(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007380
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】電子機器および制御方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20220105BHJP
G07C 5/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01C21/28
G07C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110312
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘康
(72)【発明者】
【氏名】高山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】松野 厚
(72)【発明者】
【氏名】羽禰田 卓志
【テーマコード(参考)】
2F129
3E138
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB26
2F129BB39
2F129BB42
2F129BB54
2F129BB62
2F129BB65
2F129BB70
2F129EE43
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF80
3E138AA07
3E138BA12
3E138MB02
3E138MB03
3E138MD05
(57)【要約】
【課題】 車両の走行と停止の判定精度を向上できる電子機器を実現する。
【解決手段】 実施形態によれば、電子機器は、速度判定部と、第1加速度判定部と、第2加速度判定部とを具備する。速度判定部は、車両の第1時刻の速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。第1加速度判定部は、前記速度判定部によって前記車両が走行していると判定された場合、前記第1時刻を含む第1期間内の、前記車両の上下方向の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。第2加速度判定部は、前記速度判定部によって前記車両が停止していると判定された場合、前記第1時刻を含む第2期間内の、前記車両の走行方向および逆方向の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された電子機器であって、
前記車両の第1時刻の速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する速度判定部と、
前記速度判定部によって前記車両が走行していると判定された場合、前記第1時刻を含む第1期間内の、前記車両の上下方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する第1加速度判定部と、
前記速度判定部によって前記車両が停止していると判定された場合、前記第1時刻を含む第2期間内の、前記車両の走行方向および逆方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する第2加速度判定部とを具備する電子機器。
【請求項2】
前記速度判定部は、
前記速度が第1閾値を超えている場合、前記車両が走行していると判定し、
前記速度が前記第1閾値以下である場合、前記車両が停止していると判定する、請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記速度判定部は、さらに、前記速度が測定されていない場合、前記車両が停止していると判定する、請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1加速度判定部は、
前記第1期間内の前記車両の上下方向の複数の加速度の、第3期間毎の平均加速度を算出し、
前記第3期間毎の平均加速度から最大値と最小値を取得し、
前記最大値から前記最小値を引いた差が第2閾値以下である場合、前記車両が停止していると判定し、
前記差が前記第2閾値を超えている場合、前記車両が走行していると判定する、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2加速度判定部は、
前記第2期間内の前記車両の走行方向および逆方向の複数の加速度の、第4期間毎の平均加速度を算出し、
第4期間毎の平均加速度から最大値と最小値を取得し、
前記最大値から前記最小値を引いた差が第3閾値以下である場合、前記車両が停止していると判定し、
前記差が前記第3閾値を超えている場合、前記車両が走行していると判定する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2期間は、前記第1期間よりも長い、請求項1記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1加速度判定部または前記第2加速度判定部は、さらに、
前記第1加速度判定部と前記第2加速度判定部とによる判定結果が連続してN回、前記車両の停止を示す場合、前記車両が停止していることを示す判定結果を出力し、
前記第1加速度判定部と前記第2加速度判定部とによる判定結果が連続してN回、前記車両の走行を示す場合、前記車両が走行していることを示す判定結果を出力し、
Nは、2以上の整数である、請求項1記載の電子機器。
【請求項8】
車両に設置された電子機器を制御する制御方法であって、
速度判定部によって、前記車両の第1時刻の速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定し、
前記速度判定部によって前記車両が走行していると判定された場合、第1加速度判定部によって、前記第1時刻を含む第1期間内の、前記車両の上下方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定し、
前記速度判定部によって前記車両が停止していると判定された場合、第2加速度判定部によって、前記第1時刻を含む第2期間内の、前記車両の走行方向および逆方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する、制御方法。
