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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022073987
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/852 20130101AFI20220510BHJP
【FI】
A61F2/852
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021159895
(22)【出願日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2020182030
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横田 知明
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA45
4C267AA53
4C267AA55
4C267BB11
4C267BB40
4C267CC20
(57)【要約】
【課題】病変部位の管軸方向長さに対して適正な軸方向長さで留置できるステントを提供する。
【解決手段】生体管腔に留置される筒状のステント1であって、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な複数のステント部11、21を備える。複数のステント部11、21は、互いの対向する軸方向の端部を重ね合わせて生体管腔に留置される。複数のステント部11、21のうち少なくとも一方のステント部は、他方のステント部と重なる領域に他方のステント部に対する軸方向の相対的な変位を規制する規制部2を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔に留置される筒状のステントであって、
軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な複数のステント部を備え、
前記複数のステント部は、互いの対向する軸方向の端部を重ね合わせて前記生体管腔に留置され、
前記複数のステント部のうち少なくとも一方のステント部は、他方のステント部と重なる領域に前記他方のステント部に対する軸方向の相対的に変位を規制する規制部を有する
ステント。
【請求項2】
前記規制部は、前記複数のステント部の互いの対向する軸方向の端部同士が係合可能な係合構造である
請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記一方のステント部において前記他方のステント部の端部が挿入される端部は、軸方向の先端側に向かって外径が縮小するように傾斜してなる
請求項1または2に記載のステント。
【請求項4】
前記他方のステント部において前記一方のステント部の端部に挿入される端部は、軸方向の先端側に向かって外径が拡大するように傾斜してなる
請求項1または2に記載のステント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管、食道、胆管、気管、尿管などを含む生体管腔に生じた狭窄部位又は閉塞部位などの病変部位に留置され、当該病変部位を拡径して生体管腔の開存状態を維持するステントが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4651943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1等のステントは、軸方向に長尺な一本の構造をなしている。そのため、ステント留置術においては、生体管腔の病変部位の管軸方向長さに近い軸方向長さを有するステントが選択されて留置される。
【0005】
しかしながら、病変部位の管軸方向長さに対して必要以上に軸方向に長いステントが留置されると、病変部位の処置に直接的には機能しない余分なステント部分が存在することになる。このような余分なステント部分は、生体管腔の正常な機能を阻害したり、穿孔などの偶発症を招く虞がある。
なお、病変部位の管軸方向長さに対してステントの軸方向長さが足りない場合、追加で別のステントを留置しなければならなくなる。
【0006】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、病変部位の管軸方向長さに対して適正な軸方向長さで留置できるステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、生体管腔に留置される筒状のステントであって、軸方向に略直交する径方向に拡縮可能な複数のステント部を備える。複数のステント部は、互いの対向する軸方向の端部を重ね合わせて生体管腔に留置される。複数のステント部のうち少なくとも一方のステント部は、他方のステント部と重なる領域に他方のステント部に対する軸方向の相対的な変位を規制する規制部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、病変部位の管軸方向長さに対して適正な軸方向長さで留置できるステントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のステントの構成例を示す図である。
