(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073960
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂用改質剤
(51)【国際特許分類】
C08G 81/02 20060101AFI20220510BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C08G81/02
C08L77/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021149035
(22)【出願日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020181024
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 絢香
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰司
(72)【発明者】
【氏名】徳永 浩信
【テーマコード(参考)】
4J002
4J031
【Fターム(参考)】
4J002BB202
4J002BB282
4J002CL012
4J002CL031
4J002CL032
4J002CL051
4J002CL052
4J002CL092
4J002FD202
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J031AA12
4J031AA55
4J031AB01
4J031AC07
4J031AD01
4J031BA28
4J031BA29
4J031BD30
(57)【要約】
【課題】 ポリアミド樹脂に、吸水時の優れた機械的強度、優れた寸法安定性と外観を与えるポリアミド樹脂用改質剤を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y);ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z);ポリアミド樹脂組成物(Z)を成形してなる成形品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y)。
【請求項2】
前記ポリオレフィンのブロック(a)の数平均分子量(Mn)が、1,000~25,000である請求項1記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項3】
前記ポリアミドのブロック(b)の数平均分子量(Mn)が、500~10,000である請求項1又は2記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(X)が、(a)-(b)ジブロック型構造又は(a)-(b)-(a)トリブロック型構造である請求項1~3のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項5】
前記ブロックポリマー(X)の数平均分子量(Mn)が、3,000~30,000である請求項1~4のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項6】
前記ポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)との重量比[(a)/(b)]が30/70~80/20である請求項1~5のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか記載のポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)との重量比[(Y)/(C)]が、1/99~20/80である請求項7記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8記載のポリアミド樹脂組成物(Z)を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂用改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐熱性、機械的強度(機械物性)に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして、種々の用途に使用されている。
しかしながら、吸水時の機械的強度の低下や寸法変化が課題であり、例えば、カーボンナノファイバーを添加したポリアミド樹脂組成物が提案されている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カーボンナノファイバー等のフィラーを添加する場合、成形品の外観を損なう場合があり、それを解決することが望まれていた。
本発明の目的は、ポリアミド樹脂に、吸水時の優れた機械的強度、優れた寸法安定性と外観を与えるポリアミド樹脂用改質剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)とを構成単位として有するブロックポリマー(X)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は下記の効果を奏する。
(1)ポリアミド樹脂組成物の成形品の吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。
(2)成形品に優れた機械的強度(機械物性)を与える。
(3)成形品に優れた外観を与える。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリオレフィンのブロック(a)>
ポリオレフィンのブロック(a)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-1)、水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-2)、アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-3)及びイソシアネート基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-4)、カルボキシル基及び水酸基の両方をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-5)、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-1)、水酸基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-2)、アミノ基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-3)及びイソシアネート基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-4)、及びカルボキシル基及び水酸基の両方をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-5)等が挙げられる。
上記(a1-1)~(a2-5)は、公知の製造方法で得られる。
【0008】
これらの内で、変性の容易さ及び成形時の耐熱性の観点から好ましいのは、末端にカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する(a1-1)及び(a2-1)である。
尚、本発明における末端とは、ポリマーを構成するモノマー単位の繰り返し構造が途切れる終端部を意味する。また、両末端とは、ポリマーの主鎖における両方の末端を意味し、片末端とは、ポリマーの主鎖におけるいずれか一方の末端を意味する。
【0009】
(a)は、例えば、両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a1-0)の両末端に、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入することによって得ることができる。
