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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007386
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】不燃性木質複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 21/04 20060101AFI20220105BHJP
   B27K 3/16 20060101ALI20220105BHJP
   B27K 3/02 20060101ALI20220105BHJP
   B27D 1/04 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B32B21/04
B27K3/16
B27K3/02 C
B27D1/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110322
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000205742
【氏名又は名称】株式会社オーシカ
(71)【出願人】
【識別番号】300020094
【氏名又は名称】ボード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 聡
(72)【発明者】
【氏名】村田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 茂俊
(72)【発明者】
【氏名】植田 成治
(72)【発明者】
【氏名】勝沢 善永
(72)【発明者】
【氏名】中島 康宏
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 光
【テーマコード(参考)】
2B200
2B230
4F100
【Fターム(参考)】
2B200AA01
2B200AA07
2B200BA03
2B200BA11
2B200BA18
2B200CA13
2B200DA04
2B200DA12
2B200HA14
2B200HB03
2B200HB07
2B230AA07
2B230BA03
2B230BA17
2B230CA19
2B230CC11
2B230EB02
2B230EB28
2B230EB29
4F100AA01B
4F100AA04A
4F100AA04B
4F100AA07B
4F100AH02A
4F100AH02C
4F100AK01C
4F100AK21C
4F100AK33C
4F100AK34C
4F100AP00A
4F100AP00B
4F100AP01A
4F100AP01C
4F100BA03
4F100CA08A
4F100CA08B
4F100CB00C
4F100EJ08
4F100EJ08C
4F100JB09C
4F100JJ07
4F100JL11
4F100JM01C
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】軽量で木質感を得ることができる不燃性木質複合材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】不燃性木質複合材料1は、2~4mmの範囲の厚さを備え難燃薬剤を含有する第1の木質材料2と、無機物基材3又は第2の木質材料3と、第1の木質材料2と無機物基材3又は第2の木質材料3との間に介在する接着剤層4とを備える。難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有し、接着剤層はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有する接着剤からなる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2~4mmの範囲の厚さを備え難燃薬剤を含有する第1の木質材料と、無機物基材又は第2の木質材料と、該第1の木質材料と該無機物基材又は該第2の木質材料との間に介在する接着剤層とを備え、
該難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有し、該接着剤層はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有する接着剤からなることを特徴とする不燃性木質複合材料。
【請求項2】
請求項1記載の不燃性木質複合材料において、前記第2の木質材料は前記難燃薬剤を含むことを特徴とする不燃性木質複合材料。
【請求項3】
2~4mmの範囲の厚さを備え難燃薬剤を含有する第1の木質材料と、無機物基材又は第2の木質材料とを、接着剤を用いて貼り合わせる不燃性木質複合材料の製造方法であって、
該難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有し、該接着剤はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有し、硬化することにより接着剤層を形成することを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の木質複合材料の製造方法において、前記第2の木質材料は前記難燃薬剤を含有することを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の木質複合材料の製造方法において、前記難燃薬剤が含有する前記第1の化合物は、リン酸、ホウ酸、ホスホン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、ホウ砂、ホウ酸ナトリウムからなる群から選択される1種類以上の化合物であることを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項記載の木質複合材料の製造方法において、80~800kg/mの範囲の前記難燃薬剤を、前記第1の木質材料又は前記第2の木質材料に含浸させることを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか1項記載の木質複合材料の製造方法において、前記接着剤が含有する前記第2の化合物は、フェノール樹脂又はレゾルシノール樹脂であることを