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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073615
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】飛沫防止パネルの新構造
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/00 20060101AFI20220510BHJP
   A47G 5/00 20060101ALI20220510BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61G10/00 Z
A47G5/00 Z
E04B2/74 561H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183723
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】390008350
【氏名又は名称】東邦シートフレーム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520429417
【氏名又は名称】株式会社創新化工
(71)【出願人】
【識別番号】509293187
【氏名又は名称】藤光樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】鎌鹿 智教
(72)【発明者】
【氏名】黒川 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄也
(72)【発明者】
【氏名】本田 晴昭
(72)【発明者】
【氏名】池神 学
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341KK10
(57)【要約】
【課題】飛沫が一方の側から他方の側へ飛散することを防ぐことができる飛沫防止パネルの新構造を提供する。
【解決手段】飛沫防止パネル100は、平坦状の本体部11を備え、本体部11における端部に傾斜部13が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦状の本体部を備え、
前記本体部における端部に傾斜部が設けられている、
飛沫防止パネル。
【請求項2】
前記傾斜部が、前記本体部の両方の面の側に設けられている、
請求項1に記載の飛沫防止パネル。
【請求項3】
前記傾斜部が、前記本体部と別部品になっている、
請求項1又は2に記載の飛沫防止パネル。
【請求項4】
前記本体部の下端を支持し前記本体部を直立させるスタンド部を更に備え、
前記傾斜部は、前記本体部の上端に設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の飛沫防止パネル。
【請求項5】
部材に取付けられる飛沫防止パネルであって、
板状の本体部を有し、
前記本体部には、前記部材の端部に取付け可能な取付け部が設けられている、
飛沫防止パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛沫防止パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の感染経路の一つとして、咳、くしゃみ等による飛沫感染が挙げられる。これを防ぐために、飛沫防止パネルを設置することが有効な手段であることが周知されている。
現在、飛沫防止パネルは医療、介護、福祉施設だけでなく店舗、各企業へ導入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3227293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛沫防止パネルの多くは透明な平板形状である。また、前述の平板形状は天井からは垂直に、壁からは直角に設置されることが多い。
しかしながら、通常の平板形状であると、平板形状の一方の面の側から生じた飛沫が、平板形状の端部を超えて他方の側に飛散するおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、飛沫が一方の側から他方の側へ飛散することを防ぐことができる飛沫防止パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る飛沫防止パネルは、平坦状の本体部を備え、前記本体部における端部に傾斜部が設けられている。