なお、「主成分」とは、ポリオレフィン全体の重量に占める両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が、ポリオレフィン全体の重量の50重量%以上(好ましくは50重量%超)であることを意味する。
ただし、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量がポリオレフィン全体の重量の50重量%未満であっても、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量と、後述する片末端が変性可能なポリオレフィンの重量の合計がポリオレフィン全体の重量の50重量%以上であり、両末端が変性可能なポリオレフィンの重量が片末端が変性可能なポリオレフィンの重量以上である場合には、(a1-0)であるとする 。
【0010】
両末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a1-0)には、炭素数2~30(好ましくは2~12、更に好ましくは2~10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合[(共)重合は、重合又は共重合を意味する。以下同様。]によって得られ、プロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上含有するポリオレフィン(重合法)及び減成されたポリオレフィン{高分子量[好ましくは数平均分子量(以下Mnと略記)10,000~150,000]ポリオレフィンを機械的、熱的又は化学的に減成してなるもの(減成法)}が含まれる。
【0011】
これらの内、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を導入する際の変性のし易さ及び入手のし易さの観点から好ましいのは、減成されたポリオレフィンであり、更に好ましいのは熱減成されたポリオレフィンである。熱減成によれば、後述の通り1分子当たりの末端二重結合数が1~2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られ、上記低分子量ポリオレフィンはカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基等を導入して変性することが容易である。
【0012】
本発明におけるポリマーの数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
・装置(一例) :「HLC-8120」[東ソー(株)製]
・カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL-M」[東ソー(株)製](1本)
・試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
・溶液注入量:100μl
・流量:1ml/分
・測定温度:135℃
・検出装置:屈折率検出器
・基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、
9,100、18,100、37,900、96,400、
190,000、355,000、1,090,000、
2,890,000)[東ソー(株)製]
【0013】
熱減成されたポリオレフィンとしては特に限定されないが、高分子量ポリオレフィンを、不活性ガス中で加熱して得られたもの(300~450℃で0.5~10時間、例えば特開平3-62804号公報に記載の方法で得られたもの)及び空気中で加熱することにより熱減成されたもの等が挙げられる。
【0014】
熱減成法に用いられる高分子量ポリオレフィンとしては、炭素数2~30(好ましくは2~12、更に好ましくは2~10)のオレフィンの1種又は2種以上の混合物の(共)重合体[Mnは好ましくは12,000~100,000、更に好ましくは15,000~70,000:メルトフローレート(以下MFRと略記:単位はg/10min)は好ましくは0.5~150、更に好ましくは1~100]であって、好ましくはプロピレンに由来する構成単位をポリオレフィン中に30モル%以上有するもの等が挙げられる。
ここでMFRとは、樹脂の溶融粘度を表す数値であり、数値が大きいほど溶融粘度が低いことを表す。MFRの測定には、JIS K6760で定められた押出し形プラストメータを用い、測定方法はJIS K7210-1(2014)で規定した方法に準拠する。例えばポリプロピレンの場合は、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される。
炭素数2~30のオレフィンとしては、炭素数2~30のα-オレフィン及び炭素数4~30のジエンが挙げられる。
【0015】
炭素数2~30のα-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-イコセン及び1-テトラコセン等が挙げられる。
炭素数4~30のジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン及び1,11-ドデカジエン等が挙げられる。
炭素数2~30のオレフィンの内、分子量制御の観点から好ましいのは、エチレン、プロピレン、炭素数4~12のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物であり、更に好ましいのは、エチレン、プロピレン、炭素数4~10のα-オレフィン、ブタジエン及びこれらの混合物、特に好ましいのはエチレン、プロピレン及びこれらの混合物である。
【0016】
ポリオレフィン(a1-0)のMnは、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは800~20,000であり、更に好ましくは1,000~10,000、特に好ましくは1,200~6,000である。
【0017】
(a1-0)の1分子当たりの末端二重結合の平均数は、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは1.1~2.5個であり、更に好ましくは1.3~2.2個、特に好ましくは1.5~2.0個である。
【0018】
熱減成法により低分子量ポリオレフィンを得る方法を用いると、Mn800~20,000の範囲で、1分子当たりの末端二重結合の平均数が1.1~2.5個の(a1-0)が容易に得られる。
【0019】
片末端が変性可能なポリオレフィンを主成分とするポリオレフィン(a2-0)は、(a1-0)と同様にして得ることができ、(a2-0)のMnは、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは800~20,000であり、更に好ましくは1,000~10,000、特に好ましくは1,200~6,000である。
【0020】
(a2-0)の1分子当たりの二重結合の平均数は、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは0.5~1.4個であり、更に好ましくは0.6~1.3個、特に好ましくは0.7~1.2個、最も好ましくは0.8~1.1個である。
【0021】
熱減成法により低分子量ポリオレフィンを得る方法を用いると、Mnが800~20,000の範囲で、1分子当たりの末端二重結合の平均数が0.5~1.4個の(a2-0)が容易に得られる。
【0022】
熱減成法で得られた低分子量ポリオレフィンは、前記末端二重結合の平均数を有することから、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基等を導入して変性することが容易である。
【0023】
(a1-0)及び(a2-0)は、一般的にこれらの混合物として得られるが、混合物をそのまま使用してもよく、精製分離してから使用してもよい。これらの内、製造コスト等の観点から好ましいのは、混合物である。
【0024】
以下、ポリオレフィン(a1-0)の両末端にカルボキシル基、カルボン酸無水物基、水酸基、アミノ基又はイソシアネート基を有する(a1-1)~(a1-5)について説明するが、ポリオレフィン(a2-0)の片末端にこれらの基を有する(a2-1)~(a2-5)については、(a1-0)を(a2-0)に置き換えたものについて、(a1-1)~(a1-5)と同様にして得ることができる。
