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特開2022-73695土地境界線管理システムおよび土地境界線管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073695
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】土地境界線管理システムおよび土地境界線管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/04 20060101AFI20220510BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220510BHJP
   G06Q 50/16 20120101ALI20220510BHJP
【FI】
G01C15/04
G01C15/00 102C
G06Q50/16 300
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183846
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】513083624
【氏名又は名称】M・S・K株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】水野 尚淑
(72)【発明者】
【氏名】辻本 英一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC28
(57)【要約】
【課題】山間部等の土地の境界線を低コストで容易にデータベース化して管理することができ、境界標または目標物が勝手に移動または撤去されたり、災害等で移動したりした場合にはそのデータベースに基づいて境界標または目標物の位置の変化等を容易に発見することができる土地境界線管理システムを提供する。
【解決手段】土地境界線管理システムは、管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に着脱可能に取り付けられる、測位衛星10からの測位信号を受信する測位信号受信機20と、測位信号受信機20で受信される測位信号より取得される境界標または目標物の位置情報が送信され、土地を含む地域の地図に当該位置情報が入力されるコンピュータ30とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に着脱可能に取り付けられる、測位衛星からの測位信号を受信する測位信号受信機と、
上記測位信号受信機で受信される測位信号より取得される上記境界標または目標物の位置情報が送信され、上記土地を含む地域の地図に当該位置情報が入力されるコンピュータと、
を有する土地境界線管理システム。
【請求項2】
上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介して上記コンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて上記土地の境界線が画定した上記地図をサーバーに蓄積する請求項1記載の土地境界線管理システム。
【請求項3】
上記土地の境界線に変更があった場合には、当該変更後の境界線に設置された上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介して上記コンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて上記変更後の境界線が画定した上記地図を境界線の変更の年月日とともにサーバーに蓄積する請求項2記載の土地境界線管理システム。
【請求項4】
上記土地の境界線が画定した上記地図を上記サーバーに蓄積する際に、上記土地の境界線が画定した時の上記土地の地権者、上記土地の売買価格および上記土地の近隣の土地の売買価格のうちの少なくとも一つを上記土地に関連付けて蓄積する請求項2記載の土地境界線管理システム。
【請求項5】
上記土地の境界線が画定した後に上記土地の地権者、上記土地の売買価格および上記土地の近隣の土地の売買価格の変更があった場合、当該変更後の地権者または売買価格も上記土地に関連付けて蓄積する請求項4記載の土地境界線管理システム。
【請求項6】
上記測位衛星が準天頂衛星である請求項1~5のいずれか一項記載の土地境界線管理システム。
【請求項7】
上記土地が山間部の土地である請求項1~6のいずれか一項記載の土地境界線管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、土地境界線管理システムに関し、例えば、山間部の土地の境界線の管理に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
土地の境界線には、境界点の位置を特定するしるしが頭部に付けられた杭等の境界標が設置される。土地の登記は境界標に基づいて行われるため、境界標は極めて重要であり、境界標を損壊したり、勝手に移動または撤去したりすることは処罰の対象とされている。境界標に加えて、あるいは境界標の代わりに、境界線上の木、河川、山道等の目標物も境界標と同様に扱われて登記が行われることもある。
【0003】
