を言う。前記面内方向は、前記厚み方向と直交する面に沿う方向、又は前記内側面もしくは前記外側面に沿う方向を言う。好ましくは、前記積重体は、前記厚み方向へ圧縮されることによって前記積重圧縮体となる。
【0008】
前記通気ダクト用断熱壁材が、前記断熱成形体の表面を覆う表層シートを更に備え、前記表層シートが、前記表面の無機バインダ硬化物によって前記断熱成形体と直接接着されていることが好ましい。前記表面は、前記断熱成形体の外面でもよく内面ないしは流路画成面でもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所望の壁形状に成形しやすく、かつ自立して保形可能であり、かつ軽量で、ある程度の脱水性も確保できる通気ダクト用断熱壁材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建築物用通気ダクトの断面図である。
図2図2は、前記建築物用通気ダクトの斜視図である。
図3図3は、前記建築物用通気ダクトの分解斜視図である。
図4図4は、前記建築物用通気ダクトの断熱壁材の拡大断面構造を解説的に示す解説図である。
図5図5(a)~(h)は、前記断熱壁材の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2は、建築物用通気ダクト1を示す。建築物は、家屋でもよく、オフィスビルでもよく、工場でもよい。建築物用通気ダクト1は、厨房排気ダクトでもよく、空調ダクトでもよく、煙突(排煙ダクト)でもよい。
建築物用通気ダクト1は、例えば円筒形になっている。
【0012】
図1及び図3に示すように、建築物用通気ダクト1は、断熱壁材2と、内面部材3を備えている。断熱壁材2は、一対の断熱成形体10と、表層シート4を含む。断熱成形体10は、建築物用通気ダクト1の壁形状に合わせて成形されている。例えば、各断熱成形体10は、半割円筒形になっている。2つの断熱成形体10が合わさり、円筒形状の断熱壁材2が形成されている。
図示は省略するが、断熱成形体10どうしの接合手段としては、粘着テープや接着剤が用いられている。
【0013】
図4に示すように、断熱成形体10は、積重圧縮体11と、無機バインダ硬化物12を含む。積重圧縮体11は、ガラス繊維の解繊体11aを多数、積み重ねた積重体11xを圧縮したものである。
前記ガラス繊維は、SiOを主成分として含み、その他、Al、Fe、TiO、CaO、NaO等を含み得る。ガラス繊維におけるSiOの含有量は、好ましくは50~98wt%程度 、より好ましくは60~95wt%程度、一層好ましくは70~95wt%程度である。
前記ガラス繊維の解繊体11aは、好ましくは長繊維であり、その平均長さは通常10mm以上、好ましくは20mm以上、より好ましくは30mm 以上、一層好ましくは50mm 以上である。解繊体11aの平均直径は、通常2~30μm程度 、好ましくは5~30μm程度、より好ましくは5~20μm程度、一層好ましくは5~15μm程度である。
解繊体11aが積み重ねられた圧縮前の積重体11x(図5(d))の密度は、好ましくは100kg/m~200kg/m程度である。
断熱成形体10における積重圧縮体11の密度は、190kg/m~370kg/m程度である。
【0014】
無機バインダ硬化物12は、積重体11xに塗布・含浸された無機バインダ12a(図5(e))が硬化したものである。無機バインダ硬化物12を介して解繊体11aどうしが接合されている。無機バインダ硬化物12は、断熱成形体10の全域にほぼ均一に分散されている。
好ましくは、無機バインダ12aは、塗布・含浸時には液状体であり、加熱によって不可逆的に硬化する熱硬化性無機バインダである。
無機バインダ12aの主成分としては、シリカ、珪酸アルミニウムその他の粘土鉱物が挙げられる。シリカと珪酸アルミニウムの重量配合比は、例えばシリカ:珪酸アルミニウム=50:50~10:90である。
さらに硬化前の無機バインダ12aには水その他の液体も含まれている。水等の液体の配合量によって、無機バインダ12aの粘性を調整できる。珪酸アルミニウムが含水珪酸アルミニウムであってもよい。
【0015】
断熱成形体10に占める解繊体11aの割合は、好ましくは80wt%~90wt%程度である。
断熱成形体10に占める無機バインダ硬化物12の割合は、好ましくは10wt%~20wt%である。
