(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073930
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20220510BHJP
C02F 1/32 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107248
(22)【出願日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2020181521
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 周平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛雄
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA30
4C058BB06
4C058EE30
4C058KK02
4C058KK22
4D037AA00
4D037AA06
4D037AB03
4D037BA18
4D037CA00
(57)【要約】
【課題】異物の付着を抑制することができる流体殺菌装置を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る流体殺菌装置は、筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられ、前記筒部側の端面と、前記筒部側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔を有する排出ヘッドと;前記排出ヘッドの前記孔の内部に設けられた基板と;前記基板の、前記筒部側の面に設けられ、紫外線を照射可能な発光素子と;前記排出ヘッドに設けられ、前記発光素子と対向する窓と;を具備している。前記筒部の内側面の表面粗さRaは、50nm(ナノメートル)以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部と;
前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;
前記筒部の他方の端部に設けられ、前記筒部側の端面と、前記筒部側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔を有する排出ヘッドと;
前記排出ヘッドの前記孔の内部に設けられた基板と;
前記基板の、前記筒部側の面に設けられ、紫外線を照射可能な発光素子と;
前記排出ヘッドに設けられ、前記発光素子と対向する窓と;
を具備し、
前記筒部の内側面の表面粗さRaは、50nm(ナノメートル)以下である流体殺菌装置。
【請求項2】
前記筒部は、Ni(ニッケル)を8wt%以上含むステンレスから形成されている請求項1記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記窓の、前記筒部側の面に接触した状態で、前記窓の前記面に沿って移動可能なスクレーパをさらに具備した請求項1または2に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの流体に紫外線を照射して、流体を殺菌する流体殺菌装置がある。例えば、流体が流れる筒部と、筒部の端部に設けられ、筒部の内部に紫外線を照射する光源と、を備えた流体殺菌装置が提案されている。この場合、光源から照射された紫外線の一部は、筒部の内部を流れる流体に直接照射される。また、光源から照射され、筒部の内側面に入射した紫外線は、筒部の内部で反射を繰り返しながら伝搬していく。
【0003】
この様な流体殺菌装置は、例えば、海水や地下水などの殺菌にも用いることができる。ところが、海水や地下水などには、砂、微生物の死骸、無機塩などの異物が含まれている。そのため、流体殺菌装置をこの様な用途に用いると、異物が流体殺菌装置の接液部分に付着して、殺菌効果が小さくなる場合がある。
【0004】
例えば、筒部の内側面に異物が付着すると、反射率が低下する。反射率が低下すると、流体に照射される反射光(紫外線)の強度が低下するので、殺菌効果が小さくなる。また、光源と流路との間に設けられた窓に異物が付着すると、光源から流体に向けて照射された紫外線の一部が遮光されるので、殺菌効果が小さくなる。
【0005】
この場合、流体殺菌装置を分解して付着した異物を除去すると、手間と時間がかかり、また、流体殺菌装置の可動率も低くなる。
そこで、異物の付着を抑制することができる流体殺菌装置の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-69166号公報
【特許文献2】特開2017-051290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、異物の付着を抑制することができる流体殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る流体殺菌装置は、筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられ、前記筒部側の端面と、前記筒部側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔を有する排出ヘッドと;前記排出ヘッドの前記孔の内部に設けられた基板と;前記基板の、前記筒部側の面に設けられ、紫外線を照射可能な発光素子と;前記排出ヘッドに設けられ、前記発光素子と対向する窓と;を具備している。前記筒部の内側面の表面粗さRaは、50nm(ナノメートル)以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、異物の付着を抑制することができる流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、流体殺菌装置1は、例えば、筒部2、カバー3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7、冷却部8、およびスクレーパ9を有する。
