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特開2022-73698カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073698
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20220510BHJP
   A23B 7/157 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A23B7/154
A23B7/157
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183850
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守悟
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和志
(72)【発明者】
【氏名】村井 克之
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169HA01
4B169HA02
4B169HA06
4B169HA07
4B169HA09
4B169KA07
4B169KA10
4B169KB03
4B169KC16
4B169KC35
(57)【要約】
【課題】カット野菜は、鮮度が低下し易いという問題も有しているため、カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法が求められている。
【解決手段】カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記カット野菜に対して、水又は水溶液(過酢酸水溶液を除く)を用いた処理を行う工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記カット野菜に対して、水又は水溶液(過酢酸水溶液を除く)を用いた処理を行う工程。
【請求項2】
工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の過酢酸濃度が10~250質量ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の温度が1~70℃である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)における処理が、前記カット野菜を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記浸漬処理の浸漬時間が、5~600秒である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(2)で用いる前記水溶液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含む水溶液である、請求項1~5のいずれか一項の記載の方法。
【請求項7】
工程(2)で用いる前記水溶液の有効成分濃度が、5~1000質量ppmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(2)における処理が、前記カット野菜に対して、水又は前記水溶液をかけ流す処理である、請求項1~7のいずれか一項の記載の方法。
【請求項9】
工程(2)における処理が、前記カット野菜を、水又は前記水溶液に浸漬させる処理である、請求項1~7のいずれか一項の記載の方法。
【請求項10】
工程(2)を経た前記カット野菜を、袋又は容器に入れて密封して保存する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
さらに下記工程(3)を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
・工程(3):電気伝導度の測定によって、工程(2)を経た前記カット野菜の鮮度を管理する工程。
【請求項12】
工程(3)における前記カット野菜の鮮度の管理が、前記電気伝導度が所定値以下となるように制御して行われる、請求項11の記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め所定の大きさに切断されたカット野菜が市場に流通している。カット野菜は、野菜の裁断なしに調理が可能であり、また、サラダとして提供することもでき、調理の手間を省くことができるため、需要も大きい。
ところで、例えば、ネギ類等の糖度が高い野菜は、カット後の切断面から出た浸出液が、野菜の表面に付着して菌が増殖してしまう等の問題が生じ易い。このような菌の増殖を抑制するために、野菜に対しては殺菌処理が行われることが多い。