従来、境界標あるいは測量点となる標識の位置情報を記録管理する方法として、非接触式ICタグを境界標あるいは標識に貼り付け、GPS受信機と非接触式ICタグリーダライタとを付加した携帯端末を用い、GPS受信機により境界標あるいは標識の位置情報を取得するとともに、この位置情報を非接触式ICタグリーダライタにより境界標あるいは標識に貼り付けられた非接触式ICタグに記録し、必要に応じて、非接触式ICタグリーダライタにより非接触式ICタグに記録された位置情報を読み出すようにした位置情報記録管理方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-292464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、山間部においては、土地の地権者等が現地に入って境界標や目標物の状況を確認することは容易でないため、長期間確認できないことも多い。このような状況の下、近年、地権者やこの土地を管理する市町村等が知らない間に、地権者や市町村等の職員と無関係の者が山間部に入って地権者の土地の境界標を勝手に移動または撤去したり、場合によっては損壊したりする被害が多発している。境界標の移動等の発見は容易でないため、地権者や市町村等は何ら対策を講ずることができないのが実情であり、深刻な問題となっている。
【0006】
また、特許文献1記載の位置情報管理記録方法では、個々の境界標あるいは標識に非接触式ICタグを貼り付ける必要があるだけでなく、非接触式ICタグリーダライタによる読み書きも必要となるため、手間とコストが掛かってしまう。
【0007】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、山間部等の土地の境界線を低コストで容易にデータベース化して管理することができ、境界標または目標物が勝手に移動または撤去されたり、災害等で移動したりした場合にはそのデータベースに基づいて境界標または目標物の位置の変化等を容易に発見することができる土地境界線管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に着脱可能に取り付けられる、測位衛星からの測位信号を受信する測位信号受信機と、
上記測位信号受信機で受信される測位信号より取得される上記境界標または目標物の位置情報が送信され、上記土地を含む地域の地図に当該位置情報が入力されるコンピュータと、
を有する土地境界線管理システムである。
【0009】
この発明においては、典型的には、境界標または目標物に測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介してコンピュータに送信し、コンピュータにおいて地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて土地の境界線が画定した地図をサーバーに蓄積し、データベース化する。土地の一部譲渡等により土地の境界線に変更があった場合には、当該変更後の境界線に設置された境界標または目標物に測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介してコンピュータに送信し、コンピュータにおいて地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて変更後の境界線が画定した地図を境界線の変更の年月日とともにサーバーに蓄積し、データベース化する。また、典型的には、土地の境界線が画定した地図をサーバーに蓄積する際に、土地の境界線が画定した時の土地の地権者、土地の売買価格および土地の近隣の土地の売買価格のうちの少なくとも一つ、必要に応じて他の情報を土地に関連付けて蓄積し、データベース化する。また、典型的には、土地の境界線が画定した後に土地の地権者、土地の売買価格および土地の近隣の土地の売買価格の変更があった場合、当該変更後の地権者または売買価格、必要に応じて他の情報も土地に関連付けて蓄積し、データベース化する。土地は、基本的にはどのような土地であってもよいが、典型的には山間部の土地である。境界標には、コンクリート杭、石杭、プラスチック杭等のほか金属標や金属鋲等の従来公知の各種のものがあるが、どのようなものであってもよい。境界標の頭部には、境界点の位置を特定するしるしとして○、矢印の先端、十字マークの中心点等が付いている。目標物は、土地の境界線上にある、境界標以外のものであれば基本的にはどのようなものであってもよいが、具体的には、例えば、木、河川、山道等である。この場合、測位信号受信機の設置位置は、木では根元、幹から出た枝等、河川では川のほとり、橋が架かっている場合にはその橋の上等、山道では道の中央、端等であるが、これに限定されるものではない。
【0010】
測位衛星は、好適には、日本で打ち上げられた準天頂衛星(みちびき)であるが、米国で打ち上げられた狭義のGPS衛星および米国以外の国等で打ち上げられた同様のGPS衛星を含む。準天頂衛星(みちびき)を用いた衛星測位システムによれば、数cmの精度で位置情報を取得することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、山間部等の土地の境界標または目標物に測位信号受信機を取り付けて衛星測位システムにより測位信号を受信することによりこの境界標または目標物の位置情報を取得することができ、こうして取得された位置情報を用い、必要に応じてさらにその土地を管理する市町村等が保有するその土地の境界線の情報を参照して、その土地の地図をコンピュータ上で容易に作成することができるため、その土地の境界線のデータベース化を低コストで容易に行うことができる。このため、土地を管理する市町村等の職員等が定期的または不定期にその土地の境界線上の境界標または目標物の位置情報を取得して境界線を確認することにより、データベース化された土地の境界線との照合により、境界標または目標物が勝手に移動等されたり、災害等で移動したりした場合には直ぐ発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の一実施の形態による土地境界線管理システムの全体構成を示す略線図である。
