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特開2022-73675モータ絶縁検査機能付きインバータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073675
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】モータ絶縁検査機能付きインバータ装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/34 20200101AFI20220510BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220510BHJP
   H02P 29/024 20160101ALI20220510BHJP
【FI】
G01R31/34 B
H02M7/48 Z
H02P29/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183819
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由良 元澄
【テーマコード(参考)】
2G116
5H501
5H770
【Fターム(参考)】
2G116BA03
2G116BB03
2G116BC02
2G116BD06
2G116BD13
2G116BD16
5H501AA22
5H501CC05
5H501HA07
5H501HB07
5H501LL23
5H501LL53
5H501LL60
5H501MM09
5H770AA28
5H770BA01
5H770CA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770HA03W
(57)【要約】
【課題】モータの絶縁抵抗を検査できるインバータ装置を提供する。
【解決手段】コンバータ3と、インバータ6と、前記コンバータ3と前記交流電源1とを接続する第1スイッチSW1と、DCバス4の直流電力を平滑するコンデンサ5と、前記DCバス4の正電圧側からアースに接続される抵抗器Rrと、前記抵抗器Rrとアースとを接続する第2スイッチSW2と、前記インバータ装置の駆動を制御するコントローラ10と、を備え、前記コントローラ10は、前記コンデンサ5を充電した後、前記第1スイッチSW1をオフした状態で、前記第2スイッチSW2をオンして前記抵抗器Rxの第1両端電圧ER1を取得し、前記インバータ6の半導体素子のうち前記DCバス4の負電圧側に接続された素子をオンしたうえで前記抵抗器Rxの第2両端電圧ER2を取得し、両端電圧ER1,ER2に基づいて前記モータ7の絶縁抵抗を検査する、ように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ絶縁検査機能付きインバータ装置であって、
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、DCバスに出力するコンバータと、
前記コンバータと前記交流電源の接続を入り切りする第1スイッチと、
複数の半導体素子を有し、前記DCバスに出力された直流電力を交流電力に変換してモータに印加するインバータと、
前記DCバスの直流電力を平滑するコンデンサと、
前記DCバスの正電圧側または負電圧側の一方から、アースに接続される抵抗器と、
前記抵抗器とアースとの接続経路を入り切りする第2スイッチと、
前記抵抗器の両端電圧を検出する第1電圧検出回路と、
前記インバータ装置の駆動を制御するコントローラと、
を備え、前記コントローラは、
前記第1スイッチをオンして前記コンデンサを充電する充電処理と、
前記充電処理の後、前記インバータ、前記コンバータおよび前記第1スイッチをいずれもオフした状態で、前記第2スイッチをオンしたうえで、前記第1電圧検出回路の出力を第1両端電圧として取得する第1検出処理と、
前記充電処理の後、前記コンバータおよび前記第1スイッチをいずれもオフした状態で、前記第2スイッチをオンするとともに、前記インバータの半導体素子のうち前記DCバスの正電圧側または負電圧側の他方に接続された何れかの素子をオンしたうえで、前記第2電圧検出回路の出力を第2両端電圧として、それぞれ、取得する第2検出処理と、
前記第1検出処理および前記第2検出処理の後、少なくとも、前記第1両端電圧および前記第2両端電圧に基づいて前記モータの絶縁抵抗の良否を検査する検査処理と、
