(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073754
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】紫外線照射装置および紫外線照射方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220510BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220510BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61L2/10
G01J1/02 G
G01J1/42 A
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020183933
(22)【出願日】2020-11-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】寺田 庄一
(72)【発明者】
【氏名】佐畠 健一
【テーマコード(参考)】
2G065
4C058
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB05
2G065BA01
2G065BC01
4C058AA23
4C058AA28
4C058AA30
4C058BB06
4C058CC02
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK21
(57)【要約】
【課題】人体への悪影響が抑制された波長範囲の紫外線を用いた微生物および/またはウイルスの不活化を、効果的に、且つ、より適切に行うことができる紫外線照射装置および紫外線照射方法を提供する。
【解決手段】紫外線照射装置100は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部と、光源部の点灯を制御する制御部と、を備える。制御部は、光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する物体を検知する近接センサから、物体を検知していることを示す検知信号を受信し、検知信号を受信した場合、検知信号を受信する前と比較して光源部から放射される紫外線量を低減するように、光源部の点灯を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部と、
前記光源部の点灯を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信し、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御することを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して、前記光源部から放射される紫外線の照度を低減させるように、前記光源部の点灯を制御することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検知信号を受信した場合、前記光源部を消灯させることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して、前記光源部の点灯デューティ比を低減するように、前記光源部の点灯を制御することを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記検知信号を受信してから、第一の待機時間が経過した後に、前記紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記光放射面から前記所定の離間距離だけ離れた検知基準面において、前記光源部からの紫外線照度が最大照度に対して90%以内となる領域を含むように、前記近接センサの検知範囲が定められていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記紫外線量を低減するよう前記光源部の点灯を制御している間に、前記検知信号の受信が途絶えたとき、前記紫外線量を低減する制御を解除することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記検知信号の受信が途絶えてから、第二の待機時間が経過した後に、前記紫外線量を低減する制御を解除することを特徴とする請求項7に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記光源部から放射される光が照射される空間内における人の所在を検知する人感センサをさらに備え、
前記制御部は、
前記人感センサにより人の所在を検知しており、且つ、前記近接センサからの検知信号を受信した場合に、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項10】
前記近接センサから前記検知信号を受信した場合、警告を発する報知部をさらに備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項11】
前記光放射面の近傍に設けられた前記近接センサをさらに備え、
前記近接センサは、前記物体を検知した場合、前記検知信号を前記制御部に対して発信することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項12】
前記光源部は、中心波長222nmの紫外線を放射することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項13】
波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部の点灯を制御する紫外線照射方法であって、
前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信するステップと、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御するステップと、を含むことを特徴とする紫外線照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射して有害な微生物やウイルスを不活化する紫外線照射装置および紫外線照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空間中または物体表面に存在する微生物(細菌や真菌等)やウイルスは、人や人以外の動物に対して感染症を引き起こすことがあり、感染症の拡大によって生活が脅かされることが懸念される。特に、医療施設、学校、役所等の施設や、自動車、電車、バス、飛行機、船等の乗物等、頻繁に人が集まる場所や、人の往来が激しい場所において、感染症が蔓延しやすい。
【0003】