【請求項9】
車両に設置された外部電子機器から、前記車両の第1時刻の速度と、前記第1時刻を含む第1期間内の、前記車両の上下方向の複数の加速度と、前記第1時刻を含む第2期間内の、前記車両の走行方向および逆方向の複数の加速度とを受信する通信部と、
前記第1時刻の速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する速度判定部と、
前記速度判定部によって前記車両が走行していると判定された場合、前記上下方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する第1加速度判定部と、
前記速度判定部によって前記車両が停止していると判定された場合、前記走行方向および逆方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する第2加速度判定部とを具備する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両に関する情報を処理する電子機器および該機器に適用される制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、事故発生時の状況記録を主な目的として、ドライブレコーダーが設置されることがある。ドライブレコーダーは、例えば車両のフロントガラスやダッシュボードに取り付けられたビデオカメラで車外または車内外の映像を撮影して、車両の状況を記録する。最近では、映像に加えて、音声、加速度、Global Positioning System(GPS)信号に基づく位置および速度等を併せて記録できるドライブレコーダーもある。
【0003】
さらに、ドライブレコーダーはGPS信号に基づく車両の速度を用いて、車両が走行しているか、それとも停止しているかを判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-292248号公報
【特許文献2】特開2008-58273号公報
【特許文献3】特開平10-307032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、GPS信号がドライブレコーダーに届きにくい状況下(例えば、車両がトンネル内や地下駐車場内にいる場合や、何かしらの原因でノイズが多い環境下)では、ドライブレコーダーはGPS信号に基づく車両の速度を取得できないか、あるいは取得した速度の精度が低くなる。この場合、車両が走行しているか、それとも停止しているかを速度に基づいて判定する精度が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、車両の走行と停止を判定する精度を向上できる電子機器および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電子機器は、速度判定部と、第1加速度判定部と、第2加速度判定部とを具備する。速度判定部は、車両の第1時刻の速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。第1加速度判定部は、前記速度判定部によって前記車両が走行していると判定された場合、前記第1時刻を含む第1期間内の、前記車両の上下方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。第2加速度判定部は、前記速度判定部によって前記車両が停止していると判定された場合、前記第1時刻を含む第2期間内の、前記車両の走行方向および逆方向の複数の加速度を用いて、前記車両が走行しているか、停止しているかを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電子機器が設置される車両に関する方向を示す斜視図。
【
図2】同実施形態の電子機器の構成例を示すブロック図。
【
図3】同実施形態の電子機器によって用いられる速度データの例を示す図。
【
図4】同実施形態の電子機器によって用いられる加速度データの例を示す図。
【
図5】同実施形態の電子機器によって用いられるZ方向(上下方向)の平均加速度データの例を示す図。
【
図6】同実施形態の電子機器によるZ方向の平均加速度データを用いた停止/走行の判定の例を示す図。
【
図7】同実施形態の電子機器によって用いられるX方向(走行方向)の平均加速度データの例を示す図。
【
図8】同実施形態の電子機器によるX方向の加速度データを用いた停止/走行の判定の例を示す図。
【
図9】同実施形態の電子機器において実行される走行/停止判定処理の手順の例を示すフローチャート。
【
図10】同実施形態の電子機器において実行される第1判定処理の手順の例を示すフローチャート。
【
図11】同実施形態の電子機器において実行される第2判定処理の手順の例を示すフローチャート。
【
図12】同実施形態の電子機器と通信する別の電子機器(サーバー)の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、一実施形態に係る電子機器が設置される車両5に関する方向を示す斜視図である。電子機器は、例えばドライブレコーダーとして実現される。なお、電子機器は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、PDAといった携帯情報端末、または各種電子機器に内蔵される組み込みシステムとして実現されてもよい。以下では、電子機器がドライブレコーダー1として実現される場合について例示する。
【0011】
ドライブレコーダー1は車両5の、例えばフロントガラスやダッシュボードに設置される。なお、ドライブレコーダー1は車両5の状況に関する情報(データ)を取得できる位置であれば、いずれの位置に設置されてもよい。
【0012】
以下では、
図1に示すように、車両5の走行方向(すなわち前後方向)をX方向とする。車両5の横方向(すなわち左右方向)をY方向とする。また、車両5の上下方向をZ方向とする。
【0013】
