(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073586
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183660
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小川 直人
(72)【発明者】
【氏名】米澤 和洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 陽子
(72)【発明者】
【氏名】浜口 裕香
(57)【要約】
【課題】衛生マスクを利用することにより簡単に装着することができ、また、人目を気にせず長時間着用可能であり、頬のたるみや緩みの予防、改善又は抑制が期待できるマスクを提供する。
【解決手段】口及び鼻を覆うマスク本体部と、マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを少なくとも有するマスクであり、前記マスク本体部、前記顎被覆部及び前記耳掛け部は、繊維部材からなり、少なくとも前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材は、伸縮性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口及び鼻を覆うマスク本体部と、
前記マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、
前記マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを少なくとも有し、
前記マスク本体部、前記顎被覆部及び前記耳掛け部は、繊維部材からなり、
少なくとも前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材は、伸縮性を有する
マスク。
【請求項2】
前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の破断伸度は、JIS L1096 引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、100%以上である
請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の30%伸長時の応力は、JIS L1096 引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、0.1N/2.5cm以上である
請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記顎被覆部は、前記マスク本体部の下端に接続されており、
前記耳掛け部は、前記マスク本体の左端及び右端に接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【請求項5】
前記顎被覆部は、前記マスク本体部の下端から左端及び右端にかけて接続されており、
前記耳掛け部は、前記顎被覆部に接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関し、特に衛生マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
衛生マスク(以下、「マスク」と略記する)は、冷気や乾燥から鼻やのどを守ったり、口や鼻から分泌される分泌物を撒き散らすことを防いだり、空気中の花粉や病原体などの浮遊物が体内に取り込まれるのを防いだりする。
【0003】
従来、マスクは、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行する冬の時期、又は花粉が飛散する春の時期に着用されることが多かった。
【0004】
近年、花粉などのアレルゲンの種類増大、地球環境変化による黄砂又はPM2.5などの微小粒状物質の浮遊時期拡大などにより、花粉や黄砂の浮遊時期などにおいてもマスクを着用する機会が増えてきている。さらに、世界的な感染症の蔓延により、屋外でマスクを着用する場合に限らず、季節を問わず屋内においてもマスクを着用することが増えている。
【0005】
また、近年、男女を問わす美容について関心が高まり、頬のたるみや緩みを改善したり抑制したりするために口角を挙げるマッサージが行われている。
【0006】
このようなマッサージは、小顔ローラー、美顔ローラー、フェイスローラー、ローラー美顔などとも呼ばれるマッサージ器具を用いて行われる。このようなマッサージ器具として、例えば、棒状部の先端に金属製又はプラスチック製の球状物を有するものが知られている。このマッサージ器具を用いて球状物を顔の肌の上を転がすことで、顔のマッサージを行うことができる。
