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特開2022-73568パノラマ撮影用レンズ、パノラマ撮影用デジタルカメラ
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  • 特開-パノラマ撮影用レンズ、パノラマ撮影用デジタルカメラ 図1
  • 特開-パノラマ撮影用レンズ、パノラマ撮影用デジタルカメラ 図2
  • 特開-パノラマ撮影用レンズ、パノラマ撮影用デジタルカメラ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073568
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】パノラマ撮影用レンズ、パノラマ撮影用デジタルカメラ
(51)【国際特許分類】
   G03B 37/00 20210101AFI20220510BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220510BHJP
   G02B 13/06 20060101ALI20220510BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220510BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G03B37/00
G03B15/00 W
G02B13/06
H04N5/225 400
H04N5/232 380
H04N5/225 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183632
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】510067038
【氏名又は名称】株式会社インタニヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】奥村 正己
【テーマコード(参考)】
2H059
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H059BA01
2H059BA11
2H087KA01
2H087LA07
2H087RA26
5C122FA03
5C122FA04
5C122FA18
5C122FB06
(57)【要約】
【課題】 パノラマ立体撮影を行うためのレンズであって、特に高画質な撮像を可能とする大口径のレンズを適切な距離で配置する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも視野角が180度を超える広角レンズ10・20を2個以上配列して構成するパノラマ撮影用レンズであって、所定の配列方向に沿って、各広角レンズの前玉の円周隅部11・21の少なくとも一側を、該配列方向に直角な直線状12・22で切り落とし、直線状の切り落とし部同士を隣接して配置する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも視野角が180度を超える広角レンズを2個以上配列して構成するパノラマ撮影用レンズであって、
所定の配列方向に沿って、各広角レンズの前玉の円周隅部の少なくとも一側を、該配列方向に直角な直線状で切り落とし、該直線状の切り落とし部同士を隣接して配置した、
ことを特徴とするパノラマ撮影用レンズ。
【請求項2】
前記パノラマ撮影用レンズが、パノラマ立体画像の撮影用であって、
前記広角レンズの外径が50mm以上であり、
2つの水平方向に配列した広角レンズの前玉の円周隅部の互いに隣接する一側を垂直な直線状で切り落とすことによって該広角レンズの中心間距離を50mmないし80mmにした
請求項1に記載のパノラマ撮影用レンズ。
【請求項3】
パノラマ画像を生成するために用いるパノラマ撮影用デジタルカメラであって、
少なくとも視野角が180度を超える2個以上の広角レンズと、
該広角レンズよりも後方側に配置されるデジタル撮像素子と、
該デジタル撮像素子で撮像した画像データを処理し、所定の画像形式で出力又は保存する画像処理手段とを備え、
該広角レンズが、
所定の配列方向に沿って、各広角レンズの前玉の円周隅部を、該配列方向に直角な直線状で切り落とし、該直線状の切り落とし部同士を隣接して配置した、
ことを特徴とするパノラマ撮影用デジタルカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広視野角の並列したレンズによってパノラマ画像を撮影するパノラマ撮影用レンズと、それを備えたデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つのレンズを用いてわずかにアングルを変えた2枚の写真を撮影し、これを両目で同時に見ることによって立体視が可能となる技術が知られている。最も古くは19世紀中頃にはステレオスコープと呼ばれる立体視を可能とした商品が販売されていたと言われている。
【0003】
長いフィルム写真の時代を経て、デジタルカメラに移行してからも2つのレンズで同時に撮影する3Dカメラが多数販売されており、テレビや映画でも3Dのコンテンツが提供されている。
【0004】