図2図1(b)の斜視図である。
図3】ステントが生体管腔内に留置された状態を模式的に示す図である。
図4】縮径部および拡径部を示す図である。
図5】本実施形態のステントの留置に使用する留置装置の一例を示す図である。
図6】規制部の他の例を示す図である。
図7】規制部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るステントの構成例について説明する。
ここで、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。図面において、部材の軸方向Axを必要に応じて矢印で示す。また、軸方向Axと略直交する方向を径方向と定義する。なお、図面において部材の一端側を必要に応じて符号Fで示し、一端側と対向する他端側を必要に応じて符号Bで示す。
【0011】
図1(a)、(b)は、本実施形態のステント1の構成例を示す図である。図2は、図1(b)の斜視図である。図3は、ステント1が生体管腔内に留置された状態を模式的に示す図である。図1図2では、直筒形状のステント1を示しているが、ステント1の形状は、例えば、弓状に湾曲した形状や、捻れを有する形状であってもよい。
【0012】
本実施形態のステント1は、血管、食道、胆管、気管、尿管などの生体管腔における狭窄部位や閉塞部位等の病変部位に留置され、これらの病変部位を拡張させるために適用される。図3では、生体管腔の一例として消化管3(例えば、十二指腸の水平部など)の病変部位3aにステント1が留置される例を示している。なお、ステント1は、消化管3に限られず、他の生体管腔に留置されるものであってもよい。
【0013】
本実施形態のステント1は、図1(a)に示すように、一端側に配置される第1ステント部11と、他端側に配置される第2ステント部21を有する構成である。ステント1の留置時には、図1(b)、図2に示すように、第1ステント部11の他端側の端部11aと第2ステント部21の一端側の端部21aを重ね合わせた領域OAが生じる状態で第1ステント部11および第2ステント部21が軸方向に並ぶ。このとき、第1ステント部11の他端側の端部11aの内側に、第2ステント部21の一端側の端部21aが配置される。これにより、生体管腔内において、第1ステント部11および第2ステント部21が軸方向に接続されてステント1をなす。
【0014】
第1ステント部11および第2ステント部21は、それぞれステント1の骨格をなす本体部を備えている。以下、第1ステント部11の本体部を第1本体部12とも称し、第2ステント部21の本体部を第2本体部22とも称する。また、第1本体部12と第2本体部22に共通する部分の説明では、両者をまとめて第1及び第2本体部12、22と称することもある。
なお、第1及び第2本体部12、22の内周または外周の少なくとも一方の周面には、例えば、シリコン樹脂やフッ素樹脂やポリエステル樹脂等で形成された管状の被膜(不図示)が取り付けられていてもよい。以下の説明では、ステント1の一例として、第1及び第2本体部12、22の周面に被膜を有しないベアステントの構成例を示す。
【0015】
第1及び第2本体部12、22は、全体形状がほぼ同じ径の筒状に形成されている。第1及び第2本体部12、22においては、軸方向Axの両端部に設けられた開口が連通し、ステント1が消化管に留置されたときに消化管を流れる物が通過可能な流路がその内部に構成される。
なお、消化管を流れる物は、例えば、全く消化が行われていない摂取された直後の食物、食物が消化管を通ることで分解処理された物、消化管を通っても消化されなかった物(例えば、便等)などを含み、物質の状態は問わない。
【0016】
また、第1及び第2本体部12、22は、径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張する拡張状態へと拡縮可能であり、拡張状態の形状が記憶されたいわゆる自己拡張型の構成を有している。
【0017】
ここで、第1ステント部11および第2ステント部21は、後述の留置装置30のシース31に収容されて径方向内側に収縮された状態で消化管3内に導入される。第1ステント部11および第2ステント部21は、消化管3の病変部位3aに運ばれた後にシース31から放出され、径方向外側に拡張する。なお、留置装置30から放出されたステント部を、内側からバルーン(不図示)を拡張させて押圧することで径方向外側に拡張させてもよい。
【0018】
第1及び第2本体部12、22は、一例として、金属素線からなる線材をフェンス状に編み込んで構成されている。第1及び第2本体部12、22の線材の材料としては、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。なお、第1及び第2本体部12、22は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0019】
また、第1及び第2本体部12、22の線材にはX線造影性を有する合金材料を用いてもよく、あるいはX線造影性を有する合金材料で形成されたマーカ片(不図示)を線材に適宜取り付けてもよい。これらの場合、第1ステント部11および第2ステント部21の位置を体外から確認できるようになる。
【0020】
