(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007355
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】陳列装置、及び植物の陳列方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220105BHJP
A01G 31/06 20060101ALI20220105BHJP
A47F 7/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A01G31/00 612
A01G31/06
A47F7/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110276
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA12
2B314MA33
2B314MA38
2B314MA52
2B314NA05
2B314NA14
2B314ND02
2B314ND16
2B314ND27
2B314PB02
2B314PB24
2B314PB44
2B314PC10
2B314PD37
2B314PD59
2B314PD63
(57)【要約】
【課題】 陳列中の植物の状態を良好な状態で維持することが可能な陳列装置、及び植物の陳列方法を提供する。
【解決手段】 本発明の陳列装置は、陳列された植物に光を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、陳列装置への接近者を検知する検知部と、制御部は、検知部が接近者を検知した検知期間に照射部に光を照射させ、且つ、照射部が照射する光の照射強度及び照射時間の積に応じた照射量に関する設定値と検知期間における照射量とに基づき、検知部が接近者を検知しない非検知期間における照射量を調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を陳列するための陳列装置であって、
陳列された植物に光を照射する照射部と、
前記照射部を制御する制御部と、
前記陳列装置への接近者を検知する検知部と、
前記制御部は、前記検知部が前記接近者を検知した検知期間に前記照射部に光を照射させ、且つ、前記照射部が照射する光の照射強度及び照射時間の積に応じた照射量に関する設定値と前記検知期間における前記照射量とに基づき、前記検知部が前記接近者を検知しない非検知期間における前記照射量を調整する、陳列装置。
【請求項2】
陳列された植物は培地に保持され、前記培地には水又は養液が供給される、請求項1に記載の陳列装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知期間における前記照射量と前記非検知期間における前記照射量との合計値が前記設定値となるように前記非検知期間における前記照射量を調整する、請求項1又は2に記載の陳列装置。
【請求項4】
陳列された植物の陳列期間が複数の単位期間に区切られる場合において、
前記制御部は、複数の前記単位期間のうち、前記合計値が前記設定値を超えた前記単位期間よりも後の前記単位期間において、前記合計値が前記設定値よりも小さい修正設定値となるように前記非検知期間における前記照射量を調整する、請求項3に記載の陳列装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記非検知期間中、前記合計値が前記設定値を超えないように前記照射部に光を照射させ続ける、請求項3又は4に記載の陳列装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記非検知期間中、前記照射部の光源を点滅させて前記照射部に光を照射させ続ける、請求項5に記載の陳列装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検知期間における光の照射時間を積算し、前記検知期間における照射時間の積算値と前記設定値とに基づき、前記非検知期間における光の照射時間を調整する、請求項3又は4に記載の陳列装置。
【請求項8】
前記検知期間における光の照射強度が、陳列された植物の光飽和点の30%以上である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の陳列装置。
【請求項9】
前記検知期間における光の照射強度が、陳列された植物の光飽和点の200%以下である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の陳列装置。
【請求項10】
陳列装置により植物を陳列する植物の陳列方法であって、
陳列された植物に照射部から光を照射し、
制御部により前記照射部を制御し、
検知部により前記陳列装置への接近者を検知し、
