(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073685
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】メチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220510BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220510BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20220510BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q11/00
A61K8/9794
A61L9/01 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183832
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直和
(72)【発明者】
【氏名】高木 寛
【テーマコード(参考)】
4C083
4C180
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC862
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE34
4C180AA05
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB12
4C180BB14
4C180BB15
4C180CB01
4C180CC15
4C180EC01
4C180GG06
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、オオムギ、ラフマ及びジュンサイを含有することを特徴とするメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤を提供することである。より詳しくは、オオムギ、ラフマ及びジュンサイをメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤として含有することを特徴とする、口臭抑制剤あるいは消臭剤に関する。
【解決手段】オオムギ、ラフマ及びジュンサイを組み合わせると、極めて優れたメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制作用を有することから、優れた口臭抑制作用を有する口臭抑制剤や優れた消臭作用を有する消臭剤として利用できる。また、この作用は、オオムギ、ラフマ及びジュンサイが、含硫アミノ酸リアーゼを阻害することで得られた作用と考える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオムギ、ラフマ及びジュンサイを含有することを特徴とするメチルメルカプタン発生抑制剤。
【請求項2】
オオムギ、ラフマ及びジュンサイを含有することを特徴とする硫化水素発生抑制剤。
【請求項3】
請求項1記載のメチルメルカプタン発生抑制剤を含有することを特徴とする口臭抑制剤。
【請求項4】
請求項2記載の硫化水素発生抑制剤を含有することを特徴とする口臭抑制剤。
【請求項5】
請求項1記載のメチルメルカプタン発生抑制剤を含有することを特徴とする消臭剤。
【請求項6】
請求項2記載の硫化水素発生抑制剤を含有することを特徴とする消臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オオムギ、ラフマ及びジュンサイを含有することを特徴とするメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤に関する。より詳しくは、オオムギ、ラフマ及びジュンサイをメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤として含有することを特徴とする、口臭抑制剤あるいは消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルメルカプタンや硫化水素は、強い臭気物質として知られており、工場や事業所における活動で発生する悪臭を規制する悪臭防止法において、特定悪臭物質として政令で指定されている。メチルメルカプタンや硫化水素は、産業活動ばかりでなく、口臭、生ゴミ臭、糞便臭等の生活に直結した臭気の主たる原因物質であるため、臭気を抑えるには、メチルメルカプタンや硫化水素を除去することが大変重要である。
【0003】
ところが、メチルメルカプタンや硫化水素は、安定な物質であるため、吸着や分解による除去が困難である。そのため、メチルメルカプタンや硫化水素の発生を抑制することが大切になる。
【0004】
メチルメルカプタンや硫化水素は、メチオニンやシステイン等の含硫アミノ酸を基質とする酵素反応で発生する。これらの酵素は、含硫アミノ酸リアーゼと称され、メチルメルカプタンを産生する酵素としてはメチオニン-ガンマ-リアーゼが知られており、硫化水素を産生する酵素としてはシスタチオニン-ガンマ-リアーゼやシスタチオニン-ベータ-シンターゼ等が知られている(非特許文献1、2)。
【0005】
メチルメルカプタンや硫化水素の発生を抑制するには、この含硫アミノ酸リアーゼを阻害することも重要であることから、含硫アミノ酸リアーゼ阻害に着目した様々な試みがなされている。
【0006】
特許文献1には、揮発性硫黄化合物生成抑制剤、メチオニンからメチルメルカプタンを生成する酵素の阻害剤、及び硫化水素を生成する酵素の抑制剤が開示されている。特許文献2~5には、トマトやジンジャー抽出物及び水溶性ブドウ種子抽出物等の植物抽出物やミノルシン酸等を有効成分としたメチルメルカプタン産生酵素阻害剤が開示されている。また、特許文献6には、カテキン類を有効成分とした硫化水素産生酵素阻害剤が開示されている。
【0007】
しかしながら、すでに開示されている阻害剤や抑制剤は、人体に対して有害なもの、あるいはその効果が十分に発揮されない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-173441号公報
【特許文献2】特開2013-75860号公報
【特許文献3】特開2002-3353号公報
【特許文献4】特開2003-160459号公報
【特許文献5】特開2008-31062号公報
【特許文献6】特開2011-51946号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Biochim Biophys Acta,1794:1414-1420(2009)
【非特許文献2】Folia Pharmacol.Jpn.,152:216-222(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、人体に対する安全性が高く、その効果が十分発揮されるメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤を提供することである。より詳しくは、オオムギ、ラフマ及びジュンサイをメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤として含有することを特徴とする、口臭抑制剤あるいは消臭剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を行った結果、イネ科オオムギ属に属するオオムギ、キョウチクトウ科バシクルモン属に属するラフマ及びスイレン科ジュンサイ属に属するジュンサイを組み合わせることで、極めて優れたメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制作用を見出し、さらにオオムギ、ラフマ及びジュンサイを組み合わせることで、優れた口臭抑制作用、消臭作用を見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制作用を達成することで、極めて優れた口臭抑制剤、消臭剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いるオオムギ(Hordeum vulgare L.)は、イネ科オオムギ属に属し、主に北半球と南米の温帯及び南アフリカに広く分布する一年草あるいは多年草のイネ科の植物である。オオムギは、穂の形状の違いから、二条オオムギ、四条オオムギ、六条オオムギ、裸オオムギ、野生オオムギ等に分類されるが、何れも本発明に用いることができる。また、例えば頴や頴果が紫色、黒色、白色(有色ではない)等のオオムギを用いることもできる。場合によっては、茎や葉も有色であるオオムギも本発明に用いることができる。使用するオオムギの部位は、特に限定されないが、例えば、植物体全体、器官(花、葉、茎、根、樹皮、果実、果皮もしくは種子又はこれらの混合物等)等が挙げられ、特に茎、葉及び種子等を使用することが好ましく、種子を使用することがさらに好ましい。