図2】この発明の一実施の形態による土地境界線管理システムにより境界線の管理を行う土地の一例を示す略線図である。
図3】この発明の一実施の形態による土地境界線管理システムにより境界線の管理を行う土地の境界線上に設置される境界標の一例を示す略線図である。
図4】この発明の一実施の形態による土地境界線管理システムにより境界線の管理を行う土地の境界線上の目標物の一例を示す略線図である。
図5】この発明の一実施の形態による土地境界線管理システムにおいてコンピュータに接続されたディスプレイの画面に表示された地図の一例を示す略線図である。
図6図5に示す地図に衛星測位システムにより得られた境界標または目標物の位置情報が入力されて土地の境界線が描かれた一例を示す略線図である。
図7図6に示す地図にデータベースに蓄積された土地の境界線の境界標または目標物および境界線を重ねて表示した一例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」と言う。)について説明する。
【0014】
〈一実施の形態〉
[土地境界線管理システム]
図1は一実施の形態による土地境界線管理システムの全体構成を示す。
【0015】
図1に示すように、この土地境界線管理システムは、衛星測位システムの測位衛星10からの測位信号を受信する測位信号受信機20と管理用のコンピュータ30とを有する。測位衛星10は準天頂衛星みちびきや従来のGPS衛星であるが、好適には準天頂衛星みちびきが用いられる。測位信号受信機20は、管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に着脱可能に取り付けられる。測位信号受信機20は一つまたは複数用いられる。測位信号受信機20には通信装置40が一体化され、あるいはケーブル等で接続される。コンピュータ30には、測位信号受信機20で受信される測位信号より取得される境界標または目標物の位置情報が通信装置40から無線やインターネット等により送信される。このコンピュータ30は、後述のようにして予め求められた、市町村等が管理する地域の各土地の境界線のデータベースをサーバーに有し、このデータベースにアクセスすることによりこのコンピュータ30に接続されたディスプレイ(図示せず)の画面にその土地の境界線を表示することができるようになっている。このコンピュータ30はまた、管理すべき土地を含む地域の地図情報データベースをサーバーに有し、あるいはインターネットを介して地図情報データベースをダウンロードし、あるいはクラウドサーバーなどに蓄積された地図情報データベースにアクセスすることができ、この地図情報データベースに基づいて、このコンピュータ30に接続されたディスプレイの画面にその土地の地図を表示することができるようになっている。地図情報データベースとしては、日本では、例えば国土交通省国土地理院の地理院地図(GSI Maps)を用いることができる。このコンピュータ30は、例えば、市町村等の庁舎等にある不動産登記等の担当部署に配置されるが、これに限定されるものではない。
【0016】
[土地境界線管理システムの使用方法]
まず、この土地境界線管理システムを用いて、市町村等が管理する地域の各土地の境界線のデータベース化を行う方法について説明する。
【0017】
今、境界線の管理を行う土地の一例として、図2に示すような、山間部にある土地100を考える。ここでは、土地100は長方形の形状を有するが、これに限定されるものではない。土地100の境界線101上に境界標または目標物110があり、この場合は長方形の4隅にある。図3Aに境界標または目標物110の一例として境界標111を示す。この境界標111の頭部に付けられた十字のしるし112の中心点が境界点である。図4Aに境界標または目標物110の他の例として土地100の境界線101上に立っている木113を示す。
【0018】
境界標または目標物110に測位信号受信機20を着脱自在に取り付ける。例えば、図3Aに示す境界標111に測位信号受信機20を取り付ける場合には、図3Bに示すように、境界標111の頭部に測位信号受信機20の中心と十字のしるし112の中心点とがほぼ一致するように測位信号受信機20を載せる。図3Bにおいては、測位信号受信機20の平面形状を一例として円形としているが、測位信号受信機20の平面形状等の形状は問わない。測位信号受信機20に通信装置40が一体化されている場合は測位信号受信機20および通信装置40を境界標111の頭部に載せ、測位信号受信機20に通信装置40がケーブル等で接続されている場合は通信装置40は地面に置く。必要に応じて、容易に剥がすことができる粘着シールを境界標111の頭部に貼り付け、この粘着シール上に測位信号受信機20あるいは測位信号受信機20および通信装置40を貼り付けてもよい。図4Aに示す木113に測位信号受信機20を取り付ける場合には、図4Bに示す木113の根元や木113の幹からでた枝等に測位信号受信機20を載せる。測位信号受信機10に通信装置40が一体化されている場合は測位信号受信機10および通信装置40を木113の根元や木113の幹からでた枝等に載せ、測位信号受信機20に通信装置40がケーブル等で接続されている場合は通信装置40は木113の根元の上あるいは根元から離れたところの地面に置く。必要に応じて、容易に剥がすことができる粘着シールを木113の根元や枝に貼り付け、この粘着シール上に測位信号受信機20あるいは測位信号受信機20および通信装置40を貼り付けてもよい。