例えば、特許文献1には、ネギ類をカットネギ類とするカット工程を行う前に、ネギ類を、所定濃度及び/又は所定pHである、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、有機酸水溶液、過カルボン酸水溶液、及び焼成カルシウム水溶液のいずれか1種の45~60℃の水溶液に接液して殺菌する殺菌工程を含む、カットネギ類の製造方法に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-97437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、カット野菜は、鮮度が低下し易いという問題も有しているため、カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程、及び、当該工程を経たカット野菜に対して、水又は過酢酸水溶液以外の水溶液を用いた処理を行う工程を有する、カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法を提供する。具体的には、本発明は、例えば、下記態様[1]~[12]を提供する。
[1]カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記カット野菜に対して、水又は水溶液(過酢酸水溶液を除く)を用いた処理を行う工程。
[2]工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の過酢酸濃度が10~250質量ppmである、上記[1]に記載の方法。
[3]工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の温度が1~70℃である、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]工程(1)における処理が、前記カット野菜を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]前記浸漬処理の浸漬時間が、5~600秒である、上記[4]に記載の方法。
[6]工程(2)で用いる前記水溶液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含む水溶液である、上記[1]~[5]のいずれか一項の記載の方法。
[7]工程(2)で用いる前記水溶液の有効成分濃度が、5~1000質量ppmである、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]工程(2)における処理が、前記カット野菜に対して、水又は前記水溶液をかけ流す処理である、上記[1]~[7]のいずれか一項の記載の方法。
[9]工程(2)における処理が、前記カット野菜を、水又は前記水溶液に浸漬させる処理である、上記[1]~[7]のいずれか一項の記載の方法。
[10]工程(2)を経た前記カット野菜を、袋又は容器に入れて密封して保存する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]さらに下記工程(3)を有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の方法。
・工程(3):電気伝導度の測定によって、工程(2)を経た前記カット野菜の鮮度を管理する工程。
[12]工程(3)における前記カット野菜の鮮度の管理が、前記電気伝導度が所定値以下となるように制御して行われる、上記[11]の記載の方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の方法によれば、殺菌され、鮮度保持性をより向上させたカット野菜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔本発明のカット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法〕
本発明は、カット野菜の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する。
・工程(1):前記カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記カット野菜に対して、水又は水溶液(過酢酸水溶液を除く)を用いた処理を行う工程。
また、本発明の一態様の方法は、さらに下記工程(3)を有してもよい。
・工程(3):電気伝導度の測定によって、工程(2)を経た前記カット野菜の鮮度を管理する工程。
【0008】
本発明の一態様の方法において、殺菌及び鮮度を保持する対象となる野菜としては、特に制限は無いが、例えば、スイカ、メロン、ゴーヤ、ニガウリ、トウガン、カボチャ、レタス、キャベツ、小松菜、ホウレンソウ、春菊、ヨモギ、白菜、パプリカ、ピーマン、ナス、キュウリ、サヤインゲン、サヤエンドウ、ニンニク、タマネギ、セロリ、トマト、チンゲンサイ、ダイコン、カブ、ニンジン、ブロッコリー、カリフラワー、トウモロコシ、シソ、パセリ、ショウガ、アスパラガス、ネギ、ビーツ、ゴボウ、モロヘイヤ、ユズ、山芋、サツマイモ、ジャガイモ等が挙げられる。
【0009】
本発明の一態様の方法において、上記野菜を切断したカット野菜は、少なくとも表面の一部に切断面を有する野菜であればよい。例えば、食用に適さない部位を切断したカット野菜であってもよい。また、さらに切断をせずとも、直接各種調理や食用とすることができるように切断したカット野菜であってもよく、そのカット野菜のカット形態としては、特に制限はされず、例えば、繊切り、薄切り、輪切り、半月切り、細切り、みじん切り、いちょう切り、短冊切り、乱切り、拍子木切り、ぶつ切り、小口切り、ザク切り、ささがき等が挙げられる。
