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特開2022-73983フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073983
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220510BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220510BHJP
   C07D 307/56 20060101ALI20220510BHJP
   C07D 307/82 20060101ALI20220510BHJP
   C08F 222/10 20060101ALI20220510BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/039 601
C07D307/56
C07D307/82
C08F222/10
G03F7/20 521
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157551
(22)【出願日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】17/084,993
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マランゴーニ
(72)【発明者】
【氏名】エマド・アカド
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ダブリュー・サッカレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エフ.・キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】シーセン・ホウ
(72)【発明者】
【氏名】チュンボン・リー
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4C037
4J100
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197GA01
2H197HA03
2H225AF11P
2H225AF13P
2H225AF15P
2H225AF16P
2H225AF53P
2H225AF68P
2H225AF99P
2H225AH19
2H225AH38
2H225AH49
2H225AJ13
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ58
2H225AJ59
2H225CA12
2H225CB14
2H225CC03
2H225CC15
4C037QA02
4J100AB00P
4J100AB07P
4J100AL01P
4J100AL08P
4J100AR11P
4J100AR36P
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA05P
4J100BA15P
4J100BB07P
4J100BB18P
4J100BC03P
4J100BC04P
4J100BC43P
4J100BC49P
4J100BC83P
4J100CA03
4J100JA38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フォトレジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】酸に不安定な基を有する繰り返し単位を含む酸感受性ポリマーと;アニオン及びカチオンを含むヨードニウム塩であって式(1)を有するヨードニウム塩:

(式中、Zは有機アニオンであり;Arは、フラン複素環を含む置換若しくは無置換のC4~60ヘテロアリール基であり;Rは置換若しくは無置換の炭化水素基であり、カチオンは、酸不安定性基を含んでいてもよく、Ar及びRは、単結合又は1つ以上の二価の連結基を介して互いと連結して環を形成していてもよく、Arを介して又はペンダント基としてのその置換基を介してポリマーに共有結合していてもよく、Rを介して又はペンダント基としてのその置換基を介してポリマーに共有結合していてもよく、又は、ペンダント基としてのZを介してポリマーに共有結合していてもよい)と;溶媒とを含むフォトレジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸に不安定な基を有する繰り返し単位を含む酸感受性ポリマーと;
アニオン及びカチオンを含むヨードニウム塩であって式(1)を有するヨードニウム塩:
【化1】
(式中、
は、スルホネート、メチドアニオン、スルホンアミドのアニオン、スルホンイミドのアニオン、スルファメート、フェノレート、又はカルボキシレートから選択される基を含む有機アニオンであり;
Arは、フラン複素環を含む置換又は無置換のC4~60ヘテロアリール基であり;
は、C1~20アルキル基、C1~20ヘテロアルキル基、C3~20シクロアルキル基、C2~20ヘテロシクロアルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20ヘテロアルケニル基、C6~30アリール基、C4~30ヘテロアリール基、C7~20アリールアルキル基、又はC4~20ヘテロアリールアルキル基であり、これらのそれぞれは置換されているか無置換であり、
前記カチオンは、任意選択的に酸に不安定な基を含んでいてもよく、
ArとRは、任意選択的に単結合又は1つ以上の二価の連結基を介して互いと連結して環を形成していてもよく、
前記ヨードニウム塩は、Arを介して又はペンダント基としてのその置換基を介して任意選択的にポリマーに共有結合していてもよく、前記ヨードニウム塩は、Rを介して又はペンダント基としてのその置換基を介して任意選択的にポリマーに共有結合していてもよく、又は前記ヨードニウム塩は、ペンダント基としてのZを介してポリマーに任意選択的に共有結合していてもよい)と;
溶媒と;
を含むフォトレジスト組成物。
【請求項2】
Ar及びRが、単結合又は二価の連結基を介して互いに連結して環を形成している、請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
Arが酸不安定基で置換されている、Rが酸不安定基で置換されている、又はArとRの両方がそれぞれ独立して酸不安定基で置換されている、請求項1又は2に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項4】
光酸発生剤を更に含み、前記光酸発生剤の対応する光酸が前記ヨードニウム塩の対応する光酸よりも低いpKaを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
光分解性失活剤を更に含み、前記光分解性失活剤の対応する光酸が前記ヨードニウム塩の対応する光酸よりも高いpKaを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記酸感受性ポリマーが、芳香族基を有する繰り返し単位を含み、前記芳香族基は置換されているか無置換である、請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
前記C4~60ヘテロアリール基が以下のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物
【化2】
(式中、
6a、R6b、R6c、R6d、R6e、及びR6fは、それぞれ独立して、単結合、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ハロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、-OR61、-SR62、又は-NR6364であり、これらの中のR61~R64は、それぞれ独立に、水素、又は置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルであり;
6a、R6b、R6c、R6d、R6e、又はR6fのうちの1つは、ヨードニウムカチオンへの単結合であり;
mは0~6であり;
nは0~6であり;
xは1~6である)。
【請求項8】
前記ヨードニウム塩が、ポリマーへのペンダント基として共有結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載のフォトレジスト組成物の層を基板に塗布すること、
(b)前記フォトレジスト組成物層を活性化放射にパターン状に露光すること、及び
(c)前記露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ画像を得ること、
を含むパターン形成方法。
【請求項10】
前記活性化放射が13.5ナノメートルの波長の極端紫外線放射である、請求項9に記載のパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物、及びそのようなフォトレジスト組成物を使用するパターン形成方法に関する。本発明は、半導体製造業界におけるリソグラフィー用途に特に適用性を見出す。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト材料は、典型的には、半導体基板に配置された金属、半導体又は誘電体層などの1つ以上の下層に像を転写するために使用される感光性組成物である。半導体デバイスの集積密度を高め、ナノメートル範囲の寸法を有する構造の形成を可能にするために、高解像度性能を有するフォトレジスト及びフォトリソグラフィー処理ツールが開発され続けてきた。
【0003】
ポジ型の化学増幅フォトレジストは、従来、高解像度処理に使用されている。このようなレジストは、典型的には、酸に不安定な基を有するポリマー及び光酸発生剤(PAG)を使用する。フォトマスクを通して活性化放射にパターン状に露光すると、酸発生剤が酸を形成し、露光後ベーク中にポリマーの露光領域の酸不安定基が開裂する。これは、現像液中のレジストの露光領域と非露光領域との間の溶解度特性の違いをもたらす。ポジ型現像(PTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域は、現像液に可溶となり、基板表面から除去されるが、非露光領域は、現像液に不溶であり、現像後に残ってポジ像を形成する。得られるレリーフ像により、基板の選択的な処理が可能となる。例えば、(非特許文献1)及び(非特許文献2)を参照されたい。
【0004】
半導体デバイスにおいてナノメートルスケールの形状を達成するための1つのアプローチは、化学増幅フォトレジストの露光中に短波長、例えば193ナノメートル(nm)以下の光を使用することである。リソグラフィー性能を更に改善するために、液浸リソグラフィーツールが開発されており、例えばKrF(248nm)又はArF(193nm)光源を有するスキャナーなど、画像デバイスのレンズの開口数(NA)を効果的に増加させる。これは、画像デバイスの下表面と半導体ウェハーの上表面との間に比較的高い屈折率の流体、典型的には水を使用することによって達成される。ArF液浸ツールは、多重(二重又はより高次の)パターニングスキームを使用することで、現在、16nmノード及び14nmノードまでリソグラフィーの限界を押し上げている。しかしながら、単一ステップの直接画像化するパターン形成と比較して、多重パターン形成の使用は、材料の使用が増加し、多くの処理ステップが必要となるため、一般的にコストが高い。これにより、極端紫外線(EUV)リソグラフィー及び電子ビームリソグラフィー等の次世代の技術の開発の動機付けが提供される。しかしながら、リソグラフィーの解像度が一層高くなるにつれて、高忠実度のパターンを形成する際におけるフォトレジストパターンの線幅粗さ(LWR)、限界寸法均一性(CDU)、及び感度の重要性が高まっている。
【0005】
EUV及び電子ビームフォトレジスト組成物並びにその使用は、文献に記載されている。例えば、(特許文献1)には、ヨードニウムカチオンの対アニオンとして有機ホウ酸アニオンを使用するPAG化合物が開示されている。しかしながら、リソグラフィープロセスにおけるホウ素含有化合物の使用は、電子特性を不利に変える可能性のあるホウ素の望ましくないドーピングなど、シリコン表面の汚染リスクのため問題を有している。
【0006】
(特許文献2)には、ポリカチオン構造に組み込まれたフラン部位を有するオニウム化合物が開示されている。ポリカチオン構造を使用すると、PAG化合物の極性が不利に増加し、有機溶媒への溶解性が低下する。溶解性の低下は、最終的にはフォトレジスト組成物におけるそれらの使用を制限する。加えて、フォトレジスト組成物中で難溶性のオニウム塩を使用すると、典型的には長い期間のうちにフィルムに凝集が生じることになり、これは信頼性の低いリソグラフィー性能につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第9183960号公報
【特許文献2】特開1999153870号公報
【特許文献3】米国特許第8,431,325号明細書
