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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007393
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】吸音体及び吸音壁
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20220105BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G10K11/16 120
E04B1/86 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110329
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】村上 利造
(72)【発明者】
【氏名】日下 篤
(72)【発明者】
【氏名】松本 忍
【テーマコード(参考)】
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001GA12
2E001HD03
5D061AA23
5D061AA26
5D061BB21
5D061BB24
5D061CC17
5D061DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】伸縮力のない非燃性の張地を用いた場合であっても、表面に皺が発生する不具合や吸音性能が低下するという不具合を招くことのない吸音体及び吸音壁を提供する。
【解決手段】吸音体(内装パネル)35は、保形性を有した板状部材36と、板状部材36に添設されたウレタン37と、ウレタン37の外側を覆う非燃性張地38とを備える。非燃性張地38とウレタン37とは、ホットメルトにより接着されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保形性を有した板状部材と、この板状部材に添設されたウレタンと、このウレタンの外側を覆う非燃性張地とを備え、前記非燃性張地と前記ウレタンとは、ホットメルトにより接着されている吸音体。
【請求項2】
請求項1記載の吸音体からなる内装パネルと、この内装パネルの外側に配された外装パネルとを備えてなり、それら内装パネルと外装パネルとの間に凹凸を有するクッション材を配している吸音壁。
【請求項3】
前記クッション材の凹凸を有する面と、前記内装パネルの板状部材との間にエアーギャップが形成されている請求項2記載の吸音壁。
【請求項4】
前記板状部材の前記クッション材に対応する部位に、前記エアーギャップの容積を増大させるための凹陥部が形成されている請求項3記載の吸音壁。
【請求項5】
ブースの内部空間と外部空間とを隔離する壁として用いられている請求項2、3、又は4記載の吸音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、執務や打ち合わせに使用されるブースの壁等に好適に用いられる吸音体及び吸音壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部の騒音や人声の侵入を抑制し、外部からの視線を遮って内部空間での集中度を高めることができるブースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のブース等においては、内部空間内の音が外部空間に漏れ出たり、外部空間の音声が内部空間に侵入したりするのを抑制する必要がある。そのため、ブースの壁には、吸音パネルを備えた吸音・遮音性能を有する壁構造が採用されているものが少なくない。
【0004】
従来から知られている吸音パネルとしては、例えば、ウレタン製のシートの表面に、布製の張地などを弾性的に伸長させながら張設したものが知られているが、張地として非燃性のものを使用すると不具合が発生する。すなわち、非燃性の張地は伸縮性のないものが多く、ウレタンの表面に単に張設しただけでは、温度や湿度変化、或いは、経年変化等によって、その張地に皺が生じ易い。
【0005】
かかる不具合を解消するには、例えば、非燃性張地を接着剤を用いてウレタン等に貼着することも考えられるが、接着剤を使用するとウレタン表面の空洞が塞がれていまい、吸音性能に問題が生じることが懸念される。
【0006】
