(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073955
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】積層型キャパシター
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140309
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0144401
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェ ヒー
(72)【発明者】
【氏名】ベイク、セウン イン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ジ ス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、エウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョウン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】積層型キャパシターを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、複数の誘電体層が第1方向に積層された積層構造、及び上記誘電体層を挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外部に形成され、上記内部電極と接続された外部電極とを含み、上記本体は、上記複数の内部電極が位置し、静電容量を形成するアクティブ部と、上記アクティブ部の第2方向に対向する第1面及び第2面をカバーするサイドマージン部とを含み、上記アクティブ部の中央領域で上記誘電体層の平均のグレインサイズをA1とし、上記アクティブ部のうち上記サイドマージン部に隣接したアクティブ境界部で上記誘電体層の平均のグレインサイズをA2とし、上記サイドマージン部の中央領域で上記誘電体層の平均のグレインサイズをM1とする時、1<A2/M1≦1.5の条件と、A2<A1の条件とを満たす積層型キャパシターを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層、及び前記複数の誘電体層を挟んで第1方向に積層された複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外部に形成され、前記複数の内部電極と接続された外部電極と、を含み、
前記本体は、前記複数の内部電極が位置し、静電容量を形成するアクティブ部と、前記アクティブ部の第2方向に対向する第1面及び第2面をカバーするサイドマージン部とを含み、
前記アクティブ部の中央領域で前記複数の誘電体層の平均のグレインサイズをA1とし、前記アクティブ部のうち前記サイドマージン部に隣接したアクティブ境界部で前記複数の誘電体層の平均のグレインサイズをA2とし、前記サイドマージン部の中央領域で前記複数の誘電体層の平均のグレインサイズをM1とする時、
1<A2/M1≦1.5の条件と、
A2<A1の条件とを満たす、積層型キャパシター。
【請求項2】
A2/A1≧0.7の条件を満たす、請求項1に記載の積層型キャパシター。
【請求項3】
前記サイドマージン部のうち前記アクティブ部に隣接したサイドマージン境界部で前記複数の誘電体層の平均のグレインサイズをM2とする時、
M2>M1の条件を満たす、請求項1または2に記載の積層型キャパシター。
【請求項4】
M1/M2≧0.7の条件を満たす、請求項3に記載の積層型キャパシター。
【請求項5】
前記第1及び第2方向に切断した切断面を基準として、
前記本体の前記第1方向の長さをTとし、
前記アクティブ部の前記第2方向の長さをWAとする時、
A1は、横の長さがWA/3、縦の長さがT/3であり、前記アクティブ部で前記第1方向及び第2方向の中心ラインを基準として対称である第1長方形に存在するグレインの平均サイズである、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項6】
A2は、横の長さがWA/4、縦の長さがT/3であり、前記アクティブ部で前記第2方向の中心ラインを基準として対称である第2長方形に存在するグレインの平均サイズである、請求項5に記載の積層型キャパシター。
【請求項7】
前記第2長方形は前記サイドマージン部と接する、請求項6に記載の積層型キャパシター。
【請求項8】
前記サイドマージン部の前記第2方向の長さをWMとする時、
M1は、横の長さがWM/3、縦の長さがT/3であり、前記サイドマージン部で前記第1方向及び第2方向の中心ラインを基準として対称である第3長方形に存在するグレインの平均サイズである、請求項5~7のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項9】