【0025】
カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-1)としては、(a1-0)の末端をα,β-不飽和カルボン酸(無水物)(α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物を意味する。以下同様。)で変性した構造を有するポリオレフィン(a1-1-1)、(a1-1-1)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a1-1-2)、(a1-0)を酸化又はヒドロホルミル化により変性した構造を有するポリオレフィン(a1-1-3)、(a1-1-3)をラクタム又はアミノカルボン酸で二次変性した構造を有するポリオレフィン(a1-1-4)及びこれらの2種以上の混合物等が使用できる。
なお、α,β-不飽和カルボン酸(無水物)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物を意味する。
【0026】
(a1-1-1)は、(a1-0)をα,β-不飽和カルボン酸(無水物)で変性することにより得ることができる。
変性に用いられるα,β-不飽和カルボン酸(無水物)としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸及びモノ又はジカルボン酸の無水物が挙げられ、具体的には(メタ)アクリル酸[(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタアクリル酸を意味する。以下同様。]、マレイン酸(無水物)、フマル酸、イタコン酸(無水物)及びシトラコン酸(無水物)等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から好ましいのは、ジカルボン酸及びモノ又はジカルボン酸の無水物であり、更に好ましいのは、マレイン酸(無水物)及びフマル酸、特に好ましいのはマレイン酸(無水物)である。
【0027】
変性に使用するα,β-不飽和カルボン酸(無水物)の量は、ポリオレフィン(a1-0)の重量に基づき、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは0.5~20重量%であり、更に好ましくは1~15重量%、特に好ましくは2~10重量%である。
α,β-不飽和カルボン酸(無水物)による変性は、例えば、(a1-0)の末端二重結合に、溶液法又は溶融法のいずれかの方法で、α,β-不飽和カルボン酸(無水物)を付加反応(エン反応)させることにより行うことができ、反応温度は、好ましくは170~230℃である。
【0028】
また、(a1-1)の酸価は、(b)との反応性及びブロックポリマー(X)の構造制御の容易さの観点から、好ましくは4~100mgKOH/g、更に好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
尚、本発明における酸価は、指示薬としてフェノールフタレインを含むKOH/メタノール溶液を用いた滴定によって測定され、酸基がカルボン酸無水物基の場合、メタノールによりハーフエステル化された後のハーフエステル化酸価として測定される。
【0029】
水酸基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-2)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-1)を、水酸基を有するアミンで変性したヒドロキシル基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
変性に使用できる水酸基を有するアミンとしては、炭素数2~10の水酸基を有するアミンが挙げられ、具体的には2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、4-アミノブタノール、5-アミノペンタノール、6-アミノヘキサノール及び3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から好ましいのは、炭素数2~6の水酸基を有するアミン(2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、5-アミノペンタノール及び6-アミノヘキサノール等)であり、更に好ましいのは2-アミノエタノール及び4-アミノブタノール、特に好ましいのは2-アミノエタノールである。
【0030】
変性に用いる水酸基を有するアミンの量は、被変性物(a1-1)の重量に基づいて、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは、0.5~20重量%であり、更に好ましくは1~15重量%、特に好ましくは2~10重量%である。
【0031】
(a1-2)の水酸基価は、(b)との反応性及びブロックポリマー(X)の構造制御の容易さの観点から、好ましくは4~100mgKOH/gであり、更に好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
【0032】
アミノ基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-3)としては、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-1)を、ジアミンで変性したアミノ基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が使用できる。
【0033】
ジアミンとしては、炭素数2~12の脂肪族のジアミン[直鎖ジアミン(エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン及び1,10-ジアミノデカン等)及び分岐アルキル鎖を有するジアミン(1,2-ジアミノプロパン、1,5-ジアミノ-3-メチルペンタン、1,3-ジアミノ-2,2-ジエチルプロパンジアミン、1,2-、1,3-又は2,3-ジアミノブタン等)等]及び炭素数6~20の脂環式のジアミン[1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン及び2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン等]等が挙げられる。
これらの内、変性の容易さの観点から好ましいのは、炭素数2~8のジアミン、更に好ましいのはエチレンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン及び1,8-ジアミノオクタン、特に好ましいのはエチレンジアミン及び1,6-ジアミノヘキサン、最も好ましいのはエチレンジアミンである。
【0034】
(a1-1)の変性に用いるジアミンの量は、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、(a1-1)の重量に基づいて、好ましくは0.5~20重量%であり、更に好ましくは1~15重量%、特に好ましくは2~10重量%である。尚、ジアミンによる(a1-1)の変性は、ポリマー分子間の架橋反応を防止する観点から、(a1-1)の重量に基づいて、好ましくは0.5~1,000重量%、更に好ましくは1~500重量%、特に好ましくは2~300重量%のジアミンを使用した後、未反応のジアミンを減圧下、120~230℃で除去する方法が好ましい。
【0035】
(a1-3)のアミン価は、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは4~100mgKOH/gであり、更に好ましくは4~50mgKOH/g、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。
【0036】
