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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073890
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054658
(22)【出願日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2020182922
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598106326
【氏名又は名称】トヨタ車体精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 貴行
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 宏昭
(72)【発明者】
【氏名】袴田 恭平
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB02
3B087BC05
3B087BC16
(57)【要約】
【課題】一対のアッパレールのレバーと連結棒を連結し易い構造のシートスライド装置を提供する。
【解決手段】連結棒には係合ピンが設けられており、レバーには係合ピンが係合する第1係合孔が設けられている。留め具が連結棒(係合ピン)とレバー(第1係合孔)の連結状態を保持する。連結棒には、留め具を回転可能に支持する多角形状の第2係合孔が設けられている。留め具は、隙間を隔てて第1方向に延びており第2係合孔に圧入される一対のツメを有しているとともに、回転方向の第1位置にて係合ピンの挿脱を許容し第2位置にて係合ピンを抜け止めする。留め具が第1位置にあるとき、一対のツメの並び方向が、第2係合孔の中心と多角形のいずれかの角を通る方向に一致する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付け可能であり、第1方向に延びているとともに前記第1方向に直交する第2方向で並んで配置される一対のロアレールと、
シートに取り付け可能であり、一対の前記ロアレールのそれぞれに対してスライド可能に係合している一対のアッパレールであって、それぞれのアッパレールは、前記第2方向に回動するレバーを備えているアッパレールと、
前記一対のアッパレールのそれぞれの前記レバーと連結されるとともに前記第2方向に伸縮する連結棒と、
それぞれの前記レバーと前記連結棒の連結状態を保持する一対の留め具と、
を備えており、
前記連結棒と前記レバーの一方を第1部品、他方を第2部品と称したときに、
前記第1部品と前記第2部品の一方に前記第1方向に延びる係合ピンが設けられており、他方に前記係合ピンが通過する第1係合孔が設けられており、
前記第1部品は、前記留め具を回転可能に支持する第2係合孔であって、多角形の、または、切欠きを有する第2係合孔を有しており、
前記留め具は、隙間を隔てて前記第1方向に延びており前記第2係合孔に圧入される一対のツメを有しているとともに、回転方向の第1位置にて前記係合ピンの挿脱を許容し第2位置にて前記係合ピンを抜け止めし、
前記第2係合孔が多角形の場合、前記留め具が前記第1位置にあるとき、一対の前記ツメの並び方向が、前記第2係合孔の中心と多角形のいずれかの角を通る方向に一致する、または、
前記第2係合孔が切欠を有する孔の場合、前記留め具が前記第1位置にあるとき、一対の前記ツメの並び方向が、前記第2係合孔の中心と前記切欠を通る方向に一致する、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記連結棒に前記係合ピンと前記第2係合孔が設けられており、
前記レバーに前記第1係合孔が設けられており、
前記留め具は、
前記ツメを支えており、前記連結棒の前記係合ピンとは反対側に位置する支持板と、
前記第2位置にて前記支持板との間に前記連結棒と前記レバーを挟み込む補助板と、
前記補助板から前記第1方向に延びており、前記第2位置にて前記係合ピンを挟み込むスリット付き筒部と、
を備えている、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記留め具は、前記支持板と前記補助板を連結しており、前記第2位置にて前記連結棒の先端と前記レバーの先端を覆うカバーをさらに備えている、請求項2に記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記補助板の前記ツメに近い部位が、前記第1方向からみたときに前記第1位置から前記第2位置までの前記留め具の回転範囲内にて常に前記連結棒と重なる、請求項2または3に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記連結棒に前記係合ピンが設けられており、
前記レバーに前記第1係合孔が設けられているとともに前記第1係合孔が前記第2係合孔を兼ねており、
前記留め具は、
一対の前記ツメを支えており、前記レバーと前記連結棒の間に配置されている支持板であって、前記隙間に対応する位置に前記係合ピンが通過する貫通孔を有している支持板と、
前記支持板から延びており、前記第2位置にて前記連結棒を前記第1方向で挟み込み、前記第1位置にて前記連結棒から離間するコの字部材と、
を備えており、
一対の前記ツメの先端部の並び方向の外寸が前記第1係合孔の直径よりも大きく、一対の前記ツメは、前記先端部が前記第1係合孔を通過できるほどに互いに前記隙間の側に撓むことが可能であり、