【0007】
また、頬や顎下のたるみを引き上げるためのマスクとして、液体の化粧水が含侵され且つ化粧水がマスク本体部に浸透することを防ぐ作用のある頬当部材と、留め具を有する後頭部用帯部及び頭頂用帯部とを有するフェイスマスクが知られている。(例えば特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたフェイスマスクは、顎部から頭頂部にかけて帯状物を巻く必要があるとともに、頭部の周囲に沿って帯状物を巻く必要があるので、意匠性に劣る。このため、特許文献1に記載されたフェイスマスクは、通常、自宅等のプライベートな空間及び時間のみでしか使用することができない。さらに、特許文献1に記載されたフェイスマスクは、装着が煩雑であるという問題も有している。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、季節及び屋内外を問わず着用する状況にある衛生マスクを利用することにより簡単に装着することができ、また、意匠性に優れ人目を気にせず長時間着用可能であり、頬のたるみや緩みの予防、改善又は抑制が期待できるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。
【0012】
(1)本発明に係るマスクは、口及び鼻を覆うマスク本体部と、前記マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、前記マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを少なくとも有し、前記マスク本体部、前記顎被覆部及び前記耳掛け部は、繊維部材からなり、少なくとも前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材は、伸縮性を有する。
【0013】
(2)本発明に係るマスクにおいて、前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の破断伸度は、JIS L1096 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、100%以上であるとよい。
【0014】
(3)本発明に係るマスクにおいて、前記顎被覆部及び/又は前記耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の30%伸長時の応力は、JIS L1096 引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、0.1N/2.5cm以上であるとよい。
【0015】
(4)本発明に係るマスクにおいて、前記顎被覆部は、前記マスク本体部の下端に接続されており、前記耳掛け部は、前記マスク本体の左端及び右端に接続されているとよい。
【0016】
(5)本発明に係るマスクにおいて、前記顎被覆部は、前記マスク本体部の下端から左端及び右端にかけて接続されており、前記耳掛け部は、前記顎被覆部に接続されているとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマスクによれば、簡単に装着(着用)することができ、また、意匠性に優れるため人目を気にせず屋内外を問わず長時間着用可能であり、長時間にわたり頬を引き上げることができるため頬のたるみや緩みの予防、改善又は抑制が期待できる。また、マスク着用時に若々しく見えることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係るマスクの表側(外気側)の写真(図面代用写真)である。
【
図2A】実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)の写真(図面代用写真)である。
【
図2B】実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)を拡大した写真(図面代用写真)である。
【
図3】実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)を内側にして二つ折りにした時の表側(マスク左側側面)の写真(図面代用写真)である。
【
図4A】実施の形態に係るマスクを裏側(口元側)から見たときの左側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【
図4B】実施の形態に係るマスクを裏側(口元側)から見たときの右側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【