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか1項記載の木質複合材料の製造方法において、前記接着剤が含有する水性材料は、水性高分子、水性エマルジョン、水性ラテックスからなる群から選択される1種類以上の水性材料であることを特徴とする不燃性木質複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性木質複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木質材料を含む不燃性複合材料として、例えば、繊維強化セメント板(スレート板)、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)、火山性ガラス繊維板等の無機物基材に、厚さ0.25mm以下の薄単板からなる木質材料を、接着剤を介して貼り合わせたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、木質材料からなる不燃材料として、厚さ12mm以上の無垢の板材に、リン酸グアニジン等のリン酸系窒化化合物からなる難燃薬剤を、200kg/m以上含浸させたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56-64870号公報
【特許文献2】特開2007-160570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の無機物基材に薄単板からなる木質材料を貼り合わせた不燃性複合材料と、前記特許文献2に記載の木質材料からなる不燃材料とは、いずれも、ISO 5660-1:2002に準拠するコーンカロリーメータ試験において、20分間の総発熱量が8MJ/m以下であり、建築基準法における不燃材料に該当する。
【0006】
しかし、前記無機物基材に前記薄単板からなる木質材料を貼り合わせた不燃性複合材料は、壁等の装飾材として用いた場合、木質感に乏しく紙や樹脂シート等に木目を印刷した素材と差を感じ難いという問題がある。また、前記木質材料からなる不燃材料は板厚が厚くなるほど含浸できる難燃薬剤の量が多くなるので、難燃性を増加させるという意味では有利であるが、難燃薬剤のコストと重量が大きくなるという問題がある。
【0007】
そこで、前記無機物基材に前記薄単板からなる木質材料を貼り合わせた不燃性複合材料において、該薄単板に代えて、2~4mmの範囲の厚さを備える無垢の板材に所定量の前記難燃薬剤を含浸させた木質材料を用いることにより、木質材料を含む不燃性複合材料(以下、不燃性木質複合材料ということがある)であって、軽量で木質感を備える不燃性複合材料を得ることができると考えられる。
【0008】
しかしながら、前記無機物基材に、前記難燃薬剤を含浸させた木質材料を、接着剤を介して貼り合わせようとすると、該難燃薬剤による接着阻害が生じ、十分な接着強度を得ることができないという不都合がある。
【0009】
本発明は、かかる不都合を解消して、軽量で木質感を得ることができる不燃性木質複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明の不燃性木質複合材料は、2~4mmの範囲の厚さを備え難燃薬剤を含有する第1の木質材料と、無機物基材又は第2の木質材料と、該第1の木質材料と該無機物基材又は該第2の木質材料との間に介在する接着剤層とを備え、該難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有し、該接着剤層はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有する接着剤からなることを特徴とする。
【0011】
本発明の不燃性木質複合材料は、2~4mmの範囲の厚さを備え難燃薬剤を含有する第1の木質材料と、無機物基材又は第2の木質材料と、該第1の木質材料と該無機物基材又は該第2の木質材料との間に介在する接着剤層とを備えることにより、ISO 5660-1:2002に準拠するコーンカロリーメータ試験において、建築基準法における不燃材料、又は準不燃材料に該当するものとすることができる。ここで、建築基準法における不燃材料とは、加熱時間における最高発熱速度が10秒を超えて連続して200kW/mを超えず、20分間の加熱時間における総発熱量が8MJ/m以下であるものをいう。また、建築基準法における準不燃材料とは、加熱時間おける最高発熱速度が10秒を超えて連続して200kW/mを超えず、10分間の加熱時間における総発熱量が8MJ/m以下であるものをいう。
【0012】
また、本発明の不燃性木質複合材料は、前記第1の木質材料が、2~4mmの範囲の厚さを備えることにより、軽量で、かつ、木質感を得ることができる。本発明の不燃性木質複合材料は、前記第1の木質材料の厚さが2mm未満であるときには木質感を得ることができず、該第1の木質材料の厚さが4mm超であるときには重量が過大になりコストも増大する。
【0013】
本発明の不燃性木質複合材料は、例えば、難燃薬剤を含有する第1の木質材料と、無機物基材又は第2の木質材料とを、接着剤を用いて貼り合わせることにより製造することができる。
【0014】
ここで、前記第1の木質材料が含有する前記難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有する一方、前記接着剤はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有している。この結果、前記難燃薬剤に含有される前記第1の化合物のヒドロキシ基と、前記接着剤に含有される前記第2の化合物のヒドロキシ基又は水性材料とが相互に作用して、前記接着剤をゲル化させて硬化させることにより前記接着剤層を形成し、該接着剤層により、前記第1の木質材料と、前記無機物基材又は前記第2の木質材料との間で強固な接着強度を得ることができる。
【0015】
本発明の不燃性木質複合材料及びその製造方法において、前記第2の木質材料は、前記ヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有する前記難燃薬剤を含有していてもよく、該難燃薬剤を含有していなくてもよい。
【0016】
