(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073810
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0216 20140101AFI20220510BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20220510BHJP
【FI】
H01L31/04 240
H01L31/06 300
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020190746
(22)【出願日】2020-11-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】202011192543.X
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519095533
【氏名又は名称】ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】金井昇
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
(72)【発明者】
【氏名】楊楠楠
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151DA03
5F151FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】太陽電池の再結合損失低減に有利な太陽電池を提供する。
【解決手段】基板20と、基板の上面に順次積層されたエミッタ211、第1パッシベーション膜212、反射防止膜213及び第1電極214と、基板の下面に順次積層されたトンネル層221、バリア層222、フィールドパッシベーション層223、第2パッシベーション膜224及び第2電極225とを備え、バリア層は、フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの基板への移動を遮断するために使用されるものであり、バリア層は、第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも第2バリア層は真性半導体であり、基板の表面に垂直な方向において、第1バリア層の厚さは第2バリア層の厚さよりも小さく、第1バリア層の基板から離れた表面は、第2バリア層の基板から離れた表面と面一である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、
前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、
前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、
前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板から離れた表面は、前記第2バリア層の前記基板から離れた表面と面一であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記基板の表面に垂直な方向において、前記バリア層の厚さは20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記真性半導体層の材料は、前記フィールドパッシベーション層の材料と同じであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層に向かう表面層の平均ドーピング濃度は、1E+19/cm3~1E+21/cm3であり、前記第2バリア層の厚さは0.5nm~20nmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層から離れた表面の表面ドーピング濃度は、1E+20/cm3~1E+22/cm3であり、前記基板の表面に垂直な方向において、前記フィールドパッシベーション層の厚さと前記第2バリア層の厚さとの比は5~100であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1バリア層の材料の種類は前記フィールドパッシベーション層の材料の種類と異なっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記バリア層の材料の種類は、金属酸化物、ケイ化物、塩、有機物又は金属の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第1バリア層は前記真性半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記バリア層は多層構造であり、前記多層構造における複数の膜層は、前記基板の表面に垂直な方向に順次に積層され、異なる膜層の材料は同一又は異なっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
基板と、
前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、
前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、
前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、
前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板に向かう表面は、前記第2バリア層の前記基板に向かう表面と面一であることを特徴とする太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、光起電力の分野に関し、特に太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池技術の継続的な発展に伴い、金属接触領域の再結合損失は太陽電池の変換効率の更なる向上を阻害する要因の1つとなっている。太陽電池の変換速度を向上させるために、通常、パッシベーション接触により太陽電池をパッシベーションして、太陽電池の本体内と表面の再結合を低減させる。一般的に使用されるパッシベーションコンタクト電池として、ヘテロ接合(Heterojunction with Intrinsic Thin‐layer、HIT)電池とトンネル酸化膜パッシベーションコンタクト(Tunnel Oxide Passivated Contact、TOPCon)電池が挙げられる。
【0003】
しかしながら、従来のパッシベーションコンタクト電池には、ある程度の再結合損失という恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例には、太陽電池の再結合損失の低減及び太陽電池の変換効率の向上に有利である太陽電池が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明の実施例には、太陽電池が提供され、当該太陽電池は、基板と、前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板から離れた表面は、前記第2バリア層の前記基板から離れた表面と面一である。
【0006】