前記第1係合孔に挿通された前記留め具の前記隙間に前記係合ピンが入ると前記先端部が前記隙間側へ撓むことができなくなって前記先端部が前記第1係合孔に抜け止めされる、請求項1に記載のシートスライド装置。
【請求項6】
前記係合ピンの側面に補助突起または補助溝が設けられており、
一対の前記ツメの対向する面に前記補助突起と嵌合する対応溝、または、前記補助溝に嵌合する対応突起が設けられており、
前記係合孔に挿通された前記留め具の前記隙間に前記係合ピンが入ると前記先端部が前記隙間側へ撓むことができなくなるとともに、前記補助突起に前記対応溝が嵌合する、または、前記補助溝に前記対応突起が嵌合する、請求項5に記載のシートスライド装置。
【請求項7】
前記留め具は、前記第1方向に変位可能な当接片を有しており、
前記留め具が前記第2位置にあるときに、前記第1部品と前記第2部品のうち前記係合ピンを有する部品と前記当接片が、前記第1部品と前記第2部品のうち前記第1係合孔を有する部品を挟み込むとともに前記当接片が変位する、請求項1から6のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項8】
前記第1部品と前記第2部品のうち前記第1係合孔を有する部品が窪みを有しており、
前記留め具が前記第2位置にあるときに、前記当接片が前記窪みに嵌る、請求項7に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、自動車のシートを車体に対して移動させるシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に対してシートをスライドさせるシートスライド装置が知られている。シートスライド装置は、車体に取り付け可能な一対のロアレールと、シートに取り付け可能であり、それぞれのロアレールに対してスライド可能に係合している一対のアッパレールを備えている(例えば特許文献1)。特許文献1のシートスライド装置の夫々のアッパレールは、ロアレールの並び方向に回動するレバーを備えており、一対のレバーは連結棒で連結されている。レバーはロアレールに対してアッパレールをロック/アンロックするロックレバーである。連結棒はロアレールの並び方向に伸縮する。連結棒が伸縮することで、一対のロックレバーは同時に回動し、一対のアッパレールは同期してロック/アンロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6263375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシートスライド装置では、レバーと連結棒のそれぞれに係合孔が設けられており、係合孔に係合ピンと称する部品が挿通されて連結される。レバーと連結棒を組み立てる際、レバーの係合孔と連結棒の係合孔を位置合わせした後に係合ピンが挿通される。次いで、係合ピンを抜け止めする部品が係合ピンに取り付けられる。この作業では、レバー、連結棒、係合ピン、抜け止め部品の夫々を位置決めしなければならない。本明細書は、一対のアッパレールのレバーと連結棒を連結し易い構造のシートスライド装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するシートスライド装置は、車体に取り付け可能な一対のロアレールと、シートに取り付け可能であり、それぞれのロアレールに対してスライド可能に係合している一対のアッパレールと、連結棒と、一対の留め具を備える。説明の便宜上、ロアレールの長手方向を第1方向と称し、一対のロアレールの並び方向を第2方向と称する。それぞれのアッパレールは、前記第2方向に回動するレバーを備えている。連結棒は、一対のアッパレールのそれぞれのレバーと連結されるとともに第2方向に伸縮する。一対の留め具のそれぞれは、連結棒とそれぞれのレバーの連結状態を保持する。
【0006】
説明の便宜上、連結棒とレバーの一方を第1部品、他方を第2部品と称する。第1部品と第2部品の一方に第1方向に延びる係合ピンが設けられており、他方に係合ピンが通過する第1係合孔が設けられている。第1部品は、留め具を回転可能に支持する第2係合孔を有している。第2係合孔は、多角形の孔であるか、あるいは、孔の縁に切欠が設けられている孔である。
【0007】
留め具は、隙間を隔てて第1方向に延びており第2係合孔に圧入される一対のツメを有しているとともに、回転方向の第1位置にて係合ピンの挿脱を許容し第2位置にて係合ピンを抜け止めする。
【0008】
第2係合孔が多角形孔の場合、留め具が第1位置にあるとき、一対のツメの並び方向が、第2係合孔の中心と、多角形のいずれかの角を通る方向に一致する。第2係合孔が縁に切欠を有する孔の場合、留め具が第1位置にあるとき、一対のツメの並び方向が第2係合孔の中心と切欠を通る方向に一致する。
【0009】
本明細書が開示するシートスライド装置では、レバーと連結棒を連結する前に留め具が第1部品に回転可能に支持されている。第1部品の位置が定まれば留め具の位置も定まる。留め具を個別に位置決めする必要がない。留め具は、回転方向の第1位置にて係合ピンの第1係合孔への挿脱を許容する。留め具を第1位置に保持しておけば、係合ピンを第1係合孔へ挿通することができる。留め具を回転方向の第2位置へ回すと、係合ピンが第1係合孔に抜け止めされる。すなわち、留め具は連結棒とレバーの連結状態を保持する。
【0010】
留め具は、一対のツメを備えている。一対のツメは、第2係合孔に圧入される。第2係合孔が多角形孔の場合、圧入された一対のツメの並び方向が多角形孔の中心と角を通る方向に一致したとき、圧入された一対のツメは復元力により外側に拡がる。外側に拡がったツメは多角形孔の角に引っ掛かり、留め具は第1位置に保持される。