【特許文献4】米国特許第4,189,323号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Uzodinma Okoroanyanwu,Chemistry and Lithography,SPIE Press and John Wiley and Sons,Inc.,2010
【非特許文献2】Chris Mack,Fundamental Principles of Optical Lithography,John Wiley and Sons,Inc.,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先行技術に関連する1つ以上の問題に対処するためのフォトレジスト組成物が、依然として継続的に必要とされている。特に、良好な溶解性を有し、EUV波長での吸収を増加させることができるフォトレジスト組成物を含む、193nm及びEUV波長で良好な感度を有するフォトレジスト組成物が継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
酸に不安定な基を有する繰り返し単位を含む酸感受性ポリマーと;アニオン及びカチオンを含むヨードニウム塩であって式(1)を有するヨードニウム塩:
【化1】
(式中、Zは、スルホネート、メチドアニオン、スルホンアミドのアニオン、スルホンイミドのアニオン、スルファメート、フェノレート、又はカルボキシレートから選択される基を含む有機アニオンであり;Arは、フラン複素環を含む置換又は無置換のC4~60ヘテロアリール基であり;RはC1~20アルキル基、C1~20ヘテロアルキル基、C3~20シクロアルキル基、C2~20ヘテロシクロアルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20ヘテロアルケニル基、C6~30アリール基、C4~30ヘテロアリール基、C7~20アリールアルキル基、又はC4~20ヘテロアリールアルキル基であり、これらのそれぞれは、置換されているか無置換であり、カチオンは、任意選択的に酸に不安定な基を含んでいてもよく、ArとRは、任意選択的に単結合又は1つ以上の二価の連結基を介して互いと連結して環を形成していてもよく、ヨードニウム塩は、Arを介して又はペンダント基としてのその置換基を介して任意選択的にポリマーに共有結合していてもよく、ヨードニウム塩は、Rを介して又はペンダント基としてのその置換基を介して任意選択的にポリマーに共有結合していてもよく、又はヨードニウム塩は、ペンダント基としてのZを介してポリマーに任意選択的に共有結合していてもよい)
と;溶媒とを含むフォトレジスト組成物が提供される。
【0011】
(a)本発明のフォトレジスト組成物の層を基板上に塗布すること、(b)フォトレジスト組成物層を活性化放射にパターン状に露光すること、及び(c)露光されたフォトレジスト組成物層を現像してレジストレリーフ画像を得ること、を含むパターン形成方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降で、その例が本明細書で示される例示的な実施形態を詳細に参照する。これに関連して、本例示的な実施形態は、異なる形態を有し得、本明細書に明記される記載に限定されると解釈されるべきではない。したがって、例示的な実施形態は、本記載の態様を説明するために、図に言及することによって以下に記載されるにすぎない。本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを包含する。「少なくとも1つ」などの表現は、要素のリストに先立つ場合、要素のリスト全体を修飾し、リストの個々の要素を修飾しない。
【0013】
本明細書で用いる場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、量の制限を意味せず、本明細書で特に示さないか又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「又は」は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。量に関連して使用される「約」という修飾語句は、状態値を含み、前後関係(例えば、特定の量の測定と関連したエラーの度合いを含む)によって決定される意味を有する。本明細書で開示される全ての範囲は、終点を含み、終点は、独立して、互いに合体できる。接尾辞「(s)」は、それが修飾する用語の単数形及び複数形の両方を含み、それによってその用語の少なくとも1つを含むことを意図する。「任意選択的な」又は「任意選択的に」は、その後、記載される事象又は状況が起き得るか又は起き得ないこと並びに事象が起こる場合及び事象が起こらない場合をその記載が含むことを意味する。用語「第1」、「第2」等は、本明細書では、順番、量又は重要性を意味せず、むしろ1つの要素を別の要素から区別するために用いられる。要素が別の要素「上」にあると言われる場合、それは、他の要素と直接に接触し得るか、又は介在要素がそれらの間に存在し得る。対照的に、要素が別の要素の「直接上に」あると言われる場合、介在要素は、存在しない。態様の記載される成分、要素、制限及び/又は特徴は、様々な態様において任意の好適な方法で組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0014】
別に定義しない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。一般に使用される辞典において定義されるものなどの用語は、関連技術及び本開示との関連でのこれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明確にそのように定義しない限り、理想的な意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことが更に理解されるであろう。
【0015】
本明細書で用いる場合、用語「炭化水素基」は、示される場合に1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、少なくとも1つの炭素原子及び少なくとも1つの水素原子を有する有機化合物を意味し;「アルキル基」は、明記された数の炭素原子を有し、且つ1の価数を有する直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素を意味し;「アルキレン基」は、2の価数を有するアルキル基を意味し;「ヒドロキシアルキル基」は、少なくとも1つのヒドロキシル基(-OH)で置換されたアルキル基を意味し;「アルコキシ基」は、「アルキル-O-」を意味し;「カルボン酸基」は、式「-C(=O)-OH」を有する基を意味し;「シクロアルキル基」は、全ての環員が炭素である1つ以上の飽和環を有する一価基を意味し;「シクロアルキレン基」は、2の価数を有するシクロアルキル基を意味し;「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を意味し;「アルケノキシ基」は、「アルケニル-O-」を意味し;「アルケニレン基」は、2の価数を有するアルケニル基を意味し;「シクロアルケニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、少なくとも3つの炭素原子を有する非芳香族環状の二価炭化水素基を意味し;「アルキニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する一価炭化水素基を意味し;「芳香族基」という用語は、Huckel則を満足し、環内に炭素を有し、環内の炭素の代わりに、N、O及びSから選択される1つ以上のヘテロ原子を任意選択的に含み得る単環式又は多環式環系を意味し;「アリール基」は、環員が全て炭素である一価の芳香族単環式又は多環式環系を意味し、少なくとも1つのシクロアルキル又はヘテロシクロアルキル環に縮合した芳香環を有する基を含み得;「アリーレン基」は、2の価数を有するアリール基を意味し;「アルキルアリール基」は、アルキル基で置換されているアリール基を意味し;「アリールアルキル基」は、アリール基で置換されているアルキル基を意味し;「アリールオキシ基」は、「アリール-O-」を意味し;「アリールチオ基」は、「アリール-S-」を意味する。
【0016】
接頭辞「ヘテロ」は、化合物又は基が、炭素原子の代わりに、ヘテロ原子である少なくとも1つのメンバー(例えば、1、2、3又は4つ以上のヘテロ原子)を含むことを意味し、ここで、ヘテロ原子は、それぞれ独立して、N、O、S、Si又はPであり;「ヘテロ原子含有基」は、少なくとも1つのヘテロ原子を有する置換基を意味し;「ヘテロアルキル基」は、炭素の代わりに1~4つのヘテロ原子を有するアルキル基を意味し;「ヘテロシクロアルキル基」は、炭素の代わりに、環員として1~4つのヘテロ原子を有するシクロアルキル基を意味し;「ヘテロシクロアルキレン基」は、2の価数を有するヘテロシクロアルキル基を意味し;「ヘテロアリール基」は、炭素の代わりに、環員として1~4つのヘテロ原子を有するアリール基を意味し;「ヘテロアリーレン基」は、二価のヘテロアリール基を意味する。
【0017】
用語「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)、又はヨウ素(ヨード)である一価置換基を意味する。接頭辞「ハロ」は、水素原子の代わりにフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード置換基のうちの1つを含む基を意味する。ハロ基の組み合わせ(例えば、ブロモ及びフルオロ)が存在していても或いはフルオロ基のみが存在していてもよい。
【0018】
「フッ素化」は、基中に組み込まれた1つ以上のフッ素原子を有することを意味すると理解されるものとする。例えば、C1~18フルオロアルキル基が示されている場合、そのフルオロアルキル基は、1つ以上のフッ素原子、例えば単一のフッ素原子、2つのフッ素原子(例えば、1,1-ジフルオロエチル基等)、3つのフッ素原子(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル基等)、又は炭素の各自由原子価におけるフッ素原子(例えば-CF、-C、-C、又は-C等のパーフルオロ基として)を含み得る。「置換フルオロアルキル基」は、更に別の置換基によって置換されたフルオロアルキル基を意味すると理解されるものとする。
【0019】
「置換された」は、指定された原子の通常の価数を超えないという条件で、基上の少なくとも1つの水素原子が別の基で置き換えられていることを意味する。-置換基がオキソ(すなわち=O)である場合、炭素原子上の2つの水素が置き換えられている。置換基又は変数の組み合わせが許容される。「置換」位置に存在し得る例示的な基は、ニトロ(-NO)、シアノ(-CN)、ヒドロキシ(-OH)、オキソ(=O)、アミノ(-NH)、モノ-又はジ-(C1~6)アルキルアミノ、アルカノイル(アシルなどのC2~6アルカノイル基など)、ホルミル(-C(=O)H)、カルボン酸又はこれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩、C2~6アルキルエステル(-C(=O)O-アルキル又はOC(=O)-アルキル)及びC7~13アリールエステル(-C(=O)O-アリール又はOC(=O)-アリール)などのエステル(アクリレート、メタクリレート及びラクトンを含む)、アミド(-C(=O)NR(Rは、水素又はC1~6アルキルである))、カルボキサミド(-CHC(=O)NR(Rは水素又はC1~6アルキルである))、ハロゲン、チオール(-SH)、C1~6アルキルチオ(-S-アルキル)、チオシアノ(-SCN)、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C1~6ハロアルキル、C1~9アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、C3~12シクロアルキル、C5~18シクロアルケニル、少なくとも1つの芳香環(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチルなど、各環は、置換又は無置換芳香族である)を有するC6~12アリール、1~3の分離又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するC7~19アリールアルキル、1~3の分離又は縮合環及び6~18の環炭素原子を有するアリールアルコキシ、C7~12アルキルアリール、C4~12ヘテロシクロアルキル、C3~12ヘテロアリール、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)-アリール)又はトシル(CHSO-)を含むが、これらに限定されない。基が置換されている場合、炭素原子の示されている数は、任意の置換基の炭素原子を除いた基における炭素原子の総数である。例えば、基-CHCHCNは、シアノ基で置換されたCアルキル基である。
【0020】