図5A】他の実施の形態に係るマスクの表側(外気側)の写真(図面代用写真)である。
【
図5B】他の実施の形態に係るマスクの表側(外気側)を拡大した写真(図面代用写真)である。
【
図6A】他の実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)の写真(図面代用写真)である。
【
図6B】他の実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)を拡大した写真(図面代用写真)である。
【
図7】他の実施の形態に係るマスクの裏側(口元側)を内側にして二つ折りにした時の表側(マスク左側側面)の写真(図面代用写真)である。
【
図8A】実施の形態に係るマスクを裏側(口元側)から見たときの左側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【
図8B】実施の形態に係るマスクを裏側(口元側)から見たときの右側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、本発明は、以下の態様のみに限定されるものではなく、本発明の精神と実施の範囲において多くの変形が可能である。
【0020】
まず、
図1~
図4Bを用いて、実施の形態に係るマスクの構成について説明する。
【0021】
図1は、実施の形態に係るマスクの表側(外気側)の写真(図面代用写真)である。
図2Aは、同マスクの裏側(口元側)の写真(図面代用写真)である。
図2Bは、同マスクの裏側を拡大した写真(図面代用写真)である。
図3は、同マスクの裏側を内側にして二つ折りにした時の表側(マスク左側側面)の写真(図面代用写真)である。
図4Aは、同マスクを裏側から見たときの左側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
図4Bは、同マスクを裏側から見たときの右側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【0022】
図1~
図4Bに示されるように、本実施の形態に係るマスクは、衛生マスクであって、口及び鼻を覆うマスク本体部と、マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを少なくとも有する。本実施の形態におけるマスクでは、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部は、繊維部材からなり、少なくとも顎被覆部及び/又は耳掛け部に用いられた繊維部材は、伸縮性を有する。
【0023】
マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部に用いられる繊維部材(繊維素材)としては、織物、編物又は不織布等の任意の布帛を用いることができる。また、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部に用いられる繊維部材として、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲で、織物、編物又は不織布等とフィルムとを積層したものを用いてもよい。
【0024】
マスク本体部の左右に位置する耳掛け部は、マスクを装着する際及びマスク着用時にマスク着用者の耳に掛けられる部位である。本実施の形態において、耳掛け部は、マスク本体部の左右の各々に設けられている。具体的には、耳掛け部は、接着等で接合したり縫製したり等によりマスク本体部の左端及び右端に接続されている。したがって、マスクは、一対の耳掛け部を有する。一対の耳掛け部の一方は、マスク着用者の左耳にかけられる第1の耳掛け部であり、一対の耳掛け部の他方は、マスク着用者の右耳にかけられる第2の耳掛け部である。
【0025】
なお、耳掛け部は、マスク本体部に接続されていなくてもよい。つまり、耳掛け部とマスク本体部との間に別の繊維部材(生地)からなる中間部が存在していてもよい。この場合、中間部に用いられる繊維部材は、マスク本体部に用いられる繊維部材と同じであってもよいし、耳掛け部に用いられる繊維部材と同じであってもよいし、マスク本体部及び耳掛け部に用いられる繊維部材とは異なる繊維部材であってもよい。
【0026】
一対の耳掛け部の各々は、マスク着用者の耳が入る大きさの穴を有する。この場合、一対の耳掛け部は、織物、編物又は不織布等のシート状の一部に耳をかけるための穴を有するものであってもよいし、細い紐状の紐状物であってもよい。耳掛け部が紐状物である場合、耳掛け部は、耳をかけるための輪っか状に形成されていてもよい。この場合、あらかじめ輪っか状に紐状物同士を接合したものをマスク本体部に接合することで輪っか状の耳掛け部を形成してもよいし、1本の紐状物の両端をマスク本体部等に接合することで輪っか状の耳掛け部を形成してもよい。あるいは、輪っか状の耳掛け部は、マスク着用前はマスク本体部の左右の各々に接合されてマスク本体部から引き出された2本の紐状物の先端部をマスクを装着する際の任意のタイミングで蝶々結びなどにより結ぶなどして輪っか状にすることで形成されたものであってもよい。