【0011】
第2係合孔が切欠を有する孔の場合、圧入された一対のツメの並び方向が第2係合孔の中心と切欠を通る方向に一致したとき、圧入された一対のツメは復元力により外側に拡がる。留め具が第1位置にあるとき、外側に拡がった一方のツメが切欠に嵌り、留め具は第1位置に保持される。
【0012】
一対のツメを有する留め具は、第1位置に保持されるから、係合ピンを第1係合孔に挿通するときに留め具が第2位置へ回転してしまうことがない。この留め具により、連結棒とレバーの組み立て作業(連結作業)が容易になる。
【0013】
本明細書が開示するシートスライド装置の一態様は次の通りである。連結棒に係合ピンと第2係合孔が設けられており、レバーに第1係合孔が設けられている。留め具は、支持板と補助板とスリット付き筒部を備える。支持板は、連結棒の係合ピンとは反対側に位置するとともにツメを支えている。補助板は、第2位置にて支持板との間に連結棒とレバーを挟み込む。スリット付き筒部は補助板から第1方向に延びており、第2位置にて係合ピンを挟み込む。留め具を第1位置から第2位置へ回転させると、スリットを通して係合ピンが筒部に嵌り、留め具が第2位置に固定される。
【0014】
留め具は、支持板と補助板を連結しており、第2位置にて連結棒の先端とレバーの先端を覆うカバーを備えていてもよい。カバーは、ユーザの手が連結棒やレバーの先端に触れてしまうことを防止する。
【0015】
補助板のツメに近い部位が、第1方向からみたときに第1位置から第2位置までの留め具の回転範囲内にて常に連結棒と重なっているとよい。支持板と補助板が常に連結棒を挟むことになり、留め具が連結棒から外れ難くなる。
【0016】
本明細書が開示するシートスライド装置の別の一態様は次の通りである。連結棒に係合ピンが設けられている。レバーに第1係合孔が設けられているとともに第1係合孔が第2係合孔を兼ねている。留め具は、支持板とコの字部材を備えている。支持板は、レバーと連結棒の間に配置されており、一対のツメを支えている。支持板は、一対のツメの間の隙間に対応する位置に係合ピンが通過する貫通孔を有している。コの字部材は、支持板から延びており、第2位置にて連結棒を第1方向で挟み込み、第1位置にて連結棒から離間する。一対のツメの先端部の並び方向の外寸(ツメの並び方向において一方のツメの外側端から他方のツメの外側端までの長さ)が係合孔の直径よりも大きく、一対のツメは、先端部が係合孔を通過できるほどに互いに隙間の側に撓むことが可能である。第1係合孔に挿通された留め具の隙間に係合ピンが入ると先端部が隙間側へ撓むことができなくなって先端部が第1係合孔(すなわち第2係合孔)に抜け止めされる。
【0017】
上記のシートスライド装置では、第1係合孔が第2係合孔を兼ねているので構造が簡単になる。また、一対のツメが第2係合孔(第1係合孔)に挿通された後、一対のツメの間の隙間に係合ピンを入れると留め具の先端が第2係合孔(第1係合孔)に抜け止めされる。
【0018】
係合ピンの側面に補助突起または補助溝が設けられており、一対のツメの対向する面に補助突起と嵌合する対応溝、または、補助溝に嵌合する対応突起が設けられているとよい。係合孔に挿通された留め具の隙間に係合ピンが入ると先端部が隙間側へ撓むことができなくなるとともに、補助突起に対応溝が嵌合する、または、補助溝に対応突起が嵌合する。補助突起(または補助溝)に対応溝(または対応突起)が嵌合することで、留め具が一層外れ難くなる。
【0019】
留め具は、第1方向に変位可能な当接片を有していてもよい。そして、留め具が第2位置にあるときに、第1部品と第2部品のうち係合ピンを有する部品(例えば連結棒)と当接片が、第1部品と第2部品のうち第1係合孔を有する部品(例えばレバー)を挟み込むとともに当接片が変位するように構成されていてもよい。連結棒と当接片(留め具)がレバーを挟み込むことで、レバーのがたつきが抑えられる。
【0020】
第1部品と第2部品のうち第1係合孔を有する部品(例えばレバー)が窪みを有しており、留め具が第2位置にあるときに、当接片が窪みに嵌るように構成してもよい。当接片(留め具)が窪み(レバー)から外れ難くなる。
【0021】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例のシートスライド装置の斜視図である。
図2図1の範囲IIの拡大図である(留め具が第2位置にあるとき)。
図3図1の範囲IIの拡大図である(留め具が第1位置にあるとき)。
図4】範囲IIにおける分解斜視図である。
図5】レバーと連結棒と留め具の正面図である。
図6】変形例の留め具の周辺の斜視図である(第1位置)。
図7】変形例の留め具の周辺の斜視図である(第2位置)。
図8】変形例の留め具の周辺の分解斜視図である。
図9】一対のツメと係合ピンの挿通過程を説明する図である。
図10】留め具のさらなる変形例を示す分解斜視図である。
図11】係合ピンの変形例を示す断面図である。
図12】係合ピンの別の変形例を示す断面図である。
図13】第2係合孔の変形例の図である。
図14】別の変形例の留め具の周辺の斜視図である(第2位置)。
図15】別の変形例の留め具の周辺の正面図である(第2位置)。
図16図15のXV-XV線に沿った断面図である。
