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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073951
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】二次電池用負極材
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20220510BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220510BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20220510BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20220510BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 B
H01M4/485
H01M4/36 E
H01M4/131
H01M4/36 C
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137370
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0143237
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521376723
【氏名又は名称】テラ テクノス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ ウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ジ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ シチェン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB03
5H050HA05
5H050HA18
5H050HA19
(57)【要約】
【課題】本発明は、二次電池用負極材に関する。
【解決手段】本発明による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸され、残留圧縮応力(residual compressive stress)を有するシリコンナノ粒子とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸され、残留圧縮応力(residual compressive stress)を有するシリコンナノ粒子とを含む、二次電池用負極材。
【請求項2】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式1を満たす、二次電池用負極材。
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
(式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。)
【請求項3】
前記WN(Si)とWN(ref)との差は、0.1cm-1以上である、請求項2に記載の二次電池用負極材。
【請求項4】
前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHM(Full Width at Half Maximum)が、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMより大きい、請求項2に記載の二次電池用負極材。
【請求項5】
前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHM(Full Width at Half Maximum)は、4~20cm-1である、請求項2に記載の二次電池用負極材。
【請求項6】
シリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析時に、下記のマッピング条件で、下記式2で規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下である、請求項2に記載の二次電池用負極材。
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たり露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーチング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
(式2)
偏移=WN(Si)-WN(ref)
(式2中、WN(ref)は、式1における規定と同一であり、WN(Si)は、マッピング分析時に単位分析領域である一ピクセルで負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。)
【請求項7】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、ナノインデンテーション試験による強度(hardness)が4.0GPa以上であり、弾性係数(Young’s modulus)が40MPa以上である、二次電池用負極材。
【請求項8】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含む粒子状であり、粒子の圧縮強度が100MPa以上である、二次電池用負極材。
【請求項9】
元素成分に基づいて、シリコン(Si)、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素(D)および酸素(O)を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式3を満たす組成均一性を有する、二次電池用負極材。
(式3)
B/A≦0.30
(式3中、AとBは、負極材の中心を横切る断面に基づいて、任意の100箇所で測定されたドーピング元素の含量(wt%)を平均した平均値(A)と標準偏差(B)である。)
【請求項10】
化合物成分に基づいて、前記マトリックスは、シリコン酸化物と、前記ドーピング元素とシリコンとの複合酸化物とを含む、請求項9に記載の二次電池用負極材。
【請求項11】
二次電池用負極材であって、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、前記負極材を含む活物質80重量%、導電材10重量%およびバインダー10重量%の組成を有する負極活物質層を基準として0.005Vまで充電時に前記負極活物質層の体積変化が60%以内である、二次電池用負極材。
【請求項12】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記充放電サイクル条件による充放電テストによって得られるdQ/dVグラフでLi3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在し、最初の充放電サイクルでの放電容量が1200mAh/g以上である、二次電池用負極材。
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【請求項13】
シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記充放電サイクル条件による充放電テスト時に式4を満たす、二次電池用負極材。
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
(式4)
95%≦C50/C1*100
(式4中、C1は、最初の充放電サイクルでの放電容量(mAh/g)であり、C50は、50回目の充放電サイクルでの放電容量である。)
【請求項14】
C50は、1200mAh/g以上である、請求項13に記載の二次電池用負極材。
【請求項15】
前記シリコンナノ粒子の平均直径は、2~30nmである、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項16】
前記シリコンナノ粒子と前記マトリックスとの界面は、整合界面である、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項17】
前記ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびビスマス(Bi)から選択される一つ以上である、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項18】
前記複合酸化物は、結晶質を含む、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項19】