本発明の不燃性木質複合材料の製造方法において、前記難燃薬剤が含有する前記第1の化合物としては、リン酸、ホウ酸、ホスホン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、ホウ砂、ホウ酸ナトリウムからなる群から選択される1種類以上の化合物を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の不燃性木質複合材料の製造方法では、80~800kg/mの範囲の前記難燃薬剤を、前記第1の木質材料又は前記第2の木質材料に含侵させることが好ましい。前記第1の木質材料又は前記第2の木質材料に含侵させる前記難燃薬剤が80kg/m未満であるときには、該第1の木質材料又は該第2の木質材料に建築基準法における不燃材料とすることができないことがある。また、前記第1の木質材料又は前記第2の木質材料に含侵させる前記難燃薬剤が800kg/m超であるときには、前記接着剤層をゲル化させることができないことがある。
【0018】
また、本発明の不燃性木質複合材料の製造方法において、前記接着剤が含有する前記第2の化合物としては、フェノール樹脂又はレゾルシノール樹脂を挙げることができ、前記接着剤が含有する水性材料としては、水性高分子、水性エマルジョン、水性ラテックスからなる群から選択される1種類以上の水性材料を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の不燃性木質複合材料の構成を示す説明的断面図。
図2】実施例1の不燃性木質複合材料のコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフ。
図3】実施例2の不燃性木質複合材料のコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフ。
図4】実施例3の不燃性木質複合材料のコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフ。
図5】実施例4の不燃性木質複合材料のコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフ。
図6】実施例5の不燃性木質複合材料のコーンカロリーメータ試験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の不燃性木質複合材料1は、難燃薬剤を含有する第1の木質材料2と、基材3と、第1の木質材料2と基材3との間に介在する接着剤層4とを備える。
【0022】
第1の木質材料2は、2~4mmの厚さを備える無垢の板材であり、80~800kg/mの範囲の難燃薬剤が含浸されている。第1の木質材料2は、最も薄い部分が少なくとも2mmの厚さを備えていればよく、表面に凹凸を備えていてもよい。第1の木質材料2は、例えば3mm厚の板の表面に深さ1mm程度の溝加工や浮造り加工を施して、最薄部を2mm厚以上とする凹凸を付けることで無垢の木質感を表現することができる。
【0023】
前記難燃薬剤は、ヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有しており、該第1の化合物として、例えば、リン酸、ホウ酸、ホスホン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン、ホウ砂、ホウ酸ナトリウムからなる群から選択される1種類以上の化合物を挙げることができる。
【0024】
基材3は、繊維強化セメント板(スレート板)、ケイ酸カルシウム板(ケイカル板)、火山性ガラス繊維板等の無機物基材であってもよく、無垢の板材からなる第2の木質材料であってもよい。前記第2の木質材料は、80~800kg/mの範囲の前記難燃薬剤が含浸されていてもよく、全く含浸されていなくてもよい。
【0025】
前記第2の木質材料は、前記難燃薬剤が含浸されているときには、例えば、5~12mmの厚さを備えることが好ましい。また、前記第2の木質材料は、前記難燃薬剤が全く含浸されていないときには、例えば、12~24mmの厚さを備えることが好ましい。
【0026】
本実施形態の不燃性木質複合材料1は、難燃薬剤を含有する第1の木質材料2と、基材3とを、接着剤を用いて貼り合わせることにより製造することができる。具体的には、例えば、基材3としての前記無機物基材又は前記第2の木質材料に前記接着剤を塗布し、その上に第1の木質材料2を重ねて貼り合わせる。
【0027】
このとき、第1の木質材料2が含有する前記難燃薬剤はヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有する一方、接着剤層4を形成する前記接着剤はヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有している。この結果、前記難燃薬剤に含有される前記第1の化合物のヒドロキシ基と、前記接着剤に含有される前記第2の化合物のヒドロキシ基又は水性材料とが相互に作用して、前記接着剤をゲル化させることにより、強固な初期接着力が発現する。さらに、前記接着剤を硬化させて接着剤層4を形成することにより、第1の木質材料2と、基材3である前記無機物基材又は前記第2の木質材料との間で強固な接着強度を得ることができる。
【0028】
前記接着剤が含有する前記第2の化合物としては、例えば、フェノール樹脂又はレゾルシノール樹脂を挙げることができ、前記水性材料としては、例えば、水性高分子、水性エマルジョン、水性ラテックスからなる群から選択される1種類以上の水性材料を挙げることができる。
【0029】
前記フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとを反応させて得られるフェノール-ホルムアルデヒド共縮合樹脂である。前記フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等を挙げることができる。また、前記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等を挙げることができる。
【0030】
前記レゾルシノール樹脂としては、レゾルシノール又はフェノールとアルデヒドとをアルカリ触媒又は酸触媒の存在下で反応させて得られる樹脂、レゾルシノールとレゾルシノール以外のフェノール類とアルデヒドをアルカリ触媒又は酸触媒の存在下で反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0031】