【0027】
耳掛け部に用いられる繊維部材は、伸縮性を有する。この場合、耳掛け部を構成する繊維素材そのものが伸縮性を有することで、耳掛け部に用いられる繊維部材が伸縮性を有していてもよいし、耳掛け部に用いられる繊維部材の形状及び構造によって耳掛け部に用いられる繊維部材が伸縮性を有していてもよいし、その両方、つまり耳掛け部に用いられる繊維部材が伸縮性を有し且つその繊維部材の形状及び構造によって、耳掛け部に用いられる繊維部材が伸縮性を有していてもよい。
【0028】
また、本実施の形態における耳掛け部は、さらに、長さ及び/又は伸長時の応力(伸長応力)を調整することができる調整手段を有するとよい。耳掛け部に用いられた繊維部材が伸縮性を有することだけでも耳掛け部の長さ及び/又は伸長時の応力を調整することができるが、上記調整手段によって耳掛け部の長さ及び/又は伸長時の応力を調整できることにより、その時々でマスクを装着する時にユーザ(マスク着用者)の好みの程度で頬を引き上げたり口角を引き上げたりすることができ、また、マスク着用時の体調等により耳にかかる張力の調整が可能となるので耳掛け部によって耳の痛みが発生することを抑制できる。
【0029】
耳掛け部の長さ及び/又は伸長時の応力(伸長応力)を調整できる調整手段としては、面ファスナーやスライド式留め具、又は、マスク本体部から引き出された2本の紐状物(結ぶことで耳掛け部となるもの)が挙げられる。面ファスナーやスライド式留め具などを用いることで、耳掛け部を任意の長さに調整することができる。また、マスク本体部から引き出された2本の紐状物を任意の箇所で結ぶことで、耳掛け部を任意の長さに調整することができる。
【0030】
マスク本体部の下に位置する顎被覆部は、例えば、マスクにおけるマスク着用者の顎の少なくとも一部を覆う部位である。本実施の形態において、顎被覆部は、マスク本体部の下に取り付けられている。具体的には、顎被覆部は、接着等で接合したり縫製したり等によりマスク本体部の下端に接続されている。なお、顎被覆部は、マスク着用者の顎の全部を覆っていてもよい。また、顎被覆部がマスク着用者の顎の一部を覆っている場合、マスク本体部がマスク着用者の顎の他の一部を覆っていてもよい。
【0031】
なお、顎被覆部は、マスク本体部に接続されていなくてもよい。つまり、顎被覆部とマスク本体部との間に別の繊維部材(生地)からなる中間部が存在していてもよい。この場合、中間部に用いられる繊維部材は、マスク本体部に用いられる繊維部材と同じであってもよいし、顎被覆部に用いられる繊維部材と同じであってもよいし、マスク本体部及び顎被覆部に用いられる繊維部材とは異なる繊維部材であってもよい。
【0032】
マスク着用時においては、特に顎被覆部から耳掛け部に対して張力がかかっている必要があるが、この張力を維持しながら当該張力によりマスク着用時にマスク全体がずり上がってこないように、顎被覆部は、マスク着用者の顎下部に引っかかるように顎下部(顎の裏側部分)の少なくとも一部を覆っているとよい。マスクがこのような顎被覆部を有することにより、マスク着用者の頬とマスクとが接触している部分では、マスクが頬や口角を引き上げながら、しかもマスク全体が上にずり上がることを抑制できる。
【0033】
上記のように、顎被覆部に用いられる繊維部材は、伸縮性を有する。この場合、顎被覆部を構成する繊維素材そのものが伸縮性を有することで、顎被覆部に用いられる繊維部材が伸縮性を有していてもよいし、顎被覆部に用いられる繊維部材の形状及び構造によって顎被覆部に用いられる繊維部材が伸縮性を有していてもよい。
【0034】
なお、顎被覆部に用いられる繊維部材は、耳掛け部に用いられる繊維部材と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
マスク本体部は、マスクにおける主としてマスク着用者の口及び鼻を覆う部位である。マスク本体部は、主として、冷気や乾燥から鼻やのどを守ったり、口や鼻から分泌される分泌物を撒き散らすことを抑制したり、空気中の花粉や病原体などの浮遊物が体内に取り込まれることを抑制したりする。このため、マスク本体部は、後述するように通気性を有しているとよい。
【0036】
マスク本体部の平面視の形状は、三角形、四角形又は五角形などの多角形、あるいは、楕円又は円形などである。なお、マスク本体部の形状は、これらの形状に限定されるものではなく、任意の形状が採用されうる。