このような不具合は、ブースの壁に限らず、他の用途に用いられるものにも同様に存在するものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2019-510898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上説明した課題を同時に解消することができる吸音体及びその吸音体を使用した吸音壁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明に係る吸音体は、保形性を有した板状部材と、この板状部材に添設されたウレタンと、このウレタンの外側を覆う非燃性張地とを備え、前記非燃性張地と前記ウレタンとは、ホットメルトにより接着されているものである。
【0010】
請求項2記載の発明に係る吸音壁は、請求項1記載の吸音体からなる内装パネルと、この内装パネルの外側に配された外装パネルとを備えてなり、それら内装パネルと外装パネルとの間に凹凸を有するクッション材を配しているものである。
【0011】
請求項3記載の発明に係る吸音壁は、請求項2記載のものであって、前記クッション材の凹凸を有する面と、前記内装パネルの板状部材との間にエアーギャップが形成されているものである。
【0012】
請求項4記載の発明に係る吸音壁は、請求項3記載のものであって、前記板状部材の前記クッション材に対応する部位に、前記エアーギャップの容積を増大させるための凹陥部が形成されているものである。
【0013】
請求項5記載の発明に係る吸音壁は、請求項2、3又は4記載のものであって、ブースの内部空間と外部空間とを隔離する壁として用いられているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、伸縮力のない非燃性張地を用いても、表面に皺が発生したり吸音性能が低下するという不具合を招くことのない吸音体及び吸音壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るブースを示す斜視図。
図2】同実施形態に係るブースを示す正面図。
図3】同実施形態に係るブースを示す平面図。
図4図3におけるX-X線に沿った断面図。
図5】同実施形態に係るブースの底盤を示す分解斜視図。
図6図4におけるY-Y線に沿った断面図。
図7】同実施形態に係るブースの分解斜視図。
図8】同実施形態に係るブースの側壁を示す分解斜視図。
図9】同実施形態に係るブースの分解斜視図。
図10】同実施形態に係るブースの天井を示す分解斜視図。
図11】同実施形態に係るブースの分解斜視図。
図12図4におけるA部拡大図。
図13図12におけるD部拡大図。
図14図4におけるC部拡大図。
図15】同実施形態に係るブースの底盤を一部破断して示す斜視図。
図16図15におけるH矢視図。
図17図15におけるI矢視図。
図18】同実施形態に係るブースの底盤の要部を示す分解斜視図。
図19】本発明の他の実施形態に係るブースを示す斜視図。
図20】本発明の他の実施形態に係るブースを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図1図18を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を2人用のブースBに適用した場合のものである。
【0018】
このブースBは、図1図4に示すように、内部空間ISの下面側を塞ぐ底盤1と、内部空間ISの周囲を囲む周壁(前壁2、側壁3、背壁4)と、内部空間ISの上面側を閉塞する天井5とを備えたものであり、その内部空間ISの中央にテーブル6が配されているとともに、そのテーブル6を挟んで両側に椅子7が設けられている。
【0019】
底盤1は、図4図5及び図9に示すように、外郭を構成する例えば板金製のベース本体11と、このベース本体11の内面に剛結された補強材(左右に延びる横補強材12、前後に延びる横補強材13、及び縦補強材14)と、補強材12~14により補強されたベース本体11上に載設された床板15と、床板15上に敷設された敷物16とを具備してなる。なお、この実施形態の底盤1は、左底ユニットLと、中間底ユニットMと、右底ユニットNとに分断して運搬が可能であり、設置時に各底ユニットL、M、Nのベース本体11同士及び左右に延びる横補強材12同士をブラケット10等を介して接続することにより一体化される。