図17】第2位置における留め具とロックレバーの断面図である(さらに別の変形例のシートスライド装置)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例)図面を参照して実施例のシートスライド装置2を説明する。図1に、シートスライド装置2の斜視図を示す。シートスライド装置2は、一対のロアレール3a、3b、一対のアッパレール4a、4b、連結棒20を備える。一対のロアレール3a、3bは、車体に取り付けられ、一対のアッパレール4a、4bはシートに取り付けられる。図1では車体とシートは図示を省略した。アッパレール4a(4b)は、ロアレール3a(3b)にスライド可能に取り付けられる。
【0024】
ロアレール3a、3b、アッパレール4a、4bは長尺である。図中の座標系のX方向がロアレール3a、3bの長手方向に相当する。アッパレール4a、4bは、レール長手方向(X方向)にスライドする。一対のロアレール3a、3bは、図中の座標系のY方向に並んで配置される。別言すれば、Y方向は、一対のロアレール3a、3bの並び方向に相当する。図中の座標系の+Z方向が上に相当する。
【0025】
アッパレール4aの上面に支持金具5が取り付けられており、その支持金具5にロックレバー6が回動可能に取り付けられている。ロックレバー6は、Y方向に回動可能であり、ロックレバー6が+Y方向(あるいは-Y方向)に回動すると、アッパレール4aがロアレール3aに対してロックする。ロックレバー6が逆方向に回動すると、アッパレール4aがロアレール3aに対してアンロックする。ここで、「ロック」とは、ロアレール3aに対してアッパレール4aが固定されることを意味し、「アンロック」とは、ロックが解除され、アッパレール4aがロアレール3aに対してスライド可能になることを意味する。ロック/アンロックの機構の詳細については従来から知られているので説明を割愛する。
【0026】
アッパレール4bも同様に支持金具5とロックレバー6を備えている。ただし、アッパレール4bの支持金具5とロックレバー6は、X軸に対してアッパレール4aの支持金具5とロックレバー6とは線対称に配置されている。アッパレール4aのロックレバー6は+Y方向に回動するとアッパレール4aのロックが解除されるのに対して、アッパレール4bのロックレバー6は-Y方向に回動するとアッパレール4bのロックが解除される。
【0027】
アッパレール4aのロックレバー6とアッパレール4bのロックレバー6は連結棒20で連結されている。連結棒20の一端にアッパレール4aのロックレバー6が連結されており、他端にアッパレール4bのロックレバー6が連結されている。
【0028】
連結棒20は、第1連結棒21と第2連結棒22とスプリング23を備えている。第1連結棒21と第2連結棒22は、互いにY方向にスライド可能に連結しているとともに、スプリング23でも連結されている。第1連結棒21の後端21aは-X方向に屈曲しており、第2連結棒22の後端22aは+X方向に屈曲している。後端21a、22aは不図示のハンドルに連結されている。シートに着座したユーザが不図示のハンドルを操作すると、後端21a、22aは、互いに離れる方向に移動し、連結棒20がY方向に短縮する。連結棒20が短縮すると、アッパレール4aのロックレバー6は+Y方向に回動し、アッパレール4bのロックレバー6は-Y方向に回動し、一対のアッパレール4a、4bのロックが解除される。
【0029】
ユーザがハンドルを離すと、スプリング23の復元力により連結棒20が伸張し、アッパレール4aのロックレバー6は-Y方向に回動し、アッパレール4bのロックレバー6は+Y方向に回動し、アッパレール4a、4bがロアレール3a、3bに対してロックされる。すなわち、連結棒20はY方向に伸縮し、連結棒20の伸縮に伴って一対のロックレバー6が互いに逆方向に回動し、アッパレール4a、4bがロアレール3a、3bに対してロック/アンロックする。後端21a、22aとハンドルとの連結構造については説明を割愛する。
【0030】
ロックレバー6と連結棒20は留め具10で連結されている。別言すれば、留め具10は、ロックレバー6と連結棒20の連結状態を保持する。図1の範囲II、すなわち、留め具10の近傍の拡大図を図2に示す。留め具10は、連結棒20に設けられた第2係合孔25を軸に回転することができる。図2は、留め具10がロックレバー6と連結棒20の連結状態を保持している状態である。図3は、第2係合孔25を軸にして留め具10が回転し、留め具10が連結棒20のロックレバー6からの離脱を許容する状態を示している。なお、アッパレール4bの側の構造もアッパレール4aの側の構造と同じである。以下ではアッパレール4aの側の構造についてのみ説明する。
【0031】
図4に、範囲IIに含まれる部品の分解斜視図を示す。図4ではロアレール3aとアッパレール4aの図示は省略した。連結棒20には、X方向に延びる係合ピン24が設けられており、ロックレバー6には係合ピン24が通過する第1係合孔6aが設けられている。係合ピン24が第1係合孔6aに挿通された後、留め具10が連結棒20とロックレバー6のX方向の動きを拘束し(係合ピン24が第1係合孔6aに抜け止めされ)、連結棒20とロックレバー6の連結を保持する。図2図4から理解されるように、留め具10は連結棒20に回転可能に支持されており、留め具10は、図3の位置(第1位置)にあるとき、係合ピン24の第1係合孔6aへの挿脱を許容する。留め具10は、図2の位置(第2位置)にあるとき、係合ピン24を抜け止めし、連結棒20とロックレバー6の連結状態を保持する。「第1位置」、「第2位置」は、第2係合孔25を軸とした留め具10の回転方向の位置を意味する。
【0032】