前記制御部による前記照射部の制御では、前記検知部が前記接近者を検知した検知期間に前記照射部に光を照射させ、且つ、前記照射部が照射する光の照射強度及び照射時間の積に応じた照射量に関する設定値と前記検知期間における前記照射量とに基づき、前記検知部が前記接近者を検知しない非検知期間における前記照射量を調整する、植物の陳列方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を陳列するための陳列装置、及び植物の陳列方法に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗等において商材である野菜又は生花等をショーケースのような陳列装置に陳列する場合に、植物の見栄えを良くする等の理由から植物に光を照射することがある。
また、植物用の陳列装置として、植物を栽培する栽培室を内部に備え、外部から栽培室を観察(目視)可能なものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の陳列装置では、栽培室内に照明装置が設けられており、その照明装置から植物に光を照射して植物の生育を促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
陳列装置内で陳列された植物に対して光を照射させる際に、植物に対する光の照射量が小さ過ぎると、顧客に対するアピール力が低下することになる。また、植物に対する照射量が小さい場合には、植物の茎等が光を求めて間延びする現象である徒長が生じるために、植物の外観が劣化してしまう虞がある。反対に、植物に対する光の照射量が大き過ぎると、植物の品質(例えば、風味等)が変化してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決し、陳列中の植物の状態を良好な状態で維持することが可能な陳列装置、及び植物の陳列方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の陳列装置は、植物を陳列するための陳列装置であって、陳列された植物に光を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、陳列装置への接近者を検知する検知部と、制御部は、検知部が接近者を検知した検知期間に照射部に光を照射させ、且つ、照射部が照射する光の照射強度及び照射時間の積に応じた照射量に関する設定値と検知期間における照射量とに基づき、検知部が接近者を検知しない非検知期間における照射量を調整することを特徴とする。
【0007】
上述のように構成された本発明の陳列装置によれば、陳列装置への接近者を検知すると、陳列された植物に光を照射し、その植物の見栄えを良くして接近者の注目を惹くことができる。また、本発明の陳列装置では、接近者を検知した検知期間における光の照射量と照射量に関する設定値とに基づき、接近者を検知しない非検知期間における照射量を調整することで、陳列された植物への照射量の総量がコントロールされる。これにより、陳列された植物に対して過不足なく光を照射することができ、この結果、陳列中の植物の状態を良好な状態で維持することができる。
【0008】
また、本発明の陳列装置において、陳列された植物は培地に保持され、培地には水又は養液が供給されてもよい。かかる構成であれば、陳列された植物に水分又は養液に供給することができ、陳列中において植物の鮮度を適切に維持することができる。
【0009】
また、本発明の陳列装置において、制御部は、検知期間における照射量と非検知期間における照射量との合計値が設定値となるように非検知期間における照射量を調整してもよい。これにより、陳列された植物への照射量の総量を、その植物にとって好ましい量に調整することができ、陳列中の植物の状態を良好な状態で維持することができる。
【0010】
また、陳列された植物の陳列期間が複数の単位期間に区切られてもよい。かかる場合において、制御部は、複数の単位期間のうち、合計値が設定値を超えた単位期間よりも後の単位期間において、合計値が設定値よりも小さい修正設定値となるように非検知期間における照射量を調整すると、好適である。
上記の構成であれば、複数の単位期間の一つにおいて、照射量の合計値が仮に設定値を超えた場合に、その後の単位期間において、照射量の合計値がより小さい設定値(修正設定値)となるように非検知期間における照射量を調整する。これにより、陳列中における照射量の総量について帳尻を合わせることができる。
【0011】
また、本発明の陳列装置において、制御部は、非検知期間中、合計値が設定値を超えないように照射部に光を照射させ続けてもよい。かかる構成であれば、非検知期間中にも植物に光を照射させることができ、例えば、陳列装置から離れている人に対して、陳列された植物の存在を知らせることができる。
【0012】