断熱成形体10において、解繊体11a及び無機バインダ硬化物12を除いた残部は、ボイド(空隙部ないしは空気層)によってほとんど占められている。断熱成形体10におけるボイド(空隙部)の体積割合は、好ましくは0.1vol%~10vol%程度であり、より好ましくは、0.5vol%~5vol%程度である。ボイドは、断熱成形体10の内部にほぼ均一に分散されている。
【0016】
積重圧縮体11ひいては断熱成形体10には、多数の筋状部13が形成されている。これら筋状部13は、それぞれ断熱成形体10の厚み方向(径方向、図4の上下方向)へ延びるとともに、互いに断熱成形体10の面内方向(周方向及び軸長方向、図4の左右及び紙面直交方法)に分散して配置され、好ましくはほぼ均一間隔で配置されている。各筋状部13においては、解繊体11aが互いに絡み合っている。筋状部13の配置間隔d13は、好ましくはd13=0.1mm~10mm程度であり、より好ましくはd13=0.5mm~5mm程度である。
【0017】
断熱成形体10の外周面(表面)は、アルミガラスクロス等の表層シート4によって覆われている。表層シート4は、断熱成形体10の外周面に現れた無機バインダによって断熱成形体10と直接接着されて一体化されている。別途、表層シート4を接合するための接着剤は用いられていない。
断熱壁材2の両面を鋼板からなる当て板で挟み、ボルトを貫通させて20Nmの締め付けトルクを付与したときの減厚度合は、好ましくは60%以下である。
断熱壁材2における、実質完全吸水時の重量に対する、吸水後の脱水開始から25時間経過後の重量減少割合は、温度20℃~30℃、相対湿度60%RH~80%RHの環境において、好ましくは6%超、より好ましくは8%以上、一層好ましくは9%以上である。
【0018】
断熱壁材2の内周面には内面部材3が設けられている。内面部材3は、例えば円形断面の金属管によって構成されている。内面部材3の内部空間が、厨房排気エア、空調エア、煙突排ガスなどの流通対象流体の流路となっている。
前記金属管としては、亜鉛めっき鋼板のスパイラル管でもよく、ステンレススチール管でもよい。内面部材3の材質は、金属に限らず、樹脂、セラミックス、紙、木材等であってもよい。内面部材3が、表層シート4と同様のシートによって構成され、断熱成形体10の内周面(表面)に現れた無機バインダによって断熱成形体10と直接接着されて一体化されていてもよい。
【0019】
前記の建築物用通気ダクト1は、次のようにして製造される。
図5(a)に示すように、材料となるガラス繊維2aを用意する。
図5(b)に示すように、ガラス繊維2aを解繊して、解繊体11aを得る。該解繊体11aを堆積させることで、積重体11xを形成する。
図5(c)に示すように、多数の針5aを有するニードルパンチ装置5によって、積重体11xにニードルパンチ(針穿)を施す。針5aには突起状の返し5cが形成されている。針5aの高速往復動によって、解繊体11aが互いに絡み合う。これによって、図5(d)に示すように、積重体11xがマット状になるとともに、積重体11xの厚み方向へ延びる多数の筋状部13が形成される。
この段階の積重体11xは、保形性が無く、重力その他の外力によって容易に変形され得る。
【0020】
続いて、図5(e)に示すように、前記積重体11xの両面(同図において上面及び下面)に無機バインダ12aを塗布する。塗布は、好ましくはローラで行う。スプレーで塗布してもよい。
塗布に代えて、積重体11xを無機バインダ槽に漬けることで、積重体11x内に無機バインダ12aを含浸させてもよい。この場合、積重体11xの上面側の部分及び下面側の部分をそれぞれ積重体11xの厚みの半分以下だけ無機バインダ槽に漬けることが好ましい。積重体11xの厚み方向の中央部分には、無機バインダ12aの非含浸層が形成されることが好ましい。これによって、積重体11x内にボイド(空気層)を確保できる。 このため、塗布又は含浸から後記圧縮成形までの段階においては、積重体11x中の無機バインダ12aの含有率が、積重体11xの両面側部分(上面側部分及び下面側部分)では高く、積重体11xの厚み方向の中央部分では低い。また、積重体11x中のボイド(空隙部)の存在率が、積重体11xの両面側部分では低く、積重体11xの厚み方向の中央部分では高い。
【0021】
図5(f)に示すように、塗布又は含浸後の積重体11xの上面(通気ダクト1の外周
側を向く表面)には、表層シート4を貼り付けておく。表層シート4は、積重体11xの上面に現れた無機バインダ12aによって直接的に積重体11xと接着される。
