(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073942
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】積層型キャパシター
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01G4/30 201B
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 515
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130169
(22)【出願日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142696
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ホン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャン ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒエ ビン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、エウン ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、スン ジュ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AD04
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層型キャパシターを提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、複数の誘電体層が積層された積層構造、及び上記誘電体層を挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外部に形成され、上記内部電極と接続された外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層と上記内部電極との間、及び上記誘電体層の内部のうち少なくとも1つの領域に配置され、上記内部電極よりも電気抵抗が高い高抵抗部を含み、上記高抵抗部と上記内部電極は、同一の金属成分及び金属酸化物成分を含む、積層型キャパシターを提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層された積層構造、及び前記誘電体層を挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外部に形成され、前記内部電極と接続された外部電極と、を含み、
前記本体は、前記誘電体層と前記内部電極との間、及び前記誘電体層の内部のうち少なくとも1つの領域に配置され、前記内部電極よりも電気抵抗が高い高抵抗部を含み、
前記高抵抗部と前記内部電極は、同一の金属成分及び金属酸化物成分を含む、積層型キャパシター。
【請求項2】
前記高抵抗部の金属成分は、前記内部電極の主成分よりも電気抵抗が高い、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項3】
前記金属成分は、Ag、Cu、Au、Sn、In、Al、Bi、Sb、Ge、及びTeからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の積層型キャパシター。
【請求項4】
前記高抵抗部の金属酸化物成分は、温度が上昇するにつれて電気抵抗が大きくなるPTCR特性を有する、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項5】
前記高抵抗部の金属酸化物成分のPTCR特性は、チタン酸バリウムの相転移温度(Tc)まで発現される、請求項4に記載の積層型キャパシター。
【請求項6】
前記高抵抗部の金属酸化物成分は、Mn及びVからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含む、請求項4または5に記載の積層型キャパシター。
【請求項7】
前記高抵抗部は、前記誘電体層と前記内部電極との間に層構造で形成された第1領域と、前記誘電体層の内部に形成された第2領域と、を含み、
前記第1領域は、前記内部電極に含まれたものと同一の金属成分を含み、
前記第2領域は、前記内部電極に含まれたものと同一の金属酸化物成分を含む、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項8】
50~125℃の温度範囲で、前記第1領域の比抵抗が誘電体層の比抵抗の10倍以上である、請求項7に記載の積層型キャパシター。
【請求項9】
前記第1領域の厚さが、前記誘電体層の厚さの1/10~1/1000である、請求項7または8に記載の積層型キャパシター。
【請求項10】
前記第1領域は、前記誘電体層と前記内部電極との界面のうち70%以上の面積を占める、請求項7から9のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項11】
前記第2領域は、前記誘電体層において前記内部電極に隣接した領域に形成される、請求項7から10のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項12】
前記第2領域の厚さが、前記誘電体層の厚さの1/10~1/1000である、請求項11に記載の積層型キャパシター。
【請求項13】
前記第2領域が前記誘電体層全体に形成される、請求項7に記載の積層型キャパシター。
【請求項14】
前記高抵抗部は、前記誘電体層と前記内部電極との間に層構造で形成された第1領域及び第2領域を含み、
前記第1領域は、前記内部電極に含まれたものと同一の金属成分を含み、
前記第2領域は、前記内部電極に含まれたものと同一の金属酸化物成分を含む、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項15】
前記第1領域及び第2領域が同一のレベルに配置される、請求項14に記載の積層型キャパシター。
【請求項16】
前記第1領域及び第2領域が前記誘電体層の厚さ方向に積層される、請求項14または15に記載の積層型キャパシター。
【請求項17】