前記負極材は、平均直径が10μmオーダー(order)~10μmオーダー(order)の粒子状である、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項20】
前記負極材は、炭素を含有するコーティング層をさらに含む、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材。
【請求項21】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の二次電池用負極材を含む、負極。
【請求項22】
請求項21に記載の負極を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用負極材に関し、詳細には、向上した容量と初期効率およびサイクル特性を有する二次電池用負極材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子製品、電気/ハイブリッドカー、航空宇宙/ドローンなど、様々な産業分野において、長寿命、高エネルギー密度および高電力密度の二次電池に対する需要が増加し続けている。
【0003】
商業的に使用される代表的な負極材は、グラファイトやグラファイトの理論的最大容量は、372mAh/gに過ぎない。そのため、高エネルギー密度の二次電池を実現するために硫黄(最大容量1675mAh/g)などのカルコゲン系、シリコン(最大容量4200mAh/g)やシリコン酸化物(最大容量1500mAh/g)などのシリコン系、遷移金属酸化物などを二次電池負極材として使用するための研究が行われ続けており、様々な物質のうちシリコン系負極材が最も注目されている。
【0004】
しかし、粒子状のシリコンを負極材として使用する場合、充放電サイクリングが繰り返されるに伴い、シリコンの大きな体積変化による絶縁、粒子脱離、接触抵抗の増加などによって電池特性が急激に劣化し、100サイクル未満ですでに電池としての機能を失う問題があり、シリコン酸化物の場合、リチウムシリケートや酸化リチウムなどの非可逆生成物によってリチウムの損失が生じ、初期充放電効率が急激に減少する問題がある。
【0005】
このようなシリコン系負極材の問題を解決するために、シリコンをワイヤなどの形態にナノ化し、これを炭素材と複合化する技術やシリコン酸化物に異種金属をドーピングして複合酸化物相を形成するか、シリコン酸化物をプレリチウム化(pre-lithiation)させる技術などが提案されているが、初期充放電効率やサイクル特性、高レート特性などが依然として低下し、商業化が難しい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0065514号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2015-0045336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い電池容量を有し、且つ向上した初期可逆効率および安定したサイクル特性を有するシリコン系二次電池用負極材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸(分散含入 dispersed and embedded)され、残留圧縮応力(residual compressive stress)を有するシリコンナノ粒子とを含む。
【0009】
本発明の他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式1を満たす。
【0010】
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
【0011】
式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0012】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記WN(Si)とWN(ref)との差は、0.1cm-1以上であり得る。
【0013】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHM(Full Width at Half Maximum)が、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMより大きいことができる。
【0014】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、4~20cm-1であり得る。
【0015】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、シリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析時に、下記のマッピング条件で、下記式2で規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下であり得る。
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、照射時間1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーチング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=0.1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
【0016】
(式2)
偏移=WN(Si)-WN(ref)
【0017】
式2中、WN(ref)は、式1における規定と同一であり、WN(Si)は、マッピング分析時に単位分析領域である一ピクセルで負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0018】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、ナノインデンテーション試験による強度(hardness)が4.0GPa以上であり、弾性係数(Young’s modulus)が40MPa以上であり得る。
【0019】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含む粒子状であり、粒子の圧縮強度が100MPa以上であり得る。
【0020】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、元素成分に基づいて、シリコン(Si)、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素(D)および酸素(O)を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式3を満たす組成均一性を有する。
【0021】
(式3)
B/A≦0.30
【0022】
式3中、AとBは、負極材の中心を横切る断面に基づいて、任意の100箇所で測定されたドーピング元素の含量(wt%)を平均した平均値(A)と標準偏差(B)である。
【0023】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、化合物成分に基づいて、前記マトリックスは、シリコン酸化物と、前記ドーピング元素とシリコンとの複合酸化物とを含むことができる。
【0024】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、負極材を含む活物質80重量%、導電材10重量%およびバインダー10重量%の組成を有する負極活物質層を基準として0.005Vまで充電時に前記負極活物質層の体積変化が60%以内である、二次電池用負極材である。
【0025】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記充放電サイクル条件による充放電テストによって得られるdQ/dVグラフでLi3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在し、最初の充放電サイクルでの放電容量が1200mAh/g以上である。
【0026】
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0027】
本発明のさらに他の一様態による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記充放電サイクル条件による充放電テスト時に式4を満たす。
【0028】
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0029】
(式4)
95%≦C50/C1*100
【0030】
式4中、C1は、最初の充放電サイクルでの放電容量(mAh/g)であり、C50は、50回目の充放電サイクルでの放電容量である。
【0031】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、C50は、1200mAh/g以上であり得る。