を行うように構成されている、ことを特徴とするモータ絶縁検査機能付きインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ絶縁検査機能付きインバータ装置であって、さらに、
前記DCバスの電圧を検出する第2電圧検出回路を備え、
前記コントローラは、
前記第1検出処理において、前記第2電圧検出回路の出力を第1DCバス電圧として、さらに、取得し、
前記第2検出処理において、前記第2電圧検出回路の出力を第2DCバス電圧として、さらに、取得し、
前記検査処理において、前記第1DCバス電圧と、前記第2DCバス電圧と、前記第1両端電圧と、第2両端電圧と、前記抵抗器の抵抗値と、に基づいて前記モータの絶縁抵抗を算出する、
ように構成されている、ことを特徴とするモータ絶縁検査機能付きインバータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ絶縁検査機能付きインバータ装置であって、
前記コントローラは、前記第1DCバス電圧をEDC1、前記第2DCバス電圧をEDC2、前記第1両端電圧をER1、第2両端電圧をER2、前記抵抗器の抵抗値をRrとした場合、前記モータの絶縁抵抗Rxを以下の式1に基づいて算出する、ことを特徴とするモータ絶縁検査機能付きインバータ装置。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、駆動対象モータの絶縁抵抗を検査する機能を併せ持ったインバータ装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
製造設備において、不意の故障は生産性を損なうため、故障を未然に検知して予防保守を行うことが求められる。中でも、金属加工を行う工作機械では、加工のために使用する水溶性の切削液がミストとなってモータに付着し、モータ内部に侵入して絶縁劣化を起こすという故障が多い。そのため、モータの絶縁抵抗を点検、診断することが求められている。
【0003】
モータの絶縁抵抗を診断するため、古くは機械の非稼働時にモータをインバータから切り離して、絶縁抵抗計を用いて測定することを定期的に行っていた。しかし、近年の複雑化した機械構造において、モータの接続を切り離して点検することは多くの手間と時間を要するため、点検作業による生産性の低下が課題である。
【0004】
モータ絶縁点検を省力化するため、インバータの機能を利用して絶縁抵抗を計測する技術が考案されている。例えば、特許文献1では、図4に示すように抵抗器R1およびR2によって構成された電圧分圧回路をインバータのDCバス負電圧側からスイッチSW2を介してアースに接続し、その時、同時にインバータを構成する半導体素子をオンすることによって、モータ絶縁抵抗Rxを含む閉回路を構成し、電圧分圧回路に現れる電圧を検出する。なお、この時、インバータ回路はスイッチSW1をオフすることにより、交流電源から遮断されている。
【0005】
図4において、スイッチSW2ならびにインバータ上側のいずれかの半導体素子をオンした時、抵抗器R1には、DCバス正電圧側→インバータ素子→モータ線→モータ絶縁抵抗Rx→アース→抵抗器R2→スイッチSW2→抵抗器R1→DCバス負電圧側という経路で電流が流れる。抵抗器R1に生じた電圧を検出すれば、測定対象であるモータ絶縁抵抗Rxを導出できる。
【0006】
しかしながら、実際のインバータ装置においては、インバータやコンバータを構成する半導体素子の漏れ電流、インバータ装置中の他の構成部品による漏れ電流が存在するため、精度良くモータ絶縁抵抗Rxを算出することができなかった。特に1つのDCバスに対して複数のインバータを接続し、複数のモータを制御する装置において測定精度が悪化しやすい。この課題を図5により説明する。モータAが測定対象のモータであり、インバータAの上側半導体素子の1つをオンしてDCバス正側の電圧をモータAに印加する。モータBについてはインバータBの半導体素子を全てオフとしているが、半導体素子には漏れ電流IL1,IL2,IL3が流れ、これらがモータBの絶縁抵抗Rxを経由して抵抗器R1に流れる。その結果、抵抗器R1に生じた電圧は、モータAの絶縁抵抗Rx以外にモータBの絶縁抵抗Rxによる誤差成分を含んでいる。
【0007】
この課題に対して、例えば特許文献2では、インバータBの下側半導体素子を全てオンして、モータBにDCバス負側の電圧を印加することによって、スイッチSW2がオンした時のモータ印加電圧をアースに近い電位にして漏れ電流が流れないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-204600