【0013】
筒部2は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。筒部2は、例えば、円筒管とすることができる。筒部2の内部には光源6から紫外線が照射されるが、照射された紫外線の一部が、筒部2を透過して外部に漏れると、流体殺菌装置1の処理能力が低下する。そのため、筒部2は、紫外線が透過せず、且つ、紫外線に対する反射率が高い材料から形成することが好ましい。例えば、筒部2は、紫外線に対する反射率が高い金属から形成することができる。
【0014】
筒部2が、紫外線に対する反射率が高い金属を含んでいれば、筒部2の内側面に入射した紫外線を流体301aに向けて反射させ易くなる。そのため、光源6から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。紫外線の利用効率を向上させることができれば、発光素子61の数を少なくすることが可能となる。発光素子61の数が少なくなれば、光源6の小型化、低コスト化、省エネルギー化などを図ることができる。
【0015】
また、筒部2の内部空間は、殺菌の対象となる流体301aの流路となる。そのため、筒部2の内側面には、流体301aが接触する。ここで、流体301aが海水や地下水などの場合がある。例えば、海水が、金属を含む筒部2の内側面に接触すると腐食が発生する場合がある。そのため、筒部2は、海水などの腐食が生じ易い液体に対する耐食性を有する金属から形成することが好ましい。例えば、筒部2が、Ni(ニッケル)を8wt%以上含むステンレスから形成されていれば、紫外線に対する反射率と、海水などの腐食が生じ易い液体に対する耐食性を向上させることができる。ステンレスとしては、例えば、SUS304やSUS316等を使用することができる。
【0016】
また、海水や地下水などには、砂、微生物の死骸、無機塩などの異物が含まれている。流体301aは筒部2の内側面に接触するので、流体301aに異物が含まれていると、筒部2の内側面に異物が付着し易くなる。筒部2の内側面に異物が付着すると、紫外線に対する反射率が低下する場合がある。反射率が低下すると、流体301aに照射される反射光(紫外線)の強度が低下するので、殺菌効果が小さくなるおそれがある。
この場合、流体殺菌装置1を分解して、筒部2の内側面に付着した異物を除去すると、手間と時間がかかり、また、流体殺菌装置1の可動率も低くなる。
【0017】
本発明者の得た知見によれば、筒部2の内側面の表面粗さ(算術平均粗さ)Raを50nm(ナノメートル)以下の範囲、好ましくは、3nm(ナノメートル)以上、50nm(ナノメートル)以下の範囲にすれば、筒部2の内側面に異物が付着するのを抑制することができ、且つ、紫外線に対する反射率を向上させることができる。例えば、筒部2の内側面をバフ研磨することで、筒部2の内側面の表面粗さRaを前記数値の範囲となるようにすることができる。
【0018】
カバー3は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。カバー3は、例えば、円筒管とすることができる。カバー3の内部空間には、筒部2が収納される。カバー3の材料は、ある程度の剛性を有するものであれば特に限定はない。カバー3の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。カバー3は、例えば、供給ヘッド4と排出ヘッド5に固定することができる。カバー3の固定方法には特に限定がない。例えば、カバー3の一方の端部を供給ヘッド4に設けられた凹部や溝の内部に設け、カバー3の他方の端部を排出ヘッド5に設けられた凹部や溝の内部に設けることができる。また、例えば、カバー3の両側の端部のそれぞれにフランジを設け、一方のフランジを供給ヘッド4にネジなどで固定し、他方のフランジを排出ヘッド5にネジなどで固定してもよい。
なお、カバー3は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。ただし、カバー3が設けられていれば、外力が筒部2に直接作用するのを抑制することができる。
【0019】
供給ヘッド4は、筒部2の一方の端部に設けられている。供給ヘッド4と筒部2の端部との間には、図示しないシール部材を設けることができる。シール部材は、供給ヘッド4と筒部2との間が液密となるように封止する。シール部材は、例えば、Oリングなどとすることができる。
【0020】
供給ヘッド4は、例えば、円柱状を呈し、筒部2側の端面と、筒部2側とは反対側の端面との間を貫通する孔4aを有する。孔4aの筒部2側の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔4aの筒部2側とは反対側の開口は、供給口4a1となる。供給口4a1には、配管を介して、流体301aの供給源を接続することができる。また、フィルタや整流板などを孔4aの内部に設けることもできる。
【0021】
供給ヘッド4の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。供給ヘッド4の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。前述したように、流体301aが海水などの腐食が生じ易い液体の場合には、供給ヘッド4を、Niが8wt%以上含まれるステンレスから形成することが好ましい。このようにすれば、海水などの殺菌を行う場合であっても、供給ヘッド4に腐食が発生するのを抑制することができる。
【0022】
排出ヘッド5は、筒部2の他方の端部に設けられている。排出ヘッド5と筒部2の端部との間には、図示しないシール部材を設けることができる。シール部材は、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。シール部材は、例えば、Oリングなどとすることができる。
【0023】
排出ヘッド5は、例えば、円柱状を呈し、孔5a、および孔5bを有する。