すなわち、ベース本体11は、左底ユニットLに属するベース本体11(L)と、中間底ユニットMに属するベース本体11(M)と、右底ユニットNに属するベース本体11(N)とに分割されている。また、床板15は、左底ユニットL上に載置される1枚の床板15(L)と、概ね中間底ユニットM上に載置される2枚の床板15(M)と、右底ユニットN上に載置される1枚の床板15(N)とに分割されている。図中17は、底盤1を建築床Fに沿って移動させるためのキャスタ、18は移動後に底盤1の四隅の高さ位置を調整するためのアジャスタ、19は、高さ調整を終えた後に当該底盤1を建築床F上に固定するための固定具である。この固定具19は、後述するように、この底盤1をアンカーボルトTを用いて建築床Fに固定するためのものである。
【0020】
周壁たる前壁2は、内部空間ISの前面を塞ぐもので、図1図2図7及び図9に示すように、前述した左床ユニットLに対応する幅寸法を有した左固定パネル21と、中間床ユニットMに対応する幅寸法を有したドアパネル22と、右床ユニットNに対応する幅寸法を有した右固定パネル23とを備えている。左右の固定パネル21、23は、枠体21a、23aにガラス等の透明板21b、23bをはめ込んだものである。ドアパネル22は、固定枠22aに蝶着されたドア縁枠22bと、このドア縁枠22bに嵌め込まれた透明板22cとを備えている。図中22dは蝶番、22eは取手である。
【0021】
周壁たる側壁3は、図6図8に示すように、外側板31と、この外側板31の内面に添設された吸音材34と、この吸音材34の内面側に配設された内装用の吸音パネル35とを具備してなる。外側板31は、内部空間ISの側面全域を閉塞可能な面積を有するものである。外側板31は、例えば、板金製のもので、その内面には、前後方向に延びる複数本の補強材32と、上下方向に延びる例えば2本の補強材33とが、井桁状に交差させた状態で溶接等により剛結され補強されている。そして、これら補強材32、33により形成される格子状の空間に前述した吸音材34が配設されている。吸音材34は、吸音パネル35側の面に凹凸を有したもので、スラブウレタン等のクッション材により作られている。内装用の吸音パネル35は、例えば、木製の板状部材36と、この板状部材36の一面に添設したウレタン37と、このウレタン37を包持する非燃性の張地38とを備えてなるもので、吸音性が高く不燃性でありながら、外観も良い。非燃性の張地38とウレタン37とは、ホットメルトにより接着されている。吸音パネル35は、上の吸音パネル35(U)と下の吸音パネル35(D)とに分断されている。下の吸音パネル35(D)は上の吸音パネル35(U)と比較して上下寸法が小さく設定されているが、構造は上の吸音パネル35(U)と同一である。
【0022】
ここで、吸音パネル(吸音体)35と、この吸音パネル35を使用した側壁(吸音壁)3との構成を請求項の記載に即して説明すれば、次の通りである。
【0023】
吸音パネル35は、内装パネルとも言い得るもので内部空間ISに臨ませてあり、保形性を有した板状部材36と、この板状部材36に添設されたウレタン37と、このウレタン37の外側を覆う非燃性張地38とを備えている。非燃性張地38とウレタン37とは、上述したようにホットメルトにより接着されている。なお、この吸音パネル35の吸音性能については、ウレタン37の密度が高いほど(発泡倍率が低いほど)吸音性能は高くなる。また、ウレタン37が独立気泡のものの方が連続気泡のものよりも吸音性能が高くなる。
【0024】
ブースBの内部空間ISと外部空間OSとを隔離する壁として用いられている前述した側壁(吸音壁)3は、吸音パネル(内装パネル)35と、吸音パネル35の外側に配された外側板(外装パネル)31とを備えてなり、それら吸音パネル35と外側板31との間に凹凸を有するクッション材たる吸音材34が配されている。そして、吸音材34の凹凸を有する面34aと、吸音パネル35の板状部材36との間には、エアーギャップAGが形成されている。ここで、吸音材34の厚みは例えば45mmに設定されており、吸音材34の凹凸を有する面34aにおける凸部の突出高さは例えば吸音材34の厚みのおよそ半分(22.23mm)に設定されている。吸音パネル35の板状部材36は、例えば、木製のもので、吸音材34に対応する部位、すなわち、ウレタン37が添接されている面と反対側の面に、エアーギャップAGの容積を増大させるための凹陥部36aが形成されている。なお、板状部材36は、凹陥部36aのない比較的厚みのある(例えば15~17mm)板状のものであってもよい。この場合、吸音材34の凹凸を有する面34aと、吸音材34が板状部材36と接する部位との間にのみエアーギャップAGが形成される。