【特許文献2】特開2015-169479
【特許文献3】WO2013/018411
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1および特許文献2において、測定対象モータ以外の他モータの絶縁抵抗については、影響を排除しようとする技術が示されているが、実際のインバータ装置においては、更に、絶縁抵抗の測定精度を悪化させる要因がある。その要因を図3により説明する。図3に示すインバータ装置は、コンバータ3をIGBT等の半導体素子を用いて可逆変換できるよう構成したもので、負荷モータ7の回生電力を電源回生するものである。工作機械の主軸など加減速運転を頻繁に行う用途では電源回生は不可欠であり、一般的に使用されている。
【0010】
電源回生を行うコンバータ3においては、交流電源ラインにスイッチング制御による電流を流すため、一般的にコンバータ3と交流電源1の間に電流平滑化のためラインフィルタ2を挿入する。このラインフィルタ2の構成は、図3に示すように、リアクトルとコンデンサで構成する場合が多く、コンデンサには並列に数100kΩ程度の放電抵抗を接続する場合が多い。
【0011】
図3のようなインバータ装置において、特許文献1および2に示したような絶縁抵抗測定方式を適用すると、測定対象のモータ絶縁抵抗だけでなく、コンバータ3の半導体素子の漏れ電流がラインフィルタ2内の放電抵抗を経由して検出抵抗Rrに流れるため、検出電圧に誤差が生じる。また、ラインフィルタ2には、放電抵抗を使用しないものもあるが、その場合は、コンデンサに蓄積された電圧によって漏れ電流が流れるため誤差の要因となる。さらにまた、ラインフィルタ2のリアクトルの絶縁抵抗Rも誤差の要因となる。これら複数の誤差要因によって絶縁抵抗を精度よく測定することができないという課題がある。
【0012】
また、特許文献3には、インバータを構成する半導体素子の漏れ電流や、インバータのDCバス回路からの漏れ電流がある場合に、モータの絶縁抵抗が精度よく測定できないことが示されている。その対策として、絶縁抵抗を測定する際に、先ずインバータの半導体素子をオフの状態で測定を実施し、その時点で所定値以上の絶縁抵抗が検出された場合に、モータの絶縁抵抗測定を中止することが示されている。すなわち、上述したような誤差の要因があった場合にはモータの絶縁抵抗を測定できないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で開示するモータ絶縁検査機能付きインバータ装置は、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換し、DCバスに出力するコンバータと、前記コンバータと前記交流電源の接続を入り切りする第1スイッチと、複数の半導体素子を有し、前記DCバスに出力された直流電力を交流電力に変換してモータに印加するインバータと、前記DCバスの直流電力を平滑するコンデンサと、前記DCバスの正電圧側または負電圧側の一方から、アースに接続される抵抗器と、前記抵抗器とアースとの接続経路を入り切りする第2スイッチと、前記抵抗器の両端電圧を検出する第1電圧検出回路と、前記インバータ装置の駆動を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記第1スイッチをオンして前記コンデンサを充電する充電処理と、前記充電処理の後、前記インバータ、前記コンバータおよび前記第1スイッチをいずれもオフした状態で、前記第2スイッチをオンしたうえで、前記第1電圧検出回路の出力を第1両端電圧として取得する第1検出処理と、前記充電処理の後、前記コンバータおよび前記第1スイッチをいずれもオフした状態で、前記第2スイッチをオンするとともに、前記インバータの半導体素子のうち前記DCバスの正電圧側または負電圧側の他方に接続された何れかの素子をオンしたうえで、前記第2電圧検出回路の出力を第2両端電圧として、それぞれ、取得する第2検出処理と、前記第1検出処理および前記第2検出処理の後、少なくとも、前記第1両端電圧および前記第2両端電圧に基づいて前記モータの絶縁抵抗の良否を検査する検査処理と、を行うように構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