前記サイドマージン部のうち前記アクティブ部に隣接したサイドマージン境界部で前記複数の誘電体層の平均のグレインサイズをM2とする時、
M2は、横の長さがWM/4、縦の長さがT/3であり、前記サイドマージン部で前記第2方向の中心ラインを基準として対称である第4長方形に存在するグレインの平均サイズである、請求項8に記載の積層型キャパシター。
【請求項10】
前記第4長方形は前記アクティブ部と接する、請求項9に記載の積層型キャパシター。
【請求項11】
前記複数の誘電体層はチタン酸バリウム成分を含み、
前記アクティブ部の中央領域で前記複数の誘電体層のTiに対するBaのモル比は、前記サイドマージン部の中央領域で前記複数の誘電体層のTiに対するBaのモル比より小さい、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項12】
前記アクティブ部のうち前記サイドマージン部に隣接したアクティブ境界部で前記複数の誘電体層のTiに対するBaのモル比は、
前記アクティブ部の中央領域で前記複数の誘電体層のTiに対するBaのモル比より大きく、前記サイドマージン部の中央領域で前記複数の誘電体層のTiに対するBaのモル比より小さい、請求項11に記載の積層型キャパシター。
【請求項13】
前記複数の内部電極は、前記第1及び第2方向に垂直な第3方向に前記本体から露出した第1及び第2内部電極を含み、
前記外部電極は、前記第3方向に対向し、前記第1及び第2内部電極とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【請求項14】
前記本体は、前記第1方向に前記アクティブ部をカバーするカバー部をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の積層型キャパシター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシターに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシターは、電気を貯蔵することができる素子であって、一般的に2つの電極を対向させて電圧をかけると各電極に電気が蓄積されるものである。直流電圧を印加した場合には、電気が蓄電されながらキャパシター内部に電流が流れるが、蓄積が完了すると、電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合、電極の極性が交番しながら交流電流が流れるようになる。
【0003】
かかるキャパシターは、電極の間に備えられる絶縁体の種類によって、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極の間に薄い酸化膜を備えるアルミニウム電解キャパシター、電極材料としてタンタルを用いるタンタルキャパシター、電極の間にチタン酸バリウムなどの高誘電率の誘電体を用いるセラミックキャパシター、電極の間に備えられる誘電体として高誘電率系セラミックを多層構造で用いる積層セラミックキャパシター(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、電極の間の誘電体としてポリスチレンフィルムを用いるフィルムキャパシターなど、様々な種類に区分され得る。
【0004】
中でも、積層セラミックキャパシターは、温度特性及び周波数特性に優れており、小型で実現可能であるという長所を有することから、近年、高周波回路などの様々な分野で多く応用されている。近年、積層セラミックキャパシターをさらに小さく実現するために、誘電体層と内部電極を薄く形成する試みが続けられている。しかし、部品が小型化されるほど電気的、構造的信頼性を向上させるのに困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、誘電体層のグレインサイズを領域別に調節することにより、耐電圧特性といった信頼性が向上した積層型キャパシターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は、一例によって積層型キャパシターの新たな構造を提案する。具体的に、複数の誘電体層、上記誘電体層を挟んで第1方向に積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外部に形成され、上記内部電極と接続された外部電極と、を含み、上記本体は、上記複数の内部電極が位置し、静電容量を形成するアクティブ部と、上記アクティブ部の第2方向に対向する第1面及び第2面をカバーするサイドマージン部とを含み、上記アクティブ部の中央領域で上記誘電体層の平均のグレインサイズをA1とし、上記アクティブ部のうち上記サイドマージン部に隣接したアクティブ境界部で上記誘電体層の平均のグレインサイズをA2とし、上記サイドマージン部の中央領域で上記誘電体層の平均のグレインサイズをM1とする時、1<A2/M1≦1.5の条件と、A2<A1の条件とを満たす。