【0007】
この発明によれば、本体部における端部に傾斜部を有している。すなわち、本体部の端部が一方の面の側に折れ曲がった形状を有している。
ここで、本体部の一方の面の側から生じた飛沫が本体部に衝突すると、飛沫は本体部の表面に沿って移動する。
【0008】
このとき、生じた飛沫の勢いが強い(くしゃみ等)と、飛沫が本体部の面積を超えて移動することがある。この場合において、本体部に傾斜部を有していないと、飛沫が本体部の他方の側へ移動する。すなわち、有効に飛沫の飛散を防止することができない。
【0009】
そこで、本願の発明のように、本体部の端部に傾斜部が設けられていると、一方の面の側から生じた飛沫が本体部の端部に移動したとき、飛沫は傾斜部の形状に沿って、一方の面の側に向けて移動しながら、本体部の端部から離れる。
すなわち、本体部を離れた飛沫の軌道が、本体部の他方の面の側から一方の面の側に向けた方向に向く。つまり、他方の面の側に飛沫が移動することを防ぐことができる。
このことによって、飛沫が一方の側から他方の側へ飛散することを防ぐことができる。
【0010】
また、傾斜部が本体部において一体成型されている場合は、部材が折れ曲がっていることによって剛性が向上する。これによって、例えば、比較的剛性の低い部材を用いて大サイズの本体部を成型した際に生じる、自重による本体部の形状変化のリスクを低減することができる。
【0011】
また、前記傾斜部が、前記本体部の両方の面の側に設けられていてもよい。
【0012】
この発明によれば、傾斜部が、本体部の両方の面の側に設けられている。このことによって、本体部におけるいずれの面の側から飛沫が発生しても、飛沫がそれぞれ反対の側に移動することを防ぐことができる。
【0013】
また、前記傾斜部が、前記本体部と別部品になっていてもよい。
【0014】
この発明によれば、傾斜部が、本体部と別部品になっている。すなわち、傾斜部を後付けすることができる。このことによって、飛沫防止パネルの設置場所の条件等によって、傾斜部の形状や大きさを適宜選択することができる。
更に、既存の、傾斜部を有さない飛沫防止パネルにも傾斜部を後付けすることができる。すなわち、上述の効果を容易かつ迅速に各設置場所にもたらすことができる。
【0015】
また、前記本体部の下端を支持し前記本体部を直立させるスタンド部を更に備え、前記傾斜部は、前記本体部の上端に設けられていてもよい。
【0016】
この発明によれば、本体部を直立させるスタンド部を備え、傾斜部が本体部の上端に設けられている。このことによって、机上あるいは床上に本体部を自立させることで、容易に飛沫防止パネルを設置することができる。更に、傾斜部が本体部の上端に設けられていることで、特に飛沫が一方の面の側の上方から他方の面の側に移動することを防ぐことができる。
【0017】
また、部材に取付けられる飛沫防止パネルであって、板状の本体部を有し、前記本体部には、前記部材の端部に取付け可能な取付け部が設けられていてもよい。
【0018】
この発明によれば、板状の本体部には部材の端部に取付け可能な取付け部が設けられている。このことによって、既存の部材(例えば、デスクパーテーション等)に取付けることで、上述の効果をもたらすことができる。つまり、既存の部材を活用することで、別途飛沫防止パネルを新設することなく、飛沫防止性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、飛沫が一方の側から他方の側へ飛散することを防ぐことができる飛沫防止パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る飛沫防止パネルを示す斜視図である。
図2】飛沫防止パネルが、天井から吊るされて設けられた状態を示す斜視図である。
図3図1に示す飛沫防止パネルにおいて、傾斜部が別部品となっている変形例である。
図4図1に示す飛沫防止パネルにおける傾斜部の反対側に、別部品の傾斜部を取付けた変形例である。
図5】傾斜状の本体部に取付け部が設けられた、略W型の飛沫防止パネルの取付け例である。
図6】傾斜状の本体部に取付け部が設けられた、略V型の飛沫防止パネルの取付け例である。