特許文献1には、人や動物の身体の細胞への危害を実質的に回避しつつ、バクテリアを不活化する技術について開示されている。この特許文献1には、紫外線殺菌照射を用いて食品、空気及び浄水中の微生物を分解でき、典型的にはUVB、又はUVCの紫外線が用いられる点、またこれら紫外線が人間及び他の生物にとって危険である点が記載されている。さらに、波長240nmを超える紫外線はヒトの細胞核中のDNAにダメージを引き起こす点、紫外線は波長によって細胞の貫通力が異なり、短波長ほど放射線の貫通力が小さくなることでヒト細胞に対する有害性がなくなる点、が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に基づき、人や動物に対する有害性を抑制される紫外線として、波長帯域が190nm~235nmの光を用いて、身体上又は身体内の少なくとも1つのバクテリアを殺菌することを検討した。
ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によれば、人体への1日(8時間)あたりの紫外線照射量は、波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められており、許容限界値を超えない程度に所定時間当たりに照射される紫外線の照度と照射量を決定することが求められている。この許容限界値は、今後は改定されてゆく可能性もあるが、何かしら紫外線照射量の上限値を定めておくことは、より安全な運用を行う上で好ましい。
【0006】
また、紫外線をエネルギーとしてとらえた場合、紫外線の照度が高くなるにつれてエネルギー量は大きくなる。例えば、波長400nm~600nmの可視光は、人体に対して無害であるが、光の照度が大きくなると、照射面に対して発熱を伴い、また眼に対しては眩しさを伴う。これと同様に、人に対する有害性が抑制された紫外線であっても、光の照度を適切な範囲に設定しておくことが、より望ましいと考えられる。
【0007】
一方で、波長190nm~235nmの紫外線は大気中で拡散し、その照度は距離の二乗に反比例して減衰する。よって、光源からの離間距離の違いによって、照度値が大きく異なってしまう。例えば、光源からの離間距離が1mの領域と、光源からの離間距離が2mの領域とで比較すると、光源から放射される紫外線の減衰率は25%程度となる。言い換えれば、所定の対象空間や対象物表面に対して、微生物やウイルスの不活化に適した紫外線照度を設定する場合は、それよりも高照度の紫外線を光源から放射する必要がある。
【0008】
したがって、光源からの離間距離が大きい場所において効果的な不活化を行うように紫外線照度が設定されている場合、光源からの離間距離が近い場所においては、比較的に短時間で照射量の許容限界値を超えてしまいやすく、また人に対して高いエネルギー量の光が長時間に亘って照射されやすい。
特に、波長190nm~235nmの紫外線は人の視感度範囲から外れる光であり、眼では感知できない。そのため、高い光照度であっても当該光を近距離で見続けてしまうといった場面も考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、人体への悪影響が抑制された波長範囲の紫外線を用いた微生物および/またはウイルスの不活化を、効果的に、且つ、より適切に行うことができる紫外線照射装置および紫外線照射方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線照射装置の一態様は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部と、前記光源部の点灯を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御する。
【0011】
このように、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~235nmの波長範囲にある紫外線を放射するので、人が居る空間において、人に対しても紫外線を照射して殺菌、不活化を行うことができる。また、光放射面から所定の離間距離以内に物体が存在する場合、光源部から放射される紫外線量を低減するので、光放射面に対して近い距離に人が居続けてしまう場合であっても、短時間で紫外線照射量の許容限界値を超えないようにすることができる。したがって、微生物やウイルスの効果的な不活化を実現しつつ、より安全性が確保された紫外線照射装置とすることができる。
【0012】
また、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して、前記光源部から放射される紫外線の照度を低減させるように、前記光源部の点灯を制御してもよい。
この場合、光源からの離間距離が近い場所における不活化効果を維持しつつ、光源に対して近い距離にいる人に対して高いエネルギー量の光が照射されることを適切に抑制することができる。
【0013】
さらに、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記検知信号を受信した場合、前記光源部を消灯させてもよい。
この場合、光源に対して近い距離にいる人に対して、紫外線が照射されないようにすることができる。
【0014】
また、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して、前記光源部の点灯デューティ比を低減するように、前記光源部の点灯を制御してもよい。
この場合、光源からの離間距離が近い場所における不活化効果を維持しつつ、光源に対して近い距離にいる人に対して高いエネルギー量の光が照射されることを適切に抑制することができる。
【0015】
さらに、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記検知信号を受信してから、第一の待機時間が経過した後に、前記紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御してもよい。
この場合、光源部から近い場所を極短時間で人が通り過ぎるたびに紫外線量を低減する制御が作動されることを防止することができる。したがって、光源部から近い場所を人が頻繁に往来する場合であっても、通常点灯を維持し、不活化効果を維持することが可能となる。
【0016】
また、上記の紫外線照射装置において、前記光放射面から前記所定の離間距離だけ離れた検知基準面において、前記光源部からの紫外線照度が最大照度に対して90%以内となる領域を含むように、前記近接センサの検知範囲が定められていてもよい。
この場合、物体が高照度領域に存在することを確実に検知することができる。これにより、確実に紫外線量の低減制御が必要な場面で、適切に紫外線量を低減させることができる。
【0017】
さらにまた、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記紫外線量を低減するように前記光源部の点灯を制御している間に、前記検知信号の受信が途絶えたとき、前記紫外線量を低減する制御を解除するようにしてもよい。