【0014】
本発明に用いるラフマ(Apocynum Venetum L.)は、キョウチクトウ科バシクルモン属に属し、主に中国の北西部に自生する多年生の草木である。ラフマは葉、茎、根等の何れの部位も使用できるが、特に葉を用いることが好ましい。
【0015】
本発明に用いるジュンサイ(Brasenia schreberi J.F.G mel.)は、スイレン科ジュンサイ属に属し、温帯から熱帯にかけて広く分布する多年生の水草である。ジュンサイは葉、茎、根等の何れの部位も使用できるが、特に粘質物で覆われた芽あるいは若葉を用いることが好ましい。
【0016】
本発明は、植物体あるいは植物体の部位や器官をそのまま用いても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ったものでも良い。また、溶媒での抽出物を用いても良い。抽出には、植物体あるいは植物体の部位や器官をそのまま用いても良く、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってから抽出を行っても良い。抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いても良い。好ましくは、水、低級アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水である。
【0017】
抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理をして用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0018】
本発明に用いる上記抽出物の使用量は、形態、使用目的、年齢、体重等によって異なる。口臭抑制剤として使用する場合、0.01μg~10mg/回、好ましくは0.02μg~5mg/回、より好ましくは0.1μg~1mg/回の範囲で1日1回から数回使用できる。また消臭剤として使用する場合、0.1μg~10mg/回、好ましくは0.2μg~5mg/回、より好ましくは1μg~1mg/回の範囲で1日1回から数回使用できる。上記使用範囲より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて使用する必要がある場合もある。また、製剤化における薬効成分の添加法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0019】
本発明のメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤を口臭抑制剤として用いる場合、医薬部外品をはじめ、食品、医薬品のいずれにも利用することができる。形態としては、例えば、練歯磨き、液体歯磨き、洗口液、口腔用ゲル、マウススプレー、マウスリンス、トローチ剤、飴、グミ、ガム等の口腔に使用できる形態であれば、いずれも用いることができる。他にも錠剤、顆粒剤、散剤等の口腔から消化器系に使用する形態も用いることができる。
【0020】
本発明のメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤を消臭剤として用いる場合、形態としては、例えば、液体状、スプレー状、エアゾール状、粉末状、顆粒状、固形状等を用いることができる。形態に応じて、生ゴミ、糞便等に直接、散布することができる。また、トイレ、洗面所、風呂場、台所、流し台等の排水口、排気口等に散布することもできる。
【0021】
本発明のメチルメルカプタン及び/又は硫化水素発生抑制剤は、効果を損なわない範囲内で、必要に応じて賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、ビタミン類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤、香料等の成分を含有することもできる。
【0022】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例に示す含有量の%は重量%を示す。
【実施例0023】
製造例1 オオムギの熱水抽出物
オオムギの種子の破砕物25gに精製水500mLを加え、95~100℃で2時間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥することでオオムギの熱水抽出物2.1gを得た。
【0024】
製造例2 オオムギの50%エタノール抽出物
オオムギの種子の破砕物25gに50(v/v)%エタノール500mLを加え、常温で5日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固してオオムギの50%エタノール抽出物を0.9g得た。
【0025】
製造例3 オオムギのエタノール抽出物
オオムギの種子の破砕物100gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固して、オオムギのエタノール抽出物を3.1g得た。
【0026】
製造例4 ラフマの熱水抽出物
ラフマの葉の乾燥物150gに精製水10Lを加え、95~100℃で2時間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥することでラフマの熱水抽出物11.5gを得た。
【0027】
製造例5 ラフマの50%エタノール抽出物
ラフマの葉の乾燥物100gに50(v/v)%エタノール3Lを加え、常温で5日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固して、ラフマの50%エタノール抽出物を5.5g得た。
【0028】
製造例6 ラフマのエタノール抽出物
ラフマの葉の乾燥物200gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固して、ラフマのエタノール抽出物を8.3g得た。
【0029】
製造例7 ジュンサイの熱水抽出物
ジュンサイの若葉の乾燥物2000gに精製水20Lを加え、95~100℃で2時間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮し、凍結乾燥することでジュンサイの熱水抽出物を35.2g得た。
【0030】
製造例8 ジュンサイの50%エタノール抽出物
ジュンサイの若葉の乾燥物1000gに50(v/v)%エタノール8Lを加え、常温で5日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固して、ジュンサイの50%エタノール抽出物を15.7g得た。
【0031】
製造例9 ジュンサイのエタノール抽出物
ジュンサイの若葉の乾燥物200gにエタノール1Lを加え、常温で7日間抽出した。ろ液を減圧下で濃縮乾固してジュンサイのエタノール抽出物を2.7g得た。
【0032】
製造例10 オオムギ、ラフマ、ジュンサイの熱水抽出物の混合物
製造例1のオオムギの熱水抽出物1g、製造例4のラフマの熱水抽出物1g、製造例7のジュンサイの熱水抽出物1gを混合し、3種類の抽出物の混合物3gを得た。