【0032】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記シリコンナノ粒子の平均直径は、2~30nmであり得る。
【0033】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、シリコンナノ粒子と前記マトリックスとの界面は、整合界面であり得る。
【0034】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記マトリックスは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、アルミニウム(Al)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)から選択される一つ以上であり得る。
【0036】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記複合酸化物は、結晶質を含むことができる。
【0037】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記負極材は、平均直径が10μmオーダー(order)~10μmオーダー(order)の粒子状であり得る。
【0038】
本発明の一実施形態による二次電池用負極材において、前記負極材は、炭素を含有するコーティング層をさらに含むことができる。
【0039】
本発明は、上述の二次電池用負極材を含む負極を含む。
【0040】
本発明は、上述の負極を含む二次電池を含む。
【発明の効果】
【0041】
本発明による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスおよびマトリックスに分散含浸されており、残留圧縮応力を有するナノ粒子状のシリコンによって向上した機械的物性、電気化学的特性を有し、特に、高い放電容量とともにシリコン系負極材が備えられた二次電池の実商用化が可能な水準の容量維持率を有する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の一実施形態によって製造された負極材の断面でMgのEDSラインプロファイルを図示した図である。
図2】本発明の一実施形態によって製造された負極材のラマンスペクトルを測定図示した図である。
図3】本発明の一実施形態によって製造された負極材のシリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング結果を図示した図である。
図4】本発明の一実施形態によって製造された負極材の強度および弾性係数を測定図示した図である。
図5】本発明の一実施形態によって製造された負極材を含む負極が備えられた半電池の充放電サイクルによる電池容量を測定図示したグラフである。
図6】本発明の一実施形態によって製造された負極材を観察した高倍率の透過電子顕微鏡写真である。
図7】本発明の一実施形態によって製造された負極材のマトリックスを観察した高倍率の透過電子顕微鏡写真およびマトリックスのSADP(Selected Area Diffraction Pattern)である。
図8】本発明の一実施形態によって製造された負極材を含む負極で、リチウム化前の負極の断面およびその厚さと、リチウム化後の負極の断面およびその厚さを観察した走査電子顕微鏡写真である。
図9】本発明の一実施形態によって製造された負極材粉末の粒子径分布を測定図示した図である。
図10】本発明の一実施形態によって製造された負極材を含む負極が備えられた半電池のdQ/dVグラフである。
図11】本発明の一実施形態によって製造された負極材の充電状態でのSADP(Selected Area Diffraction Pattern)を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付の図面を参照して、本発明の二次電池用負極材について詳細に説明する。以下に開示する図面は、当業者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示する図面に限定されず、他の形態に具体化されることもでき、以下に提示する図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示されることがある。この際、使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0044】
また、明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図し得る。
【0045】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、第1、第2などの用語は、限定的な意味ではなく、一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用される。
【0046】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、含むまたは有するなどの用語は、明細書上に記載の特徴、または構成要素が存在することを意味し、特に限定しない限り、一つ以上の他の特徴または構成要素が付加する可能性を予め排除するものではない。
【0047】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、膜(層)、領域、構成要素などの部分が他の部分の上にまたは上にあるとしたときに、他の部分と接してすぐ上にある場合だけでなく、その間にさらに他の膜(層)、さらに他の領域、さらに他の構成要素などが介在されている場合も含む。
【0048】
本出願人は、シリコンとシリコン系酸化物が複合化したシリコン系負極材において、負極材に含有されたシリコンの残留応力によって負極材の機械的特性および電気化学的特性が著しく影響を受けることを見出した。このような発見に基づいて研究を重ねた結果、シリコン系酸化物基盤のマトリックスにシリコンがナノ粒子状に分散し、残留圧縮応力を有する時に、負極材の機械的物性および電気化学的物性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0049】
したがって、上述の発見に基づく本発明による負極材は、ナノ粒子状に分散し、残留圧縮応力を有するシリコンとマトリックスの結合により、従来のシリコン系負極材からは得られない機械的物性および電気化学的物性を示すことから、本発明は、本発明によるシリコン系負極材が有する物性に基づく様々な様態を含む。
【0050】
本発明において、マトリックスは、ナノ粒子状のシリコンが分散する固体状の媒質を意味し得、負極材において分散相であるシリコンナノ粒子に対して連続相(continuum)を形成する物質を意味し得る。本発明において、マトリックスは、負極材で金属シリコン(Si)以外の物質(ら)を意味し得る。
【0051】
本発明において、ナノ粒子は、通常、ナノ粒子として規定される大きさ(直径)である10ナノメートルオーダー(order)~10ナノメートルオーダーの粒子、実質的には500nm以下の直径、具体的には200nm以下の直径、より具体的には100nm以下の直径、さらに具体的には50nm以下の直径を有する粒子を意味し得る。
【0052】
本発明において、二次電池用負極材は、リチウム二次電池用負極材を含むが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の負極材は、ナトリウム電池、アルミニウム電池、マグネシウム電池、カルシウム電池、亜鉛電池などの二次電池の活物質として活用することができ、スーパーキャパシタ、染料感応太陽電池、燃料電池など、従来のシリコン系物質が使用される他のエネルギー貯蔵/生成装置にも活用することができる。
【0053】
本発明の一様態(I)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式1を満たす。
【0054】
(式1)
1<WN(Si)/WN(ref)
【0055】
式1中、WN(ref)は、バルク単結晶シリコンのラマンピークの中心波数であり、WN(Si)は、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。
【0056】
式1中、バルク単結晶シリコンのラマンピーク中心波数と負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピーク中心波数との比は、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子に残留する応力(残留応力)の種類および残留応力の大きさを指すパラメータである。
【0057】