イソシアネート基を両末端に有するポリオレフィン(a1-4)としては、(a1-2)をポリ(2~3又はそれ以上)イソシアネートで変性したイソシアネート基を有するポリオレフィン及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、炭素数(イソシアネート(NCO)基中の炭素原子を除く。以下同様。)6~20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2~18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4~15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8~15の芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートの変性体及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0037】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン及び1,5-ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。
【0039】
脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0040】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、m-又はp-キシリレンジイソシアネート(XDI)及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。
【0041】
(a1-5)としては、(a1-0)の片末端をα,β-不飽和カルボン酸無水物で変性した構造を有するポリオレフィンを、さらにジオールアミンで二次変性した構造を有するポリオレフィン(a1-5-1)が使用できる。
二次変性に用いるジオールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミンが挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネートの変性体としては、ウレタン変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体及びウレトジオン変性体等が挙げられる。
ポリイソシアネートの内好ましいのは、TDI、MDI及びHDIであり、更に好ましいのはHDIである。
【0043】
ポリイソシアネートと(a1-2)との反応は、一般的なウレタン化反応と同様の方法で行うことができる。
ポリイソシアネートのイソシアネート基と(a1-2)の水酸基との当量比(NCO:OH)は、好ましくは1.8:1~3:1であり、更に好ましくは2:1である。
ウレタン化反応を促進するために、必要によりウレタン化反応に一般的に用いられる触媒を使用してもよい。触媒としては、金属触媒{錫触媒[ジブチルチンジラウレート及びスタナスオクトエート等]、鉛触媒[2-エチルヘキサン酸鉛及びオクテン酸鉛等]、その他の金属触媒[ナフテン酸金属塩(ナフテン酸コバルト等)及びフェニル水銀プロピオン酸塩等]};アミン触媒{トリエチレンジアミン、ジアザビシクロアルケン〔1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等〕、ジアルキルアミノアルキルアミン(ジメチルアミノエチルアミン及びジメチルアミノオクチルアミン等)、複素環式アミノアルキルアミン[2-(1-アジリジニル)エチルアミン及び4-(1-ピペリジニル)-2-ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸(ギ酸等)塩、N-メチル又はエチルモルホリン、トリエチルアミン及びジエチル-又はジメチルエタノールアミン等};及びこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
触媒の使用量は、ポリイソシアネート及び(a1-2)の合計重量に基づいて、好ましくは3重量%以下であり、好ましくは0.001~2重量%である。
【0044】
ポリオレフィンのブロック(a)のMnは、寸法安定性、外観および後述するブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、好ましくは1,000~25,000であり、更に好ましくは1,500~12,000、特に好ましくは2,000~7,000である。
【0045】
ポリオレフィン中のプロピレンに由来する構成単位の量は、樹脂組成物(Z)の機械的強度、寸法安定性の観点から、好ましくは30~100モル%、さらに好ましくは50~100モル%、とくに好ましくは80~100モル%、最も好ましくは96~100モル%である。
【0046】
<ポリアミドのブロック(b)>
ポリアミドのブロック(b)としては、ジカルボン酸又はそのアミド形成性誘導体とジアミンとを必須構成単量体とするポリアミド(b1)、水、ジアミン又はモノアミンにラクタムを開環重合させたポリアミド(b2)、アミノカルボン酸を重縮合させたポリアミド(b3)及び(b1)~(b3)の内の少なくとも2種以上をワンショットで合成して得られるポリアミド(b4)等が挙げられる。
ポリアミドのブロック(b)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリアミド(b1)に用いられるジカルボン酸としては、炭素数2~20のジカルボン酸[炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸等)、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、2,6-又は2,7-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸及び5-スルホイソフタル酸等)及び炭素数5~20の脂環式ジカルボン酸(シクロプロパンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ビシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸及びショウノウ酸等)等]等が挙げられる。
【0048】
ジカルボン酸のアミド形成性誘導体としては、ジカルボン酸のアルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル及びエチルエステル等)及びジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
ジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体は、それぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0049】
ポリアミド(b1)に用いられるジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体の内、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体であり、更に好ましいのは、炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸及びそのアミド形成性誘導体であり、特に好ましいのは炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸及びこれらのアミド形成性誘導体、とりわけ好ましいのは、アジピン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びこれらのアミド形成性誘導体、最も好ましいのは、アジピン酸及びそのアミド形成誘導体である。
【0050】
ポリアミド(b1)及び(b2)に用いられるジアミンとしては、上記ポリオレフィン(a1-3)に用いられるジアミンと同様のものが挙げられ、濡れ性向上及び密着性向上(塗装性向上)等の表面改質効果の観点から好ましいのは、炭素数2~12の脂肪族ジアミン、更に好ましいのは、炭素数6及び炭素数10の脂肪族ジアミン、特に好ましいのは、1,6-ジアミノヘキサン及び1,10-ジアミノデカン、最も好ましいのは1,6-ジアミノヘキサンである。
ジアミンは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