また、前記基板の表面に垂直な方向において、前記バリア層の厚さは20nm以下である。このようにして、バリア層が多数キャリアの輸送に大きな遮断になることを回避し、多数キャリアの効果的な輸送を確保することができる。また、フィールドパッシベーション層と基板との距離の増加によりフィールドパッシベーション層のバンドの曲がり効果を大きく低下させてしまうことを回避し、キャリアの選択的な輸送を維持し、太陽電池の開回路電圧及び変換効率を向上させることができる。
【0007】
また、前記真性半導体層の材料は、前記フィールドパッシベーション層の材料と同じである。
【0008】
また、前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層に向かう表面層の平均ドーピング濃度は、1E+19/cm3~1E+21/cm3であり、前記第2バリア層の厚さは0.5nm~20nmである。このようにして、フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンは短時間の熱拡散が発生した場合に基板の表面に移動してしまうことを回避でき、基板の表面の再結合損失を低減させることに有利である。
【0009】
また、前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層から離れた表面の表面ドーピング濃度は、1E+20/cm3~1E+22/cm3であり、前記基板の表面に垂直な方向において、前記フィールドパッシベーション層の厚さと前記第2バリア層の厚さとの比は5~100である。このようにして、フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンが熱拡散した時に基板の表面に拡散してしまうことを回避でき、基板の表面の再結合損失を低減し、また、フィールドパッシベーション層と電極との間の良好なオーミック接触を確保し、多数キャリアの効果的な輸送を確保することができる。
【0010】
また、前記第1バリア層の材料の種類は前記フィールドパッシベーション層の材料の種類と異なっている。
【0011】
また、前記第1バリア層は前記真性半導体層である。
【0012】
また、前記バリア層の材料の種類は、金属酸化物、ケイ化物、塩、有機物又は金属の少なくとも1種を含む。
【0013】
また、前記バリア層は多層構造であり、前記多層構造における複数の膜層は、前記基板の表面に垂直な方向に順次に積層され、異なる膜層の材料は同一又は異なっている。
【0014】
以上に対応して、本発明の実施例には、太陽電池がさらに提供され、当該太陽電池は、基板と、前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板に向かう表面は、前記第2バリア層の前記基板に向かう表面と面一である。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比べて、本発明の実施例に提供された技術案は以下の利点を有する。
【0016】
上記の技術案において、バリア層を設置することで、フィールドパッシベーション層と基板との間に大きな電位障壁を確保し、フィールドパッシベーション層に良好なバンドの曲がり効果を持たせ、キャリアの選択的な輸送を維持し、ドーパントイオンの基板の表面への移動による再結合損失を低減させることにも有利である。また、濃度差により自然拡散が発生した場合、第2バリア層は、対応するフィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンを担持し、フィールドパッシベーション層の対応する部分のドーピング濃度を希釈し、フィールドパッシベーション層の対応する部分の光吸収能力を低下させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。それと共に、第2バリア層に拡散したドーパントイオンは、バンドの曲がり効果を強化し、キャリアの選択的な輸送を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
1つ又は複数の実施例を対応する添付図面の図によって例示的に説明する。これらの例示的な説明は実施例を限定するものではなく、特に説明しない限り、添付図面の図は比例的制限を構成しない。
【0018】
【
図2】
図2は本発明の1つの実施例に提供された太陽電池の構造を示す図である。
【
図3】
図3は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の構造を示す図である。
【
図4】
図4は本発明の別の実施例に提供された太陽電池の構造を示す図である。
【
図5】
図5は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【
図6】
図6は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【
図7】
図7は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【
図8】
図8は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【
図9】
図9は本発明の別の実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【
図10】
図10は本発明の別の実施例に提供された太陽電池の製造方法のステップに対応する構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、
図1はTOPCon電池の構造を示す図である。
【0020】
TOPCon電池は、基板10と、基板10の下面を覆うパッシベーションコンタクト構造とを備え、パッシベーションコンタクト構造は、一般的に、順次積層されたトンネル層121とフィールドパッシベーション層122とを含み、トンネル層121は主に基板10の表面を化学的にパッシベーションし、界面準位を低減させるために使用されるものであり、フィールドパッシベーション層122は、主に基板10の表面にバンドの曲がりを形成し、キャリアの選択的な輸送を実現し、再結合損失を低減させるために使用されるものである。フィールドパッシベーション層122は、一般的にドーパントイオンがドープされたポリシリコン層である。
【0021】
パッシベーションコンタクト構造の製造及び製品の電池の後処理において、高温熱処理は、フィールドパッシベーション層122におけるドーパントイオンに熱出力を提供し、その結果、ドーパントイオンがトンネル層121を透過して基板10の下面に移動し、基板10の下面の表面再結合を増加し、トンネル層121の界面パッシベーション効果を低下させてしまう。それと共に、ドーパントイオンの移動により、基板10とフィールドパッシベーション層122との間の電位障壁を低下させ、フィールドパッシベーション層122のフィールドパッシベーション効果を弱め、太陽電池の変換効率を低下させてしまう。
【0022】