【0037】
また、マスク着用時における呼吸のしやすさや会話のしやすさの観点化からは、マスク本体部を側面からみて膨らんでいるような形状にするなどして、マスク着用者の口とマスク本体部との間に隙間(空間)が存在しているとよい。
【0038】
マスク本体部に用いられる繊維部材を構成する素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアセタール、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、又は、アセテートやキュプラ、ビスコースなどのレーヨンなどが挙げられ、また、これらの他に、ポリ乳酸、ポリイミド又はポリフェニレンサルファイドなどの化学繊維、綿、麻、絹又は羊毛などの天然繊維が挙げられる。これらの素材は、単独で用いられていてもよいし、他の素材との混紡、混繊、交織、交編、さらに芯鞘構造を有する複合繊維などとして用いられてもよい。また、単独あるいは複数の素材で作製された布を複数積層したものをマスク本体部として用いてもよい。
【0039】
なお、本実施の形態において、マスク本体部に用いられる繊維部材は、顎被覆部及び耳掛け部に用いられる繊維部材とは異なっているが、顎被覆部に用いられる繊維部材又は耳掛け部に用いられる繊維部材と同じであってもよい。
【0040】
また、マスク本体部に用いられる繊維部材を構成する素材には、所期の目的を逸脱しない限りにおいて、染料や顔料などの着色剤、酸化チタンなどの艶消し剤、酸化防止剤、安定剤、変色防止剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱剤、抗菌防臭剤、制菌剤、抗ウイルス剤、SR剤、無機粒子、染色助剤、冷感剤、保湿剤、吸湿剤、撥水剤、香料などの着色剤や各種機能性剤が付与されていてもよい。この場合、着色剤や機能性剤は、繊維に内添されていてもよいし、繊維表面に付着されていてもよい。また、着色剤や機能性剤は、単独で用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよいし、付着量の向上や付着した着色剤や機能性剤の脱離を防ぐ目的でバインダーと組み合わせて用いてもよい。
【0041】
このように構成されるマスクでは、少なくとも顎被覆部及び/又は耳掛け部に用いられた繊維部材が伸縮性を有する。これにより、マスクを着用した際に、マスクを構成する繊維部材が頬に密着すると共に、頬と密着する繊維部材によって、頬が引き上げられたり口角が引き上げられたりし、また、年齢等で頬が下がり始めている場合には下がった頬を持ち上げるようにしたりする。つまり、本実施の形態におけるマスクは、頬や口角を引き上げる作用を有する。このため、マスク着用時においてマスク着用者が実年齢よりも若く見えるようになる。さらに、近年毎日長時間マスクを着用する状況が続いているが、このマスクを長時間を着用し続けることで、頬のたるみや緩みの予防、改善又は抑制が期待できる。
【0042】
このような観点から、顎被覆部及び耳掛け部に用いられた伸縮性を有する繊維部材には、ポリウレタン弾性糸が含まれていることが好ましい。このような繊維部材としては、例えば、キックバック性に優れるパワーネット(例えばポリウレタン弾性糸の周りをナイロン繊維でカバリングした糸をメッシュ状に編み込んだもの)を用いることが好ましい。特に、キックバックを含めた伸縮性や肌触りなどの観点より、伸縮性を有する繊維部材として、ファンデーションなどとして肌着などに使用されているものを用いることが好ましい。
【0043】
より具体的には、顎被覆部及び耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の破断伸度(破断時の伸び率)は、JIS L1096 引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、100%以上であるとよい。この破断伸度が100%以上であれば、マスクを構成する繊維部材と肌との密着性の観点より好ましい。つまり、繊維部材の破断伸度が100%以上であれば、マスクと肌との密着性が向上する。また、繊維部材の破断伸度が100%以上であれば、マスクを装着する際及びマスクを着用している時に、マスクが破断することを抑制できるので、取り扱いが容易なマスクを実現できる。この繊維部材の破断伸度は、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上、更に好ましくは250%以上である。また、この繊維部材の破断伸度の上限は、特に限定されるものではないが、1000%程度である。
【0044】