以下、本発明の方法における各工程の詳細について説明する。
【0010】
<工程(1)>
工程(1)は、カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程である。
本工程で、カット野菜に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行うことで、カット野菜に対して殺菌を行うことができる。また、カット野菜の鮮度保持性も向上させることができる。その理由としては、過酢酸水溶液によるカット野菜の細胞への損傷が少なく、且つ、過酢酸水溶液を用いた処理により効果的な殺菌が可能であり、経時による細菌の発生を抑制できるからと考えられる。
【0011】
本工程で用いる過酢酸水溶液の調製方法は、特に制限はなく、過酢酸を水に加えて調製してもよく、過酢酸を含む過酢酸製剤を水に加えて調製してもよい。なお、当該過酢酸製剤は、過酢酸と共に、過酸化水素を含むことが好ましい。
過酢酸水溶液の調製に用いる水としては、例えば、水道水、純水、超純水、滅菌超純水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、滅菌超純水が好ましい。
【0012】
本工程で用いる過酢酸水溶液の過酢酸濃度は、カット野菜に対して殺菌を十分に行うと共に、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは10~250質量ppm、より好ましくは12~200質量ppm、より好ましくは15~150質量ppm、更に好ましくは17~100質量ppm、より更に好ましくは19~70質量ppm、特に好ましくは22~40質量ppmである。
なお、本明細書において、過酢酸濃度は、平沼過酢酸カウンタPA-300(平沼産業株式会社製、製品名)によって測定することができる。
【0013】
なお、本工程で用いる過酢酸水溶液は、過酢酸以外の他の溶質を含有してもよい。
過酢酸以外の他の溶質の含有量は、当該過酢酸水溶液に含まれる過酢酸の全量100質量部に対して、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、又は0~0.001質量部であってもよい。
【0014】
本工程で用いる過酢酸水溶液の温度は、カット野菜に対して殺菌を十分に行うと共に、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは1℃以上、より好ましくは3℃以上、更に好ましくは5℃以上、より更に好ましくは7℃以上、特に好ましくは8℃以上であり、また、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、より好ましくは60℃以下、更に好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下、より更に好ましくは30℃以下、特に好ましくは20℃以下である。
【0015】
本工程における過酢酸水溶液を用いた処理は、カット野菜に対して過酢酸水溶液をかけ流す処理であってもよく、カット野菜を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理であってもよいが、カット野菜に対して殺菌を十分に行うと共に、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、カット野菜を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理であることが好ましい。
【0016】
なお、カット野菜に対して過酢酸水溶液をかけ流す処理を行う場合、かけ流す過酢酸水溶液とカット野菜との質量比〔過酢酸水溶液/カット野菜〕は、上記観点から、好ましくは0.5~20.0、より好ましくは1.0~16.0、更に好ましくは2.0~12.0、より更に好ましくは2.5~10.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
【0017】
また、カット野菜を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を行う場合、浸漬処理の浸漬時間は、上記観点から、好ましくは5~600秒、より好ましくは10~500秒、更に好ましくは15~400秒、より更に好ましくは20~350秒、特に好ましくは30~300秒である。
また、浸漬処理で用いる過酢酸水溶液とカット野菜との質量比〔過酢酸水溶液/カット野菜〕は、上記観点から、好ましくは1.0~20.0、より好ましくは1.5~16.0、更に好ましくは2.0~12.0、より更に好ましくは2.5~10.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
【0018】
工程(1)の処理が終了後、浸漬処理を行っている場合は、過酢酸水溶液からカット野菜を取り出し、別の処理を行わずに、次の工程(2)の処理を行うことが好ましい。
【0019】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)を経た前記カット野菜に対して、水又は水溶液(過酢酸水溶液を除く)を用いた処理を行う工程である。