この場合、光放射面から所定の離間距離以内の領域から物体がいなくなった場合に、光源部から放射される紫外線量を増大し、通常点灯に戻すことができる。
【0018】
また、上記の紫外線照射装置において、前記制御部は、前記検知信号の受信が途絶えてから、第二の待機時間が経過した後に、前記紫外線量を低減する制御を解除するようにしてもよい。
この場合、光源部から近い場所を頻繁に人が通り過ぎる場合に、瞬時に点灯制御の切り替えが行われることを防止することができる。これにより、信号の切り替えが瞬時に繰り返されることによって生じるノイズに起因する誤動作を抑制することができる。
【0019】
さらに、上記の紫外線照射装置において、前記光源部から放射される光が照射される空間内における人の所在を検知する人感センサをさらに備え、前記制御部は、前記人感センサにより人の所在を検知しており、且つ、前記近接センサからの検知信号を受信した場合に、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御してもよい。
この場合、近接センサにより検知された物体が人である可能性が高い場合に限り、紫外線量を低減する制御を行うことができる。したがって、不必要に紫外線量が低減されることを抑制することができる。
【0020】
また、上記の紫外線照射装置は、前記近接センサから前記検知信号を受信した場合、警告を発する報知部をさらに備えてもよい。
この場合、光源部から近い場所にいる人に対して、光源部から近距離であることを感知させ、その場所から退避するよう促すことができる。
【0021】
さらに、上記の紫外線照射装置は、前記光放射面の近傍に設けられた前記近接センサをさらに備え、前記近接センサは、前記物体を検知した場合、前記検知信号を前記制御部に対して発信するようにしてもよい。
このように、近接センサを紫外線照射装置に組み込んでもよい。この場合、近接センサを光放射面の近傍に設けることができ、光放射面から所定の離間距離以内に存在する物体を精度良く検知することができる。
【0022】
また、上記の紫外線照射装置において、前記光源部は、中心波長222nmの紫外線を放射してもよい。
この場合、紫外線照射による人体への悪影響を適切に抑制しつつ、微生物やウイルスを効果的に不活化することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る紫外線照射方法の一態様は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部の点灯を制御する紫外線照射方法であって、前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信するステップと、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御するステップと、を含む。
【0024】
このように、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~235nmの波長範囲にある紫外線を放射するので、人が居る空間において、人に対しても紫外線を照射して殺菌、不活化を行うことができる。また、光放射面から所定の離間距離以内に物体が存在する場合、光源部から放射される紫外線量を低減するので、光放射面に対して近い距離に人が居続けてしまう場合であっても、短時間で紫外線照射量の許容限界値を超えないようにすることができる。したがって、微生物やウイルスの効果的な不活化を実現しつつ、より安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一つの態様によれば、人体への悪影響が抑制された波長範囲の紫外線を用いた微生物および/またはウイルスの不活化を、効果的に、且つ、より適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態の紫外線照射装置の外観イメージ図である。
【
図2】紫外線照射装置の利用シーンを示す図である。
【
図4】物体検知後に消灯させる場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図5】物体検知後に消灯させる場合(待機時間あり)の動作例である。
【
図6】物体検知後に低照度にする場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図7】物体検知後に低照度にする場合(待機時間あり)の動作例である。
【
図8】物体検知後に点灯デューティ比を低減する場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図9】物体検知後に点灯デューティ比を低減する場合(待機時間あり)の動作例である。
【
図10】物体検知後に間欠点灯を消灯させる場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図11】物体検知後に間欠点灯を消灯させる場合(待機時間あり)の動作例である。
【
図12】物体検知後に間欠点灯を低照度にする場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図13】物体検知後に間欠点灯を低照度にする場合(待機時間あり)の動作例である。
【
図14】物体検知後に間欠点灯の点灯デューティ比を低減する場合(待機時間なし)の動作例である。
【
図15】物体検知後に間欠点灯の点灯デューティ比を低減する場合(待機時間あり)の動作例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における紫外線照射装置100の外観イメージ図である。
紫外線照射装置100は、人や動物が存在する空間内において紫外線照射を行い、当該空間や当該空間内の物体表面に存在する微生物やウイルスを不活化する装置である。
ここで、上記空間は、例えば、オフィス、商業施設、医療施設、駅施設、学校、役所、劇場、ホテル、飲食店等の施設内の空間や、自動車、電車、バス、タクシー、飛行機、船等の乗物内の空間を含む。なお、上記空間は、病室、会議室、トイレ、エレベータ内などの閉鎖された空間であってもよいし、閉鎖されていない空間であってもよい。
【0028】
紫外線照射装置100は、人や動物の細胞への悪影響が少ない波長190~235nmの紫外線(より好ましくは、波長域200nm~230nmの紫外線)を、対象空間に対して照射して、当該対象空間内の物体表面や空間に存在する有害な微生物やウイルスを不活化するものである。ここで、上記物体は、人体、動物、物を含む。また、紫外線を照射する対象空間は、実際に人や動物がいる空間に限定されず、人や動物が出入りする空間であって人や動物がいない空間を含む。
なお、ここでいう「不活化」とは、微生物やウイルスを死滅させる(又は感染力や毒性を失わせる)ことを指すものである。
【0029】