なお、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部を構成する各繊維部材が複数の繊維部材を接合して積層されたものである場合、繊維部材の破断伸度とは、複数の繊維部材が積層された繊維部材の破断伸度のことをいう。
【0045】
また、顎被覆部及び耳掛け部に用いられた繊維部材の伸び率が、マスク本体部に用いられた繊維部材の伸び率よりも大きいとよい。これにより、マスクにおける顎被覆部から耳掛け部にかけての部位が、他の部位に比べて、ユーザの皮膚(主として頬)とマスクを構成する繊維部材とが密着するので、後述する顎被覆部及びは耳掛け部の伸長時の応力(伸長応力)と相まって、より頬が引き上げられる又は口角が引き上げられるように作用する。
【0046】
なお、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部を構成する各繊維部材が複数の繊維部材を接合して積層されたものである場合、繊維部材の伸び率とは、複数の繊維部材が積層された繊維部材の破断時、積層された複数の繊維部材を構成する繊維部材の少なくとも一つの繊維部材の破断時、及び、積層された複数の繊維部材の接合が破壊された時の内、最も小さい時の伸び率のことをいう。
【0047】
また、顎被覆部及び耳掛け部に用いられた繊維部材の経方向及び緯方向の少なくとも一方の30%伸長時の応力(伸長応力)は、JIS L1096 引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定したときに、0.1N/2.5cm以上であるとよい。
【0048】
頬や口角の引き上げ効果をよくするとの観点から、上記30%伸長時の応力は、好ましくは0.5N/2.5cm以上、より好ましくは1.0N/2.5cm以上、さらにより好ましく1.5N/2.5cm以上、さらにまたより好ましくは2.0N/2.5cmである。また、上記30%伸長時の応力の上限については、特に限定されるものではないが、頬や口角の引き上げ効果とマスク着用時の肌や耳への負担軽減とマスクの形状維持との観点から、上記30%伸長時の応力は、20N/2.5cm以下、より好ましくは10N/2.5cm以下、さらにより好ましくは5N/2.5cm以下である。
【0049】
なお、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部を構成する各繊維部材が複数の繊維部材を接合して積層されたものである場合、繊維部材の30%伸長時の応力(伸長応力)とは、複数の繊維部材が積層された繊維部材の30%伸長時の応力(伸長応力)のことをいう。
【0050】
また、衛生マスクとしての冷気や乾燥から鼻やのどを守る、口や鼻からの分泌物を撒き散らすのを抑制する、又は、空気中の花粉や病原体などの浮遊物が体内に取り込まれることを抑制するなどの効果及び呼吸のしやすさとの観点からは、マスク本体部に用いた繊維部材の通気度は、JIS L1096 通気性 A法(フラジール形法)にて測定したときに、10~200cm3/cm2・sであるとよい。特に、呼吸のしやすさの観点からは、マスク本体部に用いた繊維部材の通気度の下限は、15cm3/cm2・sであるとよく、より好ましくは20cm3/cm2・sであり、さらにより好ましくは30cm3/cm2・sである。また、口や鼻からの分泌物を撒き散らすことを抑制するとの観点及び空気中の花粉や病原体などの浮遊物が体内に取り込まれることを抑制するとの観点からは、マスク本体部に用いた繊維部材の通気度の上限は、150cm3/cm2・sであるとよく、さらに好ましくは100cm3/cm2・sである。
【0051】
また、マスク着用時において、マスク着用者の頬は口や鼻に比べてマスクを構成する繊維部材と密着しているため、マスク着用時の快適性の観点からは、顎被覆部及び/又は耳掛けを構成する繊維部材の通気度は、マスク本体部を構成する繊維部材の通気度よりも大きい方が好ましい。快適性の観点から顎被覆部及び耳掛けを構成する繊維部材の好ましい通気度としては、100cm3/cm2・s以上、より好ましくは200cm3/cm2・s以上、さらにより好ましくは300cm3/cm2・s以上、さらにまた好ましくは400cm3/cm2・s以上である。
【0052】
なお、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部を構成する各繊維部材が複数の繊維部材を接合して積層されたものである場合、繊維部材の通気度とは、複数の繊維部材が積層された繊維部材の通気度のことをいう。
【0053】
また、本実施の形態に係るマスクにおいて、頬の引き上げ又は口角の引き上げを目的として、引き上げ力を向上させるための引き上げ補助部材を、マスク本体部における顎被覆部から耳掛け部にかけての部位に別途設けてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態におけるマスクでは、