上記の問題を解決するために、本発明の実施例には、太陽電池が提供され、バリア層を設置することで、フィールドパッシベーション層と基板との間に大きな電位障壁を確保し、フィールドパッシベーション層に良好なバンドの曲がり効果を持たせ、キャリアの選択的な輸送を維持し、ドーパントイオンの基板の表面への移動による再結合損失を低減させることにも有利である。また、濃度差により自然拡散が発生した場合、第2バリア層は、対応するフィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンを担持し、フィールドパッシベーション層の対応する部分のドーピング濃度を希釈し、フィールドパッシベーション層の対応する部分の光吸収能力を低下させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。それと共に、第2バリア層に拡散したドーパントイオンは、バンドの曲がり効果を強化し、キャリアの選択的な輸送を維持することができる。
【0023】
本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の各実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、当業者が理解できるように、本発明の各実施例において、読者が本願をよりよく理解するために、多くの技術的詳細まで提示さている。ただし、これらの技術的詳細及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護しようとする技術案を実現することができる。
【0024】
図2は、本発明の1つの実施例に提供された太陽電池の構造を示す図である。表現を簡潔化するために、以下では、多数のキャリアを多数キャリア、少数のキャリアを少数キャリアと称するものとする。
【0025】
図2を参照して、太陽電池は、基板20と、基板20の上面に順次積層されたエミッタ211、第1パッシベーション膜212、反射防止膜213及び第1電極214と、基板20の下面に順次積層されたトンネル層221、バリア層222、フィールドパッシベーション層223、第2パッシベーション膜224及び第2電極225とを備え、バリア層222は、フィールドパッシベーション層223におけるドーパントイオンの基板20への移動を遮断するために使用されるものであり、バリア層222は、第2電極225の投影と重なっている第1バリア層222aと、第2電極225の投影からずれている第2バリア層222bとを含み、少なくとも第2バリア層222bは真性半導体であり、基板20の表面に垂直な方向において、第1バリア層222aの厚さは第2バリア層222bの厚さよりも小さく、第1バリア層222aの基板20から離れた表面は、第2バリア層222bの基板20から離れた表面と面一である。
【0026】
基板20は、エミッタ211とPN接合を形成する。具体的には、基板20がP型である場合、エミッタ211はN型である。基板20がN型である場合、エミッタ211はP型である。選択できるように、基板20の材料は、単結晶シリコン、多結晶シリコン、擬似単結晶シリコン、ペロブスカイト等の半導体材料を含んでもよい。
【0027】
第1パッシベーション膜212及び第2パッシベーション膜224の材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭窒化酸化シリコン、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム等の材料の1つ又は複数を含み、反射防止膜213の材料は、窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭窒化酸化シリコン等の材料の1つ又は複数を含んでもよい。第1電極214は、反射防止膜213及び第1パッシベーション膜212を貫通してエミッタ211に接続され、第2電極225は、第2パッシベーション膜224を貫通してフィールドパッシベーション層223に接して接続され、第1電極214は銀アルミニウム電極であってもよく、第2電極225は銀電極であってもよい。
【0028】
本実施例では、バリア層222の遮断能力は、熱拡散を発生させるドーパントイオンがフィールドパッシベーション層223の基板20に向かう方向において移動可能な最長距離によって定義され、ドーパントイオンの移動可能な最長距離が短いほど、バリア層222の遮断能力が強くなり、ドーパントイオンの移動可能な最長距離が長いほど、バリア層222の遮断能力が弱くなる。
【0029】
本実施例では、基板20は、第1領域20aと第2領域20bとを含み、第1領域20aにおけるフィールドパッシベーション層223は第2電極225と接触させるために使用されるものであり、第1領域20aにおけるバリア層222を第1バリア層222aと称し、第2領域20bにおけるバリア層222を第2バリア層222bと称する。第1のバリア層222aが第2電極225の投影と重なることは、基板20の表面に垂直な方向において、第2電極225の正投影が第1バリア層222aの正投影と重なること、又は、第1バリア層222aの正投影が第2電極225の正投影内に位置すること、又は、第2電極225の延在部が第1バリア層222aと交差することであり、第2バリア層222bが第2電極225の投影からずれることは、基板20の表面に垂直な方向において、第2バリア層222bの正投影が第2電極225の正投影と重なっていないこと、又は、第2電極225の延在部が第2バリア層222bと交差しないことである。
【0030】
本実施例では、第2バリア層222bの遮断能力は、第1バリア層222aの遮断能力よりも弱い。具体的には、フィールドパッシベーション層223におけるドーパントイオンに熱拡散が発生した場合、第2バリア層222bによって遮断されたドーパントイオンが移動可能な最長距離は、第1バリア層222aによって遮断されたドーパントイオンが移動可能な最長距離よりも大きい。
【0031】
バリア層は、2つの方法によりその遮断効果を達成することができる。一つ目は、界面による遮断であり、即ち、特定の膜層におけるドーパントイオンは、当該特定の膜層とバリア層との間の界面を透過できないか、又は透過することが困難である。二つ目は、バッファリングによる遮断であり、即ち、特定の膜層におけるドーパントイオンは、濃度差によりバリア層まで拡散することができるが、拡散により濃度勾配が減少するので、最終的に、ドーパントイオンは、濃度勾配が小さすぎるため拡散力が小さすぎて、拡散し続けることができなくなり、それによって、遮断効果を実現する。
【0032】
本実施例では、基板20の表面に垂直な方向において、バリア層222の厚さは20nm以下、例えば5nm、10nm又は15nmである。このようにして、バリア層222自体の厚さが大きくて多数キャリアの輸送にとって大きな遮断になることを回避し、多数キャリアの効果的な輸送を確保することができる。また、フィールドパッシベーション層223と基板20との距離の増加によりフィールドパッシベーション層223のバンドの曲がり効果を大きく低下させてしまうことを回避し、キャリアの選択的な輸送を維持し、太陽電池の開回路電圧及び変換効率を向上させることができる。
【0033】