孔5aの筒部2側の開口は、筒部2の内部空間とつながっている。孔5aの筒部2側とは反対側の開口は、排出ヘッド5の側面に設けられた排出口5a1となる。殺菌済みの流体301bは、排出口5a1から排出される。排出口5a1には、配管を介して、殺菌済みの流体301bが収納されるタンクなどを接続することができる。
また、孔5aは屈曲した流路となっている。孔5aは、排出ヘッド5の筒部2側の端面に略平行な流路5a2と、排出ヘッド5の軸方向に延びる流路5a3とを有する。
【0024】
流路5a2は、排出ヘッド5の、筒部2側の端面に開口している。また、流路5a2の内壁には、窓7が露出している。流路5a2は、例えば、円板状の空間である。
流路5a3の一方の端部は、流路5a2の周縁近傍に接続されている。流路5a3の他方の端部には、排出口5a1が接続されている。流路5a3は、例えば、円筒状の空間である。
【0025】
光源6から照射された紫外線は、窓7を介して流路5a2に入射する。そのため、流路5a2を流れる流体301aが、紫外線により殺菌される。また、流路5a2に入射した紫外線の一部は、筒部2の内部空間に照射される。筒部2の内部空間に照射された紫外線の一部は、筒部2の内側面において反射される。そのため、筒部2の内部を流れる流体301aが、紫外線により殺菌される。
【0026】
孔5bは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、流路5a2とに開口している。すなわち、排出ヘッド5は、筒部2側の端面と、筒部2側とは反対側の端面と、の間を貫通する孔(孔5bおよび孔5a)を有する。
孔5bには、例えば、ホルダ63の凸部63b、基板62、および発光素子61が設けられる。
【0027】
排出ヘッド5の材料は、流体301a、301bと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。排出ヘッド5の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。前述したように、流体301a、301bが海水などの腐食が生じ易い液体の場合には、排出ヘッド5を、Niが8wt%以上含まれるステンレスから形成することが好ましい。このようにすれば、海水などの殺菌を行う場合であっても、排出ヘッド5に腐食が発生するのを抑制することができる。
【0028】
光源6は、排出ヘッド5に着脱自在に設けられている。
光源6は、例えば、発光素子61、基板62、およびホルダ63を有する。
発光素子61は、基板62の、筒部2側の面に設けられている。発光素子61は、窓7に向けて紫外線を照射する。発光素子61は、少なくとも1つ設けることができる。発光素子61が複数設けられる場合には、複数の発光素子61を直列接続することができる。発光素子61は、紫外線を発生させる素子であれば特に限定はない。発光素子61は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
【0029】
発光素子61から照射される紫外線のピーク波長は、殺菌効果があれば特に限定はない。ただし、ピーク波長が255nm~290nmであれば、殺菌効果を向上させることができる。そのため、ピーク波長が255nm~290nmの紫外線を照射可能な発光素子61とすることが好ましい。
【0030】
基板62は、板状を呈し、凸部63bの、筒部2側の端面に設けられている。基板62には、配線パターンを設けることができる。基板62の材料は、紫外線に対する耐性を有するものとすることが好ましい。基板62の材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板62は、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板62の材料がセラミックスなどであったり、基板62がメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0031】
ホルダ63は、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。発光素子61は放電ランプなどに比べて長寿命ではあるが、点灯時間が長くなれば発光効率が低下する。また、発光素子61が故障して不灯になることも考えられる。ホルダ63が排出ヘッド5に着脱自在に設けられていれば、発光素子61の交換を容易とすることができる。
【0032】
ホルダ63は、例えば、フランジ63aと凸部63bを有する。フランジ63aと凸部63bは一体に形成することができる。
フランジ63aは、板状を呈し、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面に設けられている。フランジ63aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて排出ヘッド5に取り付けられる。
【0033】
凸部63bは、フランジ63aの、筒部2側の面に設けられている。凸部63bは、フランジ63aの一方の面から突出し、排出ヘッド5の孔5bの内部に設けられる。凸部63bの、筒部2側の端面には、発光素子61が実装された基板62を設けることができる。また、凸部63bは、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決める機能を有することができる。例えば、凸部63bの側面を、排出ヘッド5の孔5bの内壁に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決めることができる。
【0034】
また、排出ヘッド5の孔5bと流路5a2は、窓7により仕切られているので、流路5a2に流体301aがある状態でも、排出ヘッド5(光源6)の着脱が可能となる。そのため、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0035】