図4に示すように、留め具10は、支持板11、補助板13、カバー15、一対のツメ12、スリット付き筒部14を備える。なお、支持板11、補助板13、カバー15、一対のツメ12、スリット付き筒部14は、樹脂で一体に作られているが、説明の都合上、留め具10を複数の部品に分割して説明する。図4では、支持板11に一体化している補助板、スリット付き筒部、カバーを、仮想線13a、14a、15aで描いてある。
【0033】
支持板11は、連結棒20の係合ピン24とは反対側に位置する。一対のツメ12が、支持板11に取り付けられている。一対のツメ12は、隙間Wを隔てつつ、X方向に延びている。一対のツメ12は、連結棒20に設けられた第2係合孔25に圧入される。
【0034】
補助板13は、カバー15を介して支持板11に連結される。補助板13は支持板11に対向している。図2に示されているように、留め具10の第2位置にて、補助板13と支持板11は連結棒20とロックレバー6を挟み、連結棒20とロックレバー6のX方向の位置を拘束し、連結棒20とロックレバー6の連結状態を保持する。
【0035】
スリット付き筒部14は、補助板13に設けられている。スリット付き筒部14は、X方向に延びている。図2図3から理解されるように、留め具10を第1位置から第2位置へ移動させると、スリットを通して係合ピン24がスリット付き筒部14の内側に入り込み(別言すればスリット付き筒部14が係合ピン24を挟み込み)、留め具10が第2位置にしっかりと固定される。なお、図ではよくみえないが、補助板13には、スリット付き筒部14の内側の空間に対応するように切欠が設けられており、その切欠に係合ピン24が嵌る。
【0036】
また、図2図3から理解されるように、カバー15は、連結棒20の先端とロックレバー6の上端を覆う。カバー15を含む留め具10は樹脂で作られており、金属で作られている連結棒20とロックレバー6の先端(上端)を樹脂のカバー15が覆うことで、ユーザの手が連結棒20とロックレバー6の先端(上端)に触れることを防止する。
【0037】
一対のツメ12のそれぞれは、先端部12aと、先端部12aと支持板11の間の基部12bを有している。先に述べたように、一対のツメ12は連結棒20に設けられている第2係合孔25に圧入される。一対のツメ12の先端部12aの並び方向の外寸は第2係合孔25の内径よりも大きい。ここで、外寸とは、並び方向において一方のツメ12の先端部12aの外側端から他方のツメ12の先端部12aの外側端までの長さを意味する。一対のツメ12を第2係合孔25に押し込むと、一対のツメ12は互いに内側(隙間Wの側)に撓み、一対のツメ12は第2係合孔25に入る。基部12bは先端部12aよりも細く、一対のツメ12の基部12bの外寸は一対のツメ12の先端部12aの外寸よりも短い。それゆえ、基部12bが第2係合孔25に係止されると、留め具10は第2係合孔25から抜け難くなる。
【0038】
図5に、ロックレバー6と連結棒20の連結状態を保持する留め具10の正面図を示す。実線で描かれた留め具10aは第2位置にある留め具10を示しており、2点鎖線で描かれた留め具10bは第1位置にある留め具10を示している。図5の破線範囲Aの拡大図を図5の下側の(a)に示す。図5の(a)、(b)、(c)は、ZY平面に平行な平面で連結棒20をカットした断面を示している。図5の(a)、(b)、(c)では、一対のツメ12の基部12bの断面が見えている。
【0039】
図5の(a)は、留め具10が第2位置にあるときの一対のツメ12の基部12bの位置を示しており、(c)は留め具10が第1位置にあるときの一対のツメ12の基部12bの位置を示している。図5の(b)は、第2位置(第1位置)から第1位置(第2位置)へ移動する途中の一対のツメ12の基部12bの位置を示している。
【0040】
多角形の第2係合孔25の内径Dは、多角形の対角方向でD2であり、2辺が対向する方向でD1であり、内径D2は内径D1よりも大きい。留め具10が第1位置(図5(c))あるいは第2位置(図5(a))にあるとき、一対の基部12b(一対のツメ12)の並び方向は、第2係合孔25の多角形の対角方向に一致する。図5の(a)、(b)、(c)から理解されるように、留め具10が第1位置からずれると(あるいは第2位置からずれると)、一対の基部12b(一対のツメ12)の並び方向における第2係合孔25の内径が短くなる。第2係合孔25に圧入されている一対のツメ12は、内側(隙間Wの側)に撓むように力を受けている。別言すれば、一対のツメ12は並び方向の外側に向かう復元力を有している。この復元力により、留め具10は、一対のツメ12の並び方向が内径の大きい対角方向に一致する位置(即ち、第1位置あるいは第2位置)に保持される。それゆえ、係合ピン24を第1係合孔6aに挿通する際、第1位置にある留め具10が回転して挿通の邪魔をすることがない。
【0041】
連結棒20とロックレバー6の組み立て作業の手順は次の通りである。連結棒20の係合ピン24をロックレバー6の第1係合孔6aに挿通する前、留め具10を第1位置に合わせる。先に述べたように、多角形の第2係合孔25に挿通された一対のツメ12の外側への復元力により留め具10は第1位置に保持される。連結棒20とロックレバー6を連結し、すなわち、係合ピン24を第1係合孔6aに挿通し、留め具10を第1位置から第2位置へ回転させる。留め具10の支持板11と補助板13が連結棒20とロックレバー6を挟み込み、両者のX方向の動きを拘束する。すなわち、連結棒20とロックレバー6の連結状態が保持される。
【0042】
留め具10は連結棒20に支持されているので、連結棒20の係合ピン24をロックレバー6の第1係合孔6aに挿通すると、留め具10も適切な位置に配置される。留め具10だけを単独で位置合わせする必要がない。
【0043】