図2はドライブレコーダー1の構成例を示すブロック図である。ドライブレコーダー1は、例えば、演算処理部101、撮像装置102、画像処理部103、位置・速度測定部104、角度検出部105、加速度検出部106、無線通信部107、アラート出力部108、ランダムアクセスメモリ(RAM)109、インターフェース(I/F)110を備える。ドライブレコーダー1はI/F110を介して外部記憶装置2に接続され得る。I/F110は、ドライブレコーダー1と外部記憶装置2との通信を行うハードウェアインタフェースである。なお、ドライブレコーダー1は記憶装置を内蔵していてもよい。
【0014】
演算処理部101はドライブレコーダー1内の様々なコンポーネントの動作を制御する1つ以上のプロセッサ(例えばCPU)である。演算処理部101はROM(図示せず)等からRAM109にロードされる様々なプログラムを実行する。これらプログラムには、車両5の状況に関するデータを処理するためのプログラムが含まれ得る。
【0015】
撮像装置102は車両5の内部や周囲を撮影して画像(映像)データを生成する。画像処理部103は、生成された画像データを処理する。
【0016】
位置・速度測定部104はGPS信号を受信する。位置・速度測定部104は、受信したGPS信号から車両5の位置と速度とを取得又は算出する。位置・速度測定部104は一定時間毎に車両5の位置および速度を取得又は算出する。この一定時間は、例えば10ミリ秒である。つまり、位置・速度測定部104は、例えば100Hzで車両5の位置および速度を取得又は算出する。
【0017】
位置・速度測定部104は、測定した時刻に関連付けられた車両5の位置データをRAM109に記憶し得る。また、位置・速度測定部104は、測定した時刻に関連付けられた車両5の速度データ41をRAM109に記憶する。
【0018】
角度検出部105は車両5の角度を検出する角度センサーである。角度検出部105は、検出した時刻に関連付けられた車両5の角度データをRAM109に記憶してもよい。
【0019】
加速度検出部106は車両5の走行方向、横方向、および上下方向の加速度を検出する加速度センサーである。なお、走行方向の加速度は、車両5が前進する方向の加速度、または車両5が後退する方向の加速度であり得る。加速度検出部106は一定時間毎に各方向の加速度を検出する。この一定時間は、例えば10ミリ秒である。つまり、加速度検出部106は、例えば100Hzで車両5の各方向の加速度の大きさを検出する。加速度検出部106は、検出した時刻に関連付けられた車両5の加速度データ42をRAM109に記憶する。
【0020】
無線通信部107は、無線通信を実行するように構成されたデバイスである。無線通信部107は、信号を無線送信する送信部と、信号を無線受信する受信部とを含む。
【0021】
無線通信部107は、演算処理部101による要求に応じて、取得したデータ(速度データ41、加速度データ42等)やその処理結果を、ネットワーク4を介してサーバー7に送信し得る。
【0022】
アラート出力部108は演算処理部101による制御に応じて、ドライバーに対するアラート(例えば音声)を出力する。
【0023】
また、演算処理部101は、車両5が走行しているか、それとも停止しているか(以下、走行/停止とも称する)を判定するために、例えば速度判定部31、第1加速度判定部32、および第2加速度判定部33として機能する。これら各部の機能は、演算処理部101が例えば特定のプログラムを実行することによって実現される。速度判定部31、第1加速度判定部32、および第2加速度判定部33は、ある時刻(以下、第1時刻と称する)に車両5が走行していたか、それとも停止していたかを判定する。
【0024】
速度判定部31はRAM109に記憶された速度データ41から、車両5の第1時刻の速度を取得する。速度判定部31は車両5の第1時刻の速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。速度判定部31は、速度が第1閾値を超えている場合、車両5が走行していると判定する。一方、速度判定部31は、速度が第1閾値以下である場合、車両5が停止していると判定する。なお、速度判定部31は、車両5の第1時刻の速度が測定されていない場合、車両5が停止していると判定する。
【0025】
速度データ41には、GPS信号が届かない、または届きにくい場合や、GPS信号から得られる速度にマルチパスによる誤差が生じている場合(例えば車両5が停止しているにも関わらず、速度が0でない場合)等において、精度の低い速度が含まれることがある。そのため、第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、加速度データ42をさらに用いて、車両5の走行/停止の判定を再確認する。
【0026】
より具体的には、第1加速度判定部32は、速度判定部31によって車両5が走行していると判定された場合、RAM109に記憶された加速度データ42から、第1時刻を含む第1期間内の、車両5の上下方向の複数の加速度を取得する。第1期間は第1時刻から遡った期間であり、例えば1秒である。第1加速度判定部32は、取得した複数の加速度の方向を含む大きさやその変化を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。
【0027】
車両5の上下方向の加速度は、走行時の路面との接触等で発生する走行ノイズを含む、車両5の上下方向の振動の存在を示す。上下方向の加速度は、車種や車重によって変化し得るものの、走行時には方向も含む加速度の大きさが大きく変化する。上下方向の振動の周波数は1Hz以上であることが想定されるので、第1期間は1秒以下としてもよい。
【0028】
第1加速度判定部32は、速度判定部31によって車両5が走行していると判定された場合にも、第1期間内で上下方向の加速度の変化が所定の基準よりも小さければ、車両5の状態を停止と判定する。つまり、速度判定部31による走行の判定が、第1加速度判定部32によって停止に補正される。
【0029】
より具体的には、第1加速度判定部32は、取得した複数の加速度の、第3期間毎の平均加速度を算出する。第1加速度判定部32は、第3期間毎の平均加速度から最大値と最小値を取得する。第3期間は第1期間よりも短く、例えば200ミリ秒である。なお、第1期間と第3期間は、第1加速度判定部32が2つ以上の上下方向の平均加速度を得られるように設定される。