図1に示すように、顎被覆部は、マスク本体部の下のみに設けられていたが、これに限らない。例えば、
図5A~
図8Bに示される他の実施の形態のマスクのように、顎被覆部は、マスク本体部の下と左右との両方にわたって設けられていてもよい。
【0055】
図5Aは、他の実施の形態に係るマスクの表側(外気側)の写真(図面代用写真)である。
図5Bは、同マスクの表側を拡大した写真(図面代用写真)である。
図6Aは、同マスクの裏側(口元側)の写真(図面代用写真)である。
図6Bは、同マスクの裏側を拡大した写真(図面代用写真)である。
図7は、同マスクの裏側を内側にして二つ折りにした時の表側(マスク左側側面)の写真(図面代用写真)である。
図8Aは、同マスクを裏側から見たときの左側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
図8Bは、同マスクを裏側から見たときの右側の耳掛け部の写真(図面代用写真)である。
【0056】
図5A~
図8Bに示すように、他の実施の形態に係るマスクは、先の実施の形態に係るマスクと同様に、口及び鼻を覆うマスク本体部と、マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを少なくとも有する。
【0057】
そして、
図5A~
図8Bに示すように、他の実施の形態に係るマスクでは、顎被覆部は、マスク本体部の下端から左端及び右端にかけて接続されており、耳掛け部は、その顎被覆部に接続されている。つまり、顎被覆部は、少なくとも一部がマスク本体部の下に位置していればよく、マスク本体部の下からマスク本体部の左右にまで連続して延在していてもよい。この場合、この他の実施の形態では、耳掛け部は、マスク本体部の下から左右にまで延在する顎被覆部を介してマスク本体部の左右に位置している。
【0058】
また、他の実施の形態では、先の実施の形態と同様に、マスク本体部は、マスク着用者の鼻及び口に対応する部分に空間ができるように膨らんでいるが、
図5A及び
図5Bに示すように、この他の実施の形態では、マスクを正面から見たときに、マスク本体部の下端部の輪郭線が、マスク本体の鼻部を中心として略U字状、略V字状又は略円弧状に湾曲した形状になっている。
【0059】
また、この他の実施の形態において、耳掛け部は、顎被覆部の左右に接続されている。具体的には、顎被覆部の左右には、紐状物を通すための上下が開放された筒状部が形成されており、
図8A及び
図8Bに示すように、その筒状部に紐状物が通されて、その紐状物を任意の長さで蝶々結びなどで結ぶなどして輪っかを作ることで耳掛け部が形成されている。
【0060】
また、この他の実施の形態において、顎被覆部は、マスク本体部の下端から左端及び右端の全体にわたってマスク本体の外形に沿った形状を有する。具体的には、顎被覆部は、マスクを正面から見たときに、全体として、略U字状、略V字状又は略円弧状に湾曲した形状になっている。なお、顎被覆部の幅は、一定でもよいが、
図5Bに示すように、一定でなくてもよい。この場合、顎被覆部の幅は、マスク本体の下から左右にかけて徐々に広がるように構成されていてもよい。また、
図6A、
図6B及び
図7に示すように、マスク着用者の顎下部に顎被覆部が引っかかりやすいように、顎被覆部は、ややマスクの内側に入る(やや袋状になる)ようにマスク本体部と接合されているとよい。
【0061】
なお、この他の実施の形態において、マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部に用いられた繊維部材及び形態(例えば積層/単層)は、いずれも先の実施の形態におけるマスクのマスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部に用いられる繊維部材及び形態と同じである。
【0062】
この他の実施の形態におけるマスクでも、先の実施の形態におけるマスクと同様の効果が得られる。しかも、この他の実施の形態におけるマスクでは、顎被覆部がマスク本体部の下だけではなくマスク本体部の左右にまで配置されており、さらに顎被覆部と耳掛け部とが接している。これにより、顎被覆部を構成する伸縮性を有する繊維部材により、先の実施の形態におけるマスクと比べて、顎から耳方向へと、頬や口角がより引き上げられたり持ち上げられたりする効果が向上する。
【0063】
(実施例)
以下、実施例を挙げて本発明に係るマスクを詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
[通気度]
