(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073813
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】魚釣用リールのスプール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20220510BHJP
A01K 89/01 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A01K89/015 C
A01K89/01 101B
A01K89/015 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020191252
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】513095281
【氏名又は名称】松野 泰明
(72)【発明者】
【氏名】松野 泰明
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108CD01
2B108EH03
2B108FE02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糸巻胴部に貫通孔を設けた魚釣用リールのスプールを提供する。
【解決手段】糸巻胴部2と、前記糸巻胴部2の両端部から径方向外側に向かって立ち上がるフランジ部3とを備え、前記糸巻胴部2には、隣り合う貫通孔4同士に釣糸の端部を通し、結んで留めるための両目的で設けた、複数の貫通孔4が形成されていることを特徴とする魚釣用リールのスプール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール本体(1)に、糸巻胴部(2)と、前記糸巻胴部(2)の両端部から径方向外側に向かって立ち上がるフランジ部(3)とを備え、前記糸巻胴部(2)には、複数の貫通孔(4)が形成されていることを特徴とする魚釣用リールのスプール。
【請求項2】
前記貫通孔(4)の平均直径が3.5~4.0mmの円形であることを特徴とする、請求項1記載の魚釣用リールのスプール。
【請求項3】
前記貫通孔(4)を、糸巻胴部(2)の長手方向に対して、3個設けた列、および4個設けた列を、それぞれ交互に、糸巻胴部(2)の軸方向に、60度刻み、計6列にわたって設けたことを特徴とする、請求項1または請求項2記載の魚釣用リールのスプール。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚釣用リールのスプールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、両軸受け型等の魚釣用リールにおいて、スプールに釣糸を巻回する際には、巻き始め部分となる釣糸の端部をスプール糸巻胴部に巻き付けて結びつけて、固定していた。
【0003】
上記のように、スプールの糸巻胴部に釣糸を結び付けると、結び瘤が生じるため、きれいに糸を巻き取ることができず、糸巻状態が乱れる不具合が生じやすかった。
また、滑りの良いPE系ブレイデットラインを使用する場合、糸巻胴部にしっかりと結び付けたつもりでも滑ってしまうことがあり、この場合、糸を巻こうとしても、巻き取りが行えない、スリップ現象が起きていた。魚釣りの最中にこの現象が起きてしまうと、釣糸をすべて出して、巻き直さなければいけないため、リールに釣糸を巻く、巻きはじめは特に注意が必要であり、従来は、スリップを防ぐために、ナイロンラインを下巻きしたり、粘着テープで結び始めの部分を固定するなどの、滑りにくい状態を作り出して、対処していた。
【0004】
従来、結び瘤による糸巻状態の乱れを防止する魚釣用リールとして、特許文献1に記載のものがあった。
この魚釣用リールでは、スプールに貫通孔を設けるとともに、スプールの内側に釣糸の端部を挟着固定するための釣糸固定部材を設けている。この魚釣用リールによれば、貫通孔を通じてスプールの内側に導いた釣糸を、釣糸固定部材に挟着して固定することができ、結び瘤による糸巻状態の乱れを防止できるとある。
また、スプールに糸を巻いても滑らないように、しっかりと結ぶことができるスプールとしては、特許文献2に記載のものがあった。
このスプールには、釣り糸をしっかりスプールに結ぶことができるように、糸巻胴部に、釣糸の端部に結び瘤をつくり、その瘤を引っ掛けて留める糸留め溝を設けている。このスプールによれば、瘤をひっかけることで、スリップ現象が起きず、しっかりと糸をスプールに結ぶことができるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-262191号公報
【特許文献2】特開2019-4828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の魚釣用リールでは、スプールの内側に釣糸固定部材を設ける構造であるため、リールの部品点数が増えてしまいコストアップに繋がるおそれがある。さらに、両軸受け型の魚釣用リールにおいては、快適にルアーや仕掛けをキャストするために、できるだけスプールの質量を減らし慣性モーメントを低減したいところであるのに、釣糸固定部材を設ける構造にしてしまっては、スプールの重量が増加してしまうため、キャスティングに影響を及ぼす恐れがあった。
また、特許文献2のスプールにおいては、結び瘤をひっかけるだけの構造であるため、キャスティングの途中、スプールに巻かれた糸が全部出てしまった際、ショックによって溝から結び瘤が外れてしまい、キャスト途中のルアーや仕掛け一式が飛んで行ってしまう恐れもあった。
【0007】