例えば、非特許文献1に開示されるhuman-eyes社製Vuze XR 3D VR&360Cameraでは、2つの魚眼レンズを備えて、背中合わせに向けて360度画像を撮影するモードと、光軸を平行に向けて立体パノラマ画像を撮影するモードとに切り替えることのできるデジタルカメラを提供している。立体パノラマ画像は静止画、動画のいずれも可能であり、両目にそれぞれの画像を表示するVRゴーグルを用いることで、VR(仮想現実)画像を見ることができる。
【0005】
関連する特許文献として、特許文献1には視野によってそれぞれ特徴付けられる複数の別個の撮像システムを備えたパノラマ撮像システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-173461
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】インターネットURL:https://www.humaneyes.com/products/vuze-xr-camera 2020年10月1日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術のように両目に対応するような2つのレンズを並列することは古くから知られているが、立体画像に加えてVR画像を得るために広視野角のレンズを並べようとすると、レンズ径が大きく、適切な距離の離隔が行えない場合がある。
【0009】
そこで、本発明では、パノラマ立体撮影を行うためのレンズであって、特に高画質な撮像を可能とする大口径のレンズを適切な距離で配置する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は次のようなパノラマ撮影用レンズを提供する。
すなわち、少なくとも視野角が180度を超える広角レンズを2個以上配列して構成するパノラマ撮影用レンズであって、所定の配列方向に沿って、各広角レンズの前玉の円周隅部を、配列方向に直角な直線状で切り落とし、直線状の切り落とし部同士を隣接して配置することを特徴とする。
【0011】
第2の実施態様としては、上記のパノラマ撮影用レンズが、パノラマ立体画像の撮影用であって、広角レンズの外径が50mm以上であり、2つの水平方向に配列した広角レンズの前玉の円周隅部を垂直な直線状で切り落とすことによって広角レンズの中心間距離を50mmないし80mmにすることが好ましい。
【0012】
第3の実施態様としては、パノラマ画像を生成するために用いるパノラマ撮影用デジタルカメラであって、少なくとも視野角が180度を超える2個以上の広角レンズと、広角レンズよりも後方側に配置されるデジタル撮像素子と、デジタル撮像素子で撮像した画像データを処理し、所定の画像形式で出力又は保存する画像処理手段とを備え、広角レンズが、所定の配列方向に沿って、各広角レンズの前玉の円周隅部を、配列方向に直角な直線状で切り落とし、その直線状の切り落とし部同士を隣接して配置したパノラマ撮影用デジタルカメラを提供することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大口径の広角レンズを用いながら、パノラマ撮影のために適切な距離で2個以上の広角レンズを配置することを可能にした、パノラマ撮影用レンズ及びそれを用いたノラマ撮影用デジタルカメラを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るパノラマ撮影用レンズの説明図である。
図2】本発明に係るパノラマ撮影用レンズ及びデジタル撮像素子の配置図である。
図3】パノラマ撮影用レンズによって撮影された画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1は本発明に係るパノラマ撮影用レンズの説明図である。本発明が対象とする広角レンズは、視野角が180度ないし250度のいわゆる魚眼レンズである。出願人が販売している製品、株式会社インタニヤ製、Entaniya Fisheye HAL(登録商標)では、大きなデジタル撮像素子(イメージセンサー)に対応可能な超広角レンズを提供している。
【0016】
明るく高い画質を実現するためにレンズを大口径とする必要があり、例えば視野角が200度の上記HAL200ではレンズ径が70mm、外周リングを含めた外径が75mmである。また、35mmフルサイズセンサーに対応する上記HAL220PLでは外径が102mmである。
【0017】
ところで、立体画像を撮影するために、2つのレンズを水平に配置して人間の両目に対応した画像をそれぞれ撮像することは従来から周知である。さらに近年のVR技術の進歩に伴って、各レンズを超広角なレンズとすることで、パノラマかつ立体画像を撮像することも可能になった。すなわち、ジャイロセンサー等で使用者の顔の向きを検知し、当該向きに合わせた立体画像を表示することで、所望の方向の立体画像を見ることができるものである。
【0018】
立体画像の撮影において、2つのレンズの中心間距離は一般的なポートレイト画像では一般的な両目の間隔65mm程度が好ましいが、さらに近接した被写体の場合は50mmないし55mm程度、逆に被写体が遠い場合には70~80mm程度とすることで自然な立体画像が得られることが知られている。
そこで、被写体の距離に応じて最適なレンズの中心間距離の設定が必要である。
【0019】
これまで知られている製品では、小口径の魚眼レンズを用いているため、立体画像の撮影に適するとされる、レンズの中心間距離が50~80mmとなる配置も困難でなかったが、上記のような大口径の広角レンズを用いる場合には、レンズの円周同士を隣接させても、中心間距離を最適範囲とすることができない。