図7】平坦状の板に飛沫が衝突した状態を示す図である。
図8】飛沫が生じる側の反対側に傾斜部(傾斜角30°)を有する飛沫防止パネルに、飛沫が衝突した状態を示す図である。
図9】飛沫が生じる側に傾斜部(傾斜角10°)を有する飛沫防止パネルに、飛沫が衝突した状態を示す図である。
図10】飛沫が生じる側に傾斜部(傾斜角30°)を有する飛沫防止パネルに、飛沫が衝突した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る飛沫防止パネルを説明する。
図1に示すように、飛沫防止パネル100は、本体部11と、スタンド部12と、傾斜部13と、を備える。
飛沫防止パネル100は、飛沫感染防止対策の一つとして、医療、介護、福祉施設だけでなく、店舗の窓口や各企業で用いられる。
【0022】
飛沫防止パネル100の設置場所においては、相対する両者の間に設けられた飛沫防止パネル100を介して会話を行う。すると、各人から生じた飛沫は相手に曝露することなく、飛沫防止パネル100に衝突する。このことで、飛沫が相手に曝露することによって生じる感染を防ぐ。
【0023】
本体部11は、平坦状の形状を有している。本体部11は、上述のように飛沫防止パネル100を介して会話を行う際に、会話人に面する部位である。そのため、本体部11は、会話人がそれぞれ相手の顔が見やすいように、透明の部材で形成されることが好ましい。
本体部11は、例えば、床上あるいは机上に垂直に設けられる。また、本体部11の寸法は、設置場所のスペースによるが、高さ400mm以上が好ましい。また幅については、同様に400mm以上が好ましい。
【0024】
スタンド部12は、本体部11の下端を支持し、机上あるいは床上等に直立させる。例えば、スタンド部12の中央部と、本体部11の取付け部位にそれぞれ切り込みを入れ、それらをかみ合わせることで取付ける方法が好適に用いられる。
【0025】
傾斜部13は、飛沫防止パネル100において、本体部11の上端に設けられている。傾斜部13は、板状であり、本体部11の端部が一方の面の側に折れ曲がった形状を有している。
言い換えれば、傾斜部13の形状は、本体部11の端部の辺が、本体部11の外側へ向けて平行に移動した軌跡である。なお、その際の軌跡は、図1に示すように直線状であってもよいし、円弧状であってもよい。すなわち、傾斜部13は図1に示すような平坦状であってもよいし、円弧状の形状を有していてもよい。いずれであっても、傾斜部13は、本体部11に対して傾斜していればよい(なお、傾斜部13と本体部11とが直交している場合は、両者が傾斜している関係には含まれない)。このように、傾斜部13が本体部11の上端に設けられている場合、傾斜部13は、設置場所のスペースによるが、高さは400mm以上が好ましい。また幅についても、同様に400mm以上が好ましい。
【0026】
あるいは、図2に示す飛沫防止パネル200のように、スタンド部12を用いずに本体部21が天井から吊り金具22によって吊るされて設置されている場合は、傾斜部23は本体部21の下端に設けられていてもよい。
また、傾斜部13、23が、本体部11、21の側端(左右方向の端)に設けられていてもよい。
【0027】
傾斜部13の成形方法は、図1に示すように、本体部11の端部に一体に成形される方法が挙げられる。
この場合の傾斜部13の加工方法は、熱曲げ、インジェクション、ベンダー曲げ等種々の方法を用いることができる。
【0028】
また、図3に示す第2傾斜部14(飛沫防止パネル)のように、傾斜部13を別部品として、本体部11の端部に接着などの方法で取付けてもよい。
第2傾斜部14は、本体部14aと、取付け部14bと、を備えている。取付け部14bは、板状であり、本体部11に重ね合わされている。取付け部14bの表面は、本体部11の表面に、例えば接着剤を介して固着している。取付け部14bおよび本体部14aは、一体に成型されている。取付け部14bの上下方向の大きさは、傾斜部13及び本体部14aの上下方向の大きさに対して小さい。傾斜部13及び第2傾斜部14は、全体として途中位置で屈曲する板状となっている。
【0029】
なお、傾斜部13は本体部11の一方の面の側にのみ設けられていてもよいし、両方の面の側に設けられていてもよい。