本実施例では、少なくとも第2バリア層222bは、真性半導体層であり、第2バリア層222bは、バッファリングによる遮断で遮断の効果を実現する。第2バリア層222bが真性半導体層である場合、フィールドパッシベーション層223におけるドーパントイオンは拡散により第2バリア層222b内に移動することができる。第2バリア層222bがフィールドパッシベーション層223よりも基板20に近いため、第2バリア層222b内に移動したドーパントイオンは、フィールドパッシベーション層223のバンドの曲がり効果を補うことができ、フィールドパッシベーション層223と基板20との間隔が大きくなることによってフィールドパッシベーション層223のバンドの曲がり効果が大きく低下してしまうことを回避し、キャリアの選択的な輸送の維持に有利である。また、ドーパントイオンの移入により、第2バリア層222bは高い電気伝導率を有し、多数キャリアの効果的な輸送を確保することができる。また、フィールドパッシベーション層223におけるドーパントイオンが第2バリア層222bへ移動することにより、第2領域20bにおけるフィールドパッシベーション層223のイオンのドーピング濃度の低減に有利であり、第2領域20bにおけるフィールドパッシベーション層223の光吸収係数を減少させ、太陽電池の変換効率を向上させる。
【0034】
ここで、真性半導体層の材料は、真性ポリシリコン、真性アモルファスシリコン、又は真性微結晶シリコンを含んでもよく、真性半導体層の材料は、フィールドパッシベーション層223の材料と同じであってもよい。なお、ここで、フィールドパッシベーション層223の材料とは、ドーパントイオンをドープする前のフィールドパッシベーション層223の真性材料又はドーパントイオンの基材である。
【0035】
本実施例では、第2バリア層222bの材料はフィールドパッシベーション層223の材料と同じであってもよく、このようにして、太陽電池の製造工程のステップを少なくし、多数キャリアの効果的な輸送を確保することに有利である。他の実施例では、第2バリア層の材料とフィールドパッシベーション層の材料とは、同じ材料種類の異なる材料であってもよく、例えば、フィールドパッシベーション層がポリシリコンであり、第2バリア層がアモルファスシリコンであり、このようにして、多数キャリアの効果的な輸送を確保すると共に、第2バリア層とフィールドパッシベーション層との界面を利用してドーパントイオンの熱拡散エネルギーを削減することができ、ドーパントイオンが第2バリア層222bに拡散した後にも移動し続けることを回避し、これによって、トンネル層221は良好な界面パッシベーション効果を有し、太陽電池の再結合損失を小さくすることを確保する。
【0036】
なお、隣接する膜層間の界面のドーパントイオンに対する遮断能力は、当該界面の界面エネルギーと関連付けられており、界面エネルギーが大きいほど遮断能力が強く、界面エネルギーが小さいほど遮断能力は弱い。また、界面エネルギーの大きさは隣接する膜層の材料と関連付けられており、ポリシリコンや微結晶シリコン等の、同じ種類の異なる材料間の界面エネルギーは小さく、ポリシリコンと金属化合物、ポリシリコンと塩、ポリシリコンと有機物等の、異なる種類の材料間の界面エネルギーは強い。
【0037】
本実施例では、フィールドパッシベーション層223のバリア層222に向かう表面層の平均ドーピング濃度は、1E+19/cm3~1E+21/cm3、例えば5E+19/cm3、1E+20/cm3又は5E+20/cm3であり、第2バリア層222bの厚さは0.5nm~20nm、例えば1nm、5nm又は10nmである。このようにして、高温熱処理の時間が短い場合、フィールドパッシベーション層223におけるドーパントイオンは基板20の表面に移動できる十分な熱出力及び拡散力がないため、基板20表面の再結合損失を低減させることに有利である。
【0038】
ここで、フィールドパッシベーション層223のドーパントイオンの種類は、基板20のドーパントイオンの種類と同じである。具体的には、基板20がN型シリコンウェーハである場合、フィールドパッシベーション層223はN型ドーパントであり、ドーパントイオンはリンイオンを含み、基板20がP型シリコンウェーハである場合、フィールドパッシベーション層223はP型ドーパントであり、ドーパントイオンはボロンイオンを含む。
【0039】
本実施例では、フィールドパッシベーション層223のバリア層222から離れた表面の表面ドーピング濃度は、1E+20/cm3~1E+22/cm3、例えば5E+20/cm3、1E+21/cm3又は5E+21/cm3であり、基板20の表面に垂直な方向において、フィールドパッシベーション層223の厚さと第2バリア層222bの厚さとの比は5~100、例えば10、20、50又は70である。第2電極225が通常フィールドパッシベーション層223の基板20から離れた表面と接触するため、上記の表面ドーピング濃度を用いると、フィールドパッシベーション層223と第2電極225との間の良好なオーミック接触を確保し、多数キャリアの輸送損失を低減させることに有利である。それと共に、上記厚さの比を用いると、フィールドパッシベーション層223の表面におけるドーパントイオンが完全に熱拡散した場合に、フィールドパッシベーション層223と第2バリア層222bとの間は小さな濃度勾配とすることができ、即ち、第2バリア層222bの基板20に近い表面層はドーピング濃度が低い。このようにして、ドーパントイオンは、濃度差によって形成された拡散力を失った後にさらに基板20の表面に拡散しにくくなり、基板20の表面の再結合損失を低減させ、トンネル層221の界面パッシベーション効果を確保することに有利であり、太陽電池の変換効率を向上させる。
【0040】
本実施例では、第1バリア層222aの材料の種類は、フィールドパッシベーション層223の材料の種類と異なっている。第1バリア層222aの材料の種類とフィールドパッシベーション層223の材料の種類とを異ならせることにより、第1バリア層222aは界面による遮断を実現することができ、第1領域20aのフィールドパッシベーション層223が高い平均ドーピング濃度を有し、第1領域20aにおけるフィールドパッシベーション層223の基板20から離れた表面は高い表面ドーピング濃度を有することを確保し、第1領域20aにおけるフィールドパッシベーション層223と第2電極225との良好なオーミック接触を可能にし、多数キャリアの輸送を効果的に行い、即ち、太陽電池は高い変換効率を有する。
【0041】
ここで、第1バリア層222aの材料の種類は、金属酸化物、ケイ化物、塩、有機物又は金属の少なくとも1種を含む。具体的には、金属酸化物としては、TiOx、MoOx、Vox、Wox又はMgOxが挙げられ、ケイ化物としては、SiC、SiNx、SiOxNy又はSiOxNyCzが挙げられ、塩としては、MgFx、CsFx又はLiFxが挙げられる、有機物としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene/poly(styrenesulfonate)、PEDOT/PSS)が挙げられ、金属としては、Mg、Ca又はAlが挙げられる。なお、金属の選択は、基板20のドーピング種類及びドーピング濃度と関連付けられ、即ち、第1バリア層222aは、基板20のドーピング種類及びドーピング濃度に応じて対応する仕事関数を整合することができる。
【0042】
本実施例では、第1バリア層222aは多層構造であり、多層構造における複数の膜層は、基板20の表面に垂直な方向に積層され、異なる膜層の材料は同一又は異なっている。さらに、単一膜層は単一材料から構成されてもよく、単一材料は金属酸化物、ケイ化物、塩、有機物又は金属を含む。単一膜層は複数種類の材料から構成されてもよく、これによって、制御性がより良好又はパフォーマンスがより良好な遮断効果を実現する。ここで、制御性とは、遮断効果の調整可能な範囲が広くかつ調整精度が高いことである.