【0025】
周壁たる背壁4は、図4及び図7に示すように、左の側壁3の後縁を支持する図示しない支柱と中間支柱42との間に配設された左固定パネル41と、中間支柱42と右の側壁3の後縁を支持する図示しない支柱との間に配設された右固定パネル43とを備えてなる。
【0026】
天井5は、図4図9図11及び図14に示すように、外郭を構成する例えば板金製の天板本体51と、この天板本体51の内面に剛結された補強材(左右に延びる横補強材52、前後に延びる横補強材53、及び縦補強材54)と、補強材52、53、54により補強された天板本体51の下に配設された内装用の天井パネル56とを具備してなる。なお、この実施形態の天井5は、左天井ユニットPと、中間天井ユニットQと、右天井ユニットRとに分断して運搬が可能であり、組立時に各天井ユニットP、Q、Rの天井本体51同士及び左右に延びる横補強材52同士をブラケット55等を介して接続することにより一体化される。すなわち、天板本体51は、左天井ユニットPに属する天板本体51(P)と、中間天井ユニットQに属する天板本体51(Q)と、右天井ユニットRに属する天板本体51(R)とに分割されている。また、天井パネル56は、左天井ユニットPの下に配される天井パネル56(P)と、中間天井ユニットQの下に配される天井パネル56(Q)と、右天井ユニットRの下に配される天井パネル56(R)とに分割されている。そして、左右の天井ユニットP、Rの天板本体51(P)、51(R)には、例えば3台の換気扇57がそれぞれ設けられているとともに、中間天井ユニットQの天板本体51(Q)には、スプリンクラー58が装着されている。スプリンクラー58は、火災発生が検知された場合に消火用水を内部空間ISに噴射するためのもので、その噴射ノズル58aが中間の天井パネル56(Q)に設けられた開口56aを通して内部空間ISに臨ませてある。中間の天井パネル56(Q)には、内部空間IS内を照明するためのダウンライト59等も装備されている。
【0027】
内部空間ISに配されたテーブル6は、図1及び図4に示すように、基端を背壁4の中間支柱42に支持させた天板61と、この天板61の先端近傍部を支持する脚支柱62とを備えたもので、脚支柱62の下端には底盤1に支持された脚ベース63が設けられている。
【0028】
テーブル6の両側に配された椅子7は、図1図4及び図12に示すように、それぞれ、底盤1の敷物16上に載置された椅子ベース71と、この椅子ベース71上に配され下面が開放された箱状をなす椅子本体72と、この椅子本体72の奥部に立設された背凭れ79とを備えたものである。
【0029】
各椅子ベース71は、図5に示すように、枠材を四角形に組み合わせた枠状のもので、各椅子ベース71の内側空間71Sは、図4図12及び図13に示すように、それぞれ敷物16の左右両端に形成された切欠部16a及び床板15に形成された切欠部15aを介してベース本体11(L)、11(N)に形成されたスリット状の通気口11aに連通しており、外部空間OSからの空気AIがこれら通気口11a及び切欠部15a、16aを通して各椅子ベース71の内側空間71Sに導入されるようになっている。なお、椅子ベース71の前枠材71aには、当該椅子ベース71の内側空間71SをブースBの内部空間ISに連通させる連通口71bが形成されている。
【0030】
椅子本体72は、図12に示すように、ブースBの内部空間ISに臨む前板73と、背凭れ79の下に位置する奥板74と、これら前板73及び奥板74の上端間に架設された座受板75と、前板73及び奥板74の側端間に蓋着された側板76と、これら側板76の中間部間に介設され当該椅子本体72内を奥側空間72Sと前側空間72Tとに区成する中間板77とを備えたもので、座受板75上に座78が形成されている。なお、中間板77の上端縁には、座受板75との間に隙間72Uを形成するための複数の切欠部77aが形成されており、その切欠部77aを通して椅子本体72の奥側空間72Sと前側空間72Tとが連通させてある。
【0031】
以上説明したようにこのブースBは、外部空間OSから隔離された内部空間ISを形成するものであって、図4図12及び図14に示すように、内部空間ISに臨む第1、第2の構造物V、W中に、空気AIを方向転換させながら案内する空気流路8(V)、8(W)を形成し、その空気流路8(V)、8(W)の一端を前記外部空間OSに連通させるとともに、他端を前記内部空間ISに連通させている。