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、アミノ化ポリビニルアルコール、カルボキシル化ポリビニルアルコール、カチオン化ポリビニルアルコール、アニオン化ポリビニルアルコール、澱粉、蛋白質、セルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、マレイン酸イミド共重合体、アルギン酸、ポリエチレンオキシド等を挙げることができる。前記セルロース誘導体としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0032】
前記水性エマルジョン又は水性ラテックスとしては、例えば、スチレン、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、1,3-ヘキサジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、イソブテン(2-メチルプロペン)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテルからなる群から選択される1種の不飽和単量体の水性ラテックス又は水性エマルジョンを挙げることができる。
【0033】
また、前記水性ラテックス又は水性エマルジョンは、例えば、スチレン、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、1,3-ヘキサジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、イソブテン(2-メチルプロペン)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテルからなる群から選択される1種の不飽和単量体であって、反応性基を備える不飽和単量体を乳化重合させた変性ラテックス又は変性エマルジョンであってもよい。前記反応性基としては、例えば、カルボキシル基、N-メチロール基、N-アルコキシメチル基、グリシジル基、β-メチルグリシジル基、水酸基、アミノ基、アミド基、酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種の反応性基を挙げることができる。
【0034】
また、前記水性ラテックス又は水性エマルジョンは、例えば、スチレン、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、1,3-ヘキサジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、イソブテン(2-メチルプロペン)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテルからなる群から選択される共重合可能な2種以上の不飽和単量体からなる共重合体の水性ラテックス又は水性エマルジョンであってもよい。
【0035】
さらに、前記水性ラテックス又は水性エマルジョンは、水中に添加攪拌することで容易に水性ラテックスまたは水性エマルジョンとなる固体の水性ラテックス又は水性エマルジョンであってもよい。
【0036】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例0037】
〔実施例1〕
本実施例では、厚さ3.6mmのスギ単板に、ヒドロキシ基を備える第1の化合物としてリン酸を含有するリン酸系化合物難燃薬剤(株式会社オーシカ製、商品名:TY-23)を360kg/m注入処理し、第1の木質材料を作製した。
【0038】
次に、基材3としての硫酸カルシウムを主成分とする材料からなる無機物基材(吉野石膏株式会社製、商品名:タイガーボード)を用い、基材3に接着剤を塗布し、その上に本実施例で作製した第1の木質材料2を貼り合わせ、0.4N/cmの圧力で60秒間圧締して、該接着剤を硬化させて接着剤層4を形成することにより本実施例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0039】
前記接着剤としては、ヒドロキシ基を備える第2の化合物としてポリビニルアルコールを、全量に対し10質量%含有する水性高分子イソシアネート樹脂接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:ピーアイボンドPI-5340)を用いた。
【0040】
次に、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、JIS K 6853-1994に準じて初期接着力を測定し、合板の日本農林規格の特殊加工化粧合板の「オーバーレイ層の接着の程度」に規定される平面引張試験により硬化後の接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
また、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、ISO 5660-1:2002に準拠するコーンカロリーメータ試験により発熱性試験を行った。結果を図1及び表1に示す。
【0042】
〔実施例2〕
本実施例では、基材3として厚さ15mmのスギ合板を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0043】
次に、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力及び硬化後の接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
また、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、発熱性試験を行った。結果を図2及び表1に示す。
【0045】
〔実施例3〕
本実施例では、厚さ2.0mmのヒノキ単板に、ヒドロキシ基を備える第1の化合物としてホスホン酸を含有するホスホン酸系化合物難燃薬剤(株式会社オーシカ製、商品名:TY-19)を450kg/m注入処理し、第1の木質材料を作製した。
【0046】
次に、基材3としてのガラス質堆積物質と鉱物繊維とを主成分とする材料からなる無機物基材(大建工業株式会社製、商品名:ダイライト)を用い、基材3に接着剤を塗布し、その上に本実施例で作製した第1の木質材料2を貼り合わせ、0.4N/cmの圧力で60秒間圧締して、該接着剤を硬化させて接着剤層4を形成することにより本実施例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0047】