また、本発明の陳列装置において、制御部は、非検知期間中、照射部の光源を点滅させて照射部に光を照射させ続けてもよい。かかる構成であれば、陳列装置から離れた人に対して、より効果的に、陳列された植物の存在を知らせることができる。
【0013】
また、本発明の陳列装置において、制御部は、検知期間における光の照射時間を積算し、検知期間における照射時間の積算値と設定値とに基づき、非検知期間における光の照射時間を調整してもよい。
上記の構成であれば、検知期間における光の照射時間の積算値と設定値とに基づいて、非検知期間における光の照射時間を調整することで、照射量の合計値を設定値となるように調整することができる。
【0014】
また、本発明の陳列装置において、制御部は、非検知期間中、検知期間における光の照射強度と同じ照射強度にて照射部に光を照射させてもよい。かかる場合には、検知期間と非検知期間との間で光の照射強度を変える必要がないので、照射量の合計値を設定値となるように調整することが、より容易になる。
【0015】
また、本発明の陳列装置において、検知期間における光の照射強度が、陳列された植物の光飽和点の30%以上であると、より好ましい。さらに、検知期間における光の照射強度が、陳列された植物の光飽和点の200%以下であると、なお一層好ましい。
【0016】
また、前述した課題を解決するために、本発明の植物の陳列方法は、陳列装置により植物を陳列する植物の陳列方法であって、陳列された植物に照射部から光を照射し、制御部により照射部を制御し、検知部により陳列装置への接近者を検知し、制御部による照射部の制御では、検知部が接近者を検知した検知期間に照射部に光を照射させ、且つ、照射部が照射する光の照射強度及び照射時間の積に応じた照射量に関する設定値と検知期間における照射量とに基づき、検知部が接近者を検知しない非検知期間における照射量を調整することを特徴とする。
上記の方法によれば、陳列された植物に対して過不足なく光を照射することができ、陳列中の植物の状態が良好な状態で維持されるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、陳列装置への接近者を検知し、その検知結果に応じて、陳列された植物に対して過不足なく光を照射することができる。これにより、陳列中の植物の状態を良好な状態で維持することができる。具体的には、陳列された植物の鮮度を維持することができ、陳列装置において植物を長期間に亘って陳列することが可能となる。また、陳列された植物に対して適量の光を照射することで植物の外観を良好に維持し、照明によって植物の見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る陳列装置の外観を示す図であり、栽培トレー及びその内部に配置された機器については断面を示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係る陳列装置の制御系統についての説明図である。
【
図4】陳列された植物に対する光照射の要領を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態(以下、本実施形態という。)に係る陳列装置及び植物の陳列方法について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0020】
<<本実施形態の陳列装置の基本構成>>
本実施形態の陳列装置(以下、陳列装置10)は、植物を陳列するための装置であり、
図1に示す外観を有する。陳列装置10は、八百屋、スーパーマーケット及びデーパート等の生鮮食品を販売する店舗、オフィス、並びに、レストラン、ホテル及び旅館等の宿泊施設の厨房等に配置される。
【0021】
以下では、店舗内に設置される陳列装置10の構成を具体例に挙げて説明することとする。陳列装置10は、キャスター等の可動具12を備えており、例えば、店舗の営業時間中には、店舗内において店舗の来店者(顧客)に見え易い場所に配置され、営業外時間には店舗のバックヤード等に搬送される。ただし、これに限定されるものではなく、陳列装置10は、常時、店舗内の所定位置に固定されて設置されてもよい。
【0022】
陳列装置10には、
図1に示すように、野菜及び果樹等の可食植物あるいは生花等の鑑賞用植物(以下、植物P)が根を付けた状態のままで陳列される。より詳しく説明すると、陳列装置10では、販売可能な状態まで成長した植物Pを水耕栽培方式にて引き続き栽培しながら、栽培中の植物Pを視認可能な状態で陳列している。ここで言う「栽培」は、陳列期間中の植物Pの鮮度を維持するための栽培を意味する。
【0023】
なお、陳列装置10にて陳列される植物Pは、店舗販売の対象となる植物であれば特に制限されないが、例えば、バジル、レモンバジル、パクチー、ミント、ミツバ、パセリ、セロリ、ルッコラ、ステビア、ローズマリー及び葉葱等が一例として挙げられる。
【0024】
陳列装置10は、