式1中、バルク単結晶シリコンの用語は、実質的に、バルク単結晶シリコンの物性が示される大きさのシリコンを意味するものと解釈すべきである。明確な比較基準を提示し、購入の容易性を保障する面で、バルク単結晶シリコンは、サブmmオーダー(sub mm order)水準の厚さ、具体的な一例として、0.4~0.7mmの厚さを有する単結晶シリコンウェハを意味し得る。
【0058】
式1中、WN(Si)/WN(ref)が1を超えることは、バルク単結晶シリコンに対して、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数がより長波数(ラマン散乱光の波長でより短波長)で移動することを意味し、ナノ粒子状シリコンが残留圧縮応力を有することを意味する。
【0059】
式1中、バルク単結晶シリコンおよびナノ粒子状シリコンのそれぞれにおいて、シリコンのラマンピークは、シリコンのラマンスペクトルで500~540cm-1の領域、具体的には510~530cm-1の領域、さらに具体的には515~528cm-1の領域に位置するラマンピークを意味し得る。ピークの中心波数、すなわち、ピークの中心に該当する波数は、ピークで最大強度値を有する波数を意味し得る。この際、上述のラマンシフト(Raman Shift)領域で二つ以上のラマンピークが存在する場合、強度が最も大きいピークが式1のシリコンのラマンピークに該当することができ、二つ以上のラマンピークが互いに重なって双棒形態を示す場合、双棒のうちより強度が大きい棒で最大強度値を有する波数が、ピークの中心波数に該当することができる。
【0060】
WN(Si)とWN(ref)との差(WN(Si)-WN(ref))は、シリコンナノ粒子が有する残留圧縮応力の大きさを直接示すパラメータである。具体的には、WN(Si)とWN(ref)との差は、0.1cm-1以上、0.2cm-1以上、0.3cm-1以上、0.4cm-1以上、0.5cm-1以上、0.6cm-1以上、0.7cm-1以上、0.8cm-1以上、0.9cm-1以上、1.0cm-1以上、1.1cm-1以上、1.2cm-1以上、1.3cm-1以上、1.4cm-1以上、1.5cm-1以上、1.6cm-1以上、1.7cm-1以上、1.8cm-1以上、1.9cm-1以上、2.0cm-1以上、2.1cm-1以上、2.2cm-1以上、2.3cm-1以上、2.4cm-1以上、2.5cm-1以上、2.6cm-1以上、2.7cm-1以上、2.8cm-1以上、2.9cm-1以上、3.0cm-1以上、3.1cm-1以上、3.2cm-1以上、3.3cm-1以上、3.4cm-1以上、3.5cm-1以上、3.6cm-1以上、3.7cm-1以上、3.8cm-1以上、3.9cm-1以上または4.0cm-1以上であり得、実質的には6.0cm-1以下、より実質的には5.5cm-1以下であり得る。
【0061】
上述のバルク単結晶シリコンと負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波長間の差とともに、またはこれと独立して、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、バルク単結晶シリコンのラマンピークのFWHMより大きいことができる。バルク単結晶シリコンに対してより大きいFWHMの値は、負極材に含有されたシリコンが極微細な粒子状にマトリックスに分散含浸された構造によるものであり得る。具体的には、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークのFWHMは、4~20cm-1、6~20cm-1、6~18cm-1、6~16cm-1、8~20cm-1、8~18cm-1、8~16cm-1、10~20cm-1、10~18cm-1、または10~16cm-1であり得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
これと共に、またはこれと独立して、負極材に含有されたナノ粒子状シリコンは、シリコンのラマンピークの中心波数を基準(0cm-1)として、ラマンスペクトル上の基準で、+20cm-1の位置(波数)での強度(I1)と-20cm-1の位置(波数)での強度(I2)が互いに有意に相違することができ、-20cm-1の位置(波数)での強度(I2)が+20cm-1の位置(波数)での強度(I1)より大きいことができる。この際、有意に相違するとは、I2/I1の比が1.20以上なであることを意味し得る。このようなシリコンのラマンピークの比対称性(短波数方向に長いtail)も残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子がマトリックスに分散含浸された構造から起因したものであり得る。
【0063】
これと共に、負極材をシリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析の際、下記式2で規定される偏移の最大値と最小値との差が5cm-1以下であり得る。
【0064】
(式2)
偏移=WN(Si)-WN(ref)
【0065】
式2中、WN(ref)は、式1における規定と同一であり、WN(Si)は、マッピング分析時に単位分析領域である一ピクセルで負極材に含有されたナノ粒子状シリコンのラマンピークの中心波数である。この際、式2において、偏移は、二次元マッピング分析によって得られる二次元ラマンマップで、シリコンラマン信号が検出されたピクセルに限ってピクセルそれぞれで式2による偏移が算出されることができ、最大値と最小値は、式2によって算出された偏移のうち最小値と最大値を意味することは言うまでもない。
【0066】
シリコンのラマン信号に基づく負極材の二次元マッピング分析により得られるシリコンの二次元ラマンマップを基準として、式2によるバルク単結晶シリコンに対するシリコンピークの中心波数移動値(偏移)の最大値と最小値との差は、負極材に分散含浸されたシリコンナノ粒子の残留圧縮応力均一性を示す指標である。二次元ラマンマップ基準偏移の最大値と最小値との差が5.0cm-1以下、4.5cm-1以下、4.0cm-1以下、3.5cm-1以下、3.0cm-1以下、2.5cm-1以下、または1.0cm-1以下を満たすことができ、実質的に、最大値と最小値との差は、0.1cm-1以上、より実質的には0.5cm-1以上を満たすことができる。このような最大値と最小値との差は、負極材に含有されたほとんどのシリコンナノ粒子、実質的に、すべてのシリコンナノ粒子が残留圧縮応力を有することを意味し、さらに、負極材に含有されたほとんどのシリコンナノ粒子、実質的には、すべてのシリコンナノ粒子に残留する圧縮応力の大きさが実質的にほぼ同一であることを意味する。
【0067】
実験的に、負極材に含有されたシリコンのラマンスペクトルは、常温(20~25℃)、大気圧下、励起レーザ波長532nm、レーザパワー0.5mW、分光計の解像度(resolution)1cm-1、負極材1g、検出器露出時間15sの条件で測定されたものであり得る。
【0068】
実験的に、シリコンラマン信号を用いた負極材の二次元ラマンマッピングは、励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たりの露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーチング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μmのマッピング条件で測定されたものであり得、常温および大気圧下で測定されたものであり得る。
【0069】
本発明の他の一様態(II)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、ナノインデンテーション試験による強度(hardness)が4.0GPa以上であり、弾性係数(Young’s modulus)が40MPa以上であり得る。以下、二次電池用負極材の機械的物性に関連し、特別に温度を限定して提示しない限り、すべての物性は、常温(20~25℃)の物性である。
【0070】
ナノインデンテーション試験は、ASTM E2546、ISO 14577-1 E、ISO 14577-2 E、ISO 14577-3 Eに準じて測定することができ、弾性係数Eは、周知のように、式E=E・(1-ν)によって算出されたものであり得る。ここで、Eは、圧子の弾性係数であり、νは、バーコビッチ圧子(Berkovich indenter)のポアソン比で0.3と想定した。バーコビッチ圧子を用いたナノインデンテーション試験は、最大荷重50mN、荷重印加速度100mN/minの条件で行われたものであり得る。ナノインデンテーション試験によって測定される強度と弾性係数は、少なくとも圧子による圧入痕跡基準圧入痕跡間の隔離距離が少なくとも10μm以上であり、5×5~25×25のマトリックス形態でナノインデンテーション試験を行って得られた物性値を平均した値であり得る。この際、ナノインデンテーション試験が行われる負極材サンプルは、板形状のバルク負極材をマウンティングし、ポリッシングして準備することができる。
【0071】