本工程を経ることで、カット野菜の鮮度保持性も向上させることができる。その理由としては、本工程を通じて、保存時のカット野菜の細胞の損傷を抑制することができるからと考えられる。
【0020】
本工程で用いる水としては、例えば、水道水、純水、超純水、滅菌超純水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、滅菌超純水が好ましい。
【0021】
また、本工程で用いる前記水溶液は、過酢酸水溶液以外の水溶液であればよく、例えば、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、過硝酸、及びオゾン等から選ばれる少なくとも1種を含む水溶液が挙げられる。
これらの中でも、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、本工程で用いる前記水溶液は、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、酢酸、及び酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含む水溶液であることが好ましく、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種を含む水溶液であることがより好ましく、次亜塩素酸水溶液であることが更に好ましい。
【0022】
本工程で用いる前記水溶液の調製方法は、特に制限はなく、溶質を水に加えて調製してもよく、溶質を含む製剤を水に加えて調製してもよい。
なお、上記の次亜塩素酸水溶液は、次亜塩素酸ナトリウムもしくは次亜塩素酸ナトリウムを含む製剤を水に加えて次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した後、当該次亜塩素酸ナトリウム水溶液に炭酸ガスをバブリングして調製してもよい。
水溶液の調製に用いる水としては、例えば、水道水、純水、超純水、滅菌超純水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、滅菌超純水が好ましい。
【0023】
本工程で用いる水溶液の有効成分濃度は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは5質量ppm以上、より好ましくは7質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは12質量ppm以上、より更に好ましくは15質量ppm以上、特に好ましくは17質量ppm以上であり、また、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは900質量ppm以下、より好ましくは800質量ppm以下、更に好ましくは700質量ppm以下、より更に好ましくは600質量ppm以下、特に好ましくは550質量ppm以下である。
なお、本明細書において、有効成分濃度とは、水以外の成分の濃度を意味し、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウムは、チオ硫酸ナトリウム滴定(参考:平成15年9月29日厚生労働省告示第318号)によって測定することができる。酢酸ナトリウムは過塩素酸滴定(参考:JIS K8371)によって測定することができる。
【0024】
本工程で用いる次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、下限及び上限は上述のとおりであるが、500質量ppm以下、400質量ppm以下、300質量ppm以下、200質量ppm以下、150質量ppm以下、100質量ppm以下、90質量ppm以下、80質量ppm以下、70質量ppm以下、又は60質量ppm以下としてもよい。
【0025】
本工程で用いる次亜塩素酸水溶液の有効塩素濃度は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、下限及び上限は上述のとおりであるが、20質量ppm以上、30質量ppm以上、40質量ppm以上、60質量ppm以上、80質量ppm以上、100質量ppm以上、120質量ppm以上、140質量ppm以上、160質量ppm以上、又は180質量ppm以上としてもよく、また、500質量ppm以下、450質量ppm以下、400質量ppm以下、350質量ppm以下、300質量ppm以下、又は250質量ppm以下としてもよい。
【0026】
本工程で用いる酢酸ナトリウム水溶液の有効成分(酢酸ナトリウム)濃度は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、下限及び上限は上述のとおりであるが、20質量ppm以上、50質量ppm以上、70質量ppm以上、100質量ppm以上、150質量ppm以上、200質量ppm以上、250質量ppm以上、300質量ppm以上、350質量ppm以上、又は400質量ppm以上としてもよい。
【0027】
本工程で用いる前記水溶液の温度は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは1~70℃、より好ましくは1~50℃、更に好ましくは1~30℃、より更に好ましくは1~20℃、特に好ましくは1~10℃である。
【0028】