【0019】
次に、測位信号受信機20の電源を入れて(オンとして)測位衛星10から測位信号を受信し、境界標または目標物110の位置情報を取得する。測位信号受信機20の電源を入れることで通信装置40の電源が入るようにし、あるいは通信装置40の電源を測位信号受信機20と独立して入れる。こうして取得された境界標または目標物110の位置情報を通信装置40により管理センター(例えば、市町村等の不動産登記等を所管する部署)のコンピュータ30に無線あるいはインターネットを介して送信する。同様の操作を土地100の境界線101上にある全ての境界標または目標物110について行う。これによって、土地100の境界線101上にある全ての境界標または目標物110の位置情報がコンピュータ30に送信される。
【0020】
コンピュータ30に接続されたディスプレイには、データベースに蓄積され、あるいはインターネットを介してダウンロードした、土地100の所在する地域の地図(例えば、国土交通省国土地理院作成の地理院地図)を土地100が明確に分かる縮尺で表示する。図5にディスプレイに表示された地図の一例を示す。図6に示すように、こうしてディスプレイに表示された地図に、上述のようにして取得された土地100の境界線101上にある全ての境界標または目標物110の位置情報に基づき境界標または目標物110を示すマーク130を付ける。マーク130はどのようなものであってもよいが、例えば○や×等であり、図6においては○で示されている。そして、これらのマーク130を結ぶ線分を引く。こうして引かれる線分が境界線101に対応し、これらの線分で囲まれた領域が土地100を示す。こうして境界線101が画定した地図をサーバーに蓄積し、データベース化する。こうして境界線101が画定した土地100は、基本的に市町村等が保有する不動産登記簿に登録された土地100と一致する。境界線101が画定した地図のデータベース化の際には、土地100の境界線101が画定した時の土地100の地権者、土地100の売買価格および土地100の近隣の土地の売買価格のうちの少なくとも一つを土地100に関連付けてサーバーに蓄積し、データベース化する。その後に土地100の地権者、土地100の売買価格および土地100の近隣の土地の売買価格の変更があった場合には、変更後の地権者、土地100の売買価格および土地100の近隣の土地の売買価格も土地100に関連付けてサーバーに蓄積し、データベース化する。
【0021】
土地100の輪郭が複雑な形状をしているため、土地100の境界線101上の全ての境界標または目標物110の位置情報だけでは境界線101の画定が難しい場合は、コンピュータ30から市町村等が保有する不動産登記簿データベースにアクセスし、アクセスして得られた登記簿上の土地100の輪郭を同じ縮尺でディスプレイに表示された地図に表示する。土地100の境界線101上の全ての境界標または目標物110の位置情報に加えて、こうして表示された登記上の土地100の輪郭を利用して境界線101を画定する。
【0022】
例えば、土地100の一部が売却された結果、土地100の境界線101に変更があった場合には、上述と同様に、この変更後の境界線101上の境界標または目標物110に測位信号受信機20を取り付けて測位信号を受信し、境界標または目標物110の位置情報を取得してこの位置情報を通信装置40を介してコンピュータ30に送信し、コンピュータ30においてディスプレイに表示された地図にこれらの位置情報を入力し、こうして位置情報が入力されて変更後の境界線101が画定した地図を境界線101の変更の年月日とともにサーバーに蓄積し、データベース化する。
【0023】
次に、何らかの理由で地権者や市町村等が知らない間に土地100の境界線101上の境界標または目標物110がデータベース上の位置と異なる位置に移動した場合について説明する。
【0024】
市町村等の職員等が定期的または不定期に管理する地域を巡回し、各地権者が所有する土地の境界線を確認する場合を考える。土地100の境界線101を確認する場合には、上述のようにして境界線101上の境界標または目標物110に測位信号受信機20を取り付けて測位信号を受信し、境界標または目標物110の位置情報を取得してこの位置情報を通信装置40を介してコンピュータ30に送信し、コンピュータ30においてディスプレイに表示された地図にこれらの位置情報を入力し、こうして位置情報が入力されて境界線101が画定した地図をディスプレイに表示する。次に、この境界線101が画定した地図に、データベースに蓄積されたこの土地100の境界線101を読み出して重ねて表示し、両者を照合する。照合の結果、両者が一致している場合は、境界標または目標物110はデータベース上の位置から変化がないと判断することができる。一方、照合の結果、両者が一致しない場合は、何らかの理由により、境界標または目標物110がデータベースと異なった位置に移動していることが分かる。一例として、土地100の一つの長辺の両端の二つの境界標または目標物110が内側に移動していた場合を図7に示す。こうして、境界標または目標物110がデータベース上の位置から移動していることが分かったら、市町村等の職員等が境界標または目標物110を登記時の位置に戻す。こうして土地100の境界線101をデータベース上の境界線と一致させることができる。
【0025】