本明細書で用いる場合、「酸不安定基」は、酸の触媒的作用により、任意選択的に且つ典型的には熱処理を伴うことにより、結合が開裂し、その結果、カルボン酸基又はアルコール基などの極性基が生じる基を意味し、ポリマー上に形成され、任意選択的に且つ典型的には、開裂した結合に接続した部分がポリマーから切断される。そのような酸は、典型的には、露光後のベーキング中に生じる結合開裂を伴う、光によって生成する酸である。好適な酸不安定基には、例えば、三級アルキルエステル基、二級又は三級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する二級又は三級エステル基、三級アルコキシ基、アセタール基又はケタール基が含まれる。酸に不安定な基は、当技術分野では、一般に「酸で切断可能な基」、「酸で切断可能な保護基」、「酸に不安定な保護基」、「酸で脱離する基」、「酸で分解可能な基」及び「酸に感受性である基」とも呼ばれる。
【0021】
上述したように、193nm及びEUV波長で改善された感度を有するフォトレジスト組成物が依然として継続的に求められており、これは、例えば半導体製造においてより高いスループットを可能にし得る。本発明者らは、193nmとEUV露光波長の両方でのフォトレジスト感度を改善するために、酸素含有ヘテロ環(例えばフラン又はベンゾフラン)の組み込みを使用できることを見出した。これらの結果は、フランサブユニットを含むヨードニウム塩が限定的なリソグラフィー性能しか示さなかった上で示した(特許文献1)と(特許文献2)の両方を考慮すると、予想外である。
【0022】
したがって、本発明は、酸に不安定な基を有する繰り返し単位を含む酸感受性ポリマーと、ヨードニウム塩と、溶媒とを含み、且つ追加の任意選択的な成分を含み得る、フォトレジスト組成物に関する。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の特定のフォトレジスト組成物が、より高いEUV吸収、より速い光速度、及び有機溶媒への良好な溶解性などの大きく改善されたリソグラフィー性能を実現できることを発見した。
【0023】
ヨードニウム塩は、ヨードニウムカチオン部位とアニオン部位とを含み、これらは便宜上、本明細書においては、それぞれヨードニウム塩のカチオン部分及びアニオン部分と呼ばれる場合がある。ヨードニウム塩は光分解性であり、光分解時に酸を生成する。光により生成する酸の強さは、アニオン部分によって大きく異なる。ヨードニウム塩は、生成される酸の強度及びフォトレジスト組成物の他の成分に応じて、組成物において様々な機能を果たし得る。例えば、一態様では、ヨードニウム塩は、酸感受性ポリマー上の酸に不安定な基を脱保護するための酸供給源として機能することができる。別の態様では、ヨードニウム塩は、ヨードニウム塩とは異なる光酸発生剤(PAG)化合物と組み合わせて使用される場合に、光分解性失活剤として機能することができ、PAGの対応する光酸は、本発明のヨードニウム塩の対応する光酸よりも低いpKaを有する。ヨードニウム塩由来の光により生成する酸は、例えば、-20~20、-15~15、-12~12、-15~-1、又は-1より大きく6までのpKaを有し得る。
【0024】
ヨードニウム塩は、以下の式(1):
【化2】
のものである。
【0025】
式(1)において、Arは、フラン複素環を含む置換若しくは無置換のC4~60ヘテロアリール基である。
【0026】
式(1)において、Rは、C1~20アルキル基、C1~20ヘテロアルキル基、C3~20シクロアルキル基、C2~20ヘテロシクロアルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20ヘテロアルケニル基、C6~30アリール基、C4~30ヘテロアリール基、C7~20アリールアルキル基、又はC4~20ヘテロアリールアルキル基であり、これらのそれぞれは置換されていても無置換であってもよい。
【0027】
いくつかの態様では、Arは、以下から選択されるC4~60ヘテロアリール基であってもよい:
【化3】
(式中、R6a、R6b、R6c、R6d、R6e、及びR6fは、それぞれ独立して、単結合、水素、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ハロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、-OR61、-SR62、又は-NR6364であり、これらの中のR61~R64は、それぞれ独立に、水素、又は置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルであるが、R6a、R6b、R6c、R6d、R6e、又はR6fのうちの1つがヨードニウムカチオンへの単結合であることを条件とする)。上の式において、mは0~6の整数であり;nは0~6の整数であり;xは1~6の整数である。
【0028】
いくつかの態様では、Rは、その構造の全部又は一部として、以下の式のうちの1つ以上を含み得る:
【化4】
(式中、nは0~6の整数であり;“*”はヨウ素原子への結合点を表す)。
【0029】
いくつかの態様では、Rは、C4~60ヘテロアリール基であってもよく、C4~60ヘテロアリール基はArについて上で定義した通りである。RがC4~60ヘテロアリール基の場合には、Ar及びRは、互いに同じであってもよく、或いは互いに異なっていてもよい。
【0030】
例示的な式(1)のカチオン部分には、以下のものが含まれる:
【化5】
【化6】
【0031】
いくつかの態様では、Ar及びRは、任意選択的には単結合又は1つ以上の二価の連結基Lを介して互いと連結して式(1a)を有する環を形成していてもよい:
【化7】
【0032】
適切な二価の連結基Lとしては、例えば、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、C(O)-O-、-N(R)-、-C(O)-N(R2a)、-S(O)-、-S(O)-、N(R2a)-S(O)-、-C(S)-、-C(Te)-、-C(Se)-、置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールアルキレン、又はAr若しくはRと環の一部を形成する単結合であり;R及びR2aは、水素、C1~20アルキル、C1~20ヘテロアルキル、C6~30アリール、又はC4~30ヘテロアリールであり、水素を除くこれらのそれぞれは、置換されていても無置換であってもよい。好ましくは、Ar及びRは、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(S)-、-C(Te)-、-C(Se)-、又は置換若しくは無置換C1~5アルキレンのうちの1つ以上を介して任意選択的に互いに連結されていてもよい。
【0033】
Ar及びRが単結合又は1つ以上の二価連結基を介して互いに連結して式(1a)の環を形成する非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化8】
【0034】
式(1)のヨードニウム塩は、非ポリマー系化合物として、及び/又はポリマー形態でフォトレジスト組成物に含まれていてもよく、例えば本明細書に記載の酸感受性ポリマーの重合された繰り返し単位中に、又は別のポリマーの一部として存在していてもよい。いくつかの態様では、式(1)のヨードニウム塩は、任意選択的にAr若しくはRを介して、又はペンダント基としてのAr若しくはRのそれぞれの置換基を介してポリマーに共有結合していてもよく、或いは例えば式(1)のヨードニウム塩は、任意選択的にペンダント基としてのZを介してポリマーに共有結合していてもよい。すなわち、式(1)のヨードニウム塩は、Arを介して、又はペンダント基としてのその置換基を介してポリマーに任意選択的に共有結合していてもよく、式(1)のヨードニウム塩は、Rを介して、又はペンダント基としてのその置換基を介してポリマーに任意選択的に共有結合していてもよく、或いは式(1)のヨードニウム塩のアニオン部分は、ペンダント基としてのZを介してポリマーに任意選択的に共有結合していてもよい。例えば、ペンダント基は、ポリマーの主鎖又は骨格に結合していてもよい。
【0035】
例えば、ポリマーは、ヨードニウム塩を含む繰り返し単位、例えば式(2a)、(2b)、又は(3)の1種以上のモノマー由来の繰り返し単位を任意選択的に含んでいてもよい:
【化9】
(式中、Ar及びRは本明細書で定義された通りである)。
【0036】
式(2a)、(2b)、及び(3)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換のC1~10アルキル、又は置換若しくは無置換のC1~10フルオロアルキルである。好ましくは、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換C1~5アルキル、典型的にはメチルである。
【0037】
式(2a)、(2b)、及び(3)において、Q、Q、及びQは、それぞれ独立して、単結合、又はヘテロ原子、置換若しくは無置換のC1~30アルキレン、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換のC6~30アリーレン、置換若しくは無置換のC4~30アリーレン、若しくは置換若しくは無置換のC4~30ヘテロアリーレン、のうちの1つ以上から選択される二価の連結基、又はそれらの組み合わせである。好ましくは、Q、Q、及びQは、それぞれ独立して、1~10個の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、より好ましくは-C(O)-O-である。
【0038】
式(2a)、(2b)、及び(3)において、A、A、及びAは、それぞれ独立して、置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリーレンのうちの1つ以上である。好ましくは、A、A、及びAは、それぞれ独立して、任意選択的に置換されていてもよい二価のC1~30パーフルオロアルキレン基である。
【0039】
式(1)、(2a)、(2b)、及び(3)において、Zは、スルホネート、メチドアニオン、スルホンアミドのアニオン、スルホンイミドのアニオン、スルファメート、フェノレート、又はカルボキシレートから選択される基を含む有機アニオンである。
【0040】
スルホネート基を有する例示的な有機アニオンには、以下が含まれる:
【化10】
【0041】
例示的な非スルホネート化有機アニオンには、以下が含まれる:
【化11】
【0042】
いくつかの態様では、ヨードニウム塩は、ペンダント基としてのZを介してポリマーに共有結合されていてもよい。そのようなヨードニウム塩は、式(3)の例示的なモノマーに由来する繰り返し単位を含むことができる:
【化12】
(式中、Ar及びRは、本明細書で定義される通りである)。
【0043】
ポリマーにおいて使用される場合、そのようなヨードニウム塩含有繰り返し単位は、ポリマーの繰り返し単位の合計を基準として、典型的には1~20モル%、より典型的には1~10モル%、更により典型的には2~8モル%の量で存在する。
【0044】
ポリマーは、任意選択には、ヨードニウム塩を含む繰り返し単位とは異なる1種以上の追加の繰り返し単位を含み得る。追加の繰り返し構造単位としては、例えば、エッチ速度及び溶解性など、フォトレジスト組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の追加の単位が挙げられ得る。例示的な追加の単位は、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン及びビニルエステルの1つ以上を含み得る。ポリマー中に存在する場合、1種以上の追加の繰り返し単位は、通常、ポリマーの繰り返し単位の合計を基準として、最大99モル%、通常は3~80モル%の量で使用される。
【0045】
ポリマーは、典型的には、1,000~50,000Da、具体的には、2,000~30,000Da、より具体的には3,000~20,000Da、更に具体的には3,000~10,000DaのMを有する。Mに対するMの比であるポリマーのPDIは、典型的には1.1~3、具体的には1.1~2である。分子量は、ポリスチレン標準を使用してGPCにより決定される。
【0046】
いくつかの態様では、式(1)のヨードニウム塩のカチオン部分は、暴露後のベーク条件で光により生成される酸によって切断され得る酸に不安定な基を含み得る。式(1)において、各Ar及びRのそれぞれは、例えば、三級アルキルエステル基、三級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する三級エステル基、三級アルコキシ基、アセタール基、又はケタール基から選択される酸に不安定な基を任意選択的に含み得る。酸に不安定な基をそれぞれのAr又はR基に連結するための適切な二価の連結基は、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(S)-、-C(S)-O-、C(O)-S、-C(Te)、S(O)-、S(O)-、-N(R)-、-C(Se)-、置換若しくは無置換C1~5アルキレン、及びこれらの組み合わせを含むことができ、Rは水素、C1~20アルキル、C1~20ヘテロアルキル、C6~30アリール、又はC4~30ヘテロアリールであり、水素を除くそれぞれは、置換されていても無置換であってもよい。或いは、酸に不安定な基は、単結合を介してそれぞれのAr又はR基に連結されていてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、二価の連結基は省略されていてもよい。