【0020】
例えば、HAL200であれば外径が75mmであるから中心間距離は75mmとなってしまうし、HAL220PLでは102mmとなってしまう。最適な中心間距離に配置できないと、立体視をした場合の違和感につながる問題がある。
【0021】
そこで、本発明では、広角レンズの前玉の円周隅部を、配列方向に直角な直線状で切り落とし、直線状の切り落とし部同士を隣接して配置することを提案する。図1はレンズの前玉方向から見た概念図を示している。
【0022】
水平方向に配列した左右一対の広角レンズ(10)(20)の外径がそれぞれ80mmだった場合、そのまま隣接して配置したのでは中心間距離Lが80mmとなってしまう。そこで、広角レンズ(10)(20)の前玉の円周隅部(11)(21)をそれぞれ配列方向に直角、すなわち垂直方向に直線状で切り落とす。
切り落とされた直線状部分(12)(22)同士を隣接して配置する。
【0023】
図2は、パノラマ撮影用レンズ及びデジタル撮像素子の配置図である。
本図では広角レンズ(10)(20)の光軸(13)(23)と直交する向きから図示しており、図上でも直線状部分(12)(22)が切り落とされた態様が確認できる。
【0024】
各広角レンズ(10)(20)は周知の光学系によって複数のレンズ群からなり、図の下側にそれぞれデジタル撮像素子(14)(24)を配置する。それぞれのデジタル撮像素子(14)(24)によって取得された画像は、前玉の一部が切り落とされた広角レンズを用いているため、図3のような画像である。
【0025】
図3では、左右それぞれの画像(30)(40)において、切り落とした前玉の部分に対応して、左右両端部に欠けた部分(31)(32)(41)(42)が生じる。しかし、超広角のレンズを用いた場合、有効な画像領域(35)は十分に確保することができる上、隣接するレンズが映り込む部分にもなることから左右両端部が欠けても大きな問題がない。
【0026】
本発明はこのような超広角レンズの特性に着目し、広角レンズ(10)(20)の前玉の円周隅部を直線状部分(12)(22)が切り落とすことによって、最適な中心間距離Lを実現できることを見出したものである。
最適な中心間距離Lは50mmないし80mmであり、特に60mmないし70mm、最も好適なのは約65mmである。
【0027】
立体画像を撮像する際に用いる広角レンズの外径は、上記のように最適なレンズ間距離50mm以上とすることが難しいことから、50mm以上の外径を有する場合に適用される。特に、外径が70mm以上の場合には、最適な65mmの中心間距離が確実に実施不可能となるために、本発明の適用が特に有効である。
【0028】
2つの広角レンズ(10)(20)は直線状部分(12)(22)で連結固定してもよいし、固定せず、中心間距離を可変としてもよい。
上述したように、被写体との距離に応じて最適な中心間距離Lが変化することから、手動または自動で、2つの広角レンズ(10)(20)の離隔が調整できる構成でもよい。調整機構は任意であるが、例えばラックアンドピニオンギアを用いてピニオンを回転させることで、両者の間隔を変化させることもできる。
【0029】
本発明では、上記のような広角レンズを備えたデジタルカメラを提供してもよい。デジタルカメラの構成は周知であるから詳細な説明は省くが、デジタルカメラには、少なくとも視野角が180度を超える広角レンズを2個以上配列し、その後方側にデジタル撮像素子と、そのデジタル撮像素子で撮像した画像データを処理し、所定の画像形式で出力又は保存する画像処理回路が内蔵されている。また、パノラマに直接変換する画像処理回路により、直接変換データを所定のファイルやファイル形式で保存してもよい。
【0030】
撮影された生のデータをスマートフォン等のコンピュータに転送し、処理はスマートフォン等で行ってもよい。また、通信ネットワークで接続されたサーバーに転送してサーバ上で処理してもよい。
【0031】
デジタル撮像素子は、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーとして周知であり、本発明では素子の種類は限定されない。また画像処理回路についても公知のデジタルカメラやスマートフォンなどに実装されており周知技術を適宜使用することができる。
【0032】
上記実施例では、立体画像を撮影するために水平方向に2個並列し、光軸も略同一な方向を向かせて配置した構成を示しているが、本発明はこれに限定されない。
【0033】
例えば、中心から四方に向けて4個のパノラマ撮影用レンズを放射状に向けて配列した場合、各パノラマ撮影用レンズはなるべく中心に集約する必要があるものの、上記のように大口径レンズではそれが困難となる問題がある。
【0034】
そこで、本発明のように広角レンズの前玉の円周隅部の両側を切り落とすことで、中心に寄せることが可能となり、視点の中心のずれを抑制することが可能となる。また、配列方法も水平に限らず、垂直等任意の向きに配列することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 広角レンズ
11 円周隅部
12 直線状部分
13 光軸
14 デジタル撮像素子
20 広角レンズ
21 円周隅部
22 直線状部分
23 光軸
24 デジタル撮像素子
図1
図2
図3