【0032】
具体的には、図4及び図12に示すように、第1の構造物Vは上面に座78を有するボックス状の椅子7であり、椅子本体72の奥側空間72Sと前側空間72Tとを、中間板77の上端に設けられた切欠部77aを介して連通させることにより空気流路8(V)を形成している。この空気流路8(V)の一端は、椅子ベース71の内側空間71S、敷物16の切欠部16a、床板15の切欠部15a、及びベース本体11の通気口11aを通して外部空間OSに連通させてある。また、空気流路8(V)の他端は、前側空間72Tに連通する椅子ベース71の内側空間71Sと、当該椅子ベース71の前枠材71aに開設された連通口71bを通して内部空間ISに連通させてある。すなわち、この空気流路8(V)は、建築床Fに対向する当該ブースBの底面Baに開口させてある。そして、空気流路8(V)の内壁面には、吸音材70が添設されている。具体的には、椅子本体72の前板73、奥板74、座受板75、側板76の各内面と、中間板77の両面に、それぞれ吸音材70が添設されている。なお、側板76の内面に添設した吸音材70は図示を省略している。吸音材70は、空気流路8(V)に臨む一面に凹凸を有したもので、スラブウレタン等のクッション材により作られている。
【0033】
第2の構造物Wは前述した二重壁構造をなす天井5であり、図4及び図14に示すように、天井本体51(P)、(R)と天井パネル56(P)、(R)との間に、空気流路8(W)が形成されている。空気流路8(W)は、左右の天井ユニットP、Rの内部に形成されたもので、前後に延びる横補強材53には、空気AIの流通を許容する開口部53aが形成されている。しかして、空気流路8(W)の一端は、換気扇57を介して外部空間OSに連通させてあり、他端は、側壁3の吸音パネル35(U)の上端に形成された切欠部35aを通して内部空間ISに連通させてある。すなわち、この空気流路8(W)は、建築天井Eに対向する当該ブースBの頂面Bbに開口させてある。
【0034】
ここで、図1は、ブースBを示す全体斜視図である。図2は、ブースBを示す正面図であり、図3は、同平面図である。図4は、図3におけるX-X線に沿った断面図である。図5は、底盤1及び椅子ベース71を示す分解斜視図である。図6は、図4におけるY-Y線に沿った断面図である。図7は、外側板31、上の吸音パネル35(U)、左の天板本体51(P)及び左の天井パネル56(P)を取り外した状態の分解斜視図である。図8は、側壁3を示す分解斜視図である。図9は、左の天板本体51(P)及び左の天井パネル56(P)を取り外した状態の底面側からの分解斜視図である。図10は、天井5を示す底面側からの分解斜視図である。図11は、天板本体51を取り外した状態の分解斜視図である。図12は、図4におけるA部拡大図である。図13は、図12におけるD部拡大図である。図14は、図4におけるC部拡大図である。なお、このブースBは左右対称の形状であり、図12では左側の椅子7の内部の空気流路8(V)、図14では左天井ユニットP内部の空気流路8(W)のみが示されているが、右側の椅子7の内部にも同様に空気流路8(V)が形成されており、右天井ユニットP内部にも同様に空気流路8(W)が形成されている。
【0035】
以上説明したブースBは、組み立てた状態で建築床Fにアンカー固定することができるようになっており、そのための構成を詳述すれば次の通りである。
【0036】
このブースBは、前述したように内部空間ISの下面側を塞ぐ底盤1を備え、図15図17に示すように、その底盤1の下面に、キャスタ17と、そのキャスタ17の転動機能を無効にするアジャスタ18とを設けたものである。そして、底盤1に、内部空間ISを外部空間OSに連通させる開口11bを設け、その開口11bの付近に当該底盤1を建築床Fに固定するための固定具19を配している。
【0037】