【0047】
本発明の酸感受性ポリマーは、酸に不安定な基を有する繰り返し単位を含む。例えば、酸に不安定な基を有する繰り返し単位は、式(4a)、(4b)、(4c)、(4d)、又は(4e)のうちの1種以上モノマーから誘導することができる:
【化13】
【0048】
式(4a)、(4b)、及び(4c)において、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換C1~10アルキル、又は置換若しくは無置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換のC1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。
【0049】
式(4a)では、Lは、少なくとも1つの炭素原子、少なくとも1つのヘテロ原子又はこれらの組み合わせを含む二価連結基である。例えば、Lは、1~10の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含み得る。典型的な例では、Lは、-OCH-、-OCHCHO-、又は-N(R21)-(ここで、R21は、水素又はC1~6アルキルである)であり得る。
【0050】
式(4a)及び(4b)において、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、直鎖若しくは分岐C2~20アルケニル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルケニル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式若しくは多環式C6~20アリール、又は単環式若しくは多環式C2~20ヘテロアリールであり、水素を除いたそれぞれは置換されているか無置換である。但し、R~Rの1つのみが水素且つR~Rの1つのみが水素であってもよく、またR~Rのうちの1つが水素である場合には、他のR~Rのうちの一方又は両方が置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式のC6~20アリール又は置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式のC4~20ヘテロアリールであり、R~Rのうちの1つが水素である場合には、他のR~Rうちの一方又は両方が置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式のC6~20アリール又は置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式のC4~20ヘテロアリールである。好ましくは、R~Rは、それぞれ独立して、直鎖若しくは分岐C1~6アルキル又は単環式若しくは多環式C3~10シクロアルキルであり、そのそれぞれが置換若しくは無置換である。
【0051】
式(4a)では、R~Rのいずれか2つは、一緒に任意選択的に環を形成していてもよく、R~Rのそれぞれは、構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R42)-S(O)-から選択される1つ以上の基を任意選択的に含んでいてもよく、式中、R42は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであり得る。式(4b)では、R~Rのいずれか2つは、一緒に任意選択的に環を形成していてもよく、R~Rのそれぞれは、任意選択で、構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及びN(R43)-S(O)-から選択される1つ以上の基を任意選択的に含んでいてもよく、式中、R43は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキルである。例えば、R~Rのいずれか1つ以上は、独立して、式-CHC(=O)CH(3~n)の基であり得、式中、各Yは、独立して、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキルであり、nは1又は2である。例えば、各Yは、独立して、式-O(Ca1)(Ca2)O-の基を含む置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキルであり得、式中、Ca1及びCa2は、それぞれ独立して、水素又は置換若しくは無置換アルキルであり、Ca1及びCa2は、任意選択的には一緒に環を形成する。
【0052】
式(4c)及び(4e)では、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、単環式若しくは多環式C6~20アリール、又は単環式若しくは多環式C2~20ヘテロアリールであり得、そのそれぞれは、置換若しくは無置換であり、Rは、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C1~30ヘテロシクロアルキルであり、そのそれぞれは、置換若しくは無置換である。任意選択的に、R又はRの1つは、Rと共にヘテロ環を形成する。好ましくは、R及びRは、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキルであり得る。
【0053】
式(4d)では、R10~R12は、それぞれ独立して、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、単環式若しくは多環式C6~20アリール、又は単環式若しくは多環式C2~20ヘテロアリールであり得、水素を除いたこれらのそれぞれは置換されているか無置換であり、R10~R12のいずれか2つは、一緒に任意選択的に環を形成しており、R10~R12のそれぞれは、任意選択的にその構造の一部として-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-、及び-N(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を含んでいてもよく、式中、R44は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキルであってもよい。但し、酸に不安定な基がアセタール基でない場合には、R10~R12のうちの1つのみが水素であってよく、R10~R12のうちの1つが水素である場合には、他のR10~R12のうちの一方又は両方は置換若しくは無置換の単環式若しくは多環式のC6~20アリール、又は置換若しくは無置換の環式若しくは多環式のC4~20ヘテロアリールである。
【0054】
式(4d)及び(4e)において、Xはビニル及びノルボルニルから選択される重合性基であり、Lは単結合又は二価の基である。但し、Xがビニル基である場合には、Lは単結合ではない。好ましくは、Lは、単環式若しくは多環式C6~30アリーレン又は単環式若しくは多環式C6~30シクロアルキレンであり、そのそれぞれは、置換されていても無置換であってもよい。式(4d)及び(4e)において、nは0又は1である。nが0である場合、L基は、酸素原子に直接接続されていることを理解されたい。
【0055】
モノマー(4a)の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化14】
【0056】
式(4b)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化15】
【化16】
(式中、Rは、上記で定義した通りであり、R及びR’’は、それぞれ独立して、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、単環式若しくは多環式C1~20ヘテロシクロアルキル、直鎖若しくは分岐C2~20アルケニル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルケニル、単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルケニル、単環式若しくは多環式C6~20アリール、又は単環式若しくは多環式C4~20ヘテロアリールであり、そのそれぞれは、置換若しくは無置換である)。
【0057】
式(4c)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化17】
(式中、Rは、上記で定義した通りである)。
【0058】
式(4d)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化18】
【0059】
式(4e)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化19】

【0060】
更に別の例では、ポリマーの酸に不安定な基を有する繰り返し単位は、例えば以下の式の環状アセタール基又は環状ケタール基を有する1種以上のモノマー由来であってよい:
【化20】
(式中、Rは上で定義した通りである)。
【0061】
更に別の例では、ポリマーの酸に不安定な基を有する繰り返し単位は、例えば以下の式の三級アルコキシ基を有する1種以上のモノマー由来であってよい:
【化21】
【0062】
酸に不安定な基を含む繰り返し単位は、典型的には、酸感受性ポリマーにおける総繰り返し単位に基づいて10~80モル%、典型的には25~75モル%、より典型的には30~70モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0063】
いくつかの態様では、酸感受性ポリマーは、芳香族基を有する繰り返し単位を含んでいてもよく、この芳香族基は置換されていても無置換であってもよい。芳香族基は、N、O、S、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上の芳香族環ヘテロ原子を任意選択的に含んでいてもよい単環式又は多環式のC5~60芳香族基である。C5~60芳香族基が多環式である場合、環又は環基は、縮合していてもよく(ナフチルなど)、直接結合(ビアリール、ビフェニルなど)していてもよく、ヘテロ原子によって架橋していてもよく(トリフェニルアミノ又はジフェニレンエーテルなど)、及び/又は縮合環と直接結合環との組み合わせを含んでいてもよい(ビナフチルなど)。
【0064】
単環式又は多環式のC5~60芳香族基は、置換されているか又は無置換であることができる。例示的な置換基としては、限定するものではないが、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ハロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、-OR51、-SR52、又は-NR5354が挙げられ、これらの中のR51~R54は、それぞれ独立に、水素、又は置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。好ましくは、芳香族基は、置換C6~30アリール基又は置換C7~30ヘテロアリール基であり、芳香族基は、-OR51、-SR52、又は-NR5354などのヘテロ原子含有置換基で置換されており、R51~R54は、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。
【0065】
芳香族基を有する繰り返し単位は、典型的には、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として5~80モル%、典型的には10~50モル%、より典型的には10~40モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0066】
酸感受性ポリマーは、式(5)のモノマー由来のラクトン繰り返し単位を含み得る:
【化22】
【0067】
式(5)では、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換C1~10アルキル、又は置換若しくは無置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは無置換のC1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Lは、単結合、又は置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキレン、又は置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールアルキレンの1つ以上を含む二価連結基であってよく、式中、Lは、任意選択的に、例えば-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-及び-N(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を更に含んでいてもよく、R44は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであってよい。R14は、単環式、多環式、又は縮合多環式のC4~20ラクトン含有基であり得る。