図1に示すように、紫外線照射装置100は、筐体11を備える。筐体11には、紫外線を放射する光放射面12が形成されている。具体的には、紫外線を放射する光出射窓となる開口部11aが形成されている。この開口部11aには、例えば石英ガラスからなる窓部材が設けられており、窓部材から紫外線を放射する。また、この開口部11aには、不要な波長帯域の光を遮断する光学フィルタ等を設けることもできる。
筐体11内部には、紫外線光源として、エキシマランプ20が収容されている。エキシマランプ20は、例えば中心波長222nmの紫外線を放出するKrClエキシマランプとすることができる。なお、紫外線光源は、KrClエキシマランプに限定されるものではなく、190nm~235nmの波長範囲にある紫外線を放射する光源であればよい。なお、筐体11と紫外線光源(エキシマランプ20)とで光源部を構成している。
【0030】
UV放射線は、波長によって細胞の貫通力が異なり、短波長ほど当該貫通力が小さい。例えば、約200nmといった短波長のUV放射線は、非常に効率良く水を通過するものの、ヒト細胞の外側部分(細胞質)による吸収が大きく、UV放射線に敏感なDNAを含む細胞核に到達するのに十分なエネルギーを有さない場合がある。そのため、上記の短波長のUV放射は、ヒト細胞に対する悪影響が少ない。一方で、波長240nmを超える紫外線は、ヒトの細胞核中のDNAにダメージを与えうる。また、波長190nm未満の紫外線は、オゾンを発生させることが知られている。
そこで、本実施形態では、紫外線光源として、人体への悪影響が少なく、不活化効果が得られる波長域190nm~235nmにピーク波長を有する紫外線を放射する紫外線光源を用いる。また、さらに安全性の高い波長帯域として、波長域200nm~230nmにピーク波長を有する紫外線光源を用いてもよい。
【0031】
エキシマランプ20は、両端が気密に封止された直管状の放電容器21を備える。放電容器21は、例えば石英ガラスにより構成することができる。また、放電容器21の内部には、発光ガスとして希ガスとハロゲンとが封入されている。本実施形態では、発光ガスとして、塩化クリプトン(KrCl)ガスを用いる。この場合、得られる放射光のピーク波長は222nmである。
なお、発光ガスは上記に限定されない。例えば、発光ガスとして臭化クリプトン(KrBr)ガス等を用いることもできる。KrBrエキシマランプの場合、得られる放射光のピーク波長は207nmである。
また、
図1では、紫外線照射装置100が複数(3本)の放電容器21を備えているが、放電容器21の数は特に限定されない。
【0032】
放電容器21の外表面には、一対の電極(第一電極22、第二電極23)が当接するように配置されている。第一電極22および第二電極23は、放電容器21における光取出し面とは反対側の側面(-Z方向の面)に、放電容器21の管軸方向(Y方向)に互いに離間して配置されている。
そして、放電容器21は、これら2つの電極22、22に接触しながら跨るように配置されている。具体的には、2つの電極22、23には凹溝が形成されており、放電容器21は、電極22、23の凹溝に嵌め込まれている。
【0033】
この一対の電極のうち、一方の電極(例えば第一電極22)が高圧側電極であり、他方の電極(例えば第二電極23)が低圧側電極(接地電極)である。第一電極22および第二電極23の間に高周波電圧を印加することで、ランプが点灯される。
【0034】
エキシマランプ20の光取出し面は、光出射窓に対向して配置される。そのため、エキシマランプ20から放射された光は、光出射窓を介して紫外線照射装置100の光放射面12から出射される。
ここで、電極22、23は、エキシマランプ21から放射される光に対して反射性を有する金属部材により構成されていてもよい。この場合、放電容器21から-Z方向に放射された光を反射して+Z方向に進行させることができる。
【0035】
光出射窓となる開口部11aには、上述したように光学フィルタを設けることができる。光学フィルタは、例えば、人体への悪影響の少ない波長域190nm~235nmの光(より好ましくは、波長域200nm~230nmの光)を透過し、波長236nm~280nmのUVC波長帯域をカットする波長選択フィルタとすることができる。具体的には、波長190nm~235nmの波長帯域におけるピーク波長の紫外線照度に対して、波長236nm~280nmの各紫外線照度を1%以下に低減する。
波長選択フィルタとしては、例えば、HfO2層およびSiO2層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることができる。
【0036】
なお、波長選択フィルタとしては、SiO2層およびAl2O3層による誘電体多層膜を有する光学フィルタを用いることもできる。
このように、光出射窓に光学フィルタを設けることで、エキシマランプ20から人に有害な光が放射されている場合であっても、当該光が筐体11の外に漏洩することをより確実に抑えることができる。
【0037】
また、紫外線照射装置100は、
図1に示すように、電源部15と、制御部16と、を備える。
電源部15は、電源からの電力が供給されるインバータ等の電源部材や、電源部材を冷却するためのヒートシンク等の冷却部材を含む。また、制御部16は、光源部を構成するエキシマランプ20の点灯を制御する。
【0038】
さらに、紫外線照射装置100は、人感センサ31と、近接センサ32と、を備える。人感センサ31および近接センサ32は、例えば、筐体11における光放射面12の近傍に配置することができる。
人感センサ31は、光放射面12から放射される紫外線が照射される領域(照射領域)内に存在する人を検知する。人感センサ31は、例えば、人体などから発する熱(赤外線)の変化を検知する焦電型赤外線センサとすることができる。人感センサ31は、人の所在を検知している場合、検知信号を制御部16に発信する。
【0039】
近接センサ32は、光放射面12から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する物体を検知する。ここで、当該物体は、人、動物、物を含む。近接センサ32は、光放射面12に対して直交する方向における光放射面12から対象物体までの離間距離を検知することができる。また、所定の離間距離は、光放射面12から放射される紫外線が届く距離よりも、光放射面12に近い距離となるように設定されている。つまり、光放射面12に直交する方向において、所定の紫外線が照射可能な照射範囲と、紫外線が照射される範囲よりも狭く、光放射面12に近い範囲に定められた検知範囲とが設定される。
近接センサ32は、例えば、赤外LEDなどの赤外線発光素子とフォトダイオードなどの受光素子とを有し、赤外線発光素子から放射され対象物によって反射された赤外線を受光素子により受光することで対象物までの距離を検知する赤外線近接センサとすることができる。近接センサ32は、検知範囲内において物体を検知している場合、検知信号を制御部16に発信する。なお、近接センサ32は、物体の検知動作を行う検知期間中に、連続的に物体を検知してもよいし、断続的に物体を検知してもよい。つまり、近接センサ32は、物体を検知した場合、連続的に検知信号を発信してもよいし、断続的に検知信号を発信してもよい。