第1及び第2本体部12、22を構成する材料としてNi-Ti合金を用いる場合、第1及び第2本体部12、22を拡張状態の形状に整えた後、所定の熱処理を施すことにより、その拡張状態の形状を第1及び第2本体部12、22に記憶させることができる。
【0021】
なお、第1及び第2本体部12、22の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、金属素線を他の編み方で格子状または螺旋状に編み込んで第1及び第2本体部12、22を形成してもよい。あるいは、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットし、金属細線がジグザグに折り返されながら螺旋状に巻回されるパターン等の第1及び第2本体部12、22を形成してもよい。
【0022】
また、第1本体部12の一端側の端部には、一端側に向かうにつれて径が広がる第1フレア部13が形成されている。また、第2本体部22の他端側の端部には、他端側に向かうにつれて径が広がる第2フレア部23が形成されている。第1フレア部13および第2フレア部23は、例えばいずれも線材を編組みして形成され、ステント1を留置したときに消化管3の内壁との間で摩擦を生じさせてステント1の位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機能を担う。
なお、ステント1の位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機構として、第1及び第2フレア部13、23を例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、消化管(生体管腔)3の内壁に突き刺されるバーブ(棘部、返し)から構成されてもよい。
【0023】
また、第1本体部12の他端側および第2本体部22の一端側の少なくとも一方には、対向する他のステント部に対する軸方向の相対的な変位を規制するための規制部2が設けられる。本実施形態では、規制部2の一例として、図1(a)、図4(a)に示すように、第1本体部12の他端側に縮径部14が形成され、第2本体部22の一端側に拡径部24が形成される。
【0024】
縮径部14は、他端側の先端部に向かうにつれて径が狭まるテーパー形状をなしている。また、拡径部24は、一端側の先端部に向かうにつれて径が広がるテーパー形状をなしている。図1(a)、図4(a)では、例えば、縮径部14および拡径部24におけるテーパーの軸方向Axに延在する直線に対する傾きと軸方向の寸法はほぼ同じに設定されるが、両者の傾きや軸方向寸法が異なっていてもよい。
【0025】
図4(b)、(c)は、ステント留置時における縮径部14および拡径部24の位置関係の例を示す図である。図4(b)、(c)では、簡単のため、第1ステント部11および第2ステント部21の要素をそれぞれ線図で示している。図4(b)は、軸方向Axにおいて第1ステント部11の縮径部14と第2ステント部21の拡径部24が重なり合う位置にある場合を示している。図4(c)は、軸方向Axにおいて第1ステント部11の縮径部14よりも一端側に第2ステント部21の拡径部24が位置する場合を示している。
【0026】
図4(c)は、図4(b)と比べて、第1ステント部11と第2ステント部21の重なる領域OAの軸方向長さが長い分、ステント1の全長が短くなる。つまり、本実施形態では、第1ステント部11に対する第2ステント部21の軸方向位置を調整することで、病変部位に留置するステント1の全長を変更できる。
【0027】
また、本実施形態のステント1は、病変部位に留置されたステント1の全長を規制部2により維持できる。以下、図4(b)、(c)を参照して説明する。
【0028】
図4(b)の位置で収縮状態の第2ステント部21が拡張すると、第2ステント部21の拡径部24は、予め拡張されている第1ステント部11の縮径部14の内側に当接する。すると、第1ステント部11の縮径部14は、拡径部24の拡張力で径方向外側に向けて内側から付勢される。一方で、第1ステント部11は消化管3の内壁に支持されているので、縮径部14により第2ステント部21の拡径部24には径方向内側に押し戻す反力が作用する。これにより、図4(b)では、第1ステント部11の縮径部14と第2ステント部21の拡径部24が係合し、第1ステント部11と第2ステント部21の間で軸方向の変位が相互に規制されてステント1の全長が維持される。
【0029】
また、図4(c)の位置では、第2ステント部21の拡径部24は第1本体部12の内周側に臨み、第1ステント部11の縮径部14は第2本体部22の外周側に臨む。この位置で収縮状態の第2ステント部21が拡張すると、消化管3の内壁に支持された第1本体部12は拡径部24の拡張力で径方向外側に向けて内側から付勢される一方で、拡径部24は第1本体部12からの反力を受ける。また、拡張する第2本体部22は、縮径部14により径方向内側への力で外側から押さえ付けられる。これにより、図4(c)においても、縮径部14の位置で対向する第2本体部22が拘束されるとともに、拡径部24の位置で対向する第1本体部12が拘束されるので、第1ステント部11と第2ステント部21の間で軸方向の変位が規制されてステント1の全長が維持される。
【0030】