ポリアミド(b2)に用いられるモノアミンとしては、炭素数1~20のモノアミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン及びドデシルアミン等)が挙げられる。
【0052】
ポリアミド(b2)に用いられるラクタムとしては、合成の容易さおよび寸法安定性の観点から、好ましいのは、ε-カプロラクタム、11-ウンデカンラクタム、12-ラウロラクタムであり、更に好ましいのは、ε-カプロラクタムである。
【0053】
ポリアミド(b3)に用いられるアミノカルボン酸としては、上記ポリオレフィン(a1-1-2)に用いられるアミノカルボン酸と同様のものが挙げられ、合成の容易さおよび寸法安定性の観点から、好ましいのは、グリシン、ロイシン、8-アミノカプリル酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸であり、更に好ましいのは、8-アミノカプリル酸、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸、特に好ましいのは11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸、最も好ましいのは12-アミノドデカン酸である。
【0054】
ポリアミドのブロック(b)としては、ブロックポリマー(X)の構造制御の観点から、片末端に1級アミノ基を有するポリアミド(以下ポリアミドモノアミンと記載する場合がある。)を用いることが好ましい。ポリアミドモノアミンは、ジカルボン酸とジアミンのモル比を調整することにより得る方法;モノアミン共存下でジカルボン酸とジアミンのモル比を調整することにより得る方法;モノアミンにラクタムを開環重合する方法;アミノカルボン酸を重縮合する方法等が挙げられる。
【0055】
また、ポリアミドのブロック(b)は、機械的強度、外観、および寸法安定性の観点から、1,6-ジアミノヘキサン、1,10-ジアミノデカン、ε-カプロラクタム、11-ウンデカンラクタム、12-ラウロラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を必須構成単量体とするポリアミドであることが好ましい。
【0056】
ポリアミドのブロック(b)のMnは、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは500~10,000であり、更に好ましくは1,000~6,000、特に好ましくは2,000~4,000である。
【0057】
ポリアミドのブロック(b)の製法としては、一般的なポリアミドの製法がそのまま適用できる。ポリアミド化反応は、例えば、必要により減圧下で、150~300℃の温度範囲で行われ、反応時間は好ましくは0.5~20時間である。また、必要により一般的にポリアミド化反応に用いられる触媒を用いてもよい。
【0058】
<ブロックポリマー(X)>
本発明におけるブロックポリマー(X)は、前記ポリオレフィンのブロック(a)と、ポリアミドのブロック(b)とを構成単位として有する。
【0059】
(X)の構造として、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましいのは、(1):(a)-(b)ジブロック型構造又は(2):(a)-(b)-(a)トリブロック型構造、特に好ましいのは、(a)-(b)ジブロック型構造である。
【0060】
分子構造が上記(1)~(2)のブロックポリマーは、例えば、以下の方法で得ることできる。
【0061】
直鎖状の(a)-(b)ジブロック型構造のブロックポリマーは、例えばカルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-1)とポリアミドモノアミンとを1:1のモル比で反応させることや、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-1)と両末端に1級アミノ基を有するポリアミド(以下ポリアミドジアミンと記載する場合がある。)とを1:1のモル比で反応させることや、カルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの両末端に有するポリオレフィン(a1-1)とポリアミドモノアミンとを1:1のモル比で反応させることで得ることができる。
【0062】
直鎖状の(a)-(b)-(a)トリブロック型構造のブロックポリマーは、例えばカルボキシル基又はカルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a2-1)と両末端にアミノ基を有するポリアミドモノアミンとを1:1のモル比で反応させることで得ることができる。
【0063】
尚、上記においては各構造を有するブロックポリマー(X)を得る際のポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)の組合せの一例を示したが、上述の通り、(a)と(b)は種々の官能基を有するため、(a)が有する官能基と(b)が有する官能基が反応し得るものであれば、組合せについては適宜採用することができる。
【0064】
(X)としては、ポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)とが、アミド結合、イミド結合、エステル結合又はウレア結合を介して結合した構造を有するものが好ましく、耐熱性及び製造上の容易さの観点から、イミド結合又はエステル結合であることが更に好ましく、イミド結合であることが特に好ましい。
【0065】
(X)のMnは、機械的強度、寸法安定性および外観の観点から、好ましくは3,000~30,000、更に好ましくは4,000~25,000、特に好ましくは5,000~20,000である。
【0066】
ブロックポリマー(X)を構成するポリオレフィンのブロック(a)とポリアミドのブロック(b)との重量比[(a)/(b)]は、機械的強度および寸法安定性の観点から、好ましくは30/70~80/20、更に好ましくは35/65~75/25、特に好ましくは40/60~70/30である。
【0067】
(X)が、(a)と(b)とが、アミド結合、イミド結合又はエステル結合を介して結合した構造を有するものである場合、例えば、(a)と(b)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100~250℃、圧力0.003~0.1MPaで、アミド化反応、イミド化反応又はエステル化反応で生成する水(以下生成水と略記)を反応系外に除去しながら、1~50時間反応させる方法で製造することができる。
【0068】
アミド化反応、イミド化反応及びエステル化反応においては、反応を促進させるために各反応で一般的に用いられる触媒を使用することができる。触媒の使用量は、(a)及び(b)の重量に基づいて、好ましくは0.05~0.5重量%である。触媒を使用した場合は、反応終了後必要により触媒を中和し、吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。
【0069】
生成水を反応系外に除去する方法としては、以下の方法が挙げられる。
[1]水と相溶しない有機溶媒(例えばトルエン、キシレン及びシクロヘキサン等)を使用して、還流下、有機溶媒と生成水とを共沸させて、生成水のみを反応系外に除去する方法。
[2]反応系内にキャリアガス(例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素等)を吹き込み、キャリアガスと共に生成水を反応系外に除去する方法。
[3]反応系内を減圧にして生成水を反応系外に除去する方法。
【0070】
(X)が、(a)と(b)とが、ウレア結合を介して結合した構造を有するものである場合、例えば、(b)を反応容器に投入し、撹拌下30~100℃に加温した後(a)を投入し、同温度で1~20時間反応させる方法で製造することができる。
【0071】
<ポリアミド樹脂用改質剤(Y)>
本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、上述のブロックポリマー(X)を含有する。該ポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、後述のポリアミド樹脂(C)用改質剤、とりわけポリアミド樹脂用寸法安定剤として好適に使用できる。