【0007】
一実施形態において、A2/A1≧0.7の条件を満たすことができる。
【0008】
一実施形態において、上記サイドマージン部のうち上記アクティブ部に隣接したサイドマージン境界部で上記誘電体層の平均のグレインサイズをM2とする時、M2>M1の条件を満たすことができる。
【0009】
一実施形態において、M1/M2≧0.7の条件を満たすことができる。
【0010】
一実施形態において、上記第1及び第2方向に切断した切断面を基準として、上記本体の上記第1方向の長さをTとし、上記アクティブ部の上記第2方向の長さをWAとする時、A1は、横の長さがWA/3、縦の長さがT/3であり、上記アクティブ部で上記第1方向及び第2方向の中心ラインを基準として対称である第1長方形に存在するグレインの平均サイズであることができる。
【0011】
一実施形態において、A2は、横の長さがWA/4、縦の長さがT/3であり、上記アクティブ部で上記第2方向の中心ラインを基準として対称である第2長方形に存在するグレインの平均サイズであることができる。
【0012】
一実施形態において、上記第2長方形は上記サイドマージン部と接することができる。
【0013】
一実施形態において、上記サイドマージン部の上記第2方向の長さをWMとする時、M1は、横の長さがWM/3、縦の長さがT/3であり、上記サイドマージン部で上記第1方向及び第2方向の中心ラインを基準として対称である第3長方形に存在するグレインの平均サイズであることができる。
【0014】
一実施形態において、上記サイドマージン部のうち上記アクティブ部に隣接したサイドマージン境界部で上記誘電体層の平均のグレインサイズをM2とする時、M2は、横の長さがWM/4、縦の長さがT/3であり、上記サイドマージン部で上記第2方向の中心ラインを基準として対称である第4長方形に存在するグレインの平均サイズであることができる。
【0015】
一実施形態において、上記第4長方形は上記アクティブ部と接することができる。
【0016】
一実施形態において、上記誘電体層はチタン酸バリウム成分を含み、上記アクティブ部の中央領域で上記誘電体層のTiに対するBaのモル比は、上記サイドマージン部の中央領域で上記誘電体層のTiに対するBaのモル比より小さいことができる。
【0017】
一実施形態において、上記アクティブ部のうち上記サイドマージン部に隣接したアクティブ境界部で上記誘電体層の上記誘電体層Tiに対するBaのモル比は、上記アクティブ部の中央領域で上記誘電体層のTiに対するBaのモル比より大きく、上記サイドマージン部の中央領域で上記誘電体層のTiに対するBaのモル比より小さいことができる。
【0018】
一実施形態において、上記内部電極は、上記第1及び第2方向に垂直な第3方向に上記本体から露出した第1及び第2内部電極を含み、上記外部電極は、上記第3方向に対向し、上記第1及び第2内部電極とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極を含むことができる。
【0019】
一実施形態において、上記本体は、上記第1方向に上記アクティブ部をカバーするカバー部をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一例による積層型キャパシターの場合、耐電圧特性、高温信頼性などが向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型キャパシターの外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1の積層型キャパシターにおいて、I-I'線に沿った断面図である。
【
図3】
図1の積層型キャパシターにおいて、II-II'線に沿った断面図である。
【
図4】
図3における本体領域を細分化して示すものである。
【
図5】本体の各領域別に誘電体グレインの形態を示すものである。
【
図6】本体の各領域別に誘電体グレインの形態を示すものである。
【
図7】本体の各領域別に誘電体グレインの形態を示すものである。
【
図8】本体の各領域別に誘電体グレインの形態を示すものである。
【