また、第2位置では補助板13に設けられたスリット付き筒部14が係合ピン24を挟み込む。この構造によって、留め具10は第2位置にしっかりと保持される。さらに、カバー15が連結棒20の先端とロックレバー6の上端を覆うことで、ユーザの手が金属製の連結棒20の先端やロックレバー6の上端に触れることを防止する。
【0044】
図5の破線Rは、留め具10を回転させたときの補助板13の第2係合孔25に近い部位13aの軌跡を示している。補助板13の部位13a(図5にてグレーで示した部位)は、X方向からみたとき、第1位置から第2位置までの留め具10の回転範囲において常に連結棒20と重なる。別言すれば、第1位置から第2位置までの留め具10の回転範囲において、連結棒20は常に支持板11と補助板13に挟まれている。この構造により、留め具10は、ロックレバー6と連結する前の連結棒20からも外れ難くなる。
【0045】
先に述べたように、留め具10は樹脂で作られている。留め具10を連結棒20に取り付けるときには補助板13の部位13aをまくり上げることで、X方向に沿ってツメ12を第2係合孔25に押し入れることができるようになる。
【0046】
一対のツメ12の外側への復元力により留め具10が第1位置に保持される効果は、第1位置にて、一対のツメ12の並び方向が、第2係合孔25の中心と、いずれかの角(多角形孔の角)とを結ぶ線に一致していればよい。好ましくは、第1位置にて、一対のツメ12の並び方向が、第2係合孔25の多角形の対角方向に一致しているとよい。
【0047】
(変形例)次に、変形例の留め具110を用いたシートスライド装置について説明する。図6図7に、変形例の留め具110の周辺の拡大図を示し、図8に分解斜視図を示す。図6は実施例の図3に対応し、図7は実施例の図2に対応し、図8は実施例の図4に対応する。実施例のロックレバー6、連結棒20、留め具10、一対のツメ12、第1係合孔6a、第2係合孔25は、それぞれ、変形例のロックレバー106、連結棒120、留め具110、一対のツメ112、第1係合孔106a、第2係合孔125に対応する。図6は、留め具110が回転方向の第1位置にある場合を示しており、図7は、留め具110が回転方向の第2位置にある場合を示している。留め具110は第1位置にあるとき、連結棒120の係合ピン24の第1係合孔106aへの挿脱を許容し、留め具110が第2位置にあるときには、係合ピン24を第1係合孔106aから抜け止めする。
【0048】
この変形例では、係合ピン24は連結棒120に設けられており、第2係合孔125はロックレバー106に設けられている。ロックレバー106には第1係合孔106aも設けられている。第1係合孔106aは第2係合孔125を兼ねている。第1係合孔106aが第2係合孔125でもある。
【0049】
留め具110は、支持板111と、一対のツメ112と、コの字部材113を備えている。支持板111は、連結棒120とロックレバー106の間に配置される。支持板111は、一対のツメ112を支持している。一対のツメ112は、隙間Wを隔てつつ、X方向に延びている。支持板111は、一対のツメ112の隙間Wに対応する位置に貫通孔115を備えている(図8参照)。連結棒120の係合ピン24が貫通孔115を通過すると、一対のツメ112の間(隙間W)に位置する。
【0050】
コの字部材113は、支持板111から延びている。コの字部材113は、留め具110の回転方向の第1位置にて連結棒120から離間し(図6)、連結棒120はX方向に自由に移動できるようになる。すなわち、留め具110が第1位置にあるとき、係合ピン24の第1係合孔106aへの挿脱が許容される。留め具110が第2位置にあると、コの字部材113は連結棒120をX方向で挟み込み、連結棒120はX方向で拘束される(図7)。このとき、留め具110は係合ピン24を第1係合孔106aから抜け止めする。すなわち、留め具110は、連結棒120とロックレバー106の連結状態を保持する。
【0051】
一対のツメ112の先端部112aの並び方向の外寸Waは、第2係合孔125(第1係合孔106a)の直径Daよりも大きい(図8参照)。先に述べたように、外寸Waは、ツメ112の並び方向において一方のツメ112の先端部112aの外端から他方のツメ112の先端部112aの外端までの長さを意味する。一対のツメ112は、第2係合孔125に圧入される。図9に、一対のツメ112と係合ピン24の挿通過程を示す。図9(A)-(D)は、ロックレバー106、留め具110の支持板111とツメ112、連結棒120と係合ピン24の断面を示している。図9(A)は一対のツメ112の第2係合孔125への挿通前の断面を示しており、図9(B)は一対のツメ112を第2係合孔125へ挿通する途中の断面を示している。図9(C)は一対のツメ112を第2係合孔125に挿通し終えた断面を示しており、図9(D)は、一対のツメ112の間に係合ピン24が挿通された状態の断面を示している。図9(D)は、係合ピン24が第1係合孔106aに挿通された状態でもある。
【0052】
先に述べたように、一対のツメ112の先端部112aの並び方向の外寸Waは、第2係合孔125の内径Daよりも大きい(図8図9(A)参照)。一対のツメ112は、先端部112aが第2係合孔125を通過できるほどに互いに隙間Wの側に撓むことが可能である。図9(B)は、一対のツメ112が第2係合孔125に押し込まれ、隙間Wの側に撓んだ状態を示している。図9(B)の状態から一対のツメ112をさらに第2係合孔125に押し込むと、先端部112aが第2係合孔125を通過し、基部112bが第2係合孔125に係止される(図9(C)参照)。
【0053】