樹脂用改質剤(Y)は、後述の着色剤(D1)、離型剤(D2)、酸化防止剤(D3)、難燃剤(D4)、紫外線吸収剤(D5)、抗菌剤(D6)、相溶化剤(D7)、充填剤(D8)及びエステル交換防止剤(D9)等の添加剤(D)を含有することができる。
【0072】
<ポリアミド樹脂組成物(Z)>
本発明のポリアミド樹脂組成物(Z)は、前記ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有する。
ポリアミド樹脂用改質剤(Y)とポリアミド樹脂(C)との重量比[(Y)/(C)]は、寸法安定性および機械物性の観点から、好ましくは1/99~20/80、更に好ましくは2/98~15/85、特に好ましくは3/97~10/90である。
【0073】
<ポリアミド樹脂(C)>
本発明におけるポリアミド樹脂(C)としては、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンとジカルボン酸を出発原料としたアミド結合を有する熱可塑性重合体が挙げられる。アミノ酸としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられ、ラクタムとしてはε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム等が挙げられる。
【0074】
ジアミンとしては、脂肪族(C4~15のもの、例えばテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン)、芳香環含有(C6~20のもの、例えばメタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン)、芳香族(C6~20のもの、例えばフェニレンジアミン)、脂環含有[C6~20のもの、例えば1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン]、複素環含有[C6~15のもの、例えばビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン]等が挙げられる。
【0075】
ジカルボン酸としては、脂肪族(C6~20のもの、例えばアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、芳香環含有(C8~20のもの、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸)、脂環含有(C8~20のもの、例えばヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸)等が挙げられる。
【0076】
ポリアミド樹脂(C)の具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6/10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6/12)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン11/6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ナイロン6T/6I)、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド[ナイロン11T(H)]およびこれらのポリアルキレングリコール(Mn100~1,000、例えばポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール)等との共重合体、並びにこれらから構成される共重合ポリアミド[例えばポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6/66)、ポリカプラミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6/12)]等が挙げられる。これらの(C)は単独使用または2種以上混合して用いてもよい。
【0077】
上記ポリアミド樹脂(C)のうち、改質効果の観点から、好ましいのは、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミドである。上記の中でも、耐熱性に優れ、成形加工が容易と言う観点から、ナイロン6、ナイロン66が特に好ましい。
なお、ポリアミド樹脂(C)のMnは、好ましくは11,000~30,000、更に好ましくは12,000~25,000、特に好ましくは13,000~20,000である。
【0078】
ポリアミド樹脂組成物(Z)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、着色剤(D1)、離型剤(D2)、酸化防止剤(D3)、難燃剤(D4)、紫外線吸収剤(D5)、抗菌剤(D6)、相溶化剤(D7)、充填剤(D8)及びエステル交換防止剤(D9)等の添加剤(D)を含有させることができる。各添加剤はそれぞれ1種又は2種以上併用のいずれでもよい。
【0079】
着色剤(D1)としては、無機顔料[白色顔料、コバルト化合物、鉄化合物及び硫化物等]、有機顔料[アゾ顔料及び多環式顔料等]、染料[アゾ系、インジゴイド系、硫化系、アリザリン系、アクリジン系、チアゾール系、ニトロ系及びアニリン系等]等が挙げられる。
【0080】
離型剤(D2)としては、高級脂肪酸の低級(炭素数1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(炭素数2~18)の多価(2価~4価又はそれ以上)アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸(炭素数2~18)のグリコール(炭素数2~8)エステル(エチレングリコールモノステアレート等)及び流動パラフィン等が挙げられる。
【0081】
酸化防止剤(D3)としては、フェノール化合物〔単環フェノール(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール等)、ビスフェノール[2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等]、多環フェノール[1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等]等〕、硫黄化合物(ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート等)、リン化合物(トリフェニルホスファイト等)及びアミン化合物(オクチル化ジフェニルアミン等)等が挙げられる。
【0082】
難燃剤(D4)としては、ハロゲン含有難燃剤、窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、珪素含有難燃剤及びリン含有難燃剤等が挙げられる。
【0083】
紫外線吸収剤(D5)としては、ベンゾトリアゾール[2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等)、サリチレート(フェニルサリチレート等)及びアクリレート(2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等)等が挙げられる。
【0084】
抗菌剤(D6)としては、安息香酸、ソルビン酸、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素、ニトリル(2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル等)、チオシアノ(メチレンビスチアノシアネート)、N-ハロアルキルチオイミド、銅剤(8-オキシキノリン銅等)、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリハロアリル、トリアゾール、有機窒素硫黄化合物(スラオフ39等)、4級アンモニウム化合物及びピリジン系化合物等が挙げられる。
【0085】