【0030】
そして、第1加速度判定部32は、最大値から最小値を引いた差(すなわち変位)が第2閾値以下である場合、車両5が停止していると判定する。一方、第1加速度判定部32は、最大値から最小値を引いた差が第2閾値を超えている場合、車両5が走行していると判定する。第2閾値は、例えば15mGである。なお、Gは重力加速度である。第1期間内の複数の平均加速度の変位を用いることにより、ドリフト(温度や静電容量などの影響を受けてセンサーの出力値がずれてしまうこと)や坂道等の影響を低減できる。
【0031】
また、第2加速度判定部33は、速度判定部31によって車両5が停止していると判定された場合、RAM109に記憶された加速度データ42から、第1時刻を含む第2期間内の、車両5の走行方向の前後方向における、複数の加速度の方向と大きさを取得する。第2期間は第1時刻から遡った期間であり、例えば3秒である。また、第2期間は、例えば第1期間よりも長い。第2加速度判定部33は、取得した複数の加速度の方向と大きさを用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。
【0032】
より具体的には、第2加速度判定部33は、取得した複数の加速度の、第4期間毎の平均加速度を算出する。第2加速度判定部33は、第4期間毎の平均加速度から最大値と最小値を取得する。第4期間は第2期間よりも短く、例えば1秒である。なお、第2期間と第4期間は、第2加速度判定部33が2つ以上の走行方向及び逆方向における、平均加速度を得られるように設定される。
【0033】
そして、第2加速度判定部33は、最大値から最小値を引いた差(変位)が第3閾値以下である場合、車両5が停止していると判定する。一方、第2加速度判定部33は、最大値から最小値を引いた差が第3閾値を超えている場合、車両5が走行していると判定する。第3閾値は、例えば20mGである。また、第3閾値は第2閾値と同一の値であってもよい。第2期間内の複数の平均加速度の変位を用いることにより、ドリフトや坂道等の影響を低減できる。
【0034】
車両5の走行方向及び逆方向における加速度は、ドライバーによるアクセルやブレーキの操作に応じた加減速を示し得る。走行方向及び逆方向における、加速度の平均値やその挙動は、上下方向の加速度と比較して、低速走行時における車種や車重の影響が少ない。また加減速に関する情報は、走行方向及び逆方向における、加速度データ42の低周波数帯域に集まる特性がある。そのため、走行方向及び逆方向における、複数の加速度の平均加速度を算出する第4期間は、例えば、上下方向の複数の加速度の平均加速度を算出する第3期間よりも長い。また、走行方向の前後方向における、加減速の周波数は1Hz未満であることが想定されるので、第2期間は1秒以上としてもよい。
【0035】
第2加速度判定部33は、速度判定部31によって車両5が停止していると判定された場合にも、走行方向の加減速が発生していれば、車両5の状態を走行と判定する。つまり、速度判定部31による停止の判定が、第2加速度判定部33によって走行に補正される。
【0036】
第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、判定結果をドライブレコーダー1内の各部に出力し得る。ドライブレコーダー1内の各部は、判定結果を用いた様々な処理を行い得る。
【0037】
具体的には、第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、判定結果を示すデータを、I/F110を介して外部記憶装置2に格納し得る。外部記憶装置2に格納されたデータは、例えば車両5やドライバーの状態を解析するために用いられる。
【0038】
第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、判定結果を角度検出部105に送出し得る。角度検出部105は判定結果を用いて、車両5の角度の検出精度を向上させるためのキャリブレーション処理を行う。
【0039】
第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、判定結果を示すデータを、無線通信部107を介して外部のサーバー7に送信し得る。サーバー7は受信したデータを用いて、例えば車両5やドライバーの状態を解析し、管理者に情報を提供する。提供される情報は、例えば、車両5の走行/停止の判定結果に基づいてドライバーが十分な休憩を取っているかどうかを示す情報を含む。
【0040】
第1加速度判定部32および第2加速度判定部33は、判定結果をアラート出力部108に送出し得る。アラート出力部108は判定結果を用いて、ドライバーに対する注意(例えば、休憩が必要であること、長時間継続した運転が行われていること)を喚起するためのアラートを鳴動させる。
【0041】
なお、第1加速度判定部32または第2加速度判定部33は、第1加速度判定部32と第2加速度判定部33とによる判定結果が連続してN回(例えばN=3)、車両5の停止を示す場合に、車両5の停止を示す判定結果を出力してもよい。また、第1加速度判定部32または第2加速度判定部33は、第1加速度判定部32と第2加速度判定部33とによる判定結果が連続してN回、車両5の走行を示す場合に、車両5の走行を示す判定結果を出力してもよい。なお、Nは2以上の整数である。これにより、車両5の走行と停止の直前および直後に発生する反動や、人為的振動(例えば車内で揺らすことやドアの開け閉め)等による判定結果への影響を低減できる。
【0042】
図3は速度データ41の一構成例を示す。速度データ41は、複数の時刻に対応する複数のエントリを含む。各エントリは、時刻のフィールドと速度のフィールドとを含む。
【0043】
ある時刻に対応するエントリにおいて、時刻のフィールドはその時刻を示す。速度のフィールドは、その時刻に測定された車両5の速度を示す。
【0044】
位置・速度測定部104は、例えば時刻t1に速度v1が測定された場合、時刻t1と速度v1とを含むエントリを、速度データ41として記録する。
【0045】