【0043】
具体的には、第1バリア層222aは、少なくとも2層の膜層を含んでもよく、各膜層は、単一の材料から構成される。さらに、2層の膜層は、第1バリア層222aのトンネル層221に向かう第1表面層と、第1バリア層222aのフィールドパッシベーション層223に向かう第2表面層とを含み、第1表面層の材料と第2表面層の材料とが異なっている。このようにして、第1バリア層222aと隣接する膜層との界面の性能が、予め定めた要求を満たすことができる。なお、隣接する膜層間の界面の性能は、隣接する膜層の当該界面に向かう表面層の材料と関連付けられている。
【0044】
具体的には、第2表面層の材料は、第1バリア層222aが良好な界面遮断効果を有するように、フィールドパッシベーション層223の材料に応じて調整することができる。それと共に、多数キャリアは第1バリア層222aとトンネル層221との間の界面を効果的に透過できるように、トンネル層221の材料に応じて第1表面層の材料を調整することができる。
【0045】
例えば、第1表面層の材料は、トンネル層221の材料と同じであってもよく、具体的には、酸化物が挙げられ、第2表面層の材料は金属酸化物であってもよく、金属酸化物はドーパントイオンを遮断することができる。
【0046】
また、第2膜層の材料は、第1膜層の材料に対し予め設定された処理工程を行ってから得られる。このようにして、工程の難易度を低下させると共に、材料の無駄を削減することができる。
【0047】
例えば、第1表面層の材料は、特定の金属であってもよく、第2表面層の材料は、特定の金属の反応によって生成された金属化合物であってもよく、金属化合物は、金属を酸化して得られる金属酸化物、及び金属を窒素で衝突させて得られる金属窒化物等を含む。
【0048】
なお、酸化や窒素衝突等の工程は、第1金属材料がトンネル層221の表面に堆積した後まで待つ必要がなく、堆積過程において行ってもよく、即ち、堆積工程を行って予め設定した時間を過ごした後に他の工程を同時に行って、堆積中の金属材料を処理する。
【0049】
バリア層222は、化学気相成長法、物理蒸着法、原子層堆積法、スパッタ法、蒸発法、無電解めっき法、電気めっき法、印刷法、ゾルゲル法等の方法により製造することができる。
【0050】
バリア層222の形成工程の具体的な選択は、バリア層222の厚さ、形成位置の形態特徴、及びバリア層222の工程にかかる時間の要求と関連付けられている。具体的には、バリア層222の厚みが薄い場合、原子層堆積法を選択し、これによって、バリア層222の密着性を良好にし、バリア層222の良好な界面遮断効果を確保する。バリア層222の厚みが厚い場合、低圧化学気相成長法又はプラズマ強化化学気相成長法を選択することができ、これによって、バリア層222の工程時間を短くし、かつ、バリア層222が形成中に不純物によって汚染されることを回避し、バリア層222に予め設定された性能を持たせることを確保する。
【0051】
なお、バリア層222は、2種以上の工程で形成されることができる。具体的には、バリア層222の形成位置が段差状の形態を有する場合、まず段差状の形態を覆う第1子膜層を原子層堆積法により形成することができ、これによって、その表面の形態を段差状の形態から平滑な表面に変化させ、次に、化学気相成長法により第2子膜層を形成し、バリア層222を構成する。
【0052】
本実施例では、第1領域20aと第2領域20bにおいて異なる材料を設置することで異なる遮断能力を実現する。他の実施例では、第1領域と第2領域において厚さが異なる同一の材料を設置することで、異なる遮断能力を実現する。
【0053】
具体的には、
図3を参照して、バリア層322は、真性半導体層であり、基板30の表面に垂直な方向において、第1バリア層322aの厚さが第2バリア層322bの厚さよりも小さく、第1バリア層322aの基板30から離れた表面は第2バリア層322bの基板30から離れた表面と面一である。このようにして、バリア層322とトンネル層321との間の界面の遮断作用により、自由熱拡散の条件下で、第1バリア層322aにおけるドーパントイオンの移動の最大距離は、第2バリア層322bにおける移動の最大距離よりも小さい。
【0054】
換言すれば、ドーパントイオンがトンネル層321と遮断層322との界面によって遮断されるため拡散し続けることができない場合に、第2バリア層322bの遮断能力は、第1バリア層322aの遮断能力よりも弱いと考えられる。
【0055】
また、
図3に示される太陽電池の構造において、トンネル層321の構造はバリア層322の構造と相補的であり、即ち第1領域30aにおけるトンネル層321の厚さが第2領域30bにおけるトンネル層321の厚さよりも大きく、これにより、太陽電池構造の安定性を向上させる。他の構造では、バリア層322とトンネル層321との間に他の材料、例えば結合材料を添加して、バリア層322とトンネル層321との結合性を補強し、太陽電池構造の安定性を確保する。
【0056】
本実施例では、バリア層を設置することで、フィールドパッシベーション層と基板との間に大きな電位障壁を確保することができ、フィールドパッシベーション層が良好なバンドの曲がり効果を有し、キャリアの選択的な輸送を維持すると共に、ドーパントイオンの基板の表面へ移動による再結合損失を低減させることができる。また、濃度差により自然拡散が発生した場合、第2バリア層は、対応するフィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンを担持し、フィールドパッシベーション層の対応する部分のドーピング濃度を希釈し、フィールドパッシベーション層の対応する部分の光吸収能力を低下させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。それと共に、第2バリア層に拡散したドーパントイオンは、バンドの曲がり効果を高め、キャリアの選択的な輸送を維持することができる。
【0057】