図1に示すように、上下に並ぶ複数の棚板14と、各棚板14を支持する支柱16と、支柱16の土台をなすハウジング18とを有する。棚板14は、
図1に示すケースでは3枚設けられ、各棚板14は、上下方向に一定の間隔で支柱16に固定されている。上から2段目及び3段目の棚板14には、それぞれ、上面が開口された栽培トレー20が載置されている。栽培トレー20内には、水が溜められており、液面上には定植プレート22が浮かべられている。なお、栽培トレー20内には、水の代わりに、陳列された植物Pの栽培(鮮度維持)に有用な成分を含む養液が貯留していてもよい。
【0025】
定植プレート22には所定サイズの貫通孔22aが複数形成されており、それぞれの貫通孔22aには、
図1に示すように、培地24を収容した栽培用カップ26が嵌り込んでいる。培地24は、略立方体状に成形されたウレタン又はスポンジ等からなり、培地24内に植物Pの根を張り巡らせることで植物Pを保持している。栽培用カップ26は、例えばビニール製のカップであり、底部には底孔26aが設けられている。栽培用カップ26が定植プレート22に嵌め込まれ、カップ底部が栽培トレー20内の水又は養液に浸ると、カップ内に収容された培地24に水又は養液が底孔26aを通じて浸入する。これにより、培地24によって保持された植物Pの根に水又は養液が供給される。
【0026】
陳列装置10では、植物Pが、棚板14上に載置された栽培トレー20内の水又は養液に浮かべられた状態、詳しくは、根を保持する培地24が水又は養液に浸かった状態で陳列される。なお、栽培トレー20が載置された複数の棚板14の間において、同一種類の植物Pが陳列されてもよく、異なる種類の植物Pが陳列されてもよい。
【0027】
また、本実施形態の陳列装置10は、棚板14上に陳列された植物Pに容易に人の手が届く構成になっており、例えば、各棚板14の上方空間の正面が開放された構成となっている。そのため、顧客は陳列装置10の正面位置に立ち、植物Pが陳列された棚板14の上方空間に手を伸ばすことで植物Pにアクセスし、植物Pを把持して陳列装置10から取り出すことができる。
なお、棚板14の周りをガラス板又は透明なアクリル板等で囲み、その囲みの適切な箇所に、植物Pを取り出すための開閉窓又は開閉扉を設ける構成でもよい。
【0028】
陳列対象の植物Pが陳列装置10に陳列されてから購入又は廃棄のために取り出されるまでの期間は、その植物Pの陳列期間に相当する。陳列期間の最大値は、植物Pの種類に応じて決まる。また、陳列期間は、複数の単位期間によって区切られる。単位期間は、1分間若しくは数分間、1時間若しくは数時間、あるいは1日若しくは数日等のように任意に決められるが、本実施形態では1日を単位期間とする。
【0029】
ハウジング18内には、
図1に示すように、各段の栽培トレー20に供給される水又は養液を貯留する貯留タンク28と、貯留タンク28内の水又は養液を循環する循環ポンプ30とが収容されている。循環ポンプ30により、貯留タンク28内の水又は養液が不図示の送液ラインを通って各段の栽培トレー20に送られ、また、栽培トレー20内の水又は養液が不図示の返送ラインを通って貯留タンク28内へ返送される。
【0030】
なお、本実施形態では、各段の栽培トレー20と貯留タンク28との間で水又は養液を循環させることになっている。そのため、貯留タンク28内の水又は液体を冷却するチラー等の冷却装置を設けることで、栽培トレー20内の水温(液温)を下げることができる。ただし、水又は養液の供給方式は、循環方式に限定されるものではなく、非循環方式で栽培トレー20内に水又は養液が供給されてもよい。
【0031】
陳列装置10は、
図1に示すように、棚板14上に陳列された植物Pに対して光を照射する照射部32を備える。本実施形態では、照射部32が棚板14毎に設けられている。具体的に説明すると、
図1に示すように、上から1段目及び2段目の棚板14のそれぞれの下面にはスポット照明用の光源34が配置され、各光源34が発する光は、当該各光源34の直下にある棚板14にて陳列された植物Pに対して照射される。
【0032】
光源34としては、無機又は有機のLED(Light Emitting Diode)又はレーザー等の半導体発光素子、蛍光灯、水銀灯、希ガスランプ、無電極ランプ等の放電管、白熱灯等のフィラメント発光機、放射光又は蛍光等のエネルギー遷移によるもの等が利用可能である。
また、照射部32の光源34は、棚板14上に陳列された植物Pに対して上方から光を照射するものに限られず、不図示ではあるが、棚板14の上面に配置された光源を設け、当該棚板14上に陳列された植物Pに対して下方から光を照射してもよい。
【0033】