図9】本発明の実施例と比較例によって製造されたサンプルの高温加速寿命の実験結果を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施例と比較例によって製造されたサンプルの高温加速寿命の実験結果を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例と比較例によって製造されたサンプルの高温加速寿命の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)されることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0023】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態による積層型キャパシターの外観を概略的に示す斜視図である。
図2は
図1の積層型キャパシターにおいて、I-I'線に沿った断面図である。そして、
図3は
図1の積層型キャパシターにおいて、II-II'線に沿った断面図であり、
図4は
図3における本体領域を細分化して示すものである。また、
図5~
図8は本体の各領域別に誘電体グレインの形態を示すものである。
【0025】
図1から
図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層型キャパシター100は、誘電体層111、及びこれを挟んで第1方向(X方向)に積層された複数の内部電極121、122を含む本体110と、外部電極131、132とを含み、本体110は領域別に誘電体層111の平均のグレインサイズが調節されている。
【0026】
本体110は複数の誘電体層111が第1方向(X方向)に積層された積層構造を含み、例えば複数のグリーンシートを積層した後、焼結して得られることができる。かかる焼結工程により複数の誘電体層111は一体化した形態を有することができる。
図1に示す形態のように、本体110は直方体と類似した形状を有することができる。本体110に含まれた誘電体層111は高誘電率を有するセラミック材料を含むことができ、例えば、BT系、即ち、チタン酸バリウム(BaTiO
3)系セラミックを含むことができるが、十分な静電容量が得られる限り、当技術分野で知られた他の物質も使用可能である。誘電体層111には、主成分であるこのようなセラミック材料と共に、必要な場合、添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤及び分散剤などがさらに含まれることができる。ここで、添加剤の場合、金属成分を含み、これらは製造過程で金属酸化物の形態で添加されることができる。かかる金属酸化物添加剤の例として、MnO
2、Dy
2O
3、BaO、MgO、Al
2O
3、SiO
2、Cr
2O
3及びCaCO
3のうち少なくとも一つの物質を含むことができる。
【0027】
複数の内部電極121、122は、セラミックグリーンシートの一面に所定の厚さで導電性金属を含むペーストを印刷した後、これを焼結して得られる。この場合、複数の内部電極121、122は、
図2に示す形態のように、本体110の互いに対向する第3方向(Z方向)に露出した第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。ここで、第3方向(Z方向)は、本体110のアクティブ部112の第1面S1及び第2面S2が互いに対向する方向を第2方向(Y方向)とする時、第1方向(X方向)と第2方向(Y方向)に垂直な方向であることができる。第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる外部電極131、132と連結されて駆動する際に互いに異なる極性を有することができ、これらの間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。但し、外部電極131、132の個数や内部電極121、122との連結方式は、実施形態によって変わることができる。内部電極121、122をなす主要構成物質は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)などが例として挙げられ、これらの合金も用いることができる。
【0028】
外部電極131、132は本体110の外部に形成され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ接続された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。外部電極131、132は導電性金属を含む物質をペーストで製造した後、これを本体110に塗布する方法などにより形成されることができ、導電性金属の例として、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、金(Au)またはこれらの合金が挙げられる。これに外部電極131、132はNi、Snなどを含むメッキ層をさらに含むことができる。
【0029】