また、ホルダ63は、発光素子61において発生した熱を外部に放出する機能を有する。そのため、ホルダ63は、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。ホルダ63は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属から形成することができる。また、ホルダ63の、筒部2側とは反対側の端面や、側面などに放熱フィンを設けることもできる。
【0036】
窓7は、板状を呈し、例えば、排出ヘッド5の孔5bの内壁に液密となるように設けられている。すなわち、窓7は、排出ヘッド5設けられ、一方の面が、排出ヘッド5に設けられた流路5a2に露出している。窓7の平面形状は、例えば、四角形とすることができる。窓7の平面形状が四角形であれば、窓7の全面にスクレーパ9を接触させるのが容易となる。そのため、窓7に付着した異物を除去するのが容易となる。
【0037】
窓7は、発光素子61と対向している。窓7と発光素子61との間には空間5b1を設けることができる。窓7は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線と流体301aに対する耐性を有する材料から形成される。窓7は、例えば、石英や、紫外線を透過するフッ素樹脂などから形成される。
【0038】
また、窓7の、発光素子61側の面には、反射防止膜を設けることもできる。反射防止膜が設けられていれば、発光素子61から照射された紫外線が窓7により反射されて、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。すなわち、発光素子61から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0039】
また、窓7の筒部2側の面には、防汚膜を設けることもできる。前述したように、流体301aには異物が含まれている場合がある。異物が窓7に付着すると、発光素子61から照射された紫外線が窓7を透過し難くなる。防汚膜が設けられていれば、異物が窓7に付着するのを抑制することができる。
【0040】
冷却部8は、例えば、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側に設けることができる。冷却部8は、例えば、ホルダ63に空気を供給するファンなどである。ホルダ63に放熱フィンが設けられる場合には、冷却部8は、放熱フィンに空気を供給するファンとすることができる。また、冷却部8は、例えば、ホルダ63に設けられた流路に液体を供給するものとしてもよい。すなわち、冷却部8は、空冷式であってもよいし、液冷式であってもよい。
【0041】
なお、発光素子61の数や発熱量、流体301aの温度や流量などによっては冷却部8を省くこともできる。ただし、冷却部8が設けられていれば、発光素子61の数や印加電力などを増加させても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。
【0042】
また、冷却部8が設けられていれば、流体301aの温度が高くなったり、温度の高い流体301aの流量が増加したりしても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越え難くなる。そのため、対応可能な流体301aの範囲を広げることができる。
【0043】
ここで、窓7の筒部2側の面には、流体301aが接触するので、流体301aに異物が含まれていると、窓7の筒部2側の面に異物が付着し易くなる。窓7に異物が付着すると、光源6から照射された紫外線が流路5a2に入射し難くなる。そのため、殺菌効果が小さくなるおそれがある。
【0044】
前述したように、窓7の筒部2側の面に防汚膜が設けられていれば、異物が付着するのを抑制することができる。しかしながら、防汚膜が設けられていても、流体301aに含まれている異物の量が多い場合などには、異物の付着を抑制するのが困難となる場合がある。
【0045】
この場合、流体殺菌装置1を分解して、窓7に付着した異物を除去すると、手間と時間がかかり、また、流体殺菌装置1の可動率も低くなる。
そこで、流体殺菌装置1には、窓7に付着した異物を除去するスクレーパ9が設けられている。
【0046】
スクレーパ9は、排出ヘッド5に設けることができる。スクレーパ9と排出ヘッド5との間には、シール部材10を設けることができる。シール部材10は、スクレーパ9と排出ヘッド5との間が液密となるように封止する。
【0047】
スクレーパ9は、窓7の、筒部2側の面に接触した状態で、窓7の面に沿って移動可能とすることができる。例えば、スクレーパ9の一方の端部9aは、窓7の、筒部2側の面に接触させることができる。例えば、スクレーパ9の他方の端部9bは、排出ヘッド5から露出させることができる。例えば、スクレーパ9は、筒部2の中心軸に直交する方向に移動可能とすることができる。
この様なスクレーパ9が設けられていれば、窓7に付着した異物を掻き取ることができる。
【0048】
スクレーパ9の移動は、例えば、作業者が行うようにしてもよいし、モータやエアシリンダなどの駆動機器を用いて行うようにしてもよい。スクレーパ9による異物の除去は、例えば、付着した異物の量に応じて行うこともできるし、定期的に行うこともできる。
【0049】
スクレーパ9の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。スクレーパ9の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。前述したように、流体301aが海水などの腐食が生じ易い液体の場合には、スクレーパ9を、Niが8wt%以上含まれるステンレスから形成することが好ましい。このようにすれば、海水などの殺菌を行う場合であっても、スクレーパ9に腐食が発生するのを抑制することができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 流体殺菌装置、2 筒部、4 供給ヘッド、5 排出ヘッド、6 光源、7 窓、9 スクレーパ、61 発光素子、63 ホルダ、63b 凸部、301a 流体、301b 流体