なお、本実施形態では、照射部32が棚板14毎に設けられており、例えば、陳列される植物Pの種類が棚板14間で異なる場合には、各照射部32が照射する光の波長を植物Pの種類に応じて変えてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、照射部32が光を照射する際の強度(すなわち、照射強度)が可変である。照射強度を変える構成としては、光源34の発光強度を変えてもよく、単位面積あたりの光源34の点灯数を変えてもよい。また、光源34は、一定強度で点滅することが可能なものであることが好ましい。
【0035】
陳列装置10は、
図2に示すように、陳列装置10への接近者を検知する検知部36と、照射部32による光照射を制御する制御部38とを有する。
【0036】
検知部36は、陳列装置10の正面に取り付けられた公知の人感センサによって構成され、陳列装置10の正面から所定距離内に人が位置している場合に、その者を接近者として検知し、その検知結果に応じた信号を出力する。例えば、店舗内に来店した顧客が陳列装置10から所定距離以内の範囲に位置したときに、検知部36をなす人感センサが当該顧客を検知する。
【0037】
なお、検知部36は、人感センサに限られず、陳列装置10付近を撮像するカメラと、カメラの撮像画像を解析して陳列装置10付近での人の有無を判定可能な画像解析装置とによって構成されてもよい。
【0038】
制御部38は、陳列装置10の所定箇所に取り付けられた不図示の駆動制御回路によって構成されている。駆動制御回路は、メモリと、メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサからなり、プロセッサとしては、汎用的なCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理をさせるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が利用可能である。また、上述した各種プロセッサのうちの一つで制御回路を構成してもよいし、同種または異種の二つ以上のプロセッサの組み合わせ、例えば、複数のFPGAの組み合わせ、またはFPGA及びCPUの組み合わせ等によって構成してもよい。また、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の制御回路を含むシステム全体の機能を一つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用してもよい。
【0039】
また、制御部38は、陳列装置10を遠隔で操作する不図示のコンピュータ(以下、制御コンピュータ)を含んで構成されたものでもよい。かかる構成では、陳列装置10及び制御コンピュータが有線方式又は無線方式にて通信可能に接続されており、陳列装置10側の駆動制御回路が制御コンピュータからの制御信号を受信し、受信した制御信号に則って照射部32を制御する。
【0040】
制御部38は、1日(すなわち、単位期間)における照射部32から照射される光の照射量を調整する。照射量とは、照射部32が照射する光の照射強度(照度)及び照射時間の積に応じた量、すなわち積算光量であり、単位は、J/cm2である。ここで、照射強度及び照射時間の積に応じた照射量は、照射強度及び照射時間の積と同値の量であってもよく、あるいは、積に所定の係数を乗じた量、若しくは積に所定の値を加算した量であってもよい。制御部38による光の照射量については、後に詳しく説明する。
【0041】
本実施形態に係る陳列装置10は、
図1に示すように、表示装置としてのディスプレイ40を備える。ディスプレイ40は、陳列装置10の正面において好適な高さに設置され、陳列装置10に陳列された植物Pを陳列装置10付近の顧客に対して推奨するメッセージ等を表示する。なお、ディスプレイ40は、陳列装置10の付帯機器であり、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0042】
<<照射量の調整について>>
本実施形態において、制御部38は、検知部36が陳列装置10への接近者を検知した検知期間に照射部32に光を照射させる。これにより、陳列された植物Pに光を当てて当該植物Pの見た目を良くし、接近者である顧客の購買意欲を刺激することができる。
【0043】
また、制御部38は、1日において照射部32が照射する光の照射量に関する設定値と検知期間における照射量とに基づき、検知部36が接近者を検知しない非検知期間における照射量を調整する。具体的には、制御部38は、検知期間における照射量と非検知期間における照射量との合計値が設定値となるように非検知期間における照射量を調整する。
【0044】
「照射量に関する設定値」は、1日(単位期間)における光の照射量の推奨値であり、陳列対象の植物Pに応じて予め設定され、制御部38を構成するメモリに植物Pの種類毎に記憶されている。陳列装置10において複数種類の植物Pが互いに異なる棚板14上で陳列されている場合、制御部38は、植物P毎に設定値をメモリから読み出し、非検知期間における照射量の調整を植物P毎に実施することになる。