なお、近接センサ32は、対象物が検知範囲に存在しているか否かを検知できればよく、上記の赤外線型に限定されるものではない。近接センサ32は、例えば、超音波型や電波型などであってもよい。
【0040】
制御部16は、近接センサ32からの信号に基づき、エキシマランプ20から放射される紫外線量を制御する。具体的には、制御部16は、近接センサ32からの検知信号に基づいて検知範囲内に物体が存在していると判定した場合に、エキシマランプ20からの紫外線量を低減するように制御する。
【0041】
190nm~235nmの紫外線は、大気中で拡散されることで光が減衰する。具体的には、その照度は、光放射面からの離間距離の二乗に反比例して小さくなる。そのため、光放射面から離れた位置に存在する空間中や対象表面に十分な紫外線照射を行うためには、光放射面の近傍での紫外線照度を比較的大きくする必要がある。
190nm~235nmの波長域の紫外線は、上述したように、人体への悪影響の少ない光である。しかしながら、人に対して有害性が無い光であっても、光の強度(照度)が高くなるにつれて、光が持つエネルギー量は大きくなるため、光による刺激量は大きくなると考えられる。
【0042】
また、ACGIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:米国産業衛生専門家会議)やJIS Z 8812(有害紫外放射の測定方法)によれば、人体への1日(8時間)あたりの紫外線照射量は、波長ごとに許容限界値(TLV:Threshold Limit Value)が定められている。この許容限界値は、今後は改定されてゆく可能性もあるが、紫外線の照射量が所定の許容限界値を超えないようにすることが適切である。
【0043】
ところが、本実施形態における紫外線照射装置100は、人が存在する空間内において紫外線照射を行う装置であり、例えば施設の天井や壁など、人が容易に近づける位置に設置される。そのため、紫外線照射装置100の光放射面12に対して近い距離に人が居続けてしまうといったケースが存在し得る。
例えば
図2に示すように、紫外線照射装置100が天井に設置されている場合であっても、人200が紫外線照射装置100を覗き込んだり、手をかざしたりする等により、光放射面12に対して近い距離に人が居続けてしまう場合がある。この場合、比較的短時間でACGIHの許容限界値(TLV)を超えてしまいやすい。
【0044】
そこで、本実施形態における紫外線照射装置100は、近接センサ32によって物体が光放射面12に対して所定の離間距離以内に近づいたことが検知された場合に、エキシマランプ20から放射される紫外線量を低減する制御を行う。
ここで、近接センサ32の検知範囲は、光放射面12から放射される紫外線が照射される照射領域内において設定される領域である。また、近接センサ32の検知範囲は、
図3の光放射面12から直交方向(
図3では鉛直方向)に所定の離間距離Dだけ離れた検知基準面Sにおいて、光放射面12から放射される紫外線の照度が最大照度に対して90%以内となる領域Aを全て含む。なお、検知基準面Sにおいて、光放射面12から放射される紫外線の照度が最大照度となる領域は、光放射面12の直下の領域である。
【0045】
上記所定の離間距離Dは、紫外線光源から放射される紫外線照度値や、紫外線照射装置100の設置環境などに応じて決定されるが、例えば1m程度とすることができる。
なお、所定の離間距離Dは、予め紫外線照射装置100に設定されていてもよいし、ユーザが設定可能な構成であってもよい。ユーザが所定の離間距離Dを設定する場合、例えば、紫外線照射装置100自体や、紫外線照射装置100と通信可能なリモコン等に設けられた操作部をユーザが操作することで、所定の離間距離Dを変更可能にする。
【0046】
本実施形態において、エキシマランプ20から放射される紫外線量を低減する制御は、エキシマランプ20を消灯する制御、エキシマランプ20から放射される紫外線の照度を低減する制御、および、エキシマランプ20の点灯デューティ比を低減する制御、を含む。ここで、点灯デューティ比とは、紫外線光源が点灯している点灯時間と紫外線光源が消灯している休止時間との総和に対する点灯時間の割合である。
なお、紫外線の照度を低減する制御において、照度の低減量は、一定量であってもよいし、通常点灯の照度に対する一定の割合であってもよいし、近接センサ32によって検知された物体の距離に応じた量であってもよい。また、点灯デューティ比を低減する制御において、低減後の点灯デューティ比は、固定値であってもよいし、近接センサ32によって検知された物体の距離に応じた値であってもよい。
【0047】
また、近接センサ32からの検知信号を受信して紫外線量の低減制御を行う場合、検知信号を受信して直ちに紫外線量を低減するのではなく、当該検知信号を受信してから一定時間(第一の待機時間)経過後に紫外線量を低減するようにしてもよい。
例えば、人の往来が激しい場所に紫外線照射装置を設置する場合、検知信号を受信して直ちに紫外線量を低減する(例えば消灯する)ようにすると、光源部から近い場所を人が頻繁に往来するために点灯を維持することが困難となることが想定される。上記のように、当該検知信号を受信してから一定時間が経過してから紫外線量を低減する(例えば消灯する)ようにすれば、光源部の点灯を維持することができ、適切に不活化効果が得られる。
この場合、光源部から近い場所を往来する人に対して紫外線が照射されることになるが、人が通り過ぎる場合は、そもそもの照射時間が極端に短くなるため、許容限界値を超えることを心配する必要はない。
【0048】
同様に、近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えて紫外線量の低減制御を解除する場合、検知信号の受信が途絶えてから直ちに紫外線量の低減制御を解除するのではなく、当該検知信号の受信が途絶えてから一定時間(第二の待機時間)経過後に紫外線量の低減制御を解除するようにしてもよい。
このように、所定の待機時間を設けることで、光源部から近い場所を人が通り過ぎる場合に、瞬時に点消灯が繰り返されることを抑制することができる。その結果、信号の切り替えが瞬時に繰り返されることによって生じるノイズに起因する誤動作を抑制することができる。上記の待機時間(第一の待機時間、第二の待機時間)は、利用シーンに応じて決定されるが、例えば第一の待機時間を1秒~30秒、第二の待機時間を1秒~20秒の間で設定することができる。
【0049】
以下、近接センサ32による物体検知後の紫外線量の低減制御の動作例について、
図4~
図15のタイミングチャートを参照しながら具体的に説明する。
図4~