図3を参照すると、本実施形態の場合、本体110は、複数の内部電極121、122が位置し、静電容量を形成するアクティブ部112、及びアクティブ部112の第2方向(Y方向)に対向する第1面S1及び第2面S2をカバーするサイドマージン部113を含み、第2方向(Y方向)は第1方向(X方向)と垂直であることができる。ここで、本体110は第1方向(X方向)にアクティブ部112をカバーするカバー部114をさらに含むことができる。ここで、カバー部114はアクティブ部112に含まれた誘電体層112を形成するためのセラミックグリーンシートを積層して形成することができ、必要に応じてアクティブ部112に含まれた誘電体層112を形成するためのものとは異なる組成、粒度分布を有するセラミックグリーンシートを用いることもできる。
【0030】
上述したように、本体110は領域別に誘電体層111の平均のグレインサイズが異なるが、これは後述する耐電圧特性、高温信頼性などの実験結果に基づいて調節されたものである。
図4を参照してこれを具体的に説明すると、
図4は
図3における本体を領域別に細分化して示すもので、内部電極は図示していない。本実施形態の場合、アクティブ部112の中央領域CAで誘電体層111の平均のグレインサイズをA1とし、アクティブ部112のうちサイドマージン部113に隣接したアクティブ境界部で誘電体層111の平均のグレインサイズをA2とし、サイドマージン部113の中央領域CMで誘電体層111の平均のグレインサイズをM1とする時、1<A2/M1≦1.5の条件とA2<A1の条件とを満たす。
【0031】
図4と共に
図5から
図8を共に参照すると、グレインサイズの測定方法の一例として、誘電体層111の平均のグレインサイズは第1方向(X方向)及び第2方向(Y方向)に切断した切断面を基準として測定されることができ、この場合、第3方向(Z方向)には本体110の長さ方向中間で切断された面を用いることができる。本体110の第1方向(X方向)長さをTとし、アクティブ部112の第2方向(Y方向)長さをWAとする時、A1は横の長さがWA/3、縦の長さがT/3であり、アクティブ部112で第1方向及び第2方向の中心ラインL1、L2を基準として対称である第1長方形R1に存在するグレインG1の平均サイズであることができる。そして、A2は横の長さがWA/4、縦の長さがT/3であり、アクティブ部112で第2方向の中心ラインL2を基準として対称である第2長方形R2に存在するグレインG2の平均サイズであることができる。この場合、図示された形態のように、第2長方形R2はサイドマージン部113と接することができる。また、サイドマージン部113の第2方向(Y方向)長さをWMとする時、M1は横の長さがWM/3、縦の長さがT/3であり、サイドマージン部113で第1方向中心ラインL3及び第2方向の中心ラインL2を基準として対称である第3長方形R3に存在するグレインG3の平均サイズであることができる。グレインG1、G2、G3のサイズを測定する場合、グレインG1、G2、G3の面積を測定して、これを円相当径に換算する方法などを用いることができる。また、測定の正確性を高めるために、上記基準長方形R1、R2、R3に全体領域がグレインバウンダリーで取り囲まれたグレインG1、G2、G3のみを選択することができる。
【0032】
本発明者らは、上述した誘電体層111の平均のグレインサイズの条件、即ち、1<A2/M1≦1.5の条件とA2<A1の条件とを同時に満たす場合、耐電圧特性などの積層型キャパシターの信頼性基準になり得る特性が向上することが分かり、アクティブ部112の中央領域よりはサイドマージン部113に隣接した境界部のグレインサイズA2とサイドマージン部113の中央領域でグレインサイズM1の関係が重要なパラメーターであることを確認した。即ち、A1>A2>M1の条件を満たすと共に、A2/M1≦1.5の条件も積層型キャパシター100の信頼性に主な影響を及ぼし、A2/M1>1.5の場合、アクティブ部112とサイドマージン部113との間にグレインサイズの偏差が大きくなり過ぎて信頼性が低下するおそれがある。上述した誘電体層111の平均のグレインサイズの条件に関するより詳しい事項は後述する。
【0033】
さらに具体的なグレインサイズの条件として、A2/A1≧0.7の条件を満たす場合、信頼性の向上効果はさらに増大することができ、A2/A1<0.7の場合、アクティブ部112内でグレインサイズの散布が大きくなり過ぎて耐電圧特性などで不利な面がある。また、サイドマージン部113のうちアクティブ部112に隣接したサイドマージン境界部で誘電体層111の平均のグレインサイズをM2とする時、M2>M1の条件をさらに満たすことができる。これと共に、M1とM2との関係はM2/M1≧0.7の条件を満たすことができ、M2/M1<0.7の場合、サイドマージン部113内でグレインサイズの散布が大きくなり過ぎて耐電圧特性などで不利な面がある。一方、上述した方式と同様に、M2の場合、横の長さがWM/4、縦の長さがT/3であり、サイドマージン部113で第2方向中心ラインL2を基準として対称である第4長方形R4に存在するグレインG4の平均サイズであることができる。この場合、第4長方形R4はアクティブ部112と接することができる。