キャスタ17は、例えば、取付部材1Xを介して底盤1の前後に延びる横補強材(構造材)13と左右に延びる横補強材12に取り付けられたもので、図16及び図17に示すように、取付部材1Xにねじ止めされた基部17aと、この基部17aに水平旋回可能に接続されたキャスタ本体17bと、このキャスタ本体17bに軸支された車輪17cとを備えてなる通常のものである。取付部材1Xは、図15図17に示すように、平面視矩形をなす頂板1Xaと、この頂板1Xaの各辺から垂下させた垂下板1Xbとを備えた箱状のもので、その頂板1Xaにキャスタ17がねじ止めされている。取付部材1Xの直交する2枚の垂下板1Xbは、相互に直交する前後に延びる横補強材13と左右に延びる横補強材12に添接され溶接等により剛結されている。しかして、取付部材1Xは、直交する横補強材12、13同士(直交する構造材同士)を強固に結合させる補強材としての役割をも担っている。この実施形態では、このような取付部材1Xが、左右の底ユニットL、Nの各コーナー部分にそれぞれ設けられているとともに、中間の底ユニットMの四隅部分にそれぞれ設けられており、それら各取付部材1Xにキャスタ17及びアジャスタ18が支持されている。アジャスタ18は、図16及び図17に示すように、キャスタ本体17bの図示しないねじ孔に螺合させたねじ軸18aと、このねじ軸18aの下端に設けられた接地体18bとを備えたもので、ねじ軸18aをキャスタ本体17bに対して螺合進退させることによって接地体18bの高さ位置を変更することができるようになっている。
【0038】
一方、固定具19は、キャスタ17及びアジャスタ18を支持する底盤1の構造材である前後に延びる横補強材13に取り付けられている。すなわち、前後に延びる横補強材13は、図16図18に示すように、頂板13aと、この頂板13aの左右両側縁から垂下させた側板13b、13cとを備えた板金製のものであり、一方の側板13bにキャスタ17及びアジャスタ18を支持する前述の取付部材1Xが剛結されているとともに、他方の側板13cに固定具19が設けられている。固定具19は、例えば、図16図18に示すように、建築床F上に添接する水平部19aと、この水平部19aの一端から起立する起立部19bとを備えた板金製のものである。固定具19の水平部19aには、建築床Fに打ち込まれたアンカーボルトTを挿通させるためのねじ挿通孔tが穿設されており、このねじ挿通孔tに挿通させたアンカーボルトTの先端部にナットQを螺着することによって、当該固定具19を建築床Fに固定するようにしている。固定具19の起立部19bには、当該固定具19を横補強材13に固定するための止めねじ19cを挿通させるためのねじ挿通孔19dが形成されている。すなわち、ねじ挿通孔19dに挿入した止めねじ19cを横補強材13の側板19cに固設されたナット19eに螺着することによって、当該固定具19を横補強材13に固定することができるようになっている。なお、前述のねじ挿通孔19dは、上下に延びる長孔状をなしており、固定具19の底盤1に対する相対的な固定位置を調節した上で当該固定具19を緊締固定することができるようなっている。
【0039】
なお、この固定具19は、底盤1の平面視における外縁よりも内側に配されている。そして、開口11bは、内部空間ISから固定具19にアクセスし得る位置に設けられている。そのため、固定具19による底盤1のアンカー止め作業は全て内部空間ISから行うことができるようになっている。すなわち、ブースBの最終組立状態では、開口11bは、蓋体11cにより塞がれているとともに、床板15及び敷物16により覆われているが、これら蓋体11c、床板15及び敷物16を取付ける前の状態、あるいは、取り外した状態では、内部空間ISから開口11bを通して固定具19にアクセスすることができるようになっている。蓋体11cは、例えば、四辺形をなす平板状のもので、図18に示すようにビス11dを用いて開口11bの開口端面に着脱可能に装着されている。
【0040】
ここで、図15は、床板15及び敷物16を省略した底盤1の斜視図であり、キャスタ17、アジャスタ18、及び固定具19を明示するためにベース本体11及び前後に延びる横補強材13の一部を切除して示している。図16は、図15における要部を拡大して示すH矢視図である。図17は、図15における要部を拡大して示すI矢視図である。図18は、固定具19及び蓋体11cの取付態様を示す分解斜視図である。
【0041】
このような構成のブースBであれば、オフィスや駅中空間、或いは展示会場などのスペースに適宜設置して使用することができ、その内部空間IS内でテーブル6や椅子7を用いて執務や打ち合わせを行うことができる。その際、内部空間ISは底盤1、周壁および天井5に囲まれた空間であるため、建築床Fと建築天井Eとの間に形成されている外部空間OSと隔離された状態となり、執務や打ち合わせに集中することが可能となる。
【0042】