図15において、(a)は、光源部の点灯動作(紫外線照度)であり、(b)は、近接センサ32の検知信号である。
まず、近接センサ32により物体が検知されていない通常時に、光源部による紫外線照射を連続的に行う、いわゆる連続点灯を行う場合について、
図4~
図9を用いて説明する。
【0050】
図4は、近接センサ32による物体検知後に消灯させる場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
この
図4に示すように、光源部による紫外線照射が連続的に行われている通常点灯時に、人が光放射面12を覗き込むなどして近接センサ32の検知範囲に進入すると、その時点において、近接センサ32により物体が検知され、検知信号が発信される。この検知信号は、近接センサ32が物体を検知している間、連続的に発信されるものとする。このとき、紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32から検知信号を受信すると、その時点で光源部を消灯する。
その後、人が光放射面12から離れて近接センサ32の検知範囲から抜けると、近接センサ32は物体を検知できなくなり、検知信号の発信を停止する。そして、制御部16は、検知信号の受信が途絶えた時点で、光源部を点灯させる。つまり、近接センサ32により物体が検知されている期間が、光源部を消灯する消灯期間Taとなる。
【0051】
図5は、近接センサ32による物体検知後に消灯させる場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
近接センサ32により物体が検知され、紫外線照射装置100の制御部16が近接センサ32から発信される検知信号を受信すると、当該制御部16は、検知信号を受信してから、第一の待機時間が経過したか否かを判定する。そして、制御部16は、検知信号を受信してから第一の待機時間T1の経過後に、光源部を消灯する。
図5に示すように、近接センサ32が、物体を検知している間、連続的に検知信号を発信する構成である場合、制御部16は、検知信号を受信している状態に切り替わった後の継続時間が第一の継続時間(第一の待機時間T1に相当)に達した時点で、光源部を消灯する。
その後、近接センサ32が物体を検知できなくなり、制御部16が近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えると、当該制御部16は、検知信号の受信が途絶えてから、第二の待機時間T2が経過したか否かを判定する。そして、制御部16は、検知信号の受信が途絶えてから第二の待機時間T2の経過後に、光源部2を点灯させる。
図5に示すように、近接センサ32が、物体を検知している間、連続的に検知信号を発信する構成である場合、制御部16は、検知信号を受信していない状態に切り替わった後の継続時間が第二の継続時間(第二の待機時間T2に相当)達した時点で、光源部を消灯する。
【0052】
つまり、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間が、光源部を消灯する消灯期間Taとなる。
この第一の待機時間T1に相当する期間は、近接センサ32により物体が検知されているが光源部を消灯していない期間であり、第二の待機時間T2に相当する期間は、近接センサ32により物体が検知されていないが光源部を再点灯していない期間となる。
【0053】
図6は、近接センサ32による物体検知後に低照度にする場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32から検知信号を受信した時点で、光源部から放射される紫外線の照度を、検知信号を受信する前の通常点灯と比較して低減させる。そして、制御部16は、近接センサ32から検知信号の受信が途絶えた時点で、光源部から放射される紫外線の照度を増大させて通常点灯に戻す。つまり、近接センサ32により物体が検知されている期間が、光源部を低照度点灯させる低照度期間Tbとなる。
【0054】
図7は、近接センサ32による物体検知後に低照度にする場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32から検知信号を受信すると、近接センサ32の検知信号を受信してから第一の待機時間T1が経過した後に、光源部から放射される紫外線の照度を低減させる。その後、近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えると、制御部16は、近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えてから第二の待機時間T2の経過後に、光源部から放射される紫外線の照度を増大させて通常点灯に戻す。
つまり、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間が、光源部を低照度点灯させる低照度期間Tbとなる。
【0055】
図8は、近接センサ32による物体検知後に点灯デューティ比を低減する場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32から検知信号を受信した時点で光源部の点灯デューティ比を低減させる。つまり、通常点灯の連続点灯から、光の発光動作と非発光動作とを交互に繰り返し行う、いわゆる間欠点灯に移行する。そして、制御部16は、近接センサ32から検知信号の受信が途絶えた時点で、光源部の点灯デューティ比を増大させて通常点灯(点灯デューティ比100%)に戻す。
つまり、近接センサ32により物体が検知されている期間が、発光動作期間を短くする低照射期間Tcとなる。
【0056】
図9は、近接センサ32による物体検知後に点灯デューティ比を低減する場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32から検知信号を受信すると、近接センサ32の検知信号を受信してしてから第一の待機時間T1が経過した後に、光源部の点灯デューティ比を低減させる。その後、近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えると、制御部16は、近接センサ32からの検知信号の受信が途絶えてから第二の待機時間T2の経過後に、光源部の点灯デューティ比を増大させて通常点灯(点灯デューティ比100%)に戻す。
つまり、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間が、低照射期間Tcとなる。
なお、
図9においては、より紫外線量を抑えるために、点灯デューティ比の低減に併せて照度を低減させてもよい。
【0057】
また、紫外線照射装置100は、通常点灯時に、光の発光動作と非発光動作とを交互に繰り返し行い、光放射面12からの光放射を断続的に行う間欠点灯を行ってもよい。