相溶化剤(D7)としては、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基及びポリオキシアルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(極性基)を有する変性ビニル重合体等:例えば、特開平3-258850号公報に記載の重合体、また、特開平6-345927号公報に記載のスルホン酸基を有する変性ビニル重合体及びポリオレフィン部分と芳香族ビニル重合体部分とを有するブロック重合体等が挙げられる。
【0086】
充填剤(D8)としては、例えば無機充填剤(炭化カルシウム、タルク及びクレイ等)及び有機充填剤(尿素及びステアリン酸カルシウム等)等が挙げられる。
エステル交換防止剤(D9)としては、例えばリン酸エステル[ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、モノオクタデシルホスフェート及びジオクタデシルホスフェート等]及び亜リン酸エステル[トリス(2,4-ジ‐t-ブチルフェニル)ホスファイト等]等が挙げられる。
【0087】
ポリアミド樹脂(C)の重量に基づく(D)の合計含有量は、一般的に45重量%以下、各添加剤の効果及び成形品の機械物性の観点から好ましくは0.001~40重量%、更に好ましくは0.01~35重量%;各(D)の含有量は、同様の観点から(D1)は好ましくは0.1~3重量%、更に好ましくは0.2~2重量%;(D2)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D3)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D4)は好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%;(D5)は好ましくは0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%;(D6)は好ましくは0.5~20重量%、更に好ましくは1~10重量%;(D7)は好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%;(D8)は好ましくは0.5~10重量%、更に好ましくは1~5重量%;(D9)は0.01~3重量%、更に好ましくは0.05~1重量%である。
【0088】
本発明の樹脂組成物(Z)は、本発明の樹脂用改質剤(Y)、ポリアミド樹脂(C)及び必要により添加剤(D)を溶融混合することにより得ることができる。
このとき、樹脂用改質剤(Y)に含まれている添加剤(D)と同様の添加剤(D)を、樹脂組成物(Z)に添加してもよい。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状又は粉体状にした各成分を、適切な混合機(ヘンシェルミキサー等)で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に制限はないが、例えば、
[1](C)と(Y)を溶融混合した後、必要により(D)を一括投入して溶融混合する方法;
[2](C)と(Y)を溶融混合する際、(C)の一部をあらかじめ溶融混合して(Y)の高濃度組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作製した後、残りの(C)及び必要に応じて(D)を溶融混合する方法(マスターバッチ法又はマスターペレット法);
等が挙げられる。
[2]の方法におけるマスターバッチ樹脂組成物中の(Y)の濃度は、好ましくは20~80重量%であり、更に好ましくは50~70重量%である。
[1]及び[2]の方法の内、(Y)を(C)に効率的に分散しやすいという観点から、[2]の方法が好ましい。
【0089】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の樹脂組成物(Z)を成形したものである。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形及びフィルム成形(キャスト法、テンター法及びインフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて単層成形、多層成形又は発泡成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形できる。
【0090】
本発明の成形品は、吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。また、優れた機械的強度(機械物性)と、優れた外観を与える。
【0091】
本発明の樹脂改質剤(Y)、該(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)の成形品は、寸法安定性、機械的強度、外観に優れるため、種々の成形品用途、精密部品用途、自動車部品用途、日常用品用途に好適に使用できる。
【実施例0092】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において部は重量部を示す。
【0093】
<製造例1>[片末端アミン変性ポリアミド(b-1)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、アジピン酸250部、ヘキサメチレンジアミン250部、ドデシルアミン40部及び酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端アミン変性ポリアミド(b-1)を得た。
なお、(b-1)のアミン価は28mgKOH/g、酸価は0mgKOH/g、Mnは2,000であった。
【0094】
<製造例2>[片末端アミン変性ポリアミド(b-2)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム430部、ドデシルアミン16部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部及び水20部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端アミン変性ポリアミド(b-2)を得た。
なお、(b-2)のアミン価は11mgKOH/g、酸価は0mgKOH/g、Mnは5,000であった。
【0095】
<製造例3>[片末端アミン変性ポリアミド(b-3)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、12-アミノドデカン酸420部、アニリン3.5部及び酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、片末端アミン変性ポリアミド(b-3)を得た。
なお、(b-3)のアミン価は6mgKOH/g、酸価は0mgKOH/g、Mnは10,000であった。
【0096】
<製造例4>[両末端アミン変性ポリアミド(b-4)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε-カプロラクタム440部、ヘキサメチレンジアミン10部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]1.5部及び水20部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら250℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2~0.5MPa)で4時間撹拌し、両末端アミン変性ポリアミド(b-4)を得た。
なお、(b-4)のアミン価は22mgKOH/g、酸価は0mgKOH/g、Mnは5,000であった。
【0097】
<製造例5>[片末端酸変性ポリプロピレン(a-1)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量ホモタイプポリプロピレン[ホモタイプポリプロピレンを410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に22分間して得られたもの。Mn:1,400、1分子当たりの二重結合の平均数:1.0]90部、無水マレイン酸12部及びキシレン30部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a-1)96部を得た。