【0022】
図5(f)に示すように、別途、断熱成形体10の仕上がり形状(半割筒形状)に対応する型面6a,7aを有する金型6,7を用意する。金型6,7の少なくとも一方にはヒータ8が組み込まれている。図において、ヒータ8は、複数本の棒状ヒータによって構成されているが、これに限らず、プレートヒータなどであってもよい。
【0023】
前記積重体11xを金型6,7間にセットする。
続いて、図5(g)に示すように、金型6,7を閉じて、積重体11xをヒータ8によって加熱しながら加圧して圧縮成形する。加圧には、エアシリンダを用いることが好ましい。
前記加熱及び圧縮成形工程における加圧力は、0.1MPa~0.7MPa程度が好ましい。加熱温度は、100℃~400℃程度が好ましい。成形時間(前記加圧力の印加及び加熱の継続時間)は、3分~30分程度が好ましい。
これによって、積重体11xが厚み方向に圧縮され、積重圧縮体11となる。好ましくは、積重圧縮体11の厚みが、圧縮前の積重体11xの厚みの2分の1~5分の4程度になるように圧縮成形される。
また、加熱によって、無機バインダ12aの流動性が増し、更に無機バインダ12aの液成分の沸騰、気化、放散が起きる。この過程で無機バインダ12aの固形成分が積重体11x内の全域に拡散されながら無機バインダ硬化物12となる。
さらに、積重体11x内のボイド(空隙部ないしは空気層)が積重体11xの圧縮によって減容されるとともに、無機バインダ12aの拡散、液成分の気化・放散に伴って、積重圧縮体11内の全域にボイドが拡散される。
図5(h)に示すように、その後、脱型する。
【0024】
これによって、ダクト1の少なくとも一部の壁形状(半割筒形状)を有する断熱成形体10が成形される。無機バインダ硬化物12を介して、断熱成形体10の全域の解繊体11aが万遍なく接合されることによって、断熱成形体10の自立保形性が確保される。更に、筋状部13においては解繊体11aが互いに絡み合っているために、積重圧縮体11がばらけるのを一層確実に防止でき、断熱成形体10の自立保形性を一層高めることができる。
断熱成形体10の主材としてガラス繊維を用いることによって、断熱成形体10の断熱性及び耐熱性を確保できる。
更に、バインダとして有機バインダではなく無機バインダを用いることによって、断熱成形体10の耐熱性、耐火性、断熱性を確保できる。加えて、断熱成形体10の全域にわたってボイドが均一に分散されることで、断熱性が一層高まる。
断熱成形体10の外周面(表面)には、表層シート4が一体的に積層される。表層シート4は、断熱成形体10の外周面(表面)の無機バインダ硬化物12によって直接的に断熱成形体10と接合される。無機バインダ硬化物12が表層シート4の接合手段となるから、接着剤などの別途の接合手段は不要である。
【0025】
前記半割筒形状の断熱成形体10を一対作製する。
これら一対の断熱成形体10を、別途作製した内面部材3の両側部に被せる。
また、粘着テープや接着剤などの接合手段によって一対の断熱成形体10を接合する。これによって、円筒形状の断熱壁材2が得られる。
このようにして、建築物用通気ダクト1が得られる。内面部材3は、断熱壁材2の内周面から解繊体11aが飛散するのを防止する機能を果たす。表層シート4は、断熱壁材2の外周面から解繊体11aが飛散するのを防止する機能を果たす。
本発明形態によれば、種々の建築物用通気ダクトの壁形状に応じた金型を用意することによって、断熱成形体10の形状ひいては断熱壁材2の形状を任意に設定できる。
断熱成形体10における積重圧縮体11の密度を190kg/m~370kg/m程度とすることによって、自立して保形可能であり、かつ軽量で、ある程度の脱水性をも有する通気ダクト用断熱壁材が得られる。
前記密度を190kg/m以上、好ましくは250kg/m超とし、前記減厚度合を60%以下とすることによって、通気ダクト用断熱壁材2の耐締付力ひいては自立保形性を十分に確保できる。
前記密度を370kg/m以下、好ましくは200kg/m未満とし、前記重量減少割合を好ましくは6%超、より好ましくは8%以上、一層好ましくは9%以上とすることによって、断熱壁材2を軽量にでき、かつ通気ダクト用断熱壁材2としての脱水性を確保できる。