【0068】
式(5)のモノマーの非限定的な例には、以下が含まれる:
【化23】
(式中、Rは本明細書に開示の通りである)。
【0069】
存在する場合、酸感受性ポリマーは、典型的には、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位を基準として5~60モル%、典型的には20~55モル%、より典型的には25~50モル%の量でラクトン繰り返し単位を含み得る。
【0070】
酸感受性ポリマーは、12以下のpKaを有する塩基可溶性繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基可溶性繰り返し単位は、式(6)のモノマーに由来し得る:
【化24】
【0071】
式(6)では、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換のC1~10アルキル又は置換若しくは無置換のC1~10フルオロアルキルであってよい。好ましくは、Rは、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換のC1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Qは、置換若しくは無置換のC1~30アルキレン、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換のC6~30アリーレン、置換若しくは無置換の二価のC7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換の二価のC3~30ヘテロアリールアルキル、又は-C(O)-Oのうちの1つ以上であり得る。Wは、塩基可溶性基であり、例えばヒドロキシル(OH);-C(O)-OH;-C(CFOH等のフッ素化アルコール;アミド;イミド;又は-NH-S(O)-Y(ここで、Yは、F又はC1~4パーフルオロアルキルである)から選択され得る。式(6)では、aは1~3の整数である。
【0072】
式(6)のモノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化25】
(式中、R及びYは、上述の通りである)。
【0073】
別の塩基可溶性基は、以下の構造のN-ヒドロキシアリールマレイミドであってよい:
【化26】
(式中、Arは、任意選択的に置換若しくは無置換のC1~30アルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロアルキル、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換のC2~30アルケニル、置換若しくは無置換のC2~30アルキニル、置換若しくは無置換のC6~30アリール、置換若しくは無置換のC7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換のC7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換のC2~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換のC3~30ヘテロアリールアルキル、C3~30アルキルヘテロアリール、-OR21、-NH、-NHR22、又は-NR2324のうちの1つ以上で更に置換されていてもよいヒドロキシ置換C6~60アリール基、ヒドロキシ置換C4~60ヘテロアリール基、又はその組み合わせを含み、ここで、R21~R24は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換のC1~30アルキル、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換のC6~30アリール、置換若しくは無置換のC7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換のC7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換のC4~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C5~30ヘテロアリールアルキル、又は置換若しくは無置換のC5~30アリールヘテロアルキルである)。Arは、単一のヒドロキシル基又は複数のヒドロキシル基を含むことが好ましい場合もある(例えば、Arは、それぞれ独立して任意選択的にヒドロキシル基で更に置換される、ヒドロキシで置換されたC6~60アリール基、ヒドロキシで置換されたC4~60ヘテロアリール基又はその組み合わせであり得る)。モノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化27】
【0074】
存在する場合、塩基可溶性繰り返し単位は、典型的には、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として2~75モル%、典型的には5~25モル%、より典型的には5~15モル%の量で、酸感受性ポリマー中に存在し得る。
【0075】
酸感受性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
(式中、a、b、c、及びdは、対応する繰り返し単位のモル分率を表し、nは10~1,000の整数である)。
【0076】
酸感受性ポリマーは、任意選択的には1種以上の追加の繰り返し単位を含み得る。追加の繰り返し構造単位としては、例えば、エッチ速度及び溶解性など、フォトレジスト組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の追加の単位が挙げられ得る。例示的な追加の単位は、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン及びビニルエステルの1つ以上を含み得る。酸感受性ポリマー中に存在する場合、1種以上の更なる繰り返し単位は、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位に基づいて70モル%まで、典型的には3~50モル%の量で使用され得る。
【0077】
酸感受性ポリマーは、典型的には、1,000~50,000ダルトン(Da)、具体的には2,000~30,000Da、より具体的には3,000~20,000Da、更に具体的には3,000~10,000Daの重量平均分子量(M)を有する。数平均分子量(M)に対するMの比である酸感受性ポリマーの多分散度指数(PDI)は、典型的には1.1~3、より具体的には1.1~2である。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によって決定される。
【0078】
フォトレジスト組成物は、ヨードニウム塩化合物に加えて、PAG化合物を更に含み得る。追加のPAG化合物は、典型的には-15~1のpKaを有する。PAGは、非ポリマー形態であってもポリマー形態であってもよく、例えば上述した酸感受性ポリマーの重合繰り返し単位の中に、又は別のポリマーの一部として存在し得る。適切な非ポリマー系光酸発生化合物は、式Gを有することができ、式中のGは、2つのアルキル基、2つのアリール基、又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン;3つのアルキル基、3つのアリール基、又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンから選択される有機カチオンであり、Aは非重合性有機アニオンである。
【0079】
特に適切な非ポリマー系有機アニオンとしては、共役酸が-15~1のpKaを有するものが挙げられる。特に好ましいアニオンは、フッ素化アルキルスルホネート及びフッ素化スルホンイミドのアニオンである。
【0080】
適切な非ポリマー系PAGは、化学増幅フォトレジストの技術分野で知られており、例えば以下を含む:オニウム塩、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート;ジ-t-ブチルフェニルヨードニウムパーフルオロブタンスルホネート及びジ-t-ブチルフェニルヨードニウムカンファースルホネート。ノニオン性スルホネート及びスルホニル化合物も光酸発生剤として機能することが知られており、例えばニトロベンジル誘導体、例えば2-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、2,6-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート及び2,4-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、スルホン酸エステル、例えば1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン及び1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、ジアゾメタン誘導体、例えばビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、グリオキシム誘導体、例えばビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム及びビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル及びハロゲン含有トリアジン化合物、例えば2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン及び2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。好適な非重合型酸発生剤は、Hashimotoらの(特許文献3)、37列、11~47行及び41~91列に更に記載されている。他の好適なスルホネートPAGには、スルホネート化エステル及びスルホニルオキシケトン、ニトロベンジルエステル類、s-トリアジン誘導体、ベンゾイントシレート、t-ブチルフェニルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテート、及びt-ブチルα-(p-トルエンスルホニルオキシ)-アセテートが含まれる。これらは、(特許文献4)及び(特許文献3)記載されているものである。
【0081】
典型的には、フォトレジスト組成物が非ポリマー系光酸発生剤を含む場合、それはフォトレジストの全固形分を基準として2~65重量%、より典型的には5~55重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0082】
別の態様では、酸感受性ポリマー又は別のポリマーは、任意選択的に、式(7)から誘導されるPAG繰り返し単位を含む繰り返し単位を含み得る:
【化32】
【0083】
式(7)において、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換のC1~10アルキル、又は置換若しくは無置換のC1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素又は置換若しくは無置換のC1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Qは、単結合、又はヘテロ原子、置換若しくは無置換のC1~30アルキレン、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換のC6~30アリーレン、置換若しくは無置換の二価のC7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換の二価のC3~30ヘテロアリールアルキルのうちの1つ以上から選択される二価の連結基或いはその組み合わせである。好ましくは、Qは、1~10の炭素原子及び少なくとも1つのヘテロ原子を含み得、より好ましくは-C(O)-O-である。
【0084】
式(7)において、Aは、置換若しくは無置換のC1~30アルキレン、置換若しくは無置換のC3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換のC6~30アリーレン、置換若しくは無置換の二価C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換のC1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換の二価C3~30ヘテロアリールアルキルのうちの1つ以上である。好ましくは、Aは、任意選択的に置換されていてもよい二価のC1~30パーフルオロアルキル基である。
【0085】
式(7)において、Zはアニオン部位であり、その共役酸は、典型的には-15~1のpKaを有する。特に好ましいそのようなアニオンは、フッ素化アルキルスルホネート及びフッ素化スルホンイミドのアニオンである。