この場合、インバータ装置は、さらに、前記DCバスの電圧を検出する第2電圧検出回路を備え、前記コントローラは、前記第1検出処理において、前記第2電圧検出回路の出力を第1DCバス電圧として、さらに、取得し、前記第2検出処理において、前記第2電圧検出回路の出力を第2DCバス電圧として、さらに、取得し、前記検査処理において、前記第1DCバス電圧と、前記第2DCバス電圧と、前記第1両端電圧と、第2両端電圧と、前記抵抗器の抵抗値と、に基づいて前記モータの絶縁抵抗を算出してもよい。
【0015】
この場合、前記コントローラは、前記第1DCバス電圧をEDC1、前記第2DCバス電圧をEDC2、前記第1両端電圧をER1、第2両端電圧をER2、前記抵抗器の抵抗値をRrとした場合、前記モータの絶縁抵抗Rxを以下の式1に基づいて算出してもよい。
【0016】
【数1】
【発明の効果】
【0017】
本明細書で開示するモータ絶縁検査機能付きインバータ装置によれば、ラインフィルタに内蔵された放電抵抗や、測定対象以外の他のモータの絶縁抵抗、ラインフィルタのリアクトルの絶縁抵抗などの誤差要因の影響を排除して、正確に測定対象モータの絶縁抵抗を測定できる。その結果、予防保全のため、定期的にモータの接続を外して絶縁抵抗を検査していた保守作業を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】インバータ装置の構成図である。
図2】モータ絶縁抵抗の測定動作を示すフローチャートである。
図3】インバータ装置の絶縁抵抗測定における課題を説明する図である。
図4】従来技術によるインバータ装置の構成図である。
図5】従来技術による別のインバータ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、インバータ装置の構成図である。交流電源1が、第1スイッチSW1を介して、ラインフィルタ2に接続されている。ラインフィルタ2を通った3相交流電力は、コンバータ3に入力されて直流電圧に変換され、DCバス4に出力される。DCバス4には、直流電圧を平滑化するコンデンサ5が接続されている。
【0020】
DCバス4は、インバータ6の直流入力端子に接続されており、インバータ6は、直流電力を半導体素子のスイッチング制御によって交流電力に変換し、モータ7に印加している。
【0021】
モータ7は、金属製、すなわち、導電性のシャーシ内部に巻線を収めた構造となっており、シャーシと巻線の間は、絶縁材料によって絶縁が確保されている。しかし、長期間の使用によってシャーシ内部に水分が侵入すると、絶縁抵抗が低下し、巻線とシャーシ間に漏れ電流が流れる。この絶縁抵抗を、図1ではRxと表記する。シャーシは機械本体に固定されているので、結果として絶縁抵抗Rxを流れる漏れ電流は機械本体に流出する。
コントローラ10は、スイッチSW1,SW2や、コンバータ3およびインバータ6を構成する半導体素子のオン/オフの切り替えを行う。また、コントローラ10は、以下で説明するステップ0~ステップ4を実行し、後述する第1電圧検出回路9および第2電圧検出回路8の検出値に基づいて、モータ7の絶縁抵抗Rxを検査する。かかるコントローラ10は、例えば、プロセッサとメモリとを有したコンピュータで構成される。
【0022】
このようなインバータ装置において、モータ7の絶縁抵抗Rxを測定するため、DCバス4の負電圧側から抵抗器Rrを第2スイッチSW2を介して、アース、すなわち機械本体に接続する。なお、本例では、抵抗器Rrは、DCバス4の負電圧側に接続しているが、正電圧側に接続してもよい。正電圧側に接続した場合には、以下に示す半導体素子の動作を正電圧側(上側)と負電圧側(下側)で入れ替えることで、同様の機能を実現することができる。インバータ装置には、抵抗器Rrの両端電圧を検出する第1電圧検出回路9と、DCバス4の直流電圧を検出する第2電圧検出回路8と、が設けられている。
【0023】
絶縁抵抗Rxの検査動作シーケンスについて、図2のフローチャートに従って説明する。
【0024】
<ステップ0>
測定では、まず、最初に、スイッチSW1の状態を確認する。測定開始前にモータ7が運転中であった等の理由により、既に、第1スイッチSW1がオンしている場合、コンデンサ5には、直流電圧が充電されていることになる。この場合には、そのまま、ステップ1に進む。一方、測定開始時において、第1スイッチSW1がオフで、コンデンサ5が充電されていない場合には、一旦、第1スイッチSW1をオンしてコンデンサ5を充電する。
【0025】
<ステップ1>