前記第2領域が前記誘電体層の内部にも形成される、請求項14から16のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシターに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシターは、電気を貯蔵することができる素子であって、基本的に、2つの電極を対向させ、電圧をかけると各電極に電気が蓄積されるものである。直流電圧を印加した場合には、電気が蓄電されながらキャパシターの内部に電流が流れるが、蓄積が完了すると、電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合には、電極の極性が交番しながら交流電流が流れるようになる。
【0003】
かかるキャパシターは、電極の間に備えられる絶縁体の種類によって、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極の間に薄い酸化膜を備えるアルミニウム電解キャパシター、電極材料としてタンタルを用いるタンタルキャパシター、電極の間にチタン酸バリウムなどの高誘電率の誘電体を用いるセラミックキャパシター、電極の間に備えられる誘電体として、高誘電率系セラミックを多層構造で用いる積層セラミックキャパシター(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、電極の間の誘電体としてポリスチレンフィルムを用いるフィルムキャパシターなど、様々な種類に区分され得る。
【0004】
中でも、積層セラミックキャパシターは、温度特性及び周波数特性に優れており、小型で実現可能であるという利点を有することから、近年、高周波回路などの様々な分野で多く応用されている。近年、積層セラミックキャパシターをさらに小さく実現するために、誘電体層と内部電極を薄く形成する試みが続けられている。誘電体層が薄くなるほど、同一の駆動電圧で誘電体層に印加される電界が大きくなるため、DC電界の印加時に、積層セラミックキャパシターの有効容量であるDCバイアス容量を十分に確保する必要がある。また、積層セラミックキャパシターが用いられる電子機器の集積化、小型化の傾向に伴い、発熱により高温有効容量が低下する現象を最小化できる積層セラミックキャパシターの設計が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、内部電極と誘電体層との間の領域などに高抵抗部を採用することで、DCバイアス容量が向上することができる積層型キャパシターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は、一例によって積層型キャパシターの新たな構造を提案する。具体的に、複数の誘電体層が積層された積層構造、及び上記誘電体層を挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外部に形成され、上記内部電極と接続された外部電極と、を含み、上記本体は、上記誘電体層と上記内部電極との間、及び上記誘電体層の内部のうち少なくとも1つの領域に配置され、上記内部電極よりも電気抵抗が高い高抵抗部を含み、上記高抵抗部と上記内部電極は、同一の金属成分及び金属酸化物成分を含む。
【0007】
一実施形態において、上記高抵抗部の金属成分は、上記内部電極の主成分よりも電気抵抗が高いことができる。
【0008】
一実施形態において、50~125℃の温度範囲で、上記第1領域の比抵抗が誘電体層の比抵抗の10倍以上であることができる。
【0009】
一実施形態において、上記金属成分は、Ag、Cu、Au、Sn、In、Al、Bi、Sb、Ge、及びTeからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0010】
一実施形態において、上記高抵抗部の金属酸化物成分は、温度が上昇するにつれて電気抵抗が大きくなるPTCR特性を有することができる。
【0011】
一実施形態において、上記高抵抗部の金属酸化物成分のPTCR特性は、チタン酸バリウムの相転移温度(Tc)まで発現されることができる。
【0012】
一実施形態において、上記高抵抗部の金属酸化物成分は、Mn及びVからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物を含むことができる。
【0013】
一実施形態において、上記高抵抗部は、上記誘電体層と上記内部電極との間に層構造で形成された第1領域と、上記誘電体層の内部に形成された第2領域と、を含み、上記第1領域は、上記内部電極に含まれたものと同一の金属成分を含み、上記第2領域は、上記内部電極に含まれたものと同一の金属酸化物成分を含むことができる。
【0014】
一実施形態において、上記第1領域の厚さが、上記誘電体層の厚さの1/10~1/1000であることができる。
【0015】
一実施形態において、上記第1領域の比抵抗が、上記誘電体層の比抵抗の10倍以上であることができる。
【0016】
一実施形態において、上記第1領域は、上記誘電体層と上記内部電極との界面のうち70%以上の面積を占めることができる。
【0017】
一実施形態において、上記第2領域は、上記誘電体層において上記内部電極に隣接した領域に形成されることができる。
【0018】
一実施形態において、上記第2領域の厚さが、上記誘電体層の厚さの1/10~1/1000であることができる。
【0019】
一実施形態において、上記第2領域が上記誘電体層全体に形成されることができる。
【0020】
一実施形態において、上記高抵抗部は、上記誘電体層と上記内部電極との間に層構造で形成された第1及び第2領域を含み、上記第1領域は、上記内部電極に含まれたものと同一の金属成分を含み、上記第2領域は、上記内部電極に含まれたものと同一の金属酸化物成分を含むことができる。
【0021】
一実施形態において、上記第1領域及び第2領域が同一のレベルに配置されることができる。
【0022】
一実施形態において、上記第1領域及び第2領域が上記誘電体層の厚さ方向に積層されることができる。
【0023】