本発明のもう1つの実施例には、太陽電池が提供され、前の実施例との相違点は、本実施例において、第1バリア層の基板に向かう表面は第2バリア層の基板に向かう表面と面一であることにある。以下、
図4を合わせて詳細に説明し、
図4は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の構造を示す図である。前の実施例と同一又は対応する部分については、前の実施例の対応する説明を参照することができるため、以下で再び説明しない。
図4を参照して、バリア層422は真性半導体層であり、基板40の表面に垂直な方向において、第1バリア層422aの厚さが第2バリア層422bの厚さよりも小さく、第1バリア層422aの基板40に向かう表面は第2バリア層422bの基板40に向かう表面と面一である。
【0058】
また、フィールドパッシベーション層423はバリア層422と相補的であり、基板40の表面に垂直な方向において、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の厚さは第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423の厚さと等しい。
【0059】
本実施例では、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の基板40に向かう表面の表面ドーピング濃度は、第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423の基板40に向かう表面の表面ドーピング濃度と同じである。同じ熱処理工程では、第1領域40aにおける第1バリア層422aの厚みが薄いため、ドーパントイオンが完全に熱拡散した後に、第1バリア層422aの基板40に向かう表面の表面ドーピング濃度が大きくなり、第2バリア層422bは、より多くのドーパントイオンを収容することができる。このようにして、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423及びバリア層422は良好なフィールドパッシベーション効果を有し、第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423は低い光吸収係数を有し、太陽電池の高い変換速度を確保する。
【0060】
また、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の基板40から離れた表面の表面ドーピング濃度は、第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423の基板40から離れた表面の表面ドーピング濃度と同じである。
【0061】
本実施例では、第1バリア層422aの材料は、第2バリア層422bの材料と同じであり、異なる厚さによって異なる遮断能力を実現する。他の実施例では、第2バリア層の材料は、真性半導体であり、第1バリア層の材料は、第2バリア層の材料と異なり、異なる厚さ及び異なる材料によって異なる遮断能力を実現する。
【0062】
本実施例では、バリア層を設置することで、フィールドパッシベーション層と基板との間に大きな電位障壁を確保し、フィールドパッシベーション層に良好なバンドの曲がり効果を持たせ、キャリアの選択的な輸送を維持し、ドーパントイオンの基板の表面への移動による再結合損失を低減させることにも有利である。また、濃度差により自然拡散が発生した場合、第2バリア層は、対応するフィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンを担持し、フィールドパッシベーション層の対応する部分のドーピング濃度を希釈し、フィールドパッシベーション層の対応する部分の光吸収能力を低下させ、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。それと共に、第2バリア層に拡散したドーパントイオンは、バンドの曲がり効果を強化し、キャリアの選択的な輸送を維持することができる。また、中間膜層の最小厚さが一定である場合に、第1領域のフィールドパッシベーション層が基板により近いため、フィールドパッシベーション層のフィールドパッシベーション効果をさらに確保することができる。
【0063】
上記に対応して、本発明のもう一つの実施例には、上記の太陽電池を製造するための太陽電池の製造方法が提供される。
【0064】
図5~
図8は本発明のもう1つの実施例に提供された太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造を示す図である。
図5~
図8を参照して、太陽電池の製造方法は以下のステップを含む。
【0065】
図5を参照して、基板30を提供し、基板30の裏面にトンネル膜321aを形成する。
【0066】
本実施例では、基板30は、N型シリコンウェーハである。基板30は、第1領域30a及び第2領域30bを含む。後で形成される第2電極は第1領域30aに位置し、トンネル膜321aを形成する前に、まず基板30の正面にP型ドーパントイオンの拡散を行って、エミッタ311を形成する。ドーパントイオンはボロンイオンを含む。
【0067】
拡散した後に、余分のPN接合を除去するために基板の裏面及び周縁をエッチングする必要があるが、基板30の正面におけるドーパントイオンの拡散によって形成されたホウケイ酸ガラスを残す。他の実施例では、基板はP型シリコンウェーハであり、N型ドーパントイオンを用いて拡散ドーピングを行い、ドーパントイオンはリンイオンを含み、基板の正面には、ドーパントイオンが拡散した後にリンケイ酸ガラスが形成される。
【0068】
本実施例では、トンネル膜321aの材料は二酸化ケイ素を含み、トンネル膜321aは熱酸化処理により形成することができる。具体的には、エミッタ311を形成した後に、熱酸化処理により基板30の裏面及びエミッタ311の基板30から離れた表面にそれぞれ酸化層が形成され、裏面の酸化層をトンネル膜321aとする。
【0069】
図6を参照して、トンネル膜321aをエッチングし(
図5を参照)、トンネル層321を形成する。