なお、(a-1)のMnは1,500であった。
【0098】
<製造例6>[片末端酸変性エチレン-プロピレンランダム共重合体(a-2)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量エチレン-プロピレンランダム共重合体[エチレン-プロピレンランダム共重合体(プロピレン含有量=32モル%)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に16分間熱減成して得られたもの。Mn:3,900、1分子当たりの二重結合の平均数:1.0]90部、無水マレイン酸4部及びキシレン30部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a-2)92部を得た。
なお、(a-2)のMnは4,000であった。
【0099】
<製造例7>[片末端酸変性エチレン-プロピレンランダム共重合体(a-3)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量エチレン-プロピレンランダム共重合体[エチレン-プロピレンランダム共重合体(プロピレン含有量=96モル%)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に12分間熱減成して得られたもの。Mn:10,000、1分子当たりの二重結合の平均数:1.0]100部、無水マレイン酸2部及びキシレン30部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a-3)101部を得た。
なお、(a-3)のMnは10,000であった。
【0100】
<製造例8>[片末端酸変性エチレン-プロピレンランダム共重合体(a-4)]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、熱減成法で得られた低分子量エチレン-プロピレンランダム共重合体[エチレン-プロピレンランダム共重合体(プロピレン含有量=96モル%)を410±0.1℃、窒素通気下(80mL/分)に7分間熱減成して得られたもの。Mn:24,000、1分子当たりの二重結合の平均数:1.0]100部、無水マレイン酸0.8部及びキシレン30部を投入し、均一に混合した後、窒素置換し、密閉下、撹拌しながら200℃まで昇温して溶融させ、同温度で10時間反応させた。次いで、過剰の無水マレイン酸とキシレンを、減圧下(0.013MPa以下)、200℃で3時間かけて留去して、カルボン酸無水物基をポリマーの片末端に有するポリオレフィン(a-4)95部100.4部を得た。
なお、(a-4)のMnは24,000であった。
【0101】
<実施例1>
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ポリオレフィン(a-2)80部、ポリアミド(b-2)100部、及び酸化防止剤「イルガノックス1010」0.3部を投入し、撹拌しながら210℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で5時間反応させて、(X-1)を含有してなるポリアミド樹脂用改質剤(Y-1)を得た。
【0102】
<実施例2~5、比較例1>
使用原料及びその使用量を表1に記載のものに代えた以外は実施例1と同様に行い、各ポリアミド樹脂改質剤(Y)を得た。
なお、比較のためのポリアミド樹脂用改質剤(比Y-1)として、ポリオレフィン(a-2)を、そのまま使用した。
【0103】
【0104】
<実施例6~17、比較例2~4>
表2に示す配合組成(部)に従って、各配合成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、100rpm、220℃、滞留時間5分の条件で溶融混練して、各ポリアミド樹脂組成物(Z)を得た。
【0105】
表2に記載の配合成分は、以下の通りである。
ポリアミド樹脂(C-1):
ポリアミド6[商品名「UBE1013B」、宇部興産(株)製、Mn13,000]
【0106】
得られた各樹脂組成物について、射出成形機[「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)製]を用い、シリンダー温度240℃、金型温度50℃で成形試験片を作製し、下記の性能試験により評価した結果を表2に示す。
なお、評価(2)では、下記の恒温恒湿機を使用した。
・機器:低温恒温恒湿機[いすず製作所製、TPAV-48-20]
【0107】
<性能試験>
(1)平衡吸水時間(hr)
JIS K7209に準拠して、試験片(80×80×1mm)の吸水率(%)が平衡状態になるまでの時間を測定した。
【0108】
(2)吸湿試験前後の寸法変化率(%)<平行、垂直>
JIS K7143に準拠して、70℃/62%RH雰囲気中における平板試験片(80×80×2mm)の吸湿促進試験を行った。
上記条件における平衡水分率(%)は、23℃/50%RH雰囲気中における吸湿平衡率(%)に近い値となる。乾燥状態の寸法(mm)と吸湿平衡時の寸法(mm)を測定し、寸法変化率(%)を計算した。
寸法変化率(%)=
[(寸法:吸湿試験後)-(寸法:吸湿試験後)]×100 /[寸法(乾燥状態)]
なお、「平行」とは、射出成形における樹脂の流れと同じ方向を意味し、「垂直」とは、樹脂の流れに対して垂直な方向を意味する。
<評価基準>
☆: [寸法変化率]≦2.5
◎:2.5<[寸法変化率]≦3.5
○:3.5<[寸法変化率]≦4.5
△:4.5<[寸法変化率]≦5.0
×:5.0<[寸法変化率]
【0109】
(3)外観
試験片(80×80×1mm)の表面の外観を目視で観察して、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:外観に、全く異常(表面荒れ、フクレ等)なく良好
○:外観に、ほとんど異常がない
△:外観に、異常が少しあり
×:外観に、異常がある
【0110】
(4)機械的強度(アイゾット衝撃強度)の低下率
ポリアミド樹脂(C)にポリアミド樹脂用改質剤(Y)を配合した際の機械的強度の低下率を、アイゾット衝撃強度について評価した。アイゾット衝撃強度(単位:J/m)
ASTM D256 Method A(ノッチ付き、3.2mm厚)に準拠して測定した。
なお、機械的強度の低下率は樹脂改質剤(Y)の配合量によっても異なるので、改質剤(Y)の種類による低下率を明確にするため、特定の配合量での低下率をその際の改質剤(Y)の配合重量%で除した値を用いて評価した。
即ち、下式により求めた機械強度の低下率(%/重量%)を用いて以下の評価基準で評価した。
【0111】
[機械的強度の低下率(%/重量%)]=
{[配合前の機械的強度]-[配合後の機械的強度]}/[配合前の機械的強度]/[樹脂改質剤の配合重量]×100(%)
例えば、配合前の樹脂(アイゾット衝撃強度=2.0J/m)に改質剤(Y)を10重量%配合した場合で、配合後のアイゾット衝撃強度が1.8J/mである場合、計算式は以下の通りとなる。
[機械的強度の低下率(%/重量%)]=
[2.0(J/m)-1.8(J/m)]/2.0(J/m)/10(重量%)×100(%)=1.0(%/重量%)
【0112】
<評価基準>
☆: [低下率]≦0.25
◎:0.25<[低下率]≦0.5
○: 0.5<[低下率]≦2.5
△: 2.5<[低下率]≦5.5
×: 5.5<[低下率]
【0113】
【0114】
表1~2の結果から、本発明のポリアミド樹脂用改質剤(Y)は、比較のものと比べて、ポリアミド樹脂組成物の成形品の吸水性を小とし、優れた寸法安定性を付与する。
また、成形品に優れた機械的強度(機械物性)、優れた外観を与えることが分かる。
本発明の樹脂改質剤(Y)、該(Y)とポリアミド樹脂(C)とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(Z)の成形品は、寸法安定性、機械的強度、外観に優れるため、種々の成形品用途、精密部品用途、自動車部品用途、日常用品用途に好適に使用できる。