一実施形態において、上記第2領域が上記誘電体層の内部にも形成されることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一例による積層型キャパシターは、部品が小型化された場合にも、DCバイアス電圧特性が改善され、有効容量が増加されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型キャパシターの外観を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の積層型キャパシターにおいて、I-I'線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の積層型キャパシターにおいて、II-II'線に沿った断面図である。
【
図5】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【
図6】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【
図7】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【
図8】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【
図9】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【
図10】変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0027】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に異なる趣旨の説明がされていない限り、他の構成要素を除外する趣旨ではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態による積層型キャパシターの外観を概略的に示した斜視図である。
図2は
図1の積層型キャパシターにおいて、I-I'線に沿った断面図である。また、
図3は
図1の積層型キャパシターにおいて、II-II'線に沿った断面図であり、
図4は
図2のA領域の拡大図である。また、
図5から
図10は、変形された例において採用可能な内部電極と誘電体層の形態を示す。
【0029】
図1から
図4を参照すると、本発明の一実施形態による積層型キャパシター100は、誘電体層111、及びこれを挟んで積層された複数の内部電極121、122を含む本体110と、外部電極131、132と、を含み、本体110は、誘電体層111と内部電極121、122との間、及び誘電体層111の内部のうち少なくとも1つの領域に配置され、内部電極121、122よりも電気抵抗が高い高抵抗部123、124を含む。本実施形態では、高抵抗部123、124が、誘電体層111と内部電極121、122との間に層構造で形成された第1領域123と、誘電体層111の内部に形成された第2領域124と、の両方を含んでいる。そして、高抵抗部123、124と内部電極121、122は、同一の金属及び金属酸化物成分を含む。
【0030】
本体110は、複数の誘電体層111が第1方向(X方向)に積層された積層構造を有し、例えば、複数のグリーンシートを積層してから焼結することで得ることができる。このような焼結工程により、複数の誘電体層111は一体化された形態を有することができ、複数のグレインGを含むことができる。そして、
図1に示された形態のように、本体110は、直方体と類似の形状を有することができる。本体110に含まれた誘電体層111は、高誘電率を有するセラミック材料を含み、例えば、BT系、すなわち、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系セラミックを含むことができるが、十分な静電容量が得られるものであれば、当技術分野において公知の他の物質も使用可能である。誘電体層111には、必要に応じて、主成分である上記セラミック材料とともに、添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、及び分散剤などがさらに含まれることができる。ここで、添加剤は、製造過程で金属酸化物の形態で添加されることができる。かかる金属酸化物添加剤の例として、MnO
2、Dy
2O
3、BaO、MgO、Al
2O
3、SiO
2、Cr
2O
3、及びCaCO
3のうち少なくとも1つの物質を含むことができる。
【0031】
複数の内部電極121、122は、セラミックグリーンシートの一面に導電性金属を含むペーストを所定の厚さで印刷した後、それを焼結することで得られる。この場合、複数の内部電極121、122は、本体110の互いに対向する方向に露出した第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は互いに異なる外部電極131、132と連結され、駆動時に互いに異なる極性を有することができ、これらの間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。但し、外部電極131、132の個数や内部電極121、122との連結方式は、実施形態によって変わり得る。内部電極121、122を成す主要構成物質の例としてはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)などが挙げられ、これらの合金も使用可能である。
【0032】
また、本実施形態において、内部電極121、122は、Niなどの主成分よりも電気伝導性が低い金属成分Mを含むことができ、かかる金属成分Mの例として、Ag、Cu、Au、Zn、Sn、In、Al、Bi、Sb、Ge、Teが挙げられる。また、金属成分Mの他に、内部電極121、122は金属酸化物成分Oを含む。内部電極121、122にさらに添加された電気伝導性の低い金属成分M及び金属酸化物成分Oは、焼成過程で内部電極121、122と誘電体層111との界面に拡散されて高抵抗部123、124を形成することができる。これについては後述する。
【0033】
外部電極131、132は、本体110の外部に形成され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。外部電極131、132は、導電性金属を含む物質をペーストで製造した後、それを本体110に塗布する方法などにより形成されることができる。導電性金属の例として、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)、またはこれらの合金が挙げられる。これに加えて、外部電極131、132はNi、Snなどを含むめっき層をさらに含むことができる。
【0034】