なお、トンネル内や地下駐車場内のようにGPS信号を受信できない場合、位置・速度測定部104は車両5の速度を測定できない。この場合、位置・速度測定部104は、時刻のフィールドのみに値が設定され、速度のフィールドに値が設定されていない(あるいは無効な値が設定されている)エントリを、速度データ41として記録し得る。速度判定部31は、時刻のフィールドのみに値が設定されたエントリを用いて、その時刻に車両5の速度が測定できなかったことを認識できる。
【0046】
図4は加速度データ42の一構成例を示す。加速度データ42は、複数の時刻に対応する複数のエントリを含む。各エントリは、時刻のフィールドと、X方向の加速度のフィールドと、Y方向の加速度のフィールドと、Z方向の加速度のフィールドとを含む。
【0047】
ある時刻に対応するエントリにおいて、時刻のフィールドはその時刻を示す。X方向の加速度のフィールドは、その時刻に検出された車両5のX方向(走行方向及び走行方向とは逆方向)の加速度を示す。X方向の加速度のフィールドには、例えば、車両5が前進する方向への加速度が正の値で示され、車両5が後退する方向への加速度が負の値で示される。Y方向の加速度のフィールドは、その時刻に検出された車両5の走行方向を向いて左方向(Y方向)の加速度が正の値で示され、車両5の走行方向を向いて右方向の加速度が負の値で示される。Y方向の加速度のフィールドには、例えば、車両5の右方向への加速度が正の値で示され、車両5の左方向への加速度が負の値で示される。Z方向の加速度のフィールドは、その時刻に検出された車両5のZ方向(上下方向)の加速度を示す。Z方向の加速度のフィールドには、例えば、車両5の上方向への加速度が正の値で示され、車両5の下方向への加速度が負の値で示される。
【0048】
加速度検出部106は、例えば時刻t1に、X方向の加速度gx1、Y方向の加速度gy1、およびZ方向の加速度gz1が測定された場合、時刻t1、X方向の加速度gx1、Y方向の加速度gy1、およびZ方向の加速度gz1を含むエントリを、加速度データ42として記録する。
【0049】
図3は、一定時間毎に連続して測定された速度をそれぞれ含む時刻t1から時刻t300までの速度データ41の例を示している。また、
図4は、一定時間毎に連続して測定されたX、Y、およびZ方向の加速度をそれぞれ含む時刻t1から時刻t300までの加速度データ42の例を示している。以下では、演算処理部101が、
図3に示す速度データ41と
図4に示す加速度データ42とを用いて、時刻t300において車両5が走行しているか、それとも停止しているかを判定する例について説明する。なお、車両5の速度および加速度が10ミリ秒毎に取得されていることを想定する。
【0050】
まず、速度判定部31は速度データ41から時刻t300の速度v300を取得する。そして、速度判定部31は速度v300が第1閾値(例えば10km/h)を超えているか否かを判定する。速度v300が第1閾値を超えている場合、第1加速度判定部32による第1判定処理が行われる。一方、速度v300が第1閾値以下である場合、第2加速度判定部33による第2判定処理が行われる。
【0051】
図5および
図6を用いて、第1加速度判定部32による第1判定処理の例について説明する。第1加速度判定部32は、加速度データ42に含まれる、車両5の上下方向(Z方向)の複数の加速度の第3期間毎の平均加速度を算出する。
【0052】
図5は、第1加速度判定部32によって算出される上下方向の平均加速度の例を示す。
図5に示す例では、第3期間は200ミリ秒である。第1加速度判定部32は、例えば時刻t1から時刻t20までに検出された20個のZ方向の加速度から、平均加速度agz1を算出する。第1加速度判定部32は同様にして、200ミリ秒毎の平均加速度agz2~agz15を算出する。
【0053】
第1加速度判定部32は、時刻t300を含む第1期間のZ方向の複数の平均加速度agz11~agz15を用いて、車両5が走行しているか、それとも停止しているかを判定する。ここでは、第1期間は時刻t300から遡った1秒間、すなわち時刻t201から時刻t300までの期間である。
【0054】
具体的には、
図6に示すように、第1加速度判定部32は、Z方向の複数の平均加速度agz11~agz15から、最大値と最小値とを取得する。ここでは、最大値がagz12であって、最小値がagz14であるものとする。
【0055】
次いで、第1加速度判定部32は最大値から最小値を引いた差(=agz12-agz14)が第2閾値を超えているか否かを判定する。なお、差が負の値である場合、第1加速度判定部32は、差の絶対値(=|agz12-agz14|)が第2閾値を超えているか否かを判定してもよい。差が第2閾値を超えている場合、第1加速度判定部32は車両5が走行していると判断して、速度判定部31による車両5が走行しているとの判定を維持する。一方、差が第2閾値以下である場合、第1加速度判定部32は車両5が停止していると判断して、速度判定部31による車両5が走行しているとの判定を、停止に補正する。
【0056】
これにより、第1加速度判定部32は、速度判定部31が時刻t300の車両5の状態を走行と判定した場合に、上下方向の加速度をさらに用いて車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。
【0057】
図7および
図8を用いて、第2加速度判定部33による第2判定処理の例について説明する。第2加速度判定部33は、加速度データ42に含まれる、車両5の走行方向及び走行方向とは逆方向(X方向)の複数の加速度の第4期間毎の平均加速度を算出する。
【0058】
図7は、第2加速度判定部33によって算出される走行方向の平均加速度の例を示す。
図7に示す例では、第4期間は1秒である。第2加速度判定部33は、例えば時刻t1から時刻t100までに検出された100個のX方向の加速度から、平均加速度agx1を算出する。第2加速度判定部33は同様にして、1秒毎の平均加速度agx2およびagx3を算出する。
【0059】
第2加速度判定部33は、時刻t300を含む第2期間のX方向の複数の平均加速度agx1~agx3を用いて、車両5が走行しているか、それとも停止しているかを判定する。ここでは、第2期間は時刻t300から遡った3秒間、すなわち時刻t1から時刻t300までの期間である。
【0060】
具体的には、
図8に示すように、第2加速度判定部33は、X方向の複数の平均加速度agx1~agx3から、最大値と最小値とを取得する。ここでは、最大値がagx2であって、最小値がagx3であるものとする。