具体的には、二次電池用負極材は、ナノインデンテーション試験による強度(圧入強度)が4.0GPa以上、4.5GPa以上、5.0GPa以上、5.5GPa以上、6.0GPa以上、6.5GPa以上、7.0GPa以上、7.5GPa以上、8.0GPa以上、8.5GPa以上、9.0GPa以上、9.5GPa以上、10.0GPa以上、10.2GPa以上、10.4GPa以上、10.6GPa以上、10.8GPa以上、11.0GPa以上、11.2GPa以上、11.4GPa以上、11.6GPa以上、11.8GPa以上、12.0GPa以上、12.2GPa以上、12.4GPa以上、12.6GPa以上、12.8GPa以上、または13.0GPa以上であり得、実質的には25.0GPa以下、より実質的には20.0GPa以下であり得る。これと共に、二次電池用負極材は、ナノインデンテーション試験による弾性係数が40MPa以上、45MPa以上、50MPa以上、55MPa以上、60MPa以上、65MPa以上、70MPa以上、75MPa以上、80MPa以上、85MPa以上、90MPa以上、92MPa以上、94MPa以上、96MPa以上、98MPa以上、100MPa以上、102MPa以上、104MPa以上、106MPa以上、108MPa以上、110MPa以上、112MPa以上、114MPa以上、116MPa以上、118MPa以上または120MPa以上であり得、実質的には250MPa以下、より実質的には200MPa以下であり得る。
【0072】
ナノインデンテーション試験に基づいて上述の負極材の機械的物性は、ナノ粒子状のシリコンが有する残留圧縮応力を含み、負極材に存在する残留応力によって実現されることができる物性値である。
【0073】
高い強度を有し、優れた弾性を有する負極材は、従来、二次電池分野においてすでに確立された負極材スラリー製造-集電体上スラリー塗布および乾燥-圧延(カレンダリング)に至る電極製造工程中に粒子状負極材が物理的に損傷しないことを意味するものであり、電極(負極)気孔構造の損傷も防止されて、設計された通りに電解質との安定的で均質な接触を保障できることを意味するものである。
【0074】
本発明の他の一様態(III)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含む粒子状であり、粒子の圧縮強度(St)が100MPa以上であり得る。粒子の圧縮強度Stは、周知のように、式
【数1】
によって算出されたものであり得、ここで、Pは、加えられた力、dは、粒子の粒径、Lは、距離であり、微小圧縮試験機(一例として、MCT-W500-E、Shimadzu製)を用いて測定されたものであり得る。
【0075】
具体的には、粒子状の二次電池用負極材の粒子圧縮強度は、100MPa以上、105MPa以上、110MPa以上、115MPa以上、120MPa以上、125MPa以上、130MPa以上、135MPa以上、140MPa以上、145MPa以上、150MPa以上、155MPa以上または160MPa以上であり得、実質的には250MPa以下、より実質的には200MPa以下であり得る。
【0076】
上述の負極材の機械的物性は、ナノ粒子状のシリコンが有する残留圧縮応力を含み、負極材に存在する残留応力によって実現できる物性値である。さらに、機械的強度および弾性は、シリコンナノ粒子とマトリックスとの整合界面により、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を囲むマトリックスに応力場が形成されてさらに向上することができる。
【0077】
本発明の他の一様態(IV)による二次電池用負極材は、元素成分に基づいて、シリコン(Si)、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素(D)および酸素(O)を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、下記式3を満たす組成均一性を有する。
【0078】
(式3)
B/A≦0.30
【0079】
式3中、AとBは、負極材の中心を横切る断面に基づいて、任意の100箇所で測定されたドーピング元素の含量(wt%)を平均した平均値(A)と標準偏差(B)である。具体的には、AとBは、負極材の断面の中心を横切るドーピング元素の線形組成(line profile)で任意の100箇所から算出されたドーピング元素の平均含量(wt%、A)と標準偏差(B)であり得る。
【0080】
より具体的には、式3のB/Aは、0.30以下、0.25以下、0.20以下、0.15以下、0.14以下、0.13以下、0.12以下または0.11以下を満たすことができる。
【0081】
式3中、B/Aは、ドーピング元素(D)基準の負極材の組成均一性を示すパラメータであり、上述の範囲を満たすB/Aの優れた組成均一性によって、負極材が、均一な機械的、電気化学的物性を示すことができる。
【0082】
実験的に、ドーピング元素の含量や線形組成分析は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)や透過電子顕微鏡または走査電子顕微鏡などに備えられたEDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)などを用いて行われることができるが、これに限定されるものではない。
【0083】
上述の組成均一性を満たす二次電池用負極材において、元素成分基準のマトリックスは、アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素(D)、シリコン(Si)および酸素(O)を含有することができ、化合物成分基準のマトリックスは、シリコン酸化物およびドーピング元素とシリコンとの複合酸化物を含むことができる。したがって、式3で規定されたドーピング元素の組成均一性は、複合酸化物の組成均一性に相当し得るが、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0084】
本発明の他の一様態(V)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、負極材を含む活物質80重量%、導電材10重量%およびバインダー10重量%の組成を有する負極活物質層(以下、レファランス活物質層)基準0.005Vまで充電時に、負極活物質層の体積変化が60%以内である。この際、負極活物質層(レファランス活物質層)の体積変化(%)は、[リチウム化後のレファランス活物質層の厚さ-リチウム化前のレファランス活物質層の厚さ]/リチウム化前のレファランス活物質層の厚さ*100で規定することができる。実験的に、リチウム化の前/後それぞれでのレファランス活物質層の厚さは、走査電子顕微鏡観察写真などにより測定されたものであり得る。
【0085】
0.005Vまで充電時に、60%以内、具体的には50%以内、40%以内、30%以内、25%以内または20%以内に過ぎない体積変化は、従来のシリコン系負極材に比べて有意に小さな体積変化が発生することを意味し、従来のシリコン系負極材の主な問題が大きく解消されることを意味する。
【0086】
負極材の体積膨張程度をテストする基準になるレファランス活物質層は、上述の負極材を含む活物質80重量%、導電材、具体的にはカーボンブラック10重量%、バインダー10重量%、具体的にはカボキシメチルセルロース5重量%と、スチレンブタジエンゴム5重量%を含有することができる。この際、活物質は、上述の負極材を単独でまたは上述の負極材と炭素系負極活物質(一例として、黒煙)の混合物を含むことができる。活物質が混合物を含む場合、混合物の全重量を基準(100%)として、負極材が占める重量%は、5重量%~90重量%の水準であり得る。レファランス活物質層が備えられた負極(レファレンス負極)において集電体は銅箔であり得る。特に限定されないが、レファランス活物質層のリチウム化前の厚さは、15~25μmの水準であり得る。
【0087】
レファランス活物質層の充電は、レファランス活物質層が備えられた負極(レファレンス負極)と対向電極(counter electrode)が金属リチウム箔である半電池(一例として、CR2032コイン型半電池)を用いた下記の充放電サイクル条件による充放電テストによるものであり得、充放電サイクル、具体的には、最初の充放電サイクルから0.005Vまで充電が行われたものであり得る。
【0088】
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0089】