コンデンサ5が充電できれば、続いて、インバータ6およびコンバータ3の半導体素子にオフ信号を与えるとともに第1スイッチSW1をオフにする。この時、コンデンサ5には直流電圧が充電されたままであり、この直流電圧を利用して測定動作を行う。
【0026】
<ステップ2>
次に、第2スイッチSW2をオンする。この時、インバータ6およびコンバータ3は、オフ状態であり、抵抗器Rrには、半導体素子の漏れ電流によって図3の破線で示したような電流が流れる。ここで、第2電圧検出回路8によってDCバス4の直流電圧を第1DCバス電圧EDC1として、第1電圧検出回路9によって抵抗器Rrの両端電圧を第1両端電圧ER1として、それぞれ検出する。
【0027】
<ステップ3>
次に、測定対象となるモータ7を駆動するインバータ6の上側半導体素子の何れかにオン信号を与える。モータは、一般的に内部で巻線が接続されているので、3相のうち何れか1つをオンすればよい。そして、抵抗器Rrの両端電圧を第2両端電圧ER2として、DCバス電圧を第2DCバス電圧EDC2として、それぞれ検出する。
【0028】
この時、モータ7には、DCバス4の直流電圧が印加されるので、絶縁抵抗Rxに流れる電流が抵抗器Rrに流れる。もし、絶縁抵抗Rxが十分に大きく電流が流れなければ、第2両端電圧ER2は、上記ステップ2で検出された第1両端電圧ER1と等しくなるが、Rxが低下していれば電流が増加し、ER1<ER2となって、Rxに流れた電流が増加分として検出される。
【0029】
ステップ3で検出する第2DCバス電圧EDC2は、基本的には第1DCバス電圧EDC1と等しいが、ステップ2からステップ3へ進む時間が比較的長い場合には、コンデンサ5の直流電圧が放電によって低下し、EDC1>EDC2となる。
【0030】
ここで、ステップ2とステップ3の時間差について説明する。ステップ2で検出する抵抗器Rrの第1両端電圧ER1は、前述したように半導体素子の漏れ電流に起因するものである。そして、半導体素子の漏れ電流は、よく知られているように素子温度によって変化する。そこで、ステップ2をステップ3の直前で実行することにより、ほぼ同じ温度環境において第1両端電圧ER1および第2両端電圧ER2を検出できるので、精度の高い絶縁抵抗測定を行うことができる。
【0031】
<ステップ4>
上記ステップで得られたER1、ER2、EDC1、EDC2を用いて、次式によってモータ絶縁抵抗Rxを算出する。
【0032】
【数2】
【0033】
なお、ステップ2において、全ての半導体素子をオフ状態のままで測定する事例を示したが、DCバス負電圧側の半導体素子にオン信号を与えるようにしてもよい。この場合、半導体素子の漏れ電流を低減できるので、絶縁抵抗Rxの測定精度を更に高めることができる。さらに、ステップ2とステップ3は順序を入れ替えて実行してもよい。すなわち、先にステップ3を実行する場合は、先ずER2、EDC2を検出し、次にER1、EDC1が検出されるが、上式によって同様に絶縁抵抗Rxを算出できる。
【0034】
以上の説明は、インバータおよびモータが1台ずつの例を示したが、図5のように2台以上の複数モータを駆動するインバータ装置においても、同様に実施することができる。この場合はステップ2を1回実行したのち、ステップ3およびステップ4をモータの数だけ、繰り返し実行して、それぞれのモータの絶縁抵抗Rxを算出する。モータの数が多い場合には、ステップ3およびステップ4を繰り返し実行する間にDCバス4の直流電圧が徐々に低下するため、測定精度が劣化する。そこで、例えばモータ1台を測定する毎にステップ2を1回実行するなどの操作を追加することによって、測定精度の劣化を防ぐことができる。
【0035】
また、絶縁抵抗Rxの算出処理を簡略化したい場合には、ステップ2およびステップ3で得られたER1、ER2だけを用いて、これらの差(ER2-ER1)に基づいて絶縁抵抗Rxの概略を判定してもよい。すなわち、絶縁抵抗Rxが劣化すれば、差(ER2-ER1)が増加するため、差(ER2-ER1)を規定の閾値と比較し、当該閾値を超過した場合には、絶縁抵抗Rxが不適であると判定してもよい。この場合は、ステップ2およびステップ3を短時間に連続して実行する必要があり、この間においてDCバス電圧の変化は十分に小さいので、EDC1≒EDC2とみなすことができる。
【符号の説明】
【0036】
1 交流電源、2 ラインフィルタ、3 コンバータ、4 DCバス、5 コンデンサ、6 インバータ、7 モータ、8 第2電圧検出回路、9 第1電圧検出回路、10 コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5