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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073703
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 4/12 20060101AFI20220510BHJP
   A23B 4/03 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A23B4/12 Z
A23B4/03 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183856
(22)【出願日】2020-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守悟
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和志
(72)【発明者】
【氏名】村井 克之
(57)【要約】
【課題】食肉に対しては鮮度が低下し易いという問題を有しているため、食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法が求められている。
【解決手段】食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記食肉に対して、脱水処理を行う工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記食肉に対して、脱水処理を行う工程。
【請求項2】
工程(2)における脱水処理が、下記式(i)から算出される質量増加率が4.50%以下となるように行われる、請求項1に記載の方法。
・式(i):[質量増加率(%)]=([脱水処理後の前記食肉の質量]-[工程(1)の処理前の前記食肉の質量])/[工程(1)の処理前の前記食肉の質量]×100
【請求項3】
工程(2)における脱水処理が、遠心脱水機を用いて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の過酢酸濃度が100質量ppm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の温度が30℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)における処理が、前記食肉を過酸化水溶液に浸漬させる浸漬処理である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記浸漬処理の処理時間が、5秒以上である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食肉が、牛肉である、請求項1~7のいずれか一項の記載の方法。
【請求項9】
下記式(ii)から算出される鮮度保持率が0.70以下となる、請求項1~8のいずれか一項の記載の方法。
・式(ii):[鮮度保持率]=[工程(2)を経た前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]/[工程(1)の前の前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒予防の観点から、屠殺・解体後の食肉に対して殺菌処理が行われている。食肉の殺菌方法に関して、食肉の品質低下の抑制や殺菌処理の効率化等の観点から、様々な検討が行われている。
例えば、特許文献1には、オゾン吸収促進物水溶液にオゾンを含有させるオゾン含有化工程と、前記オゾン含有化工程と同時又は前記オゾン含有化工程の後に、前記オゾン吸収促進物水溶液に生肉を浸漬する生肉浸漬工程とを備えたことを特徴とする生肉の処理方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-169192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食肉に対しては、鮮度が低下し易いという問題も有しているため、食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程、及び、当該工程を経た食肉に対して、脱水処理を行う工程を有する、食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法を提供する。具体的には、本発明は、例えば、下記態様[1]~[9]を提供する。
[1]食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する、方法。
・工程(1):前記食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記食肉に対して、脱水処理を行う工程。
[2]工程(2)における脱水処理が、下記式(i)から算出される質量増加率が4.50%以下となるように行われる、上記[1]に記載の方法。
・式(i):[質量増加率(%)]=([脱水処理後の前記食肉の質量]-[工程(1)の処理前の前記食肉の質量])/[工程(1)の処理前の前記食肉の質量]×100