【0070】
本実施例では、トンネル膜321aをエッチングして、第1領域30aにおけるトンネル層321の厚さを第2領域30bにおける厚さよりも大きくし、換言すれば、基板30のトンネル層321に向かう方向において、第2領域30bにおけるトンネル層321の上面が第1領域30aにおけるトンネル層321の上面よりも低い。
【0071】
【0072】
本実施例では、トンネル層321を形成した後に、化学気相成長等の工程により基板30の正面及び裏面にバリア膜を形成し、基板30の裏面に位置するバリア膜に対し平坦化処理を行って、基板30の裏面に位置するバリア層322を形成し、バリア322の基板30から離れた表面は平坦面である。
【0073】
ここで、バリア層322はトンネル層321と相補的であり、基板30の表面に垂直な方向において、第1領域30aにおけるバリア層322の厚さは第2領域30bにおけるバリア層322の厚さよりも小さい。
【0074】
図8を参照して、フィールドパッシベーション層323を形成する。
【0075】
本実施形態では、バリア層322を形成した後に、化学気相成長法により基板30の正面及び裏面に多結晶シリコン層を形成し、この基板30の裏面に位置する多結晶シリコン層に対しイオン注入処理を行って、基板30の裏面に位置するフィールドパッシベーション層323を形成する。
【0076】
本実施形態では、基板30の表面に垂直な方向において、フィールドパッシベーション層323は、均一な厚さを有し、かつバリア層322の基板30から離れた表面に均一に覆われている。また、第1領域30aにおけるフィールドパッシベーション層323の基板30に向かう表面の表面ドーピング濃度は、第2領域30bにおけるフィールドパッシベーション層323の基板30に向かう表面の表面ドーピング濃度と同じであるか、又は、第1領域30aにおけるフィールドパッシベーション層323の基板30から離れた表面層の平均ドーピング濃度は、第2領域30bにおけるフィールドパッシベーション層323の基板30から離れた表面層の平均ドーピング濃度と同じである。
【0077】
なお、ポリシリコン層にイオンを注入する際に、注入エネルギー及び注入損傷を低減させるために、一般的に、ポリシリコン層の基板30から離れた表面層をヘビードーピングし、ビードーピングした後に、表面層に位置するドーパントイオンは、濃度差により他の領域へ拡散し、さらにポリシリコン層全体にわたって分布している。異なる領域におけるフィールドパッシベーション層323の基板30から離れた表面層の平均ドーピング濃度が同一であって、かつ拡散条件及び拡散経路長が同じである場合、異なる領域におけるフィールドパッシベーション層323の基板30に向かう表面の表面ドーピング濃度は同じである。
【0078】
フィールドパッシベーション層323を形成した後、基板30の正面に位置する酸化層、バリア膜及びポリシリコン層を除去し、基板30の正面に、順次積層された第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極を形成し、基板30の裏面に第2パッシベーション膜及び第2電極を形成する。第1パッシベーション膜の材料は、第2パッシベーション膜の材料と同じであってもよく、両者は同一の形成工程で形成されてもよい。
【0079】
本実施例では、第2バリア層322bの厚みが厚いため、第2バリア層322bはより多くのドーパントイオンを収容することができ、第2バリア層322bは、ドーパントイオンの移動をより効果的に遮断することができる。それと共に、第2バリア層322bは、第2領域30bにおけるフィールドパッシベーション層323のドーピング濃度を効果的に希釈し、第2領域30bにおけるフィールドパッシベーション層323の光吸収能力を低下させ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0080】
本発明の別の実施例には、太陽電池の製造方法がさらに提供され、前の実施例との相違点は、本実施例において、第1領域におけるバリア層の基板に向かう表面は第2領域におけるバリア層の基板に向かう表面と面一であることにある。以下、
図9~
図10を合わせて詳細に説明し、
図9~
図10は、本発明の別の実施例に提供された太陽電池の製造方法の各ステップに対応する構造を示す図である。前の実施例と同一又は対応する部分については、前の実施例の対応する説明を参照することができるため、以下で再び説明しない。
【0081】
図9を参照して、トンネル層421を形成した後に、バリア層422を形成する。
【0082】
本実施例では、基板40の裏面に垂直な方向において、トンネル層421は、均一な厚さを有する。トンネル層421を形成した後に、厚さが均一でかつトンネル層421の表面に均一に覆われているバリア膜を形成し、第1領域40aにおけるバリア膜の厚さが第2領域40bにおけるバリア膜の厚さよりも小さくなるように、バリア膜をパターン化かつエッチングし、残りのバリア膜をバリア層422とする。
【0083】
図10を参照して、フィールドパッシベーション層423を形成する。
【0084】
本実施例では、基板40のバリア層422に向かう方向において、第1領域40aにおけるバリア層422の上面は第2領域40bにおけるバリア層422の上面よりも低く、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の厚さは第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423の厚さと等しい。
【0085】
本実施例では、フィールドパッシベーション層423を形成する具体的な工程は、バリア層422の表面を覆うポリシリコン層を形成し、ポリシリコン層が基板40から離れた平坦面を有するようにポリシリコン層に対し平坦化処理を行うことと、第1領域40aにおけるポリシリコン層の厚さが第2領域40bにおけるポリシリコン層の厚さと同じになるようにマスクを利用してポリシリコン層をエッチングすることと、ポリシリコン層の基板40から離れた表面層に対しイオン注入処理を行うことと、を含む。