【0061】
次いで、第2加速度判定部33は最大値から最小値を引いた差(=agx2-agx3)が第3閾値を超えているか否かを判定する。なお、差が負の値である場合、第2加速度判定部33は、差の絶対値(=|agx2-agx3|)が第3閾値を超えているか否かを判定してもよい。差が第3閾値を超えている場合、第2加速度判定部33は車両5が走行していると判断して、速度判定部31による車両5が停止しているとの判定を走行に補正する。一方、差が第3閾値以下である場合、第2加速度判定部33は車両5が停止していると判断して、速度判定部31による車両5が停止しているとの判定を維持する。
【0062】
これにより、第2加速度判定部33は、速度判定部31が時刻t300の車両5の状態を停止と判定した場合に、走行方向および逆方向の加速度をさらに用いて車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。
【0063】
以上の構成により、ドライブレコーダー1は、車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。GPS信号に基づく速度で車両5の走行/停止を判定する場合、速度の精度が低くなると、ドライバーが車両5を停止させて休憩しているにも関わらず、走行と判定されることがある。ドライバーによる運転状況を管理するシステムや管理者は、走行時間や停止時間に基づいて、例えばドライバーがきちんと休憩を取っているかどうかを認識する。しかし、例えば車両5の停止中に走行と判定する誤判定が発生したならば、ドライバーが誤って長時間運転していると認識されることがある。
【0064】
本実施形態のドライブレコーダー1は、速度に基づく走行/停止の判定を行った後に、加速度をさらに用いてその判定結果を補正し得る。より詳しくは、ドライブレコーダー1は、速度に基づく走行/停止の判定結果に応じて使い分けられる上下方向の加速度と走行方向及び逆方向の加速度のいずれか一方を用いて、速度に基づく走行/停止の判定結果を補正し得る。ドライブレコーダー1は、このような2段階の判定により、速度のみに基づく走行/停止の判定よりも、誤判定を低減できる。
【0065】
ところで、主に業務車両に設置される高性能なドライブレコーダーは、車両が取得した情報(速度信号やブレーキランプの点灯状況等)を受信できる。そのため、ドライブレコーダーにGPS信号が届きにくい場所にいる場合や、電波状況が悪くGPS信号に含まれるノイズが大きくなる場合でも、このような情報を用いて車両の走行/停止を判定し得る。しかし、ドライバー等が車両に取り付けて使用する比較的安価なドライブレコーダーでは、車両が取得した情報を受信できない場合がある。
【0066】
本実施形態のドライブレコーダー1は、加速度検出部106を用いる簡易な構成で、GPS信号が届きにくい場所にいる場合や、電波状況が悪くGPS信号に含まれるノイズが大きくなる場合等でも、利便性を向上できる。すなわち、ドライブレコーダー1は、加速度検出部106によって検出された加速度データ42をさらに用いて、車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。
【0067】
図9は、演算処理部101によって実行される走行/停止判定処理の手順の例を示すフローチャートである。演算処理部101はドライブレコーダー1が電源オンされたことに応じて、走行/停止判定処理の実行を開始し、特定の時間毎(例えば1秒毎)に繰り返し実行し得る。
【0068】
まず、演算処理部101は、RAM109に記憶された速度データ41を用いて、ある時刻(以下、第1時刻と称する)の車両5の速度が取得されているか否かを判定する(ステップS101)。速度が取得されている場合(ステップS101のYES)、演算処理部101は速度が第1閾値を超えているか否かを判定する(ステップS102)。
【0069】
速度が第1閾値を超えている場合(ステップS102のYES)、演算処理部101は第1判定処理を実行する(ステップS103)。演算処理部101は、速度が第1閾値を超えている車両5の状態を、走行候補として扱う。第1判定処理は、第1時刻を含む特定の期間に取得された上下方向の加速度データをさらに用いて、第1時刻の車両5の状態を走行のままとするか、停止に補正するかを決定するための処理である。第1判定処理の詳細な手順については、
図10のフローチャートを参照して後述する。
【0070】
第1判定処理における判定結果が走行を示す場合(ステップS104の走行)、演算処理部101は走行を示す判定結果を出力し(ステップS105)、走行/停止判定処理を終了する。なお、演算処理部101は第1判定処理と第2判定処理とによる判定結果が連続してN回、車両5の走行を示す場合に、走行を示す判定結果を出力してもよい。演算処理部101はこの判定結果をドライブレコーダー1内の各部に出力し得る。ドライブレコーダー1内の各部は、判定結果を用いた様々な処理を行い得る。
【0071】
一方、第1判定処理における判定結果が停止を示す場合(ステップS104の停止)、演算処理部101は停止を示す判定結果を出力し(ステップS106)、走行/停止判定処理を終了する。なお、演算処理部101は第1判定処理と第2判定処理とによる判定結果が連続してN回、車両5の停止を示す場合に、停止を示す判定結果を出力してもよい。演算処理部101はこの判定結果をドライブレコーダー1内の各部に出力し得る。
【0072】
また、第1時刻の速度が取得されていない場合(ステップS101のNO)、あるいは第1時刻の速度が第1閾値以下である場合(ステップS102のNO)、演算処理部101は第2判定処理を実行する(ステップS107)。演算処理部101は、速度が取得されていないか、第1閾値以下である車両5の状態を、停止候補として扱う。第2判定処理は、第1時刻を含む特定の期間に取得された走行方向及び逆方向の加速度データをさらに用いて、第1時刻の車両5の状態を停止のままとするか、それとも走行に補正するかを決定するための処理である。第2判定処理の詳細な手順については、
図11のフローチャートを参照して後述する。
【0073】