このように、間欠点灯を行うことで、同じ紫外線照度で連続点灯を行う場合と比較して、積算光量が所定量に達するまでの期間を長くすることができる。つまり、同じ紫外線照度で連続点灯を行う場合と比較して紫外線照射期間を長くすることができる。したがって、連続点灯の場合と比較して、長い期間にわたり効果的に不活化を行うことができる。また、光源の使用寿命(光源の交換が必要となるまでの時間)も長くすることができる。
【0058】
ここで、間欠点灯の条件は、人への1日(8時間)の積算光量(紫外線照射量)がACGIHの許容限界値(TLV)以内となるように設定される。例えば、1回の発光動作を行う発光動作時間を15秒、1回の非発光動作を行う非発光動作時間を30秒とすることができる。
そして、間欠点灯を行う場合にも同様に、近接センサ32による物体検知後に紫外線量を低減する制御を行うことができる。
【0059】
図10は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯を消灯させる場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されている期間を、光源部を消灯させる消灯期間Taとする。
そして、制御部16は、この消灯期間Taの間は、間欠点灯の発光動作を行わないように制御する。なお、
図10(a)の破線部分は、近接センサによる物体検知が無かった場合に発光動作が行われる予定のタイミングを示す。このように、消灯期間Taの間に予定されていた発光動作を行わないよう制御することで、発光動作と非発光動作の点灯周期が、消灯期間Taの前後で変わらないよう制御することもできる。
【0060】
図11は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯を消灯させる場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間を、光源部を消灯させる消灯期間Taとする。
そして、制御部16は、この消灯期間Taの間は、間欠点灯の発光動作を行わないように制御する。例えば
図11に示すように、間欠点灯の発光動作と同時に近接センサ32により物体が検知され、1回の発光動作期間が第一の待機時間T1よりも短い場合には、物体検知時の発光動作はそのまま実施し、その後の発光動作を行わないように制御する。なお、
図11(a)の破線部分は、近接センサによる物体検知が無かった場合に発光動作が行われる予定のタイミングを示す。
【0061】
図12は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯を低照度にする場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されている期間を、光源部を低照度点灯させる低照度期間Tbとする。
そして、制御部16は、この低照度期間Tbの間は、間欠点灯の発光動作の照度を低減させるようにする。
【0062】
図13は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯を低照度にする場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間を、光源部を低照度点灯させる低照度期間Tbとする。
そして、制御部16は、この低照度期間Tbの間は、間欠点灯の発光動作の照度を低減させるようにする。
【0063】
図14は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯の点灯デューティ比を低減する場合(待機時間なし)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されている期間を、間欠点灯の点灯デューティ比を低減させる低照射期間Tcとする。
そして、制御部16は、この低照射期間Tcの間は、間欠点灯の点灯デューティ比を低減させるようにする。
【0064】
図15は、近接センサ32による物体検知後に間欠点灯の点灯デューティ比を低減する場合(待機時間あり)の動作例を示すタイムチャートである。
紫外線照射装置100の制御部16は、近接センサ32により物体が検知されてから第一の待機時間T1が経過した時点から、近接センサ32により物体が非検知となってから第二の待機時間T2が経過した時点までの期間を、間欠点灯の点灯デューティ比を低減させる低照射期間Tcとする。
そして、制御部16は、この低照射期間Tcの間は、間欠点灯の点灯デューティ比を低減させるようにする。
なお、
図15においては、より紫外線量を抑えるために、点灯デューティ比の低減に併せて照度を低減させてもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施形態における紫外線照射装置100は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を放射するエキシマランプ20と、エキシマランプ20から放射される光を物体に対して放射する光放射面12を有する筐体11とを含む光源部と、当該光源部の点灯を制御する制御部16と、を備える。
ここで、制御部16は、光放射面12から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する物体を検知する近接センサ32から、物体を検知していることを示す検知信号を受信する。そして、制御部16は、検知信号を受信した場合、検知信号を受信する前と比較して光源部から放射される紫外線量を低減するように、光源部の点灯を制御する。具体的には、制御部16は、検知信号を受信した場合、光源部を消灯させる、または、検知信号を受信する前と比較して光源部から放射される紫外線の照度を低減させる、または、検知信号を受信する前と比較して光源部の点灯デューティ比を低減させる。
【0066】
このように、人や動物の細胞に悪影響の少ない190nm~235nmの波長範囲にある紫外線を放射するので、人が居る空間において、人に対しても紫外線を照射して殺菌、不活化を行うことができる。また、光放射面12から所定の離間距離以内に物体が存在する場合、光源部から放射される紫外線量を低減するので、光放射面12に対して近い距離に人が居続けてしまう場合であっても、比較的短時間で紫外線照射量の許容限界値を超えないようにすることができる。
したがって、光源からの離間距離が大きい場所(空間または対象表面)において十分な紫外線照射を行うために、高照度の紫外線を光源から放射している場合であっても、より安全な運用を行うことができる。
【0067】
ここで、近接センサ32の検知範囲は、光放射面12から所定の離間距離において、光源部からの紫外線照度が最大照度に対して90%以内となる領域を含む。
したがって、近接センサ32は、紫外線照度が最大照度の90%以上となる高照度領域に物体が存在することを確実に検知することができる。これにより、制御部16は、確実に紫外線量の低減制御が必要な場面で、適切に紫外線量を低減させることができる。
【0068】