次いで、係合ピン24を第1係合孔106a(すなわち第2係合孔125)に押し込む(図9(D))。支持板111には、隙間Wに対応する位置に貫通孔115が設けられており、係合ピン24は、貫通孔115と隙間Wを通り、第1係合孔106aに挿通される。一対のツメ112の隙間Wに係合ピン24が入ると先端部112aが隙間Wの側へ撓むことができなくなり、ツメ112の先端部112aが第2係合孔125(第1係合孔106a)に抜け止めされる。
【0054】
図8に示されているように、第2係合孔125は多角形をなしている。多角形の第2係合孔125と一対のツメ112の関係は、実施例の第2係合孔25と一対のツメ12の関係(図5)と同じである。すなわち、留め具110が第1位置にあるとき、一対のツメ112の並び方向が、第2係合孔125の中心と多角形のいずれかの角を通る方向に一致する。この構造により、留め具110は第1位置に保持される。変形例の留め具110を用いた場合でも、ロックレバー106を連結棒120に組み付ける際に留め具110が回転してしまうことがない。多角形の第2係合孔125に一対のツメ112が挿通される構造は、連結棒120とロックレバー106を組み立てる作業を容易にする。
【0055】
なお、図9(D)に示すように、係合ピン24を第1係合孔106aに挿通した後、一対のツメ112と係合ピン24の間にはクリアランスCrが確保される。留め具110を回転させるとき、一対のツメ112は多角形の第2係合孔125の中で回転し、内径の小さい箇所を通過する際に隙間Wの側にわずかに撓む。クリアランスCrは、一対のツメ112が内径の小さい箇所を通過するときの撓みを許容する。
【0056】
図10に、留め具110のさらなる変形例の分解斜視図を示す。この変形例では、留め具110のコの字部材113の内側にツメ116が設けられている。また、連結棒120に孔121が設けられている。留め具120が第1位置から第2位置へ移動すると、コの字部材113は連結棒120を挟み込む。このとき、コの字部材113の内側のツメ116が連結棒120の孔121に嵌り、留め具120が連結棒120から外れ難くなる。
【0057】
ツメ116と孔121の係合が留め具110を第2位置に保持する。それゆえ、留め具の他の部分のクリアランスを大きくすることができる。例えば、コの字部材113の隙間(連結棒120が入る隙間)を大きくして、連結棒120が容易に入るようにしてもよい。あるいは、貫通孔125の最大径を小さくするとともに、後述する径D1と径D2の差を小さくすることができる。貫通孔125の最大径を小さくすることで、留め具110を小型化することができる。径D1と径D2の差を小さくすることで、第1位置から第2位置へ留め具110を回転するのに必要な作業者の力を軽減できる。ただし、径D1と径D2の間には、作業者の力が加わっていないときに留め具110を第1位置に保持するのに必要な最小限の差が確保される。
【0058】
図11に、係合ピン24の変形例(係合ピン124)を示す。この変形例は、図6図10の変形例のさらなる変形である。この変形例では、係合ピン124の外周に補助突起124aが設けられている。一対のツメ112の互いに対向する面には、補助突起124aに対応する補助溝112cが設けられている。図11(A)は係合ピン124の第1係合孔106aへの挿通前の断面を示しており、図11(B)は係合ピン124が第1係合孔106aへ挿通された後の断面を示している。係合ピン124が第1係合孔106aに挿通されると、係合ピン124は一対のツメ112の間に位置する。係合ピン24に設けられた補助突起124aは、一対のツメ112の互いに対向する面に設けられた補助溝112cに嵌合する。補助突起124aが補助溝112cに嵌合することで、係合ピン124は一対のツメ112の間からさらに抜け難くなる。
【0059】
図12に、ツメに補助突起を設け、係合ピンに補助溝を設けた変形例を示す。この変形例では、一対のツメ112の互いに対向する面に補助突起12dが設けられており、係合ピン124の外周に、補助突起12に対応する補助溝124dが設けられている。図12(A)は係合ピン124の第1係合孔106aへの挿通前の断面を示しており、図12(B)は係合ピン124が第1係合孔106aへ挿通された後の断面を示している。係合ピン124が第1係合孔106aに挿通されると、一対のツメ112の互いに対向する面に設けられた補助突起112dは、係合ピン24に設けられた補助溝124dに嵌合する。補助突起112dが補助溝124dに嵌合することで、係合ピン124は一対のツメ112の間から抜け難くなる。
【0060】
図11図12の変形例においても、一対のツメ112と係合ピン124の間にはクリアランスCrが確保される。クリアランスCrは、一対のツメ112が第2係合孔125の中を回転する際に内径の小さい箇所を通過するときの撓みを許容する。
【0061】
図13を参照して第2係合孔の変形例を説明する。図13(A)、(B)は、YZ平面に平行な平面で連結棒20と一対のツメ12をカットした平面を示している。実施例の第2係合孔25は、多角形の形状を有している。図13(A)の第2係合孔225は、円形の孔の1箇所に切欠225aを設けた形状である。図13(A)(および図13(B))では、理解を助けるために、一対のツメ12を仮想線で描いてある。孔の中心と切欠225aを通る内径D2は、切欠225aを通らない内径D1よりも大きい。それゆえ、一対のツメ12の並び方向が内径D1の方向に一致したときと比較して、内径D2の方向に一致したときには復元力により一対のツメ12の間隔が広がる。一方のツメ12は切欠225aに引っ掛かり、一対のツメ12は内径D2の方向に保持される。留め具が第1位置にあるとき、一対のツメ12の並び方向が、第2係合孔225の中心と切欠225aを通る方向に一致するように切欠225aを配置すれば、第2係合孔が多角形の場合と同じ効果が得られる。