【0086】
式(7)では、Gは、2つのアルキル基、2つのアリール基、又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン;及び3つのアルキル基、3つのアリール基、又はアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンから選択される有機カチオンである。いくつかの実施形態では、Gは、2つのアルキル基、2つのアリール基、若しくはアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたヨードニウムカチオン;又は3つのアルキル基、3つのアリール基、若しくアルキル基とアリール基との組み合わせで置換されたスルホニウムカチオンである。好ましくは、光酸発生剤はスルホニウムカチオンを含む。
【0087】
式(7)の例示的なモノマーとしては、以下のものが挙げられる:
【化33】
(式中、Gは、有機カチオンである)。
【0088】
いくつかの実施形態では、Gは、式(8A)を有するスルホニウムカチオン又は式(8B)を有するヨードニウムカチオンである。
【化34】
(式中、各Raaは、独立して、C1~20アルキル基、C1~20フルオロアルキル基、C3~20シクロアルキル基、C3~20フルオロシクロアルキル基、C2~20アルケニル基、C2~20フルオロアルケニル基、C6~30アリール基、C6~30フルオロアリール基、C6~30ヨードアリール基、C1~30ヘテロアリール基、C7~20アリールアルキル基、C7~20フルオロアリールアルキル基、C2~20ヘテロアリールアルキル基又はC2~20フルオロヘテロアリールアルキル基であり、これらは、それぞれ置換又は無置換であり、各Raaは、他のRaa基と離れているか、又は単結合若しくは二価の連結基を介して連結して環を形成する)。各Raaは、任意選択で、その構造の一部として、-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-C1~12ヒドロカルビレン-、-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-、-C(O)-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-、及び-C(O)-O-(C1~12ヒドロカルビレン)-O-から選択される1つ以上の基を含み得る。各Raaは、独立して、例えば三級アルキルエステル基、二級若しくは三級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する二級若しくは三級エステル基、三級アルコキシ基、アセタール基、又はケタール基から選択される酸不安定基を任意選択的に含み得る。Raa基の接続に適した二価連結基は、例えば、-O-、-S-、-Te-、-Se-、-C(O)-、-C(S)-、-C(Te)-又は-C(Se)-、置換若しくは無置換C1~5アルキレン及びこれらの組み合わせを含む。
【0089】
式(8A)の例示的なスルホニウムカチオンとしては、以下のものが挙げられる:
【化35】
【化36】
【0090】
式(8B)の例示的なヨードニウムカチオンとしては、以下のものが挙げられる:
【化37】
【0091】
ポリマー及び/又は酸感受性ポリマーは、上で開示したような、式(5)のモノマーに由来するPAGを含む繰り返し単位を任意選択的に含み得る。ポリマー及び/又は酸感受性ポリマーは、ポリマー及び/又は酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として1~15モル%、典型的には1~8モル%、より典型的には2~6モル%の量の光酸発生剤を含む繰り返し単位を含み得る。
【0092】
本発明のフォトレジスト組成物において、酸感受性ポリマーは、典型的には、全固形分の重量に基づいて0.5~99.9重量%、典型的には1~15重量%、より典型的には1~10重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。全固形分には、ポリマー、PAG、及び他の非溶媒成分が含まれることが理解されよう。
【0093】
いくつかの態様では、フォトレジスト組成物は、1つ以上の塩基不安定基を含む物質(「塩基不安定物質」)を更に含み得る。本明細書で言及される塩基不安定基は、露光ステップ及び露光後ベーキングステップ後、水性アルカリ性現像液の存在下において、開裂反応を経てヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸などの極性基を提供することができる官能基である。塩基不安定基は、塩基不安定基を含むフォトレジスト組成物の現像ステップ前に大きく反応しない(例えば、結合切断反応が起こらない)。そのため、例えば、塩基不安定基は、露光前ソフトベーク、露光ステップ及び露光後ベークステップ中、実質的に不活性であろう。「実質的に不活性」とは、塩基に不安定な基(又は部位)の5%以下、好ましくは1%以下が露光前のソフトベーク、露光及び露光後のベーク工程中に分解、切断又は反応することを意味する。塩基不安定基は、例えば、0.26規定(N)のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液などの水性アルカリ性フォトレジスト現像液を用いた典型的なフォトレジスト現像条件下で反応性を有する。例えば、TMAHの0.26N水溶液は、単一パドル現像又は動的現像プロセスを使用してレジストパターンを現像するために使用することができ、例えば、0.26NのTMAH現像剤は、画像化されたフォトレジスト層に10~120秒(s)などの適切な時間で分配される。例示的な塩基不安定基はエステル基であり、典型的にはフッ素化エステル基である。好ましくは、塩基不安定物質は、第1及び第2のポリマー並びにフォトレジスト組成物の他の固形成分と実質的に混和せず、第1及び第2のポリマー並びにフォトレジスト組成物の他の固形成分よりも表面エネルギーが低い。基板上にコーティングされた場合、塩基不安定物質は、それによりフォトレジスト組成物の他の固形成分から、形成されたフォトレジスト層の上面に分離し得る。
【0094】
いくつかの態様では、塩基不安定物質は、ポリマー系材料であり、本明細書では塩基不安定ポリマーとも呼ばれ、塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基を含む1種以上の繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、同一又は異なる2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。好ましい塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む少なくとも1つの繰り返し単位、例えば2つ又は3つの塩基不安定基を含む繰り返し単位を含む。
【0095】
塩基不安定ポリマーは、式(E1)のモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーであってよい
【化38】
(式中、Xは、ビニル及びアクリルから選択される重合性基であり、Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換のC3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む二価の連結基であり;Rkは、置換若しくは無置換のC1~20フルオロアルキル基であり、但し、式(E1)のカルボニル(C=O)に結合した炭素原子は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている)。
【0096】
例示的な式(E1)のモノマーとしては、以下のものが挙げられる:
【化39】
【0097】
塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(E2)のモノマーに由来する繰り返し単位を含み得る
【化40】
(式中、X及びRは、式(E1)で定義した通りであり;Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換のC3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む多価連結基であり;nは、2以上の整数、例えば2又は3である)。
【0098】
例示的な式(E2)のモノマーとしては、以下のものが挙げられる:
【化41】
【0099】
塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(E3)のモノマーに由来する繰り返し単位を含み得る:
【化42】
(式中、Xは式(E1)において定義した通りであり;Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換のC3~20シクロアルキレン、-C(O)、-又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含有する二価の連結基であり;Lは、置換若しくは無置換のC1~20フルオロアルキレン基であり、式(E3)のカルボニル(C=O)に結合した炭素原子は少なくとも1つのフッ素原子で置換されており;Rmは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキル又は置換若しくは無置換のC3~20シクロアルキルである)。
【0100】
例示的な式(E3)のモノマーとしては、以下のものが挙げられる:
【化43】
【0101】
本発明の更に好ましい態様では、塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基及び1つ以上の酸不安定基、例えば1つ以上の酸不安定エステル部位(例えば、t-ブチルエステル)又は酸不安定アセタール基を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基及び酸不安定基を含む繰り返し単位、すなわち塩基不安定基及び酸不安定基の両方が同一の繰り返し単位上に存在する繰り返し単位を含み得る。他の例では、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基を含む第1の繰り返し単位及び酸不安定基を含む第2の繰り返し単位を含み得る。本発明の好ましいフォトレジストは、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ像に伴う欠陥を減少させることができる。
【0102】
塩基不安定ポリマーは、第1及び第2のポリマーに対して本明細書で述べたものを含む、当技術分野におけるいずれかの好適な方法を用いて調製され得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線による放射又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。追加的に又は代わりに、1つ以上の塩基不安定基を、好適な方法を用いてポリマーの骨格にグラフト化し得る。
【0103】
いくつかの態様では、塩基不安定物質は、1つ以上の塩基不安定エステル基、好ましくは1つ以上のフッ素化エステル基を含む単一の分子である。単一分子である塩基不安定物質は、50~1,500Daの範囲のMを有し得る。例示的な塩基不安定物質としては、以下のものが挙げられる:
【化44】
【0104】
フォトレジスト組成物は、上述したポリマー及び酸感受性ポリマーに加えて、それらとは異なる1種以上のポリマーを更に含み得る。例えば、フォトレジスト組成物は、上記で説明した通りであるが組成が異なる追加のポリマー、又は上記で説明したものと類似しているが必須繰り返し単位を含まないポリマーを含み得る。追加的に又は代わりに、1種以上の追加のポリマーは、フォトレジスト技術分野で周知のもの、例えばポリアクリレート、ポリビニルエーテル、ポリエステル、ポリノルボルネン、ポリアセタール、ポリエチレングリコール、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリフェノール、ノボラック、スチレンポリマー、ポリビニルアルコール、又はその組み合わせから選択されるものを含み得る。
【0105】