【0086】
他の実施例では、堆積工程を直接に行って、異なる領域においても厚さが同一であるフィールドパッシベーション層を形成してもよい。
【0087】
イオン注入処理を行った後に、基板40のフィールドパッシベーション層423に向かう方向において、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の最上層の平均ドーピング濃度は、第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層42の最上層の平均ドーピング濃度と等しい。さらに拡散した後、第1領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の底面の表面ドーピング濃度は、第2領域40bにおけるフィールドパッシベーション層423の底面の表面ドーピング濃度と等しい。
【0088】
本実施例では、第1バリア層422aが薄いため、熱処理工程を行った後に、第1バリア層422aの基板40に向かう表面の表面ドーピング濃度が大きく、これによって、第1バリア層422aと基板40との間に大きな電位障壁を確保し、第1バリア層422aと第1の領域40aにおけるフィールドパッシベーション層423の強いバンドの曲がり能力を確保することができ、キャリアの効果的な輸送及びキャリアの選択的な輸送を確保する。
【0089】
当業者が理解できるように、上記した各実施形態は本発明を実現するための具体的な実施例であり、実際の応用において、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、形態及び詳細に種々の変更を加えることができる。当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことができるため、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって限定される範囲を基準とすべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記第2バリア層の材料は、前記フィールドパッシベーション層の材料と同じであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記第1バリア層は真性半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記バリア層は多層構造であり、前記多層構造における複数の膜層は、前記基板の表面に垂直な方向に順次に積層され、異なる膜層の材料は異なっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【手続補正書】
【提出日】2021-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、
前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、
前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、
前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板から離れた表面は、前記第2バリア層の前記基板から離れた表面と面一であることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記基板の表面に垂直な方向において、前記バリア層の厚さは20nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層に向かう表面層の平均ドーピング濃度は、1E+19/cm3~1E+21/cm3であり、前記第2バリア層の厚さは0.5nm~20nmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記フィールドパッシベーション層の前記バリア層から離れた表面の表面ドーピング濃度は、1E+20/cm3~1E+22/cm3であり、前記基板の表面に垂直な方向において、前記フィールドパッシベーション層の厚さと前記第2バリア層の厚さとの比は5~100であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1バリア層の材料の種類は前記フィールドパッシベーション層の材料の種類と異なっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記バリア層の材料の種類は、金属酸化物、ケイ化物、塩、有機物又は金属の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1バリア層は真性半導体層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記バリア層は多層構造であり、前記多層構造における複数の膜層は、前記基板の表面に垂直な方向に順次に積層され、異なる膜層の材料は異なっていることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
基板と、
前記基板の上面に順次積層されたエミッタ、第1パッシベーション膜、反射防止膜及び第1電極と、
前記基板の下面に順次積層されたトンネル層、バリア層、フィールドパッシベーション層、第2パッシベーション膜及び第2電極とを備え、
前記バリア層は、前記フィールドパッシベーション層におけるドーパントイオンの前記基板への移動を遮断するために使用されるものであり、前記バリア層は、前記第2電極の投影と重なっている第1バリア層と、前記第2電極の投影からずれている第2バリア層とを含み、少なくとも前記第2バリア層は真性半導体であり、
前記基板の表面に垂直な方向において、前記第1バリア層の厚さは前記第2バリア層の厚さよりも小さく、前記第1バリア層の前記基板に向かう表面は、前記第2バリア層の前記基板に向かう表面と面一であることを特徴とする太陽電池。