【0062】
図13(B)の第2係合孔325は、四方に切欠325aを備えており、係合孔全体が十字形状をなしている。この場合でも、孔の中心といずれかの切欠325aを通る内径D2は、切欠325aを通らない内径D1よりも大きい。一対のツメ12は、その並び方向が内径D2の方向に一致するように保持される。図13(B)の変形例の場合でも、留め具が第1位置にあるとき、一対のツメ12の並び方向が、第2係合孔325の中心といずれかの切欠325aを通る方向に一致するように切欠325aを配置すれば、第2係合孔が多角形の場合と同じ効果が得られる。第1係合孔は、四角形の孔の一角に切欠を設けた形状であっても同様の効果が得られる。
【0063】
図14から図16を参照し、別の変形例の留め具210を説明する。留め具210は、実施例のシートスライド装置2の留め具10の変形例である。図14は、留め具210の周辺の斜視図である。図14は、実施例の留め具10の図2に対応する。すなわち、図14は、留め具210が第2位置にあるときの斜視図である。図15は、留め具210の周辺の正面図であり、図16は、図15のXVI-XVI線に沿った断面図である。
【0064】
留め具210は、補助板13に当接片219を備えている。留め具210は樹脂で作られており、補助板13の縁から突出する当接片219は、図中のX方向に変位可能である。別言すれば、当接片219は、X方向に弾性を有している。
【0065】
留め具210が第2位置に位置するときに、当接片219と連結棒20がロックレバー6を挟み込むとともに、当接片219がロックレバー6に当接しつつ変位する。図16の仮想線219aは、第1位置に位置するときの当接片219の形状を示している。当接片219と連結棒20の間にロックレバー6が入り込み、当接片219はロックレバー6に押されて変位する(変形する)。変位した当接片219の復元力により、ロックレバー6は当接片219と連結棒20にしっかりと挟まれる。図16に示すように、留め具210の補助板13とロックレバー6との間にはクリアランスCLが存在するが、当接片219がロックレバー6を抑えるので、ロックレバー6のがたつきが抑えられる。
【0066】
図17を参照してさらに別の変形例のシートスライド装置を説明する。図17は、図16に対応する断面図であり、留め具310の補助板13に当接片319が設けられているとともに、ロックレバー306に窪み307が設けられている。図17の仮想線319aは、第1位置に位置するときの当接片319の形状を示している。留め具310が第2位置に位置するとき、当接片319が窪み307に嵌る。当接片319が窪み307に嵌ることで、留め具310がロックレバー306から外れ難くなる。当接片319がロックレバー306を連結棒20に押し付けるので、ロックレバー306のがたつきも抑えられる。
【0067】
なお、当接片219(319)は、留め具210(310)が第1位置に位置するときにはロックレバー6(306)から離れ、連結棒20とロックレバー6(306)の連結と分離を邪魔しない。
【0068】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。実施例のシートスライド装置2では、連結棒20に係合ピン24が設けられ、ロックレバー6に第1係合孔6aが設けられている。ロックレバーに係合ピンを設け、連結棒に第1係合孔を設けても同じ利点が得られる。留め具の一対のツメが挿通される第2係合孔も、ロックレバーと連結棒のどちらに設けられていてもよい。
【0069】
第2係合孔が多角形の孔の場合、一対のツメの並び方向が孔の中心といずれかの角を通る方向に一致すると、一致しない場合と比較して、一対のツメ(すなわち留め具)の回転抵抗が大きくなる。第2係合孔が切欠を有する孔である場合、一対のツメの並び方向が孔の中心と切欠を通る方向に一致すると、一致しない場合と比較して、一対のツメ(すなわち留め具)の回転抵抗が大きくなる。回転抵抗の増大により、留め具は第1位置に保持される。
【0070】
図中の座標系のX方向が第1方向に対応し、Y方向が第2方向に対応する。「第2係合孔の中心と、多角形のいずれかの角を通る方向」とは、別言すれば、「第2係合孔の中心と、多角形のいずれかの角を結ぶ方向」である。同様に、「第2係合孔の中心と、切欠を通る方向」とは、別言すれば、「第2係合孔の中心と、切欠を結ぶ方向」である。
【0071】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0072】
2:シートスライド装置
3a、3b:ロアレール
4a、4b:アッパレール
5:支持金具
6、106、306:ロックレバー
6a、106a:第1係合孔
10、10a、10b、110、210、310:留め具
11、111:支持板
12、112:ツメ
12a、112a:先端部
12b、112b:基部
13:補助板
14:スリット付き筒部
15:カバー
20、120:連結棒
21:第1連結棒
21a、21b:後端
22:第2連結棒
23:スプリング
24、124:係合ピン
24a:補助突起
25、125、225、325:第2係合孔
112c:補助溝
113:コの字部材
115:貫通孔
219、219a、319、319a:当接片
225a、325a:切欠
307:窪み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17