フォトレジスト組成物は、組成物の成分を溶解し、基板におけるそのコーティングを容易にするための溶媒を更に含む。好ましくは、溶媒は、電子デバイスの製造に従来使用される有機溶媒である。好適な溶媒には、例えば、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及び1-クロロヘキサン等のハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、1-プロパノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、及び4-メチル-2-ペンタノール、及びジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)等のアルコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME);ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びアニソール等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソ-ブチルケトン、2-ヘプタノン及びシクロヘキサノン(CHO)等のケトン;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、ヒドロキシイソブチレートメチルエステル(HBM)及びアセト酢酸エチル等のエステル;γ-ブチロラクトン(GBL)及びε-カプロラクトン等のラクトン;N-メチルピロリドン等のラクタム;アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル;炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジフェニル、及び炭酸プロピレン等の環状又は非環状の炭酸エステル;ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミド等の極性非プロトン性溶媒;水;及びこれらの組み合わせが含まれる。これらのうち、好ましい溶媒は、PGME、PGMEA、EL、GBL、HBM、CHO、及びこれらの組み合わせである。フォトレジスト組成物中の総溶媒含量(すなわち全ての溶媒の累積溶媒含有量)は、フォトレジスト組成物の総固形分を基準として典型的には40~99重量%、例えば70~99重量%、又は85~99重量%である。所望の溶媒含有量は、例えば、コーティングされたフォトレジスト層の所望の厚さ及びコーティング条件に依存する。
【0106】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の追加の任意選択的な添加剤を更に含み得る。例えば、任意選択的な添加剤としては、化学染料及び造影染料、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度促進剤、増感剤、光分解性失活剤(PDQ)(光分解性塩基としても知られる)、塩基性失活剤、界面活性剤など、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。存在する場合、任意選択的な添加剤は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分を基準として0.01~10重量%の量でフォトレジスト組成物中に存在する。
【0107】
光分解性失活剤は、照射により弱酸を生成する。光分解性失活剤から生成する酸は、レジストマトリックスに存在する酸不安定基と迅速に反応するほど強力ではない。例示的な光分解性失活剤には、例えば、光分解性カチオン、好ましくは例えばC1~20カルボン酸又はC1~20スルホン酸等の強酸発生剤化合物であるが、弱酸(pKa>1)のアニオンと対になった強酸発生剤化合物を調製するためにも有用なものが含まれる。例示的なカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などが含まれる。例示的なカルボン酸には、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が含まれる。好適な実施形態では、光分解性失活剤は、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレート等の光分解性有機両性イオン化合物である。
【0108】
例示的な塩基性失活剤は、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソパノールアミン、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン;n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシ-エチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザネトリイル))テトラエタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール及び2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの直鎖脂肪族アミン;1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、tert-ブチル1-ピロリジンカルボキシレート、tert-ブチル2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボキシレート、ジ-tert-ブチルピペラジン-1,4-ジカルボキシレート、及びN-(2-アセトキシ-エチル)モルホリンなどの環状脂肪族アミン;ピリジン、ジ-tert-ブチルピリジン、及びピリジニウムなどの芳香族アミン;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバル酸アミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N、N、N、N-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン、及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメートなどの直鎖及び環状アミド並びにその誘導体;スルホネート、スルファメート、カルボキシレート、及びホスホネートの四級アンモニウム塩などのアンモニウム塩;一級及び二級アルジミン及びケチミンなどのイミン;任意選択的に置換されたピラジン、ピペラジン、及びフェナジンなどのジアジン;任意選択的に置換されたピラゾール、チアジアゾール、及びイミダゾールなどのジアゾール;並びに2-ピロリドン及びシクロヘキシルピロリジンなどの任意選択的に置換されたピロリドンが挙げられる。
【0109】
例示的な界面活性剤は、フッ素化及び非フッ素化界面活性剤を含み、イオン性又は非イオン性であり得、非イオン性界面活性剤が好ましい。例示的なフッ素化非イオン性界面活性剤には、3M Corporationから入手可能なFC-4430及びFC-4432界面活性剤などのペルフルオロC界面活性剤並びにOmnovaのPOLYFOX PF-636、PF-6320、PF-656、及びPF-6520フルオロ界面活性剤などのフルオロジオールが含まれる。一態様では、フォトレジスト組成物は、フッ素含有繰り返し単位を含む界面活性剤ポリマーを更に含む。
【0110】
本明細書に記載の酸感受性ポリマー及びその他のポリマーは、当技術分野における任意の適切な方法を用いて調製され得る。例えば、本明細書で記載される繰り返し単位に対応する1つ以上のモノマーは、好適な溶媒及び開始剤を使用して組み合わされるか又は別々に供給され、反応器中で重合され得る。例えば、ポリマー及び酸感受性ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線による照射、又はこれらの組み合わせなどの任意の適切な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。
【0111】
本発明のフォトレジスト組成物を用いるパターン形成方法について述べる。フォトレジスト組成物をその上にコーティングすることができる適切な基板は、電子デバイス基板を含む。本発明では、半導体ウェハー;多結晶シリコン基板;マルチチップモジュール等のパッケージング基板;フラットパネルディスプレイ基板;有機発光ダイオード(OLED)等の発光ダイオード(LED)のための基板等の多様な電子デバイス基板が使用され得、半導体ウェハーが典型的である。このような基板は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅及び金の1つ以上から構成される。適切な基板は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレイ、光集積回路及びLEDの製造において使用されるものなどのウェハーの形態であり得る。このような基板は、任意の適切なサイズであり得る。典型的なウェハー基材の直径は、200~300ミリメートル(mm)であるが、本発明によれば、より小さい直径及びより大きい直径を有するウェハーを適切に使用することができる。基材は、形成されているデバイスの動作中の又は動作可能な部分を任意選択で含み得る1つ以上の層又は構造を含み得る。
【0112】
典型的には、ハードマスク層、例えば、スピンオンカーボン(SOC)、非晶質炭素若しくは金属ハードマスク層などの1つ以上のリソグラフィー層、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)若しくは酸窒化ケイ素(SiON)層などのCVD層、有機若しくは無機の下層又はこれらの組み合わせは、本発明のフォトレジスト組成物をコーティングする前に基材の上表面に提供される。このような層は、上塗りされたフォトレジスト層と共にリソグラフィー材料スタックを形成する。
【0113】
任意選択で、フォトレジスト組成物をコーティングする前に接着促進剤の層を基材表面に塗布することができる。接着促進剤が望ましい場合、例えばシラン、典型的にはトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラン又はγ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤など、ポリマーフィルムのための任意の適切な接着促進剤が使用され得る。特に適切な接着促進剤は、DuPont Electronics&Imaging(Marlborough,Massachusetts)から入手可能なAP3000、AP8000及びAP9000Sの名称で販売されているものを含む。
【0114】
フォトレジスト組成物は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレードなどを含む任意の適切な方法によって基材にコーティングすることができる。例えば、フォトレジストの層の塗布は、コーティングトラックを使用して溶媒中でフォトレジストをスピンコーティングすることによって達成され得、この場合、フォトレジストは、回転するウェハー上に分配される。分配中、ウェハーは、典型的には、最大4,000回転/分(rpm)例えば200~3,000rpm、例えば1,000~2,500rpmの速度で、15~120秒の期間回転して、基材上にフォトレジスト組成物の層を得る。コーティングされた層の厚さは、回転速度及び/又は組成物の固形分を変更することによって調整できることが当業者に理解されるであろう。本発明の組成物から形成されるフォトレジスト層は、典型的には、乾燥層厚みが10~200ナノメートル(nm)、好ましくは15~100nm、より好ましくは20~60nmである。
【0115】
フォトレジスト組成物は、典型的には、次に、層中の溶媒含有量を最小限にするためにソフトベークされ、それによって不粘着性コーティングが形成され、基板への層の接着性が改善される。ソフトベークは、例えば、ホットプレート上又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。ソフトベークの温度及び時間は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び厚さに依存する。ソフトベーク温度は、典型的には、90~170℃、例えば110~150℃である。ソフトベーク時間は、典型的には、10秒~20分、例えば1分~10分又は1分~5分である。加熱時間は、組成物の成分に基づいて当業者により容易に決定され得る。
【0116】
フォトレジスト層は、次に、露光領域と非露光領域との間で溶解度の差を生じさせるために活性化放射にパターン状に露光される。組成物のために活性化する放射にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。露光は、典型的には、レジスト層の露光領域と非露光領域とにそれぞれ対応する、光学的に透明な領域と光学的に不透明な領域とを有するパターンフォトマスクを通して行われる。代わりに、そのような露光は、直接描画法、典型的には電子ビームリソグラフィーに用いられる方法において、フォトマスクを用いずに行われ得る。活性化放射は、典型的には、248nm(KrF)、193nm(ArF)及び13.5nm(極端紫外線、EUV)の波長でサブ-400nm、サブ-300nm若しくはサブ-200nmの波長を有するか、又は電子ビームリソグラフィーが好ましい。この方法は、液浸又は乾式(非液浸)リソグラフィー技術にも応用できる。露光エネルギーは、典型的には、1平方センチメートル当たり1~200ミリジュール(mJ/cm)、好ましくは10~100mJ/cm、より好ましくは20~50mJ/cmであり、露光手段及びフォトレジスト組成物の成分に依存する。いくつかの態様では、活性化放射は、13.5nmの波長のEUVである。
【0117】