以下、特に限定して提示されない限り、上述のリチウム化時の体積変化を含む負極材の電気化学的特性(充放電特性、放電容量、dQ/dVグラフなど)は、負極材を含有する負極と対向電極が金属リチウム箔である半電池の電気化学的特性であり得、化成工程(formation)が行われた半電池の電気化学的特性であり得る。そのため、レファランス活物質層の充電時に提示された充放電サイクル条件による最初のサイクルも、化成工程が行われた後に行われる最初のサイクルを意味することは言うまでもない。半電池は、負極集電体および集電体の少なくとも一面に位置し、本発明の一実施形態による負極材を含む負極活物質層を含む負極と、金属リチウム箔である対極と、負極と対極との間に介在されたセパレータと、エチレンカボネートとジエチルカボネートが1:1の体積比で混合された混合溶媒に1M濃度でLiPFが溶解された電解質とが備えられたセルであり得、半電池の電気化学的特性は、常温で測定されたものであり得る。化成工程は、CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.5V、0.1C-rateの条件で充放電が行われる1次工程と、CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.1C-rateの条件で充放電が行われる2次工程とを含むことができるが、本発明がテスト電池(半電池)の化成工程条件によって限定されないことは言うまでもなく、従来の負極材の電気化学的物性をテストするために使用される電池において通常行われる化成工程であればよい。
【0090】
本発明の他の一様態(VI)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記の充放電サイクル条件による充放電テストによって得られるdQ/dVグラフでLi3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在し、最初の充放電サイクルでの放電容量が1200mAh/g以上である。
【0091】
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0092】
dQ/dVグラフは、最初の充放電サイクルでの電池容量(放電容量)Qを半電池の金属リチウム箔基準負極の電位Vで微分した微分値dQ/dVと電位Vとの関係を示すグラフであり得る。この際、dQ/dVグラフ上、Li3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークは、0.005V~0.100Vの電圧範囲、具体的には0.005V~0.050Vの電圧範囲、より具体的には0.005V~0.040Vの電圧範囲に位置するピークを意味し得る。
【0093】
すなわち、本発明の他の一様態(VI)による二次電池用負極材は、リチウム挿入がLi3.5Siを超えLi3.75Siまで行われることを意味するものである。Li3.75Siまでリチウム挿入が行われることによって、負極材の容量が向上することができる。実質的な一例として、化成工程が行われた半電池の上述の充放電サイクル条件による充放電時に、最初の充放電サイクルで放電容量(C1)は、1200mAh/g以上、1250mAh/g以上、1300mAh/g以上、1350mAh/g以上、1400mAh/g以上、1450mAh/g以上または1500mAh/g以上であり得、実質的には2500mAh/g以下であり得る。
【0094】
本発明の他の一様態(VII)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸されたシリコンナノ粒子とを含み、対向電極が金属リチウム箔である半電池を用いた下記充放電サイクル条件による充放電テスト時に式4を満たす。
【0095】
充放電サイクル条件:CC/CV、カットオフ(Cut-off)電圧0.005V~1.0V、0.5C-rate
【0096】
(式4)
95%≦C50/C1*100
【0097】
式4中、C1は、最初の充放電サイクルでの負極材の放電容量(mAh/g)であり、C50は、50回目の充放電サイクルでの負極材の放電容量である。
【0098】
具体的には、C50/C1*100は、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上であり得る。このようなサイクル特性は、負極材においてリチウムイオンの貯蔵と放出が実質的に完全に可逆的であることを意味し、50回に至る繰り返した充放電過程で容量低下(負極材の劣化、負極活物質層内の負極材の電気的接触の低下、非可逆生成物の形成など)が実質的に発生しないことを意味し、極めて優れた容量維持率を有することを意味する。
【0099】
一具体例において、C50は、1200mAh/g以上、1250mAh/g以上、1300mAh/g以上、1350mAh/g以上、1400mAh/g以上、1450mAh/g以上または1500mAh/g以上であり得、実質的には2500mAh/g以下であり得る。
【0100】
本発明の他の一様態(VIII)による二次電池用負極材は、シリコン酸化物、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物、またはこれらの混合物を含有するマトリックスと、前記マトリックスに分散含浸され、残留圧縮応力(residual compressive stress)を有するシリコンナノ粒子とを含む。
【0101】
マトリックスに分散含浸されたナノ粒子状シリコンが有する残留圧縮応力、さらに、シリコンの残留圧縮応力とシリコンナノ粒子とマトリックスとの間に形成された整合界面によってシリコンナノ粒子周りのマトリックスで形成される応力場は、上述のラマンスペクトルに基づく負極材の一様態、機械的物性に基づく負極材の他の一様態、リチウム化時の電気化学的物性に基づく負極材の他の一様態として負極材の物性や測定可能なパラメータとして示されることができる。
【0102】
本発明において、負極材は、上述の様態(I~VIII)のうち一つ以上の様態、二つ以上様態、三つ以上の様態、四つ以上の様態、五つ以上の様態、六つ以上の様態、七つ以上の様態またはI~VIIIのすべての様態を満たすことができる。
【0103】
以下、特に「本発明による一様態」に限定して記述しない限り、後述する内容は、本発明で提供するすべての様態それぞれに該当する。
【0104】
一具体例において、負極材は、元素成分基準のシリコン、酸素、アルカリ金属とアルカリ土類金属およびポスト遷移金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素を含有することができる。シリコンは、元素シリコン状態のシリコン成分と酸化物状態のシリコン成分を含むことができ、酸化物状態のシリコン成分は、シリコン単独の酸化物状態、シリコンとドーピング元素の複合酸化物状態またはこれらをすべてを含むことができる。ドーピング元素は、酸化物状態のドーピング元素成分を含むことができ、酸化物状態のドーピング元素は、ドーピング元素単独の酸化物状態、シリコンとドーピング元素の複合酸化物状態またはこれらのすべてを含むことができる。
【0105】
化合物成分基準、負極材は、シリコン酸化物、ドーピング元素とシリコンとの複合酸化物またはこれらの混合物を含有することができ、これと共に、元素シリコン(Si)を含有することができる。シリコン酸化物は、SiOx、xは、0.1~2の実数を含むことができ、複合酸化物は、DSi、Dは、ドーピング元素であり、lは、1~6の実数、mは、0.5~2の実数、nは、DとSiそれぞれの酸化数とlおよびmによって電荷中性を満たす実数であり得る。一例として、DがMgである場合、複合酸化物は、MgSiOおよびMgSiOから選択される一つ以上の酸化物などを含むことができるが、本発明において、Dと複合酸化物が、必ずしもMgとMg-Siとの間の酸化物に限定されるものではない。
【0106】
微細構造基準、負極材は、シリコン酸化物;アルカリ金属とアルカリ土類金属からなる群から選択される一つ以上のドーピング元素とシリコンとの複合酸化物;またはこれらの混合物;を含有するマトリックスとシリコンナノ粒子を含む分散相を含有することができる。分散相は、マトリックス内に均一に分散含浸されて位置することができる。
【0107】
一具体例において、シリコンナノ粒子は、結晶質、非晶質、または結晶質と非晶質が混在する複合相であり得、実質的には結晶質であり得る。
【0108】
一具体例において、マトリックスは、結晶質、非晶質または結晶質と非晶質が混在する複合相であり得る。詳細には、マトリックスは、結晶質または結晶質と非晶質が混在する複合相であり得る。具体的には、マトリックスは、非晶質、結晶質または非晶質と結晶質が混在するシリコン酸化物および結晶質の複合酸化物を含むことができる。
【0109】
シリコンナノ粒子とマトリックスとの界面は、整合(coherent)界面、不整合(incoherent)界面、部分整合(semi-coherent)界面を含むことができ、実質的には、整合界面または部分整合界面を含むことができ、より実質的には、整合界面を含むことができる。周知のように、整合界面は、界面をなす二つの物質の格子が界面で格子連続性を維持する界面であり、部分整合界面は、部分的に格子不一致部分が存在し、このような格子不一致部分が電位などの欠陥として見なされ得る界面である。したがって、シリコンナノ粒子とマトリックスとの整合または部分整合界面を有する負極材において、シリコンナノ粒子と接するマトリックス領域は結晶質であり得、具体的には、結晶質のシリコン酸化物、結晶質の複合酸化物またはこれらの混合物であり得る。実験的に、整合(coherent)界面、不整合(incoherent)界面、部分整合(semi-coherent)界面の界面構造は、高倍率の走査電子顕微鏡観察などにより判別することができ、これは、当業者にとって周知の事実である。