【0034】
上述した誘電体のグレインサイズの条件を実現するために、次の方法を一例として使用することができる。即ち、本体110を形成するために、セラミック粉末、バインダー、溶剤などを混合してセラミックグリーンシートを製造する場合、アクティブ部112とサイドマージン部113でセラミック粒子の粒度分布、バインダー含量、Ba/Ti値(即ち、Tiに対するBaのモル比)などを調節する方法を用いることができる。アクティブ部112の形成用シートよりサイドマージン部113の形成用シートでバインダーの含量割合を低くする場合、またはBa/Ti値を大きくする場合は、焼成する時にサイドマージン部113の形成用シートで先に収縮が起こる。この場合、サイドマージン部113の収縮速度は境界部より中央領域でさらに速く、これとは違って、アクティブ部112では中央領域より境界部でさらに速いことがある。これにより、サイドマージン部113の誘電体層111でグレインサイズが相対的に小さくなる。焼成工程後、アクティブ部112とサイドマージン部113でバインダーはほとんど検出されないため含量は比較できないが、Ba/Ti値条件は製造工程時と同様であってよい。即ち、アクティブ部112の中央領域CAで誘電体層111のTiに対するBaのモル比は、サイドマージン部113の中央領域CMで誘電体層111のTiに対するBaのモル比より小さくてよい。また、アクティブ部112のうちサイドマージン部113に隣接したアクティブ境界部で誘電体層111のTiに対するBaのモル比は、アクティブ部112の中央領域CAで誘電体層111のTiに対するBaのモル比より大きく、サイドマージン部113の中央領域CMで誘電体層111のTiに対するBaのモル比より小さくてよい。
【0035】
一方、セラミック粒子の粒度分布も焼成後のアクティブ部112とサイドマージン部113で誘電体層111のグレインサイズに影響を及ぼすことができるが、本発明者の研究によると、バインダー含量やBa/Ti値より影響を少なく与えた。したがって、本実施形態の上述したグレインサイズの条件を得るためにサイドマージン部113の形成用シートにアクティブ部112の形成用シートよりさらに小さい粒度を有するセラミック粒子を用いなければならないものではないといえる。
【0036】
本発明の発明者らは、アクティブ部とサイドマージン部で平均のグレインサイズを異にしてサンプルを製作して、各領域で平均のグレインサイズ及びその割合を測定し、サンプル別にブレークダウン電圧(Breakdown Voltage、BV)、高温加速寿命(HALT)実験をした。表1に実験結果を示し、グレインサイズの単位はnmである。また、BV及びHALT判定の表示項目の意味は、以下の通りである。
◎:優秀
○:良好
△:普通
×:不良
【0037】
【0038】
上記の実験結果によると、本発明の実施例(サンプル1-6)の場合、1<A2/M1≦1.5の条件とA2<A1の条件を同時に満たし、ブレークダウン電圧と高温加速寿命の実験のいずれも優秀であるか良好な結果を示した。これと違って、比較例(サンプル7-15)の場合、1<A2/M1≦1.5の条件とA2<A1の条件のいずれか一つを満たせず、良好な結果が得られなかった。特に、1<A2/M1≦1.5の条件から大きく外れたサンプル(サンプル12-15)は不良と判定された。
【0039】
また、高温加速寿命の実験結果をさらに具体的にみると、
図9の場合、1<A2/M1≦1.5、0.7≦A2/A1<1、0.7≦M1/M2<1の条件を満たすサンプルの信頼性テスト(経時により絶縁抵抗が低下する様相を測定)グラフである。
図10はA2/M1≧1.5、A2/A1≧1、0.7≦M1/M2≧1の条件を満たすサンプルの信頼性テストグラフである。
図11はA2/M1≦1、A2/A1≦0.7、M1/M2≦0.7の条件を満たすサンプルの信頼性テストグラフである。
図9のグラフを見ると、本発明の上述したグレインサイズの条件を満たすサンプルは高温加速寿命に優れていた。本発明の上述したグレインサイズの条件を満たせないサンプルの場合、
図10のグラフのように信頼性に大きな問題を示したり、
図11のグラフのように絶縁抵抗自体が非常に低くて耐電圧特性に問題があった。
【0040】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは当技術分野の通常の知識を有する者には自明なことであり、これも添付の特許請求の範囲に記載された技術的思想に属するといえる。
【符号の説明】
【0041】
100:積層型キャパシター
110:本体
111:誘電体層
112:アクティブ部
113:サイドマージン部
114:カバー部
121、122:内部電極
131、132:外部電極