本実施形態のステント1では、図4(b)、(c)に示すように、留置時には第1ステント部11と第2ステント部21の重なり合う領域OAが生じる。領域OAでは、第1ステント部11と第2ステント部21の両方の拡張力が作用することでステント1の拡張力が増強される。
また、領域OAでは、骨格の網目が軸方向や周方向にずれて配置されることで、第1ステント部11および第2ステント部21が重なっていない領域よりも骨格の網目が細かくなる。
【0031】
本実施形態では、第1ステント部11および第2ステント部21の軸方向の変位を規制する規制部2として、縮径部14と拡径部24を設ける例を説明したが、縮径部14と拡径部24のいずれか一方を設けて他方を省く構成としてもよい。
【0032】
また、第1ステント部11と第2ステント部21のいずれかについて軸方向長さの異なる複数種類の製品を用意し、病変部位に合わせて生体管腔に留置するステント部の組み合わせを変化させて長さを調節してもよい。この場合には、ステント部の長さが予め病変部位の長さに合わせて調節されるため、縮径部14と拡径部24を係合させてステント部を留置すれば、病変部位に対して適正な全長のステント1を留置できる。
【0033】
図5は、第1ステント部11および第2ステント部21を病変部位に留置するときに使用される留置装置30の一例を示す図である。
留置装置30は、シース31と、シース31の内側に配置され、第1ステント部11および第2ステント部21を係止可能な軸状部材32とを備えている。
【0034】
シース31は、長尺な管状部材であり、生体適合性を有する合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成される。シース31の内部には、収縮状態の第1ステント部11および第2ステント部21を収容可能である。
【0035】
軸状部材32は、シース31の内側にてシース31の軸方向Axに沿って進退可能に構成された長尺な部材である。例えば、軸状部材32は、外側軸部32aと、外側軸部32aに内挿された内側軸部32bとを有している。
【0036】
外側軸部32aは、略一定の外径を有する長尺な筒状部材である。外側軸部32aの先端側には、第2ステント部21が係止される第2の被係止部34が設けられている。
内側軸部32bは、外側軸部32aに互いの軸心をほぼ一致させるように同軸状に内挿され、その一端側の部分が外側軸部32aから露出されている。内側軸部32bの一端には、シース31の一端側の開口を塞ぐ先端チップ35が装着されている。また、内側軸部32bにおいて、先端チップ35よりもわずかに他端側には、第1ステント部11が係止される第1の被係止部33が設けられている。
【0037】
留置装置30において、軸状部材32の位置を固定した状態でシース31を軸方向Axに沿って他端側に変位させると、内側軸部32bの第1の被係止部33に係止されている第1ステント部11がシース31の内側から生体管腔内に放出される。このとき、外側軸部32aの第2の被係止部34に係止されている第2ステント部21については、シース31に対する軸方向Axの移動を規制した状態とし、第2ステント部21はシース31と一体的に軸方向Axの他端側へ移動する。
【0038】
第1ステント部11の放出後に、内視鏡やX線により位置を確認しながら、第1ステント部11に対して内側から重なるように第2ステント部21の放出が行われる。具体的には、第1ステント部11が放出された後、外側軸部32aの第2の被係止部34に係止されている第2ステント部21のシース31に対する軸方向Axの移動の規制が解除される。そして、軸状部材32の位置を固定した状態でシース31を軸方向Axに沿って他端側に変位させると、外側軸部32aの第2の被係止部34に係止されている第2ステント部21がシース31の内側から生体管腔内に放出される。
【0039】
なお、第2ステント部21のシース31に対する軸方向移動の規制と規制解除を切り替える手段としては、例えば、留置装置30の他端側に設けた操作部(不図示)において外側軸部32aを外面側から押圧して挟持する構成や、操作部の所定部位に外側軸部32aの所定部位を係止させる構成などが挙げられる。
【0040】
以上のようにして、1つの留置装置30により第1ステント部11および第2ステント部21を生体管腔内の所望の位置に留置することができる。なお、留置装置30の構成は上記に限定されるものではない。例えば、シース31内の第1ステント部11の収容部と第2ステント部21の収容部の間に円柱状の部材を配置して仕切り、第1ステント部11の放出時に第2ステント部21が放出されないようにしてもよい。
【0041】
以下、本実施形態のステント1の効果を述べる。
本実施形態の筒状のステント1は、軸方向Axに略直交する径方向に拡縮可能な第1ステント部11および第2ステント部21を備える。第1ステント部11および第2ステント部21は、互いの対向する軸方向Axの端部11a、21aを重ね合わせて生体管腔(消化管3)に留置される。また、第1ステント部11および第2ステント部21は、他方のステント部と重なる領域OAに他方のステント部に対する軸方向の相対的な変位を規制する規制部2(縮径部14、拡径部24)を有する。