ナイロンラインを下巻きすることでスリップに対処していた従来の対処方法であるが、手間や、できる限り糸巻き後の重量を軽くして、慣性モーメントを軽減したい両軸受け型の魚釣用リールのスプールにおいては、ナイロンラインの下巻きの分だけ、重量が増えてしまい、キャスティングに悪影響を及ぼす心配があった。また、ナイロンラインの下巻きの分だけ、釣り糸の糸巻き量が減る事になり、買ってきた釣り糸をすべて巻き取ることができずに無駄にしてしまう欠点のほか、特にラインキャパシティが必要な釣りにおいては、ラインキャパシティを確保できなくなるという欠点もあった。粘着テープで結び始めを固定してしまう方法においては、粘着剤によるスプールの糸巻胴部が汚れる欠点があった。
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
糸巻胴部と、前記糸巻胴部の両端部から径方向外側に向かって立ち上がるフランジ部とを備え、前記糸巻胴部には、釣糸の端部を通して結んで留めるための、複数の貫通孔が形成されている。
本発明は、以上を特徴とする魚釣用リールのスプールである。
【発明の効果】
【0009】
スプールに釣り糸を巻き始める際、釣り糸を通した、隣り合う任意の貫通孔に、結び瘤を押し込んでしまうことで、糸巻胴部表面から、結び瘤が著しく盛り上がることは無くなり、結果、結び瘤による糸巻状態の乱れを防止できる。また、釣糸固定部材を必要としないため、コストの低減ができる。
糸巻き胴部に設けた、隣り合う貫通孔同士に釣糸の端部を通し、結んで留めることで、釣り糸のスリップ現象や、ルアーや仕掛けが飛んで行ってしまうことを最大限防ぐことができる。
また、スリップを防ぐため、ナイロンラインの下巻きや、粘着テープで結び始めを固定する方法においては、重量増を防ぐとともに、糸巻胴部が粘着剤の寄って汚れるのをふせぐことができる。
また、新たに生まれた効果として、釣り糸の巻きはじめとなる端部を結束するために設けた貫通孔は、スプールを肉抜きしたことによって軽量化できる効果と、スプール本体が外気に接触する面積が増える、空冷放熱効果、そして、均一の重量で量産ができる量産性に適した構造になった3点が挙げられる。
軽量化できる効果からは、両軸受け型の魚釣用リールにおいて、快適にルアーや仕掛けをキャストするために、できるだけスプールの質量を減らして、慣性モーメントを低減することを可能となった。
空冷放熱効果としては、特にマグロ等ドラグを作動させ、スプールを回転させて釣り糸を出してファイトする釣りにおいて、ドラグの摩擦熱でスプールが高熱になり、ドラグ性能が落ちてしまうところ、スプールの放熱効果も生まれることとなり、結果、さらに快適に釣りができるようになった。
均一の重量で量産できる量産性に適した構造になった点については、これまでが、釣り糸のスリップを防止するため、ドリル等の加工で、糸巻胴部に窪みを多数設けて、摩擦力を上げる対策がなされていたが、これらの加工では、窪みの深さのばらつきによって、製品の重量に誤差が生じていた。しかし、糸巻胴部に貫通孔を設ける等発明においては、糸巻胴部に完全に貫通する穴を設けるため、加工の度合いによって製品誤差が生じなくなり、量産性の面でも優れたものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
スプール本体(1)において、糸巻胴部(2)と、前記糸巻胴部(2)の両端部から径方向外側に向かって立ち上がるフランジ部(3)とを備え、前記糸巻胴部(2)には、釣糸の端部を通して結んで留めるための、複数の貫通孔(4)が形成されている。
本発明は以上のような構造である。
これを使用するときには、糸巻胴部(2)に設けた、隣り合う貫通孔(4)同士に釣糸の端部を通し、ユニノット等の結束方法でスプールに結束し、釣り糸をスプールに巻きとる。この、スプールに糸を結びつける際にできる結び瘤は、釣り糸が通っている2つの隣り合う貫通孔(4)のどちらか一方に押し込んでしまうことで、糸巻胴部(2)表面から著しく盛り上がる結び瘤ができることが無くなり、きれいに糸をスプールに巻き取ることができる。スプールに釣り糸を巻き取り終えたら、釣りを開始できる状態となる。
釣りの際は、通常通りルアーや仕掛けをキャストし、巻き取る動作を行うが、仮に大魚が掛かった場合、スプールにしっかりと糸の巻きはじめとなる端部が結束されているため、釣り糸とスプールがスリップすることなく、ファイトを楽しむことができる。
スプールの素材についてであるが、例えば、軽量、高強度として知られる超々ジュラルミンとして分類される、アルミニウム合金や、チタン、マグネシウムのブロックから切削して一体成型することができる。なお、スプールは、同じく軽量、高強度として知られる、カーボンやアラミド系繊維などを素材にした、CFRP、GFRP等の繊維強化樹脂等によって形成することもできる。
スプールの糸巻胴部に開ける貫通孔(4)であるが、
図1が示す通り、スプール両端のフランジ(3)の外径40mmのスプールにおいては、糸巻胴部(2)の直径は15mmほどしかなく、強度を保ちつつ、軽量化の効果もあげるために、できるだけ大きな貫通孔(4)を設けたいところである。そこで、巨大魚とのファイトに必要なスプール強度を保ちつつ最大限軽量化するために、前記貫通孔(4)の平均直径が3.5~4.0mmの円形であり、なおかつ、貫通孔(4)を3つ設けた列、および、4つ設けた列のそれぞれを交互に、糸巻胴部(2)の軸方向に、60度刻み、6列にわたって設けた場合が、最も軽量化と、魚とのファイトで負荷がかかっても、スプールがたわむ等の変形の悪影響なく、軽量化面で効果を確認できるバランスであった。
【0012】
また、図面では、本発明を両軸受け型の魚釣用リールのスプールに適用した例を示したが、リールの種類はこれに限られることはなく、スピニングリールや他の形式のリールのスプールに対して本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0013】
1 スプール本体
2 糸巻胴部
3 フランジ部
4 貫通孔