以上のように、本実施形態における紫外線照射装置100は、微生物やウイルスを効果的に不活化することができ、且つ、より安全性が確保された装置構成を有する紫外線照射装置とすることができる。
【0069】
(変形例)
上記実施形態においては、紫外線照射装置100の筐体11に近接センサ32が設けられている場合について説明したが、近接センサは紫外線照射装置100とは別体であってもよい。この場合、紫外線照射装置100の制御部16は、外部の近接センサが発信する検知信号を受信し、受信した検知信号に基づいて紫外線量の低減制御を行う。
【0070】
また、上記実施形態においては、人感センサ31と近接センサ32とを併用して光源部の点灯を制御してもよい。この場合、人感センサ31によって照射領域内に人の所在を検知している場合に限り、近接センサ32による紫外線量の低減制御を行ってもよい。
ただし、一般的な人感センサである焦電型赤外線センサは、完全に静止した人を検知できない。そのため、人感センサ31と近接センサ32とを併用した場合、人が光放射面12を覗き込んだ状態で静止していると、人感センサ31によってその人を検知できず、近接センサ32で物体を検知していても紫外線量の低減制御が作動しない。
近接センサ32は、静止している物体も検知することができるため、上記実施形態のように、近接センサ32からの検知信号のみに基づいて紫外線量の低減制御を作動させるようにすれば、静止している人に対しても適切な点灯制御が可能となる。この場合、人以外の物に対しても紫外線量の低減制御が作動される場合があるが、安全サイドに働くという観点では好ましい。
【0071】
さらに、上記実施形態においては、紫外線照射装置100は、近接センサ32により検知範囲内において物体が検知された場合に、光源部から近距離であることを感知させるための警告を発する報知部を備えていてもよい。ここで、報知部は、警告表示や点滅表示等を行う表示部であってもよいし、音を発するスピーカー等であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態においては、紫外線光源であるエキシマランプ20は、
図1に示すように放電容器21の一方の側面に一対の電極22、23を配置した構成である場合について説明した。しかしながら、エキシマランプの構成は上記に限定されるものではない。
例えば、長尺な放電容器の両端部に、一対の環状の電極(第一電極、第二電極)が配置された構成であってもよい。また、長尺な放電容器の内部に内側電極(第一電極)を有し、放電容器の外壁面にメッシュ状(網目形状)または線形状の外側電極(第二電極)を有する構成であってもよい。さらに、別の例として、扁平状の放電容器の向かい合う2つの外側面上に、それぞれ第一電極および第二電極を有してなる、いわゆる「扁平管構造」を採用してもよい。また、円筒状の外側管と円筒状の内側管とからなる、いわゆる「二重管構造」を採用してもよい。この場合、外側管の外側面および内側管の内側面に、それぞれ網状の第一電極(外部電極)および膜状の第二電極(内部電極)が配置された構成とすることができる。
【0073】
さらに、上記実施形態においては、紫外線光源としてエキシマランプを用いる場合について説明したが、紫外線光源としてLEDを用いることもできる。
LEDとしては、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系LED、窒化アルミニウム(AlN)系LED、酸化マグネシウム亜鉛(MgZnO)系LED等を採用することができる。
ここで、AlGaN系LEDとしては、中心波長が190~235nmの範囲内となるようにAlの組成を調整することが好ましい。AlN系LEDは、ピーク波長210nmの紫外線を放出する。また、MgZnO系LEDは、Mgの組成を調整することで、中心波長が222nmである紫外線を放出することができる。
【符号の説明】
【0074】
11…筐体、12…光放射面、15…電源部、16…制御部、20…紫外線光源、21…放電容器、22…第一電極、23…第二電極、31…人感センサ、32…近接センサ、100…紫外線照射装置、200…人
【手続補正書】
【提出日】2021-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部と、
前記光源部の点灯を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信し、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御し、
前記検知範囲は、前記光放射面に直交する方向において、前記紫外線が照射される範囲よりも前記光放射面に近い範囲に設定されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部の点灯を制御する紫外線照射方法であって、
前記光放射面から所定の離間距離以内の領域であり、前記光放射面に直交する方向において、前記紫外線が照射される範囲よりも前記光放射面に近い範囲に設定されている検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信するステップと、
前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御するステップと、を含むことを特徴とする紫外線照射方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線照射装置の一態様は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部と、前記光源部の点灯を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記光放射面から所定の離間距離以内の領域である検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信し、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御し、前記検知範囲は、前記光放射面に直交する方向において、前記紫外線が照射される範囲よりも前記光放射面に近い範囲に設定されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
さらに、本発明に係る紫外線照射方法の一態様は、波長帯域が190nm~235nmの紫外線を含む光を物体に対して放射する光放射面を有する光源部の点灯を制御する紫外線照射方法であって、前記光放射面から所定の離間距離以内の領域であり、前記光放射面に直交する方向において、前記紫外線が照射される範囲よりも前記光放射面に近い範囲に設定されている検知範囲に存在する前記物体を検知する近接センサから、前記物体を検知していることを示す検知信号を受信するステップと、前記検知信号を受信した場合、前記検知信号を受信する前と比較して前記光源部から放射される紫外線量を低減するように、前記光源部の点灯を制御するステップと、を含む。