フォトレジスト層の露光後、露光されたフォトレジスト層の露光後ベーク(PEB)が行われる。PEBは、例えば、ホットプレート上又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。PEBの条件は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び層の厚さに依存するであろう。PEBは、典型的には、80~150℃の温度で30~120秒間行う。極性切り替え(露光領域)及び極性非切り替え領域(非露光領域)によって定義される潜像がフォトレジスト内に形成される。
【0118】
露光されたフォトレジスト層を、次に好適な現像液で現像して、現像液に可溶な層の領域を選択的に除去する一方、残った不溶領域は、結果として得られるフォトレジストパターンレリーフ像を形成する。ポジティブトーン現像(PTD)プロセスの場合、フォトレジスト層の露光領域が現像中に除去され、非露光領域が残る。逆に、ネガティブトーン現像(NTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域が残り、非露光領域が現像中に除去される。現像剤の塗布は、フォトレジスト組成物の塗布に関して上述したような任意の適切な方法によって行われ得、スピンコーティングが典型的である。現像時間は、フォトレジストの可溶領域を除去するのに効果的な時間であり、5~60秒間が典型的である。現像は、典型的には、室温で行われる。
【0119】
PTDプロセスの好適な現像剤には、水性塩基現像剤、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などの四級水酸化アンモニウム溶液、好ましくは0.26規定(N)のTMAH、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが含まれる。NTDプロセスに好適な現像液は、有機溶媒系であり、現像液の総重量を基準として、現像液における有機溶媒の累積含有量が50重量%以上、典型的には95重量%以上、95重量%以上、98重量%以上又は100重量%である。NTD現像液用に好適な有機溶媒には、例えば、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、及びその混合物から選択されるものが含まれる。現像液は、典型的には、2-ヘプタノン又は酢酸n-ブチルである。
【0120】
コーティングされた基板は、本発明のフォトレジスト組成物から形成され得る。このようなコーティングされた基板は、(a)その表面にパターン化される1つ以上の層を有する基板と、(b)パターン化される1つ以上の層の上のフォトレジスト組成物の層とを含む。
【0121】
フォトレジストパターンは、例えば、エッチマスクとして使用して、公知のエッチング技術、典型的には反応性イオンエッチング等のドライ-エッチングにより、パターンを1つ以上の連続した下位の層に転写し得る。フォトレジストパターンは、例えば、下位層のハードマスク層へのパターン転写に使用され得、次にハードマスク層の下位の1つ以上の層へのパターン転写のためのエッチマスクとして使用される。フォトレジストパターンがパターン転写で消費されない場合、それは、公知の技術、例えば酸素プラズマ灰化又はウェットストリッププロセスによって基板から除去され得る。フォトレジスト組成物は、1つ以上のこうしたパターン形成プロセスで使用される場合、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップ、オプトエレクトロニクスチップ、LED、OLEDなどの半導体デバイス及び他の電子デバイスを製造するために使用され得る。
【0122】
本発明を以下の実施例によって更に例証する。
【実施例0123】
合成実施例。合成反応は、通常の大気条件下で行った。全ての化学物質は、供給業者から受け取ったまま使用し、追加で精製することなしに使用した。化合物の核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、500MHzと600MHzで得た。ケミカルシフト(δ)は、内部の重アセトン又は重クロロホルムの残留シグナルに対する百万分率(ppm)で報告される。シグナルの多重度は、シングレット(s)、ダブレット(d)、トリプレット(t)、マルチプレット(m)、ダブレットオブダブレット(dd)、トリプレットオブダブレット(dt)、トリプレットオブトリプレット(tt)、又はブロードシングレット(br)として報告され、更にそのシグナルに対応する原子の数が明記される。
【0124】
2-フラニル(フェニル)ヨードニウムトシレート(1)の合成:撹拌子とゴムセプタムとを備えた丸底フラスコ(RBF)に、20mLのジクロロメタン(DCM)中のKoser試薬[ヒドロキシ(トシルオキシ)ヨードベンゼン]、1.0g、2.5ミリモル)の分散液を入れた。この分散液に、2-フラニルボロン酸(0.28g、2.55ミリモル)を添加し、得られた内容物を室温(23~25℃)で16時間撹拌した。2時間後、白色析出物の形成が観察され、この物質は純粋な化合物1であることが確認された。固体の濾過及びメチルtertブチルエーテル(MTBE)を用いた洗浄により、0.7gの目的化合物が得られた。これは更に精製することなしに次の工程で使用した。
【化45】
【0125】
2-フラニル(フェニル)ヨードニウム1,1,2,2-テトラフルオロ-(3-ヒドロキシアダマンタン-1-カルボニル)オキシ)ブタン-1-スルホネート(2)の合成:撹拌子とゴムセプタムとを備えた100mLのRBFに、2-フラニル(フェニル)ヨードニウムトシレート(1)(0.5g、1.1mmol)、化合物(i-1)(2.6g、6.1mmol)、DCM(20mL)、及び水(20mL)を入れた。内容物を室温(23~25℃)で16時間激しく撹拌して、二相性の組み合わせを混合した。次いで、有機層を水層から分離し、脱イオン水(15mL×3回)で抽出した。溶媒の蒸発及びMTBEからの析出により、0.4gの最終化合物(2)を無色オイルとして54%の収率で得た。H-NMR(600MHz アセトン-d,δ,ppm):8.28(d,2H),8.00(dd,1H),7.74(t,1H),7.68(dd,1H),7.60(t,2H),6.73(dd,1H),4.29(t,2H),2.61(m,2H),2.18(br,2H),1.80-1.55(m,12H);13C-NMR(150MHz アセトン-d,δ,ppm):175.6,152.2,134.9,132.6,132.1,126.5,117.3,114.1,110.3,66.9,57.1,46.3,44.3,43.7,37.6,35.0,31.9,31.7,30.3,29.8;19F-NMR(600MHz アセトン-dδ,ppm):-112.4(m,2F),-119.2(m,2F)。
【化46】
【0126】
2-ベンゾフラニル(フェニル)ヨードニウムトシレート(3)の合成:撹拌子とゴムセプタムとを備えた250mLのRBFに、ベンゾフランボロン酸(6.0g、0.0372モル)、14.5gのKoser試薬(0.037モル)、及び50mLのDCMを入れた。反応混合物を2時間撹拌し、その後白色析出物の形成が観察された。MTBEを反応混合物に添加し、得られた析出物を濾過し、追加の50mLのMTBEで洗浄した。析出物を真空下で乾燥すると、8.0gの白色固体が得られた。これは更に精製することなしに次の工程で使用した。
【化47】
【0127】
2-ベンゾフラニル(フェニル)ヨードニウム1,1,2,2-テトラフルオロ-(3-ヒドロキシアダマンタン-1-カルボニル)オキシ)ブタン-1-スルホネート(4)の合成:撹拌子とゴムセプタムとを備えた200mLのRBFに、2-ベンゾフラニル(フェニル)ヨードニウムトシレート(3)(5.0g、10mmol)、化合物(i-1)(6.5g、15mmol)、ジクロロメタン(20mL)、及び水(20mL)を入れた。得られた混合物を室温(23~25℃)で24時間撹拌した。有機相を水相から分離し、続いてDCMを真空下で有機相から除去した。DCMとMTBEとから析出させて5.0g(67%)の白色固体を得ることにより、最終化合物(4)を得た。H-NMR(500MHz δ,ppm):8.08(d,2H),7.73(s,1H),7.67(d,1H),7.59(t,1H),7.53(d,1H),7.45(m,3H),7.33(t,1H),4.24(t,2H),2.54-2.45(m,2H),2.23(br,2H),1.82-1.56(m,14H);13C-NMR(125MHz CDCl3,δ,ppm):176.3,158.8,134.9,132.6,132.3,127.9,127.2,124.7,122.6,122.4,117.1,115.3,111.9,68.6,57.4,46.30,44.34,37.6,35.1,31.6,30.3;19F-NMR(500MHz-CDClδ,ppm):-112.1(t,2F),-117.7(s,2F)。
【化48】
【0128】
実施例及び比較例で使用したポリマーの化学的構造を以下に示す。酸感受性ポリマーP1及び埋め込みバリア層(EBL)F1は、当技術分野において一般的に利用されている方法を使用して調製した。
【化49】
【0129】
実施例及び比較例で使用した光活性化合物C1、2、及び4、並びに失活剤化合物D1の化学構造を以下に示す。
【化50】
【0130】
化合物C1及びD1は販売元から購入し、受け取ったままの状態で使用した。溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(S1)及びメチル-2-ヒドロキシイソブチレート(S2)は、更に精製することなしに受け取ったままの状態で使用した。
【0131】
フォトレジスト配合物。フォトレジスト組成物は、表1に記載の材料及び量を使用して、固体成分を溶媒に溶解することによって調製した。14~30gのスケールで製造した得られた混合物を、メカニカルシェーカーで3~24時間振とうし、その後孔径0.2μmのPTFEディスク型フィルターを通して濾過した。PAG、失活剤、及びEBLの量は、総固形分に基づいた重量%として報告されている。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例1:液浸パターニング。液浸リソグラフィーは、1.3NA、0.86/0.61内部/外部シグマ、及び35Y偏光のダイポール照明でTEL Lithius 300mmウェハートラック及びASML 1900i液浸スキャナーを用いて実行した。フォトリソグラフィー試験用のウェハーを、AR40A(商標)下部反射防止コーティング(BARC)でコーティングし、205℃で60秒間硬化することで800Åのフィルムを得た。次いで、AR104 BARC(商標)のコーティングをAR40A(商標)層に配置し、175℃で60秒間硬化させることで、デュアルBARCスタックの上部に400Åのフィルムを得た。その後、フォトレジスト組成物をデュアルBARCスタック上にコーティングし、90℃で60秒間ベークすることで、400Åのレジスト膜を得た。ウェハーを、焦点露光マトリックスを使用して、55nm/110nmピッチ及び43nm/86nmピッチで1:1ライン/スペース(L/S)パターンをターゲットに露光し、95℃で60秒間PEBを行った。PEBに続き、ウェハーを0.26NのTMAH溶液で12秒間現像し、脱イオン水ですすぎ、回転乾燥した。Hitachi CG4000 CD-SEMを使用して走査電子顕微鏡観察(SEM)を行って像を収集し、プリントされたパターンを分析した。Esize値は、mJ/cmの単位で報告されている。表1に示されているように、PAG2又はPAG4を含む本発明のフォトレジスト組成物は、PAG C1を含む比較のフォトレジスト組成物と比較して、55nm及び43nmの両方で1:1L/Sでより低いEsizeを達成し、比較PAG C1と比較したより速い光速度を示す。
【0134】
計算されたEUV透過率。EUV放射での膜吸収に対するフラン置換ヨードニウムPAG化合物の使用の影響を、この波長での吸光度の計算によって評価した。2つの例示的なフラン置換ヨードニウムカチオン及びそれらそれぞれのフェニル及びナフチル類似体のEUV露光(13.5nm)波長での計算された透過率を表2に報告する。透過率の値は、計算された組成分子式を入力し、1.20g/cmの膜密度及び100nmの膜厚であるとみなして、ローレンスバークレー国立研究所のX線光学センターのウェブサイト(https://henke.lbl.gov/optical_constants/)から計算した。
【0135】
【表2】
【0136】
カチオンA(A)、カチオンB(B)、比較カチオンA(A’)、及び比較カチオンB(B’)の構造は以下の通りである:
【化51】
【0137】
表2から分かるように、本発明のPAGカチオンA及びBは、比較のPAGカチオンA’及びB’と比較して、13.5nmでより低い計算された透過率を達成する。PAGカチオンA及びBのEUV吸収の得られる増加は、EUVフォトレジスト性能を改善するために望ましい。
【0138】
本開示は、実用的で例示的な実施形態であると現在考えられるものと併せて記載されてきたが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な修正形態及び均等な構成を包含することを意図することが理解されるべきである。