傾斜部13を本体部11の両方の面に設ける場合は、図4に示すように、図1の飛沫防止パネル100における傾斜部13の反対側に、図3の第2傾斜部14を取付けてもよい。あるいは、押出し成型等の方法によって本体部11と2つの傾斜部13とを一体に成形してもよい。
【0030】
図1および図2では、机上あるいは床上に単体で設置するための飛沫防止パネル100及び天井から吊り下げて設置する飛沫防止パネル200について説明した。しかしながら、既存の部材に後付けすることを目的として、図5に示す飛沫防止パネル300及び図6に示す飛沫防止パネル400のように、傾斜状の本体部31及び41と、取付け部35及び42のみを備えた形状であってもよい。
【0031】
例えば、図5に示す飛沫防止パネル300は、略W型の形状を有する。略W型とは、すなわち、板状の本体部31と、一方の端部が本体部31の下端部に位置する湾曲部32と、湾曲部32における他方の端部に位置する当接部33と、が対称に備えられ、2つの当接部33の間には、受け入れ部34が備えられた形状である。また、飛沫防止パネル300は、全体として一体に成形されていることが好ましい。なお、以下において、当接部33と受け入れ部34とを、取付け部35と呼ぶことがある。
【0032】
本体部31は、飛沫防止パネル100の傾斜部13に相当する部位である。本体部31の下端は、湾曲部32に接続されている。
湾曲部32は、本体部31と当接部33との間を接続する部位である。
当接部33は、飛沫防止パネル300を取付ける相手の部材(本実施形態では、本体部11)に、接続方向に直交する方向から接する部位である。すなわち、飛沫防止パネル300を、取付け部35によって部材に取付ける際は、対称に位置する当接部33によって部材を挟むことで固定する。
【0033】
受け入れ部34は、当接部33によって挟まれた部材(本実施形態では、本体部11)の先端部を受け入れる部位である。また、当接部33が前記部材を挟む力は、受け入れ部34が部材を受け入れた際に発生する弾性力によって生じる。すなわち、例えば、受け入れ部34に相手部材が接続されていないときは、当接部33同士が接する状態になるように成形されていることが好ましい。
【0034】
上述のように、取付け部35は、当接部33によって相手部材を挟むようにして固定する。すなわち、相手部材を受け入れるときは受け入れ部34が広がり、相手部材と飛沫防止パネル300とを固定する際は受け入れ部34の弾性力によって当接部33が相手部材に押し付けられるように固定される。
なお、本実施形態において、当接部33は、板厚2~5mmの本体部11を挟んで固定できるものとする。
【0035】
また、当接部33による固定は既存の本体部11を挟むことのみによっても可能であるが、当接部33の表面に滑り止め加工を施してより固定力を向上してもよいし、接着剤によって固定をより確実に行ってもよい。
【0036】
図6に示す飛沫防止パネル400は、底部に平面状の取付け部42を有した略V型の形状を有する。略V型とは、すなわち、板状の本体部41が対称に設けられ、本体部41の下端同士を平面状の取付け部42によって接続した形状である。また、飛沫防止パネル400は、全体として一体に成形されていることが好ましい。
【0037】
本体部41は、飛沫防止パネル100の傾斜部13に相当する部位である。また、本体部41の下端は、取付け部42に接続されている。
飛沫防止パネル400は、取付け部42を任意の部材に乗せるように設置する。任意の部材とは、例えば、既存のデスクパーテーションの上や、パソコンのディスプレイの上等が挙げられる。また、取付け部42の固定は、磁石や接着剤、両面テープなどによって行うことができる。
【0038】
飛沫防止パネル100の各構成部品の材質は、上述のように透明の部材が好適に用いられる。例えば、樹脂素材は、PET、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリプロピレン、PBT、ABS、AS、CR-39、SAN、MS、TPX、アクリル変性高衝撃塩化ビニール、UHMW-PE、フェノール、メラミン、不飽和エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン、ジアリルフタレート等が挙げられる。
また、金属等を用いる場合は、アルミニウム、スチール、ステンレス、チタン、紙類、木材、フラッシュ合板、石膏ボード、ガラス、セラミックスが挙げられる。
【0039】