本実施形態において、本体110は高抵抗部123、124を含み、高抵抗部123、124は第1領域123及び第2領域124を含む。第1領域123は、内部電極121、122に含まれたものと同一の金属成分を含む層状の形態で実現されることができる。第1領域123を実現するための一例として、内部電極121、122に添加された高抵抗の金属成分が、焼成過程で内部電極121、122と誘電体層111との境界に拡散及び偏析されるようにすることができる。このように形成された第1領域123は、内部電極121、122の主成分(例えば、Ni)に比べて電気抵抗が大きいため、DC電圧の印加時に、第1領域123がない場合より電圧降下を大きく起こす。このような作用により、誘電体層111内における電界が弱くなることができ、その結果、積層型キャパシター100のDCバイアス容量特性と信頼性が向上することができる。実施形態によっては、内部電極121、122と同一の金属成分が第1領域123のみに存在するのではなく、一部は誘電体層111の内部に拡散し、第2領域124に存在してもよい。
【0035】
上述のように、高抵抗部の第1領域123は、内部電極121、122の主成分に比べて電気抵抗が相対的に高いため、誘電体層111内で電界が低くなる効果を与えることができる。このような機能を考慮した上で第1領域123の厚さを一定の水準に確保すればよいが、厚すぎる場合には、電気的特性が低下する恐れがある。そのため、本実施形態では、第1領域123の厚さを、誘電体層111の厚さの1/10~1/1000の水準に設定した。この場合、50~125℃の温度範囲で、第1領域123の比抵抗は誘電体層111の比抵抗の10倍以上であることができる。
【0036】
第1領域123に存在する金属成分Mは、単独で存在するか、内部電極121、122の主成分(例えば、Ni)と金属間化合物を形成することができる。また、
図5の変形例のように、第1領域123が、誘電体層111と内部電極121、122の全界面領域ではなく、一部のみに形成されてもよい。すなわち、誘電体層111と内部電極121、122との界面には空き空間Vが存在し、かかる空き空間Vの少なくとも一部には、誘電体層111や内部電極121、122を成す物質が充填されることができる。第1領域123が誘電体層111と内部電極121、122との界面の一部領域に形成された場合にも、上述の高抵抗部としての機能を果たすために、第1領域123は、誘電体層111と内部電極121、122との界面のうち70%以上の面積を占めるように形成されることができる。
【0037】
また、
図4を参照すると、第2領域124は誘電体層111の内部に形成され、内部電極121、122に含まれたものと同一の金属酸化物成分Oを含むことができる。この場合、示された形態のように、第2領域124は、誘電体層111において内部電極121、122に隣接した領域に形成されることができ、誘電体層111に含まれた複数のグレインG、及び複数のグレインGにより形成されるグレインバウンダリーに形成されることができる。但し、第2領域124は、グレインGの内部及びグレインバウンダリーのうち1つにのみ形成されてもよい。
【0038】
第2領域124は内部電極121、122と同一の金属酸化物成分Oを含むが、これは、内部電極121、122から拡散されたものであることができる。第2領域124は誘電体層111の電気絶縁性を増加させることができ、これにより、積層型キャパシター100のDCバイアス電圧特性が向上することができる。示された形態のように、第2領域124は、誘電体層111において内部電極121、122に隣接した領域に形成されることができ、この際、第2領域124の厚さが誘電体層111の厚さの1/10~1/1000になるように形成されることができる。但し、
図6の変形例のように、金属酸化物成分Oの拡散を促進する方法などを用いる場合、第2領域124は誘電体層111全体に形成されてもよい。
【0039】
本実施形態のように、金属酸化物成分Oを有する第2領域124を誘電体層111内に形成することで、誘電体層111の耐電圧特性が向上することができるが、この際、第2領域124の金属酸化物成分Oは、温度が上昇するにつれて抵抗が大きくなるPTCR(Positive Temperature Coefficient of Resistivity)特性を有することができる。このように金属酸化物成分OがPTCR特性を有する場合、誘電体層111の耐電圧特性がさらに効果的に向上することができる。そして、このようなPTCR特性は、チタン酸バリウム(BaTiO3)の相転移温度(Tc、Phase Transition Temperature)付近まで発生することができる。このようにPTCR特性を示すドナー(donor)元素としては、Ba、Ti、Sb、Bi、La、Ce、Dy、Ho、Cu、Cr、Mgなどが挙げられ、第2領域124は、これらの元素の酸化物の形態で形成されることができる。また、第2領域124は、V、Mnのような遷移金属、または上記遷移金属の酸化物を含むことができ、この場合にもPTCRと同様の効果を奏することができる。
【0040】
一方、第2領域124は、誘電体層111の内部に形成されることを除き、第1領域123と同様の方式により層構造で形成されてもよい。この場合、
図7の変形例のように、第1領域123及び第2領域124が同一のレベルに配置された形態で実現されることができる。この場合にも、第2領域124は誘電体層111の内部に形成されることができる。但し、
図8の変形例のように、第2領域124は層構造のみで形成され、誘電体層111の内部には存在しないようにしてもよい。
【0041】
また、他の変形例として、第1領域123及び第2領域124は、誘電体層111の厚さ方向に積層された形態で実現されてもよい。具体的に、
図9に示された形態のように、第2領域124は第1領域123と誘電体層111との間に配置されることができる。これと異なって、
図10に示された形態のように、第1領域123が第2領域124と誘電体層111に配置されてもよい。また、
図9及び
図10の実施形態に示されていないが、上述の実施形態と同様に、第2領域124が誘電体層111内にも形成されることができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0043】
100 積層型キャパシター
110 本体
111 誘電体層
121、122 内部電極
123、124 高抵抗部
131、132 外部電極