第2判定処理における判定結果が走行を示す場合(ステップS108の走行)、演算処理部101は走行を示す判定結果を出力し(ステップS105)、走行/停止判定処理を終了する。なお、演算処理部101は第1判定処理と第2判定処理とによる判定結果が連続してN回、車両5の走行を示す場合に、走行を示す判定結果を出力してもよい。
【0074】
一方、第2判定処理における判定結果が停止を示す場合(ステップS108の停止)、演算処理部101は停止を示す判定結果を出力し(ステップS106)、走行/停止判定処理を終了する。なお、演算処理部101は第1判定処理と第2判定処理とによる判定結果が連続してN回、車両5の停止を示す場合に、停止を示す判定結果を出力してもよい。
【0075】
以上の走行/停止判定処理により、演算処理部101は位置・速度測定部104で取得される車両5の速度だけでなく、加速度検出部106で取得される車両5の加速度もさらに用いて、車両5が走行しているか、それとも停止しているかを精度良く推定できる。演算処理部101は、速度に基づいて車両5が走行しているか停止しているかを判定した後に、この速度に基づく判定結果を、加速度をさらに用いて補正し得る。
【0076】
図10は、演算処理部101(より詳しくは第1加速度判定部32)によって実行される第1判定処理の手順の例を示すフローチャートである。この第1判定処理は、
図9のフローチャートを参照して上述した走行/停止判定処理のステップS103に相当する。上述した通り、第1判定処理が実行される前に、演算処理部101は第1時刻の車両5の状態を、速度に基づいて走行の候補として扱っている。
【0077】
まず、演算処理部101はRAM109に記憶された加速度データ42から、第1時刻を含む第1期間内に検出された上下方向(すなわちZ方向)の加速度を取得する(ステップS21)。第1期間は、例えば第1時刻とその直前の期間とを含む。演算処理部101は、第1期間内の複数の時刻でそれぞれ検出された上下方向の複数の加速度を取得する。
【0078】
演算処理部101は取得した複数の加速度の特定の期間毎の平均値を算出する(ステップS22)。つまり、演算処理部101は第1期間内の特定の期間(第3期間)毎の平均加速度を算出する。そして、演算処理部101は特定の期間毎の平均加速度から、最大値と最小値とを取得する(ステップS23)。
【0079】
次いで、演算処理部101は最大値から最小値を引いた差が第2閾値以下であるか否かを判定する(ステップS24)。最大値から最小値を引いた差が第2閾値以下である場合(ステップS24のYES)、演算処理部101は停止を示す判定結果を出力し(ステップS25)、第1判定処理を終了する。つまり、第1時刻の車両5の状態は、速度に基づいて走行の候補として扱われていたが、第1判定処理において停止に補正されたと云える。
【0080】
また、最大値から最小値を引いた差が第2閾値を超えている場合(ステップS24のNO)、演算処理部101は走行を示す判定結果を出力し(ステップS26)、第1判定処理を終了する。つまり、第1時刻の車両5の状態は、速度に基づいて走行の候補として扱われ、第1判定処理において走行に確定されたと云える。
【0081】
以上の第1判定処理により、演算処理部101が第1時刻の車両5の状態を、速度に基づいて走行の候補として扱っている場合に、上下方向の加速度をさらに用いて車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。
【0082】
図11は、演算処理部101(より詳しくは第2加速度判定部33)によって実行される第2判定処理の手順の例を示すフローチャートである。この第2判定処理は、
図9のフローチャートを参照して上述した走行/停止判定処理のステップS107に相当する。上述した通り、第2判定処理が実行される前に、演算処理部101は第1時刻の車両5の状態を、速度に基づいて停止の候補として扱っている。
【0083】
まず、演算処理部101はRAM109に記憶された加速度データ42から、第1時刻の直前の第2期間内に検出された走行方向および逆方向(すなわちX方向)の加速度を取得する(ステップS31)。第2期間は、例えば第1時刻とその直前の期間とを含む。また、第2期間は第1期間よりも長い期間であり得る。演算処理部101は、第2期間内の複数の時刻でそれぞれ検出された走行方向及び逆方向の複数の加速度を取得する。
【0084】
演算処理部101は取得した複数の加速度の特定の期間(第4期間)毎の平均値を算出する(ステップS32)。つまり、演算処理部101は第2期間内の特定の期間毎の平均加速度を算出する。そして、演算処理部101は特定の期間毎の平均加速度から、最大値と最小値とを取得する(ステップS33)。
【0085】
次いで、演算処理部101は最大値から最小値を引いた差が第3閾値以下であるか否かを判定する(ステップS34)。なお、第3閾値は第2閾値と同一の値であってもよい。
【0086】
最大値から最小値を引いた差が第3閾値以下である場合(ステップS34のYES)、演算処理部101は停止を示す判定結果を出力し(ステップS35)、第2判定処理を終了する。つまり、第1時刻の車両5の状態は、速度に基づいて停止の候補として扱われ、第2判定処理において停止に確定されたと云える。
【0087】
また、最大値から最小値を引いた差が第3閾値を超えている場合(ステップS34のNO)、演算処理部101は走行を示す判定結果を出力し(ステップS36)、第2判定処理を終了する。つまり、第1時刻の車両5の状態は、速度に基づいて停止の候補として扱われていたが、第2判定処理において走行に補正されたと云える。
【0088】
以上の第2判定処理により、演算処理部101が第1時刻の車両5の状態を、速度に基づいて停止の候補として扱っている場合に、走行方向及び逆方向の加速度をさらに用いて車両5の走行と停止の判定精度を向上できる。
【0089】
図12はサーバー7の構成例を示す。サーバー7は、ドライブレコーダー1とネットワーク4を介して通信し得る。サーバー7は、CPU71、RAM(主メモリ)72、不揮発性メモリ73、通信部74等を備えるサーバーコンピュータである。
【0090】