本工程における水又は前記水溶液を用いた処理は、カット野菜に対して水又は前記水溶液をかけ流す処理であってもよく、カット野菜を水又は前記水溶液に浸漬させる浸漬処理であってもよい。
本工程において、水を用いた処理を行う場合は、カット野菜に対して水をかけ流す処理を行うことが好ましい。また、前記水溶液を用いた処理を行う場合は、カット野菜を前記水溶液に浸漬させる浸漬処理を行うことが好ましい。
【0029】
なお、カット野菜に対して水又は前記水溶液をかけ流す処理を行う場合、かけ流す水又は前記水溶液とカット野菜との質量比〔水又は前記水溶液/カット野菜〕は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは0.5~20.0、より好ましくは1.0~16.0、更に好ましくは2.0~12.0、より更に好ましくは2.5~10.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
【0030】
また、カット野菜を水又は前記水溶液に浸漬させる浸漬処理を行う場合、浸漬処理の浸漬時間は、カット野菜の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは5~600秒、より好ましくは10~480秒、更に好ましくは15~300秒、より更に好ましくは20~180秒、特に好ましくは25~120秒である。
【0031】
本工程を経た前記カット野菜は、袋又は容器に入れて密封して保存してもよい。
上記袋としては、紙袋であってもよく、ポリエチレン袋やポリプロピレン袋等のプラスチック袋であってもよい。
上記容器としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂から形成されたプラスチック容器、陶磁器、金属容器等が挙げられる。
密封する方法としては、特に制限はなく、例えば袋であれば、開口部を輪ゴムやファスナーで閉じる方法が挙げられる。また、容器であれば、開口部に蓋をする方法であってもよく、開口部をポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニル等の食品用ラップフィルムによって閉じる方法であってもよい。
【0032】
<工程(3)>
本発明の方法では、工程(3)として、電気伝導度の測定によって、工程(2)を経た前記カット野菜の鮮度を管理する工程を有してもよい。
電気伝導度の測定方法としては、例えば、工程(2)を経た前記カット野菜を水に浸漬させ、浸漬後の抽出水の電気伝導度を市販の測定装置を用いて測定する方法が挙げられる。ここで用いる水としては、純水、超純水、滅菌超純水、イオン交換水、蒸留水等が好ましく、滅菌超純水がより好ましい。
【0033】
測定される電気伝導度が高いほど、カット野菜の細胞が損傷し、細胞内の電解物質(ナトリウムイオン、カルシウムイオン等)が溶出していると判断される。そのため、電気伝導度を測定することによって、カット野菜の鮮度を管理することができる。
本工程における前記カット野菜の鮮度の管理方法としては、電気伝導度が所定値以下となるように制御して行われる方法が挙げられる。電気伝導度の閾値は予め定めておき、当該閾値を超えた場合以上となった場合は、細胞内の電解物質が溶出しており、カット野菜の鮮度が低下していると判断することができる。そのため、電気伝導度を予め定めた所定値以下となるように制御することで、カット野菜の鮮度を管理することができる。
【実施例0034】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
【0035】
調製例1
(過酢酸水溶液の調製)
過酢酸製剤(三菱ガス化学株式会社製、商品名「ダイヤパワーFP」、食添用過酢酸、過酢酸14質量%、過酸化水素5.6質量%)を滅菌超純水に溶解させ、過酢酸濃度が10質量ppm、20質量ppm、30質量ppm、50質量ppm、80質量ppm、及び300質量ppmとなる過酢酸水溶液をそれぞれ調製した。
【0036】
調製例2
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液の調製)
次亜塩素酸ナトリウム(アズワン株式会社製、商品名「業務用除菌漂白剤Sani-Clear(サニクリア)」、有効塩素濃度6.0~7.0質量%(工場出荷時)を滅菌超純水に溶解させ、有効塩素濃度が200質量ppmとなる次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0037】
調製例3
(次亜塩素酸水溶液の調製)
次亜塩素酸ナトリウム(アズワン株式会社製、商品名「業務用除菌漂白剤Sani-Clear(サニクリア)」、有効塩素濃度6.0~7.0質量%(工場出荷時)を滅菌超純水に溶解させた後、炭酸ガスをバブリングしてpHが5.5とし、有効塩素濃度が20質量ppm、30質量ppm及び50質量ppmとなる次亜塩素酸水溶液を調製した。
【0038】
調製例4
(酢酸ナトリウム水溶液の調製)
酢酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、商品名「酢酸ナトリウム」、酢酸ナトリウム98.5質量%)を滅菌超純水に溶解させ、酢酸ナトリウム濃度が500質量ppmとなる酢酸ナトリウム水溶液を調製した。
【0039】