本実施形態によれば、ステント部の重なる幅の調整や、ステント部の組み合わせの変更によって、病変部位に留置するステント1の全長を変更できる。また、規制部2によって第1ステント部11および第2ステント部21同士の軸方向の相対的な変位が規制されるので、複数のステント部からなるステント1の全長は維持される。したがって、本実施形態のステント1は、病変部位の管軸方向長さに対して適正な軸方向長さで留置できる。換言すれば、本実施形態では、病変部位を越えてステント1が健常な部位に配置される部分を減らすことができるので、健常部位の損傷の可能性などを低減させることができる。
【0042】
本実施形態のステント1では、第1ステント部11と第2ステント部21の重なり合う領域OAにおいて第1ステント部11と第2ステント部21の両方の拡張力が作用してステント1の拡張力が増強されるので、病変部位をより確実に拡張することが可能となる。
また、第1ステント部11と第2ステント部21の重なり合う領域OAでは、骨格の網目がずれて細かくなるので、病変部位の細胞組織がステント1内に浸潤する事象(イングロウス)を抑制しやすくなる。
【0043】
さらに、本実施形態の規制部2は、第1ステント部11の縮径部14と第2ステント部21の拡径部24により、互いの対向する軸方向Axの端部同士が係合可能な係合構造を有している。第1ステント部11と第2ステント部21を係合させることで、留置した第1ステント部11および第2ステント部21同士の軸方向の相対的な変位をより確実に規制しやすくなる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0045】
本発明の規制部2の構成は、上記実施形態で例示した縮径部14および拡径部24の形態に限定されるものではなく、適宜任意に変更可能である。
一例として、図6に示すように、第2ステント部21において、テーパー状の拡径部24を同じ向きで軸方向Axに複数形成してもよい。図6の構成によれば、複数の拡径部24のいずれかを第1ステント部11の縮径部14と係合させることでステント1の全長を調整できる。また、図6の構成によれば、縮径部14と拡径部24とを軸方向Axの複数の位置で係合させることができ、留置したステント部同士の軸方向変位を確実に規制しやすくなる。なお、図示を省略するが、第2ステント部21に拡径部24を複数形成する代わりに、第1ステント部11においてテーパー状の縮径部14を同じ向きで軸方向Axに複数形成してもよい。
【0046】
また、図7は、規制部2の構成の別例を示す図である。図7の例では、第1及び第2本体部12、22の一部に、線材を編み込まない環状のスリット15、25が規制部2としてそれぞれ設けられている。図7(a)に示すように、スリット15、25の箇所では、編み込まれていない線材が周方向に沿ってジグザグ状に突出するように配置される。第1ステント部11の内側で第2ステント部21を拡張させると、図7(b)に示すように、スリット15、25でジグザグ状に突出する線材が他方のステント部の骨格に引っ掛かることで第1ステント部11と第2ステント部21が係合する。これにより、留置したステント部同士の軸方向変位を規制できる。
なお、スリット15、25の軸方向の長さや、第1及び第2本体部12、22におけるスリット15、25よりも先端側の部分の長さ等は、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。例えば、スリット15に第2本体部22におけるスリット25よりも先端側の部分が引っ掛かるようにしてもよいし、また、スリット25に第1本体部12におけるスリット15よりも先端側の部分が引っ掛かるようにしてもよい。
【0047】
さらに、図示は省略するが、第1ステント部11に複数のスリット15が軸方向に設けられていてもよいし、第2ステント部21に複数のスリット25が軸方向に設けられていてもよい。これにより、複数のスリット15や複数のスリット25を用いて第1ステント部11と第2ステント部21とを軸方向の複数の位置で係合させることができ、留置したステント部11、21同士の軸方向変位をより確実に規制できる。
【0048】
また、本発明の規制部2の構成例として、例えば、第1ステント部11の内周側や第2ステント部21の外周側の少なくともいずれかに、他方のステント部の骨格を引っかける係止ピン(バーブなど)を設けてもよい。この場合には、係止ピンが他方のステント部の骨格に引っ掛かることで第1ステント部11と第2ステント部12が係合し、留置したステント部同士の軸方向変位を規制することができる。
【0049】
また、本発明の規制部2の構成例として、ステント1が被膜部を有する場合に、両者の被膜部同士を接着してステント部同士の軸方向変位を規制してもよい。例えば、生体適合性を有する溶解性の材料を用いて被膜部を形成し、被膜の溶解によって被膜部同士を接着させてもよい。上記において、被膜の材料は体温程度の温度で溶解を開始するものでもよく、水分あるいは血液等の体液の含有成分と接触することで溶解を開始するものでもよい。あるいは、医療用接着剤などで生体適合性を有する接着層を被膜部の表面に形成し、被膜部同士を接着させてもよい。
【0050】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1…ステント、2…規制部、3…消化管、3a…病変部位、11…第1ステント部、12…第1本体部、14…縮径部、21…第2ステント部、22…第2本体部、24…拡径部、30…留置装置、31…シース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7