【0045】
以上のように本実施形態では、制御部38が1日における光の照射量(厳密には、検知期間及び非検知期間における照射量の合計値)を設定値となるように調整することで、陳列された植物Pに光を過不足なく照射することができる。これにより、陳列中の植物Pの状態を良好な状態で維持し、風味等の品質を変えずに鮮度を良好に維持することができる。
また、陳列された植物Pに対する光の照射量が少ないと、植物Pの茎等の徒長が生じて節間距離が長くなることで植物Pの外観が劣化する虞があるが、本実施形態のように植物Pに対して過不足なく光を照射することで、徒長に起因する植物Pの外観の劣化を抑えることができる。
【0046】
なお、制御部38は、非検知期間中、検知期間における光の照射強度と同じ照射強度にて照射部32に光を照射させてもよいし、検知期間における照射強度とは異なる強度にて照射させてもよい。検知期間及び非検知期間のそれぞれにおける照射強度が同じであれば、検知期間と非検知期間との間で照射強度を変更する必要がなくなるので、照射量の制御がより簡単になる。
【0047】
また、検知期間及び非検知期間の間で照射強度が同じである場合、制御部38は、1日の中の検知期間における光の照射時間を積算する。そして、制御部38は、1日の中の検知期間における照射時間の積算値と設定値とに基づき、非検知期間における光の照射時間を調整する。すなわち、検知期間における照射強度と非検知期間における照射強度とが同じである場合には、照射量の調整として非検知期間における照射時間を設定値に基づいて調整する形になる。この場合、照射量に関する設定値は、照射時間に換算された値でもよい。
【0048】
制御部38による照射量調整について、
図3に示す照射量調整フローの流れを参照しながら、より詳細に説明する。照射量調整フローは、制御部38によって実行され、1日単位で繰り返される。
【0049】
照射量調整フローの実行に際して、陳列対象の植物Pが陳列装置10に陳列される。そして、各日において、店舗の営業時間になると照射量調整フローの実行が開始される(S001)。
【0050】
照射量調整フローが実行されると、陳列装置10への接近者、例えば陳列装置10付近にいる顧客の有無が検知部36によって監視される。検知部36が接近者を検知すると(S002)、制御部38が、棚板14毎に設けられた照射部32の光源34を点灯させ、各照射部32から光を照射させる(S003)。これにより、各棚板14上に陳列された植物Pに向けて、所定強度の光が照射される。このときの光の照射は、検知期間における光の照射に相当する。
【0051】
検知期間における光の照射強度は、陳列された植物Pにとって好適な値に設定されており、例えば、陳列された植物Pの光飽和点の30%以上且つ200%以下であるのが好ましく、30%以上且つ100%以下であるのがより好ましい。
なお、光飽和点についての一例を挙げると、レタス、バジル、ねぎ及びイチゴについては光飽和点が約25000luxであり、ミツバ及びミョウガについては光飽和点が約20000luxである。
【0052】
制御部38は、検知部36が接近者を検知している間、各照射部32から光を照射させ続け、接近者が陳列装置10から所定距離以上離れることで検知部36が当該接近者を検知しなくなった時点で光照射を停止させる。ただし、これに限定されるものではなく、検知部36が接近者を検知した時点から一定時間だけ各照射部32から光を照射させ、一定時間経過後に消灯させてもよい。
【0053】
検知期間における光の照射は、店舗の営業時間中、検知部36が接近者を検知する度に繰り返される。制御部38は、その日の各検知期間における照射時間を特定し、特定した各照射時間をメモリに記憶する。
【0054】
そして、その日の営業時間が終了すると(S004)、制御部38は、その日の各検知期間における照射時間を積算する(S005)。また、制御部38は、照射時間の積算値に応じた照射量(換言すると、営業時間中の照射量の積算値)が設定値を超えているか否かを判定する(S006)。
なお、陳列装置10にて棚板14毎に種類が異なる植物Pが陳列されている場合には、植物Pの種類毎に上記の判定工程S006を実施することになる。
【0055】
照射時間の積算値に応じた照射量が設定値を下回る場合、制御部38は、その差分に相当する照射量の光が営業時間後にて照射されるように各照射部32を制御する(S007)。このときの光の照射は、検知部36が接近者を検知しない期間、すなわち非検知期間における光の照射に相当する。非検知期間中に光を照射する工程S007では、推奨される1日あたりの照射量のうち、検知期間における照射量を超える不足分の照射量をまとめて照射するために、
図4に示すように各照射部32から所定強度の光を連続して照射させる。
図4は、陳列された植物に対する光照射の要領を示す図であり、具体的には、検知期間及び非検知期間のそれぞれにおける光の照射時間及び照射強度を示し、横軸が時間を、縦軸が照射強度を表している。