CPU71は、サーバー7内の様々なコンポーネントを制御するプロセッサである。CPU71は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ73からRAM72にロードされる様々なプログラムを実行する。これらプログラムには、オペレーティングシステム(OS)721、および様々なアプリケーションプログラムが含まれている。アプリケーションプログラムには、判定プログラム722が含まれ得る。判定プログラム722は、ドライブレコーダー1が設置された車両5が走行しているか、それとも停止しているかを判定するためのプログラムである。
【0091】
通信部74は、有線または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。通信部74は、信号を送信する送信部と、信号を受信する受信部とを含む。通信部74は、例えばネットワーク4を介して、ドライブレコーダー1で取得されたデータ(速度データ41、加速度データ42等)やその処理結果を受信し得る。
【0092】
CPU71は判定プログラム722を実行することによって、上述した速度判定部31、第1加速度判定部32、および第2加速度判定部33として機能する。つまり、速度判定部31、第1加速度判定部32、および第2加速度判定部33は、ドライブレコーダー1ではなく、サーバー7に設けられていてもよい。あるいは、速度判定部31、第1加速度判定部32、および第2加速度判定部33は、ドライブレコーダー1だけでなく、サーバー7にも設けられていてもよい。このような場合、CPU71は、通信部74を用いてドライブレコーダー1から速度データ41および加速度データ42を受信して、車両5の走行/停止を判定可能である。
【0093】
より具体的には、通信部74は、ドライブレコーダー1(外部電子機器)から車両5の速度データ41と加速度データ42とを受信する。速度データ41は、例えば車両5の第1時刻の速度を含む。加速度データ42は、例えば、第1時刻を含む第1期間内の、車両5の上下方向の複数の加速度と、第1時刻を含む第2期間内の、車両5の走行方向及び逆方向の複数の加速度とを含む。
【0094】
判定プログラム722を実行するCPU71(速度判定部31に相当)は、第1時刻の速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。CPU71(第1加速度判定部32に相当)は、速度に基づく判定によって車両5が走行していると判定された場合、第1時刻を含む第1期間内の、車両5の上下方向の複数の加速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。CPU71(第2加速度判定部33に相当)は、速度に基づく判定によって車両5が停止していると判定された場合、走行方向及び逆方向の複数の加速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。
【0095】
以上の構成により、サーバー7は、ドライブレコーダー1から受信した速度データ41および加速度データ42を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを高精度に判定できる。このように、サーバー7は、ドライブレコーダー1が有する車両5の走行/停止を判定するための機能と同様の機能を有していてもよい。その場合、サーバー7は車両5の走行/停止の判定精度を向上できる。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両5の走行と停止を判定する精度を向上できる。速度判定部31は、車両5の第1時刻の速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。第1加速度判定部32は、速度判定部31によって車両5が走行していると判定された場合、第1時刻を含む第1期間内の、車両5の上下方向の複数の加速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。第2加速度判定部33は、速度判定部31によって車両が停止していると判定された場合、第1時刻を含む第2期間内の、車両5の走行方向及び逆方向の複数の加速度を用いて、車両5が走行しているか、停止しているかを判定する。
【0097】
このように、ドライブレコーダー1またはサーバー7は、速度に基づき走行/停止を判定した後に、上下方向の加速度と、走行方向及び逆方向の加速度とのいずれかを用いて、走行/停止の判定をさらに行う。ドライブレコーダー1またはサーバー7は、速度に基づく走行/停止の判定結果に応じて上下方向の加速度と走行方向及び逆方向の加速度とを使い分けることで、車両5の走行/停止の判定精度を向上できる。それゆえ、走行/停止の判定精度が向上するが故、加速度センサーのキャリブレーションに好適なタイミングが装置自体で判断でき、加速度センサーの自己校正により精度向上が期待できる。また、事故発生時に記録された画像データがドライブレコーダーを装着した自車が停止した状態のときのものか、否かについても正確に判定し、画像データと一緒に記録することが可能となる。そのため、事故発生時の状況判定も容易になる。
【0098】
本実施形態に記載された様々な機能の各々は、回路(処理回路)によって実現されてもよい。処理回路の例には、中央処理装置(CPU)のような、プログラムされたプロセッサが含まれる。このプロセッサは、メモリに格納されたコンピュータプログラム(命令群)を実行することによって、記載された機能それぞれを実行する。このプロセッサは、電気回路を含むマイクロプロセッサであってもよい。処理回路の例には、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、コントローラ、他の電気回路部品も含まれる。本実施形態に記載されたCPU以外の他のコンポーネントの各々もまた処理回路によって実現されてもよい。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…ドライブレコーダー、101…演算処理部、102…撮像装置、103…画像処理部、104…位置・速度測定部、105…角度検出部、106…加速度検出部、107…無線通信部、108…アラート出力部、109…RAM、110…I/F、2…外部記憶装置、31…速度判定部、32…第1加速度判定部、33…第2加速度判定部、41…速度データ、42…加速度データ、4…ネットワーク、5…車両、7…サーバー。