[3]工程(2)における脱水処理が、遠心脱水機を用いて行われる、上記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の過酢酸濃度が100質量ppm以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]工程(1)で用いる前記過酢酸水溶液の温度が30℃以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]工程(1)における処理が、前記食肉を過酸化水溶液に浸漬させる浸漬処理である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]前記浸漬処理の処理時間が、5秒以上である、上記[6]に記載の方法。
[8]前記食肉が、牛肉である、上記[1]~[7]のいずれか一項の記載の方法。
[9]下記式(ii)から算出される鮮度保持率が0.70以下となる、上記[1]~[8]のいずれか一項の記載の方法。
・式(ii):[鮮度保持率]=[工程(2)を経た前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]/[工程(1)の前の前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の方法によれば、殺菌され、鮮度保持性をより向上させた食肉を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔本発明の食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法〕
本発明は、食肉の殺菌及び鮮度を保持する方法であって、下記工程(1)~(2)を有する。
・工程(1):前記食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程。
・工程(2):工程(1)を経た前記食肉に対して、脱水処理を行う工程。
【0008】
本発明の一態様の方法において、殺菌及び鮮度を保持する対象となる食肉としては、食用の生肉(加熱処理がされていない肉)であれば特に制限は無く、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉、山羊肉、猪肉、鹿肉、熊肉、馬肉、トナカイ肉、水牛肉、ヤク肉、ラクダ肉、ロバ肉、ラバ肉、ウサギ肉、犬肉、カモ肉、アヒル肉、キジ肉、ライチョウ肉、七面鳥肉、ホロホロチョウ肉、ガチョウ肉、ウズラ肉、カワラバト肉、クジラ肉、イルカ肉、トド肉、アザラシ肉、魚肉、ワニ肉、蛇肉、亀肉等が挙げられる。
また、これらの食肉の部位についても特に制限はない。
【0009】
殺菌及び鮮度を保持する対象となる食肉は、屠殺及び解体後のものが好ましい。
工程(1)前の食肉の大きさは、特に制限は無いが、工程(1)及び(2)を行う際に食肉を入れる処理容器内に収まるような大きさとすることが好ましい。そのため、工程(1)の前に、食肉を所定の大きさに切断する工程を有してもよい。
以下、本発明の方法における各工程の詳細について説明する。
【0010】
<工程(1)>
工程(1)は、食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行う工程である。
本工程で、食肉に対して、過酢酸水溶液を用いた処理を行うことで、食肉に対して殺菌を行うことができる。また、食肉の鮮度保持性も向上させることができる。その理由としては、過酢酸水溶液による食肉の細胞への損傷が少なく、且つ、過酢酸水溶液を用いた処理により効果的な殺菌が可能であり、経時による菌の発生を抑制できるからと考えられる。
【0011】
本工程で用いる過酢酸水溶液の調製方法は、特に制限はなく、過酢酸を水に加えて調製してもよく、過酢酸を含む過酢酸製剤を水に加えて調製してもよい。なお、当該過酢酸製剤は、過酢酸と共に、過酸化水素を含むことが好ましい。
過酢酸水溶液の調製に用いる水としては、例えば、水道水、純水、超純水、滅菌超純水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられ、滅菌超純水が好ましい。
【0012】
本工程で用いる過酢酸水溶液の過酢酸濃度は、食肉に対して殺菌を十分に行うと共に、食肉の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは100質量ppm以上、より好ましくは150質量ppm以上、より好ましくは200質量ppm以上、更に好ましくは250質量ppm以上、より更に好ましくは300質量ppm以上、特に好ましくは350質量ppm以上であり、さらに、400質量ppm以上、450質量ppm以上、500質量ppm以上、550質量ppm以上、600質量ppm以上、650質量ppm以上、700質量ppm以上、750質量ppm以上、又は800質量ppm以上としてもよく、また、好ましくは2000質量ppm以下、より好ましくは1800質量ppm以下、更に好ましくは1700質量ppm以下、より更に好ましくは1600質量ppm以下、特に好ましくは1500質量ppm以下であり、さらに、1400質量ppm以下、1300質量ppm以下、1200質量ppm以下、1100質量ppm以下、又は1000質量ppm以下としてもよい。
なお、本明細書において、過酢酸濃度は、平沼過酢酸カウンタPA-300(平沼産業株式会社製、製品名)によって測定することができる。
【0013】
なお、本工程で用いる過酢酸水溶液は、過酢酸以外の他の溶質を含有してもよい。
過酢酸以外の他の溶質の含有量は、当該過酢酸水溶液に含まれる過酢酸の全量100質量部に対して、0~50質量部、0~30質量部、0~20質量部、0~10質量部、0~5質量部、0~1質量部、0~0.1質量部、0~0.01質量部、又は0~0.001質量部であってもよい。
【0014】