前記接着剤としては、ヒドロキシ基を備える第2の化合物としてアセトアセチル化ポリビニルアルコールを、全量に対し2質量%含有する酢酸ビニル樹脂接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:シンコーボンドTA-488)を用いた。
【0048】
次に、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力及び硬化後の接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
また、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、発熱性試験を行った。結果を図3及び表1に示す。
【0050】
〔実施例4〕
本実施例では、厚さ2.0mmのヒノキ単板に、ヒドロキシ基を備える第1の化合物としてホウ砂とホウ酸ナトリウムとを含有する難燃薬剤(株式会社オーシカ製、商品名:TX-496)を200kg/m注入処理し、第1の木質材料を作製した。
【0051】
次に、基材3としての厚さ15mmのカラマツ合板を用い、基材3に接着剤を塗布し、その上に本実施例で作製した第1の木質材料2を貼り合わせ、0.4N/cmの圧力で60秒間圧締して、該接着剤を硬化させて接着剤層4を形成することにより本実施例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0052】
前記接着剤としては、ヒドロキシ基を備える第2の化合物としてレゾルシノール・フェノール共縮合樹脂を、全量に対し60質量%含有するレゾルシノール・フェノール共縮合樹脂接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:ディアノールD-90)を用いた。
【0053】
次に、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力及び硬化後の接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
また、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、発熱性試験を行った。結果を図4及び表1に示す。
【0055】
〔実施例5〕
本実施例では、基材3として厚さ9mmのスギ合板に、ヒドロキシ基を備える第1の化合物としてリン酸を含有するリン酸系化合物難燃薬剤(株式会社オーシカ製、商品名:TY-23)を420kg/m注入処理した基材3を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本実施例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0056】
次に、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力及び硬化後の接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
また、本実施例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、発熱性試験を行った。結果を図5及び表1に示す。
【0058】
〔比較例1〕
本比較例では、接着剤として、ヒドロキシ基を備える第2の化合物を全く含有しないウレタン樹脂接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:オーシカダインTU-541)を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、本比較例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0059】
次に、本比較例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
また、本比較例で得られた不燃性木質複合材料1は、製造後、時間経過とともに剥離が起き、硬化後の接着力及び発熱性については測定することができなかった。結果を表1に示す。
【0061】
〔比較例2〕
本比較例では、接着剤として、ヒドロキシ基を備える第2の化合物を全く含有しないエポキシ樹脂接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:オーシカダインTE-216)を用いた以外は、実施例3と全く同一にして、本比較例の不燃性木質複合材料1を製造した。
【0062】
次に、本比較例で得られた不燃性木質複合材料1について、実施例1と全く同一にして、初期接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
また、本比較例で得られた不燃性木質複合材料1は、製造後、時間経過とともに剥離が起き、硬化後の接着力及び発熱性については測定することができなかった。結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から、2~4mmの範囲の厚さを備え、ヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有する難燃薬剤が含浸された第1の木質材料2と、基材3としての無機物基材又は第2の木質材料とを、ヒドロキシ基を備える第2の化合物又は水性材料を含有する接着剤を用いて貼り合わせてなる実施例1~5の不燃性木質複合材料1によれば、第1の木質材料2と、基材3とが強固に接着されており、建築基準法における不燃材料又は準不燃材料に該当するものとすることができることが明らかである。
【0066】
一方、2~4mmの範囲の厚さを備え、ヒドロキシ基を備える第1の化合物を含有する難燃薬剤が含浸された第1の木質材料2と、基材3としての無機物基材とを、ヒドロキシ基を備える第2の化合物を全く含まない接着剤を用いて貼り合わせてなる比較例1~2の不燃性木質複合材料1では、初期接着力に乏しく、製造後、時間経過とともに剥離が起きて、十分な接着強度を得ることができないことが明らかである。
【符号の説明】
【0067】
1…不燃性木質複合材料、 2…第1の木質材料、 3…基材、 4…接着剤層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6