以上のように、この一実施の形態によれば、山間部の土地100の境界標または目標物110に測位信号受信機20を取り付けて衛星測位システムにより測位信号を受信することによりこの境界標または目標物110の位置情報を取得することができる。そして、こうして取得された位置情報を用い、必要に応じてさらにその土地を管理する市町村等が保有するその土地の境界線の情報を参照して、その土地100の地図をコンピュータ30上で容易に作成することができる。このため、その土地100の境界線101のデータベース化を低コストで容易に行うことができる。そして、土地を管理する市町村等の職員等が定期的または不定期にその土地100の境界線101上の境界標または目標物110の位置情報を取得して境界線101を確認することにより、データベース化された土地100の境界線101との照合により、境界標または目標物110が勝手に移動等されたり、災害等で移動したりした場合には直ぐ発見することができる。このため、境界標または目標物110をデータベース上の位置に戻すことができる。この土地境界線管理システムは市町村等が保有する不動産登記簿を補完するのに用いて極めて好適なものである。
【0026】
以上、この発明の一実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0027】
例えば、上述の一実施の形態において挙げた数値、構成、構造、形状等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、構造、形状等を用いてもよい。
【0028】
また、上述の一実施の形態においては、山間部の土地100を考えたが、これに限定されるものではなく、基本的にはどのような土地であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…測位衛星、20…測位信号受信機、30…コンピュータ、40…通信装置、100…土地、101…境界線、110…境界標または目標物、111…境界標、112…しるし、113…木
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-03-23
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に着脱自在に取り付けられる、測位衛星からの測位信号を受信する測位信号受信機と、
上記測位信号受信機で受信される測位信号より取得される上記境界標または目標物の位置情報が送信され、上記土地を含む地域の地図に当該位置情報が入力されるコンピュータと、
を有し、
上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介して上記コンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて上記土地の境界線が確定した上記地図をサーバーに蓄積してデータベース化し、その後、上記境界標または目標物から上記測位信号受信機を取り外し、
管理者が定期的または不定期に上記地域を巡回し、上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けて測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介して上記コンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて確定した境界線と上記データベースに蓄積された境界線との照合を行う土地境界線管理システム。
【請求項2】
上記照合の結果、両者が一致している場合は、上記境界標または目標物の位置が上記データベース上の位置から変化がないと判断し、両者が一致しない場合は、上記境界標または目標物が上記データベース上の位置と異なった位置に移動していると判断する請求項1記載の土地境界線管理システム。
【請求項3】
上記コンピュータは、上記地域の地図情報データベースをサーバーに有し、または、インターネットを介して当該地図情報データベースをダウンロードし、または、クラウドサーバーに蓄積された当該地図情報データベースにアクセスすることにより、上記地図を上記コンピュータに接続されたディスプレイに表示することができるようになっている請求項1または2記載の土地境界線管理システム。
【請求項4】
管理すべき土地の境界線に設置された境界標および/または当該境界線上の目標物に測位衛星からの測位信号を受信する測位信号受信機を着脱自在に取り付け、
上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けた状態で測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介してコンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて上記土地の境界線が確定した上記地図をサーバーに蓄積してデータベース化し、その後、上記境界標または目標物から上記測位信号受信機を取り外し、
管理者が定期的または不定期に上記地域を巡回し、上記境界標または目標物に上記測位信号受信機を取り付けて測位信号を受信し、当該測位信号より上記境界標または目標物の位置情報を取得して当該位置情報を通信装置を介して上記コンピュータに送信し、上記コンピュータにおいて上記地図に当該位置情報を入力し、当該位置情報が入力されて確定した境界線と上記データベースに蓄積された境界線との照合を行う土地境界線管理方法。
【請求項5】
上記照合の結果、両者が一致している場合は、上記境界標または目標物の位置が上記データベース上の位置から変化がないと判断し、両者が一致しない場合は、上記境界標または目標物が上記データベース上の位置と異なった位置に移動していると判断する請求項4記載の土地境界線管理方法。