本工程で用いる過酢酸水溶液の温度は、食肉に対して殺菌を十分に行うと共に、食肉の鮮度保持性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは1℃以上、更に好ましくは2℃以上、より更に好ましくは3℃以上、特に好ましくは5℃以上であり、また、好ましくは30℃以下、より好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは18℃以下、更に好ましくは15℃以下、より更に好ましくは12℃以下、特に好ましくは10℃以下である。
【0015】
本工程における過酢酸水溶液を用いた処理は、食肉に対して過酢酸水溶液をかけ流す処理であってもよく、食肉を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理であってもよいが、食肉に対して殺菌を十分に行うと共に、食肉の鮮度保持性を向上させる観点から、食肉を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理であることが好ましい。
【0016】
なお、食肉に対して過酢酸水溶液をかけ流す処理を行う場合、かけ流す過酢酸水溶液と食肉との質量比〔過酢酸水溶液/食肉〕は、上記観点から、好ましくは0.5~20.0、より好ましくは1.0~16.0、更に好ましくは2.0~12.0、より更に好ましくは2.5~10.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
【0017】
また、食肉を過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を行う場合、浸漬処理の浸漬時間は、上記観点から、好ましくは5~600秒、より好ましくは10~500秒、更に好ましくは15~400秒、より更に好ましくは20~350秒、特に好ましくは25~300秒である。
また、浸漬処理で用いる過酢酸水溶液と食肉との質量比〔過酢酸水溶液/食肉〕は、上記観点から、好ましくは1.0~20.0、より好ましくは1.5~16.0、更に好ましくは2.0~12.0、より更に好ましくは2.5~10.0、特に好ましくは3.0~7.5である。
【0018】
工程(1)の処理が終了後、浸漬処理を行っている場合は、過酢酸水溶液から食肉を取り出し、別の処理を行わずに、次の工程(2)の処理を行うことが好ましい。
【0019】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)を経た前記食肉に対して、脱水処理を行う工程である。
本工程で、過酢酸水溶液が浸み込んだ工程(1)を経た食肉に対して、脱水処理を行うことで、食肉の鮮度保持性を向上させることができる。それは、食肉に浸み込んだ水分は菌の発生の要因となると考え、脱水処理を行うことで、経時による菌の発生を効果的に抑制でき、その結果、食肉の鮮度保持性が向上するからと考えられる。
【0020】
食肉の鮮度保持性を向上させる観点から、本工程における脱水処理は、下記式(i)から算出される質量増加率が4.50%以下になるように行われることが好ましい。
・式(i):[質量増加率(%)]=([脱水処理後の前記食肉の質量]-[工程(1)の処理前の前記食肉の質量])/[工程(1)の処理前の前記食肉の質量]×100
上記式(i)から算出される「質量増加率」は、工程(1)の処理前の食肉の質量に対する、工程(2)の脱水処理後の食肉の質量の増加率を示している。増加した質量は、工程(1)において前記食肉に浸み込んだ過酢酸水溶液である。
なお、上記(i)から算出される「質量増加率」は、4.50%以下であるが、好ましくは4.00%以下、より好ましくは3.50%以下、より好ましくは3.00%以下、更に好ましくは2.80%以下、更に好ましくは2.60%以下、より更に好ましくは2.50%以下、より更に好ましくは2.30%以下、特に好ましくは2.10%以下であり、さらに、2.00%以下、1.80%以下、1.60%以下、1.50%以下、1.40%以下、1.30%以下、1.20%以下、1.10%以下、1.00%以下、又は0.90%以下としてもよい。
【0021】
なお、工程(1)の処理前の食肉に含まれている水分も脱水された場合には、上記の質量増加率の値はマイナスになることもあり得る。
ただし、食肉の品質や形状を保持する観点から、上記(i)から算出される「質量増加率」は、好ましくは-0.90%以上、より好ましくは-0.95%以上、より好ましくは0.00%以上、更に好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.20%以上、より更に好ましくは0.25%以上、特に好ましくは0.30%以上である。
【0022】
工程(2)における脱水処理の方法としては、食肉に浸み込んだ水分を除去できる方法であればよいが、食肉の品質や形状を保持する観点から、遠心脱水機を用いて行われることが好ましい。
遠心脱水機の攪拌速度は、特に制限はなく、上記質量増加率を所望の値に調整し易い条件にて適宜設定されればよいが、食肉の品質や形状を保持する観点、及び、処理効率の観点から、好ましくは100~2000rpm、より好ましくは200~1800rpm、更に好ましくは300~1500rpm、より更に好ましくは500~1300rpm、特に好ましくは600~1100rpmである。
また、遠心脱水機の攪拌時間は、攪拌速度及び所望の上記質量増加率の値に応じて適宜設定することができる。
【0023】
本工程を経た前記食肉は、袋又は容器に入れて密封して保存してもよい。
上記袋としては、紙袋であってもよく、ポリエチレン袋やポリプロピレン袋等のプラスチック袋であってもよい。
上記容器としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂から形成されたプラスチック容器、陶磁器、金属容器等が挙げられる。