また、下記のような複合材料を用いてもよい。例えば、樹脂と金属、紙と樹脂、木材と樹脂、金属と木材、金属と紙製品、紙製品と木材の組み合わせを用いてもよい。
また、本体部41の形状は、平板状のほか、ハニカム構造を含む中空構造や、波型又は角形の型板を用いてもよい。
【0040】
なお、飛沫防止パネル100の各構成部品の板厚は1~8mmが好適に用いられる。なお、上述の部材は飛沫防止パネル200、300、400においても同様に用いられる。
ここで、飛沫防止パネル100における本体部11の大きさが大きいと板厚が薄いのが原因により剛性が足りず自重で変形することがある。これにより、外観および安定性に影響が生じる。
【0041】
この対策として、各部品に金属、木材等を枠として組み込み、変形を防止する方法が一般的であるが、視認性の低下や組立ての手間が増えるといった影響が懸念される。
ここで、飛沫防止パネル100において、傾斜部13によって本体部11に曲げ形状を施すと、本体部11の剛性が向上する。そのため、上述の方法で本体部11の剛性を向上することで自重による形状変化を防いでもよい。
【0042】
飛沫防止パネル100、200における傾斜部13、23の寸法は、表1に示す長さ及び角度の範囲が好適に用いられる。
すなわち、傾斜部13、23の長さは、面端部から本体部11、21の外側へ向けて10mm~100mmの範囲が好ましく、30mm~50mmの範囲がより好ましい。また、長さとは、傾斜部13、23における、本体部11、21に接続された端部から反対側の端部までの直線距離とする。
【0043】
また、傾斜部13、23と本体部11、21とのなす角度は、10°以上90°未満の範囲が好ましく、10°~45°の範囲がより好ましい。
また、飛沫防止パネル300、400における本体部31、41の寸法(傾斜部13の長さに相当)は、設置場所の形状や条件に応じて適宜決定される。また、本体部31、41の傾斜角(傾斜部13と本体部11とのなす角度に相当)は、表1と同様の範囲が好適に用いられる。
【0044】
【表1】
【0045】
つぎに、飛沫防止パネル100に飛沫が衝突した際の飛沫の軌道を、実験による結果を写真として図7~11を用いて説明する。なお、飛沫を可視化するためにレーザー光を照射した煙を用いて実験を行った。
この実験では、本体部11を厚さ2mm、幅450mm、高さをマネキン頭頂部と同じ高さとし、マネキン煙発生部から610mmの位置に置き、煙を初速9m/sの速度でおよそ0.2秒間噴出させ、本体部11に衝突させた。
なお、傾斜部13を有している際の、煙発生部と傾斜部13の上端との高さの差は、115mmとし、煙発生部は傾斜部13の下端よりも低いものとする。
【0046】
図7に示す第1例では傾斜部13がなく、図8図11に示す第2例~第5例では、傾斜部13を設けた。
図8に示す第2例及び図9に示す第3例では、傾斜部13の向きを煙発生部の反対側として、かつ、傾斜角をそれぞれ10°及び30°とした。
図10に示す第4例及び図11に示す第5例では、傾斜部13の向きを煙発生部のある側として、かつ、傾斜角をそれぞれ10°及び30°とした。
【0047】
図7に示すように、会話人から発生し、本体部11の一方の面に衝突した飛沫S(煙)は、本体部11の表面に沿って上下方向へ移動する。ここで、本体部11の端部まで飛沫Sが移動すると、その移動方向を保ったまま本体部11から飛沫Sが離れる。
このとき、本体部11の端部に傾斜部13を有していないと、飛沫Sが本体部11から離れたとき他方の面の側に移動することが確認された。
【0048】
また、図8に示すように、傾斜部13が他方の面の側(飛沫Sが発生する側と反対の側)に設けられていても、飛沫Sは一方の面の側から他方の面の側に移動することが確認された。なおこれらの場合、飛沫Sは飛沫防止パネル100の上方(実使用時には、対面会話者の上方)において散逸されることも確認された。
図9及び図10に示すように、傾斜部13が一方の面の側(飛沫Sが発生する側)に設けられていると、飛沫Sが傾斜部13の端部に移動したとき、飛沫Sの軌道は傾斜部13の形状に沿って一方の面の側に向けて変化することが確認された。
【0049】
この軌道を保ったまま飛沫Sが傾斜部13を離れると、図9及び図10に示すように、傾斜部13付近の飛沫Sが渦を巻くように動くことが確認された。形成された渦は、傾斜部13を超えて他方の面の側に移動することなく、一方の面の側に留まったまま落下し、その後消失することが確認された。