マスク本体部に用いた繊維部材に対して、JIS L1096(2010)通気性 A法(フラジール形法)に準じて測定した。
【0065】
[破断伸度と30%伸長時の応力]
マスク本体部、顎被覆部及び耳掛け部に用いた繊維部材の経方向及び緯方向のそれぞれに対して、JIS L1096(2010)引張強さ及び伸び率 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて試験を行い、破断伸度(切断時の伸び率)及び30%伸長時の応力(伸長応力)を測定した。なお、測定する試料の幅は2.5cmとし、つかみ間隔を100mm、引張速度を100mm/分とした。
【0066】
なお、本発明でいう破断伸度及び30%伸長時の応力は、幅2.5cmにおける繊維部材の伸び率(%)と繊維部材の厚みが一定の厚みには換算せず、繊維部材毎の幅2.5cmあたりの強さ(N)のことである。
【0067】
本実施例のマスクは、
図1~
図4Bに示される構成のマスクであっては、口及び鼻を覆うマスク本体部と、マスク本体部の下に位置する顎被覆部と、マスク本体部の左右に位置する耳掛け部とを有する。
【0068】
本実施例のマスクは、鼻及び口のマスクの間に空間ができるように膨らんでおり、
図1に示すように、マスクを正面から見たときに、マスク本体部の形状は、マスクの上部の鼻にあたる部分が上部に長くなった略5角形になっている。
【0069】
また、
図4A及び
図4Bに示すように、マスク本体部の左右には、耳掛け部を形成するための紐状物を通すための上下が開放された筒状部が形成されており、その筒状部に紐状物が通されて、その紐状物を任意の長さで蝶々結びなどで結ぶなどして輪っかを作ることで耳掛け部が形成されている。
【0070】
また、
図2A及び
図2Bに示すように、顎被覆部は、マスク本体部の下端の全幅に接合されている。顎被覆部は、マスク着用者の顎下部にマスクが引っかかりやすいようにややマスクの内側に入る(やや袋状になる)ようにマスク本体部と接合されている。
【0071】
また、本実施例のマスクでは、顎被覆部がマスク本体部の下端の左右両端まで存在しており、耳掛け部は、マスク本体部の左右両端の下端にまで存在しているので。これにより、顎被覆部と耳掛け部がほぼ連続するように設けられている。
【0072】
マスク本体部は、ポリウレタン弾性糸の周りをポリエステル繊維でカバリングした糸を用いた得られた編物(ハイテンションニット)に、以下で説明を行う顎被覆部に用いたパワーネットを積層したものを用いた。
【0073】
マスク本体部に用いられた繊維部材の通気度は、19.2cm3/cm2・sであった。また、マスク本体部に用いられた繊維部材の破断伸度は、縦方向が206%で、緯方向が220%であった。また、マスク本体部に用いられた繊維部材の30%伸長時の応力は、縦方向が2.9N/2.5cmで、緯方向が4.7N/2.5cmであった。
【0074】
また、本実施例のマスクでは、顎被覆部と耳掛け部とで同一の繊維部材を用いたが、顎被覆部に用いられた繊維部材は、パワーネット(ポリウレタン弾性糸の周りをナイロン繊維でカバリングした糸をメッシュ状に編み込んだもの)からなる繊維部材を2枚重ねたもの(積層したもの)であり、耳掛け部は、パワーネット(ポリウレタン弾性糸の周りをナイロン繊維でカバリングした糸をメッシュ状に編み込んだもの)からなる繊維部材が1枚のみのもの(2枚重ねていないもの、つまり積層していないもの)である。
【0075】
この場合、顎被覆部に用いられた繊維部材(パワーネット2枚分)の通気度は、232cm3/cm2・sであった。また、顎被覆部に用いられた繊維部材(パワーネット2枚分)の破断伸度は、縦方向が267%で、緯方向が217%であった。また、顎被覆部に用いられた繊維部材(パワーネット2枚分)の30%伸長時の応力は、縦方向が2.5N/2.5cmで、緯方向が5.9N/2.5cmであった。
【0076】
一方、耳掛け部に用いられた繊維部材(パワーネット1枚分)の通気度は、466cm3/cm2・sであった。また、耳掛け部に用いられた繊維部材(パワーネット1枚分)の破断伸度は、縦方向が268%で、緯方向が215%であった。また、耳掛け部に用いられた繊維部材(パワーネット1枚分)の30%伸長時の応力は、縦方向が1.2N/2.5cmで、緯方向が2.8N/2.5cmであった。
【0077】
本実施例のマスクを実際に着用してみたところ、頬及び口角が引き上げられ、マスクを着用している状態での見た目が実年齢よりも若く見えた。また、本実施例のマスクは、一般的な衛生マスクと同様に装着(着用)が簡単であり、意匠性に優れるため、人目を気にせず、屋内外を問わず着用し続けることが可能であり、長時間にわたり頬を引き上げることができるため、頬のたるみや緩みの予防、改善又は抑制が期待できる。