【0026】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、建築物用通気ダクトは、厨房排気フード、空調ダクト、煙突に限られず、換気ダクトなどであってもよい。
通気ダクトの形状は、円筒形に限らず、四角筒形その他の多角筒形でもよく、その他様々な形状でもよい。断熱壁材は、平板状でもよく、湾曲板状でもよく、その他様々な形状であってもよい。
解繊体11aは、長繊維に限られず、短繊維であってもよい。
無機バインダ12aは、熱硬化性バインダに限らず、例えば水和反応等によって硬化する水硬化性バインダなどであってもよい。無機バインダ12aは、加熱によって溶融して解繊体11aどうしを接合し、その後、冷却によって硬化されるものであってもよい。無機バインダ12aが、分散媒又は溶媒を含んでいてもよい。加熱時に分散媒又は溶媒が気化されてもよい。分散媒又は溶媒は水であってもよい。
壁形状の断熱成形体における内面(ダクト流路画成面)に表層シート4を設けてもよい。断熱成形体における内面の無機バインダによって前記表層シート4を断熱成形体と直接接着してもよい。表層シートは省略してもよい。
【実施例0027】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、断熱壁材の密度に応じた耐締付力を検証した。
積重圧縮体と無機バインダ硬化物を含む断熱成形体からなる断熱壁材のサンプル1~4を用意した。
断熱壁材サンプル1~4の縦横サイズは、約100mm×約100mmであり、初期(締め付け前)の厚みは19.7mm~20.7mmであった。なお、厚みは、各断熱壁材サンプル1~4の4点で測定し、その平均値を採用した(実施例2において同様)。
断熱壁材サンプルの初期(締め付け前)の密度は、198kg/m~367kg/mであった。
各断熱壁材サンプル1~4の両面を一対の鋼板からなる当て板で挟み、ボルトを一方の当て板から断熱壁材サンプル1~4及び他方の当て板へ貫通させてナットをねじ込み、20Nmの締め付けトルクを付与したときの減厚度合(締付時厚み/初期厚み)を測定した。
表1に示すように、測定結果は、それぞれ59%、50%、42%、30%であり、通気ダクト用断熱壁材として十分な自立保形性が確保されることが確認された。
【0028】
【表1】
【実施例0029】
実施例2では、断熱壁材の密度に応じた吸水後の脱水性を検証した。
積重圧縮体と無機バインダ硬化物を含む断熱成形体からなる断熱壁材サンプル5~8を用意した。
各断熱壁材サンプル5~8の縦横サイズは、約100mm×約100mmであり、厚みは20mm~20.8mmであった。
断熱壁材サンプルの初期(吸水前)の重量は、0.041kg~0.073kgであった。
断熱壁材サンプルの密度は、205kg/m~347kg/mであった。
これら断熱壁材サンプルを、バケツ内の水に漬けて吸水させた(吸水工程)。これら断熱壁材サンプルを1時間(60分)の吸水工程によって実質完全吸水させた後、バケツから取り出して、直後の重量を測定したところ、0.220kg~0.244kgであった。
前記取り出した断熱壁材サンプルを温度20℃~30℃、相対湿度60%RH~80%RHの環境に静置して脱水させた。
表2に示すように、前記取り出し時(吸水工程終了時)から25時間経過の断熱壁材サンプルの重量は、0.197kg~0.221kgであり、重量減少割合は、9%~10%であった。
【0030】
[比較例]
比較例として、ケイ酸カルシウムからなる断熱壁材サンプルを用意した。該ケイ酸カルシウムからなる断熱壁材サンプルの縦横サイズは99mm×99mm、厚みは26.3mm、密度は440kg/mであった。該ケイ酸カルシウムからなる断熱壁材サンプルについて、実施例2と同一条件で脱水性を検証したところ、重量減少割合は6%であった。
本発明に係る断熱壁材によれば、ケイ酸カルシウムからなる断熱壁材よりも軽量で、脱水性が優っていることが確認された。
【0031】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば建築物における厨房排気ダクト、空調ダクト、煙突などの通気ダクトに適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 建築物用通気ダクト
2 断熱壁材
2a ガラス繊維
4 表層シート
10 断熱成形体
11 積重圧縮体
11a 解繊体
11x 積重体
12 無機バインダ硬化物
12a 無機バインダ
13 筋状部
図1
図2
図3
図4
図5