すなわち、傾斜部13によって、飛沫Sが一方の面の側から他方の面の側に移動することを防ぐことができる。上述の結果は、図10に示す曲げ角度30°の場合により顕著に表れるが、図9に示す曲げ角度10°の場合でも確認することができた。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る飛沫防止パネル100によれば、本体部11における端部に傾斜部13を有している。すなわち、本体部11の端部が一方の面の側に折れ曲がった形状を有している。
ここで、本体部11の一方の面の側から生じた飛沫Sが本体部11に衝突すると、飛沫Sは本体部11の表面に沿って移動する。
【0051】
このとき、生じた飛沫Sの勢いが強い(くしゃみ等)と、飛沫Sが本体部11の面積を超えて移動することがある。この場合において、本体部11に傾斜部13を有していないと、飛沫Sが本体部11の他方の側へ移動する。すなわち、有効に飛沫Sの飛散を防止することができない。
【0052】
そこで、本願の発明のように、本体部11の端部に傾斜部13が設けられていると、一方の面の側から生じた飛沫Sが本体部11の端部に移動したとき、飛沫Sは傾斜部13の形状に沿って、一方の面の側に向けて移動しながら、本体部11の端部から離れる。
すなわち、本体部11を離れた飛沫Sの軌道が、本体部11の他方の面の側から一方の面の側に向けた方向に向く。つまり、他方の面の側に飛沫Sが移動することを防ぐことができる。
このことによって、飛沫Sが一方の側から他方の側へ飛散することを防ぐことができる。
【0053】
また、傾斜部13が本体部11において一体成型されている場合は、部材が折れ曲がっていることによって剛性が向上する。これによって、例えば、比較的剛性の低い部材を用いて大サイズの本体部11を成型した際に生じる、自重による本体部11の形状変化のリスクを低減することができる。
【0054】
また、傾斜部13が、本体部11の両方の面の側に設けられている。このことによって、本体部11におけるいずれの面の側から飛沫Sが発生しても、飛沫Sがそれぞれ反対の側に移動することを防ぐことができる。
【0055】
また、傾斜部13が、本体部11と別部品になっている。すなわち、傾斜部13を後付けすることができる。このことによって、飛沫防止パネル100の設置場所の条件等によって、傾斜部13の形状や大きさを適宜選択することができる。
更に、既存の、傾斜部13を有さない飛沫防止パネル(本体部11)にも傾斜部13を後付けすることができる。すなわち、上述の効果を容易かつ迅速に各設置場所にもたらすことができる。
【0056】
また、本体部11を直立させるスタンド部12を備え、傾斜部13が本体部11の上端に設けられている。このことによって、机上あるいは床上に本体部11を自立させることで、容易に飛沫防止パネル100を設置することができる。更に、傾斜部13が本体部11の上端に設けられていることで、特に飛沫Sが一方の面の側の上方から他方の面の側に移動することを防ぐことができる。
【0057】
また、板状の本体部31、41には部材の端部に取付け可能な取付け部35、42が設けられている。このことによって、既存の部材(例えば、デスクパーテーション等)に取付けることで、上述の効果をもたらすことができる。すなわち、既存の設備を活用することで、別途飛沫防止パネル100を新設することなく、省スペースを図ることができる。
【0058】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、飛沫防止パネル100の本体部11は、傾斜部13を確保することができれば、折りたためる形状となっていてもよい。
また、飛沫防止パネル400の本体部41は、平坦状の取付け部42の上に重なるように折りたためる形状となっていてもよい。
また、本体部11、21および傾斜部13、23の形状は、カーテンや透明な膜を固定することで形成してもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11、21、31、41 本体部
12 スタンド部
13、23 傾斜部
35、42 取付け部
100、200、300、400 飛沫防止パネル
S 飛沫
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10