密封する方法としては、特に制限はなく、例えば袋であれば、開口部を輪ゴムやファスナーで閉じる方法が挙げられる。また、容器であれば、開口部に蓋をする方法であってもよく、開口部をポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニル等の食品用ラップフィルムによって閉じる方法であってもよい。
【0024】
〔本発明の方法で処理された食肉〕
本発明の方法により、以上の工程を経て処理された食肉は、鮮度保持性をより向上させたものとなり得る。
本発明の方法において、下記式(ii)から算出される鮮度保持率が0.70以下となることが好ましい。
・式(ii):[鮮度保持率]=[工程(2)を経た前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]/[工程(1)の前の前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数]
【0025】
上記式(ii)から算出される鮮度保持率は、本発明の方法の処理を全く行わなかった場合の食肉の一般細菌数に対する、本発明の方法の処理を行った場合の食肉の一般細菌数の割合を示したものであり、値が小さいほど、鮮度保持性が優れているといえる。
上記式(ii)から算出される鮮度保持率は、0.70以下であるが、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.50以下、更に好ましくは0.40以下、より更に好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.20以下である。
なお、上記式(ii)中の「食肉の一般細菌数」及び「鮮度保持率」は、後述の実施例の方法に基づき測定及び算出された値を意味する。
【実施例0026】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0027】
調製例1
(過酢酸水溶液の調製)
過酢酸製剤(三菱ガス化学株式会社製、商品名「ダイヤパワーFP」、食添用過酢酸、過酢酸14質量%、過酸化水素5.6質量%)を滅菌超純水に溶解させ、過酢酸濃度が400質量ppm、800質量ppm、及び1200質量ppmとなる過酢酸水溶液をそれぞれ調製した。
【0028】
実施例1~6、比較例1~7
国内で屠殺・解体後、殺菌処理されずに真空パックされたブロック肉(牛肉)の表面をトリミングし、1検体あたり50~60gの重さにカットした肉を試験サンプルとした。なお、実施例1~3及び比較例1~4と、実施例4~6及び比較例5~7とでは、互いにロットは異なるが、同じ部位のブロック肉(牛肉)を使用して、それぞれのブロック肉をカットした肉を試験サンプルとした。
なお、比較例1及び5については、以下の工程(1)及び(2)を行わずに終了した。また、比較例2~4及び6~7については、以下の工程(1)のみを行い、工程(2)の脱水処理を行わずに、下記式(i)から算出される質量増加率の算出を行い終了した。
【0029】
まず、工程(1)として、試験サンプルの質量の4倍の表1及び2に記載の過酢酸濃度の過酢酸水溶液に浸漬させる浸漬処理を、表1及び2に記載の浸漬時間及び浸漬温度(過酢酸水溶液の温度)にて行った。
次いで、浸漬処理後に過酢酸水溶液から試験サンプルを取り出し、工程(2)として、遠心脱水器(山研工業株式会社製、商品名「バリバリサラダシリーズ(サラダスピナー) バリバリサラダM」)の脱水カゴの中に投入し、脱水カゴを攪拌速度900rpmにて回転させて、下記式(i)から算出される質量増加率が表1及び2に示す値になるまで脱水処理を行った。
・式(i):[質量増加率(%)]=([脱水処理後の食肉の質量]-[工程(1)の処理前の食肉の質量])/[工程(1)の処理前の食肉の質量]×100
【0030】
以上のようにして処理を行った試験サンプルを、減菌されたサンプル袋(NASCO社製、製品名「ナスコ・ワールパック」、開口部が密封できるポリエチレンフィルム製袋)に入れ、開口部を密封して、2℃で冷蔵保存した。保存開始から1~12日経過後のおける一般細菌数を以下の方法で測定した。その結果は表1及び2のとおりであった。
<一般細菌数の測定>
容器内に、対象となる試験サンプル25gを秤量し、リン酸緩衝生理食塩水250mLを加え、ストマッカー(アズワン株式会社製、製品名「E-Mix primo」)を用いて、容器内の試験サンプルを粉砕し、均質化及び液状化させて、試料液を調製した。
そして、当該試料液にリン酸緩衝生理食塩水を加えて所定の希釈倍率にて希釈し、35℃で標準寒天培地に混釈培養した。1日~12日経過後に、発生したコロニーの数を目視により計測し、コロニー数から一般細菌数(単位:CFU/g)を算出した。
【0031】
また、12日経過後の一般細菌数の値を基に、下記式(ii)から、鮮度保持率を算出した。その結果は表1及び2のとおりであった。
・式(ii):[鮮度保持率]=[工程(2)を経た前記食肉を2℃で12日経過後の当該食肉の一般細菌数]/[工程(1)の前の前記食肉を2℃で12日経過後の当該食肉の一般細菌数]
なお、上記式(ii)中の「工程(1)の前の前記食肉を2℃で12日間冷凍保存後の当該食肉の一般細菌数」は、実施例1~4では比較例1の12日経過後の一般細菌数の値を用い、実施例5~7では比較例2の12日経過後の一般細菌数の値を用いた。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1及び表2より、実施例1~6の工程(1)及び(2)を経た処理後の食肉は、比較例1~7に比べて、12日経過後においても一般細菌数が抑制されており、鮮度保持性が良好である結果となった。