【0110】
一具体例において、シリコンナノ粒子の平均直径は、10ナノメートルオーダー~10ナノメートルオーダー、具体的には、1~50nm、2~40nm、2~35nm、2nm~30nm、2nm~20nmまたは2nm~15nmであり得るが、これに限定されるものではない。ただし、30nm以下の水準のシリコンナノ粒子は、全体的にマトリックスと整合界面を形成し、シリコンナノ粒子に残留する圧縮応力によって、マトリックスのより広い領域で応力が形成されて有利であり得る。実験的には、シリコンナノ粒子の平均直径は、透過電子顕微鏡観察イメージにより負極材内のシリコンナノ粒子の大きさを測定し、10個以上、20個以上または30個以上のシリコンナノ粒子に対して測定された大きさを平均して算出したものであり得る。
【0111】
一具体例において、ドーピング元素は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびビスマス(Bi)から選択される一つ以上であり得る。したがって、複合酸化物は、シリコンとリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびビスマス(Bi)から選択される一つ以上の元素間の酸化物であり得る。複合酸化物と残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子とのシナジー効果によって、負極材の機械的物性および電気化学的物性がより向上することができる。シリコンナノ粒子との整合界面の形成に有利であるように、ドーピング元素は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群、具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)から選択される一つ以上の元素であり得、より有利には、アルカリ土類金属、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)から選択される一つ以上の元素であり得る。最も有利には、容易な整合界面の形成および残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子とのシナジー効果の面で、ドーピング元素は、マグネシウムを含むことができる。上述のように、ドーピング元素は、シリコンとの複合酸化物形態および/またはドーピング元素の酸化物形態で負極材に含有されることができ、主に、複合酸化物の形態で負極材に含有されることができる。具体的には、マトリックスが、シリコンとの複合酸化物形態でドーピング元素を含有する場合、複合酸化物は、結晶質を含むことができ、より実質的には、複合酸化物は、結晶質であり得る。これにより、マトリックスは、結晶質の複合酸化物を含有することができる。
【0112】
一具体例において、マトリックスに含有されたシリコン酸化物は、SiOx、ここで、xは、0.1~2の実数、より具体的には0.5~2の実数を満たすことができ、互いに異なるxを有する第1シリコン酸化物と第2シリコン酸化物を含むことができる。実質的な一例として、マトリックスに含有されるシリコン酸化物は、SiOx1(x1は、1.8~2の実数)の第1シリコン酸化物とSiOx2(x2は、0.8~1.2の実数)の第2シリコン酸化物を含むことができる。マトリックスに含有されるシリコン酸化物は、結晶質、非晶質、結晶質と非晶質の複合相であり得、実質的には非晶質であり得る。
【0113】
一具体例において、負極材は、ナノ粒子状シリコン15~50重量%および残部のマトリックスを含有することができる。
【0114】
一具体例において、負極材のマトリックスは、シリコン酸化物と複合酸化物をすべて含有することができ、マトリックスは、シリコン酸化物100重量部に対して、複合酸化物の重量部をAとし、負極材において、重量%基準ドーピング元素の濃度をBとしたときに、A/Bが2~50、2~40、2~30、または2~20を満たすことができる。
【0115】
一具体例において、負極材は、粒子状であり得る。粒子状の負極材は、二次電池の用途で通常求める粒子径、一例として、10μmオーダー(order)~10μmオーダー(order)の平均直径、具体的には5μm~30μm水準の平均直径を有することができるが、これに限定されるものではない。
【0116】
一具体例において、負極材は、炭素を含有するコーティング層、具体的には負極材の表面にコーティングされた表面コーティング層をさらに含むことができる。このような表面コーティング層によって負極材の電気的特性を向上させることができ、有利である。コーティング層の厚さは、2~30nmの水準であればよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0117】
一具体例において、負極材は、残留圧縮応力を有するシリコンナノ粒子を含有し、電気化学的なリチウムとの合金(リチウム化、lithiation)時にシリコン1モル当たりリチウム3.5(超)~3.75モル、具体的には3.6~3.75モルの合金化比率を有することができる。このような高い合金化の比率は、高容量に非常に有利である。また、一具体例において、負極材は、高い初期充放電効率と容量維持率特性を有することができる。
【0118】
本発明は、上述の負極材を含有する負極を含む。負極は、二次電池、具体的にはリチウム二次電池の負極であり得る。負極は、集電体と、集電体の少なくとも一面に位置し、上述の負極材を含有する負極活物質層とを含むことができ、負極活物質層は、必要に応じて、負極材と二次電池負極に通常使用されるバインダーおよび導電材をさらに含むことができる。
【0119】
本発明は、上述の負極を含む二次電池を含む。具体的には、本発明は、上述の負極を含むリチウム二次電池を含む。リチウム二次電池は、正極集電体および正極集電体の少なくとも一面に位置する正極活物質層を含む正極と、上述の負極と、正極と負極との間に介在されたセパレータと、リチウムイオンを伝導する電解質とを含むことができる。正極集電体、負極集電体、正極活物質層の正極活物質や組成、セパレータおよび電解質の溶媒や絶縁膜または電解質塩の濃度などは、リチウム二次電池において通常採択される物質や組成であればよい。
【0120】
(実施例)
Si、SiO、MgOの原料をそれぞれ6(Si):4.5(SiO):1.5(MgO)のモルビで粉末混合器に投入した後、均質混合して原料を製造した。
【0121】
前記原料を0.1torr以下の真空チャンバ内のるつぼに26kg満たしてから、1,400℃で加熱して気化した後、400℃の捕集板で凝縮し、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。
【0122】
得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物を900℃で、Ar雰囲気で15時間熱処理し、バルク形態の二次電池用負極材を製造した。
【0123】
製造されたバルク型二次電池用負極材を平均粒径5μmに機械式粉砕して粒子状の負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0124】
(比較例1)
Si、SiO、MgOの原料をそれぞれ6(Si):4.5(SiO):1.5(MgO)のモルビで粉末混合器に投入した後、均質混合して原料を製造した。
【0125】
前記原料を0.1torr以下の真空チャンバ内のるつぼに26kg満たしてから、1,400℃で加熱して気化した後、400℃の捕集板で凝縮し、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物(バルク型二次電池用負極材)を平均粒径5μmで機械式粉砕して粒子状の負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0126】
(比較例2)
SiとSiOの混合原料24kgをるつぼAに、金属Mgの塊2kgをるつぼBに満たし、るつぼAは1,500℃、るつぼBは900℃にそれぞれ加熱して気化した後、900℃の捕集板で凝縮し、マグネシウムドーピングシリコン酸化物を得た。
【0127】
得られたマグネシウムドーピングシリコン酸化物(バルク型二次電池用負極材)を平均粒径5μmで機械式粉砕して粒子状の負極材を製造し、炭化水素ガスを活用して850℃のCVD工程により粒子状負極材に5重量%で炭素をコーティングし、炭素コーティングされた負極材粉末を製造した。
【0128】
-実験例
・Mg含量偏差
粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例2)や熱処理によって得られたバルク型二次電池負極材(実施例)の中心を横切る断面に基づいて、EDS(Electron Disperse Spectroscopy)により断面の中心を横切る線形組成で任意の100箇所を測定して算出したドーピング元素の平均含量(wt%)をA、含量の標準偏差をBと計算し、これを図1に図示した。組成分析の結果、実施例で製造された負極材サンプルのB/Aは0.1であり、比較例2の場合、B/Aは0.43であった。
【0129】
・ラマン分析
粉砕後、負極材のμ-Raman(装備名:XperRam c、ナノベース、韓国)分析でシリコンのラマン信号に基づいて下記のような条件で行った。負極材粉末のラマン信号を図2に図示した。図2に図示したように、実施例で製造された負極材のシリコンラマン信号(ピーク中心)は523.6cm-1であり、残留圧縮応力を有することが分かり、比較例で製造された負極材は、残留引張応力を有することが分かる。また、実施例で製造されたシリコンラマン信号のFWHMを測定した結果、FWHMが12cm-1であり、単結晶シリコンラマン信号(図におけるC-Si(ref))のFWHMより大きいことを確認した。
【0130】
分析条件:励起レーザ波長532nm、レーザパワー0.5mW、分光計の解像度(resolution)1cm-1、粉末状負極材1g、検出器露出時間15s
【0131】
ラマン測定結果および下記式を用いてシリコンに残留する応力を計算し、粒子状負極材でのシリコン残留応力とバルク状負極材でのシリコン残留応力を表1にまとめた。表1に比較例の結果とともにまとめたように、実施例で製造された負極材の場合、シリコンがバルク形態では0.7GPaの残留圧縮応力を、粒子状では0.25GPaの残留圧縮応力を有することが分かり、比較例1の場合、非晶質相のSiが、比較例2の場合、Siが圧縮応力ではなく引張応力を有することが分かる。
【0132】
【数2】
【0133】
ここで、σは、残留応力、Δωは、単結晶シリコンラマン信号(図におけるc-Si(ref)、520.4cm-1)に対して測定されたサンプルのラマン信号の差(=測定されたシリコンラマン信号波数-単結晶シリコンラマン信号波数)、σが正の値である場合、圧縮応力、負の値である場合、引張応力である。
【0134】
粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例)や熱処理によって得られたバルク型二次電池負極材(実施例)のμ-Raman分析(装備名:XperRam c、ナノベース、韓国)でシリコンのラマン信号に基づく二次元マッピング分析を下記のような条件で行い、マッピング結果を図3に図示した。実施例で製造された負極材の場合、すべてのピクセルでシリコンのラマンピークが検出され、各ピクセル別の偏移=WN(Si)-WN(ref)を測定した結果、偏移の範囲が2.86(最小値)~4.58(最大値)であることを確認した。
【0135】
マッピング条件:励起レーザ波長=532nm、レーザパワー=0.1mW、検出器露出時間(単位分析領域当たり露出時間)1sec、焦点距離(focal length)=30mm、グレーチング(grating)=1800grooves/mm、ピクセル解像度=1cm-1、マッピングサイズ=14μm×14μm
【0136】
・機械的物性
粒子強度および粒子膨張の測定は、島津製作所製の微小圧縮試験機MCT-Wを使用して圧縮強度を測定した。直径が10μmである任意の粒子10個に対して粒子強度を測定し、その測定結果を表1にまとめた。
【0137】
前記微小圧縮試験機は、粒子に力を継続して加え、この時に粒子が割れる圧力が粒子強度として規定され、これを自動測定する。
【0138】
粉砕前のマグネシウムドーピングシリコン酸化物(比較例1)や熱処理によって得られたバルク型二次電池負極材(実施例)の断面を対象としてナノインデンテーション試験装置(Anton Paar、オーストリア)を活用して試験を行った。ナノインデンテーション試験(インデンター)の場合、ISO 14577-1 Eの測定基準に準じており、測定条件は、バーコビッチ圧子(Berkovich indenter)を使用して、ポアソン比を0.3と想定し、最大荷重50mN、荷重印加速度100mN/minで行った。この際、圧子による圧入痕跡基準圧入痕跡間の隔離距離が少なくとも10μm以上であり、5×5~25×25のマトリックス形態で行い、これにより算出された強度と弾性係数を図4に図示した。
【0139】
・電池の製造
最終の負極材粉末を活物質として使用して、活物質:導電材(carbon black):CMC(Carboxymethyl cellulose):SBR(Styrene Butadiene Rubber)を重量比8:1:0.5:0.5で混合し、溶媒を追加して活物質スラリーを製造した後、厚さ17μmの銅箔に塗布した後、90℃で40分間乾燥した。乾燥後、直径14mmで打ち抜き、直径16mmの金属リチウムを対極として使用して、直径18mmのセパレータを挟んで電解液を満たし、CR2032コイン型半電池を作製した。電解液は、EC(Ethylene carbonate)/DEC(Diethyl carbonate)を体積比1:1で混合した溶媒に1MのLiPFを溶解し、3wt%のFEC(fluoroethylene carbonate)を添加剤として使用した。化成工程は、製造された電池を0.1Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.01Cに逹するまで0.005Vの定電圧充電した後、0.1Cの定電流で1.5Vまで放電(de-lithiation)した後(第1化成ステップ)、また、0.1Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.01Cに逹するまで0.005Vの定電圧充電した後、0.1Cの定電流で1.0Vまで放電(de-lithiation)(第2化成ステップ)して行った。
【0140】
・電池性能の評価
充放電サイクル条件:0.5Cの定電流で0.005Vまで充電(lithiation)し、0.05Cに逹するまで0.005V定電圧充電した後、0.5Cの定電流で1.0Vまで放電(de-lithiation)した。
充放電サイクル回数:50回
【0141】
最初の充放電サイクルの放電容量を表1に容量で整理して示し、第1化成ステップでの充放電に基づく初期効率、およびC50/C1*100の容量維持率も表1に整理して示し、第1化成ステップ、第2化成ステップおよび充放電サイクルによる充電および放電容量を図示したグラフを図5に図示した。
【0142】
【表1】
【0143】
図6は、実施例で製造された負極材を観察した高倍率の透過電子顕微鏡写真であり、図6から分かるように、結晶質シリコンナノ粒子の平均直径が約6.7nmであることが分かり、図7のマトリックスを観察した高倍率の透過電子顕微鏡写真および黄色の円で図示した領域のSADP(Selected Area Diffraction Pattern)を上部に挿入してともに図示した。図6および図7のHR-TEMおよびSADP分析の結果、マトリックスが結晶質のマグネシウムシリケートを含有し、シリコンナノ粒子が結晶質のマグネシウムシリケートと整合界面をなすことを確認した。
【0144】
図8はリチウム化前の負極の断面およびその厚さを観察した走査電子顕微鏡写真および3回目の充放電サイクル(寿命評価段階の最初の充放電サイクル)で0.005Vリチウム化後の負極の断面およびその厚さを観察した走査電子顕微鏡写真である。リチウム化の前後の厚さ変化によって体積膨張率が15%に過ぎないことを確認した。
【0145】
図9は、粉砕およびカーボンコーティングされた負極材粉末の粒子径分布を測定図示した図であり、平均(D50)8.3μmの粒子径を有することが分かる。
【0146】
図10は、最初の充放電サイクルでのdQ/dVグラフを図示した図であり、図10から分かるように、Li3.75Si反応に該当するリチウム挿入ピークが存在することが分かる。これにより、実施例で製造された負極材のリチウム化時に、シリコン1モル当たり3.75モルのリチウムの合金化の比率でリチウム化が行われることが分かる。
【0147】
図11は最初の充放電サイクルで0.005Vまで充電された負極材を透過電子顕微鏡で観察し、リチウム化したシリコンナノ粒子のみを選択的に分析した制限視野電子回折パターン(SADP;Selected Area Diffraction Pattern)を図示した図である。図11により、充電時にLi3.75Si反応が発生することを直接確認することができ、これは、図10のdQ/dVグラフ結果と合致する。
【0148】
以上、本発明は、特定の事項と限定された実施例および図面によって説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0149】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等であるか等価的な変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11