以下の実施例及び比較例で用いたカット野菜は以下のとおりである。なお、いずれのカット野菜も、腐敗、変色、虫食い等が目視で確認された部位は除去した。
・「リーフレタス」:リーフレタスをステンレス製の包丁でおよそ5cm角のざく切りに切断したカットリーフレタスを試験サンプルとした。
・「キュウリ」:キュウリをステンレス製のスライサーでおよそ2mmの厚さで薄切りしたカットキュウリを試験サンプルとした。
・「パプリカ」:パプリカをステンレス製のスライサーでおよそ2mmの厚さで薄切りしたカットパプリカを試験サンプルとした。
・「ニンジン」:ニンジンをステンレス製の包丁でおよそ長さ5cm×幅3mmの大きさに細切りしたカットニンジンを試験サンプルとした。
・「ダイコン」:ダイコンをステンレス製の包丁でおよそ長さ5cm×幅3mmの大きさに細切りしたカットダイコンを試験サンプルとした。
【0040】
実施例1~11、比較例1~9
上記のカットリーフレタスを試験サンプルとして用いた。
工程(1)として、試験サンプルを、その質量の5倍の表1に記載の過酢酸濃度の過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を、表1に記載の浸漬時間及び浸漬温度(過酢酸水溶液の温度)にて行った。
次いで、浸漬処理後に過酢酸水溶液から取り出した試験サンプルに対して、工程(2)として、実施例1~7及び10では、試験サンプルの質量の5倍の2℃の減菌超純水をかけ流す処理を行い、実施例8~10では、試験サンプルの質量の5倍の表1に記載の溶質濃度の水溶液に浸漬させる浸漬処理を、表1に記載の浸漬時間及び浸漬温度(水溶液の温度)にて行い、浸漬処理後に試験サンプルを水溶液から取り出した。
なお、比較例1~9については、浸漬処理後に過酢酸水溶液から取り出して、工程(2)を経ずに終了した。
【0041】
実施例12~23
上記のカットキュウリ、カットパプリカ、及びカットニンジンのいずれかを試験サンプルとして用いた。
工程(1)として、表2に記載のカット野菜の試験サンプルを、その質量の5倍の表2に記載の過酢酸濃度の過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を行った。浸漬時間及び浸漬温度(過酢酸水溶液の温度)は表2に記載のとおりである。
次いで、浸漬処理後に過酢酸水溶液から取り出した試験サンプルに対して、工程(2)として、試験サンプルの質量の5倍の2℃の減菌超純水をかけ流す処理を行った。
【0042】
実施例24~30
上記のカットダイコンを試験サンプルとして用いた。
工程(1)として、試験サンプルを、その質量の5倍の表2に記載の過酢酸濃度の過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を、表2に記載の浸漬時間及び浸漬温度(過酢酸水溶液の温度)にて行った。
次いで、浸漬処理後に過酢酸水溶液から取り出した試験サンプルに対して、工程(2)として、実施例21及び25では、試験サンプルの質量の5倍の2℃の減菌超純水をかけ流す処理を行い、実施例22~24及び26~27では、試験サンプルの質量の5倍の表2に記載の有効塩素濃度の次亜塩素酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を、表2に記載の浸漬時間及び浸漬温度(水溶液の温度)にて行い、浸漬処理後に試験サンプルを水溶液から取り出した。
【0043】
以上のようにして処理を行った試験サンプルに付着している水気を切った後、減菌されたサンプル袋(NASCO社製、製品名「ナスコ・ワールパック」、開口部が密封できるポリエチレンフィルム製袋)に試験サンプルを入れ、開口部を密封して、10℃で冷蔵保存した。経時における外観・触感等の変化、臭気の有無を1日ごとに確認し、予め取り決めた劣化状態に至るまでの日数を「鮮度保持期間」とした。そして、この「鮮度保持期間」について、下記基準により、鮮度保持性を評価した。これらの結果を表1及び表2に示す。
[鮮度保持性の評価基準]
・A+:鮮度保持期間が6日以上である。
・A:鮮度保持期間が4日以上5日以下である。
・B:鮮度保持期間が3日である。
・C:鮮度保持期間が2日以下である。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1及び2から、実施例1~30の工程(1)及び(2)を経た処理後のカット野菜は、鮮度保持期間が4日以上であり、鮮度保持性が良好である結果となった。一方で、表1から、比較例1~9の工程(1)の処理のみ行ったカット野菜は、鮮度保持期間は3日以下であり、鮮度保持性が実施例に比べて劣る結果となった。
【0047】
実施例1、3、4、24~30において、工程(2)の後、取り出した試験サンプルに対して、工程(3)として、以下の手順で電気伝導度を測定した。
まず、抽出水である滅菌超純水40gに、試験サンプル10gを30分間浸漬させた。浸漬後の抽出水の電気伝導度を、pH・ECテスター(GroLine Combo(H198131))を用いて測定した。測定は2回行い、表3にはその平均値を記載している。
【0048】
【表3】
【0049】
表3より、いずれの実施例においても、試験サンプルのカット野菜の抽出水の電気伝導度は0.20mS/cm未満であり、鮮度保持性の評価も良好であった。