しかも、このブースBにおいては、内部空間ISに吸音体である内装パネル35を望ませてあるので、内部空間IS内で音が籠ったり反響したりするのを抑制することができ、内部空間IS内を静粛で音響効果が良好な状態に保つことができる。また、この吸音パネル35の内部空間に臨む面は、非燃性張地38が張設されているため、見栄えを良好なものにすることができるだけでなく、内部空間IS内で火が出そうになっても一気に燃え広がるのを防止又は抑制することができる。その上、非燃性張地38はウレタン37にホットメルトにより接着されているため、非燃性張地38として伸縮性に乏しいものを使用しても、皺などの発生を有効に防止することができ、初期の張設状態を長く維持することができる。そして、非燃性張地38をホットメルトによりウレタン37に接着すれば、非燃性張地38の目やウレタン37の気泡等が塞がれるのを有効に抑制することができ、接着剤等を用いたものに比べて高い吸音性能を発揮させることができる。
【0043】
また、かかる吸音パネル35を用いて吸音壁である左右の側壁3をそれぞれ構成しているので、内部空間ISと外部空間OSとの間の音の侵入を遮断したり、側壁3を通過する音を効果的に減衰させたりすることができる。すなわち、このような構成の側壁3であれば、吸音パネル35の板状部材36(木製)と外装パネルである外側板31(金属製)という二枚の遮音層が存在することになるため、透過しようとする音を効果的に遮断又は減衰させることができる。しかも、吸音パネル35の板状部材36と外側板31との間には、吸音材34とエアーギャップAGとが存在するため、防音効果を特に高めることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0045】
請求項1に係る吸音体は、壁を構成するパネルに限定されるものではなく、家具の外装材であったり、ソファーのクッションとして用いられるようなもの等であったりしてもよい。
【0046】
また、吸音壁も、ブースの側壁に限らず、種々のものに適用可能である。すなわち、かかる吸音壁は、部屋同士を仕切る壁や、間仕切壁等にも適用が可能であり、また、ブースに適用する場合でもブースの種類や形態は図示例に限定されるものではない。例えば、前述した実施形態は本発明を2人用のブースBに適用したものであるが、図19に示すような4人用のブースB2や、図20に示すような1人用のブースB3等に本発明を適用してもよい。図19及び図20において、前述した実施形態に対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。図20に示す1人用のブースB3では、ベース本体1及び天板本体5は左右に分割されておらず、前壁2はドアパネル22のみからなる。また、この1人用のブースB3の内部空間には、図示しないテーブルのみが配されている。
【0047】
加えて、図1図18を参照しつつ前述した実施形態では、内装パネルと外装パネルとの間に凹凸を有するクッション材を配しているが、このようなクッション材は省略してもかまわない。但し、このようなクッション材を内装パネルと外装パネルとの間に配することにより、前述したように、防音効果を高めることができる。
【0048】
さらに、前述した実施形態では、クッション材を内装パネルと外装パネルとの間に配した上で、クッション材の凹凸を有する面と内装パネルの板状部材との間にエアーギャップを形成しているが、このようなエアーギャップを省略してもかまわない。但し、このようなエアーギャップを形成することにより、前述したように、防音効果を高めることができる。
【0049】
そして、前述した実施形態では、エアーギャップの容積を増大させるべく板状部材の前記クッション材に対応する部位に凹陥部を形成しているが、このような凹陥部を省略してもかまわない。但し、このような凹陥部を形成してエアーギャップの容積を増大させることにより、防音効果をさらに高めることができる。
【0050】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0051】
B、B2、B3…ブース
31…外装パネル(外側板)
34…クッション材(吸音材)
34a…凹凸を有する面
35…吸音体(内装パネル)
36…板状部材
36a…凹陥部
37…ウレタン
38…非燃性張地
IS…内部空間
OS…外部空間
AG…エアーギャップ
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