【0056】
非検知期間における光の照射強度は、営業時間中の検知期間における照射強度と同じレベルでもよく、あるいは異なるレベルでもよい。例えば、非検知期間における照射強度をより高レベルの強度に設定すれば、同期間における照射時間を短縮することができる。
【0057】
以上のように、制御部38は、検知期間における照射量と非検知期間における照射量との合計値が設定値となるように非検知期間における照射量を調整する。これにより、陳列された植物Pには、設定値に相当する照射量(つまり、推奨される1日あたりの照射量)の光が照射され、この結果、陳列中の植物Pの鮮度を維持し、且つ、風味等の品質の変化を抑えることができる。
【0058】
なお、陳列装置10にて棚板14毎に種類が異なる植物Pが陳列されている場合には、植物Pの種類に応じて設定値が変わり得るため、非検知期間において光を照射する際の照射時間及び照射強度を植物Pの種類に応じて変えるのが好ましい。
【0059】
照射量調整フローの説明に戻ると、上記の判定工程S006において、照射時間の積算値に応じた照射量が設定値を超えていると判定した場合、制御部38は、その日の営業時間後(非検知期間)における光の照射を実施せず、翌日の照射量についての設定値を修正する(S008)。より詳しくは、照射時間の積算値に応じた照射量が設定値を超えている場合、その超過分に相当する照射量を設定値から減算して修正し、その修正設定値を翌日の設定値とする。そして、制御部38は、翌日において、その日の照射量の合計値が上記修正設定値となるように翌日の営業終了後(非検知期間)における照射量を調整する。
【0060】
以上のように、ある日における照射量の合計値が設定値を超えた場合には、制御部38が、その日後において、照射量の合計値が設定値よりも小さい修正設定値となるように非検知期間における照射量を調整する。これにより、例え照射量の合計値が設定値を超える日があったとしても、その日後の設定値を小さくすることで、陳列中における植物Pへの照射量の総量について帳尻を合わせることができる。
【0061】
なお、陳列装置10にて棚板14毎に種類が異なる植物Pが陳列されている場合において、その日の照射量の合計値が設定値を超えた植物Pが存在するときには、その植物Pについて、翌日の設定値を修正する工程S008を実施すればよい。
【0062】
そして、以上までに説明してきた工程が終了した時点で、1日における照射量調整フローが終了する。
【0063】
<<その他の実施形態>>
以上までに本発明の陳列装置、及び植物の陳列方法について具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0064】
例えば、上記の実施形態では、上下方向に並ぶ複数の棚板14を設けて棚板14毎に植物Pを陳列することとした。つまり、上記の実施形態では、1台の陳列装置10あたりに、植物Pを陳列する箇所が複数存在することとしたが、これに限定されるものではなく、陳列装置において植物を陳列する箇所が一つのみであってもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、店舗の営業時間後を非検知期間とし、営業時間後における光の照射量を、営業時間中の検知期間における光の照射量及び照射量に関する設定値に基づいて調整することとした。より詳しくは、営業時間後において、検知期間における光の照射量と設定値との差分に相当する照射量の光をまとめて照射することとした。
ただし、上記の形態に限定されるものではなく、営業時間内の非検知期間、例えば、営業時間内において陳列装置10付近に顧客がいない時間帯における光の照射量を、営業時間中の検知期間における光の照射量及び設定値に基づいて調整してもよい。この場合、制御部38は、
図5に示すように、営業時間内の非検知期間中、その日の照射量の合計値が設定値を超えないように照射部32に光を照射させ続けてもよい。このように営業時間内の非検知期間において光を照射させることで、陳列装置10から離れている顧客に対して、陳列された植物Pの存在を知らせる(アピールする)ことができる。
なお、
図5に示すように、営業時間内の非検知期間における照射強度は、検知期間における照射強度よりも低く設定されてもよい。また、制御部38は、営業時間内の非検知期間中、照射部32の光源34を点滅させて照射部32に光を照射させ続けてもよい。これにより、陳列装置10から離れている顧客に対して、より効果的に、陳列された植物Pの存在を知らせる(アピールする)ことができる。
【符号の説明】
【0066】
10 陳列装置
12 可動具
14 棚板
16 支柱
18 ハウジング
20 栽培トレー
22 定植プレート
22a 貫通孔
24 培地
26 栽培用カップ
26a 底孔
28 貯留タンク
30 循環ポンプ
32 照射部
34 光源
36 検知部
38 制御部
40 ディスプレイ